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裁判年月日 令和 2年 3月25日 裁判所名 鳥取地裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(行ウ)1号
事件名 公金支出金返還等請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2020WLJPCA03256014
事案の概要
◇本件町の住民である原告らが、同町の執行機関である被告に対し、本件町と特定非営利活動法人である本件機構との間の各種事業委託契約に関し、本件町は本件機構に対して不当利得返還請求権を有しているのにその行使を怠っていると主張して、本件機構に対し、地方自治法(平29法54改正前)242条の2第1項4号に基づき、利得金の一部等を支払うよう請求するよう求め、本件町は、本件機構理事であった者に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているのにその行使を怠っていると主張して、同号に基づき、損害金の一部等を支払うよう請求するよう求め、本件町は、同町長であった者に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているのにその行使を怠っていると主張して、同号に基づき、損害金の一部等を支払うよう請求するよう求め、また、本件町職員であった者は、各種事業委託契約の一部について検査権者であったが、故意又は重大な過失により検査義務を怠ったと主張して、同号に基づき、同人に対し、損害金の一部等の賠償命令をするよう求めた事案(住民訴訟)
出典
裁判年月日 令和 2年 3月25日 裁判所名 鳥取地裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(行ウ)1号
事件名 公金支出金返還等請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2020WLJPCA03256014
鳥取県西伯郡〈以下省略〉
原告 X1
鳥取県西伯郡〈以下省略〉
原告 X2
鳥取県西伯郡〈以下省略〉
原告 X3(以下上記3名を併せて「原告ら」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士 高橋敬幸
鳥取県西伯郡〈以下省略〉
被告 大山町長 Y
同訴訟代理人弁護士 川中修一
同 野口浩一
同 渡邉大智
同 中永淳也
主文
1 「事実及び理由」中の第1の1記載の訴えのうち,Bに対する請求をすることを被告に求める部分を却下する。
2 被告は,特定非営利活動法人a機構に対し,2357万7286円及びうち415万8800円に対する平成22年4月1日から,うち890万0280円に対する平成24年4月1日から,うち595万4100円に対する平成25年4月1日から,うち358万7200円に対する平成26年4月1日から,うち43万9000円に対する平成27年4月1日から,うち47万9696円に対する平成28年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
3 被告は,Cに対し,2322万2686円及びうち415万8800円に対する平成22年4月1日から,うち890万0280円に対する平成24年4月1日から,うち595万4100円に対する平成25年4月1日から,うち358万7200円に対する平成26年4月1日から,うち43万9000円に対する平成27年4月1日から,うち12万5096円に対する平成28年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
4 被告は,Cに対し,2314万1390円及びうち415万8800円に対する平成22年4月1日から,うち890万0280円に対する平成24年4月1日から,うち595万4100円に対する平成25年4月1日から,うち358万7200円に対する平成26年4月1日から,うち43万9000円に対する平成27年4月1日から,うち4万3800円に対する平成28年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員の賠償の命令をせよ。
5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,特定非営利活動法人a機構,C及びBに対し,連帯して,2813万9246円及び内金457万3000円に対する平成22年4月1日から,内金78万6340円に対する平成23年4月1日から,内金953万9800円に対する平成24年4月1日から,内金681万6000円に対する平成25年4月1日から,内金369万2000円に対する平成26年4月1日から,内金80万7000円に対する平成27年4月1日から,内金186万6896円に対する平成28年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
2 被告は,Cに対し,2642万9950円及び内金457万3000円に対する平成22年4月1日から,内金78万6340円に対する平成23年4月1日から,内金953万9800円に対する平成24年4月1日から,内金681万6000円に対する平成25年4月1日から,内金369万2000円に対する平成26年4月1日から,内金80万7000円に対する平成27年4月1日から,内金15万7600円に対する平成28年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員の賠償の命令をせよ。
第2 事案の概要
1 本件は,鳥取県西伯郡大山町(以下「大山町」という。)の住民である原告らが,大山町の執行機関である被告に対し,大山町と特定非営利活動法人a機構(以下「a機構」という。)との間の各種事業委託契約に関し,①大山町は,a機構に対し,不当利得返還請求権を有しているのにその行使を怠っていると主張して,a機構に対し,地方自治法(平成29年法律第54号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,利得金の一部及びこれに対する各事業年度の翌年度の4月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金もしくは利息を支払うよう請求するよう求め(以下「請求①」という。),②大山町は,a機構理事であったC(以下「C」という。)に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているのにその行使を怠っていると主張して,同号に基づき,損害金の一部及びこれに対する各事業年度の翌年度の4月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求するよう求め(以下「請求②」という。),③大山町は,大山町長であったB(以下「B」という。)に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているのにその行使を怠っていると主張して,同号に基づき,損害金の一部及びこれに対する各事業年度の翌年度の4月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求するよう求め(以下「請求③」といい,請求①ないし③につき,原告らは,大山町の同一の損害に関するもので,連帯して支払うべき関係にあるものと主張している。),④大山町職員であったCは,各種事業委託契約の一部について検査権者であったが,故意又は重大な過失により検査義務を怠ったと主張して,同号に基づき,同人に対し,損害金の一部及びこれに対する各事業年度の翌年度の4月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の賠償命令をするよう求める(以下「請求④」という。)住民訴訟である。
2 関係法令の定め
(1) 大山町財務規則(乙1)
同規則61条1項は,支出命令者が,支出をしようとするときは,関係書類に基づいて,法令等の規定又は契約及び予算の目的に違反していないか(同1号),必要な関係証拠書類を備えているか(同9号)などの事項を調査し,それが適正であると認めたときは,支出命令を発しなければならない旨定める。
同規則63条は,支出命令者が支出命令を発する際に,所定の書類を添付及び提示しなければならない旨定めているところ,委託料の支出命令については,検収調書又は検査調書の添付が求められている(別表第4の13)。
同規則72条1項は,概算払できる経費を定めており,その1つとして,委託費のうち概算払を必要とする経費を挙げている(ただし,平成27年7月9日規則第9号により追加されたものであり,同日より前は,委託費は概算払可能な経費とされていなかった。)。また,同条2項は,概算払を受けた者は,当該概算払を受けた金額が確定したときは,直ちにこれを精算し,電子計算組織で精算の業務を処理し,当該概算払に係る支出命令者に提出しなければならない旨を定め,同規則73条は,概算払は,特別の事情がある場合を除き,同規則72条の精算完了後でなければ当該概算払を受けた者に対する次回の概算払をすることはできない旨定める。
同規則136条は,契約担当者(町長又はその委任を受けて契約を締結する者をいう。同規則113条1項)又は契約担当者から検査を命ぜられた職員は,工事又は製造の請負契約についてその工事又は給付を完了したときは,契約書,仕様書,設計書その他関係書類に基づき,当該工事又は給付の内容について検査をしなければならない旨(同条1項),契約担当者は,物件の買入れその他の契約について,その給付が完了したときは,契約書その他の関係書類に基づき,当該給付の内容及び数量について検収を行わなければならない旨(同条2項)及び契約担当者は,同条1項又は同条2項の検査又は検収をしたときは,検査調書又は検収調書を作成しなければならず,その工事又は給付等の内容が契約に適合しないものであるときは,その旨及びその措置について意見を付さなければならない旨(同条4項)定める。
(2) 大山町事務決裁規則(乙9)
同規則4条は,課長共通の専決事項として,主管工事及び事業の完成検査に関することを定めている(別表第1の2(25))。
3 前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる。
(1) 当事者等
ア 原告らは,大山町の住民である。
イ 被告は,大山町の町長である。
ウ a機構は,観光情報の提供等に関する事業を行い,大山及び中海周辺地域の活性化に寄与することを目的として,平成17年6月10日に設立された,特定非営利活動法人である。
エ B(B)は,平成21年4月20日の町長選挙で当選し,大山町長の職に就き,以降平成29年4月まで大山町長を務めた。
オ C(C)は,元大山町職員である一方,平成17年6月10日の設立時からa機構の理事であり,平成24年3月31日まではa機構の代表権を有していた(甲2)。
(2) a機構と大山町との間の業務委託契約
a機構は,別紙1のとおり,平成18年度から大山町との間で複数の事業に係る業務委託契約を締結した(21大山,22大山,23大山,24大山,25大山,26大山,27エコ,27大山,27賛歌及び27同名に係る各業務委託契約を併せて「本件各委託契約」ということがある。)。
(3) 大山町による検査及び委託料の支払等
大山町は,別紙2のとおり,a機構に対し,委託料を支払った。また,大山町の検査担当者(別紙2の「検査担当者」欄に記載した者をいう。)は,本件各委託契約について検査を行い,合格であった旨の検査調書を作成した(ただし,別紙2のとおり,一部の契約については検査調書が存在しない。)。
なお,a機構は,平成28年11月,大山町から求められ,本件各委託契約に係る事業への支出に関する証憑書類として領収書等を提出しているところ,提出された領収書等に記載された金額を本件各委託契約ごとに整理して集計した額は別紙2のとおりである(甲1)。
(4) a機構の業務に関する報道等
b新聞は,平成28年11月2日,大山町の課長級の男性職員が,理事をしているNPO法人に無断で,町の発注責任者を務める企画の受託契約を結んでいたとする記事を新聞に掲載した(甲8)。
大山町は,同年12月27日,a機構の大山町からの受託契約に関し,事務の執行監査を行った大山町監査委員が作成した「事務執行監査の結果について」と題する文書(以下「本件事務執行監査結果」という。甲1)を公表し,同月28日,c新聞が当該監査結果に関する記事を掲載した。
(5) 本件監査請求
原告らは,平成29年2月20日,大山町監査委員に対し,大山町の幹部職員兼a機構の理事が,平成21年度以降a機構に無断で大山町と契約を締結し,領収書の裏付けのない支出や事業内容と関係のない支出を繰り返したなどと主張して,住民監査請求をした(以下「本件監査請求」という。甲5)。大山町監査委員は,平成29年4月20日,平成28年3月11日に締結した27エコの変更契約に基づき,大山町が同年4月25日に支払った111万2400円は,委託事業がなされていないにもかかわらず支払われているとして,大山町長に対し,111万2400円の返還請求をするよう勧告したが,原告らのその余の請求を棄却した(甲6)。
(6) 本件住民訴訟
原告らは,平成29年5月18日,本件住民訴訟を提起した。
第3 争点及び争点に関する当事者の主張
1 本案前の争点
(1) 住民監査請求前置(争点1)
(被告の主張)
原告らは,本件住民訴訟において,被告に対し,Cの検査義務違反を原因として同人に対する賠償命令をするよう求め,Bの監督義務違反を原因として同人に対する不法行為に基づく損害賠償請求をするよう求めているが,原告らは,本件監査請求において,前記各請求を住民監査の対象としていなかった。したがって,前記各訴えは,適法な住民監査請求を経たものということはできず,不適法である。
(原告らの主張)
ア 本件住民訴訟において原告らが対象としている行為又は怠る事実は,本件監査請求の対象と同一性がある。少なくとも,本件監査請求の対象行為から派生し又はそれに引き続いて行われることが当然に予測されるものであるから,住民監査の対象とされていたということができ,本件住民訴訟は,適法な住民監査請求を経て提起されたものである。
イ 以下,詳述する。
(ア) Bの監督義務違反を原因とする同人に対する損害賠償請求について
原告らは,本件監査請求において,大山町長がa機構又は同理事Cに対する不法行為に基づく損害賠償請求等を怠る事実によって「大山町が被っている損害を補填するために必要な措置」としてa機構又は同理事Cに対する損害賠償請求等を行うことやa機構又は当該理事との間の協議「など」を行うよう求めているところ,「など」の記載には,町長など他に町に損害を与えた者に対する請求などが含まれていると解されるから,監査請求前置の要件を満たす。
(イ) Cの検査義務違反を原因とする損害賠償命令について
原告らは,本件監査請求において,「領収書の裏付けのない支出や事業内容と関係のない不適正な支出」を違法とし,それに対する措置を求めているから,当該賠償命令を求める請求については住民監査の対象とされていたということができ,監査請求前置の要件を満たす。
(2) 住民監査請求の期間制限(争点2)
(被告の主張)
ア 本件各委託契約は,平成21年7月2日から平成27年12月8日にかけて締結され,平成21年7月15日から平成28年2月5日にかけて各契約に基づく支出がなされている。本件監査請求は,平成29年2月20日に申し立てられたものであり,申立ての時点で各契約締結及び各支出から1年が経過している。
イ 不法行為に基づく損害賠償請求及び不当利得に基づく利得返還請求をするよう求める原告らの訴えは,いずれも,財務会計行為が違法であること又は違法無効であることによって発生する実体法上の請求権の行使を求めるものであるから,いわゆる不真正怠る事実に係る請求であり,法242条2項の期間制限に服する。
ウ 前記の各契約締結及び各支出の財務会計行為は,公開の議事で審議され,当該行為に係る決算書等の資料が一般の閲覧に供され,あるいは情報公開条例等によりいつでも閲覧できる状態に置かれていたのであるから,原告らが住民監査請求をすることにつき客観的な障害があったとはいえず,各財務会計行為から1年を経過して本件監査請求をしたことに「正当な理由」(同項ただし書)があるとはいえない。
また,この点を措いても,平成28年11月2日には,議会での指摘を受け,本件各委託契約に関する問題が相当具体的に新聞報道されており,その時点で,原告ら住民が相当な注意をもって調査を尽くせば客観的に見て監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができたといえ,本件監査請求は,相当な期間を超えてなされたものである。
エ したがって,原告らの訴えは,住民監査請求の期間制限に反するものであって,不適法である。
(原告らの主張)
ア 本件監査請求の申立ての時点で本件各委託契約締結及び各支出から1年が経過していることは認める。
イ 不法行為に基づく損害賠償請求及び不当利得に基づく利得返還請求をするよう求める原告らの訴えは,いずれも,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かを判断することなく判断することができるものであるから,いわゆる真正怠る事実に係る請求であり,法242条2項の期間制限に服しない。
ウ 本件各委託契約は,一般住民には知らされることなく行われていたものであり,各支出についても,原告ら住民が相当な注意をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることはできなかった。
本件で問題とされている不正行為が一般住民に知られるようになったのは,平成28年12月27日に大山町監査委員による本件事務執行監査結果(同月22日付け)が公表された時である。原告らは,その2か月以内の平成29年2月20日に本件監査請求を行っているから,前記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしており,法242条2項ただし書にいう「正当な理由」があったと認められる。
エ したがって,原告らの訴えは,住民監査請求の期間制限を遵守したものであって,適法である。
2 本案の争点
(1) a機構による不当利得(争点3)[請求①関係]
(原告らの主張)
ア 本件各委託契約は,a機構理事であったCが,a機構に無断で,a機構名義で締結したものである。
平成24年4月1日以降,a機構の代表権を有していたのは理事長のみであるから,同日以降に代表権を有しないCにより締結された契約は無効である。被告は,a機構が,平成28年12月14日,大山町に対し,本件各委託契約を追認する旨の意思表示をした旨主張するが,無効な行為が追認により遡及的に有効となることはないから,平成24年4月1日以降に締結された契約に基づく支出は全て無効であり,法律上の原因を欠く。
ただし,原告らは,大山町が領収書の提出を受けていないにもかかわらず支出した額(契約金額と領収書合計額との差額)に委託事業と無関係に支出された額を加えた額の限度で不当利得の返還を請求するよう求める。
イ 大山町とa機構が締結した本件各委託契約の契約書には,ほぼ共通して,①a機構は,業務の処理に要した費用の明細を報告し,大山町の承認を受けなければならない旨の条項,②a機構は,a機構固有の支出とは区別して,委託された業務の処理のために要した費用の支出状況を経理しなければならない旨の条項,③a機構は,業務の処理に要した費用の支出に関し,その証憑書類を保存し,大山町への報告に際して提出しなければならない旨の条項,④大山町は,いつでもa機構の経理の内容及び証憑書類を調査できる旨の条項が存在する。
これらの条項によれば,a機構は,業務の処理に要した費用と合致する「明細」及び「証憑書類」を大山町に報告,提出することが求められている。また,本件各委託契約の契約条項には,個別の証憑書類の存在を前提としない間接経費を認める旨の条項は存在していない。さらに,委託金額と業務のために要した費用(証憑書類による裏付けのあるもの)との間に差額が発生することが予想されれば,変更契約を締結することにより,整合を図るべきである。
したがって,本件各委託契約について,大山町は,証憑書類(領収書)の存在しない支出を行ってはならなかったのであり,a機構は,委託金額と業務のために要した費用(証憑書類による裏付けのあるもの)との差額を大山町から受領する権利を有しない。
すなわち,大山町がa機構に対して支払った委託料のうち,以下の(ア)ないし(ケ)の金額(合計2896万8000円)については領収書等の証憑書類がないため,a機構が委託料を受領する法律上の原因がなく,大山町は,a機構に対し,不当利得返還請求権を有する。
(ア) 21大山につき支払った457万3000円
(イ) 22大山につき支払った70万2000円
(ウ) 23大山につき支払った950万5000円
(エ) 24大山につき支払った681万6000円
(オ) 25大山につき支払った369万2000円
(カ) 26大山につき支払った78万2000円
(キ) 27エコにつき支払った127万円
(ク) 27大山につき支払った112万4000円
(ケ) 27同名につき支払った50万4000円
ウ 加えて,大山町がa機構に対して支払った委託料のうち,以下述べるものについては,委託事業と無関係であり,a機構が委託料を受領する法律上の原因がないから,大山町は,a機構に対し,不当利得返還請求権を有する。
(ア) a機構は,22大山について,見積書にない食料費8万4340円を支出しているが,これは委託事業と関係がない。
(イ) a機構は,23大山について,冷蔵庫代3万4800円を支出している。冷蔵庫については,見積書に記載がなく,実際には大山支所で使用されており,委託事業と関係がないから,委託料として支払われるべきものではない。
(ウ) a機構は,26大山について,後援会に2万5000円を支出しているが,これは,a機構とは別の団体の費用をa機構が代わりに支払ったものであり,委託事業と関係がない。
(エ) a機構は,27大山について,書籍代8万1296円を支出しているが,これは,過去の経緯から,宮城県にある政治団体からやむを得ずに書籍を購入した際のものであり,委託事業と関係がない。
エ 以上に対し,平成28年3月11日付け業務委託変更契約書に基づき支出された111万2400円については,既にa機構から大山町に返還されているから,27エコに関する利得金から111万2400円を差し引いたものを,請求することを求める額とする。ただし,既に返還済みの111万2400円について,支出された日である平成28年4月25日から返還された日である平成29年5月11日までの年5分の割合による損害金5万8210円が発生していることから,同金額についても併せて請求すべきである。
(被告の主張)
ア 大山町からa機構に対して支払われた各委託料は,いずれも,本件各委託契約に基づき支払われたものである。
a機構自身が,本件各委託契約は適正に成立しているとしているのであり(甲3),本件各委託契約が契約締結権限を欠く者によって締結された無効なものということはできない。仮に,Cが,代表権がないにもかかわらず,a機構を代表して本件各委託契約を締結していた場合は,無権代理(無権代表)行為となるが,a機構の代表者であったD理事長(以下「D理事長」という。)は,平成28年12月14日付け書面により,大山町に対し,本件各委託契約を追認する旨の意思表示をしており,本件各委託契約はそれぞれ締結時に遡って効力が生じている。
イ 契約金額と領収書の合計額との差額に関する主張について
(ア) a機構は,本件各委託契約について,受託業務の処理のためにした費用の明細を報告する際に,受託業務の処理のためにした費用の支出に関する証憑書類を大山町に提出していた。また,a機構は,平成28年11月,再度の提出を求められ,改めて証憑書類を提出したが,時の経過により散逸し,報告時には提出された証憑書類全てを提出することはできなかった可能性があり,平成28年11月に提出された証憑書類が報告時に提出された証憑書類と同じであるという前提をとることはできない。
(イ) さらに,大山町とa機構の間の本件各委託契約においては,a機構が証憑書類の保存をすることとされているが,a機構が委託料を受領するに当たり,委託金額と同額の領収書の提出を必要としているわけではない。
加えて,委託料と領収書の合計額との差額について精算することを定めた条項も存しないから,本件各委託契約に基づく支出は,いわゆる精算払を前提とするものではない。受託者が事業を遂行するに当たっては,個別に領収書が発行される直接の経費のみならず,個別の領収書の発行を前提としない間接経費が発生するのが通常であり,本件各委託契約の委託金額とa機構から提出された領収書の合計額が一致する必要があるとは解されず,両者の間に差額が生じたとしても,直ちに精算の必要が生じるわけではない。
(ウ) したがって,本件各委託契約に基づく支出に法律上の原因がないとはいえない。
ウ 事業と関係のない支出の主張について
22大山における食料費8万4340円の支出,23大山における冷蔵庫代3万4800円の支出,27大山における書籍代8万1296円の支出と各委託事業との関連性は不知(ただし,一見して関連性が強いものとは考えられない。)。26大山における後援会宛2万5000円の支出と委託事業との関連性は不知(ただし,「音響人件費」として支出されており(乙14の1,2),「E」氏が大山及び大山町にゆかりのある歌手であることから(乙15),大山をPRする事業である26大山の事業との関連性がないとは断言できない。)。
(2) a機構理事Cによる不法行為(争点4)[請求②]
(原告らの主張)
ア a機構理事Cは,大山町との本件各委託契約により定められた各業務を行っていない又は各業務を行ったことを証する領収書等がないにもかかわらず,委託された業務を実施したとし,委託業務と無関係に支出した金員を委託された業務に関して支出したものとして,大山町に業務委託料を請求した。
イ a機構理事Cは,大山町の検査を担当するのが大山町職員の身分を有する自身であることから,適正な検査が行われず,請求した業務委託料が支払われることを知って前記アの行為を行った。
ウ a機構理事Cの前記アの行為がなければ,大山町はa機構に業務委託料を支払わなかったから,大山町がa機構に対して支払った業務委託料全額が損害となる(ただし,請求することを求める額は,争点3で主張したとおりであり,大山町が領収書の提出を受けていないにもかかわらず支出した額(契約金額と領収書合計額との差額),目的外に支出された額,27エコに関する返還済みの111万2400円についての損害金である。)。
(被告の主張)
原告らの主張ア及びイの事実については,不知。ただし,委託料の請求主体は,法人であるa機構であるから,Cが請求を行ったという原告らの主張は争う。
ウは,以下のとおり争う。
ア 本件各委託契約においては,a機構が証憑書類の保存をすることとされているが,a機構が委託料を受領するに当たり,委託金額と同額の領収書の提出を必要としているわけではない。
また,委託料と領収書の合計額との差額について精算することを定めた条項も存しないから,本件各委託契約に基づく支出は,いわゆる精算払いを前提とするものではない。受託者が事業を遂行するに当たっては,個別に領収書が発行される直接の経費のみならず,個別の領収書の発行を前提としない間接経費が発生するのが通常であり,本件各委託契約の委託金額とa機構から提出された領収書の合計額が一致する必要があるとは解されず,両者の間に差額が生じたとしても,直ちに精算の必要が生じるわけではない。
したがって,a機構理事Cの行為により,原告らが主張する損害が発生したとはいえない。
イ 争点3の被告の主張イで述べたとおり,平成28年11月に提出された証憑書類が報告時に提出された証憑書類と同様でない可能性があり,本件各委託契約に係る報告時に提出された証憑書類に記載された金額の合計額と支払われた委託料の合計額との間に差額があったかは不明であるといわざるを得ないから,損害が発生したとは認められない。
また,本件各委託契約に基づく業務について,a機構が本件各委託契約の内容に沿った業務を実施しているのであれば,大山町は本件各委託契約による利益を得ており,契約目的を達成していることになる。このような観点からも大山町に損害が生じているということはできない。
ウ さらに,本件各委託契約に基づき行われた委託料の支払のうち,a機構による報告及び大山町の検査が行われるよりも前に,契約条項に基づく前払い(部分払,概算払)がなされたものについては,それらの支出につき,Cの行為と因果関係がある損害とはいえない。
(3) 大山町長であったBによる不法行為(争点5)[請求③関係]
(原告らの主張)
ア 町長は,財務会計行為の本来的権限者であり,職員が違法な支出負担行為,支出命令を行う場合には,これを阻止する指揮監督上の義務がある。Bは,職員Cによる検査の懈怠,領収書の存在しない業務への委託料の支出などを阻止することができておらず,職員を指揮監督すべき義務を果たしていなかった。
イ 各当事者が独立してそれぞれの立場から意思決定をするという契約原則や条理に照らし,町の契約担当者が契約の相手方の担当者を兼ねることは許されない。加えて,町長は,当該町の条例,予算その他の議会に基づく事務及び法令,規則その他の規程に基づく町の事務を自らの判断と責任において,誠実に管理及び執行する義務を負う。そうすると,Bは,町長として,町と利益が相反する立場にある職員に契約へ関与させてはならない義務があったが,大山町の契約の相手方であるa機構の理事を務めていたCに契約に関与させ,かつ,契約の履行の検査を担当させ,同義務に違反した。
ウ Bは,町長として,町と利益が相反する立場にある職員を十分に監視,監督すべき義務があったが,Cの監視,監督を怠り,同義務に違反した。
エ その結果,大山町は,争点4の原告らの主張ウと同じ損害を被った。
(被告の主張)
ア Bが,平成21年から平成28年頃にかけて,Cのa機構における地位や本件各委託契約の締結及び履行の状況等に関する事情をどの程度把握していたかは知らない。
イ 権限の委任を受けた職員の行為に違法があっても,直ちに首長が民法上の賠償責任を負うものではなく,当該首長について独立に帰責事由が認められない限り,当該首長が賠償責任を負うことはない。
ウ 原告らの主張エは争う(争点4の被告の主張と同じである。)。
(4) 大山町職員であったCの法243条の2第1項後段に基づく損害賠償責任(争点6)[請求④関係]
(原告らの主張)
ア Cが法令の規定に違反して法234条の2第1項の検査を怠ったこと
大山町財務規則136条によれば,領収書などの「関係書類」に基づき検査を行わなければならない。本件各委託契約では,a機構に対し,委託業務の処理に要した費用の明細の報告及び当該費用の支出に関する領収書などの証憑書類の保存並びに報告の際における提出が義務付けられているのであるから,検査担当者であったCは,検査の際,領収書などの関係書類が不足している場合には,契約に適合していないとの意見を付さなければならない義務がある。しかし,Cは,関係書類がないにもかかわらず,検査を行い,契約に適合していないとの意見を付すこともしなかった。
イ Cが検査を怠ったことが故意又は重大な過失によるものであること
Cが,検査担当者であるにもかかわらず,業務に関する領収書がない業務について検査に合格させ,契約に適合していないとの意見を付していないということ自体から,故意又は重過失が推認される。そもそもCは,a機構の理事でありながら大山町の担当職員として契約を行い,自ら検査も担当しており,Cが町に損害を与えることを認識していたことが十分推認される。
また,事後のCの発言からもCが領収書などの関係書類による検査を行う意思がなかった(故意により検査を行わなかった)ことが認められる。
ウ 損害及び因果関係
大山町財務規則136条1項,同条4項,61条1項1号及び9号並びに63条によれば,検査の結果,業務が契約に適合していないと判断されれば,大山町は,契約で定められた委託料を支払わない。すなわち,Cがa機構による委託業務に関する検査に合格させたことにより,大山町はa機構に委託料を支払ったということができ,大山町がa機構に支払った全額が前記アと因果関係のある損害となる(ただし,賠償の命令を求める額は,Cが検査を担当した契約(本件各委託契約のうち27大山,27賛歌,27同名を除く各事業に係る業務委託契約)についての,大山町が領収書の提出を受けていないにもかかわらず支出した額(契約金額と領収書合計額との差額)に目的外に支出された額を加えた額とする。さらに,27エコに関する返還済みの111万2400円について,支出された日である平成28年4月25日から返還された日である平成29年5月11日までの年5分の割合による遅延損害金5万8210円が発生していることから,同金額も併せて賠償を命じるべきである。)。
(被告の主張)
原告らの主張アのうち,大山町財務規則136条2項により,契約担当者が契約書その他の関係書類に基づいて検査(検収)を行わなければならないこと,本件各委託契約において,委託業務の処理に要した費用の明細の報告並びに当該費用に関する証憑書類の保存及び報告の際における提出が義務付けられていることは認める。Cが主管課の課長として契約担当者を務めていた契約のうち,21大山,22大山,23大山,24大山及び27エコについては完成検査調書が作成されており,そのうち22大山,23大山及び24大山については仕様書どおり合格とされており,27エコについては適正に業務が遂行されており合格とされている。また,25大山及び26大山については,Cが検査を実施したことを裏付ける資料はない。
本件各委託契約における契約担当者の検査義務の内容は,給付の完了に当たって,契約書その他の関係書類(委託業務完了報告書等の費用の明細及び領収書等の証憑書類など)に照らし,当該給付の内容が契約目的及び内容に合致したものであるか否かを判断し,合致していれば適合する旨の意見を付した検査(検収)調書を作成し,合致していなければ適合しない旨の意見を付した検査(検収)調書を作成するというものである。もっとも,これらの適合の判断に際して,領収書の積算額が契約金額と一致することが求められているということはできず,領収書の積算額が契約金額と一致しないことから直ちに適合しない旨の意見を付さなければならないというわけではない。
原告らの主張イの事実は不知。
原告らの主張ウは争う(争点4の被告の主張と同じである。)。
第4 当裁判所の判断
1 本案前の争点について
(1) 事実経過
前記前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 複数の新聞社が,平成28年11月1日及び同月2日,大山町の課長級の男性職員が,理事をしているNPO法人に無断で理事長名と代表印を使用し,大山町の職員として企画に関わった大山観光PR事業の受託契約を結んでいたことが分かった旨,当該職員は,事業は契約どおりに実施しており,私的流用でないと釈明しているが,大山町は監査委員の調査を踏まえ,対応を決める方針である旨などを記載した記事を新聞に掲載した(甲8,原告X3本人3頁)。
イ 大山町は,同年12月27日,a機構の大山町からの受託契約に関する大山町監査委員による事務執行監査の結果(本件事務執行監査結果)をインターネットなどで公表した(甲1,原告X3本人9頁)。本件事務執行監査結果には,同年11月にa機構から本件各委託契約に関する領収書等の証憑書類等の提出を受けたこと,各事業の契約金額と提出された領収書等に記載された金額の合計額,各事業の実績報告の金額と提出された領収書等に記載された金額の合計額それぞれに差がある状況であること,23大山の事業において冷蔵庫の購入に係る領収書等が存在しており,不適正な備品購入であること,23大山の事業等において不適正な旅費の支出があること,22大山の事業等において契約条項に沿う支出であるか疑念が残る食料費の支出があること,26大山の事業等において特定の団体で予算上落としどころがない費用について当該団体に代わってa機構の委託料から支出した費用があるとC(本件事務執行監査結果では「職員A」との表記を用いられているが,「職員A」がCを指すことは弁論の全趣旨から明らかであるため,以下ではCと記載する。)が申述していること,27大山の事業において事業実施にどう必要だったのか甚だ疑問がある本代の支出があることなどが記載されていた(甲1)。
c新聞は,同年12月28日,上記監査結果に関する記事を新聞に掲載した(甲9)。
ウ 原告らは,平成29年2月20日,大山町監査委員に対し,大山町の幹部職員兼a機構の理事が,平成21年度以降,a機構に無断で大山町と契約を締結し,領収書の裏付けのない支出や事業内容と関係のない支出を繰り返したなどと主張して,住民監査請求(本件監査請求)をした。
原告らは,本件監査請求において,a機構と大山町との間の業務委託契約は,a機構の理事長ないし理事会に報告されていないものであること,大山町は領収書の裏付けのない支出や事業内容と関係のない支出を行っていることなどを指摘し,契約が無効であるか,有効であるとしても契約の締結及びその履行が違法又は不当である旨主張した上で,a機構又はa機構の理事(弁論の全趣旨から,Cを指すと解される。)に対し,契約が無効であることを前提とする公金の返還請求や契約の解除に基づく公金の返還請求を行うことを求め,また,a機構又はCに対する不法行為に基づく損害賠償請求,債務不履行に基づく損害賠償請求,契約解除に基づく公金の返還請求,不当利得に基づく返還請求及び領収書の裏付けのない支出や事業内容と関係のない不適正な支出に対応する金額の返金などに関するa機構又はCとの間の協議を怠っているとして,これらの行為を行うよう求めた(甲5)。
また,原告らは,本件監査請求の際,事実証明書及び証拠として,6つの新聞記事(いずれも平成29年1月13日ないし同年2月15日付けのc新聞の記事)や大山町監査委員作成の本件事務執行監査結果など合計13の文書を提出した(甲6)。
エ 本件監査請求を受け,大山町監査委員は,同年4月20日,平成28年3月11日に締結した27エコの変更契約に基づき,大山町が同年4月25日に支払った111万2400円は,委託事業がなされていないにもかかわらず請求が行われ,a機構に対する支払が行われているとして,大山町長に対し,111万2400円の返還請求をするよう勧告し,他方で,原告らのその余の請求を棄却した(甲6)。
そこで,原告らは,平成29年5月18日,本件住民訴訟を提起した。
(2) 争点1(住民監査請求前置)について
ア 法242条の2第1項柱書は,普通地方公共団体の住民は,住民監査請求をした場合において,その監査結果に不服がある場合等には,同監査請求に係る違法な行為又は怠る事実につき,住民訴訟を提起することができると定めているから,適法に住民訴訟を提起するためには,住民監査請求の対象とされた財務会計行為と,住民訴訟で対象とする財務会計行為との間に同一性のあることが必要である。ただし,その同一性は,住民監査請求の対象とされた財務会計上の行為又は怠る事実と住民訴訟で対象とする財務会計上の行為又は怠る事実が社会的,経済的にみて実質的に同一であるということができる程度のもので足り,住民監査請求に係る行為から派生又は後続することが当然に予測される行為についてもこれに含まれるものとして,同一性が認められると解される。
イ 被告は,本件住民訴訟では,①Cの検査義務違反という違法な財務会計行為及び②Bの監督義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実が対象とされているが,これらはいずれも本件監査請求では対象とされていなかった旨主張する。
①については,確かに本件監査請求においては,Cの検査が違法な財務会計行為であると直接には言及されてはいないのは事実であるが,前記事実経過ウ記載のとおり,Cがa機構に無断で大山町と業務委託契約を締結し,領収書の裏付けのない支出や事業内容と関係のない支出を繰り返し行っていたことが指摘され,かつ,大山町とa機構との間の業務委託契約の履行が違法又は不当であると指摘されていたのであるから,業務委託契約の検査(検収)を担当していたCの検査行為は,本件監査請求で対象とされていた業務委託契約の締結やそれに基づく支出行為から派生又は後続することが当然に予測される行為であったということができ,本件監査請求の対象との同一性があると認めるのが相当である。この認定に反する被告の主張は採用できない。
他方,②のBの監督義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求を怠る事実については,本件監査請求において何ら指摘されておらず,Bが責任を負うべき理由についても触れられていなかったこと(事実経過ウ,甲5)に照らすと,本件監査請求で対象とされた行為等から派生又は後続することが当然に予測されたとはいい難く,この点に関する被告の主張には理由がある。原告らは,本件監査請求において,大山町長がa機構又は同理事Cに対する不法行為に基づく損害賠償請求等を怠る事実によって「大山町が被っている損害を補填するために必要な措置」としてa機構又は同理事Cに対する損害賠償請求等を行うことやa機構又は当該理事との間の協議「など」を行うよう求めているところ,「など」の記載には,町長など他に町に損害を与えた者に対する請求などが含まれていると主張するが,これらの記載は,大山町長が怠る事実の相手方に対する請求や措置を行うよう求めるものにすぎず,監査委員を含む第三者が,原告らの主張するような請求を含む趣旨であることを読み取ることは困難である。「など」の文言で町長など他に町に損害を与えた者がいればその者に対する請求を含む趣旨であると解することは,監査請求前置を求める法の趣旨に反するものであって,採用できない。
ウ したがって,本件住民訴訟のうち,Bの監督義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実(請求③関係)に係る訴えについては,監査請求が前置されていたとはいえず,不適法であるから,却下されなければならない。他方,Cの検査義務違反という財務会計上の行為(請求④関係)に係る訴えについては,適法な監査請求が前置されていたということができる。
(3) 争点2(住民監査請求の期間制限)について
ア 本件監査請求の対象
争点1の判断を踏まえると,本件監査請求は,Cの検査義務違反(請求④関係)に加え,Cによる無効な代表行為により本件各委託契約が締結され,又は領収書等の証憑書類が不足しており,大山町からa機構に対する委託料の支払に法律上の原因がなかったことを理由とするa機構に対する不当利得返還請求権の行使を怠る事実(請求①関係)及びa機構理事Cが,本件各委託契約により定められた業務を行い,業務を行ったことを証憑する領収書等の書類を提出する義務に違反して委託料を請求したことを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実(請求②関係)を対象に含んでいたことが認められる。
イ 請求①及び請求②関係
(ア) 怠る事実と監査請求期間の規定の適用関係
監査請求期間について定めた法242条2項は,原則として怠る事実を対象とする住民監査請求については適用されないが,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実(不真正怠る事実)を対象として住民監査請求がされた場合には,当該行為のあった日又は終わった日を基準として同項を適用すべきであると解されている(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)。他方で,監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にない場合には,当該怠る事実(真正怠る事実)を対象としてされた監査請求については,同項は適用されないものと解されている(最高裁判所平成14年7月2日第三小法廷判決・民集56巻6号1049頁参照)。
(イ) 本件監査請求の対象とされている怠る事実について
まず,a機構に対する不当利得返還請求権の行使を怠る事実について監査を遂げるためには,Cの行為の効果がa機構に帰属するか,又は本件各委託契約上,a機構に委託料の支払を受ける権利があったと認められるかを判断すれば足り,大山町の特定の職員の財務会計行為の違法性を判断する必要はなく,当該怠る事実は真正怠る事実に該当するものと認められるから,a機構に対する不当利得返還請求権の行使を怠る事実に係る住民監査請求に法242条2項の適用はない。
また,a機構理事Cに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実について監査を遂げるためには,a機構が本件各委託契約により定められた業務を行わず又は業務を行ったことを証する領収書等の証憑書類を提出せず,委託料の支払を請求したという事実が認められるか,その行為が不法行為法上違法の評価を受けるものであるかどうか,及び,その行為により大山町に損害が発生したといえるかどうかなどを確定しさえすれば足り,大山町の特定の職員の財務会計行為の違法性を判断する必要はないから,当該怠る事実は真正怠る事実に該当するものということができ,当該怠る事実に係る住民監査請求に法242条2項の適用はないというべきである。
そうすると,請求①及び請求②に関する訴えが住民監査請求の期間制限に反することを理由に不適法であるとする被告の主張は,採用できない。
ウ 請求④関係
(ア) 本件監査請求と期間制限
Cの検査義務違反を理由とする損害賠償命令(請求④関係)は,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であることを理由とするものであることから,当該行為に関する監査請求については法242条2項の期間制限が問題となるため,以下,個別に検討する。
まず,27エコについては,前記前提事実(3)及び(5)によれば,本件監査請求が行われたのが平成29年2月20日であるところ,Cによる検査が行われたのが平成28年3月31日であるから,法242条2項の定める1年の期間制限内に住民監査請求が行われたと認められる。
次に,21大山,22大山,23大山,24大山については,いずれも平成28年2月20日よりも前に検査が行われており,これらの検査の違法に係る住民監査請求は法242条2項本文の期間が経過した後に行われたものと認められる。
他方で,25大山,26大山については,Cが検査担当者であったことは認められるが,検査調書が存在しておらず,Cが検査を怠ったことが問題となるから,法242条2項の適用はないというべきである。
(イ) 正当な理由の有無
次に,本件監査請求のうち,前記(ア)のとおり監査請求期間を徒過している財務会計上の行為に係る部分について,法242条2項ただし書の「正当な理由」があったかを以下検討する。
この点,同項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものと解される(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照)。
そして,本件においては,前記事実経過及び証拠(F証人,原告X3)に照らすと,原告らが主張するとおり,大山町の住民らが,監査請求をするに足りる程度にCによる検査の存在及び内容を知ることができたのは,平成28年12月27日に本件事務執行監査結果が公表された時点であったと認めるのが相当であり,原告らは,平成29年2月20日に本件監査請求を行っており,これは相当の期間内に監査請求がされたものということができる。
(ウ) 被告の主張について
これに対し,被告は,情報公開条例等により住民が情報にアクセスできる状態にあれば,その時点で相当な注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたというべきである旨主張する。
しかしながら,財務会計行為について,不当,違法の疑いを抱く契機もないにもかかわらず,情報公開条例等により住民が情報に接することが可能であったということを理由に,相当な注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと評価することは困難であり,本件証拠を精査しても,不当,違法の疑いを抱く契機は見当たらず,被告の主張を採用することはできない。また,本件については,大山町がa機構から本件各委託契約の履行に係る領収書等の提出を受けたのは,平成28年11月であり,それまでの期間に情報公開条例等により住民が情報公開を求めていたとしても,a機構が支払を受けた委託料の金額と領収書等の証憑書類に記載された金額との間に差額があることや目的外支出の可能性がある支出があったことは知り得なかったといえるから,いずれにしても被告の主張は容れられない。
また,被告は,平成28年11月2日の報道をもって,大山町の住民が,相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をすることができる程度にCによる行為の存在及び内容を知ることができた旨を主張する。
確かに,平成28年11月2日には,複数の新聞社が,大山町の課長級の男性職員が,理事をしているNPO法人に無断で理事長名と代表印を使用し,大山町の職員として企画に関わった大山観光PR事業の受託契約を結んでいたことが分かった旨の記事を新聞に掲載したことは,前記事実経過ア記載のとおりである。
しかしながら,前記報道内容には,大山町職員の財務会計行為については何ら触れられていない。前記報道内容に接した大山町の住民としては,大山町と契約を締結していたNPO法人(a機構)の内部に問題があるものと受け止めるのが自然であり,当該NPO法人の理事が大山町の職員として企画に関与していたという記載から,同職員の財務会計行為を違法ではないかと疑って,当該職員による違法な財務会計行為について監査請求をすることができる程度にCによる検査の存在及び内容を知ることができたということはできない。
結局,本件において,大山町の住民らが,監査請求をするに足りる程度に,Cによる検査の存在及び内容を知ることができたのは,平成28年12月27日に本件事務執行監査結果が公表された時点であったというべきであり,これに反する被告の主張は採用しない。
(エ) まとめ
以上より,21大山,22大山,23大山,24大山については,法242条2項本文所定の期間内に住民監査請求がされていないものの,それには同項ただし書所定の正当な理由があったということができる。
そうすると,請求④に関する訴えが住民監査請求の期間制限に反することを理由に不適法であるとする被告の主張は,採用できない。
(4) 小括(本案前の争点)
以上の次第であるから,本件訴えのうちBに対して損害賠償請求をすることを被告に求める部分については不適法であり,却下されるべきである。他方,その余の部分については,訴訟要件を満たす適法な訴えと認められるから,以下,本案の争点(争点3,4,6)について検討する。
2 認定事実
これまでの事実と後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができ,これを踏まえ,本案の争点を判断する。
(1) 関係者
ア a機構
a機構は,大山及び中海周辺を訪れる観光客並びに大山及び中海周辺で観光関連産業に従事している人々に対して,観光情報の提供,来訪者の利便向上,体験プログラムの提供等に関する事業を行い,大山及び中海周辺地域の知名度向上,来訪者の満足度向上を図り,もって地域の活性化に寄与することを目的とする特定非営利活動法人であり,平成17年6月3日に鳥取県から認証され,同月10日に設立された(甲1・3頁,甲2)。
a機構の設立時は,Cを含む8名が理事として登記されており,各理事が代表権を有していたが,うち7名については平成24年4月1日に代表権を喪失した旨の登記が平成26年3月12日にされており,平成24年4月1日以降はD理事長のみがa機構の代表権を有していた(甲2,弁論の全趣旨)。
なお,a機構は,現在,解散している(原告X3本人10頁,弁論の全趣旨)。
イ C
Cは,少なくとも平成17年度から平成27年度まで大山町の職員であり,平成21年4月から平成27年3月までは大山町の大山振興課(同課は平成22年4月1日に観光商工課と統合された。)ないし観光商工課の課長の地位にあり,平成27年度は大山町地方創生本部事務局長も務めていた(甲1,乙6の3,6の4,G6,弁論の全趣旨)。そして,Cは,21大山,22大山,23大山,24大山,25大山,26大山及び27エコに係る各契約(以下「本件C担当契約」ということがある。)につき,大山町における主管課の課長として,契約担当者を務めていた(弁論の全趣旨)。
また,Cは,平成17年6月10日にa機構が設立された時から,a機構の理事を務めていたが,a機構の理事に就任するに当たり,大山町長の許可を受けていなかった(甲1)。
Cは,平成29年1月頃,本件各委託契約に係る問題に関連し,公務時間内にa機構の事業を行ったことなどを理由として,課長補佐級への降格及び減給10分の1(2か月と15日)の懲戒処分を受けた(甲14)。また,本件各委託契約に係る問題とは異なる問題で,公金を不正に領得したとして,3件が刑事事件となり,有罪判決を受けた(原告X3本人10頁,11頁,弁論の全趣旨)。
なお,Cは,既に大山町を退職している(原告X3本人11頁,弁論の全趣旨)。
(2) 問題の発覚と調査結果等
ア 新聞による報道
複数の新聞社が,平成28年11月1日及び同月2日,大山町の課長級の男性職員が,理事をしているNPO法人に無断で理事長名と代表印を使用し,大山町の職員として企画に関わった大山観光PR事業の受託契約を結んでいたことが分かった旨,当該職員は,事業は契約どおりに実施しており,私的流用でないと釈明しているが,大山町は監査委員の調査を踏まえ,対応を決める方針である旨,D理事長が,Cの無断契約を「全く知らなかった」と話した旨などを記載した記事を新聞に掲載した(甲8,原告X3本人3頁)。
イ 事務執行監査
B大山町長は,法199条6項に基づき,平成28年11月4日,大山町監査委員に対し,大山町がa機構に委託していた観光事業(別紙1記載の合計17事業)を対象として,大山町の事務の執行についての監査を要求した(甲1)。
大山町監査委員2名は,同月4日から同年12月22日までの間,大山町総務課,会計課,観光商工課及び地方創生本部事務局を監査対象部署として事務の執行の監査を行い,本件事務執行監査結果を作成し,同年12月22日,大山町長に対して結果を報告した。この監査結果は,大要,以下の①ないし⑧のとおりであった。(甲1)
① 契約当事者について
大山町においては,各契約に際し,町長又は副町長までの決裁が所定の手続に従って行われており,C個人の判断で発注がなされたものではない。大山町に提出された書類にはa機構の押印があること,CがD理事長も大山町との取引を知っていたと申述し,D理事長も大山町とa機構との契約は適正に成立しているものと思量する旨申述していることなどの事情から判断すると,Cがa機構を装って個人的に取引していたとの認定やCが独断で取引していたとの認定には無理があり,a機構と大山町との間で契約が締結されたと認定するのが相当である。
② 職員と理事等の兼務について
Cがa機構から報酬を受けた証拠は見当たらず,a機構は営利を目的とする企業ではないから,Cが大山町長の許可を得ずa機構の理事に就任したことに法律上の問題はない。
③ 受託事業の実施と職務専念義務について
a機構が受注した事業に係る領収書等を確認したところ,受注金額の中から多数の事業者,関係者に費用が支払われており,取引先との交渉時間,交渉事務量,事業の実施時間帯等に照らしてもCが勤務時間中にa機構の事務を行っていたことが容易に推認でき,職務専念義務に反する。
④ 契約方法について
18CD,21CD,22ブックについては,取引金額が基準以下であるから随意契約によることが許されるが,その他の事業についても全て随意契約がされており,かつ,a機構からしか見積書を徴していない。a機構との随意契約については,他に契約を結び得る会社がなかったのか,民間会社に事業委託できなかったのか,事業者募集などの手段がとれなかったのか甚だ疑問が残る。Cが職務専念義務に反しながら事業を行っており,期限内に実績報告書を提出しないようなa機構と継続して随意契約を締結していたことは,単に前年度を踏襲しただけ又は職員の恣意が介入していたとの疑念を残すものであって,十分な審査も行われなかった不適切なものである。
⑤ 契約保証金について
18CD,21CD,22ブックについては,大山町財務規則130条の免除要件に該当するため,契約保証金を免除することが可能であり,契約書にも免除の規定があるが,その他の事業については契約書に契約保証金を免除する旨の規定はない。23震災,27エコについては免除要件に該当し得る契約金額であったが,その余の事業については契約保証金の免除要件に該当していないから,大山町財務規則130条に基づき契約保証金を徴すべきであったのに,これを徴しておらず,財務規則に反している。
⑥ 支払方法等について
平成27年7月までは委託料について概算払が認められていなかったにもかかわらず,22大山ないし27大山については,概算払が行われており,大山町財務規則72条違反が認められる。
22大山,23大山,23ツアー,24ツアー,24大山,25大山,27大山については,概算払の精算が行われないまま,次の概算払が行われており,概算払は精算完了後でなければ次回の概算払をすることができない旨を定めた大山町財務規則73条に反している。
各契約においてa機構が実績報告書を提出する旨が定められているが,24大山,25大山,26大山については提出期限後の平成28年2月頃に担当課の職員に督促されてから提出されており,27大山については事務執行監査の際に監査委員がCの質問検査を実施した平成28年11月に提出されている。a機構は契約条項違反を繰り返していたことが認められ,大山町も何らの措置を施すことなくこれを見過ごしていた。実績報告書が提出されていない事業,期限後に提出された事業については,検査が未実施の状況になっており,精算なしの状態で放置されたままである。
各事業に係る検査調書には,全てa機構の理事長が検査に立ち会った旨の記載があるが,検査調書作成職員からの聴取の結果,理事長は立ち会っておらず,検査調書が形骸化していた。
⑦ 委託事業に係る費用について
大山町は,平成28年11月にa機構から本件各委託契約の契約条項に基づきこれらに関する証憑書類等の提出を受けた。23大山については実績報告がなく,それ以外の事業については,いずれも実績報告の金額が契約金額を上回っていた。また,契約金額は別紙1の「委託料」欄記載のとおりであり,領収書等に記載された金額は別紙2の「a機構提出の領収書等に記載された金額の合計額」欄記載のとおりである。
a機構から提出された領収書等は実績報告の金額の一部であり,実績報告の正確性については検証できない。Cは,事務量の増大に合わせ,経理事務に回す手間がとれなくなり,証憑書類の管理が不十分になっていった旨申述している。
Cの預金口座には,平成21年度ないし平成28年度の合計で3657万2000円がa機構から振り込まれていた。Cは,立替払が発生することも多く,多額の場合は自身のクレジットカードで決済することも日常化していた旨を申述している。
Cの預金口座においては,クレジットカードの決済が頻繁に行われていること,預金の残高の赤字が年々増加傾向にあることは,Cの申述に沿うと思われるが,全ての取引に対応する領収書等が提出されておらず,クレジットカードの取引明細も不明であるため,実績報告の信憑性,申述内容の信憑性を確認できない。
提出された領収書等には,次の問題点が確認された。〈ア〉23大山において,冷蔵庫の購入に係る領収書等が存在するが,見積書に冷蔵庫の購入についての記載がない。Cに聴取したところ,冷蔵庫は大山支所で使用している旨申述している。Cが大山町職員の立場でa機構に購入させたのか,a機構理事の立場で委託料の中から購入したのか定かではないが,不適正な備品購入である。〈イ〉23大山等において,旅費の支出の中に大山町職員の出張旅費が含まれている。職員の旅費は,旅費として予算計上すべきであり,見積りの段階から職員の旅費が含まれていたのであれば,委託料が過大に見積もられていたことになり,見積りの段階で含まれていなかったのであれば,委託料の圧迫に繋がるものであり,いずれにせよ不適正な支出である。〈ウ〉22大山等において,見積書にはない食料費に係る領収書等が多く見受けられる。契約条項に沿う支出であるか疑念が残る。〈エ〉26大山等において,宛名がa機構となっていない領収書等が見受けられる。Cは,特定の団体から予算上落としどころがない費用について相談が持ち掛けられ,大山町の観光に関連することでもあるのでa機構の委託料からその団体に代わって支出した旨申述した。契約条項に沿う支出であるか疑念が残る。〈オ〉27エコの実績報告書に記載された「仕様書レベルアップ」111万2400円に係る領収書が提出されていない。Cは,27賛歌の事業が契約金額を上回ったので,27エコの事業に上乗せして計上した旨申述している。27エコの検査が十分行われたものであるか疑念が残る。〈カ〉27大山の実績報告書には,本代8万1596円が計上されている。領収書を確認したところ,宮城県にある政治団体から4万円の書籍を2冊購入したものであった。Cは,過去の経緯からやむを得ず支払ったものである旨申述しており,27大山の事業実施に必要だったのか甚だ疑問である。
各契約には,a機構は,大山町に受託業務の処理に要した費用の明細を提出して承認を受ける,その報告の際には証憑書類を提出する旨の規定があるが,23大山,23震災については実績報告が行われず,検査が未了であり,24大山,25大山,26大山,27大山については実績報告書が期限後に提出されており,検査が未了であるため,前記のような問題点が浮かび上がってこなかったものと思われる。
⑧ 委託事業に係る費用の私的流用等について
全ての取引に係る証憑書類が保存されていない状況にあり,これ以上監査を継続したとしても,事実関係の全貌を判断することは困難である。
ウ D理事長による説明(甲3)
D理事長は,平成28年12月14日付けで,Bに対し,「大山町様との委託契約関係につきまして」と題する文書を送付し,a機構と大山町との一連の業務委託契約について,a機構の所感と対応方針を伝えた。
同文書には,新聞報道された印鑑の偽造や勝手な口座開設は事実ではない,大山町内部でも適正な事務手続によって処理がなされており,a機構と大山町との契約は適正に成立していたと思量している,契約内容は誠実に執行したものと考えている,報告文書及び証憑書類の保存管理が不十分であり,客観的な立証に大きな障害となっているなどと記載されていた。
エ 特定非営利活動促進法(以下「NPO法」という。)に基づく検査(甲12)
鳥取県西部総合事務所地域振興局は,平成28年12月27日に大山町からa機構への委託業務について不適切事務があったと発表されたことを受け,平成29年1月13日,NPO法に基づき,a機構に対する検査及び指導を行い,同月19日,その結果を公表した。
公表された検査結果には,大山町の監査で指摘されている大山町からの委託分を除くと,会計処理は税理士により適正に行われ,証憑書類も適正であったこと(鳥取県が委託した事業も適正に会計処理され,公開されている決算に計上されていたこと),NPO法により公開義務のある平成25年ないし平成27年分の会計処理の中に大山町からの受託分が含まれておらず,当該受託分が不適切である可能性があること,D理事長は,当該受託分は,C(甲12では「A理事」とされているが,弁論の全趣旨からCを指すことは明らかである。)がa機構の別口座で管理しており,契約及び出納状況の報告が全くなかったため,把握しておらず,そのため,県への報告と税務申告に漏れが生じた旨を説明したことなどが記載されていた。
オ 大山町議会での調査(甲15,17,F証人,弁論の全趣旨)
大山町議会は,監査委員から事務執行監査の結果報告を受け,平成29年1月19日,議員懇談会を開催し,Cからの聴取を行った。また,同月20日,議員全員による「大山町とNPO法人との契約に関する調査特別委員会」の設置を全会一致で可決した。
調査特別委員会は,公開で3回開かれ,a機構側の問題点として,実績報告書が期限内に提出されていない事業が半数あること,事業の領収書等が完全に揃っていないため,領収書等に記載された金額の合計が契約金額の合計よりも2800万円少ないこと,領収書等の中には,宛名や日付がないもの,宛名が同一筆跡と思われるなど不備のある領収書等が少なからず見受けられること,事業費がC個人の預金口座に振り込まれていることが指摘され,大山町側の問題点として,Cは大山町からの受託業務を勤務時間に行わざるを得ず,職務専念義務に反していたこと,a機構との随意契約は十分な審査が行われず不適切であったこと,平成26年度まで大山町財務規則に反して概算払をした事業があったこと,a機構が実績報告書を期限内に提出していないのを見過ごしていたことが指摘された。
カ その後の新聞報道(甲14)
c新聞は,平成29年1月21日,Cがa機構のメーリングリストに「諸手続きを怠ったのは私自身の怠慢と順法精神の欠如」,「a機構ましてや役員諸氏に責めがあるものではない」,「日常業務に関わるものであり,具体的内容を理事会などで共有しなかった」,「不適切な事務により,a機構に対する信頼が大きく損なわれてしまった」などと記載した文章を投稿したことを報道する記事を掲載した。
(3) 本件各委託契約に共通している内容
ア 契約書の作成
本件各委託契約については,それぞれ,委託者を大山町,受託者をa機構とする,業務委託契約書(21大山,22大山,23大山,24大山,25大山,26大山,27エコ及び27大山)ないし委託契約書(27賛歌及び27同名)と題する契約書が作成されている(乙A1,B1,C1,D1,E1,F1,G1,H1,I1,J1)。
イ 業務委託契約書の定め
本件各委託契約のうち,業務委託契約書と題する契約書が作成されているもの(21大山,22大山,23大山,24大山,25大山,26大山,27エコ及び27大山)においては,その契約条項として,a機構は,委託料の支払を受けるに当たっては,大山町に対し,受託業務の処理に要した費用の明細を報告し,その承認を受けなければならない旨(3条2項),a機構は,受託業務の処理のために要した費用の支出状況を,a機構固有の支出とは区別して認識できるように経理しなければならない旨(4条1項),a機構は,受託業務の処理のためにした費用の支出に関し,その証憑書類を保存しなければならない旨(4条2項)が定められている。
さらにそのうち,21大山,22大山,23大山,24大山,25大山,26大山及び27エコに係る各業務委託契約においては,その契約条項として,a機構は,大山町への費用の明細の報告の際,保存した前記の証憑書類を大山町に提出しなければならない旨(4条2項)が定められている。一方,27大山に係る業務委託契約においては,その契約条項上,そのような定めは置かれていない。
ウ 委託契約書の定め
また,本件各委託契約のうち,委託契約書と題する契約書が作成されているもの(27賛歌及び27同名)においては,その契約条項として,a機構は,業務完了後30日以内に,大山町に対し,受託業務の処理に要した費用の明細を添付の上,業務委託完了報告書を提出しなければならない旨(6条),大山町は,業務委託完了報告書を受理したときは,10日以内に委託業務の完了確認のための検査を行わなければならない旨(7条1項),大山町は,検査終了後,a機構から適法な支払請求書を受理したときは,30日以内に委託料を支払わなければならない旨(8条1項),a機構は,受託業務の処理のために要した費用の支出状況を,a機構固有の支出とは区別して認識できるように経理しなければならない旨(9条1項),a機構は,受託業務の処理のために要した費用の支出に関し,その証憑書類を保存し,業務委託完了報告書の提出の際,大山町に対し,それを提出しなければならない旨(9条2項)が定められている。
エ 委託料の定めと請求
加えて,本件各委託契約においては,その契約条項として,大山町は,a機構に対し,必要と認める場合は,委託料を部分払(21大山),概算払(22大山,23大山,24大山,25大山,26大山)又は前金払(27エコ,27大山,27賛歌,27同名)することができる旨定められている(各業務委託契約書の3条3項,各委託契約書の8条2項。ただし,21大山に係る契約においては委託料の5分の4,22大山に係る契約においては委託料の10分の9という限度が付されている。)。
そして,a機構は,大山町によるa機構への委託料の各支払に先立って,大山町に対し,各支払額に対応する金額の請求書を発行している(乙A7ないし10,B5ないし8,C9ないし11,13,D5ないし8,E5,7,F4,G8,10,12,H4,I5,J5)。
(4) 21大山に関する処理
ア 契約書(乙A1)
平成21年7月2日付けで業務委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書及び支出項目を列挙した委託業務内訳書が添付されている。同契約書3条1項には,大山町が21大山の委託業務の対価として871万5000円を支払う旨が定められている。
イ 委託料の支払
大山町は,a機構に対し,平成21年7月15日,委託料の前払金として300万円を支払い(乙A7),同年9月25日,委託料の部分払として200万円を支払い(乙A8),同年10月26日,委託料の部分払として240万円を支払い(乙A9),平成22年1月25日,精算払として131万5000円を支払った(乙A10)。
ウ 実績報告(乙A4)
a機構は,平成21年12月28日,大山町長に対し,21大山に係る業務を完了したとして,支出項目別の支出金額を記載した委託業務実績内訳書,収入明細書及び実績写真等を添付した委託業務完了報告書を提出した。委託業務実績内訳書に記載された,21大山に係る支出金額(収入額を控除した後のもの)は合計877万9432円である。
エ 検査
検査員であったCは,平成21年8月28日,大山町大山振興課の課長補佐及びa機構のD理事長を立会者として,21大山の実施状況についての検査を行った結果,各種プロモーション,ノベルティ,大山ペディア制作,商品開発及び広告の各業務について,仕様書のとおり業務が実施されていることを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した(乙A2)。
また,検査員であったCは,同年10月13日,大山町大山振興課の課長補佐及びa機構のD理事長を立会者として,21大山の実施状況について検査した結果,企画・協議等人件費,打合せ等旅費,全国キャンペーン,チラシ印刷,PRコンサート,ノベルティ,大山ペディア制作,商品開発及び広告の各業務について,仕様書のとおり業務が実施されていることを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した(乙A3)。
さらに,検査員であったCは,同年12月28日,大山町大山振興課の課長補佐及びa機構のD理事長を立会者として,21大山の実施状況についての検査を行った結果,仕様書のとおり業務が完了していることを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した(乙A5)。
(5) 22大山に関する処理
ア 契約書(乙B1)
平成22年4月5日付けで業務委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書及び支出項目を列挙した委託業務内訳書が添付されている。同契約書3条1項には,大山町が22大山の委託業務の対価として1197万円を支払う旨が定められている。
イ 委託料の支払
大山町は,a機構に対し,平成22年4月26日,委託料の概算払として400万円を支払い(乙B5),同年6月25日,委託料の概算払として400万円を支払い(乙B6),同年10月5日,委託料の概算払として270万円を支払い(乙B7),平成23年2月7日,委託料の精算払として127万円を支払った(乙B8)。
ウ 実績報告(乙B2)
a機構は,平成23年1月15日,大山町長に対し,22大山に係る業務を完了したとして,科目別に経費の金額を記載した経費実績内訳書を添付した委託業務完了報告書を提出した。経費実績内訳書に記載された,22大山に係る経費(収入額を控除した後のもの)は合計1211万8315円である。
エ 検査(乙B3)
検査員であったCは,同年1月17日,大山町観光商工課6次産業推進室の室長及びa機構のD理事長を立会者として,22大山の実施状況についての検査を行った結果,仕様書のとおり業務が完了していることを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した。
(6) 23大山に関する処理
ア 契約書(乙C1,2)
平成23年4月1日付けで業務委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書及び支出項目を列挙した委託業務内訳書が添付されている。
同契約書3条1項には,大山町が23大山の委託業務の対価として1543万5000円を支払う旨が定められている。なお,同年12月28日付けの業務委託変更契約書によって,委託業務の対価が1543万5000円から1593万5000円に変更されている。
イ 委託料の支払
大山町は,a機構に対し,平成23年4月25日,委託料の概算払として500万円を支払い(乙C9),同年7月15日,委託料の概算払として500万円を支払い(乙C10),同年10月25日,委託料の概算払として300万円を支払い(乙C11),平成24年2月6日,委託料の概算払として293万5000円を支払った(乙C13)。
ウ 実績報告
a機構は,平成23年度内に23大山について実績報告を行っておらず,平成28年の事務執行監査の際にその旨を指摘され,平成29年1月10日,大山町長に対し,23大山に係る委託業務完了報告書兼実績報告書を提出した(甲1,乙C4)。
同報告書には,実施業務報告書及び科目別に経費の金額を記載した経費実績内訳書が添付されていたが,同内訳書は,同月24日に再提出された。再提出後の同内訳書に記載された,23大山に係る経費は合計1603万1002円である。(乙C5)
エ 検査(乙C3)
検査員であったCは,平成24年4月10日,大山町観光商工課の課長補佐及びa機構のD理事長を立会者として,23大山の実施状況についての検査を行った結果,仕様書のとおり業務が完了していることを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した。
(7) 24大山に関する処理
ア 契約書(乙D1)
平成24年4月1日付けで業務委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書及び科目別に見込経費を積算した経費積算内訳書が添付されている。同契約書3条1項には,大山町が24大山の委託業務の対価として1543万5000円を支払う旨が定められている。
イ 委託料の支払
大山町は,a機構に対し,平成24年4月25日,委託料の概算払として543万5000円を支払い(乙D5),同年6月15日,委託料の概算払として300万円を支払い(乙D6),同年10月15日,委託料の概算払として400万円を支払い(乙D7),平成25年1月15日,委託料の概算払として300万円を支払った(乙D8)。
ウ 実績報告
a機構は,平成24年度内に24大山について実績報告を行っておらず,大山町観光商工課の職員に督促されて,平成28年2月頃に,大山町に対し,科目別に経費の金額を記載した経費実績内訳書を添付した業務実施結果報告書を提出した(甲1,乙D2)。なお,経費実績内訳書に記載された,24大山に係る経費は合計1560万6204円である(乙D2)。
エ 検査(乙D3)
検査員であったCは,平成25年4月30日,大山町観光商工課の課長補佐及びa機構のD理事長を立会者として,24大山の実施状況についての検査を行った結果,仕様書のとおり業務が完了していることを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した。
(8) 25大山に関する処理
ア 契約書(乙E1,2)
平成25年4月1日付けで業務委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書及び支出項目を列挙した委託業務内訳書が添付されている。
同契約書3条1項には,大山町が25大山の委託業務の対価として421万円を支払う旨が定められている。なお,同年6月28日付けの業務委託変更契約書によって,委託業務の対価が421万円から474万円に変更されている。
イ 委託料の支払
大山町は,a機構に対し,平成25年4月25日,委託料の前金払として241万円を支払い(乙E5),同年8月15日,委託料の前金払として233万円を支払った(乙E7)。
ウ 実績報告
a機構は,平成25年度内に25大山について実績報告を行っておらず,大山町観光商工課の職員に督促されて,平成28年2月頃に,大山町に対し,科目別に経費の金額を記載した経費実績内訳書を添付した業務実施結果報告書を提出した(甲1,乙E3)。なお,経費実績内訳書に記載された,25大山に係る経費は合計503万4785円である(乙E3)。
エ 検査
大山町においては,Cが25大山の実施状況について検査を行う立場にあったが,検査調書は存在しておらず,検査が行われたとは認められない(甲1,弁論の全趣旨)。
(9) 26大山に関する処理
ア 契約書(乙F1)
平成26年4月1日付けで業務委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書及び支出項目を列挙した経費積算内訳書が添付されている。同契約書3条1項には,大山町が26大山の委託業務の対価として421万2000円を支払う旨が定められている。
イ 委託料の支払
大山町は,a機構に対し,平成26年5月26日,委託料の前金払として421万2000円を支払った(乙F4)。
ウ 実績報告
a機構は,平成26年度内に26大山について実績報告を行っておらず,大山町観光商工課の職員に督促されて,平成28年2月頃に,大山町長に対し,実施業務実績報告書及び科目別に経費の金額を記載した経費積算内訳書を提出した(甲1,乙F2)。経費積算内訳書に記載された,26大山に係る経費は合計452万9040円である(乙F2)。
エ 検査
大山町においては,Cが26大山の実施状況について検査を行う立場にあったが,検査調書は存在しておらず,検査が行われたとは認められない(甲1,弁論の全趣旨)。
(10) 27エコに関する処理
ア 契約書(乙G1,2,4)
平成27年5月8日付けで業務委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書のみが添付されている。
同契約書3条1項には,大山町が27エコの委託業務の対価として100万円を支払う旨が定められている。なお,同年6月12日付けの業務委託変更契約書によって,委託業務の対価が30万円追加され,さらに,平成28年3月11日付けの業務委託変更契約書によって,委託業務の対価が111万2400円追加され,合計241万2400円とされた。
イ 委託料の支払
大山町は,a機構に対し,平成27年6月5日,委託料の前金払として100万円を支払い(乙G8),同年12月7日,委託料の前金払として30万円を支払い(乙G10),平成28年4月25日,委託料として111万2400円を支払った(乙G12)。
もっとも,本件監査請求による監査の結果,同年3月11日に締結された27エコの変更契約に基づき,大山町が同年4月25日に支払った111万2400円は,委託事業がなされていないにもかかわらず支払われたものであるとして,大山町長に対して111万2400円の返還請求をするよう勧告されたため(甲6),大山町は,平成29年4月26日,a機構に対し,同年5月19日までに111万2400円を返還するよう請求し,これを受けて,a機構は,同月11日,大山町に対し,同額を返還した(乙3,4)。
ウ 実績報告(甲1,乙G5)
a機構は,大山町長に対し,27エコに係る業務を完了したとして,大山エコトラック総合管理システム(第1期)構築業務委託仕様書,大山エコトラック総合管理システム(第1期)仕様書及び大山エコトラック総合管理システムの構造案を添付した,平成28年3月31日付けの委託業務完了届を提出した(ただし,本件事務執行監査結果においては,納品日不明とされている。)。この際,27エコに係る経費等は報告されていない。
エ 検査(乙G6)
検査員であったCは,平成28年3月31日,a機構のD理事長を立会者として,27エコの実施状況について,報告書等の検査を行った結果,適正に業務が遂行されていることを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した。
(11) 27大山に関する処理
ア 契約書(乙H1,2)
平成27年5月1日付けで業務委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書のみが添付されている。
同契約書3条1項には,大山町が27大山の委託業務の対価として388万8000円を支払う旨が定められている。なお,同年9月7日付けの業務委託変更契約書によって,委託業務の対価が83万1600円減額され,305万6400円とされた。
イ 委託料の支払
大山町は,a機構に対し,平成27年10月26日,委託料の前金払として305万6400円を支払った(乙H4)。
ウ 実績報告(甲1,乙H3)
a機構は,平成27年度内に27大山について実績報告を行っておらず,平成28年の事務執行監査の際にその旨を指摘され,同年11月,大山町長に対し,27大山に係る実施業務実績報告書及び科目別に経費の金額を記載した支出明細書を提出した。支出明細書に記載された,27大山に係る経費は合計344万5886円である。
エ 検査
大山町においては,C以外の者が27大山の実施状況について検査を行う立場にあったが,27大山に係る検査調書は存在しておらず,検査が行われたとは認められない(甲1,弁論の全趣旨)。
(12) 27賛歌に関する処理
ア 契約書(乙I1)
平成27年12月1日付けで委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書及び個人情報取扱業務委託契約特記事項と題する書面のみが添付されている。同契約書3条には,大山町が27賛歌の委託業務の対価として197万2000円を支払う旨が定められている。
イ 委託料の支払
大山町は,平成28年1月15日,a機構に対し,委託料の概算払として197万2000円を支払った(乙I5)。
ウ 実績報告(乙I2)
a機構は,平成28年3月31日までに,大山町長に対し,27賛歌に係る業務を完了したとして,委託業務実績報告書及び科目別に経費の金額を記載した経費精算書を提出した。経費精算書に記載された,27賛歌に係る経費は合計302万6396円である。
エ 検査(乙I3)
検査員であった観光商工課の課長(Cとは異なる人物)は,平成28年3月31日,観光商工課の課長補佐及びa機構のD理事長を立会者として,27賛歌の実施状況について,検査を行った結果,適正に業務が実施されており,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した。
(13) 27同名に関する処理
ア 契約書(乙J1)
平成27年12月8日付けで委託契約書が作成されており,同契約書には,実施する業務の具体的内容が記載された仕様書のみが添付されている。同契約書3条には,大山町が27同名の委託業務の対価として199万8000円を支払う旨が定められている。
イ 委託料の支払
大山町は,平成28年2月5日,a機構に対し,委託料の概算払として199万8000円を支払った(乙J5)。
ウ 実績報告(乙J2)
a機構は,平成28年3月31日までに,大山町長に対し,27同名に係る業務を完了したとして,委託業務実績報告書及び科目別に経費の金額を記載した経費精算内訳書を提出した。経費精算内訳書に記載された,27同名に係る経費は合計205万4075円である。
エ 検査(乙J3)
検査員であった当時の観光商工課の課長(Cとは異なる人物)は,平成28年3月31日,観光商工課の課長補佐及びa機構のD理事長を立会者として,27同名の実施状況について,検査を行った結果,報告書等により適正に業務が履行されたことを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成した。
(14) 大山町に提出された証憑書類
a機構は,平成28年11月,大山町に対し,本件各委託契約に係る領収書等の証憑書類を提出した(甲1)。提出された領収書等に記載された金額を契約ごとに集計した合計金額は別紙2の「a機構提出の領収書等に記載された金額の合計額(1000円未満切捨て)」欄に記載のとおりである。
また,本訴訟の証拠として提出された領収書等に関し,以下の事実が認められる。
ア 22大山に係る領収書等
平成22年7月1日付け大山レークホテルの領収書及び平成22年8月19日付け山陰合同銀行のATM利用明細が提出されている。a機構は,同ホテルに対し,料理,生ビール及びウーロン茶の代金として合計5万5740円を支払った。(乙10の1,2)
平成22年11月30日付け株式会社M&M興産の領収書が提出されている。a機構は,同社に対し,飲食代として2万8600円を支払った。(乙11)
イ 23大山に係る領収書等
平成23年7月20日付け鳥取銀行のキャッシュサービス利用明細が提出されている。a機構は,ヤマダデンキに対し,冷蔵庫代として3万4800円を支払った。(乙12,弁論の全趣旨)
ウ 26大山に係る領収書等
Gという人物が大山町観光商工課に対して発行した,「E 音響人件費」として2万5000円を請求する旨の平成26年10月7日付け請求書及びGという人物がE後援会に対して発行した,「音響人件費」として2万5000円を領収した旨の同月28日付け領収書が提出されている。a機構は,同後援会に対し,音響人件費として2万5000円を支払った。(乙14の1,弁論の全趣旨)
なお,Eは,大山や鳥取県にまつわる歌を作り,歌唱している鳥取県出身の歌手である(乙15)。
エ 27大山に係る請求書等
仙台市にある政治団体「d研究会」名義の請求書2通及びキャッシュサービス利用明細2枚が提出されており,請求書には,「角栄伝」と題する書籍1冊及び「365日」と題する書籍1冊の代金としてそれぞれ4万円を請求する旨が記載されている(ただし,宛名は空欄のままである。)。a機構は,平成27年11月6日及び平成28年2月17日,同研究会に対し,それぞれ4万円を支払った。また,それらの支払につき,それぞれ648円の送金手数料を負担した。(乙16の1,2,乙17の1,2,弁論の全趣旨)
3 争点3(a機構による不当利得)について
(1) 本件各委託契約の有効性について
ア Cがa機構を代表して契約を締結する権限
前記認定事実(1)によれば,a機構設立時から,Cを含む8名の理事がそれぞれ代表権を有していたが,D理事長以外の7名は,平成24年4月1日に代表権を喪失したものと認められる。つまり,Cは,平成24年4月1日以降,a機構の代表権を有していなかったことになる。
この点,被告は,本件各委託契約のうち平成24年4月1日以降に締結されたもの(24大山,25大山,26大山,27エコ,27大山,27賛歌及び27同名の各事業に係る業務委託契約)についても,契約は問題なく有効に成立していたと主張するところ,確かに,D理事長は,大山町に対しては,大山町内部でも適正な事務手続によって処理がなされており,契約は適正に成立していたと説明している(認定事実(2)ウ)。
しかしながら,①D理事長が,平成28年11月2日頃,新聞社の取材に対し,Cによる契約を知らなかったとコメントしていること,②D理事長が,平成29年1月13日の鳥取県による検査の際も,平成25年4月1日ないし平成28年3月31日の間に締結されたa機構と大山町との間の契約について,契約及び出納状況の報告が全くなかったため,把握していなかった旨説明しており,実際に税務申告等もされていなかったこと,③Cも,諸手続を怠り,具体的内容を理事会などで共有しなかったなどと述べていることは,前記認定事実(2)記載のとおりであって,これらの事実に照らすと,a機構の理事会などにおいて,本件各委託契約に関する説明及び承認がされるなどの手続がとられ,代表権を有するD理事長が,Cに対し,本件各委託契約の締結に関する権限を授与していたなどと認めることは到底できない。
以上によれば,本件各委託契約のうち平成24年4月1日以降に締結されたもの(24大山,25大山,26大山,27エコ,27大山,27賛歌及び27同名の各業務に係る業務委託契約)については,a機構の代表権を有していなかったCが,a機構に無断で,大山町と契約を締結したものと認められる。
イ 理事に対する代表権の制限
他方で,平成23年法律第70号による改正前のNPO法16条は,1項で「理事は,すべて特定非営利活動法人の業務について,特定非営利活動法人を代表する。ただし,定款をもって,その代表権を制限することができる。」としつつ,2項で「理事の代表権に加えた制限は,善意の第三者に対抗することができない。」と定めていたが,平成23年法律第70号(平成24年4月1日施行)により,同2項が削除された。また,平成24年4月1日以降は理事の代表権の範囲又は制限に関する定めが特定非営利活動法人の登記事項となった(NPO法施行令附則3条,組合等登記令2条)。そのほか,NPO法7条は,1項で「特定非営利活動法人は,政令で定めるところにより,登記しなければならない。」と定め,2項で「前項の規定により登記しなければならない事項は,登記の後でなければ,これをもって第三者に対抗することができない。」と定めている。
そして,Cがa機構の代表権を喪失した旨の登記がされたのは平成26年3月12日であるから(認定事実(1)ア),本件各委託契約のうち平成24年4月1日から平成26年3月12日までの間に締結されたもの(24大山,25大山の各業務に係る業務委託契約)については,a機構は,Cが代表権を喪失したことを大山町に対抗することができず,その結果,契約の効果がa機構に帰属することになる。
ウ a機構による契約の追認
また,D理事長が,平成28年12月14日付けで,大山町に対し,a機構と大山町との契約は適正に成立していたと思量していること,契約内容は誠実に執行したものと考えていることなどを記載した書面を送付したことは,前記認定事実(2)ウ記載のとおりである。これは,a機構としては,本件各委託契約が有効であることを前提として行動する旨の意思をD理事長が大山町に対して示したものということができ,Cによる無権代表行為によって締結された契約を追認したものと認めるのが相当である。
そうすると,本件各委託契約のうち平成26年3月12日より後に締結されたもの(26大山,27エコ,27大山,27賛歌及び27同名の各業務に係る業務委託契約)は,追認により各契約締結日に遡って効力を有することになる(民法116条本文)。
この点,原告らは,無効行為の追認であり,遡及的に有効になることはない旨主張するが,本件については,民法116条の適用があり,民法119条が適用される場面ではないから,原告らの主張は採用できない。
エ 小括
以上によれば,本件各委託契約が無効であり,平成24年4月1日以降に締結された契約に基づく大山町の支出はすべて法律上の原因を欠くとの原告らの主張は,採用できない。
(2) 契約が有効であることを前提とした不当利得について
ア 領収書等の証憑書類の提出と委託料の受領との関係
原告らは,大要,大山町は,本件各委託契約について,領収書等の証憑書類による裏付けのない支出を行うことはできなかったのであり,a機構は,支払を受けた額と証憑書類による裏付けのある支出額との差額を大山町から受領する権利を有しないと主張するので,以下検討する。
本件各委託契約の全てにおいて,a機構は,大山町から委託料の支払を受けるに当たっては,大山町に対し,受託業務の処理に要した費用の明細を報告する必要があるとともに,同報告について,大山町の承認を受けることを要し,あるいは検査を受ける旨,a機構は,受託業務の処理のために要した費用の支出状況を,a機構固有の支出とは区別して認識できるように経理しなければならない旨,a機構は,受託業務の処理のためにした費用の支出に関し,その証憑書類を保存しなければならない旨が定められていること,また,27大山に係る業務委託契約を除く本件各委託契約においては,a機構は,受託業務の処理のためにした費用の明細を報告する際に,保存した上記の証憑書類を大山町に提出しなければならない旨が定められていることは,前記認定事実(3)記載のとおりである。
そして,前記の内容が定められている趣旨については,本件各委託契約が地方公共団体との契約であり,公金の支出を伴うものであることに鑑みれば,受託者(a機構)において,受託事業とは関係のない支出を受託事業に関する支出とするなどの不適切な経理がされ,そのような不適切な経理に基づく請求がされることや,実際には支出を行っていないのに,それを行ったという報告がされ,架空の費用を請求されることは排除されなければならず,かつ,委託者(大山町)においても,受託者の支出の適正性を検査によって確実に確認することができるようにすることによって,公金の支出の適正を確実に確保することを目的とするものと解される。
そうすると,27大山に係る業務委託契約を除く本件各委託契約においては,a機構が,大山町に対し,裏付けとなる証憑書類が存在しないことがやむを得ないと認められる事情がない限り,受託業務の処理のためにした費用の明細において報告した支出を裏付ける証憑書類を提出できなければ,大山町からは委託料の支払を受けることができないものと解するのが相当である。
したがって,a機構が,大山町に対し,受託業務の処理のためにした費用の支出を裏付ける証憑書類を提出していない場合には,大山町は,a機構に対し,前記特段の事情がない限り,委託料を支払うことはできず,また,概算払などによって支払った委託料の返還を請求することができるというべきであり,この認定判断に反する被告の主張は採用しない。
イ a機構による領収書等の証憑書類の提出について
被告は,a機構は,本件各委託契約について,受託業務の処理のためにした費用の明細を報告する際に,受託業務の処理のためにした費用の支出に関し,保存している証憑書類を大山町に提出していたが,報告時に提出していた証憑書類が,時の経過によって散逸し,平成28年11月の事務執行監査の際には提出されなかった可能性があり,報告された費用のほとんどを裏付けるだけの証憑書類が提出されていた可能性もある旨主張する。
しかしながら,①25大山,26大山及び27大山については検査調書が作成されておらず,そもそも検査自体が行われなかったと認められること(認定事実(8),(9),(11)),②その他の検査調書が作成されている契約に関しても,検査調書にはD理事長が検査に立ち会った旨が記載されているが(認定事実(4)ないし(7),(10),(12),(13)),本件事務執行監査結果及び弁論の全趣旨によれば,検査にD理事長は立ち会っていなかったものと認められるから,検査調書には,誰が検査に立ち会ったかという本質的な部分に,虚偽の内容が記載されていること,③23大山及び24大山については,検査時までに実績報告書が,27エコについては,事業に要した費用の明細が,それぞれ提出されておらず,いずれについても適正な検査を行うことは無理であったにもかかわらず,検査員が,検査を行い,仕様書のとおり,あるいは適正に事業が実施されたことを確認したとする検査調書が作成されていること(認定事実(6),(7),(10))が指摘できる。また,④本件各委託契約については,大山町財務規則の要件を満たしていないにもかかわらず,契約保証金の免除合意,概算払及び前金払などの問題のある処理が行われていたことが事務執行監査で指摘されているが,検査においてそれらの問題が指摘されることは一度もなかったことは,前記認定事実からも明らかである。
以上の他,検査調書などの本件各証拠を精査しても,大山町がa機構から領収書等の証憑書類の提出を受け,検査員又は検査員以外の決裁権者がそれを確認したことをうかがわせる事情は見当たらないことも踏まえると,結局,本件各委託契約に係る大山町の検査(Cによるものに限らない。)と呼ばれるものは,全く形骸化しており,各事業の遂行状況や報告された支出の適切性を確認するなどの本来的な検査は何も行われておらず,ただ検査調書と題する書類が作成されていたにすぎないというほかない。
以上を踏まえると,a機構が,本件各委託契約において,受託事業に要した費用を報告する際,大山町に対し,領収書等の証憑書類を提出していなかったものと認定するのが相当であり,これに反する被告の主張は採用できない。
ウ a機構が大山町に返還すべき不当利得額の算定方法について
以上まとめると,27大山に係る業務委託契約を除く本件各委託契約については,a機構が,大山町に対し,裏付けとなる証憑書類が存在しないことがやむを得ないと認められる事情がない限り,受託業務の処理のためにした費用の明細において報告した支出を裏付ける証憑書類を提出できなければ,大山町からは委託料の支払を受けることができない契約内容であったところ,a機構は証憑書類を提出していなかったというのであるから,a機構が各事業年度に大山町から取得した委託金については,受領する法律上の原因がなかったものと認められる。
もっとも,a機構は,平成28年11月の事務執行監査を受けて,事後的に,大山町に対し,各事業に係る領収書等の証憑書類を提出していることは指摘できる。
この点については,a機構が大山町から委託を受けた事業のために現に支出したことが認められる場合には,大山町には損失はないものと解するのが相当である(逆に,領収書等による裏付けがある支出であっても,受託事業と無関係に支出されたと認められる部分については,a機構が法律上の原因なく大山町から委託料を利得していることは明らかである。)。
また,a機構が証憑書類を提出して支出を裏付けることができていない費用の中には,性質上,領収書等の証憑書類を提出することが困難なもの(以下,このような費用を便宜上「間接経費」ということがある。)があるとの被告の主張も,社会通念上間接経費が生じることは一般的に認められるところであるから,首肯できる。ただ,本件各委託契約については,費用の明細報告がないものがある上,費用の明細報告上は間接経費であることが明確である費用科目はほとんど見受けられないため(ただし,23大山については,「諸経費」としてその他の経費の10パーセント分が挙げられている。),証憑書類により裏付けられた支出額の10パーセントに限って間接経費を認め,その限りで大山町には損失はないものと認めるのが相当である。
以上に対し,被告は,大山町が証憑書類を提出して支出を裏付けることができていない部分は全て間接経費であると考えるべきであるかのような主張をするが,前記の契約条項の趣旨を没却するばかりか,一定の割合で間接経費を認めるという通常の考え方にも反するから,採用しない。
(3) 具体的な不当利得返還額について
以下,本件各委託契約を構成する契約ごとに返還すべき利得額を検討する。
なお,これまでの事実によれば,大山町がa機構に対して支払った委託料は,別紙2の「委託料支払額」欄に記載のとおりであり,大山町がa機構から提出を受けた領収書等に記載された金額を契約ごとに集計した合計額は,別紙2の「a機構提出の領収書等に記載された金額の合計額(1000円未満切捨て)」欄に記載のとおりである。また,提出された領収書等の中には,宛名や日付がないもの,宛名が同一筆跡と思われるなど不備のあるものが少なからず見受けられると指摘されていることが認められるが,領収書等は一部を除き本訴訟の証拠として提出されておらず,原告も本件事務執行監査結果で集計された金額については一部を除き,受託事業に関する支出を裏付けるものであることを前提とするから,当裁判所もこの前提で不当利得返還額を検討する。
ア 21大山
21大山に係るものとして提出された領収書等に記載された金額の合計は414万2000円である。これを基に10パーセントの間接経費を計算すると,41万4200円となる。21大山に係る委託料として,大山町からa機構に対して合計871万5000円が支払われており,ここから414万2000円及び41万4200円を控除した,415万8800円をa機構が不当に利得したということができる。
イ 22大山
22大山に係るものとして提出された領収書等に記載された金額の合計額は1126万8000円であり,これを基に10パーセントの間接経費を計算すると,112万6800円となる。22大山に係る委託料として,大山町からa機構に対して合計1197万円が支払われており,ここから1126万8000円及び112万6800円を控除すると,マイナスとなるから,不当な利得はないとみるべきである。
この点,前記認定事実(14)アによれば,22大山に係る領収書等として提出されたものの中には,原告らが無関係な支出であると主張する,飲食代金の支払に関するものが8万4340円分あったことが認められる。
ただ,22大山に係る契約書に添付された委託業務内訳書の支出項目には飲食代(食糧費)は挙げられていないが,委託業務完了報告書に添付された経費実績内訳書(乙B2)には講師との会食費や会議時の食糧費として合計11万5630円が報告されていることからすると,前記飲食代金の領収書等は,この食糧費として記載されているものの一部であると推認できる。そして,受託事業に関する講演を依頼した者との会食費用等が受託事業と無関係であるとまではいい難く,委託料からその費用を支払うことが社会通念上許されないわけでもない。そうすると,受託事業と無関係な支出があったということはできず,前記8万4340円をa機構が不当に利得したということはできない。
以上の次第であるから,22大山については,a機構が大山町から不当に委託料を受け取ったものとは認められない。
ウ 23大山
(ア) 冷蔵庫代の領収書等について
前記認定事実(2)イ⑦,(14)イ及び弁論の全趣旨によれば,a機構は,家電量販店に対し,冷蔵庫代として3万4800円を支払っていること,この冷蔵庫が大山町役場の大山支所で使われていたことが認められる。
23大山は,鳥取県の大山はだいせんと読むことを認知してもらうための取組みや大山山麓の市町村等との連携強化などに向けた取組みを行うことを中心とする事業であり,その一環として,大山フェアと称し,大山に関する食を体験してもらうイベントを行うことも予定されていたものの(乙C1),冷蔵庫自体を購入する必要性は明確ではなく,購入された冷蔵庫が,a機構の事務所等ではなく,大山町の大山支所に置かれていたということからすると,Cが同支所で使用する冷蔵庫が欲しいという目的で購入し,それを23大山に係る委託料を用いて支払ったものと推認される。
したがって,前記冷蔵庫代は,23大山の事業と無関係に支出されたものというべきであり,領収書等の証憑書類が提出されていたとしても,委託料から支払うことが許されるものではないから,a機構は3万4800円を不当に利得したものというべきである。
(イ) 冷蔵庫代を除く領収書等と不当利得額
23大山に係るものとして提出された領収書等に記載された金額の合計は643万円であるところ,前記のとおり冷蔵庫代3万4800円は除外される必要があるから,差額の639万5200円が,23大山の事業に関して証憑書類が提出された金額ということができる。
これを基に10パーセントの間接経費を計算すると,63万9520円となる。23大山に係る委託料として,大山町からa機構に対して合計1593万5000円が支払われており,ここから639万5200円及び63万9520円を控除した,890万0280円をa機構が不当に利得したということができる。
エ 24大山
24大山に係るものとして提出された領収書等に記載された金額の合計は861万9000円であり,これを基に10パーセントの間接経費を計算すると,86万1900円となる。24大山に係る委託料として,大山町からa機構に対して合計1543万5000円が支払われており,ここから861万9000円及び86万1900円を控除した,595万4100円をa機構が不当に利得したということができる。
オ 25大山
25大山に係るものとして提出された領収書等に記載された金額の合計は104万8000円であり,これを基に10パーセントの間接経費を計算すると,10万4800円となる。25大山に係る委託料として,大山町からa機構に対して合計474万円が支払われており,ここから104万8000円及び10万4800円を控除した,358万7200円をa機構が不当に利得したということができる。
カ 26大山
26大山に係るものとして提出された領収書等に記載された金額の合計は343万円であり,これを基に10パーセントの間接経費を計算すると,34万3000円となる。26大山に係る委託料として,大山町からa機構に対して421万2000円が支払われており,ここから343万円及び34万3000円を控除した,43万9000円をa機構が不当に利得したということができる。
この点,前記認定事実(14)ウによれば,26大山に係る領収書等として提出されたものの中には,原告らが無関係な支出であると主張する,2万5000円の後援会に対する支払に関するものがあったことが認められる。
ただ,前記認定事実(14)ウによれば,a機構は,大山や鳥取県にまつわる歌を作り,歌唱している鳥取県出身の歌手であるEの後援会が「音響人件費」名目で負担した2万5000円につき,同額を音響人件費として,同後援会に対して支払ったことが指摘できるところ,26大山は,鳥取県の大山はだいせんと読むことを認知してもらうための取組みや大山山麓の市町村等との連携強化などに向けた取組みを行うことを中心とする事業であり,その一環として,東京にある鳥取県のアンテナショップのオープン記念イベントに大山町出身歌手3名に出演してもらうことや大山夏山開き祭等のイベントで大山賛歌を活用したPRを行うことがあったものと認められるから(乙F1,2),前記後援会への支出は,26大山の受託事業に歌手Eが関与した際の支出であったものと推認できる。
そうすると,前記2万5000円をa機構が不当に利得したということはできない。
以上の次第であるから,a機構は,26大山に関し,43万9000円を不当に利得したということができる。
キ 27エコ
27エコに係るものとして提出された領収書等に記載された金額の合計は114万2000円であり,これを基に10パーセントの間接経費を計算すると,11万4200円となる。27エコに係る委託料として,大山町からa機構に対して合計241万2400円が支払われており,ここから114万2000円,11万4200円及び既に返還された111万2400円を控除した,4万3800円をa機構が不当に利得したということができる。
ク 27大山
(ア) 書籍代の支出について
前記認定事実(2)イ⑦,(14)エによれば,a機構が,仙台市にあるd研究会という政治団体に対し,「角栄伝」と題する書籍1冊及び「365日」と題する書籍1冊の代金としてそれぞれ4万円を支払い,また,それらの支払につき,それぞれ648円の送金手数料を負担したことが認められ,Cは,これらの支出について,過去の経緯からやむを得ず支払ったものである旨説明したことが認められる。
しかしながら,27大山は,鳥取県の大山はだいせんと読むことを認知してもらうための取組みを行うことを中心とする事業であり(乙H1),前記の各書籍との関連性はない上,書籍の代金として1冊4万円というのは高額に過ぎることや,Cの前記説明内容に照らせば,委託事業とは無関係に支出されたものと推認できる。
したがって,前記書籍代及びその支払に伴う送金手数料は,27大山の事業と無関係に支出されたものであって,委託料から支払うことが許されるものではないから,a機構は8万1296円を不当に利得したというべきである。
(イ) 証憑書類の不存在による不当利得について
27大山に係る業務委託契約においては,本件全証拠によっても,a機構が,委託料の支払を受けるに当たり,費用の支出を裏付ける領収書等の証憑書類を提出しなければならない旨が合意されたとは認められない。また,27大山に係る業務委託契約においては,原告らが主張するような,大山町は証憑書類の存在しない支出を行ってはならず,a機構は委託金額と証憑書類による裏付けのあるものとの差額を大山町から受領する権利を有しないといった契約関係を基礎づける的確な証拠はない。
そうすると,27大山に係る業務委託契約においては,他の本件各委託契約と異なり,原告らの主張する証憑書類の不存在を理由とする不当利得返還請求は認められず,a機構が27大山に関して不当に利得した金額は,前記(ア)の8万1296円にとどまることになる。
ケ 27同名
27同名に係るものとして提出された領収書等に記載された金額の合計は149万4000円であり,これを基に10パーセントの間接経費を計算すると,14万9400円となる。27同名に係る委託料として,大山町からa機構に対して199万8000円が支払われており,ここから149万4000円及び14万9400円を控除した,35万4600円をa機構が不当に利得したということができる。
コ 遅延利息について
a機構は,これまでの事実に照らせば,悪意の受益者に該当することは明らかであるから,原告らが主張するとおり,各契約の締結年の翌年4月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払義務がある。また,原告らが主張するとおり,既に返還済みの111万2400円についても,支出された日である平成28年4月25日から返還された日である平成29年5月11日までの年5分の割合による確定利息5万8210円(111万2400円×5パーセント÷365日×382日)が発生していることから,同金額についてもa機構に返還義務があるということができる。
(4) まとめ
以上によれば,被告は,a機構に対し,不当利得に基づき,以下の金員の支払を求める権利を有しているが,その行使を違法に怠っていると認められる。
ア 21大山に関し,415万8800円とこれに対する平成22年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
イ 23大山に関し,890万0280円とこれに対する平成24年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
ウ 24大山に関し,595万4100円とこれに対する平成25年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
エ 25大山に関し,358万7200円とこれに対する平成26年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
オ 26大山に関し,43万9000円とこれに対する平成27年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
カ 27エコに関し,4万3800円とこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
キ 27大山に関し,8万1296円とこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
ク 27同名に関し,35万4600円とこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(なお,上記カないしクによれば,平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員が付される元金額は,47万9696円となる。)
ケ 27エコの確定利息として5万8210円
4 争点4(a機構理事Cによる不法行為)について
(1) 委託料の支払請求に関する事実関係
前記のとおり,大山町は,別紙2の「委託料支払日」欄に記載した各年月日に,a機構に対し,別紙2の「委託料支払額」欄に記載した各金額を支払ったこと,いずれの支払の前にも,a機構から,大山町に対し,同「委託料支払額」と同額の金員を支払うよう請求がされていることが認められる。
また,前記のとおり,C以外のa機構理事は,本件各委託契約について,把握しておらず,Cが本件各委託契約の締結から報告までの業務を自らが中心となって行っていたと認められるから,大山町に対する委託料の支払請求行為もまたCが行っていたものと認められる。
(2) 不法行為の該当性
ア 原告らは,Cが,本件各委託契約上,①大山町との各業務委託契約により定められた各業務を行っていない又は②各業務を行ったことを証憑する領収書等がない場合並びに③受託業務とは関係のない支出をした場合には,委託料の支払請求をしてはならなかったにもかかわらず,大山町による検査が適正に行われないことを知って,本来支払請求できない部分についても大山町に対して委託料を支払うよう請求したことが不法行為を構成すると主張する。
イ まず,①受託業務を行っていないにもかかわらず,それを行ったと仮装して委託料の支払を請求することは,公金の詐取に当たる行為であり,不法行為を構成するというべきであるが,本件についてみると,本件各委託契約に係る事業いずれについても,期限後に提出されたものもあったが実績報告がなされており,かつ,関連する支出の領収書等が少なからず保存,提出きれていることは前記のとおりである。そうすると,a機構が受託した業務を全く行っていなかったとはいい難く,本件全証拠によっても,a機構が受託した業務を行っていないにもかかわらず,Cが委託料の支払を請求したとの事実は認定できない。
他方で,被告は,a機構が,本件各委託契約に定められた業務を実施しており,契約目的が達成されている旨主張するが,前記のとおり,証憑書類の提出が不十分であるため,実績報告書及び費用の明細を報告する文書に記載された内容の業務が実際に全て行われたのかは不明であるというほかなく,本件の証拠上,契約目的が達成されたということはできない。したがって,Cによる行為が不法行為を構成するとしても,大山町に損害が発生していないという被告の主張は採用できない。
ウ 次に,③受託業務とは関係なく支出をしたにもかかわらず,受託業務に関連して支出したものとして委託料の支払を請求することも,故意又は過失により,不実の内容を含む報告をし又は真実を報告せず,公金を受領するという詐欺的行為であるから,不法行為を構成するというべきである。
前記争点3で認定したとおり,23大山について支出された冷蔵庫代3万4800円並びに27大山について支出された書籍代及びその支払に伴う送金手数料8万1296円は,いずれもa機構が受託した事業とは関係なく支出されたものであるが,Cは,これを偽って,委託事業に関連して支出したものとして委託料の支払を請求していたとみることができる。また,いずれの支出についても,Cは,大山町から委託を受けた事業と無関係な支出であることを知ってしたもの(故意)であるといえる。
エ 他方,②大山町との本件各委託契約により定められた各業務を行ったことを証する領収書等がない場合については,それらの業務を行ったとして請求を行ったとしても,その後に大山町による検査が行われ,その際に合理的な説明がつくと認められたときは,委託料の支払が認められることもあり得るところであるから,原則として,請求すること自体が不法行為になると解するのは相当ではない。ただし,請求者が大山町による検査を担当する者と通じており,検査に不合格となり,支払が拒まれたり,後に返還を求められたりすることがないことを知って請求を行うといった事情があるときは,大山町の財産を害するものであって,請求自体が違法性を帯びるというべきである。
これを本件についてみると,本件C担当契約(21大山,22大山,23大山,24大山,25大山,26大山及び27エコの各業務に係る業務委託契約)については,Cが大山町の契約担当者であり,請求を行う人物と検査を行う人物が同一であるという異常な状況が生じており,請求者と検査担当者が通謀していた場合と同一視することができる。したがって,本件C担当契約については,Cが,大山町との各業務委託契約により定められた各業務を行ったことを証する領収書等がない部分について委託料の支払を求めたことが不法行為となるというべきである。
他方で,27大山及び27同名の各業務に係る業務委託契約については,Cが検査担当者ではなく,Cと各検査担当者が通謀していたことを認めるに足る的確な証拠はないから,これらの契約についての委託料の請求行為自体が不法行為を構成するということはできない。
(3) 不法行為による損害額等
ア 受託事業と関係のない支出を請求した行為については,本来当該支出について大山町からの委託料が支払われることはないものであるから,当該行為と相当因果関係のある損害として,23大山における冷蔵庫代3万4800円と27大山における書籍代及びその支払に伴う送金手数料8万1296円の合計11万6096円が認められる。
イ また,本件C担当契約に関する請求については,検査担当者による検査が適正に行われれば,通常,領収書等の証憑書類による裏付けのない支出については説明が求められ,合理的な説明がされない限り,不適正な支出であるとして,委託料の支払が拒まれ,又は既に支払われた委託料の返還を求められることになるものと認められる。
そうすると,本件C担当契約について支払われた委託料と領収書等の証憑書類による裏付けがある支出(受託事業と関係のない支出は含まない。)の合計額との差額から,間接経費として相当と認められる額(証憑書類による裏付けのある支出の合計額の10パーセント分)を控除した額が不法行為と相当因果関係のある損害であるとみるのが相当である。
既に述べた23大山の冷蔵庫代3万4800円並びに27大山の書籍代及びその支払に伴う送金手数料8万1296円を含めると,具体的な損害額については,前記争点3の不当利得額で検討した内容と同様であり,21大山につき415万8800円,23大山につき890万0280円,24大山につき595万4100円,25大山につき358万7200円,26大山につき43万9000円,27エコにつき4万3800円,27大山につき8万1296円が相当因果関係のある損害と認められる。
ウ そして,以上の損害については,遅延損害金として,原告らが主張するとおり,委託料最終支払日(27エコについては,平成28年4月25日に支払われた分は既に返還済みであるから,平成27年12月7日を最終支払日とする。)より後の日である,各契約の締結年の翌年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求するよう求めることが可能である。
また,平成28年3月11日に締結された27エコの変更契約に基づき,大山町が同年4月25日に支払った111万2400円については,委託事業がなされていないにもかかわらず支払われたものであって(前記認定事実(10)),同金額の支払に係るa機構理事Cの請求が不法行為を構成することは明らかであるところ,同金額は,平成29年5月11日に大山町に返還されているが(同認定事実),委託料の支払日から返還日までの期間に係る確定遅延損害金5万8210円については支払われておらず,この確定遅延損害金請求権は存続している。
エ 以上に対し,被告は,本件各委託契約に基づき行われた委託料の支払のうち,a機構による報告及び大山町の検査が行われるよりも前に,契約条項に基づく前金払(部分払,概算払)がなされたものについては,Cの行為と因果関係がある損害とはいえない旨主張するが,Cが,大山町による検査において,不合格の意見が付され,支払が拒まれたり,後に返還を求められたりすることがないことを知って請求を行い,その請求に基づき委託料の前金払として金員が支払われている以上,前金払がされたということをもって損害の発生との相当因果関係がないということはできない。
(4) まとめ
以上によれば,被告は,a機構理事Cに対し,不法行為に基づき,以下の金員の支払を求める権利を有しているが,その行使を違法に怠っていると認められる。
ア 21大山に関し,415万8800円とこれに対する平成22年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
イ 23大山に関し,890万0280円とこれに対する平成24年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
ウ 24大山に関し,595万4100円とこれに対する平成25年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
エ 25大山に関し,358万7200円とこれに対する平成26年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
オ 26大山に関し,43万9000円とこれに対する平成27年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
カ 27エコに関し,4万3800円とこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
キ 27大山に関し,8万1296円とこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(なお,上記カ及びキによれば,平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員が付される元金額は,12万5096円となる。)
ク 27エコの確定遅延損害金として5万8210円
5 争点6(大山町職員であったCの法243条の2第1項後段に基づく損害賠償責任)について
(1) 大山町職員であったCの検査義務
大山町財務規則136条は,契約担当者(町長又はその委任を受けて契約を締結する者)又は契約担当者から検査を命ぜられた職員は,工事又は製造の請負契約についてその工事又は給付を完了したときは,契約書,仕様書,設計書その他関係書類に基づき,当該工事又は給付の内容について検査をしなければならない旨(同条1項),契約担当者は,物件の買入れその他の契約について,その給付が完了したときは,契約書その他の関係書類に基づき,当該給付の内容及び数量について検収を行わなければならない旨(同条2項)及び契約担当者は,同条1項又は同条2項の検査又は検収をしたときは,検査調書又は検収調書を作成しなければならず,その工事又は給付等の内容が契約に適合しないものであるときは,その旨及びその措置について意見を付さなければならない旨(同条4項)を定める。
前記認定事実(1)イによれば,本件C担当契約については,Cが「契約担当者」であったことが認められるから,Cは,財務会計法規上,本件C担当契約について,法243条の2第1項の検査を行う権限を有する職員であったものということができる。
そうすると,本件C担当契約において委託料の支払請求があった場合には,契約担当者たるCは,大山町財務規則136条2項の検収に準じ,契約書その他の関係書類に基づき,当該事業の内容等について検査を行わなければならないものと解され,かつ,同条4項に準じ,契約担当者たるCは,検査をしたときは,検査調書を作成しなければならず,その事業の内容が契約に適合しないものであるときは,その旨及びその措置について意見を付さなければならないものと認められる。
(2) 大山町職員であったCの検査義務の懈怠
しかるに,本件C担当契約のうち,25大山及び26大山については,検査調書が作成されておらず,Cは,25大山及び26大山についてはおよそ検査を行わなかったものと認めるほかない。
また,本件C担当契約のうち,21大山,22大山,23大山,24大山及び27エコについて,Cは,a機構のD理事長を立会者として,事業の実施状況について検査を行った結果,仕様書のとおり,あるいは適正に業務が遂行されていることを確認し,検査結果は合格であった旨記載した検査調書を作成しているが,前記争点3で認定説示したとおり,これは立会につき虚偽の内容を記載したものである。
加えて,前記争点3で認定説示したとおり,a機構(C)は,平成28年11月まで大山町に対して各事業に係る領収書等の証憑書類を提出していなかったと認められ,23大山,24大山及び27エコについては,検査以前に契約上は提出が義務付けられている受託業務の処理に要した費用の明細の報告がなされていなかったことが認められる(23大山,24大山に至っては検査以前に実績報告すらなされていない。)。
実績報告書,受託業務の処理に要した費用の明細報告書及びその費用の支出を裏付ける証憑書類が提出されていなければ,委託業務が実施されているか,委託料の請求が適切かを判断することはできないはずであるから,検査担当者においては,これらの提出がない場合には,受託者に対して資料の提出を求め,提出された資料上,不審な支出があるときは,それについて説明を求め,受託者がこれらの求めに応じないとき又は不審な支出について合理的な説明ができないときは,契約に適合していないとの意見を付す必要がある。しかるに,Cは,それらの資料の提出を求めることなく,検査の結果,適正に業務が行われていることを確認し,合格であるとする意見を付している。
以上のほか,Cが委託料の支払を請求するa機構側の立場であったことも踏まえると,Cは,本件C担当契約すべてについて,故意に,必要な検査をせず,漫然と合格の意見を付した検査調書を作成するなどして,大山町財務規則により認められる検査義務を怠ったものというべきである。
(3) 相当因果関係のある損害額
ア Cが,本件C担当契約について,必要な資料の提出を求め,又は不適合意見を付していたとすると,a機構は,その時点で,平成28年11月に大山町に提出した領収書等の証憑書類を提出したと想定される。
そして,領収書等の証憑書類が提出されれば,大山町は,通常,それらの証憑書類による裏付けがある支出額(受託事業と関係のない支出は含まない。)に,証憑書類による裏付けができないことについて合理的な説明が可能な範囲の金額を加えた金額の限度で委託料を支払い,それを超えて既に委託料を支払っていたとすれば,その返還を求めたことは明らかである。したがって,大山町がa機構に対して支払った委託料から,証憑書類によって裏付けられた支出額と証憑書類による裏付けができないことについて合理的な説明が可能な範囲の金額(本件では,間接経費として,裏付けのある支出額の10パーセント分をその金額とするのが相当である。)を控除した額がCの検査義務の懈怠と相当因果関係のある損害となる。
また,本件C担当契約のうち23大山における冷蔵庫代3万4800円については,領収書類があるものの,受託事業と関係のない支出であることは明らかであるから,Cの検査義務の懈怠と相当因果関係のある損害ということができる。
イ 以上を踏まえると,具体的な損害額については,本件C担当契約に含まれない27大山を除いて,前記争点4と同様であり,遅延損害金についても,また同じである。
(4) まとめ
以上によれば,契約の適正な履行を確保するために必要な検査を行う権限を有していた大山町職員のCは,故意により大山町財務規則に反して検査を怠ったことにより大山町に損害を与えたものであり,Cは,法243条の2第1項後段に基づき,被告に対し,以下の金員の賠償をする責任を負う。
ア 21大山に関し,415万8800円とこれに対する平成22年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
イ 23大山に関し,890万0280円とこれに対する平成24年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
ウ 24大山に関し,595万4100円とこれに対する平成25年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
エ 25大山に関し,358万7200円とこれに対する平成26年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
オ 26大山に関し,43万9000円とこれに対する平成27年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
カ 27エコに関し,4万3800円とこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
キ 27エコの確定遅延損害金として5万8210円
6 結論
よって,主文のとおり判決する。
なお,a機構の不当利得返還債務(主文第2項)とa機構理事であったCの損害賠償債務(主文第3項)は,大山町の損失ないし損害を填補するという同一の目的を持つことから,不真正連帯債務の関係にあり,主文第3項に記載された金額の限度で連帯するものである。
また,a機構の不当利得返還債務(主文第2項)と大山町職員であったCの損害賠償債務(主文第4項)も,同様に不真正連帯債務の関係にあり,主文第4項に記載された金額の限度で連帯するものである。
加えて,a機構理事であったCの損害賠償債務(主文第3項)と大山町職員であったCの損害賠償債務(主文第4項)は,大山町の損害填補という同一の目的を持つことから,主文第4項の限度で,一方の債務が履行されれば,他方の債務を免れる関係に立つものである。この点,a機構理事であったCに対する損害賠償請求をするよう求める訴えは,法242条の2第1項4号ただし書により,不適法とならないかという問題があり得るが,a機構理事であったCに対する損害賠償請求を求める訴えは,いわゆる当該職員による当該行為についての損害賠償請求をするよう求めるものではなく,職員としての行為ではない行為(a機構の立場で大山町に対して委託料の支払を求める行為)を理由として,不法行為に基づく損害賠償請求をするよう求める訴えであり,責任原因及び賠償範囲が異なることから,法242条の2第1項4号ただし書の適用は受けないものと解し,主文第3項と主文第4項のとおりの判決とした次第である。
鳥取地方裁判所民事部
(裁判長裁判官 大野祐輔 裁判官 渡部孝彦 裁判官 林憲太朗)
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