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裁判年月日 平成29年 2月22日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(ワ)21794号
事件名 区分所有建物使用差止等請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2017WLJPCA02228006
要旨
◆本件マンションの管理組合の管理者である原告が、同マンション101号室の区分所有者である被告に対し、同室の賃借人の営業する台湾料理店が悪臭を生じさせており、区分所有者の共同の利益に反すると主張して、建物の区分所有等に関する法律57条1項、同条3項に基づき、同室内を台湾料理店として使用させることの差止めを求めるとともに、不法行為又は管理規約に基づき、本件賃借人が共用部分に看板、ごみ箱を無断で設置している使用料相当損害金及び本件訴訟の追行費用相当損害金等の支払を求めた事案において、本件悪臭の態様と程度、本件マンションの居住者等の受け止め方、同マンションの地域環境と悪臭を巡る従前の状況、悪臭の防止に関する対応策の有無とその効果等の諸般の事情を総合的に考慮して、本件悪臭は本件マンションの居住者等の受忍限度を超えるものと認定し、被告が本件賃借人をして台湾料理店の営業を行わせている行為は差止めの対象になると判断するとともに、被告の不法行為責任を認めるなどして、損害賠償額を認定し、請求を一部認容した事例
出典
参照条文
建物の区分所有等に関する法律6条1項
建物の区分所有等に関する法律57条
民法709条
裁判年月日 平成29年 2月22日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(ワ)21794号
事件名 区分所有建物使用差止等請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2017WLJPCA02228006
東京都文京区〈以下省略〉
aマンション管理組合管理者
原告 X
同訴訟代理人弁護士 町田伸一
東京都多摩市〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 花岡康博
主文
1 被告は,別紙物件目録記載の建物内を,賃借人有限会社bをして台湾料理店として使用させてはならない。
2 被告は,原告に対し,134万2349円及びうち10万0552円に対する平成27年8月22日から,うち16万3397円に対する平成28年8月5日から,うち107万8400円に対する平成28年8月6日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,訴え提起手数料のうち2万円を被告の負担とし,その余の訴え提起手数料を原告の負担とし,その余の訴訟費用はこれを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)内を,台湾料理店として使用させてはならない。
2 被告は,原告に対し,171万0400円及びうち24万円に対する平成27年8月22日から,うち147万円0400円に対する平成28年8月5日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,マンション管理組合の管理者である原告が,本件建物の区分所有者である被告に対し,(1)本件建物の賃借人の営業する台湾料理店が悪臭を生じさせており,これは区分所有者の共同の利益に反するものであると主張して,建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)57条1項,3項に基づき,本件建物内を台湾料理店として使用させることの差止めを求めるとともに,(2)①不法行為に基づき,上記賃借人が共用部分に看板,ごみ箱を無断で設置している使用料相当損害金63万円(平成26年11月12日から平成28年7月11日までの21か月分),②上記マンション管理組合の管理規約に基づき,本件訴訟の追行費用相当損害金108万0400円,③上記①のうち平成26年12月1日から平成27年7月31日までの使用料相当損害金24万円に対しては訴状送達の日である平成27年8月22日から,上記①のその余の期間の使用料相当損害金及び上記②の合計147万0400円に対しては,訴えの変更申立書送達の日である平成28年8月5日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求めている事案である。
1 前提となる事実(証拠等を掲げたもののほかは当事者間に争いがない。)
(1)ア 原告は,aマンション管理組合(以下「本件管理組合」という。)の理事長兼管理者である。本件管理組合は,別紙物件目録記載の一棟の建物(以下「本件マンション」という。)の区分所有者全員で構成される区分所有法3条所定の管理組合(権利能力なき社団)である。
イ 被告は,本件建物(本件マンション101号室)の区分所有者である。
ウ 有限会社b(以下「b社」という。)は,中華料理店の経営等を目的とする会社であり,本件建物において「c店」という名称の台湾料理店(以下「本件店舗」という。)の営業をしている。(甲7,11,12)
(2) 本件管理組合の管理規約及びその委任を受けた細則(以下,管理規約を「本件規約」といい,細則と併せて「本件規約等」という。)には,以下のような内容の定めがある。(甲1,2)
ア 専有部分の使用について
(ア) 店舗用の専有部分の区分所有者は,その営業形態を変更するとき又は第三者に貸与するときの営業形態等について,管理組合の承認を得なければならないが,本件マンションは住戸部分と共同のため,住戸部分にふさわしくない営業内容及び形態につき,承認できない業種がある(本件規約12条3項)。
(イ) 区分所有者は,本件マンション内において,騒音,振動,悪臭又は煤煙等を発生させる行為を行ってはならない(使用細則4条1号)。
イ 看板等の設置について
(ア) 区分所有者は,本件マンションの敷地及び共用部分等において,以下に掲げる行為をしてはならない(使用細則8条)。
a 広告物の掲示又は設置その他の建物の外観の変更を伴う使用。ただし,店舗用専有部分においては,管理組合の承認した広告物等は,この限りではない(2号)。
b 廊下,階段室,パイプスペース内及びその他の共用部分への物品の設置若しくは放置又はその占拠その他の排他的な使用(3号)。
(イ) 看板等の設置を希望する者は,設置する場所に接する区分所有者が事前に管理組合へ必要な申請を行い,書面による承認を受けなければならない(看板掲示等共用部分使用に関する細則2条1項)。
(ウ) 看板等の設置による共用部分の使用は,店舗道路面の前面の開口上部壁面を除き有料とし,その使用料は壁の面積1m2あたり月額1000円とするが,その金額は理事会の決議により増減することができる(看板掲示等共用部分使用に関する細則1条,3条1項・3項)。
ウ 区分所有者と賃借人の関係について
区分所有者は,その専有部分を第三者に貸与する場合には,本件規約等に定める事項を第三者に遵守させなければならない(本件規約19条1項)。
エ 管理者について
理事長は,区分所有法に定める管理者とする(本件規約39条2項)。
オ 費用請求について
(ア) 区分所有者若しくは専有部分の貸与を受けた者又はこれらの者の同居者が,本件規約等に違反したとき又は本件マンションの敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは,理事長は,理事会の決議を経て,以下の措置を講ずることができる(本件規約68条3項)。
a 行為の差止め,排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し,管理組合を代表して,訴訟その他法的措置を追行すること(1号)。
b 敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金の請求又は受領に関し,区分所有者のために,訴訟において原告になることその他法的措置を取ること(2号)。
(イ) 本件規約68条3項の訴えを提起する場合,理事長は,請求の相手方に対し,違約金として弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができる(本件規約68条4項)。
(3) 被告は,平成26年10月1日,b社との間で,以下の約定を含む本件建物の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,その頃,b社に対し,本件賃貸借契約に基づき本件建物を引き渡した。(乙1)
ア 契約の解除
被告は,以下の場合には,無催告で本件賃貸借契約を解除することができる(7条1項)。
(ア) b社又はその関係者が,被告又は近隣の者に迷惑や損害を与えるか,与えようとしたとき(8号)。
(イ) b社が,本件賃貸借契約や本件規約等に違反するか,又は信義に反する行為を行ったとき(10号)。
イ b社の管理義務
b社又はその関係者が,本件マンションの共有部分に荷物を留置した場合,被告は,b社に対し,当該荷物の撤去を催告し,撤去がされない場合には,b社の費用でこれを処分することができる(13条2項)。
ウ 造作・設備工事等
b社は,被告への書面による申請及び被告からの書面による承諾なく,本件建物に看板又は広告用設備を取り付けてはならない(14条1項3号)。
エ 特約条項
(ア) 前面道路・歩道への置き看板は道路交通法違反となるため禁止とする。b社は,造作及び外壁面等の工事並びに看板等の設置につき,書面及び図面を添付した上で事前に本件管理組合及び被告の承諾を得るものとする(看板製作に関する諸費用及び維持管理費はb社の負担とする。)(4条)。
(イ) 本件マンション内又は近隣から,本件店舗の営業に対する臭い等の苦情が発生した場合には,b社の責任において,苦情の発生原因を改善する対応を行う(6条)。
(ウ) 本件賃貸借契約に規定するもの以外の事項については,本件規約等を遵守するものとする(19条)。
(4) b社は,平成26年11月12日,本件建物において本件店舗の営業を開始し,現在,別紙説明図記載のとおりの各種看板や排気設備(別紙説明図の⑪参照。以下,「本件排気設備」という。),冷凍庫等を店の前に設置し,また,本件マンションの駐輪場スペースに分別ストッカー及びポリバケツを置いて営業を行っている。(甲58)
(5) 本件管理組合は,平成27年5月25日,臨時総会の決議によって,被告に対して本件店舗からの悪臭の排出を停止するよう求める訴えを提起すること,その追行は理事長(原告)に一任することを決議し,原告は,同年8月4日,本件訴訟を提起した。(甲43,当裁判所に顕著な事実)
(6) 被告は平成27年10月28日付けでb社に対し本件訴訟の訴訟告知を行い,b社は同月31日訴訟告知書の送達を受けたが,現在まで本件訴訟に参加していない。(当裁判所に顕著な事実)
2 争点及び争点に関する当事者の主張
(1) 被告が区分所有法上の差止義務を負うか(争点(1))
【原告の主張】
本件規約等は,本件マンション内において悪臭を発生させる行為を禁止しており,区分所有者である被告は,賃借人であるb社に対し,本件規約等を遵守させる義務がある。しかし,被告は,賃借人であるb社に本件店舗を営ませ,受忍限度を超えて悪臭を発生させている。そうすると,被告は,区分所有者の共同の利益に反する行為を行っているものということができるから,原告は,被告に対し,区分所有法57条1項,3項,6条1項に基づき,この行為の差止めを求めることができる。
【被告の主張】
ア 本件マンションは商業地域に属しているから飲食店があることは不自然なものではなく,実際,被告は従前本件建物において焼鳥店を営むなどしていたものであり,建築当初から飲食店として使用されている。
そして,本件店舗から出る臭いは時間帯によっても変動し,その程度が大きいものでもなく,本件マンションの区分所有者らが受忍すべき範囲内のものであって,本件店舗の営業は区分所有者の共同利益に反する行為であるとはいえない。
イ また,本件建物において本件店舗を営んでいるのは被告ではなくb社であって,被告は,本件店舗の営業を現実に停止させることはできない。被告は,本件店舗の臭いについて誠実に対応してきたにもかかわらず,原告は,被告に不可能を強いる請求をしている。
以上によれば,被告は,区分所有法57条1項に基づく差止義務を負うものではなく,原告は,同法60条,57条4項の規定に基づき,本件賃貸借契約の解除権を行使し,被告及びb社の双方に対して本件建物の明渡しを求めるべきである。
(2) 被告の負うべき損害賠償額(争点(2))
【原告の主張】
ア 看板等設置使用料
被告は,b社に本件規約等を遵守させる義務を負い,本件賃貸借契約の解除権を行使するなどして本件規約等に違反する行為を防止することができるのに,そのような方策を取ることなく,漫然と,b社をして,本件管理組合の承認なしに,遅くとも平成26年11月12日以降,看板等やごみ箱を設置させている。
被告のこの行為は不法行為に当たるところ,その使用料相当損害金は以下のとおりである。
(ア) 看板,オーニング,冷凍庫及び排気ダクト
b社は,別紙説明図に記載のとおり,本件マンションの共有部分に看板,オーニング,冷凍庫及び排気ダクトを設置したところ,それぞれの大きさは,別紙説明図のとおりであって,合計面積は,別紙「(有)bの看板等」①から⑪までのもの(各丸数字は別紙説明図と対応する。)に限定しても27.388m2となる。
看板掲示等共有部分使用に関する細則の規定によれば,看板の使用料は,1m2当たり月額1000円が基準となっているから(前提となる事実(2)イ(ウ)),月額2万7388円の損害金が生じている。
なお,上記規定には,開口上部壁面については無料とする旨の定めもあるが,これは本件管理組合が看板設置を承認した場合の定めであるから,そのような承認手続を経ていない以上,当該部分についても損害から控除されるものではない。
(イ) ごみ箱
b社は,ごみ箱2個を設置しているところ,1個につき月額2万円の使用料を支払うべきであるから,月額4万円の損害金が生じている。
(ウ) 小括
以上によれば,計算上は月額6万7388円の損害金が発生するところ,少なくとも月額3万円の損害金が発生しているといえる。
b社は,平成26年11月12日の開店以降,上記設備の設置等に及んでいるところ,原告は,本件訴えにおいては,同日から平成28年7月11日までの21か月分に当たる63万円を請求する。
イ 訴訟追行費用
本件規約によれば,規約違反に伴う訴訟追行についての費用は請求の相手方の負担とされているところ,原告ないし本件管理組合は,本件訴訟の追行のため,以下の費用合計108万0400円を支出することを余儀なくされた。
(ア) 訴状貼付印紙代 1万5000円
(イ) 訴えの変更申立書貼付印紙代 7000円
(ウ) 弁護士費用 86万4000円
(エ) 臭気測定報告書等作成費用 19万4400円
ウ まとめ
以上より,被告は,原告に対し,上記アの63万円と同イの108万0400円の合計171万0400円の支払義務を負う。
【被告の主張】
ア 看板等設置使用料
(ア) 不法行為の成立について
そもそも看板等を設置しているのはb社であって被告ではないから,被告が直ちに不法行為責任を負うものではない。
そして,本件規約等のうち看板掲示等共用部分使用に関する細則の定めは平成26年3月2日の規約改正により導入されたにすぎず,被告はこの規定を認識しておらず,b社に所定の手続を行わせなかったとしてもやむを得ないものがあるし,その後の使用料の請求に対しても,その金額の根拠が明らかでないために支払うことができなかったにすぎないものであるから悪質なものではない。
以上によれば,被告の行為が不法行為であるとはいえない。
(イ) 看板,オーニング,冷凍庫及び排気ダクトに係る損害
本件建物を含め,本件マンションの1階部分は店舗用として用いられているから,店舗として通常の営業活動を行うのに伴う共用部分の使用については損害賠償請求の対象外とすべきである。また,各区分所有者による開口部の使用は,社会通念に照らせば,無料で許されていると解すべきであるし,本件規約等に照らしても,そのように解すべきである。
そうすると,仮に使用料の支払義務を被告が負うとしても,被告が支払うべき使用料は,入口壁面上部看板の面積3.52m2(0.8m×4.4m)及び入口左袖看板の面積0.5m2(1m×0.5m)の合計4.02m2に対する使用料である月額4020円を超えるものではない。
(ウ) ごみ箱に係る損害
争う。本件マンションにおいてコンビニエンスストアを営んでいる者については,ごみ箱の設置は1個あたり月額1500円の使用料で認められていることからすると,月額2万円は過大である。
イ 訴訟追行費用
原告ないし本件管理組合が本件訴訟に関連して原告の主張欄に記載のとおりの支出をしたことは認めるが,被告が支払義務を負うとの主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前記前提となる事実に加え,証拠(甲63,64,乙12,証人A,原告本人,被告本人のほか後掲のもの)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(1) 本件店舗の営業状況等
ア 本件マンションは地上10階建てのマンションであり,東京都文京区の商業地域(主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域。都市計画法9条9項参照)に位置し,近隣には,製菓の専門学校やマンション,飲食店等が所在している。(甲6,乙6,7,10)
イ 本件マンションの専有部分は住戸部分と店舗部分とに分かれており,1階部分で公道に面している101号室から105号室まではいずれも建築当初から店舗として利用されている。本件建物(101号室)は,北側で住民が出入りに使用しているエントランスや玄関ホール,東側で玄関ホールへと続く開放廊下,南側で他の店舗(102号室),西側で公道にそれぞれ接し,西側が正面出入口となっている。本件マンションの1階店舗部分には,現在,本件建物で営業中の本件店舗以外にコンビニエンスストア等の複数のテナントが入っているが,これまで本件建物以外の店舗部分で飲食店が営業されたことはない。(甲1,乙7~9)
ウ 本件店舗は,「台湾ラーメン」(塩味),「担々麺」(胡麻だれ),「○○ラーメン」(醤油味),「特製味噌ラーメン」(味噌風味)等の各種ラーメンを主なメニューに掲げる台湾料理店であり,営業時間は,定休日である日曜日を除く日の午前11時30分から午後2時30分まで及び午後5時から午後10時30分までの間である。(甲11,12,58)
(2) 本件店舗の営業に至る経緯
ア 被告は,平成2年頃以降,本件建物で焼鳥店「d店」の営業を行っていた。なお,被告は当初は賃借人として上記営業を行っていたが,平成20年10月30日に本件建物を買い受けて区分所有者になったものである。(甲6,乙12)
イ 上記焼鳥店では,当初,他のテナントと共用の排気設備にダクトを接続する方法で排気をしていたが,この共用の排気設備は事務所用のものであり,油煙に対応できる飲食店用の仕様でなかったことに加え,平成15年8月頃,調理場所を変更した(焼鳥を厨房ではなくカウンターで焼くことにした)ことで煙と悪臭の問題が顕在化し,本件マンションの居住者から苦情を受けるようになった。これを受けて,被告は,本件管理組合と協議の上,同年11月頃,本件建物内から屋上に至る専用のダクトで排気を行う排気設備(以下「被告専用排気設備」という。)を新設した。この被告専用排気設備は本件マンションの共用部分の使用を伴うものであり,被告だけにそのような便宜を認めることに問題はあったものの,上記のような煙と悪臭の問題を解決するための緊急避難的な措置として,「d店」一代限りの特例という条件で,特別に認められたものであった。これにより,上記焼鳥店の煙と臭いについての苦情は沈静化した。(甲14,15,32,37,46,47)
ウ 被告は,平成26年4月頃,同年7月末日をもって焼鳥店「d店」を閉鎖し,本件建物を賃貸することとしたが,当時,本件管理組合の理事を務めていたこともあり(在職期間は同年3月2日から平成27年2月22日まで),テナントとしてどのような店がふさわしくないか理事会の意見を確認しておく必要があると考え,本件管理組合に照会した。なお,被告としては,以前に105号室の新規入居テナントの決定に当たって本件管理組合理事会からラーメン店やカラオケ店は好ましくないという意見が出されたという先例を認識していたが,可能であれば,被告専用排気設備が使用している共用部分の使用料を支払うことでその存続を認めてもらい,被告専用排気設備が利用できる形での飲食店の入居を希望していた。
しかし,同年6月16日の本件管理組合理事会において,被告専用排気設備は上記イのとおりの経緯で緊急避難的に認めたものにすぎず,「d店」の営業をやめる以上は,これを撤去し原状回復してもらう必要があるという判断になった。これを受けて,本件管理組合は,同月21日付けの書面(甲14)を被告に差し入れ,被告専用排気設備の撤去・原状回復を求めるとともに,本件建物の用途は,既存の共用の排気設備を利用して問題のないものに限られ,「厨房で調理を行うような飲食店は不可能」であり,喫茶や電子レンジで温めるなどの簡便な調理まで禁止するものではないが,特に煙,臭い,騒音,振動等には十分に注意するよう求めた。(甲10,13~17,乙12)
エ 被告は,本件管理組合の上記意向に沿った入居テナントの選定を行う考えの下,不動産業者にテナントの募集を依頼するとともに,平成26年8月23日,被告専用排気設備を撤去した。そして,不動産業者から入居希望のあったb社を紹介されると,同社が当時営業をしていた板橋区高島平の店舗を訪れてその状況を見分し,焼鳥店と比較して煙や臭いが少なかったことから,本件管理組合の承諾を得られるであろうと判断し,契約の手続を進めることとした。
そうして,被告は,同年9月8日の本件管理組合理事会(甲21)において,新店舗は「薬膳料理」の営業であるから既存の換気設備で十分であるとの説明をし,入居の許可を求めた。出席していた理事らは「薬膳料理」が具体的にどのようなものか理解することはできなかったが,既存の換気設備で問題が生じないという被告の上記説明を信じ,従前の焼鳥店と同じ営業時間(午後10時まで)であること,他の居住者に迷惑をかけないこと,従前の本件管理組合からの発出資料を契約者に交付すること等を条件として,b社の入居を許可した。(甲18~21)
オ b社は,本件店舗の厨房部分の排気については,排気能力を向上させる設備の変更をした上で共用の排気設備を用いて屋上に排気し,客席部分及びトイレ部分の排気については開放廊下側に排気を行うという計画を立て,その旨の専用部分改装届を本件管理組合に提出した。これに対し,本件管理組合は,平成26年9月30日付けで改装の承認をしたが,その際,被告に対し,厨房部分の排気を行う共用の排気設備については排気能力の向上は考えていないことを伝えるとともに,客席部分の排気は開放廊下側ではなく道路側に変更するよう要請した。(甲21~25,36,52)
カ その後,本件店舗の開業のための改装工事が行われることとなったが,被告は請負業者に対し,既存の排気設備の能力測定をしてその結果を踏まえた改善をするよう伝えたものの,何らの対応もとられないまま,平成26年10月1日,b社に対する本件建物の引渡しがされてしまった。また,b社は,別紙説明図のとおりの看板等を設置したが,本件マンションの共用部分を使用する態様であるにもかかわらず,本件管理組合に対する所定の設置申請の手続をとることなく,無断で設置工事が行われた。
そして,b社は,同年11月12日に本件店舗の営業を開始したが,排気設備が整っていなかったため,被告に相談することなく(当然ながら本件管理組合の了承を経ることもなく),独断で,本件店舗内の厨房部分から道路側に排気を行う構造の排気設備(本件排気設備)を設置し,現在に至るまでこれを使用している。本件排気設備は,厨房上部から本件店舗の前面道路側に至る排気ダクトを取り付けたものであり,このダクトは,地上から50cm程度の高さで下向きに開口(口径40cm程度)しており,その先の地上部分には水を張った容器が置かれている(別紙説明図の⑪)。このため,排気口から排出される臭いは,本件店舗の前面道路にそのまま拡散されることになっている。(前提となる事実(4),甲29,34,57,58)
(3) 本件店舗の開店後のトラブル
ア 本件管理組合は,本件店舗の開店直後から,本件店舗が発生させる臭いについての苦情を本件マンションの居住者から受けるようになった。他方,被告は,自宅が遠方(多摩市内)であり,上記のような工事が行われていること自体を認識しておらず,その対応は後手に回ることとなった。このような中,本件管理組合は,平成26年12月頃,本件マンションの居住者に対し,1階のテナントであるコンビニエンスストア及び本件店舗を対象としたアンケートを実施したところ,本件店舗について,①ベランダでもかなり臭いがするので洗濯物が干せない。午後7時から10時頃までの間には,窓を閉め切った寝室でも食物を調理する臭いがすることがある,②臭いが5階まで上がってくる,③外看板が派手すぎる,看板料をもらうべきである等の否定的な回答が寄せられた。(甲26~28)
イ これを受けて,本件管理組合は,平成27年1月19日に開かれた理事会(甲29)の席上で,被告に対し,無断で設置された本件排気設備及び看板等の問題,悪臭の問題の改善策をb社と話し合った上で提示するよう求めた。これを受けて,被告は,b社の代表者(B)から事情を聴き,本件管理組合側の対応を伝えたが,同人は日本語が堪能でないという事情もあり,やがて被告が話をしようとしても逃げてしまうような対応を取るようになり,b社としての責任のある対応策を示すような状況にはならなかった。
ウ この間,被告は,悪臭の問題については改善が必要であるという認識を本件管理組合に一貫して示し,対応策を検討すると述べていたが,具体的な改善策が示されることなく推移した。このような中,本件管理組合の理事の間では,「薬膳料理店という申請は虚偽でラーメン店だったではないか」という受け止め方から,被告への不信感が増幅していった。そうして,本件管理組合は,同年3月23日付けで,前記(2)オの改装承認を取り消す旨の理事会の決議を行った上,被告に対し,無断設置されている看板の設置申請を同月31日までに提出するよう求め,解決に至らない場合には訴訟その他の法的措置をとる旨の通告(甲33)をした。これに対し,被告は,問題の原因は請負業者と賃借人にあるなどの弁解をするとともに,看板の設置につき現状の追認を求める内容の申請届(甲34)を提出したが,本件管理組合は,同年4月1日付けの勧告書(甲35)をもって,電飾看板や派手な宣伝文句を書いた看板の設置は許可できないとして,その撤去を求めた。(甲29~36)
エ 被告は,本件管理組合とb社の板挟みのような状態での対応に苦慮しつつ,何とか打開策を見出そうとして,同年4月10日付けの書面(甲36)で,既存の共用の排気設備に接続して本件店舗の排気を行う前提での改善策を提案するなどしたが,同月16日の本件管理組合理事会(甲37)で,上記の方法では「d店」で生じた問題を再燃させることになるという理由で却下された。
その後,同月23日,被告から,他の住民から苦情があった場合は元に復旧することを前提に改めて被告提案の改善策のテストを行いたいという申出(甲38)があったことから,本件管理組合は,同月28日,他の住民から苦情があった場合には改善策のテストを中止し1か月以内に営業を中止することの確約書を同月30日までに提出するよう被告に求めた(甲39)。被告は,これを受けて,同月28日付けで被告提案の改善策を前提とする改装届を提出し,上記テストを行う準備を進めたが,最終段階になってb社が上記確約書の提出を拒否したため,上記テストは行われないまま頓挫した(甲37~41,43,57)。
オ 以上のような経過の下,本件管理組合は,同年5月25日の臨時総会(甲43)において,本件訴えの提起の決議をするに至った(前提となる事実(5))。現在,b社は,無断設置した本件排気設備及び看板等の問題について,被告との協議を一切拒否している。
(4) 臭気指数を用いた測定及び悪臭の影響
ア 悪臭防止法は,住民の生活環境を保全するため悪臭を防止する必要があると認める住居が集合している地域その他の地域内の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭原因物を規制するため,都道府県知事(市・区の区域内の地域については市・区長)において,規制地域を指定し(同法3条),特定悪臭物の濃度の許容限度を定める方法又は臭気指数の許容限度を定める方法により,規制地域の悪臭の規制基準を定めること(同法4条)を求めている。臭気指数とは,臭気濃度の値の対数に10を乗じた値であり,臭気濃度とは,試料とする気体の臭気を人間の嗅覚で感知することができなくなるまで気体の希釈をした場合におけるその希釈の倍数をいう(悪臭防止法施行規則1条)。
イ 東京都文京区長は,悪臭防止法上の悪臭の規制基準として,商業地域を含む「第二種区域」については,敷地境界線の臭気指数を12と,気体排出口(排出口の実高さが15m未満のものであって排出口の口径が0.6m未満のもの)の臭気指数を33と定めている。(甲54)
なお,臭気の強さを臭気強度として,0を無臭,1をやっと感知できる強さ,2を何のにおいかわかる強さ,3を楽に感知できる強さ,4を強いにおい,5を強烈なにおいの6段階で分けた場合,臭気強度と臭気指数との対応関係としては,臭気指数10から15までは臭気強度では2と3の中間程度,臭気指数12から18までが臭気強度では3,臭気指数14から21までは臭気強度では3と4の中間程度に当たるとされている。(甲53)
ウ 臭気判定士(悪臭防止法13条1項参照)であるCは,平成28年6月7日,官能試験法の1つである3点比較式におい袋法(無臭の気体を入れた袋を2つと検体を採取の上希釈した気体を注入した袋1つを臭覚により判別させ,判別することができなくなった時点の希釈倍数によって臭気濃度を算出する方法)により,前日午後6時30分頃に採取した気体を対象として臭気測定を行ったところ,その結果は,以下のとおりである。
(ア) 本件排気設備の排出口直近
臭気濃度 1600(臭気指数 32)
臭質 中華料理のようなにおい
(イ) 本件マンション2階ベランダ
臭気濃度 500(臭気指数 27)
臭質 中華料理のようなにおい
(ウ) 本件マンション1階エントランス
臭気濃度 160(臭気指数 22)
臭質 中華料理のようなにおい
エ 本件店舗からの臭いは,厨房における調理に伴うものであることから,午後0時前後及び午後5時前以降に強くなり,本件建物の北側のエントランスに臭いが滞留したり,上階へ水蒸気のような煙を伴って立ち上るなどしている。本件訴訟提起後も,本件マンションの居住者から本件店舗が発する臭いについての苦情が本件管理組合に多く寄せられ,本件建物の南隣りの102号室のテナントは,同所を10年程度使用していたにもかかわらず,本件店舗の油の臭いが製品に付着するなどとして,退去を余儀なくされており,本件建物の階上の201号室の居住者は,本件店舗の臭いが原因で転居しており,本件マンションの共同の利用上,具体的な不利益が生じている。(甲56)
(5) 看板の設置に関する状況
ア 本件管理組合は,平成25年2月1日,コンビニエンスストアが営まれている本件マンション105号室の区分所有者に対し,共用部分の使用を許可した上,同区分所有者との間で,その使用料を以下の合計月額2万円とすることで合意した。本件管理組合は,その後の平成26年3月2日,通常総会における特別決議をもって,看板掲示等共用部分使用に関する細則を規定した。(甲2,10,48)
(ア) ファサード看板 11.13m2 1万5000円
(イ) ごみ置場,バット置場 1か所 1500円
(ウ) 室外機置場(1階屋上) 1か所 3500円
イ b社は,本件店舗の営業に当たり,別紙説明図のとおりの大きさの各種看板や本件排気設備,冷凍庫等を店の前に設置し,また,駐輪場スペースに分別ストッカー及びポリバケツを置いているが,本件店舗が使用している駐輪場スペースの占有面積の合計は,上記コンビニエンスストアのごみ置場,バット置場の占有面積と同程度である。(前提となる事実(4),甲58,証人A)
ウ 被告及びb社は,上記(3)のとおり,無申請で設置した看板等の撤去を本件管理組合から求められていたが,特段の対応をしておらず,また,現状の看板使用料・塵芥置料等として,平成26年12月分から月額3万円を支払うよう求めることを理事会の決議に基づいて求められても,その明細の開示を求めるなどして,現在までこれを支払っていない。(甲29,30,32~35,37,39,41,42,45,乙15)
2 争点(1)(被告が区分所有法上の差止義務を負うか)について
(1) 区分所有法6条1項は,区分所有者は建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない旨を定め,同法57条は,区分所有者がこれに違反する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合に,管理者が集会の決議により区分所有者全員のためにその行為の停止(差止め)を請求することができる旨を定める。もっとも,飲食店店舗において一定の臭いを生じさせること自体は避けられないものであるから,悪臭を発生させる行為が「区分所有者の共同の利益に反する」といえるかどうかは,本件マンションの区分所有者又は居住者(以下「居住者等」という。)の受忍限度を超える悪臭を発生させているか否かによって決せられるというべきである。そして,この受忍限度からの逸脱の有無は,当該悪臭の態様と程度,本件マンションの居住者等の受け止め方,本件マンションの地域環境と悪臭を巡る従前の状況,悪臭の防止に関する対応策の有無とその効果等の諸般の事情を総合的に考慮して判断するのが相当である。
(2) 以上を踏まえて,本件店舗から生じさせている臭いが本件マンションの居住者等の受忍限度を超えるものかどうかについて判断する。
ア まず,悪臭の態様と程度,本件マンションの居住者等の受け止め方であるが,本件店舗から発せられる臭いは「中華料理のような臭い」であるところ,一定の状況下では食欲をそそる好ましい臭いと感じられることはあっても,望みもしないのに連日長時間さらされる臭いとしては,一般的には不快感が大きいと受け止められるものと解される。そして,本件店舗から発せられる臭いは,本件建物の真上にとどまらず,本件マンションの居住者の多くが利用する本件マンションのエントランスにも及んでいるところ,午後6時30分頃時点における2階ベランダ及び1階エントランス部分の臭気指数(それぞれ27及び22)は,文京区長の定める敷地境界線での規制基準(他者の生活圏に侵入することが許容される臭気の基準という意味合いがある。)である臭気指数(12)を大幅に上回っているものである。また,本件店舗の営業開始直後から,本件店舗の発する臭いに対する苦情が多数寄せられているところ,そのような状況は現在も続いており,他の区分所有者の中には,本件店舗の臭いによってテナントの撤退を余儀なくされるといった具体的な不利益も生じているのであって,上記臭いは,本件マンションの居住者等に対し,相当程度に深刻な被害をもたらしているものということができる。
イ 次に,地域環境についてみるに,本件マンションは商業地域内に位置し周辺には一定の商業施設はあるものの,飲食店が集中する繁華街などとは異なり居住環境との調和も求められているということができる。実際にも,本件マンションは,1階の公道面の101号室から105号室が店舗であるものの,それ以外の専有部分は全て居住を目的とする住戸であって,本件マンションを全体としてみれば,居住用物件としての比重がはるかに高いものということができ,その趣旨は,本件規約12条3項,使用細則4条1項(前提となる事実(2)ア)にも現れているところである。
ウ また,本件マンションにおける悪臭を巡る従前の環境を見ても,被告が本件建物で焼鳥店(「d店」)を営業していた時期はあるものの,煙と悪臭についての居住者らの苦情を受け,当該店舗一代限りという前提で屋上への排気を行う被告専用排気設備を設置するという対策が講じられて事態は間もなく改善しており,このような形で一時的に問題が顕在化した以外,悪臭が恒常的・継続的に生ずるような状況にはなく,むしろ,一部店舗が発生させたこのような悪臭の問題に対しては,本件管理組合が中心となって,迅速に毅然とした対応をする伝統が守られてきたということができる。そして,本件マンションにおいては,本件建物以外の店舗で飲食店が営業されたことはないことは上記認定のとおりであって,本件店舗が発生させている悪臭は,本件マンションの居住者等の従前の生活環境を大きく変えるものといわざるを得ない。
エ そして,悪臭の防止に関する対応策の有無とその効果についていえば,本件店舗の開店直後に,悪臭対策としておよそ無防備といわざるを得ない本件排気設備が本件管理組合に無断で設置されてから,少なくとも結果に現れる形での対策は一切講じられないまま現在に至っている。しかも,この間,本件管理組合からは,書面による通告を含め繰り返し善処を求められてきたという経過もあるのであって,それにもかかわらず何らの対応策がとられていないという事実は,受忍限度の判断に当たっても重視せざるを得ない。
なお,被告としては,本件管理組合とb社の板挟みになって対応に苦慮していたという事情があることはうかがわれるが,本件のそもそもの発端は,本件管理組合からテナントとしてふさわしくない店舗の基準は事前に示されていながら,被告において余りに楽観的にすぎる判断をした上,本件管理組合に対し本件店舗に関する必要な情報の開示を尽くさなかった点にあると解される。また,事後的にも,b社との関係で,本件賃貸借契約の貸主としての対応が可能であることは後記(3)のとおりである。したがって,上記の事情は被告の責任を免れさせる根拠となるものではない。
オ 以上によれば,本件店舗から生じさせている悪臭は本件マンションの居住者等の受忍限度を超えるものというべきであり,被告がb社をして本件店舗において台湾料理の営業を行わせている行為は,区分所有者の共同の利益に反する行為であって,区分所有法57条の規定に基づく差止めの対象になるというべきである。
(3) 被告は,本件店舗を営んでいるのはb社であって,原告の請求は被告に不可能を強いるものであり,被告のみならずb社をも本件訴えの被告として訴訟を行うべきであると主張する。
しかし,b社は,被告との関係においても,本件規約等を遵守すべき本件賃貸借契約上の義務を負い(前提となる事実(3)エ(ウ)),賃貸人である被告は,b社がこれに違反した場合には本件賃貸借契約を無催告解除することもできる(同ア)ところ,上記認定のとおり,b社が被告にも本件管理組合にも無断で本件排気設備及び看板等を設置し,上記の義務に反していることは明らかである。そうすると,被告において,本件賃貸借契約を解除の上,b社に対して本件建物の明渡しを求める十分な法的根拠がある。加えて,本判決の効力(民訴法53条4項,46条所定の効力)がb社に及ぶことも考えれば,本件差止請求が被告に不可能を強いるものということはできない。
また,誰に対して訴訟を提起するかは原告の選択の問題にすぎず,原告がb社を共同被告に加えなかったからといって,被告が本件の責任を免れる理由となるものではない。
よって,被告のこの点の主張は採用することができない。
(4) ところで,原告は,被告に対し,本件建物内を台湾料理店として使用させることの差止めを求めているが,本件において問題とされているのは賃借人b社による台湾料理店の営業であり,それ以外の台湾料理店としての使用の当否が主張立証の対象となって争われているわけではないから,差止めの対象は主文第1項掲記の限度とするのが相当である。
3 争点(2)(被告の負うべき損害賠償額)について
(1) 看板等設置使用料について
ア 不法行為の成立について
区分所有建物の各共有者は,共用部分をその用法に従って使用することができるが(区分所有法13条),規約で定める所定の手続を経ることなく共用部分に看板等を設置する行為は,用法に従った使用の範囲を逸脱するものであり,規約違反にとどまらず,各区分所有者の有する共有持分を侵害するものとして不法行為をも構成するというべきである。そして,この不法行為を理由とする損害賠償は,集会の決議に基づいて,管理者が原告として訴訟上行使することができる(同法26条)。
ところで,上記看板等を設置している直接の主体はb社であるが,被告はb社に本件建物の使用収益を委ねている賃貸人であるから,上記看板等の間接占有者であり,b社とともに共同不法行為者としての責任を免れない。また,被告の主張するその余の事情(細則の改正を知らなかった,金額の根拠が分からなかったなど)も,不法行為の成立を妨げるものではない。
イ 看板,オーニング,冷凍庫及び排気ダクトの無断設置について
(ア) 看板掲示等共用部分使用に関する細則3条1項は,看板等の設置による共用部分の使用料を,使用する壁の面積1m2当たり1000円と定めている。これは,本来,区分所有者の共用に属する壁の面積に着目して使用料を定めたものにほかならないから,別紙説明図②のような壁に取り付けている看板については,特段の合意があれば別段,原則として独占的に利用している壁の部分の面積についてのみ使用料相当損害金が発生すると解するのが相当である。
(イ) 以上を前提に別紙「(有)bの看板等」記載①から⑪記載の各造作について検討すると,月額の使用料相当損害金は,以下のとおり,合計1万1069円となる(小数点以下切捨て)。
① 4.2m×0.75m×1000円=3150円
② 1.3m×0.2m×1000円=260円
③ 3.9m×0.6m×1000円=2340円
④ 0.4m×0.3m×1000円=120円
⑤ 1m×0.3m×1000円=300円
⑥ 0.15m×0.65m×1000円≒97円
⑦ 1.2m×0.9m×1000円=1080円
⑧ 1.45m×0.95m×1000円≒1337円
⑨ 0.4m×0.25m×1000円=100円
⑩ 0.45m×0.6m×1000円=270円
⑪ (0.65m×1.4m+1.7m×0.65m)×1000円=2015円
(ウ) 被告は,社会通念及び本件規約等の趣旨に鑑みれば開口部の使用は無料で許されるべきであると主張するが,本件規約等は共用部分の看板等設置による使用を一般に禁止しているところ,開口部についても共用部分と解される以上,被告のこの点の主張は採用することができない。
なお,証拠(乙14の1,2,証人A)によれば,102号室のテナント及び104号室・105号室のテナントは,店舗開口上部に設置している看板の使用料を支払っていないことが認められるが,これは,本件管理組合に申請を行ってその設置について許可を得た場合に特に認められている取扱いと認められるものであり(看板掲示等共用部分使用に関する細則1条~3条),不法行為による損害賠償の額を定める場合に斟酌することは相当でない。
ウ ごみ箱について
前記認定事実によれば,本件管理組合は,コンビニエンスストアのテナントに対しては,月額1500円でごみ箱の設置を許可しているところ,当該テナントと本件店舗のごみ箱等の設置による合計の占有面積は同程度であるから,同額をもって損害と認めるのが相当である。
エ 小括
以上のことからすると,本件店舗の看板等設置に伴う使用料相当損害金は,月額1万2569円(1万1069円+1500円)の限度で認めるのが相当であり,原告の主張する63万円の使用料相当損害金のうち,①訴状をもって請求した8か月分の使用料相当損害金は上記金額の8か月分である10万0552円の限度で,②訴え変更申立書をもって請求した13か月分の使用料相当損害金は上記金額の13か月分である16万3397円の限度で,理由がある。
(2) 訴訟追行費用について
ア 本件規約68条によれば,原告は,区分所有者である被告に対し,弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができるところ,原告ないし本件管理組合は,本件訴訟追行のため,臭気測定報告書等作成費用19万4400円(甲61,62)を支出し,弁護士費用86万4000円(甲60)については,未払のものも含まれてはいるものの,訴訟の終了時にはその結果にかかわらず支払うこととされており,その金額が不合理でもないことからすると,被告は,上記規約に基づき,合計105万8400円の支払義務を負うというべきである。
イ 原告は,このほかに,訴え提起手数料として,訴状貼付印紙代1万5000円及び訴えの変更申立書貼付印紙代7000円の計2万2000円を負担しているが(当裁判所に顕著な事実),原告の請求のうち,これまでに示した認容額に見合う訴額は292万2349円であり(差止請求160万円+看板等設置使用料10万0552円+16万3397円+弁護士費用等105万8400円),これに対応する訴え提起手数料額は2万円であるから,本件規約68条に基づいて原告が請求できる費用もこの限度になるというべきである。
ウ したがって,原告が被告に請求できる訴訟追行費用の額(小計)は107万8400円となる。
(3) 遅延損害金
遅延損害金は,①上記(1)エ①の10万0552円に対しては訴状送達の日である平成27年8月22日から,②同②の16万3397円に対しては訴えの変更申立書送達の日である平成28年8月5日から,③上記(2)の107万8400円に対しては訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成28年8月6日から,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,理由がある。なお,①,②は不法行為による損害賠償請求権であるが,③は債務不履行による損害賠償請求又は規約上の債務の履行請求であるから,③については,請求当日である平成28年8月5日の分の遅延損害金の請求は理由がない。
第4 結論
よって,原告の請求は,主文第1,2項の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第25部
(裁判長裁判官 宮坂昌利 裁判官 鈴木雅久 裁判官 川北功)
〈以下省略〉
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