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裁判年月日 平成29年 1月25日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平25(ワ)28349号
事件名 建物明渡等請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2017WLJPCA01258025
東京都墨田区〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 鈴木郁夫
同 土屋幸博
東京都墨田区〈以下省略〉
被告 有限会社江藤商会
同代表者代表取締役 Y1
東京都台東区〈以下省略〉
被告 Y1
上記両名訴訟代理人弁護士 山添健之
同 大江京子
主文
1 被告有限会社江藤商会は,原告に対し,別紙物件目録(土地)記載の土地に設置した別紙物件目録(看板等)記載2ないし4の木製柵(ラティス),商品の掲示物(メニュー)及び置き看板を撤去せよ。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,原告と被告有限会社江藤商会との間で生じたものは,その20分の1を被告有限会社江藤商会の負担とし,その余は原告の負担とし,原告と被告Y1との間で生じたものは,原告の負担とする。
4 この判決の主文第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求の趣旨
1 被告有限会社江藤商会は,原告に対し,別紙物件目録記載の建物を明け渡せ。
2 被告有限会社江藤商会は,原告に対し,別紙物件目録記載の主たる建物部分の1階と2階の間の階段踊り場壁面に設置した別紙物件目録(看板等)記載1の照明付き看板を撤去せよ。
3 被告有限会社江藤商会は,原告に対し,別紙物件目録(土地)記載の土地に設置した別紙物件目録(看板等)記載2ないし6の置き看板,木製柵(ラティス),商品の掲示物(メニュー)を撤去せよ。
4 被告らは,原告に対し,連帯して,平成26年12月1日から第1項記載の建物の明渡済みまで,1か月35万7000円の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,被告有限会社江藤商会(以下「被告会社」という。)に対し別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を賃貸している原告が,被告会社の用法違反により信頼関係が破壊されたため賃貸借契約を解除した等と主張して,被告会社に対し,本件建物の明渡し及び被告会社が設置した看板等の物件の撤去を求めるとともに,被告会社及びその連帯保証人である被告Y1(以下「被告Y1」という。)に対し,本件建物明渡済みまでの賃料相当損害金の連帯支払を求める事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 賃貸借契約の成立等
ア 亡B(以下「B」という。)は,平成12年3月頃,被告会社との間で,本件建物を以下の約定で賃貸する旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結した。
(ア) 賃料等
賃料月額23万円,共益費月額1万円,翌月分を毎月月末払
(イ) 期間
平成12年3月1日から平成15年2月末日までの3年間
(ウ) 更新料
新賃料の1か月分とする。
イ Bは,本件賃貸借契約締結の際,被告会社の代表者である被告Y1との間で,本件賃貸借契約に基づき被告会社が負担する債務について,被告Y1が連帯保証することを内容とする保証契約(以下「本件保証契約」という。)を締結した。
ウ 本件賃貸借契約はその後更新されたところ,平成16年9月10日,原告が,Bから本件建物を含む一棟の建物(以下「本件ビル」という。)を購入し,本件賃貸借契約及び本件保証契約に係る契約上の地位を承継した(以下,B及び原告を併せて「賃貸人」と称することがある。)。
エ 本件賃貸借契約においては,賃借人の禁止行為として,次のような行為が規定されている。
(ア) 指定場所以外への看板(移動式のものを含む。),表札等の掲示をすること(賃借人からの書面による届出があり賃貸人が許可したものを除く。)
(イ) 共用の廊下,階段,通路及び敷地内に物を置き,独自に専用すること。又は物品の脱落,落下等保安上危険な事態の発生が予想される行為。
(2) 原告と被告会社との間における賃料増額をめぐる紛争等
ア 原告は,平成17年3月1日以降,被告会社に対し,賃料及び共益費の増額に応じなければ本件賃貸借契約を更新しない旨通知したが,被告会社はこれに応じなかった。もっとも,原告と被告会社は,協議の上,平成19年11月7日,平成18年3月1日に遡って本件賃貸借契約を更新する旨合意した。なお,この際に作成された契約書には,次回更新時に賃料を増額する旨の条項があった。
イ 原告は,平成20年3月1日以降,被告会社に対し,賃料増額に応じなければ本件賃貸借契約を更新しない旨伝えたところ,被告会社はこれに応じなかった。そこで,原告は,同年12月16日,被告会社を相手方として,東京簡易裁判所に対し賃料増額請求調停を申し立てたが,調停不成立となった。
ウ 原告は,平成21年6月23日,東京地方裁判所に対し,被告会社を被告とする賃料増額等請求訴訟を提起し,平成22年6月22日,同訴訟において,概要以下の内容の訴訟上の和解(以下「本件和解」という。)が成立した。
(ア) 平成21年3月1日以降,賃料を月額25万4000円(消費税別),共益費月額1万円(消費税別)とする。
(イ) 賃料等は翌月分を毎月28日までに支払う。
(ウ) 原告は,平成21年3月1日からの本件賃貸借契約の更新について,更新料及び更新事務手数料を請求しない。
(エ) 被告会社は,次回以降に本件賃貸借契約の更新を行うときは,更新料等の支払について本件賃貸借契約の定めに従う。
エ 原告と被告会社は,平成22年6月下旬頃,本件賃貸借契約について,新賃料の1か月分の更新料及び新賃料の4分の1か月分の更新事務手数料を支払う旨の規定のある契約書を取り交わした。
オ 原告は,平成23年3月1日以降,被告会社に対し,平成24年3月1日以降の賃料を月額33万円(消費税別)に増額しなければ本件賃貸借契約を更新しない旨通知したが,被告会社がこれに応じないまま,平成24年3月1日に本件賃貸借契約が法定更新され,被告会社は,その後も従前の賃料である月額27万7200円(消費税込み)を支払い続けた。
カ 被告会社は,平成24年3月1日の経過後も,原告に対し,更新料及び更新事務手数料を支払わなかった。また,賃料についても,以下のとおり支払を遅滞した。
(ア) 平成24年6月分賃料を同年6月1日に支払
(イ) 平成24年7月分賃料を同年7月2日に支払
(ウ) 平成24年10月分賃料を同年10月1日に支払
(エ) 平成24年11月分賃料を同年11月1日に支払
(オ) 平成25年2月分賃料を同年2月4日に支払
(カ) 平成25年4月分賃料を同年4月1日に支払
(キ) 平成25年5月分賃料を同年5月1日に支払
(ク) 平成25年6月分賃料を同年6月3日に支払
(3) 被告会社による看板等の設置
ア 被告会社は,本件建物において中華料理店を経営しているところ,賃貸人の承諾を得て,本件ビルの階段上り口上部の壁面に壁面看板を,同じく本件ビルの公道に面した柱に袖看板を,そしてエレベーターに通ずる通路の壁面に案内看板をそれぞれ設置している。
イ 被告会社は,上記の3個の看板の他に,次のとおり,本件ビルの1階階段上り口付近及び踊り場に,木製柵(ラティス,以下,単に「ラティス」という。),掲示物,看板等の物件を設置している(以下,これらの物件を「本件看板等」という。)。
(ア) 被告会社は,本件ビルの1階階段上り口の向かって右側にある電話回線供給設備の周辺及びその手前奥にある空洞入口部分をラティスで覆い,これに商品の掲示物を下げている(別紙物件目録(看板等)記載2及び3記載のとおり。以下,当該ラティスを「本件ラティス」といい,商品の掲示物を「本件掲示物」という。)。なお,被告会社は,本件ラティスの周囲に鉢植えを設置していたが,現在では撤去されている。
(イ) 被告会社は,本件ラティスの周辺に,照明付き置き看板(別紙物件目録(看板等)記載5の看板,以下「本件電光看板」という。)及びA字型の置き看板(同目録記載4の看板,以下「本件A型看板」という。)を設置している。
(ウ) 被告会社は,本件ビルの1階階段上り口の向かって左側にある電力供給設備の前付近に,昼食メニューを記載した別紙物件目録(看板等)記載6の置き看板(ポスタースタンド,以下「本件スタンド」という。)を設置している。
なお,被告会社は,上記電力供給設備をラティスで囲い,これに商品の掲示物(メニュー)を下げ,さらにその周囲に鉢植えを設置していたが,これらのラティス(以下「左側ラティス」という。),掲示物及び鉢植えは,現在では撤去されている。
(エ) 被告会社は,本件ビルの1階階段の踊り場の壁面に厚さ10センチ近い照明付き看板(別紙物件目録(看板等)記載1の看板,以下「本件壁面看板」という。)を設置している。
(4) 原告による本件賃貸借契約の解除通知等
ア 原告は,被告らに対し,平成25年6月26日付け内容証明郵便(被告会社には同月27日,被告Y1には同月28日に到達)により,同年7月4日までに平成24年3月以降の賃料増額後の賃料差額(127万6800円)及び更新料を支払うよう催告し,これらの弁済がないことを停止条件として本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした(以下「本件解除1」という。)(甲8の1~3)。
イ 被告会社は,平成25年7月3日付けの内容証明郵便により,原告に対し,増額請求前の賃料額を基準とする更新料を支払う用意があることを通知した上,同月26日,原告に対し,更新料として25万4000円及びこれに対する平成24年3月1日以降の遅延損害金(年18%の割合による。)の履行の提供をし,平成25年8月1日これを供託した(甲9,乙5)。
ウ 原告は,平成26年11月25日,被告らに対し,同月30日までに本件ラティス及び左側ラティス,それらの周囲の鉢植え,本件掲示物及び本件壁面看板を撤去するよう催告し,撤去のないことを停止条件として本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした(以下「本件解除2」といい,本件解除1と併せて「本件各解除の意思表示」ともいう。)(甲19)。
2 争点及び争点に関する当事者の主張
(1) 更新料支払遅滞による解除(本件解除1)の効力(争点1)
(原告の主張)
ア 被告会社は,本件賃貸借契約が法定更新された平成23年3月1日以降,本件和解に従い,更新料を支払う義務があったにもかかわらず,これを支払わなかった。当該更新料の支払は,本件和解において約された被告会社の義務であり,その趣旨には,被告会社が平成20年7月26日に本件建物において生じさせた火災について原告が異議を述べないことに対する解決金としての性質が含まれており,その懈怠は,原告に対する重大な背信行為である。
イ そこで,原告は,被告らに対し,前記のとおり,平成25年6月26日付け内容証明郵便によって,同年7月4日までに賃料増額後の未払賃料及び更新料を支払うよう催告し,これらの弁済がないことを停止条件として本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたところ,同日までに支払がなかったため,本件賃貸借契約は解除された(本件解除1)。
(被告らの主張)
被告会社は,平成24年3月1日の更新時には更新料を支払うつもりであったが,原告が,大幅な賃料増額を要求し,増額後の賃料を基準とする更新料の支払を求めたため,これを拒否せざるを得なかったのであり,更新料の支払遅滞はやむを得ない事情によるものであった。そして,その後,原告から書面による更新料の支払請求を受けた後は,遅滞なく更新料を供託している。
したがって,更新料の支払遅滞は,原被告間の信頼関係を破壊するものではなく,原告の本件解除1は効力を有しない。
(2) 用法違反(本件看板等の設置)による解除(本件解除2)の効力
(原告の主張)
ア 前記1(3)記載のとおり,被告会社は,本件賃貸借契約の条項に反し,指定場所以外の場所や共用部分への本件看板等の設置を行っているところ,これにより,原告は,本件ビルにつき,ゴミの収集や設備点検の際に支障が生じるなど,その利用を妨げられている。また,本件ビルの共用階段の踊り場に厚さ10cmの本件壁面看板が設置されているため,階段の上り下りに支障が生じている。
そこで,原告は,前記のとおり,本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした(本件解除2)。
イ Bが本件賃貸借契約の締結に際し,指定場所以外への看板や物品の設置を承諾したことはない。契約締結の交渉は,Bではなく,不動産会社である湯浅土地建物が行っており,同社の報告も原告又は原告の夫(Bの子)に対して行われていたところ,階段上り口や踊り場における装飾等が条件として求められているというような話は全く出たことがなかった。
原告は,最近は賃料の額が紛争の中心となっていたため,本件看板等の設置を問題として大きく取り上げてはこなかったが,本件ビルの共用部分の使用形態については,再三にわたり被告会社に申入れをしてきており,本件看板等の設置を承諾したことはない。
(被告らの主張)
ア 賃貸人の承諾を得ていること
被告会社は,平成12年に本件建物を賃借するに当たり,Bに対し,本件ビルの階段を飲食店の出入口にふさわしい外観とするため,空洞部分に被告会社の費用負担でドアを設置すること,階段上り口及び踊り場に美観維持及び顧客誘導のための看板類や装飾等を設置することを条件に賃貸借契約を締結することを申し出たところ,Bがこれを承諾したため,本件賃貸借契約を締結した。
そして,Bが賃貸人であった平成16年までの間に,同人から,本件看板等の設置について,何らの異議を述べられたことはなかったし,原告が賃貸人となった平成16年以降も,平成25年に至るまで,原告から異議を述べられたことはなかった。また,本件壁面看板及び本件電光看板を製作した業者は,平成15年頃,原告の夫が紹介してくれた業者である。
したがって,被告会社による本件看板等の設置は,賃貸人の承諾を得たものであり,何ら賃貸借契約上の義務に違反するものではないから,本件解除2は効力を有しない。
イ 信頼関係を破壊するに足りる背信性の欠如
原告が主張する用法違反は,いずれも軽微なものであり,これにより原告による本件ビルの使用に重大な支障が生じることもないから,背信性を有する債務不履行には該当しない。したがって,本件解除2は効力を有しない。
(3) 原告による本件看板等の撤去請求の可否(争点3)
(原告の主張)
被告会社による本件ビルの共用部分における本件看板等の設置は,いずれも本件賃貸借契約の条項に反する用法違反行為であるから,原告は,被告会社に対し,その撤去を求めることができる。
(被告会社の主張)
ア 賃貸人の承諾
前記のとおり,被告会社による本件看板等の設置は賃貸人の承諾を得たものであるから,本件賃貸借契約の用法違反に該当しない。
イ 権利濫用
仮に,被告会社が,本件看板等の設置につきB又は原告の承諾を得たとまでは認められないとしても,B及び原告は,平成12年から平成25年に至るまで,被告会社による本件看板等の設置に異議を述べていなかった上,平成22年6月22日に成立した本件和解においても,被告会社による本件看板等の設置を前提として本件賃貸借契約を継続することが合意されているのであって,これらの事情を勘案すると,原告が,被告会社に対し本件看板等の撤去を請求することは,権利の濫用として許されない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1について
前記前提となる事実によれば,被告会社は,平成24年3月1日の本件賃貸借契約の更新に際し,本件和解及び本件賃貸借契約によって支払義務がある更新料(更新事務手数料を含む。以下同じ。)を支払わず,本件解除1に係る原告の意思表示がされた後である平成25年8月1日に供託するまでその弁済の提供もしなかったことが認められる。
しかしながら,平成24年3月の更新時には,前記前提となる事実のとおり,あらかじめ原告が大幅な賃料増額の意思表示をした上,賃料の増額に応じなければ賃貸借契約を更新しない旨を告知していたところ,本件和解により賃料が定められてから2年が経過しない時期における大幅な賃料増額の要求に被告会社が反発するのも無理はないと考えられる。また,被告Y1本人によれば,被告会社が更新料の支払を行わなかったのは,賃料額について紛争が生じていたため,更新に係る新たな契約書が作成されたときに支払えばよいと考えていたためであることが認められるところ,賃料額や更新の可否について紛争が生じている状況の下では,そのように考えたことを強く非難することはできない。そして,原告は,平成25年6月26日までの間,更新料の支払を催告した形跡がない上,同日に行われた催告の書面には,増額後の賃料を基準とする更新料と共に,増額後の賃料と既払賃料との差額の支払催告もされているところ,後者は,原告が一方的に請求する根拠を欠くものである。これらの事情を考慮すれば,本件解除1の効力発生日とされている同年7月4日の時点においては,被告会社による更新料の支払義務の遅滞はあるものの,当該債務不履行はいまだ原被告間の信頼関係を破壊する程度には至っていなかったと認めるのが相当である。
そうすると,本件においては,いまだ当事者間の信頼関係を破壊しない特段の事情の存在を認めることができるから,本件解除1は効力を生じないというべきである。
2 争点2について
(1) 本件看板等の設置についての賃貸人の承諾の有無について
ア 被告会社は,本件ビルの共用部分に本件看板等を設置しているところ,前記前提となる事実によれば,本件賃貸借契約においては,賃貸人の承諾を得ない限り,このような行為は禁止されていることが認められる。
そこで,被告会社による本件看板等の設置について,B又は原告の承諾があったと認められるかどうかを検討する。
イ 前記前提となる事実に,証拠(甲11,13,乙1,2,6,原告本人,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
(ア) 被告会社は,平成12年3月に本件賃貸借契約を締結した後,Bの承諾を得て,本件ビル1階階段上り口付近の地上にメニュー看板を置いていたが,遅くとも平成15年頃までには,Bの承諾を得て,本件壁面看板及び本件電光看板を設置した。なお,本件壁面看板及び本件電光看板は,原告の夫が紹介した業者が製作したものである。
(イ) 被告会社は,平成15年頃までに,本件ビル1階階段上り口の左右にある電力供給設備及び電話回線供給設備が美観上好ましくなく,飲食店の出入口にふさわしくないとして,これらをラティスで覆った上,ラティス上にメニュー等の掲示物を設置するようになった。B及び原告は,これについて特に異議を唱えなかった。
(ウ) 被告会社は,上記の他にも,現在までの間,本件ビル1階階段上り口付近に本件A型看板や本件スタンドも設置するようになったが,これらについても,B又は原告から明確に異議が述べられたことはなかった。
(エ) 原告は,平成20年12月,被告会社に対し,賃料の増額を求めて調停の申立てをし,更に平成21年には賃料増額訴訟を提起し,平成22年6月22日に本件和解が成立したが,一連の裁判手続の過程で本件看板等の撤去に言及したことはなかった。
(オ) 原告は,被告会社に対し,平成26年初め頃,本件ラティス及び本件掲示物並びに鉢植えの撤去を求め,さらに,同年3月12日付けの書面において,本件ラティス及び本件掲示物に加え,本件壁面看板の撤去を求めた。
(カ) 本件ビルには,他にもテナントが複数入居しているところ,それらのテナントは,おおむね各店1個程度の置き看板を本件ビル一階階段上り口付近の地上に設置している。
ウ これに対し,原告は,本件壁面看板及び本件電光看板の設置についてBが承諾したことはないと主張する。
しかしながら,本件壁面看板は,踊り場の壁面に穴を開けてボルトで固定した上,電力の供給も受けて設置されたもので,仮に賃貸人の承諾がないまま設置されたのであれば,直ちにその撤去を求めると考えられるのに,B及び原告は,平成15年以降,賃料増額をめぐる裁判手続が係属していた期間を含め,その撤去を求めた形跡がなく,本件和解においても何ら言及されていないことからすれば,その設置については,少なくとも事後的に賃貸人の承諾があったとみるのが自然である。原告本人は,その本人尋問において何度も撤去を求めた旨供述するが,上記の経緯に照らし採用することができない(なお,本件壁面看板が消防法に違反していることや,階段の上り下りの妨げになっていることを認めるに足りる証拠はない。)。また,本件電光看板についても,その大きさや,その製作を原告側の紹介した業者が行ったものであるという経緯に加え,これが電気の供給を受けた上で常時設置されることを前提とするものであること,原告が平成26年11月25日に本件ラティス及び本件壁面看板等の撤去を明示的に求めた際にも,本件電光看板については言及されていないこと,原告本人も,看板1個程度の設置はやむを得ないと考えていた旨供述していることなどからすれば,やはり賃貸人の承諾があったものと認めるのが相当である。
エ 他方,本件ラティス,本件掲示物,本件A型看板及び本件スタンドについては,いずれも比較的容易に取り外しや移動ができるものであること,本件スタンドについては,昼食時間帯等に一時的に設置されるものであると考えられることなどからすると,賃貸人において明示的にこれらの撤去を求めることがなかったとしても,それは,当面本件ビルの使用に重大な支障がないことから,直ちに撤去を求めることなく放置していたにすぎないとみることもでき,その設置を承諾していたものと認めることはできないというべきである。
この点,被告らは,本件賃貸借契約の締結時に,美観維持及び顧客誘導のため,本件ビル1階階段上り口付近に装飾類及び看板類を設置することについてBの承諾を得た旨主張し,被告Y1本人がこれに沿う供述をするが,その供述内容は必ずしも明確なものではない上,客観的な裏付けもなく,直ちには採用することができない。
そうすると,本件ラティス,本件掲示板,本件A型看板及び本件スタンドについては,その設置について賃貸人の承諾があったと認めることはできない。
(2) 本件解除2の効力について
以上によれば,本件看板等のうち,本件壁面看板及び本件電光看板を除くものは,その設置について賃貸人の承諾を得たものとは認め難く,本件賃貸借契約における用法違反に該当するものと認められる。
しかしながら,本件壁面看板及び本件電光看板を除く本件看板等は,いずれも比較的容易に移動や取り外しが可能なものであること,本件看板等のうち,本件ラティス及び本件掲示物は機械設備の点検等に支障となるものと認められるが,その他のものについては,これが本件ビルの使用に重大な支障をもたらしているものとまではいえないこと,B及び原告は,被告会社が本件看板等を設置していることを認識しながら,10年以上の間,明示的に異議を述べないで放置していたこと等を考慮すれば,上記の用法違反によっては,いまだ本件賃貸借契約における信頼関係を破壊するには至らないというべきであり,原告が本件看板等の設置を理由に本件賃貸借契約を解除することは信義則に反し許されないというべきである。
よって,本件解除2の効力もこれを認めることはできない(なお,仮に本件解除2の効力を判断するに当たり,更新料の支払遅滞の事実を考慮できるとしても,当時は既に更新料が供託されていたことからすれば,やはり本件解除2の効力を認めることはできないというべきである。)。
3 争点3について
(1) 前記のとおり,本件看板等のうち,本件壁面看板及び本件電光看板を除くものは,その設置について賃貸人の承諾を得たものではなく,その設置は権限に基づくものとは認められない。
(2) もっとも,被告らは,原告が本件看板等の撤去を請求することは,権利の濫用に該当すると主張するので,検討する。
前記認定のとおり,本件看板等のうち,B又は原告の承諾を得ていたものと認められる本件壁面看板及び本件電光看板以外のものについても,遅くとも平成15年ころには設置されていたにもかかわらず,原告は,平成26年頃に至るまで10年以上もの間,明示的にそれらの撤去を求めたり,異議を申し立てたことはなかったものである。そして,本件看板等は,いずれも被告会社が経営する中華料理店のメニュー等を記載したものであり,2階に店舗がある被告会社にとっては,売上げに直結する重要な宣伝媒体であると認められる。もっとも,被告会社は,賃貸人の承諾を得て,本件ビルの壁面,柱等の人目に留まりやすい箇所に3個の看板を設置しており,本件看板等がなくとも,直ちにその営業に致命的な支障が出るとまでは認められない。
以上のような諸事情を考慮すると,本件看板等のうち,現時点において本件ビルの使用収益に具体的な支障をもたらしているものについては,原告においてその撤去を求めることができるが,具体的な支障をもたらしているとは認められないものについては,原告がその撤去を求めることは,権利の濫用として許されないと解するのが相当である。
この見地からみると,本件ラティス(本件ラティスに掲示され,これと一体となっている本件掲示物を含む。)については,本件ビルの電源供給設備及び電話回線設備を覆う形で設置されており,これらの設備の点検の際に具体的な支障が生じるものと認められるから,原告においてその撤去を求めることができるというべきである。また,証拠(甲10,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,本件A型看板は,本件電光看板と併せて設置する場合には,原告において設置の必要があるコンビニエンスストアの看板の設置に支障が生ずることが認められるから,やはり,原告においてその撤去を求めることができるというべきである。
他方,本件スタンドについては,他のテナントの置き看板との間で設置位置の調整は必要になるものの,現時点において原告又は他のテナントによる本件ビルの使用に具体的な支障が生じていることの主張立証はないから,原告においてその撤去を求めることは,権利の濫用として許されないというべきである。
4 結論
以上によれば,原告の請求は,被告会社に対し,本件ラティス及び本件ラティスに掲示されている本件掲示物並びに本件A型看板の撤去を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとする。
東京地方裁判所民事第16部
(裁判官 谷口安史)
〈以下省略〉
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Q&A【12】「ポスタリング」とはどのようなサービスですか?
Q&A【13】政治活動等の特殊な業界についてのポスター掲示交渉は難しいですか?
Q&A【14】政治活動用の街頭ポスター(二連|三連)貼りをお願いしたいのですが、特定政党の支援は可能ですか?
Q&A【15】政治活動におけるポスターについて公職選挙法や政治資金規正法等の知識はありますか?
Q&A【16】街頭で無料の「ウィン!ワッポン」をよく見かけますが、これで選挙の勝率が上がりますか?
Q&A【17】二連ポスターや三連ポスター製作前に「弁士の相手」のご提案もしてくれますか?
Q&A【18】ポスター「掲示責任者代行」とはどのようなものでしょうか?
Q&A【19】選挙妨害やその他クレーム対応等の代行も可能でしょうか?
Q&A【20】政治活動(選挙運動)における広報支援プランはどのようなものがありますか?
■営業専門会社による広報PR支援について
Q&A【21】飛び込み訪問、戸別訪問、挨拶回り代行等、ポスター貼り以外でもお願いできますか?
Q&A【22】飲食店や実店舗等の店内やトイレ等にポスターを貼ったり、ビジネスカード設置、チラシ配布等は可能ですか?
Q&A【23】全国どこでもポスター貼りが可能なのですか?
■ご検討中の方々に
Q&A【24】お問い合わせについて
Q&A【25】資料をダウンロード
Q&A【26】ノウハウ・テクニックを大公開!
■ご依頼(お申し込み)の前に
Q&A【27】お申し込みの流れ
Q&A【28】ご用意いただきたいもの
■ご依頼(ご契約)の後に
Q&A【29】進捗報告について
Q&A【30】お友達ご紹介キャンペーンについて
【ポスター【制作前の】候補予定者様】のメニューです。
「政治活動用ポスターのデザイン」は、こちらです。
公職選挙法規定の法的審査(レギュレーションチェック)対応済みの、個人ポスター、2連ポスター、3連ポスター等のデザインを制作!
「弁士相手探しマッチング」は、こちらです。
「探して、交渉して、お隣りへ!」理想の有名人や著名人の弁士相手を探して、地域有権者に対して認知度拡大の相乗効果を狙う!
「ポスターの掲示責任者代行」は、こちらです。
【全国対応】ポスターを掲示した選挙区からのクレーム対応・妨害等の「総合窓口」として、ポスター掲示責任者の代行をいたします。
【ポスター【制作後の】候補予定者様】のメニューです。
政治活動期間における「どぶ板専門!ポスター貼り(掲示交渉)代行」は、こちらです。
【稼働の流れ】
①新規ご挨拶回り|戸別訪問代行|握手代行
選挙区(指定エリア)の有権者(民家・飲食店・その他施設)に対して、候補予定者に代わって選挙ドットウィン!が直接ご訪問致します。
②名刺|ビラ|リーフレット等の手渡し配布
候補予定者と有権者を繋ぐため、名刺・ビラ・政策レポート・討議資料・リーフレットなど活動報告資料の直接手渡し配布を致します。
③留守宅|候補者PR資料ポスティング投函
ご訪問先がご不在の場合には、配布物を郵便受け等にポスティング投函致します。(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率!)
④政治活動ポスター貼り(新規掲示交渉!
【完全成果報酬】地獄のドブ板活動に必須となる、政治活動用ポスター貼り(新規掲示交渉代行!)(貼れた分だけの枚数課金となります)
⑤掲示(貼付)後のフォロー|クレーム対応
ポスター掲示(貼付)完了後における掲示許可承諾者へ、フォローやクレーム対応等のストレスな部分は選挙ドットウィン!が致します。
所属政党の「党員募集獲得代行」、政治団体および後援会等の「入会募集獲得代行」は、こちらです。
当該政党の「党員」「サポーター」募集等の規定に従って、選挙立候補(予定)者様に代わって政党への入党におけるご案内を促します。
どぶ板同行OJT(座学研修および実地特訓)で学ぶ「スパルタ個別訪問同行OJT」は、こちらです。
候補予定者様ご本人・選挙事務所スタッフ・ボランティア様が効率良く「どぶ板の政治活動」が行なえるようアドバイスいたします。
絶対的な地盤を構築する「立札看板設置交渉代行」は、こちらです。
選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立するためのご支援をさせていただきます。
あらゆる政治選挙におけるお困りごとを支援する「選挙の窓口」活動支援一覧は、こちらです。
「地上戦」「空中戦」「ネット戦略」などを駆使し、当選に向けたコンサルティングおよびプランニングのご支援をいたします。
■ポスターPRプラン一覧(枚数・サイズの選択)
選挙区エリアにおいて、ポスターの当該掲示許可承諾者に対して交渉し、同一箇所にどのように掲示するかをお選びいただきます。
【臨機応変型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率88% ★こちらをご確認下さい。
【連続二枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率6% ★こちらをご確認下さい。
【限定一枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率4% ★こちらをご確認下さい。
【個別指定型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率2% ★こちらをご確認下さい。
※ポスターのサイズは、A1サイズ、A2サイズをはじめ、ご希望に応じてご提案させていただきます。
■掲示場所・貼付箇所
「首都圏などの大都市」「田舎などの地方都市」「駅前や商店街」「幹線道路沿いや住宅街」等により、訪問アプローチ手段が異なりますので、ご指定エリアの地域事情等をお聞かせ下さい。
※貼付箇所につきましては、弊社掲示交渉スタッフが当該ターゲットにアプローチをした際の先方とのコミュニケーションにて、現場での判断とさせていただきます。
■訪問アプローチ手段
【徒歩圏内】
駅周辺の徒歩圏内における、商店街や通行人の多い目立つ場所でのPR
【車両移動】
広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン!の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
「全国統一地方選挙」・「衆議院議員選挙」・「参議院議員選挙」・「都道府県知事選挙」・「都道府県議会議員選挙」・「東京都議会議員選挙」・「市長選挙」・「市議会議員選挙」・「区長選挙」・「区議会議員選挙」・「町長選挙」・「町議会議員選挙」・「村長選挙」・「村議会議員選挙」など、いずれの選挙にもご対応させていただいておりますので、立候補をご検討されている選挙が以下の選挙区エリアに該当するかご確認の上、お問い合わせいただけますようお願いいたします。
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