あなたの街の「ポスターPR」貼る(掲示許可交渉)前に知っておきたい地域情報「掲示管理許可承諾」5

裁判年月日　平成29年 1月20日　裁判所名　東京地裁　裁判区分　判決
事件番号　平２７（ワ）２８４１７号
事件名　株主総会決議取消請求事件
裁判結果　一部認容　文献番号　2017WLJPCA01208005

要旨
◆被告会社の株主である原告が、平成２７年７月８日に開催された被告会社の株主総会（本件株主総会）における、計算書類の承認に係る本件決議１及び取締役の選任に係る本件決議２の取消しを求めた事案において、本件株主総会の招集手続につき、招集時期に関する定款違反及び附属明細書の備置に関する法令違反を認めて、本件決議１の取消事由を認定する一方、同決議の方法について貸借対照表や監査報告書に関する説明義務違反は認められないとし、また、本件各決議の方法につき、被告会社とその役員であった訴外Ｅとの別件訴訟等を互譲により終了させた本件和解は会社法１２０条１項に違反しないなどとして、本件和解により訴外Ｅから被告会社の株式の譲渡を受けた訴外会社の議決権行使は、株主でない者の議決権行使であるとはいえないと判断するとともに、訴外会社が本件株主総会において議決権を行使したことは違法な利益供与を受けた株主の議決権の行使に当たらないと判断したほか、裁量棄却を否定して、本件決議１の取消しを求める限度で請求を認容した事例

出典

参照条文
民法９０条
会社法１２０条
会社法２９６条１項
会社法３０９条
会社法３１４条
会社法４３８条２項
会社法４４２条１項１号
会社法８３１条
会社法８５３条１項

神奈川県小田原市〈以下省略〉
原告甲山Ｘ
同訴訟代理人弁護士宮島渉
金田正敏
川原朋子
同訴訟復代理人弁護士平井孝典
東京都中野区〈以下省略〉
被告Ｙ株式会社
同代表者監査役乙川Ａ
同訴訟代理人弁護士田邊勝己
片岡剛
尾山祐介
平田香織
岡山大輔
神前吾郎

主文

１　被告の平成２７年７月８日付けの株主総会における別紙決議目録記載１の決議を取り消す。
２　原告のその余の請求を棄却する。
３　訴訟費用はこれを２分し，それぞれを各自の負担とする。

事実及び理由

第１　請求
被告の平成２７年７月８日付けの株主総会における別紙決議目録記載１及び２の決議をいずれも取り消す。
第２　事案の概要
１　事案の概要
本件は，被告の株主である原告が，平成２７年７月８日に開催された被告の株主総会（以下「本件株主総会」という。）においてされた別紙決議目録記載１の株主総会決議（以下「本件決議１」という。）について，招集手続及び決議の方法が法令及び定款に違反するとともに著しく不公正であり，また，同記載２の株主総会決議（以下，「本件決議２」といい，本件決議１と合わせて「本件各決議」という。）について，決議の方法が法令及び定款に違反するとともに著しく不公正であり，本件各決議にはいずれも決議取消事由があると主張して，本件各決議の取消しを求める事案である。
２　前提事実（証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。書証番号は特記しない限り枝番を含む。）
(1) 　当事者等
ア　被告
被告は，昭和５３年１１月１日に亡甲山Ｂ（明治４３年○月○日生，昭和６０年１１月７日死亡。以下「亡Ｂ」という。）らにより設立された，一般乗用旅客自動車運送事業（タクシー業）等を目的とする株式会社であり，取締役会設置会社かつ監査役設置会社である（甲３の３・８，５の１２，弁論の全趣旨）。
イ　原告等
（ア）　亡Ｂの子である原告（昭和８年○月○日生）は，被告の発起人の一人であり，被告の株式１万１９６０株を保有する株主である。原告は，被告の設立時代表取締役であり，昭和６１年９月１１日代表取締役を，同年１２月１０日取締役を，それぞれ解任され，平成２２年４月２１日，再度，取締役及び代表取締役に就任し，平成２３年５月２７日，いずれも重任されたが，平成２４年７月２５日，代表取締役を解任され，平成２５年２月２１日，取締役を解任された。（甲３の３・８，５の１・２・１２，１６）
（イ）　Ｃ及びＤは，いずれも，原告の子であり，平成２３年５月２７日，被告の取締役に就任し，平成２５年２月２１日，被告の取締役を解任された（甲３の８，５の１）。
ウ　その他
（ア）　亡Ｂの子である甲山Ｅ（昭和１５年○月○日生。以下「Ｅ」という。）は，被告の発起人の一人である。Ｅは，遅くとも昭和６０年５月には被告の取締役に就任し，昭和６１年９月１１日，被告の代表取締役に就任し，昭和６２年６月３０日に取締役を退任した後，昭和６３年２月２５日に取締役及び代表取締役に就任し，その後，重任を繰り返したが，平成２２年４月２１日，代表取締役を退任するとともに，取締役を解任された。（甲３の３・８，５の３ないし１２，弁論の全趣旨）
（イ）　亡Ｂの子である乙川Ｆ（昭和１０年○月○日生）は，被告の発起人の一人であり，被告の株式５８００株を保有する株主である。Ｆは，平成１６年６月２３日，被告の取締役に就任し，その後，重任を繰り返し，平成２３年５月２７日に辞任した後，同日再度就任し，以後，重任している。（甲３の３・８，５の１ないし３，１６）
（ウ）　Ｆの配偶者である乙川Ｇは，被告の発起人の一人であり，被告の株式６１６０株を保有する株主である。Ｇは，昭和６１年９月１１日，代表取締役に就任し，昭和６２年６月３０日，代表取締役及び取締役を退任し，昭和６３年２月２５日，取締役及び代表取締役に就任し，その後，重任を繰り返し，平成２１年５月２９日，代表取締役を退任し，平成２２年４月２１日に再度代表取締役に就任し，平成２４年７月２５日に代表取締役を辞任したが，取締役の重任は繰り返している。（甲３の３・８，５，１６）
（エ）　乙川Ｈは，ＦとＧとの間の子であり，平成２２年４月に被告の従業員となり，平成２３年５月２７日，被告の取締役に就任し，平成２４年７月２５日，被告の代表取締役に就任し，平成２５年６月１９日，重任した（甲３の８，５の２，３８）。
（オ）　乙川Ｉは，ＦとＧとの間の子であり，平成２年５月２７日，被告の取締役に就任し，平成２５年６月１９日，重任した（甲３の８，５の１）。
（カ）　株式会社ａ（以下「ａ社」という。）は，平成２０年５月１５日に設立された，有価証券の保有並びに運用，投資，売買等を目的とする株式会社である。ａ社の代表取締役ＪとＨは，昭和６０年頃，Ｈの前勤務時先において知り合った。（甲１の４，３７）
(2) 　被告の定款の定め，役員，株主構成等
平成２４年５月２３日に変更された後の被告の定款（以下「本件定款」という。）には次の定めがある（甲３の５・６，弁論の全趣旨）。
（株式の譲渡の制限）
第７条　当会社の株式を譲渡するには，取締役会の承認を受けなければならない。
（株券の発行）
第９条　当会社の株式については，株券を発行する。
（招集）
第１８条　定時株主総会は，毎事業年度の終了後３か月以内に招集し，臨時株主総会は，必要がある場合にはいつでも招集することができる。
（招集手続）
第１９条　株主総会を招集するには，株主総会の日の１週間前までに，議決権を行使することができる株主に対して招集通知を発するものとする。
２　（略）
（決議の方法）
第２１条　株主総会の決議は，法令又は定款に別段の定めがある場合を除き，議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し，出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
２　会社法第３０９条第２項に定める決議は，議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し，出席した当該株主の議決権の３分の２以上に当たる多数をもって行う。
（事業年度）
第３８条　当会社の事業年度は，毎年４月１日から翌年３月３１日までとする。
(3)　本件各決議がされた株主総会に至る経緯
ア　Ｇは，平成２１年１１月，Ｅが，被告が過去に購入した海外の不動産に係る横領等の行為をしたとして，東京地方検察庁に対し，告発文を提出した。また，Ｇは，平成２２年１月２２日付けで，原告に対し，Ｅが被告の資金につき使途不明金を生じさせるなどしたため金融機関からの融資に支障を来しており，Ｅに対抗したいので協力を求めたい旨の連絡をした。（甲６，２５）
イ　平成２２年４月２１日，被告の臨時株主総会が開催され，Ｅを取締役から解任する旨の決議及び原告を取締役に選任する旨の決議がされ，原告は取締役への就任を承諾した（甲７）。
ウ　被告は，平成２３年７月２１日，Ｅに対し，金銭消費貸借契約に基づき元本及び利息として４９５１万９２４５円及びＥの財産毀損行為に係る注意義務違反の任務懈怠に基づく損害賠償として５１９１万８１４２円の合計１億０４１３万７３８７円並びにこれに対する遅延損害金を請求する訴え（当庁平成２３年（ワ）第２４０４２号貸金返還等請求事件。以下「別件訴訟」という。）を提起した。
その後，被告は，平成２４年９月７日までに，別件訴訟において，請求を，金銭消費貸借契約に基づく貸付金・仮払金元金合計３３３３万７２１５円と未払利息１６９８万１１７７円及びＥの財産毀損行為に係る注意義務違反の任務懈怠に基づく損害２４３２万０９２８円（合計７４６３万９３２０円）並びに遅延損害金の支払を求める内容へと変更した。　（甲１９の１・３，３２の８）
エ　Ｅは，平成２４年１月２３日，被告に対し，①前記イの解任が正当な理由がないものであるなどと主張して，会社法３３９条２項に基づき取締役の残存任期の報酬６５０万円及び被告の役員退職金規程により算出した退職金８２７９万５１５２円に相当する金額の損害賠償，②委任契約に基づき未払取締役報酬５０万円の支払，③被告が，Ｅが被告において背任，横領行為を重ねたことを理由に取締役を解任されたかのような事実を摘示した内容の掲示をしてＥの名誉を毀損し，これにより金銭に見積もって少なくとも１００万円を下ることのない精神的苦痛を受けたなどと主張して，不法行為に基づき同額の損害賠償及び謝罪広告の掲載等を求める反訴（当庁平成２４年（ワ）第１５９３号）を提起した。
Ｅは，その後，上記請求のうち名誉毀損に関する請求に係る反訴を取り下げ，平成２４年４月５日，被告に対し，民法７０９条，７２３条に基づき，被告によるＥの名誉を毀損する行為により受けた精神的苦痛に対する慰謝料１００万円の支払及び謝罪広告の掲載等を求める損害賠償等請求事件（当庁平成２４年（ワ）第９９１６号）を提起した。　（甲２２，３２の４・５，乙１ないし３）
オ　平成１６年９月１日から実施された被告の役員退職金規程２条１項は，被告に常勤する役員が退職したときは退職金を支給するが，役員が解任されたときは退職金は支給しない旨規定している。平成２４年５月２３日，被告の株主総会において，Ｅに対し退職慰労金を贈呈しない旨の決議がされた。（甲３の５，２４）
カ　平成２４年７月２３日，被告の取締役会が開催され，当時の被告の取締役である原告，Ｃ及びＤ（以下，三者を合わせて「原告ら」という。）並びに乙川Ｇ，乙川Ｈ，乙川Ｉ及び乙川Ｆ（以下，四者を合わせて「乙川ら」という。）のうち，乙川らを取締役から解任する旨の決議がされたが，同月２５日，当該決議が無効であることを前提に，改めて取締役会が開催され，原告を代表取締役から解任し，Ｈを代表取締役に選任する旨の決議がされ，Ｇは，同日，被告の代表取締役を辞任した。上記決議は，平成２５年２月４日，被告の取締役会において追認された。（甲５の２，３７，３８）
キ　Ｅは，平成２４年７月３１日，被告に対し，被告の株式１万１９６０株を保有する株主として，取締役の選解任を目的事項とする株主総会の招集請求をしたが，代表取締役Ｈは，被告を代表し，同年８月２日，Ｅが株主ではないことを理由に上記請求を拒んだ（甲２７，２８）。
ク　原告は，平成２４年１０月１７日当時，被告の株主総会招集許可の申立てをしており（当庁平成２４年（ヒ）第４５７号），同月２２日，取締役Ｇ及び同Ｈの解任の件を会議の目的とする株主総会を同年１２月３日までに招集することを許可する旨の決定がされた。Ｅは，同年１０月１７日，被告の株式１万１９６０株を保有すると主張して，Ｅを債権者，被告を債務者とし，被告において次回開催される株主総会において同株式に係る議決権を行使することができる旨の仮処分命令の申立て（当庁平成２４年（ヨ）第２０１００号。以下「Ｅ議決権行使許容仮処分申立事件」という。）をし，また，被告に対し，株主権確認請求事件（当庁平成２４年（ワ）第２９３５０号）を提起した。（甲３の１，２３，乙１ないし３）
ケ　Ｅは，平成２４年１１月５日，亡Ｋの相続人から，次回の被告の株主総会において，同人の保有していた被告の株式につき議決権行使が認められた場合，Ｈ及びＧを取締役から解任することに賛同する議決権行使をすることの同意を得，以後，Ｅ議決権行使許容仮処分申立事件において，上記亡Ｋの相続人を含めた和解を目指し，上記株主総会における定足数の確保に努める意向であった。当時，原告，Ｅ及びＬがそれぞれ保有すると主張する被告の株式に係る議決権数を合わせると，発行済株式総数のうち自己株式を除いた分の議決権数の５０．２パーセントに及ぶ状況であった。（甲１５，３７，弁論の全趣旨）
コ　Ｅ，被告及びＬ（以下「Ｌ」という。）は，平成２４年１１月１３日，Ｅ議決権行使許容仮処分申立事件において，Ｌを利害関係人として，Ｅと被告は，Ｅが被告の株式１万１９６０株を保有する株主であることを相互に確認すること（第１項），被告とＬは，Ｌが被告の株式２００株を保有する株主であることを相互に確認すること（第２項），被告は，被告において開催される株主総会において，第１項及び第２項の株式についてのＥ及びＬの議決権の行使を許さなければならないこと（第３項）等を内容とする裁判上の和解をした。
上記和解の結果，被告の発行済株式総数４万８０４０株の保有者の構成は，原告１万１９６０株，Ｇ・６１６０株，Ｆ・５８００株，亡Ｂの子甲山Ｍ（昭和１８年○月○日生，平成１７年１月２６日死亡）の配偶者である甲山Ｎ（以下「Ｎ」という。）１万１９６０株，Ｅ・１万１９６０株及びＬ・２００株となった。　（甲３の２，弁論の全趣旨）
サ　原告は，平成２４年１１月１７日頃，前記クの決定を踏まえ，被告の株主に対し，同年１２月３日に，Ｇ及びＨを取締役から解任する件を会議の目的とする株主総会（以下「１２月総会」という。）を招集する旨の通知を発した（乙１ないし３，弁論の全趣旨）。
シ　Ｅは，平成２４年１１月２１日までに，乙川ら及び原告の双方から，今後被告の経営を行いたいとの意向を聞いていたところ，同日，上記両者に対し，Ｅの解任は不当でありこれに関して適切な名誉回復措置を講じること及び別件訴訟等における被告のＥに対する請求につき放棄等をすることや，被告の退職金規程に基づくＥに対する退職金の支払について適切かつ具体的な提案をすること等についての考えを示すよう求め，その意見を聴いた上で原告と乙川らのどちらを支持するかを決め，どちらを支持するかを決定できない場合は１２月総会を欠席することも検討せざるを得ない旨を連絡した（甲２９）。
ス　原告らは，平成２４年１１月２６日，Ｅに対し，前記シの連絡に対する回答として，Ｅの名誉回復措置についてはＥから具体的な提案があれば合理的な範囲で対応すること，原告らは，別件訴訟における被告のＥに対する請求を維持できるだけの資料，情報を持ち合わせておらず，乙川らが上記請求を放棄等するのであれば原告らも同様の対応となること，Ｅに対する退職金については，被告の役員退職金規程を尊重し，株主総会決議を経て被告の財務状況も踏まえて支払いたいと考えているが，被告の財務状況を把握していないので具体的な額や支払時期を答えることはできないこと等を連絡した（甲３０，弁論の全趣旨）。
セ　原告は，平成２４年１１月２８日，Ｅに対し，本件株式を５９８万円程度で購入したい旨を伝えた。同額は，被告の株式の旧額面金額５００円の１万１９６０株分である。（乙３，弁論の全趣旨）
ソ　被告は，平成２４年１２月初頭に，ａ社に対し，本件株式を購入することを依頼した（甲３７）。
タ　平成２４年１２月３日午前１１時から１２月総会が開催され，議決権総数４万８０４０個，株主総数６名のうち，原告，Ｇ及びＦが出席したが，Ｅ，Ｎ及びＬが欠席したため，出席株主の議決権の数の合計が２万３９２０個に止まり，総株主の議決権の過半数を有する株主の出席がなく定足数が満たされなかったことから，流会となった（甲３の１）。
チ　被告は，平成２４年１２月３日，１２月総会の流会後，別件訴訟の係属裁判所に対し，同月４日に予定されていた別件訴訟の弁論準備手続期日の延期を申し入れ，Ｅは，期日外で和解中であることを理由に上記期日の変更に同意し，上記期日は同月１４日に延期された（甲３１，３２の１０）。
ツ　Ｌは，平成２４年１２月１４日，ａ社に対し，Ｌの保有する被告の株式２００株を譲渡した（乙２，弁論の全趣旨）。
テ　Ｅは，平成２４年１２月１４日頃，別件訴訟の係属裁判所及び被告に対し，被告がＥに対し慰謝料として５００万円，退職金として３９０２万円の支払義務があることを認めること（第１項），Ｅがその保有する被告の株式１万１９６０株をａ社に対して５９８万円で譲渡し，この代金債務全額について被告が連帯保証すること（第２項(1)），Ｅが被告に対し借受金債務及びその利息として６００８万１５５４円の支払義務があることを認めること（第６項），被告，Ｅ及び利害関係人Ｈは，同人の要望により，同人がＥの被告に対する上記支払義務を免責的に引き受けることを相互に確認し，ＨはＥに対する求償権を予め全部放棄すること（第７項）等を内容とする和解条項案を提出した。
被告及びＥは，平成２４年１２月１４日，別件訴訟の弁論準備手続期日において，和解について検討する旨陳述し，次回期日は同月１７日に指定された。
（甲２０，３２の１１）
ト　Ｅは，平成２４年１２月１７日，別件訴訟の弁論準備手続期日に先立ち，別件訴訟の係属裁判所及び被告に対し，被告がＥに対し慰謝料として５００万円，退職金として３４０２万円の支払義務があることを認めること（第１項）のほか，前記テの和解条項案の第２項(1)，第６項及び第７項を，それぞれ，第２項，第５項及び第６項と修正するなどした内容の和解条項案を提出した（甲２１）。
ナ　被告，Ｅ及びａ社は，平成２４年１２月１７日午前１１時から開かれた別件訴訟の弁論準備手続期日において，ａ社を利害関係人として，以下の内容の裁判上の和解（当事者の表記は本件における表記。以下「本件和解」という。）をした（甲４，１９）。
第１項　被告は，Ｅに対し，名誉毀損による慰謝料として５００万円，本件退職金として３４０２万円の支払義務があることを認める。
第２項　被告は，Ｅに対し，前項の金員のうち，名誉毀損による慰謝料全額及び本件退職金のうち２５００万円の合計３０００万円を本和解の席上で支払い，Ｅは，これを受領した。
第３項　被告は，Ｅに対し，平成２４年１２月２１日限り，第１項の本件退職金の残金９０２万円を，Ｅの代理人の事務所に持参して支払う。
第４項　Ｅは，ａ社に対し，Ｅが保有する原告株式１万１９６０株（以下「本件株式」という。）を５９８万円で売り渡し，ａ社はこれを買い受ける。
第５項　被告は，Ｅに対し，ａ社の前項の売買代金債務（以下「本件代金債務」という。）を連帯保証（以下「本件連帯保証」という。）する。
第６項　ａ社及び被告は，Ｅに対し，連帯して，平成２４年１２月２１日限り，Ｅから次項の交付を受けるのと引換えに，第４項の売買代金５９８万円をＥの代理人の事務所に持参して支払う。
第７項　Ｅは，ａ社に対し，前項の期日限り，ａ社及び被告から前項の支払を受けるのと引換えに，本件株式に係る株券を交付する。
第８項　被告は，Ｅに対し，平成２５年３月３１日限り，東京交通新聞広告欄に，別紙謝罪広告目録（省略。以下本項において同じ。）記載第１の謝罪文を同目録記載第２の条件で１回掲載する。
第９項　被告は，Ｅに対し，別紙動産目録（省略）記載の動産を，平成２５年１月３１日限り，引き渡すものとする。
第１０項　被告，Ｅ及びａ社は，本件に関する一切の事実を第三者に口外しないことを相互に約する。
第１１項　Ｅは，被告に対する当庁平成２４年（ワ）第９９１６号損害賠償等請求事件及び同庁平成２４年（ワ）第２９３５０号株主権確認請求事件の訴えを取り下げ，被告は，この取下げに同意する。
第１２項　被告及びＥは，それぞれ，その余の請求を放棄する。
第１３項　被告及びＥは，被告とＥとの間には，この和解条項に定めるもののほかに，何らの債権債務がないことを相互に確認する。
第１４項　訴訟費用及び和解費用は各自の負担とする。
ニ　被告は，ａ社からの借入を原資として，本件和解に基づき，平成２４年１２月２０日頃までに，Ｅに対し合計３９０２万円を支払い，また，平成２５年３月１８日，謝罪文の掲載をした。ａ社は，本件和解に基づき，平成２４年１２月２１日頃，Ｅに対し，本件代金債務に係る５９８万円を支払い，Ｅから本件株式の株券の交付を受けた。（甲１８の１，３７，乙１，２，弁論の全趣旨）
ヌ　被告は，平成２５年１月８日開催の取締役会において，本件和解におけるＥからａ社への被告の株式１万１９６０株（本件株式）の譲渡及び前記ツのＬからａ社への被告の株式２００株の譲渡について承認した。上記各譲渡を受けて，平成２５年１月９日時点で，被告の発行済株式総数４万８０４０株のうち，原告が１万１９６０株，Ｇが６１６０株，Ｆが５８００株，Ｎが１万１９６０株，ａ社が１万２１６０株を，それぞれ保有するところとなり，被告の株主名簿がその旨書き換えられた。（甲１６，乙２，弁論の全趣旨）
ネ　平成２５年２月２１日，被告の株主総会が開催され，本件和解をしたこと，Ｅに対し，退職金及び慰謝料の名目で解決金を支払ったことを追認する旨の決議のほか，同日当時の被告の取締役である原告ら及び乙川らのうち，原告らをいずれも解任する旨の決議がされた（甲５の１，３７，３８）。
ノ　被告は，平成２５年２月２５日，ｂ株式会社から４５００万円を借り入れ，ａ社に対し，前記ニのａ社からの借入の額３９０２万円に本件代金債務の金額と同額である５９８万円を加えた４５００万円を支払った（甲１８，乙２，弁論の全趣旨）。
ハ　東京地方裁判所は，平成２５年８月２３日，平成２５年（ワ）第７４０９号取締役会決議不存在確認等請求事件・同第１１４９８号共同訴訟参加事件について，被告の平成２３年６月２３日付け取締役会における自己株式２万４１２０株を償却する旨の決議は無効であること及び被告の発行済株式の総数が６万株であることを確認する旨の判決を言い渡した。上記判決の確定の結果，被告の株主構成は，発行済株式総数６万株のうち原告が１万１９６０株，Ｇが６１６０株，Ｆが５８００株，Ｎが１万１９６０株，ａ社が１万２１６０株及び被告が１万１９６０株（自己株式）を，それぞれ保有するところとなった。（甲１７，弁論の全趣旨）
ヒ　被告は，本件和解に基づきＥに対し３９０２万円を支払ったこと（前記ニ）を受け，第３５期（平成２４年４月１日から平成２５年３月３１日までの事業年度。以下同じ。）の損益計算書において，販売管理費及び一般管理費として退職金３４０２万円及び特別損失として和解金５００万円を計上する処理をした。
また，平成２１年３月３１日時点の被告の第３１期（平成２０年４月１日から平成２１年３月３１日までの事業年度。以下同じ。）の決算報告書において，売掛金（未収入金）の内訳書に，Ｅに対する未収利息２２３０万６９７３円が，仮払金（前渡金）の内訳書に，Ｅに対する仮払金１０５６万２３０９円が，貸付金及び受取利息の内訳書に，Ｅに対する残高２６８３万８２６６円が，それぞれ計上されていた。また，平成２２年３月３１日時点の被告の第３２期（平成２１年４月１日から平成２２年３月３１日までの事業年度。以下同じ。）決算報告書において，売掛金（未収入金）の内訳書に，Ｅに対する長期未収利息２２６８万０９７９円が，仮払金（前渡金）の内訳書に，Ｅに対する長期仮払金１０５６万２３０９円が，貸付金及び受取利息の内訳書に，Ｅに対する残高２６８３万８２６６円（合計６００８万１５５４円）が，それぞれ計上されていた。被告は，本件和解により，Ｅとの間に債権債務がないことが確認されたため，第３６期（平成２５年４月１日から平成２６年３月３１日までの事業年度。以下同じ。）の損益計算書において，Ｅに対する貸付金２６８３万８２６６円，長期仮払金１０５６万２３０９円，長期未収利息２３２１万７７４３円を償却する必要を生じ，これらを含む特別損失として和解金６１０１万８３１８円を計上する処理をした。　（甲９，１０，１３，１４の３，１８の１，３７）
フ（ア）　平成２６年６月２８日，被告の定時株主総会が開催され，株主である原告，Ｎ，Ｇ，Ｆ及びａ社が出席（ただしａ社はＧに議決権行使を委任する旨の委任状の提出による出席）した（甲１８）。
（イ）　この株主総会において，代表取締役であるＨは，原告が事前に提出した質問状記載の第３５期及び第３６期の各決算に関する質問について説明をした。被告の第３６期の事業報告書添付の平成２６年３月３１日付け貸借対照表及び第３５期の事業報告書添付の同日付け貸借対照表には，いずれも固定資産として保証金３８３０万円が計上されているところ，Ｈは，保証金３８３０万円の支払先，何に係る保証金であるか，多額の保証金を支払った理由について，甲山一族に支払うのれん代という名目になっていたこと，現経営陣は知らないものである旨の説明をし，同説明の後，しばらくの間，原告が複数の質問や指摘をし，これにＨが応答する状況が続いた。また，Ｈは，ｂ株式会社からの借入金４５００万円に係る質問に対し，平成２５年５月２５日に，運転資金として４５００万円を，利率１．２７パーセント，無担保，弁済月額７５万円の約定で借り入れている旨の説明をした。さらに，Ｈは，平成２４年４月１日から平成２５年３月３１日までの間に，ａ社が保有する被告の株式を購入するために，被告から５９８万円を借り入れていたところ，Ｈに対する貸付金５９８万円に係る質問に対し，当該貸付に係る借入はＨが株式購入を目的としてしたものであり，上記株主総会の開催日である平成２６年６月２８日時点では株式を購入していない旨の説明をした。（甲９，１０，１８，３７，弁論の全趣旨）
（ウ）　前記（イ）等の説明の後，Ｇ（ａ社の委任分を含む。）及びＦの賛成により，第３５期及び第３６期の各事業年度の計算書類を承認する旨及び乙川らを取締役に選任する旨の各株主総会決議がされたが，Ｅは，平成２６年９月２６日，これらの株主総会決議の取消を求める訴え（当庁平成２６年（ワ）第２５２９６号）を提起し，東京地方裁判所は，平成２７年１２月９日，上記各株主総会決議のうち第３５期及び第３６期の各事業年度の計算書類を承認する決議をいずれも取り消す旨の判決を言い渡した（甲１８，乙３，弁論の全趣旨）。
(4)　本件訴えの提起に至る経緯
ア　被告の代表取締役Ｈは，平成２７年６月１６日付けで，株主各位に対し，開催日時を同月２４日，会議の目的事項のうち，報告事項を被告第３７期（平成２６年４月１日から平成２７年３月３１日までの事業年度を指す。以下同じ。）の決算報告，議案を第１号議案「第３７期決算承認の件」，添付資料を，第３７期の事業報告書，貸借対照表，損益計算書，個別注記表，株主資本等変動計算書及び監査報告書等とする定時株主総会招集通知を発した。このうち，第３７期の事業報告書添付の平成２７年３月３１日付け貸借対照表には，固定資産として保証金３８３０万円（以下「本件保証金」という。）が計上されている。（甲２）
イ　被告は，平成２７年６月９日から，事業報告書及び監査報告書を閲覧に供しており，また，同年４月末日時点において，計算書類として，第３７期の決算報告書（貸借対照表，損益計算書，個別注記表，株主資本等変動計算書）及びその添付書類としての勘定科目内訳書のデータが存在し，同日以降内容の修正はなく，いつでも出力することができる状態にあった。なお，被告においては，上記勘定科目内訳書が計算書類及び事業報告に係る附属明細書に当たるものとして取り扱っていた。（甲１の１，弁論の全趣旨）
ウ　原告は，平成２７年６月２２日付けで，代理人を通じ，被告に対し，第３７期定時株主総会に対する質問状（以下「本件６月質問状」という。）を提出し，同月２４日開催予定の被告の定時株主総会において，被告に対し，本件保証金について，①いつ被告に返還される見込みであるか，②前年の第３６期定時株主総会の席上，Ｈが，保証金３８３０万円について，甲山一族に支払うのれん代であり，現経営陣は知らないものであると説明したが，その後，その実在性等について調査をしたか，調査をした場合は調査の内容及び結果，調査をしていない場合はその理由等につき，説明を求める旨を通知した（甲１の２）。
エ　平成２７年６月２４日，被告の株主総会（以下「本件６月総会」という。）が開催され，株主のうち，原告，Ｎ，Ｇ，Ｆ及びａ社が出席（ただしａ社はＧに議決権行使を委任する旨の委任状の提出による出席）し，役員のうち，代表取締役Ｈ，取締役Ｆが出席し，取締役Ｉ及び監査役Ａは欠席した。本件６月総会において議長となったＨは，開会宣言等及び定足数の報告に引き続き，招集に際して取締役の選任を議案として通知しておくべきところ招集通知に記載していなかったことから，本件６月総会の継続会を開催することとし，当該株主総会の前に招集通知を発送し，第３７期の決算の承認とともに次期取締役の選任を議案とする旨の説明をし，質疑応答の後，株主に対し，本件６月総会の継続会を平成２７年７月８日午後２時に被告本社社屋２階会議室で開催することにつき賛否を問うた。これに対し，Ｇ（ａ社の委任分を含む。）及びＦが賛成したことから，Ｈは，上記議案が承認可決された旨を宣言し，続行期日が同日午後２時に開催されること及び別途招集通知を発送することを述べ，本件６月総会を閉会する旨を宣言した。（甲１の１）
オ　原告は，平成２７年７月６日付けで，被告に対し，第３７期定時株主総会（継続会）に対する質問状（以下「本件７月質問状」という。）を提出し，同月８日開催予定の被告の定時株主総会の継続会において，被告に対し，本件６月質問状記載の各事項に加え，第３７期の監査報告書中の「監査役は（中略）取締役会その他重要な会議に出席し」との記載に関し，第３７期中，取締役会は何回開催され監査役Ａはそのうち何回出席したのか等につき説明を求める旨を通知した（甲１の９）。
カ（ア）　平成２７年７月８日，本件株主総会が開催され，株主である原告，Ｇ，Ｆ，Ｎ及びａ社が出席し（ただし，ａ社はＧに議決権行使を委任する旨の委任状の提出による出席であった。），役員のうち，代表取締役Ｈ，取締役Ｆが出席し，取締役Ｉ及び監査役Ａは欠席した（甲１の１，弁論の全趣旨）。
（イ）　本件株主総会において，Ｈは，開会宣言等，定足数の報告及び事業報告に引き続き，本件６月質問状及び本件７月質問状に対する回答をした。同回答の中で，Ｈは，第３７期附属明細書については，これを作成し，平成２７年４月末から決算書末尾に添付する形で決算書とともに備え置いている旨の回答をした。また，本件保証金については，Ｈが原告に対し，「これは逆にＸさんにご質問したいんですが，これはどうしてこういうのがあるんですか。」，「あなたが社長の時にこれをやったんですよね。」，「あなたが社長の時の決算書に載ってるんです。」，「（原告が乙川家ののれん代かを問うたのに対し）それに関しては答えられません。」等と発言したのに対し，原告が，「甲山家ののれん代だって，（中略）この前の期であなたが言ったのよ。」，「（原告が社長であった時の）その前からずっとあるんだよ。」，「どうやってその実在性を証明したの。」，「こっちが知らないことが載っかっている。」，「今度載っかっているっていうのは，これは乙川家ののれん代ですか。」等と発言するなどし，その後しばらくの間，主にＨと原告との間で複数のやりとりが交わされた。さらに，Ｈは，第３７期中の取締役会の開催回数及び監査役Ａの出席回数について，取締役会の開催回数は５，６回ぐらいであり，監査役Ａは１，２回欠席しただけだと思う旨の回答をした。（甲１の１・１０）
（ウ）　原告及びＮは，Ｈによる本件６月質問状及び本件７月質問状に対する回答に対し質問や指摘を続けたが，Ｈは，本件６月質問状及び本件７月質問状について，ひととおり被告としての回答をした後，第１号議案「第３７期決算承認の件」を付議して株主に賛否を問い，Ｇ（ａ社の委任分を含む。）及びＦの合計２万４１２０個が賛成して同議案を承認する旨の本件決議１がされた。
次いで，Ｈが，第２号議案「任期満了に伴う取締役Ｈ，同Ｇ，同Ｆ及び同Ｉの再選任の件」を付議して株主に賛否を問い，Ｇ（ａ社の委任分を含む。）及びＦの合計２万４１２０個が賛成して同議案を承認する旨の本件決議２がされた。なお，原告は，本件決議２に先立ち，原告，Ｎ，Ｃ及びＤを取締役及び監査役に選任することにつき審議を求める旨の株主提案をしたが，上記株主提案については，原告及びＮが賛成したものの，Ｇ（ａ社委任分を含む。）及びＦが反対し，反対多数により否決された。
（甲１の１・１０）
キ　Ｈは，本件株主総会の後，平成２７年１０月１６日までの間に，ａ社から本件株式を購入し，前記(3)フ（イ）の被告からの借入をその代金の支払に充てた（乙３，弁論の全趣旨）。
ク　原告は，平成２７年１０月８日，本件訴えを提起した（当裁判所に顕著な事実）。
３　争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 　本件株主総会の招集の手続に招集時期に関する定款違反又は附属明細書の備置に関する法令違反（本件決議１の取消事由）があるか（争点１）
（原告の主張）
ア　被告の第３７期の定時株主総会は，本件定款１８条所定の招集時期である平成２７年６月末を徒過して同年７月８日に開催されたから，招集手続に定款違反がある
イ　被告は，本件株主総会の開催に当たり，会社法４４２条１項所定の附属明細書の作成及び備え置きを怠っており，招集手続に法令違反がある。
ウ　このように，本件決議１については，本件株主総会の招集手続に法令及び定款に違反する瑕疵があるから，会社法８３１条１項１号に基づき取り消されるべきである。
（被告の主張）
ア　本件株主総会は，平成２７年６月２４日開催の本件６月総会においてされた，継続会を開催することについての決議に基づき開催されたものであるから，定時株主総会の招集時期を定める本件定款１８条に違反するものではない。
イ　会社法において作成及び備え置きを求められている附属明細書としては勘定科目内訳書で足り，被告は，本件株主総会の開催に当たり，勘定科目内訳書を作成し備え置いていたから，本件株主総会の招集手続は会社法４４２条１項に違反していない。
ウ　したがって，本件株主総会の招集手続には，原告の主張する定款又は法令の違反はない。
(2) 　本件決議１の方法について貸借対照表や監査報告書に関する説明義務違反があるか（争点２）
（原告の主張）
原告は，被告に対し，①被告の第３７期の貸借対照表における本件保証金の記載及び②同期の監査報告書の記載に関し監査役Ａの取締役会への出席回数について，本件株主総会に先立ち事前に質問状を提出した上で，本件株主総会の席上においても説明を求めた。しかし，被告の代表取締役であるＨは，上記①については回答を拒否した。また，上記②については，容易に調査することができる事項であるにもかかわらず，調査をすることなく曖昧な回答をするにとどまり，同回答によっては，監査役Ａの取締役会の出席率について，６０パーセントから８３パーセントまで幅が生じ判断することができない。これらは，会社法３１４条所定の取締役の説明義務の違反であり，本件決議１は，取締役の説明義務違反がある状況でされた法令違反があるから，会社法８３１条１項１号に基づき取り消されるべきである。
（被告の主張）
本件保証金は，Ｅが被告の代表取締役に在任時から計上されたものであり，本件株主総会時点の被告代表取締役であるＨにおいては上記計上の理由は調査をしても判明しないことから回答のしようがなかった。また，Ｈは，原告から質問を受けた監査役Ａの取締役会への出席回数について，具体的な数字を挙げて回答した。したがって，本件株主総会において，原告の主張する説明義務違反はない。
(3) 　本件各決議の方法に株主でない者による議決権行使に係る法令又は定款の違反があるか（争点３）
（原告の主張）
ア　被告は，本件和解により，①Ｅに対し，役員退職金として３４０２万円及び名誉毀損の慰謝料として５００万円の合計３９０２万円を支払い，②ａ社がＥに対して負う５９８万円の本件代金債務について本件連帯保証をし，③ａ社が負担するものとされた本件代金債務５９８万円を出捐し，さらに，④別件訴訟においてＥに対して請求していたＥに対する７４６３万９３２０円又は少なくとも６００８万１５５４円の債権を放棄した。これらは，いずれも，被告の計算における乙川らのＥに対する財産上の利益の供与に当たる。これに対し，本件和解により被告が受けた財産上の利益はない又は僅少であるから，上記財産上の利益の供与は，株主の権利の行使に関しされたものと推定される（会社法１２０条２項）。
イ　仮に会社法１２０条２項による推定がされないとしても，会社からみて好ましくないと判断される株主が議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的で，当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為は「株主の権利の行使に関し」利益を供与する行為というべきであるところ（最高裁平成１５年（受）第１１５４号同１８年４月１０日第二小法廷判決・民集６０巻４号１２７３頁。以下「平成１８年判決」という。），Ｅは，Ｇ及びＨの取締役解任を目指していたことから，乙川らが支配する被告からみて好ましくない株主であり，本件和解は，Ｅが１２月総会に欠席したことの見返りとして，Ｅが議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的で，被告が実質的に本件代金債務に係る５９８万円を負担し，Ｅから株式を譲り受けるための対価をａ社に供与する行為であるから，株主の権利の行使に関してされた違法な利益供与である（同条１項）。
ウ　このように，本件和解は，乙川らが，Ｅによる株主の権利の行使に関して，被告の計算において合計１億１９３２万９３２０万円又は少なくとも１億０５０８万１５５４円の財産上の利益を供与したものであるから，会社法１２０条１項に違反し，公序良俗に反し無効である（民法９０条）。また，本件和解は，被告及びＥが共同して，別件訴訟の目的である債権を害する目的をもって成立させたものであるから，会社法８５３条１項所定の再審事由に当たる瑕疵があり，無効である。したがって，ａ社による本件株式の取得は無効であるところ，被告は，本件各決議の際，ａ社を株主であるとしてその議決権の行使を許容したから，本件各決議は会社法３０９条及び本件定款２１条に違反する。
（被告の主張）
ア　本件和解の内容のうち，被告のＥに対する３４０２万円及び５００万円の支払については，Ｅの要求額から減額されていること，Ｅの解任決議の有効性には疑義がありＥが退職金を受領できる可能性が十分にあったことなどから，利益供与に該当せず，ａ社のＥに対する本件代金債務に係る５９８万円については，これを支払ったのは被告ではなくａ社であり，被告が実質的に負担したものではないから，Ｅに対する利益供与に該当せず，被告のＥに対する債権の放棄についても，当該債権は判決等によってその存在が確定的に認められたものではなく存否が不明であったから，その放棄はＥに対する利益供与に該当しない。このように，本件和解は，被告のＥに対する財産上の利益の供与に当たらない。
イ　仮に，本件和解が被告のＥに対する財産上の利益の供与に当たるとしても，本件和解によって，Ｅの被告に対する請求が認められる可能性のあった退職金や役員報酬に相当する約９０００万円の損害賠償債権を減少させ，Ｅの被告に対する株主権確認請求も取り下げられたことからすると，被告は十分に経済的利益を享受しており，被告は無償で上記利益供与をしたものではなく，また，被告の受けた利益が供与した利益に比し著しく少ないということもない。
ウ　本件和解は，被告が１２月総会においてＥに欠席してもらうことを目的としたものではなく，被告とＥとの間の紛争の抜本的解決を目的としたものであり，株主であるＥの権利行使を回避する目的もなく，公序良俗に反するものではない。また，本件和解に被告及びＥに権利を害する目的はないことから再審事由に当たる瑕疵はない。したがって，本件和解は無効ではなく，ａ社は本件株主総会において株主として議決権を行使したものである。
(4) 　本件各決議の方法に違法な利益供与を受けた株主の議決権行使に係る法令違反又は著しい不公正があるか（争点４）
（原告の主張）
ア　仮に本件和解が有効でありａ社が本件株式を取得したとしても，ａ社は，本件和解により，被告から無償で，本件連帯保証という財産上の利益の供与を受けた。また，本件連帯保証は，ａ社が本件和解により本件株式を保有するに至り被告の株主となった時まで継続していたから，被告が連帯保証による財産上の利益の供与をしている間，ａ社は被告の特定の株主（会社法１２０条２項）に当たるというべきである。このように，本件連帯保証は，被告が，特定の株主であるａ社に対し無償で財産上の利益を供与するものであるから，会社法１２０条２項により被告の権利の行使に関して行われたものと推定され，同条１項に違反する。
イ　本件和解は，被告の取締役である乙川らが，被告の経営支配権を維持確保するためにＥ及びａ社との間で行ったものであるところ，本件各決議に係る議案は，ａ社に対し無償で財産上の利益を供与した乙川らが決定したものであるから，ａ社が反対するはずはなく，ａ社は，被告から受けた違法な財産上の利益供与の影響のもとに，本件各決議において賛成の議決権を行使したものである。したがって，本件各決議は，その方法が法令に違反する又は著しく不公正なときに当たり，会社法８３１条１項１号により取り消されるべきである。
（被告の主張）
被告は，Ｅが本件和解においてａ社と初見であり，本件代金債務につき念のため被告の連帯保証を希望したことから，本件連帯保証をしたものである。本件連帯保証については，ａ社の本件代金債務の履行の確実性からして大した経済的な利益はなく，ａ社に対する違法な財産上の利益の供与ではない。ａ社は，本件和解の成立時に被告の株主ではなかったから，特定の株主（会社法１２０条２項）に当たらない。また，本件和解は，２年以上経過した後に開催された本件株主総会におけるａ社による議決権行使に影響を及ぼしたものではない。
(5) 　会社法８３１条２項による請求の棄却（裁量棄却）の可否（争点５）
（原告の主張）
ア　前記(1)の（原告の主張）のとおり，本件決議１については，それがされた本件株生総会の招集手続の法令違反及び定款違反という取消事由があるところ（会社法８３１条１項１号），被告は，本件株主総会に先立ち開催した本件６月総会において計算書類の承認をすることに何ら支障はなかったにもかかわらず，敢えて本件定款１８条に違反して本件株主総会を招集し本件決議１をしたのであるから，上記の定款違反は重大であり，また，勘定科目内訳書には，附属明細書の法定記載事項が網羅されていない上，当時，原告は，被告が第３５期及び第３６期の事業年度に係る定時株主総会の開催に当たっても附属明細書を作成しなかったことを理由としてこれらの期の計算書類を承認する旨の株主総会決議の取消しを求める訴訟を提起していたのであるから，附属明細書の作成・備置を怠った法令違反は重大である。したがって，本件決議１の取消請求の裁量棄却は許されない。
イ　前記(2)の（原告の主張）のとおり，本件決議１については，会社法３１４条所定の取締役の説明義務違反がある状況でされた決議の方法の法令違反という取消事由があるところ（会社法８３１条１項１号），本件保証金について原告が回答を求めた内容は，その実在性等を調査をしたかなどの事項であり，これは原告が被告の役員であった時期に認識している内容ではなく，監査役Ａの取締役会への出席回数については，容易に調査することができる事項であるにもかかわらず，Ｈは調査をすることなく曖昧な回答をしたものであるから，上記説明義務違反は重大である。したがって，本件決議１の取消請求の裁量棄却は許されない。
（被告の主張）
ア　仮に，本件株主総会の招集手続に招集時期に関する定款違反があり，又は附属明細書の備置に関する法令の違反があるとしても，本件株主総会の開催時期については，原告が継続会の開催に同意し，本件株主総会に出席しており，附属明細書の備え置きの不備については，軽微な瑕疵であることから，これらは重大な違反ではない。また，仮に，原告の主張する説明義務違反に係る本件決議１の方法の法令違反があるとしても，本件保証金については原告自身が代表取締役であった時期に認識している内容であるから，本件株主総会におけるＨの説明は，数ある質問の一つに回答しなかったにすぎず，また，監査役Ａの取締役会の出席回数については概数を回答したのであるから，上記違反は重大ではない。
イ　そして，本件決議１の当時，被告の株主であった原告（１万１９６０株保有），Ｎ（１万１９６０株保有），Ｆ（５８００株保有），Ｇ（６１６０株保有）及びａ社（１万２１６０株保有）のうち，ａ社は被告ないしＨと協力関係にあることから，ａ社，Ｇ及びＦ（合計２万４１２０株）は議案に対する賛否を同じくし，これにより発行済株式総数４万８０４０株の過半数を占めることから，前記アの違反が是正されたとしても決議の結果は変わらない。したがって，本件決議１の取消請求は裁量棄却されるべきである。
第３　当裁判所の判断
１　本件株主総会の招集の手続に招集時期に関する定款違反又は附属明細書の備置に関する法令違反があるか（争点１）について
(1) 　株主総会の招集時期に関する定款違反について
前提事実(4)カによれば，被告が定時株主総会として招集した本件株主総会は，被告の第３７期の事業年度が終了した平成２７年３月３１日から３か月以内に招集されたものではない。
被告は，本件株主総会が本件６月総会の継続会であると主張するが，被告において株主総会を招集するには，株主総会の日の１週間前までに，議決権を行使することができる株主に対して招集通知を発するものとされていることを踏まえると（会社法２９９条１項，本件定款第１９条），本件６月総会から２週間後に開催された本件株主総会は，本件６月総会と時間的な近接性を欠き，連続性を有するものではないから，本件６月総会の継続会とみることはできないというべきである。
そうすると，本件株主総会については，新たな株主総会としてその招集手続が適法であるとしても，計算書類の承認を内容とする本件決議１がされるべき株主総会としては（会社法４３８条２項，２９６条１項参照），その招集手続が本件定款１８条に違反し，会社法８３１条１項１号の決議取消事由があるものと認められる。
(2) 　附属明細書の備置に関する法令違反について
会社法４４２条１項が計算書類等の備置きを要求しているのは，株主等に対して企業内容を開示し，株主等による計算書類の閲覧等の実効性を確保するためであり，同条が定める備置き等の義務は，定時株主総会の招集手続の一環をなすものであると解されるところ，計算書類等に含まれる附属明細書については，会社計算規則１１７条において，有形固定資産及び無形固定資産の明細（同条１号），引当金の明細（同条２号），販売費及び一般管理費の明細（同条３号）のほか，株式会社の貸借対照表，損益計算書，株主資本等変動計算書及び個別注記表の内容を補足する重要な事項の表示が求められている（同条柱書）。これに対し，勘定科目内訳明細書は，法人税の確定申告における申告書の提出時（法人税法７４条３項）等において財務省令で定める書類（法人税法施行規則３５条３号）として添付することが求められるものであり，法令上，附属明細書とはその趣旨を異にするものである。
そして，証拠（甲１の６）によると，被告の作成した第３７期の勘定科目内訳書には，預貯金等，売掛金（未収入金），仮払金（前渡金），貸付金及び受取利息，棚卸資産（商品又は製品，半製品，仕掛品，原材料，貯蔵品），有価証券，固定資産（土地，土地の上に存する権利及び建物に限る。），買掛金（未払金・未払費用），仮受金（前受金・預り金），所得税預り金，借入金及び支払利子，役員報酬手当等及び人件費，地代家賃等，工業所有権等の使用料並びに雑役，雑損失等の各内訳書として，該当するものにつき記載がされていることが認められるところ，当該記載内容から，直ちに附属明細書について表示を求められている上記事項を了知し得るものではないから，被告が第３７期の勘定科目内訳書を作成し備え置いていたことをもって，附属明細書の備置義務を履行したものということはできないというべきである。
したがって，本件株主総会の招集手続は，会社法４４２条１項１号に定められた計算書類等の備置義務に違反し，会社法８３１条１項１号の決議取消事由があるものと認められる。
２　本件決議１の方法について貸借対照表や監査報告書に関する説明義務違反があるか（争点２）について
(1) 　前提事実(4)ウ，オ及びカ（イ）によれば，被告の取締役であるＨは，本件株主総会において，原告から事前に提出された本件６月質問状及び本件７月質問状に対して回答をしており，株主である原告から本件株主総会において上記各質問状記載の質問がされたものと取り扱った上で当該質問に対する説明をしたものと認められる。
そして，貸借対照表に関する説明については，証拠（甲１１ないし１３，１４の３）及び弁論の全趣旨を総合すると，被告の第３４期（平成２３年４月１日から平成２４年３月３１日までの事業年度。以下同じ。）の決算報告書の同日付け貸借対照表，第３３期（平成２２年４月１日から平成２３年３月３１日までの事業年度）の決算報告書の同日付け貸借対照表，第３２期の決算報告書の同日付け貸借対照表及び第３１期の決算報告書の同日付け貸借対照表において，いずれも営業保証金３８３０万円が計上されており，上記営業保証金３８３０万円は，被告の第３５期及び第３６期の事業報告書添付の貸借対照表に計上された保証金３８３０万円（前提事実(3)フ（イ））や本件保証金と同一のものであると認められるところ，原告は，平成２２年４月２１日から平成２５年２月２１日まで被告の取締役に就任し，そのうち平成２２年４月２１日から平成２４年７月２５日までは代表取締役に就任していたのであり（前提事実(1)イ（ア）），これと平成２６年６月２８日開催の定時株主総会及び本件株主総会における原告の質問並びにＨの説明等の内容（前提事実(3)フ（イ）及び(4)カ（イ））を踏まえると，原告は，遅くとも平成２２年４月２１日以降に被告の事業報告の承認をした際に（会社法４３６条３項参照），上記営業保証金ないし保証金（本件保証金）の計上やその経緯について認識しており，平成２６年６月２８日開催の定時株主総会においては，Ｈによる保証金３８００万円についての説明を踏まえて判断し，第３５期及び第３６期の事業年度の計算書類の承認に係る議案に反対の議決権を行使したものと認められる。
上記の事情と，本件保証金にかかるＨの説明後の同人及び原告の発言の内容（前提事実(4)カ（イ））とを総合すると，Ｈが本件株主総会においてした，本件保証金に係る原告の質問に対する説明（前提事実(4)カ（イ））が，株主が本件決議１に係る議案に対する議決権行使の前提として合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明でなかったとはいえない。
(2) 　また，監査報告書に関する説明については，Ｈは，監査役Ａの取締役会の出席回数につき，取締役会が５，６回開催され，監査役は１，２回欠席しただけであると思う旨の説明をしており（前提事実(4)カ（イ）），当該説明は，その内容を踏まえると，株主が本件決議１に係る議案に対する議決権行使の前提として合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明でなかったとはいえない。
(3) 　前記(1)及び(2)によれば，本件決議１の方法について貸借対照表や監査報告書に関する説明義務違反がある旨の原告の主張は理由がない。
３　本件各決議の方法に株主でない者による議決権行使に係る法令又は定款の違反があるか（争点３）について
(1) 　本件和解が会社法１２０条１項に違反するか否かについて
ア（ア）　本件和解の内容のうち，被告のＥに対する役員退職金としての３４０２万円の支払債務の負担については，Ｅは，被告に対し，取締役の解任について正当な理由がないと主張して，役員退職金相当額８９７９万５１５２円を含む損害の賠償等を請求する反訴を提起していたのであり（前提事実(3)エ），本件全証拠によっても，直ちに上記正当な理由が認められる可能性が高かったというべき事情は認められない。原告が主張する，Ｅが平成２２年４月の解任以降，平成２４年１月２３日の上記反訴の提起まで退職金相当額の損害賠償請求をしたことがなかったこと，ＧがＥの横領等があった旨の告発文を提出したこと（前提事実(3)ア），被告の役員退職金規程において役員が解任された場合には退職金を支給しないこととされており，Ｅに退職金を支給しない旨の株主総会決議がされたこと（前提事実(3)オ）等の諸事情をもって，上記損害賠償請求が認容される見込みが低かったとはいえない。
（イ）　また，別件訴訟におけるＥの被告に対する未払役員報酬５０万円及び慰謝料１００万円の請求（前提事実(3)エ）については，原告の主張に係る別件訴訟等の進行状況や本件和解における上記各請求の取扱い等を踏まえたとしても，認容される見込みが低かったとはいえない。
（ウ）　さらに，本件和解の内容のうち，被告のａ社に対する本件連帯保証については，ａ社は本件和解６項に定められた本件代金債務の支払期日頃にＥに対し本件株式の売買代金を支払っており（前提事実(3)ニ），Ｅは本件連帯保証により被告から本件代金債務に係る債権を回収したのではなく，本件全証拠によっても，被告が本件株式の売買代金５９８万円を出捐したとは認められない。原告が主張する，本件代金債務の金額５９８万円に本件和解ないし本件和解に至る前の和解条項案において被告がＥに対して支払うものとされた退職金及び慰謝料の額を合計すると切りのよい５０００万円（前提事実(3)テ参照）又は４５００万円（前提事実(3)ト参照）となることや，ａ社が本件株式の売買代金の減額を求めた形跡がないこと等の諸事情は，上記認定を左右するものではない。
（エ）　他方で，被告は，別件訴訟において，Ｅに対し，金銭消費貸借契約に基づく貸付金・仮払金及び未収利息並びに会社法４２３条１項に基づく損害賠償請求権として合計７４６３万９３２０円を請求し（前提事実(3)ウ），Ｅはこれを争っていたのであって，本件全証拠によっても，本件和解の時点において被告のＥに対する上記各債権が存在したというべき事情は認められない。また，Ｅが被告の代表取締役であった頃から，被告の決算書類に長期未収利息，長期仮払金及び貸付金合計６００８万１５５４円が計上されていたこと（前提事実(1)ウ（ア），(3)ヒ），別件訴訟において，和解条項案に，Ｅが同額の支払義務を認める旨の条項が含まれていたこと（前提事実(3)テ及びト）等の本件和解に至る経緯，本件和解の後に被告において上記の額を含む和解金６１０１万８３１８円を計上する経理処理がされたこと（前提事実(3)ヒ）等の原告の主張に係る諸事情を踏まえても，本件和解の時点において，被告がＥに対し少なくとも貸付金等６００８万１５５４円の債権を有していたと認めることもできない。
（オ）　前記（ア）ないし（エ）で説示したところに加え，Ｅは，少なくとも昭和６３年２月２５日から平成２２年４月２１日までの間，被告の役員を務めていたのであり，仮にＥに対する役員退職金が支給される場合の金額は相当な高額なものとなる可能性があったこと，本件和解の第１項において，被告がＥに対し名誉毀損による慰謝料としてＥの請求額１００万円を超えて支払義務を認めた５００万円については，本件和解がＥ及び被告間の複数の請求に係る紛争を一括して解決するものであり（前提事実(3)ナ），被告は上記５００万円を和解金として経理処理をするなど（前提事実(3)ヒ），必ずしも名誉毀損に係る慰謝料としての性格のみを有するものとはいえないことをも踏まえると，Ｅ及び被告の互譲により別件訴訟等を終了させた本件和解において，被告がＥに対し，無償で財産上の利益を供与した又は本件和解により被告の受けた利益がＥの受けた財産上の利益に比して著しく少ないということはできず，本件和解について会社法１２０条２項の推定が及ぶものではないというべきである。
イ（ア）　ところで，前提事実(3)ケ及びコのとおり，Ｅは，平成２４年１１月５日には，１２月総会においてＨ及びＧを取締役から解任する旨の議案に賛同する意思を有しており，同月１３日，被告の株式１万１９６０株を保有する株主であること等を確認する裁判上の和解が成立し（前提事実(3)コ），１２月総会においてＧ及びＨを取締役から解任する旨の議案に賛成しないことにより乙川らが被告の経営権を有し続けることを可能にするか又は上記議案に賛成し原告らが被告の経営権を取得することを可能にするかを決することのできる立場に至ったものであるが，原告は，乙川らが，Ｅに対し，１２月総会において上記議案に賛成する議決権を行使しないことを条件に多額の財産上の利益の供与することを提案し，Ｅは，乙川ら及び原告らを競わせて自らが取得することのできる財産上の利益の吊り上げを図り，乙川らが上記提案を確約したことから１２月総会を欠席して議決権を行使せず，乙川らは，その見返りとして本件和解を成立させたなどと主張する。
しかし，原告の上記主張に係る事実経緯を認めるに足りる的確な証拠はないことに加えて，前記アで説示した，本件和解については，被告がＥに対し無償で財産上の利益を供与した又は本件和解により被告の受けた利益がＥの受けた財産上の利益に比して著しく少ないということはできないこと，前提事実(3)テ，ト及びナによれば，Ｅ及び被告は，本件和解成立の直前まで和解の内容の検討をしていたことが認められることをも合わせ考慮すると，本件和解が，Ｅが１２月総会を欠席し議決権を行使しなかったことの見返りとしてされたものであるとは認められない。
（イ）　また，原告は，被告が本件代金債務に係る５９８万円を出捐したと主張するが，Ｅに対して上記５９８万円を支払ったのはａ社であり（前提事実(3)ニ），本件全証拠によっても，上記５９８万円を被告が負担したとは認められない。
この点について，被告は，ａ社から受けた融資を原資として，平成２４年１２月２０日頃までに，本件和解において確認したＥに対する支払義務に係る３９０２万円を支払い，平成２５年５月２５日，ｂ株式会社から４５００万円を借り入れ，ａ社に対し，上記３９０２万円に本件代金債務と同額の５９８万円を加えた４５００万円を支払い，Ｈは，平成２４年４月１日から平成２５年３月３１日までの間に，被告から５９８万円を借り入れ，平成２７年７月８日以降同年１０月１６日までの間に，ａ社から本件株式を購入し上記借入に係る金員をその代金の支払に充てており（前提事実(3)ニ，ノ，フ（イ）及び(4)キ），本件代金債務に係る５９８万円は，最終的には，Ｈが被告から借り入れた５９８万円をもって負担するに至ったものとみることができるところ，いずれにせよ，被告が本件代金債務に係る５９８万円を実質的に負担したものということはできない。
ウ　前記ア及びイによれば，本件和解が会社法１２０条１項に違反するということもできない。
(2) 　本件和解に係る会社法８５３条１項所定の再審事由の有無について
別件訴訟のうち，被告がＥに対し財産毀損行為等による任務懈怠に基づく損害５１９１万８１４２円の賠償を求める訴え（前提事実(3)ウ）は，責任追及等の訴え（会社法８４７条１項参照）に該当するものの，前記(1)アにおいて説示したところによれば，本件和解が被告の権利を害するものということはできず，本件全証拠によっても，原告と被告が共謀して上記訴えの目的である被告の権利を害する目的をもって本件和解をしたとは認められない。
(3) 　小括
前記(1)及び(2)によれば，ａ社は本件和解によりＥから本件株式の譲渡を受け，被告の取締役会において当該譲渡について承認及び株主名簿の書換を経ているから（前提事実(3)ヌ），本件各決議におけるａ社の議決権行使は株主でない者の議決権行使であるということはできない。したがって，本件各決議の方法に株主でない者による議決権行使に係る法令又は定款の違反がある旨の原告の主張は理由がない。
４　本件各決議の方法に違法な利益供与を受けた株主の議決権行使に係る法令違反又は著しい不公正があるか（争点４）について
(1) 　本件定款９条（前提事実(2)）によれば，被告は株券発行会社であるところ，本件和解の時点では，未だＬからａ社に対する被告の株式２００株の譲渡については被告の取締役会による承認がされておらず（前提事実(3)ツ，ナ及びヌ），ａ社は，被告の株主であることを会社に対して対抗することができなかったものであり（会社法１３０条２項参照），また，ａ社は平成２４年１２月２１日頃に本件株式の売買代金を支払い（前提事実(3)ニ），当該支払の時点で本件連帯保証に係る被告の保証債務が消滅することから，原告の，本件和解が特定の株主であるａ社に対する被告の利益供与であり会社法１２０条２項の適用がある旨の主張は採用することができない。
(2) 　また，前記３(1)イ（ア）において説示したところに加え，株式の譲渡は株主の地位の移転にすぎないから，それ自体は株主の権利の行使に関するものということはできず（平成１８年判決参照），ａ社がＥへ支払うべき本件株式の売買代金の支払債務についての被告の本件連帯保証が，直ちに被告のａ社に対する株主の権利行使に関する利益供与に当たるということはできないこと，本件和解の成立が本件株主総会の２年６か月以上も前であり，本件株主総会の時点において本件代金債務の支払が完了していたことをも合わせ考慮すると，本件連帯保証が，ａ社の本件株主総会における議決権行使に影響を与えたということはできず，Ｅの本件株式に係る議決権行使を回避する目的でａ社に利益を供与する行為であるということもできない。
(3) 　前記(1)及び(2)によれば，ａ社が本件株主総会において議決権を行使したことは，違法な利益供与を受けた株主の議決権の行使に当たらない。したがって，本件各決議の方法に違法な利益供与を受けた株主の議決権行使に係る法令違反又は著しい不公正がある旨の原告の主張は理由がない。
５　会社法８３１条２項による請求の棄却（裁量棄却）の可否（争点５）について
(1) 　前記１(1)において説示したとおり，本件決議１には，本件株主総会の招集手続が定款に違反する決議取消事由が存在する（会社法８３１条１項１号参照）。そして，前提事実(4)エによれば，本件６月総会においては，後に本件株主総会においてされた本件決議２に係る議案について招集通知に記載されていなかったことを理由に，当該議案を記載した本件株主総会の招集通知の発送からやり直すこととされ，これに伴い第３７期の決算承認に係る議案についても本件株主総会において決議をすることとされたものと認められるところ，本件全証拠によっても，本件６月総会において第３７期の決算承認の件について決議をすることができなかったことその他の上記違反の事実が重大でないというべき事情は認められない
被告は，本件６月総会及び本件株主総会に係る検査役選任申立事件の審問期日において継続会として本件株主総会を開催することにつき原告の同意を得ていたと主張するが，前提事実(4)エ，証拠（甲１の１）及び弁論の全趣旨によれば，平成２７年６月２２日の上記事件の審問期日において，被告の代理人の説明として本件６月総会は続行期日を指定してすぐに終了する予定であることが述べられたこと，本件６月総会において，議長であるＨが本件株主総会を開催する旨の説明をした後，本件６月総会の継続会の開催について決議に付し，原告及びＮはこれに賛成しなかったことが認められるのに対し，本件全証拠によっても，原告が上記被告の主張に係る同意をした事実は認められない。
(2) 　また，前記１(2)において説示したとおり，本件株主総会の招集手続には会社法４４２条１項１号所定の計算書類等の備置義務に違反した法令違反があるところ，本件全証拠によっても，上記違反の事実が重大でないというべき事情は認められない。
(3) 　前記(1)及び(2)によれば，前記各招集手続の法令違反及び定款違反の事実が本件決議１に影響を及ぼさないか否かに関わらず，本件決議１の取消請求を会社法８３１条２項により棄却することはできない。
第４　結論
以上の次第で，原告の請求は，本件決議１の取消しを求める限度で理由があるからこれを認容し，その余は理由がないからこれを棄却することとして，主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第８部
（裁判官　沖本尚紀）

別紙
決議目録
１　被告の平成２６年４月１日から平成２７年３月３１日までの第３７期事業年度の計算書類を承認する旨の決議
２　乙川Ｈ，乙川Ｇ，乙川Ｆ及び乙川Ｉを取締役に選任する旨の決議

*******

売れる！ビジネスPR

勝てる！政治選挙PR

★お問い合わせ★

■どぶ板選挙ドットウィン！にしかできない「地獄のどぶ板PR代行」の強み
(１)「地獄のドブ板」に特化した広報PR支援会社ですので、一番しんどい部分のみご相談ください
 (２)候補(予定)者の認知度拡大に向けて、貼る場所(箇所)に差をつける！どぶ板PRマーケティング
 (３)どぶ板実績No.1 ポスタリストの豊富な経験と実績で、候補(予定)者の選挙区をPRで完全包囲
 (４)政治活動に必須となる地域密着型どぶ板PRで候補(予定)者と有権者を繋ぐご挨拶回り握手代行
 (５)選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立する
 (６)ご挨拶回り！ビラ手渡し！ポスター貼り(掲示交渉)！街頭演説！で、どぶ板の相乗効果を狙え

■どぶ板選挙PR代行の流れ
■どぶ板OJTとは？
■どぶ板同行OJT内容(座学研修および実地特訓)
■どぶ板OJT当日配布資料
■どぶ板の学校オンライン
■ドブ板選挙にはじまり、どぶ板選挙で終わる！

以下の「ポスターPR党」画像をクリックし、全国における弊社の掲示交渉実績をご覧いただけます。
【実績一覧】地域ポスター広告PRのための【ポスターPR党】新規掲示許可交渉代行

ポスターPR党許可貼り(1)	ポスターPR党許可貼り(2)	ポスターPR党許可貼り(3)

ポスターPR党許可貼り(4)	ポスターPR党許可貼り(5)	ポスターPR党許可貼り(6)

ポスターPR党許可貼り(7)	ポスターPR党許可貼り(8)	ポスターPR党許可貼り(9)

ポスターPR党許可貼り(10)	ポスターPR党許可貼り(11)	ポスターPR党許可貼り(12)

ポスターPR党許可貼り(13)	ポスターPR党許可貼り(14)	ポスターPR党許可貼り(15)

ポスターPR党許可貼り(16)	ポスターPR党許可貼り(17)	ポスターPR党許可貼り(18)

ポスターPR党許可貼り(19)	ポスターPR党許可貼り(20)	ポスターPR党許可貼り(21)

ポスターPR党許可貼り(22)	ポスターPR党許可貼り(23)	ポスターPR党許可貼り(24)

ポスターPR党許可貼り(25)	ポスターPR党許可貼り(26)	ポスターPR党許可貼り(27)

ポスターPR党許可貼り(28)	ポスターPR党許可貼り(29)	ポスターPR党許可貼り(30)

以下の「政治選挙ポスター」画像をクリックし、全国選挙区における弊社の掲示交渉実績をご覧ください。
【実績一覧】選挙立候補予定者のための【政治選挙ポスター】新規掲示許可交渉代行

政治選挙ポスター掲示許可交渉(1)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(2)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(3)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(4)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(5)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(6)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(7)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(8)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(9)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(10)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(11)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(12)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(13)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(14)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(15)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(16)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(17)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(18)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(19)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(20)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(21)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(22)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(23)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(24)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(25)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(26)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(27)

政治選挙ポスター掲示許可交渉(28)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(29)	政治選挙ポスター掲示許可交渉(30)

メディア関係者様向けのプレスリリース記事 


ポスタリング	掲示交渉実績	お問い合わせ

無料ワッポン	どぶ板MENU	握手挨拶代行

よくある質問	各種資料一覧	お申込み流れ

ポスターPR党	どぶ板OJT	弁士相手探し

党員獲得代行	選挙妨害対策	立札看板交渉

①新規開拓PR	②他党多党PR	③一戸建てPR

⑧政策ビラPR	ポスタリング	④集合住宅PR

⑦意外注目PR	⑥公的公共PR	⑤独占単独PR

【よくある質問 Q&A 一覧】
■街頭ポスター貼り(掲示交渉)代行について
Q&A【1】街頭ポスター貼付(掲示交渉代行)サービスとはどのようなものですか？
Q&A【2】どのくらいの期間で何枚くらいの街頭ポスター貼付ができるのですか？
Q&A【3】街頭ポスターを貼る際は先方(許可承諾者)に許可をいただいて貼るのですか？
Q&A【4】ポスターの①貼付依頼～②貼付開始～③貼付完了等の流れについて教えていただけますか？
Q&A【5】ポスターの料金は１枚いくらで貼ってくれるのですか？
Q&A【6】ポスターの貼付エリアや貼り付け枚数等は指定できますか？
Q&A【7】ポスター貼付後のメンテナンス(貼り替え・剥がし)も依頼できますか？
Q&A【8】最低何枚から街頭ポスター貼りを依頼できますか？
Q&A【9】ポスター貼り替え期間の指定はできますか？貼りっぱなしではないですか？
Q&A【10】街頭ポスターの貼付交渉(新規掲示)の実績や事例はありますか？

■政治活動における広報支援について
Q&A【11】「ドブ板選挙プランナー」とはどのようなお仕事ですか？
Q&A【12】「ポスタリング」とはどのようなサービスですか？
Q&A【13】政治活動等の特殊な業界についてのポスター掲示交渉は難しいですか？
Q&A【14】政治活動用の街頭ポスター(二連|三連)貼りをお願いしたいのですが、特定政党の支援は可能ですか？
Q&A【15】政治活動におけるポスターについて公職選挙法や政治資金規正法等の知識はありますか？
Q&A【16】街頭で無料の「ウィン！ワッポン」をよく見かけますが、これで選挙の勝率が上がりますか？
Q&A【17】二連ポスターや三連ポスター製作前に「弁士の相手」のご提案もしてくれますか？
Q&A【18】ポスター「掲示責任者代行」とはどのようなものでしょうか？
Q&A【19】選挙妨害やその他クレーム対応等の代行も可能でしょうか？
Q&A【20】政治活動(選挙運動)における広報支援プランはどのようなものがありますか？

■営業専門会社による広報PR支援について
Q&A【21】飛び込み訪問、戸別訪問、挨拶回り代行等、ポスター貼り以外でもお願いできますか？
Q&A【22】飲食店や実店舗等の店内やトイレ等にポスターを貼ったり、ビジネスカード設置、チラシ配布等は可能ですか？
Q&A【23】全国どこでもポスター貼りが可能なのですか？

■ご検討中の方々に
Q&A【24】お問い合わせについて
Q&A【25】資料をダウンロード
Q&A【26】ノウハウ・テクニックを大公開！

■ご依頼(お申し込み)の前に
Q&A【27】お申し込みの流れ
Q&A【28】ご用意いただきたいもの

■ご依頼(ご契約)の後に
Q&A【29】進捗報告について
Q&A【30】お友達ご紹介キャンペーンについて

【ポスター【制作前の】候補予定者様】のメニューです。

「政治活動用ポスターのデザイン」は、こちらです。
公職選挙法規定の法的審査(レギュレーションチェック)対応済みの、個人ポスター、２連ポスター、３連ポスター等のデザインを制作！

「弁士相手探しマッチング」は、こちらです。
「探して、交渉して、お隣りへ！」理想の有名人や著名人の弁士相手を探して、地域有権者に対して認知度拡大の相乗効果を狙う！

「ポスターの掲示責任者代行」は、こちらです。
【全国対応】ポスターを掲示した選挙区からのクレーム対応・妨害等の「総合窓口」として、ポスター掲示責任者の代行をいたします。

【ポスター【制作後の】候補予定者様】のメニューです。

政治活動期間における「どぶ板専門！ポスター貼り(掲示交渉)代行」は、こちらです。

【稼働の流れ】
①新規ご挨拶回り|戸別訪問代行|握手代行
選挙区(指定エリア)の有権者(民家・飲食店・その他施設)に対して、候補予定者に代わって選挙ドットウィン！が直接ご訪問致します。

②名刺|ビラ|リーフレット等の手渡し配布
候補予定者と有権者を繋ぐため、名刺・ビラ・政策レポート・討議資料・リーフレットなど活動報告資料の直接手渡し配布を致します。

③留守宅|候補者PR資料ポスティング投函
ご訪問先がご不在の場合には、配布物を郵便受け等にポスティング投函致します。(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率！)

④政治活動ポスター貼り(新規掲示交渉！
【完全成果報酬】地獄のドブ板活動に必須となる、政治活動用ポスター貼り(新規掲示交渉代行！)(貼れた分だけの枚数課金となります)

⑤掲示(貼付)後のフォロー|クレーム対応
ポスター掲示(貼付)完了後における掲示許可承諾者へ、フォローやクレーム対応等のストレスな部分は選挙ドットウィン！が致します。