どぶ板PR専門！新規開拓訪問営業PR×ポスター広告許可貼り交渉＋ビラチラシ配布ポスティング＝あなたの街の「ポスターPRドットコム」
あなたの街の「ポスターPR」貼る(掲示許可交渉)前に知っておきたい地域情報「貼り紙」2
裁判年月日 令和 2年 1月17日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 決定
事件番号 令元（ヨ）１００１５号
事件名 地位保全等仮処分申立事件
文献番号 2020WLJPCA01178002
出典
裁判年月日 令和 2年 1月17日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 決定
事件番号 令元（ヨ）１００１５号
事件名 地位保全等仮処分申立事件
文献番号 2020WLJPCA01178002
名古屋市〈以下省略〉
債権者 Ｘ
同代理人弁護士 伊賀興一
同 吉岡孝太郎
大阪府東大阪市〈以下省略〉
債務者 学校法人Ｙ
同代表者理事長 Ａ
同代理人弁護士 玉越久義
同 春木由香
同 安達貴大
同 新井健
主文
１ 本件申立てをいずれも却下する。
２ 申立費用は債権者の負担とする。
事実及び理由
第１ 申立ての趣旨
１ 債権者が，債務者に対し，雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。
２ 債務者は，債権者に対し，令和元年５月１日から本案第１審判決言渡しに至るまで，毎月２４日限り７５万８１７０円を仮に支払え。
第２ 事案の概要等
１ 事案の概要
本件は，債務者に雇用され，債務者の設置する大学で勤務していた債権者が，債務者が債権者に対してした解雇は無効であると主張して，雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めること及び賃金の仮払いを求める事案である。
２ 前提事実（争いのない事実並びに掲記の疎明資料等により容易に認めることができる事実）
(1) 当事者等
ア 債務者は，教育基本法及び学校教育法に基づき，教育事業を目的として，ａ大学（以下「本件大学」という。）等を設置・運営する学校法人である。
イ 債権者は，昭和３７年○月○日生まれの男性であり，平成１７年４月１日，債務者に入職し，本件大学経済学部の教授として勤務していた。
(2) 雇用契約の成立
債権者は，債務者との間で，平成１７年４月１日，期間の定めのない雇用契約を締結した（以下「本件雇用契約」という。）。本件雇用契約の賃金の締め日は毎月末日，支払日は当月２４日であり，後記(3)の解雇直前である平成３１年４月分の賃金（固定給部分）は，以下のとおりであった。
ア 本俸 ６３万１８００円
イ 地域調整手当 ５万６８７０円
ウ 住宅手当 １万９５００円
エ 通勤手当 ５万００００円
（以上につき，甲３）
(3) 解雇等
ア 債務者は，平成３１年１月２４日，債権者に対し，本件大学経済学部のＢ学部長（以下「Ｂ学部長」という。）に対する行為等がａ大学職員就業規則（以下「就業規則」という。）５３条１号，５号，９号，１２号，１３号，１４号及び１６号に規定する懲戒事由に該当するとして，就業規則５４条に規定する処分を確定するまでの間自宅待機することを命じた（甲５）。
イ 債務者は，平成３１年４月１日，債権者に対し，就業規則５４条５号により諭旨解雇に処する旨の意思表示をした（甲８）。
ウ 債務者は，債権者に対し，債権者を諭旨解雇の処分と決定したこと，平成３１年４月１７日午前１１時（郵送の場合は同月１８日必着）までに退職願を債務者の人事部人事課へ提出することを勧告すること，当該期限までに退職願が提出されなかった場合は，就業規則５４条５号の規定に基づき懲戒解雇に切り替わること等を記載した平成３１年４月２日付け「処分について」と題する書面を交付した（甲９）。
エ 債権者は，代理人弁護士を通じ，平成３１年４月１０日，債務者に対し，解雇は無効であり，債権者の職場復帰を認めるよう求める旨の内容証明郵便を送付した（甲１０）。
オ 債務者は，平成３１年４月１８日，債権者に対し，就業規則５４条５号により懲戒解雇に処する旨の意思表示をした（甲１１。以下「本件懲戒解雇」という。なお，以下において，上記イの諭旨解雇と併せて「本件懲戒処分」ということがある。）。
(4) 就業規則の定め
就業規則には，以下の定めがある（甲４）。
（勤務規律の原則）
第２１条 職員は，法人の諸規則を遵守し，所属長及び上司の業務上の指示命令に従って職場の秩序を守り，誠実にその職務を遂行しなければならない。
（中略）
３ 職員は，職場関係においてハラスメントに該当する言動等により，その労働条件上不利益を受けること，就業環境が害されること等がないように努めなければならない。
（勤務規律）
第２２条 職員は，勤務に関し，次の事項を守らなければならない。
(1) 学校職員としての品位を保ち，学園の名誉又は信用を傷つけるような行為をしてはならない。
（以下略）
（懲戒事由）
第５３条 職員が次の各号の一に該当する時は，懲戒に附する。ただし，その程度が軽微で情状酌量の余地がある場合は，懲戒を免じ訓戒にとどめることがある。
(1) 第２１条及び第２２条に規定する遵守事項に違反したとき。
（中略）
(5) 業務上の指示命令に従わず，職場の秩序を乱したとき。
（中略）
(9) 故意又は過失により，事故を起こし，又は法人に損害を与えたとき。
（中略）
(12) 刑罰法規に該当する行為等，職員として不適当な行為をしたとき。
(13) 他人に対し侮辱を加え若しくは暴行脅迫をしたとき。
(14) 不都合な行為により，学園の名誉又は信用を傷つけたとき。
（中略）
(16) その他，前各号に準ずる不都合な行為のあったとき。
（懲戒事由）
第５４条 懲戒は，その情状の軽重によって譴責，減給，出勤停止，降職及び懲戒解雇の処分とする。
（中略）
(5) 諭旨解雇 退職願の提出を勧告し，これに応じない場合は，懲戒解雇とする。
(6) 懲戒解雇 予告しないで即時解雇し，退職手当は支給しない。この場合行政官庁の認定を受けたときは，予告手当も支給しない。
（懲戒の方法）
第５５条 懲戒を行うときは，譴責の場合を除き，その都度懲戒委員会を設け，その議を経て理事長が行うものとする。
２ 懲戒委員会については，別に定める。
３ 懲戒に当たって必要と認めたときは，本人に弁明の機会を与えることがある。
（自宅待機）
第５６条 懲戒処分に該当する行為をした者に対し，必要があるときは，処分が決定するまで，当該職員の就業を差し止め，自宅において待機させることがある。
第３ 争点
１ 本件懲戒解雇の有効性（争点１）
２ 保全の必要性（争点２）
第４ 争点に対する当事者の主張
１ 争点１（本件懲戒解雇の有効性）について
【債務者の主張】
(1) 懲戒事由について
債権者は，以下の行為を行ったところ，これらの行為は，就業規則５３条１号，５号，９号，１２号，１３号，１４号及び１６号に掲げる懲戒事由に該当する。
ア 誹謗中傷メールの送信
（ア） 債権者は，Ｃ准教授（以下「Ｃ准教授」という。）提出の履歴書に記載された西暦の千の位が消えていた等で見えなかったことから，平成３０年４月２５日，Ｃ准教授から送信された補助員採用に関するメールを受けて，経済学部メーリングリストに対し，「私は下記のメールを出された方が，どういう立場でどのような観点からこのメールを出したのか全く理解できません。」「私はこの方がａ大学経済学部に公募して来られた際に，平安時代に職歴があるという手書きの履歴書を出されたのを目撃しています。」と記載したメールを送信した。
（イ） 債権者は，平成３０年５月８日，経済学部メーリングリストに対し，①Ｄ准教授（以下「Ｄ准教授」という。）に関して，「この教員はｂ大の助教時代，教授会で任期付ポストであるため，大学院のゼミ生を採らないように言われていたのにもかかわらず，自分で使うためゼミ生を採りました。」，「彼はそのような無責任な人間で私は全く信用できません。」と記載し，②Ｃ准教授に関して，「ａ大に公募してきた際に，平安時代に職歴があるという手書きの汚い履歴書を送りつけて来ました。」，「ａ大に着任してすぐの４月の学部生向けガイダンスを，何の連絡もなしに当然のようにサボりました。非常識な行動です。」と記載し，③「私はｂ大の大学院卒（学部がｂ大の経済学部である者は除く）の年配者でない人材や，その周辺の人材は採用すべきでないし，そのような人物を採ると長年にわたって経済学部が大きな負債を抱え込むため，やめた方がいいと思います。そなこと（原文ママ）をするぐらいなら，犬でも採った方がマシであると私は考えます。研究者としてよりもまず，人として失格だと私は思うからです。また科研費もしくは研究機会欲しさに彼等にまるで金魚の糞のようにつきまとっている（特にｂ大系の）教員を私は心から軽蔑します。彼等を採用してしまったのは，大きな損失ですが，それに関しては，・・・前学部長がもっとも大きな責任を負うことは明らかです。彼は最低の学部長であり，彼が脳幹出血に倒れても私は全く同情の余地がありません。」と記載したメールを送信した。
（ウ） 債権者は，Ｄ准教授がｃ大学と共同で行ったフィールド調査の結果がａ大学経済学部のホームページに掲載されたことについて，平成３０年２月２８日，経済学部メーリングリストに対し，「これをわざわざ大学のｗｅｂにして世に流布しなければならない必然性が私には理解できません」と記載したメールを送信した。
（エ） 債権者は，フィールドワークの実施に関し，平成３０年７月１７日，経済学部の教職員あてに，以下の内容を含むメールを送信した。
① 「次期学部長選挙のための活動で，仰々しさを高めて現職に対する投票を促そうという悪巧みと判断されても弁明の余地はない」
② 「私はどんな致命的なミスをしても絶対に謝罪しない卑怯なＢ学部長・・・」
③ 「結局権力にとりつかれた者は信用できないということが分かりました。誤りをきちんと謝罪できる有能な学部長が望まれるばかりです。」
④ 「事前に何の連絡もなしに勝手にやるから非難されるのが分からない程あなたは愚かなのですか？」
⑤ 「人として問題があると思われても仕方がないと思います。」
⑥ 「Ｂ学部長以外の教職員の方々は，十分お体にご留意ください。」
（オ） 債権者は，平成３０年８月から９月にかけて，経済学部事務部から送付されたメールでの教授会開催通知に対し，「１０／２２＝４５．５％の教授が支持していないＢ学部長主催のこの教授会には，私は出席いたしません。」と複数回返信した。
イ 「キライな教員」と書かれた紙面の掲示
債権者は，平成２８年後半から約半年間，債権者のオフィスに，計５名の教員の氏名が列記され，その下に「キライな教員」と記載された紙を掲示した。
ウ Ｂ学部長に対する暴力行為
（ア） Ｂ学部長及びＥ経営学部長が，平成３０年１０月３０日午後２時３１分頃，債務者ｄキャンパスの３０号館及び３１号館の間の通路（以下「本件通路」という。）で立ち話をしていたところ，債権者が，右手に持った手提げかばんをＢ学部長の左ふくらはぎに衝突させ，Ｂ学部長が全治１０日間の傷害を負った（以下「本件事件」という。）。
（イ） 本件事件が発生した本件通路の幅員は約６．１メートルあり，二，三名が立ち話をしていても十分に余裕があって，通行人が立ち話をしている人と接触するような状況ではない。
また，犯行時刻である午後２時３１分は，３時限（午後１時１５分から午後２時４５分まで）の授業時間中であり，本件通路の人通りは少なかった。防犯カメラに一部残された暴行現場の様子からも，債権者のかばんがＢ学部長の左ふくらはぎに衝突した際の衝撃の大きさがうかがえる。
本件事件についての刑事裁判では，債権者は，過失傷害罪で起訴されているが，上記のとおり，本件通路は広い通路であるにもかかわらず，債権者がわざわざ立ち話をしているＢ学部長のすぐ左をＢ学部長に接するように早足で通り過ぎる様子，Ｂ学部長がかばんから受けた衝撃の強さ及びＢ学部長の受けた傷害（左腓腹筋挫傷により１０日間の加療）の程度からしても，債権者がＢ学部長を狙い，故意にかばんをぶつけたというほかない。
なお，債権者は，本件事件以前から，Ｂ学部長のメールボックスにゴミを投かんしたり，誹謗中傷するメールを多数送付したりするなど，Ｂ学部長に対して悪質なハラスメント行為を繰り返し行っていた。このような債権者のＢ学部長への不当かつ執拗な攻撃性が本件傷害事件につながったものといえる。
（ウ） なお，債権者は，本件事件が裁判で決着していない旨主張する。
しかし，債権者は，平成３０年１２月２６日，Ｂ学部長に対し，かばんを当てたことやけがを負わせたことを認めた上で，１０万円の支払による示談の申入れを行っており，少なくとも過失傷害については自認していた。また，略式命令手続においては，被疑者に異議のないことが要件とされているから，略式命令請求の時点においても，債権者は過失傷害の限度では自認していた。それにもかかわらず，債権者は正式裁判を請求し，無罪を主張しており，現在も審理が継続しているところ，刑事裁判において債権者の刑罰が確定していないのは，債権者が不可解な不服申立てを行い，刑事裁判の結論を先延ばしにしているからに他ならない。
(2) 懲戒処分が権利の濫用でないことについて
ア はじめに
債務者は，学校法人として学生に授業を提供する責務があり，学生の安全を確保しつつ教育を実施し，人格の陶冶を行うべき機関である。その中でも，大学教員は，特に質の高い教育を実施し，また学生の人格形成にとって悪影響となるような行動を行うことは決してあってはならない。そのため，債務者では，上記の社会的責務を負う教育機関として，学生に対する悪影響が認められかつその危険がある場合には，特に厳しい処分を実施する。
イ 懲戒事由に関する評価等
上記(1)のハラスメント行為は，いずれも，著しい人格権侵害や上司に対する暴行など悪質といわざるを得ないほか，債権者は，以下のとおり，これまでにも度々懲戒事由に該当する問題行動を繰り返していた。このような債権者の行為は，学生と接し，教育を行う者として決してあるまじき行為であるばかりか，学生に対する安全配慮及び教育的配慮の観点からも決して容認せざる行為である。また，債権者は，上記の行為につき繰り返し債務者から注意を受けているにもかかわらず，全く反省する様子も認められない。
（ア） 研究室への不適切な張り紙
上記(1)のハラスメント行為より前から，債権者は，研究室に不適切な掲示物の掲示を繰り返しており，その都度，経済学部から注意を行っていたものの，掲示物を容易に撤去しなかった。
（イ） 卒業アルバムについて
債権者は，卒業アルバムの債権者のゼミナール紹介の頁に，あろうことか，債務者の謝罪会見におけるＦ副学長（当時）の頭を下げた写真を掲載しようとした。たまたま，経済学部事務部が当該事実を発見したため，訂正シールによる対応を行ったが，これにより債務者には相当の損害が生じた。
（ウ） 学生への不適切な言動
債権者は，平成２５年，債権者の講義を受講している約５０人の学生の前で，特定の学生に対し，「このゴミが，クズ」，「お前なんか死んだってかまわない」などとおよそ教育者としてあってはならない発言を行って学生を侮辱した。また，学生に向けてかばんやいすを投げるなど，およそ常識では考えられない粗暴な行動を行った。
（エ） Ｇ教授への侮辱的行為
債権者は，上記(1)イの「キライな教員」としていたＧ教授が脳出血で倒れ，闘病していることを知ると，Ｇ教授の研究室の壁に「Ｈ博士死去」の新聞記事を掲示した。この行為は，難病のため身体が不自由で車いすで生活をしていたＨ博士とＧ教授の病状を重ね合わせており，Ｇ教授に対する極めて悪質な侮辱的行為である。
（オ） 債務者理事長等への誹謗中傷
債権者は，自身の研究室に「組織は頭から腐っていく」という雑誌記事を掲載し，あろうことか，その雑誌記事の中央に債務者理事長（当時）の顔写真を張り付け，この記事の「頭」という文言と理事長を重ね合わせて理事長を誹謗したり，債権者の研究室の上部に，上記イの副学長の謝罪の写真を掲載したりするなど，他人を誹謗中傷し，侮辱する行為を継続してきた。
ウ 他の事例との均衡
債務者は，平成１４年から合計１６件の懲戒解雇及び諭旨解雇を行っているところ，諭旨解雇になった事案としては主に次のようなものがある。これらはいずれも，傷害の結果を惹起し，刑事裁判手続を受けている本件と比較して，決して悪質であるとはいえない事案である。
（ア） 准教授による女子学生に対するハラスメント（平成２４年７月）
（イ） 教授による万引き現行犯に伴う任意調査事案（平成２９年５月）
（ウ） 准教授の教職員に対する侮辱・脅迫事案（平成２９年７月）
（エ） 職員による学生へのハラスメント（平成２９年８月）
（オ） 准教授による著作権法違反（令和元年８月）
（カ） 准教授による大阪府迷惑防止条例違反（駅構内での盗撮）（令和元年８月）
エ まとめ
債権者は，Ｂ学部長に対し故意にかばんをぶつけて傷害を負わせ，また「犬でも採ったほうがマシ」などと人格を否定する悪質かつ執拗なハラスメントを行っていること，過去にも繰り返し問題行動が認められており，再度同様の事案を繰り返すおそれが強いこと，ハラスメントに関する調査調停委員会の調査にも協力せず，懲戒における弁明にも来ないなど，全く反省の態度が見えないことも併せ鑑みる場合，諭旨解雇処分は極めて穏当な処分である。
(3) 懲戒処分手続に違法がないこと
ア 債権者は，本件懲戒解雇は，裁判で未だ確定していない過失傷害の事実を理由として急きょ行ったものであり，手続的不全がある本件事件が裁判で決着していない旨主張する。
しかし，債権者は，平成３０年１２月２６日，Ｂ学部長に対し，かばんを当てたことやけがを負わせたことを認めた上で，１０万円の支払による示談の申入れを行っており，少なくとも過失傷害については自認していた。また，略式命令手続においては，被疑者に異議のないことが要件とされているから，略式命令請求の時点においても，債権者は過失傷害の限度では自認していた。それにもかかわらず，債権者は正式裁判を請求し，無罪を主張しており，現在も審理が継続しているところ，刑事裁判において債権者の刑罰が確定していないのは，債権者が不可解な不服申立てを行い，刑事裁判の結論を先延ばしにしているからにほかならない。
イ 債務者は，平成３１年３月８日，就業規則及び懲戒委員会規程に基づき懲戒委員会を開催し，債権者の懲戒処分を決定した。債務者は，懲戒委員会に先立つ同月４日，弁明の機会を付与し，弁明の機会の場においても，調査調停委員会報告書記載の事実を逐一確認した。
債権者は，懲戒解雇処分の際に，再度，弁明の機会を付与しなかったことを問題視するが，そもそも諭旨解雇処分は「退職願の提出を勧告し，これに応じない場合は，懲戒解雇とする」旨の懲戒処分であるから，債権者が退職願の提出に応じなかったことにより，諭旨解雇処分の効果として懲戒解雇処分となったにすぎない。
ウ 以上のとおり，債務者の懲戒処分手続に違法はない。
(4) 本件懲戒処分が不当労働行為ではないこと
本件懲戒処分は，債務者の適正な手続にのっとり行われたものであり，教職員組合の組合員であることを理由とするものではなく，不当労働行為に該当しない。
(5) 小括
以上のとおり，本件懲戒解雇は有効である。
【債権者の主張】
(1) 懲戒事由について
以下のとおり，債権者には懲戒事由は存在しない。
ア 誹謗中傷メールの送信について
（ア） 平成３０年４月２５日のメールについて，その内容は認めるが，Ｃ准教授が本件大学に提出した手書きの履歴書には，西暦の千の位が記載されていなかったので，その事実を指摘したにすぎず，解雇理由たり得ない。かえって，誤字脱字等の指摘は教員にとっては必要な資質ともいうべきである。
（イ） 平成３０年５月８日のメールについて，その内容は認めるが，①債権者は，Ｄ准教授がｂ大学の任期付助教からａ大学の准教授に転籍するときに，Ｄ准教授が採用したゼミ生の扱いをどうするかがｂ大学で問題になったと聞いたため，これを指摘したものであり，②同僚教員から，Ｃ准教授が着任直後の４月に開催された学生に対するオリエンテーションを無断で欠席したことを聞いたため，これを指摘したものであり，いずれも解雇理由たり得ない。また，③債権者から見て，ｂ大学出身の研究者が世に真に役立つ研究をするというよりも，科研費欲しさのために研究をしているように映ったことから批判したものであるが，メールの表現内容が不適切なものを含んでいた点については，反省しており，その旨は弁明の機会でも伝えている。この件を解雇理由の一つに挙げるのは，研究者同士の批判と自己批判を抑制する債務者の体質を示すものではあっても，解雇理由たり得ない。
（ウ） 平成３０年２月２８日のメールについて，その内容は認めるが，債権者の私見を述べただけであり，解雇理由たり得ない。
（エ） 平成３０年７月１７日のメールについて，その内容は認める。当該年度は，経済学部のフィールドワークの授業と通常授業がバッティングするように設定されたり，海外研修の事前説明会と統計学の補講がバッティングするように設定されたりした。そのため，債権者を含む一部の教員や学生に大きな混乱を招いたことから，債権者は，責任者であるＢ学部長に対して，関係者に謝罪する等の必要があると伝えた。しかしながら，Ｂ学部長は，謝罪もすることなく，学生が欠席の連絡を各教員へすべきものであり，それも指導の一環であるという開き直りをした。そのために，上記のメールをしたものである。債権者のメールには不適切な表現も含まれるが，懲戒以前の問題として指摘し，是正を求めればすむ問題であり，解雇理由たり得ない。
（オ） 平成３０年８月から９月にかけての教授会開催通知に対する返信内容は認める。債権者は，上記（エ）の不手際に対して，Ｂ学部長が誠実に対応しないと感じたため，Ｂ学部長を支持しないという債権者の見解を示したにすぎない。経済学部事務長も，白票及びＢ学部長以外の票が１０票あったことを認めて，その旨を経済学部教員全員にメールで送信しており，債権者の指摘の事実は誤っていない。それゆえ，償権者の上記指摘は解雇理由たり得ない。
イ 「キライな教員」と書かれた紙面の掲示について
紙を掲示したという点は否認し，その余の事実は認める。
平成２８年後半から約半年間，研究室内のホワイトボードに記載し，研究室の扉にあるすりガラス越しに，研究室の外からであっても注意して見れば見ることができた。その当時，債務者よりハラスメントとは指摘されておらず，関係者はハラスメントと認識していなかった。今般，突然にハラスメントとしてついでに付け加えられて申し立てられたものであり，内容からも以上の経緯からも，解雇理由たり得ない。
ウ Ｂ学部長に対する暴力行為について
（ア） 平成３０年１０月２０日午後２時半頃，債権者の手提げかばんがＢ学部長の身体に接触した事実は認め，その余の事実は否認する。
（イ） 債権者は，年末調整の書類の提出後に研究室に向かって本件大学構内の道路を歩いて移動していた。年末調整の書類を提出する際に待たされたこともあり，午後３時から始まる授業の準備が間に合わないかもしれないと思い，授業の準備の段取り等のことを考えながら，急ぎ足で歩いていたため，周囲に対する注意が散漫になり，所持していた手提げかばんが道路の中央付近で雑談していたＢ学部長の足付近に接触した。債権者は，接触したことは感じたものの，急いでいたこと等もあり，そのまま研究室に向かった。その後，Ｂ学部長は，布施警察署へ傷害の被疑事実で被害届を提出したようである。債権者は，警察から呼出しを受けて，診断書の存在を知り，弁護人を通じて謝罪の意思表示をしている。
検察庁は，本件を過失傷害罪として略式起訴し，東大阪簡易裁判所は，債権者に対して，１０万円の罰金の支払を命じた。なお，債権者は，債権者が所持していたナイロン製のかばんで傷害が生じうるか疑わしかったため，正式裁判への移行を求めた。
（ウ） 本件は過失行為にすぎないし，多くの教職員や学生がいる学内において同様の事件が起こることは十分ありうることであり，解雇理由たり得ない。
債務者は，債権者に暴行の故意があった旨主張するが，防犯カメラの映像は，債権者のかばんの接触そのものを映しておらず，債権者が殊更かばんを振り上げたことも認められない。むしろ，同映像からは，債権者が研究室に向かって本件通路を急ぎ足で歩行中でのアクシデントであったことが明らかである。
また，債務者は，傷害の程度を指摘するが，債権者が所持していたかばんはパソコン等の重量物が全く入っていないナイロン製のかばんであり，同かばんが身体に接触した場合に人の生理的機能を害するようなことになるのか疑問が残る。この点について慎重な審理を行っている刑事手続の結果を待たずに一方的に解雇することは，解雇権の濫用であることを強く示すものである。
(2) 本件懲戒処分が権利の濫用であることについて
上記(1)のとおり，債務者の主張するような暴力行為は存在しないし，問題とされている債権者の表現行為の範囲も限定的である上，学内問題を議論する中で行われたものであり，業務上の必要性や関連性を全く欠くものとはいい難く，行為の悪質性が高いとはいえない。
また，過失暴行あるいは過失傷害の事実で解雇とするのは，故意行為に対する懲戒処分例と比べても著しく不均衡である。
加えて，債権者が，弁明の機会において「ハラスメント」と評価されたメールの表現に不適切な点があったことは認めて謝罪の意思を表明し，かばんによる接触行為についても弁護人を通じて謝罪の意思を示していること，他の事例との均衡，債権者の研究業績及び教育業績，債務者より懲戒処分や注意指導を受けていなかったこと等を踏まえると，懲戒解雇及びその前提である諭旨解雇という極めて重い処分に処すべきものとすることは重きに失する。
したがって，本件解雇は，裁量権の範囲を逸脱し，懲戒権を濫用するものであり，無効である。
なお，債権者が指摘するその余の「問題行動」についての認否反論は，以下のとおりである。
ア 卒業アルバムの件について
債務者主張の事実は認める。本件大学ボクシング部の不祥事があり，その年度の大きなトピックであった。この事件に関する謝罪会見の際の報道記事は一般にインターネットで公表されており，誰でも容易に入手することが可能であった。また，経済学部のアルバム委員会も了解の上，掲載しようとしたものである。解雇理由たり得ない。
イ 学生への不適切な言動について
債務者主張の事実は認める。いずれの件についても，債権者は，懲戒処分も学部長からの注意も受けておらず，解雇理由たり得ない。
(3) 本件懲戒処分の手続に違法があること
ア 本件懲戒処分は，裁判で未だ確定していない過失傷害の事実を理由として急きょ行ったものであり，手続的不全がある。
イ 債務者は，懲戒委員会を開催し，債権者に対して弁明の機会を与えて諭旨解雇処分にしているが，その後に懲戒解雇という新たな懲戒処分を行う際，債権者に対して当該懲戒解雇についての弁明の機会を一切与えていないから，就業規則５５条所定の手続違反が認められる。
(4) 本件懲戒処分が不当労働行為であること
本件懲戒処分は，債権者が加入する教職員組合と債務者との労使対立が激しい現状において，教職員組合の執行委員である債権者を殊更排除することを目的にしているのは明らかであり，不当労働行為というほかない。
(5) 小括
以上のとおり，本件懲戒解雇は無効である。
２ 争点２（保全の必要性）について
【債権者の主張】
(1) 地位保全の必要性について
ア 債権者は，図書館の利用が制限され，研究上不可欠なデータベース（日本経済新聞社の日経テレコン，債権者が申請し学部予算で購入しているトムソン・ロイター社の世界経済データベースであるＤａｔａｓｔｒｅａｍ等の個人では高価で利用することができない重要なもの）の利用も不可能な状況に陥っている。また，出版社は大学の教員に著書の執筆を依頼することが普通であるし，本件懲戒解雇により債務者が発行する紀要の投稿資格も失われ，研究成果を発表する機会を喪失した。さらに，本件懲戒解雇により個人研究費の支給も停止され，研究室の使用が禁止され，学生等との情報交換の場も失った。そして，債権者が大学教員として就業能力を維持するためには教育にも継続的に携わり，現場で研究成果を学生に還元することが必要であるが，本件懲戒解雇によりそうした機会も失った。
イ 債権者は，学会でも理事職を歴任し，ｅ管理組合港湾政策経営アドバイザーやｅ管理組合個人情報保護審議会委員を務めている。こうした職は，債権者が本件大学経済学部の教授であることを前提にして就いているものであるが，対外的に本件大学経済学部の教授としての活動ができなくなるとすると，上記の職を喪失したりする可能性も大きい。さらには，これまで積み重ねてきた対外的信用も失うことになり，その回復は困難である。
ウ 以上のとおり，債権者は，教育・研究活動に従事する者であり，債務者の教職員の地位を離れては，債権者の教育・研究活動に著しい支障が生ずるから，債務者との間で労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めなければ，債権者に回復し難い著しい損害が生じることは明らかである。
(2) 賃金仮払いの必要性について
ア 本件解雇により債権者の収入が一切途絶えたことから，別紙家計収支表記載のとおり，債権者夫婦の世帯収入は，債権者の妻の給与収入（約１０万円）しかない。
他方で，債権者夫婦の月額支出は，債権者夫婦の小遣い，裁判費用といった実際に支出している費用を除いても，４５万円以上もあり，３５万円以上の支出超過がある。加えて，前述の支出として計上していない費用や固定資産税等の税金の支払があることや，刑事・民事裁判の出廷と打ち合わせがより頻繁になり交通費や宿泊代がより多額になること，また，債権者が所属する複数の学会年会費や参加費支払いも多額に及ぶこと等を踏まえると，さらに支出超過であることは明らかである。
イ なお，債権者夫妻は預貯金を一定額有しているが，それにより保全の必要性が減少するようなことはない。保全の必要性は債務者の違法行為によりこれまで得ていた収入を失ったかどうかで判断されるべきであるし，本件のように被保全権利が明確に認められる事例において，債権者に対して老後に備えて貯蓄していた預貯金を切り崩して生活するように強いることは著しく正義に反するからである。
この点を措いても，債権者及び債権者の妻の預貯金の残高からしても，賃金仮払いの仮処分の保全の必要性も優に認められる。
【債務者の主張】
(1) 地位保全の必要性について
ア 債務者の任意の履行は期待できないこと
（ア） 債務者は，本件事件発覚から，平成３１年１月２４日に債権者に対する自宅待機の決定を下すまでの間，警察の捜査の動向を確認しつつ，慎重な事実確認を行う必要があったが，その間にもＢ学部長へさらなる危害が加わるおそれがあったため，債務者は，Ｂ学部長へ警備員を配備し，本件大学のｄキャンパス内の移動の際には，常に身辺警護を行わせていた。
また債権者は，同年２月１日，自宅待機中であるにもかかわらず，無断で本件大学に来校したため，大学職員が注意したところ，当該職員へ「組織の犬」などといった暴言を吐くなどの悪態をついた。
（イ） このような債権者の言動や，本件懲戒処分となった事実に対する反省が認められないことを考慮すれば，被害者の所属している経済学部へ債権者を復帰させることはおよそ不可能であり，万一，地位保全が認められたとしても，債務者としてはｄキャンパスへの出勤を認めることはできない。
よって，債務者の任意の履行は期待できないのであり，地位保全の必要性は認められない。
イ 債権者の権利又は利益に関し，著しい損害又は急迫の危険が生じることがないこと
（ア） 教授として講義を担当させる利益が存しないこと
大学設置基準１０条によれば，「大学は，教育上主要と認める授業科目（以下「主要授業科目」という。）については，原則として専任の教授又は准教授に，主要授業科目以外の授業科目についてはなるべく専任の教授，准教授，講師又は助教に担当させるものとする」と規定されている。この点，本件大学経済学部においては，基礎ゼミが１学年次前期の必修科目とされているところ，基礎ゼミは，大学へ入学してきたばかりの１年生にとって，大学生活へ適応させ，基礎的な能力を養う上で非常に重要な科目であり，専任教員が担当すべき主要授業科目である。
ところが，債権者は，独自の見解に基づき，各教員の責任コマ数が１０コマであることや，平成３１年度（令和元年度）の基礎ゼミを担当しないことを主張し，スト権を行使してまでも基礎ゼミの担当を拒否するという強硬な姿勢をとった。
このように債権者は，極力講義を担当しないような態度を示し，専任教員として担当すべき講義を行うこと，すなわち債務者に対する労務提供を拒否しているのであり，債権者は，債務者が保障すべき雇用契約上の権利又は利益を有しないといわざるを得ない。
（イ） 図書館等の利用実績が極めて少ないこと
債権者は，「図書館の利用が制限され，研究上不可欠なデータベースの利用も不可能な状況に陥っている」と主張する。
この点，図書館で利用することができるデータベースの１つに，債権者の主張する日経テレコンが挙げられるが，直近２年間の図書館利用実績を調査したところ，債権者が図書館を利用したのは，平成２９年４月２０日の１回のみであった。さらに，債権者が着任した平成１７年４月１日から解雇されるまでの間の図書の貸出利用状況についてみると，債権者が貸出を利用したのは，入門書１冊のみであった。
このように債権者は，学者としておよそ考えられないほど図書館の利用頻度がなく，債務者が設置する図書館を利用したことがないというに等しい状態で，とりわけ近年は全くと言っていいほど図書館を利用しておらず，債権者の研究活動に債務者設置の図書館は必要がないと認められるのであるから，そもそも債権者には，図書館の利用が認められないことによる著しい損害または急迫の危険は存しない。
（ウ） 債権者の主張する理事職等はａ大学経済学部の教授であることが前提ではないこと
債権者が主張するいずれの職についても，債権者が債務者を解雇されたために理事職等を失ったという事実は認められない。また，「ｅ管理組合港湾政策経営アドバイザーの設置に関する規則」や「ｅ管理組合個人情報保護条例」においては，港湾政策及び港湾経営に関して専門知識及び経験を有する者あるいは，学識経験を有する者から任命されると規定されており，大学教授であることは要件とされていない。
したがって，地位の保全を認めなくとも，上記職を失う可能性は極めて低く，著しい損害又は急迫の危険が生じることはない。
（エ） 債権者が近年研究論文や書籍を執筆していないこと
債権者の近年の業績をみると，論文については平成３０年に紀要を投稿したのみであり，書籍については約２０年間執筆を行っていない。
また，科学研究費補助金に関しては，平成２６年度から平成３０年度まで５年連続で申請したものの採択されておらず，また，平成２４年度及び平成２５年度には，申請すらしていない。
したがって，上記（イ）のように図書館やデータベースの利用実績がほぼないこと，近年，債権者がほとんど研究業績を上げていないこと，債権者の研究領域が経済学であり特段債務者の施設利用を必要とするものではないことから，債権者に研究室の利用を認めなくとも，債権者に著しい損害又は急迫の危険が生じるものではない。
（オ） まとめ
以上のとおり，債権者の引用する判例の立場に拠ったとしても，債権者の権利又は利益に関し，著しい損害又は急迫の危険が生じることはないから，地位保全の必要性は認められない。
(2) 賃金仮払いの必要性について
ア（ア） 債権者は，債務者から毎月７５万円程度の給与が支払われていた。債権者は，配偶者と２人暮らしであり，配偶者の収入を併せると，世帯収入は８５万円を優に超える。他方，債権者の支出は，４５万円程度に留まる。したがって，債権者は，毎月４０万円以上の貯蓄が可能であったため，相当な資産を有していることが推認される。
（イ） なお，債権者は，現在の預金額は合計金３５１万７２１８円である旨主張するが，債権者の年収が優に１０００万円を超えていたこと，平成１７年４月に債務者に採用されてから１３年以上の間，当該高額の給与を取得し続けていたこと，債権者は債務者に勤務する以前から途切れることなく長年にわたり大学教員を務めてきたこと，既に債権者が５７歳であることから，上記預金額が債権者の流動資産の全てであるとは信用できない。仮に，債権者の預金額が債権者主張のとおりであったとしても，配偶者の預金を合わせた世帯の預金額は約８６４万円になることから，すぐさま家計が逼迫するような状況にはない。
イ また，債権者は，諭旨解雇処分に対し，退職届を提出し，退職金（９３９万６９０２円）を受領した上で争うことも可能であったが，債権者は退職金を受領せず，本件申立てを行っている。債権者が約９４０万円もの退職金を必要としていないことからも，債権者は相当な資産を有していることが推認される。
ウ 以上のとおり，債権者に賃金仮払いの必要性は認められない。
第５ 当裁判所の判断
１ はじめに
本件の事案に鑑み，保全の必要性から検討する。
２ 争点２（保全の必要性）について
(1) 地位保全の必要性について
ア 債権者の主張
債権者は，債務者との間の雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めなければ，①図書館の利用が制限される，②著書の執筆の機会及び債務者が発行する紀要への投稿資格が失われ，研究成果を発表する機会を喪失する，③個人研究費の支給も停止され，研究室の使用が禁止され，学生等との情報交換の場を失う，④債権者が大学教員として就業能力を維持するために，教育に継続的に携わり，現場で研究成果を学生に還元する機会を失う，⑤外部の職を喪失する可能性が大きい，⑥これまで積み重ねてきた対外的信用も失う，以上の点から，債権者に回復し難い著しい損害が生じる旨主張する。
イ 判断
（ア） ①図書館の利用が制限される点について，疎明資料（甲２２の①，②，２３）及び審尋の全趣旨によれば，債権者が，平成２９年４月１日から平成３１年１月２３日（前提事実(3)アの自宅待機命令が発出される前日）までの約１年９か月の間に，債務者の図書館を利用したのは平成２９年４月２０日の１日のみであったこと，債権者が，債務者の入職以降に図書館から借り出したのは，平成２５年１月から３月にかけて借り出したＡＶ（視聴覚）資料の「プライマリー経済学入門」１巻ないし１０巻の計１０枚のみであり，書籍の借出しはないこと，以上の事実が一応認められる。債権者による債務者の図書館の上記利用状況に加え，今日万人が利用可能な図書館が数多く存在することを併せ鑑みれば，債務者の図書館の利用を制限されることをもって，債権者に回復し難い著しい損害が生じるとはいえない。
（イ） ②研究成果を発表する機会を喪失及び③個人研究費の支給停止・研究室の使用禁止について，疎明資料（乙２６）及び審尋の全趣旨によれば，債権者による著書の執筆は，直近が平成１２年発行のものであること，債権者による債務者の紀要である「○○」への投稿は平成３０年７月のもののみであること，債権者は，科学研究費補助金について，平成２４年度及び平成２５年度は申請せず，平成２６年度から平成３０年度までの間は申請したが採択されなかったため支給されていないこと，以上の事実が一応認められる。これらに加え，疎明資料（乙２６）によれば，債権者は，過去に債務者の紀要以外にも論文を投稿していると一応認められること，債権者の研究領域が経済学であり必ずしも債務者の施設利用を必要とするものではないこと，研究室の使用が情報交換のために必須と一応認めるに足りる的確な証拠も認められないことからすると，上記②及び③をもって，債権者に回復し難い著しい損害が生じるとはいえない。
（ウ） ④教育に継続的に携わり，現場で研究成果を学生に還元する機会を失う点について，〈a〉上記第１の１記載の申立ての趣旨では，仮に仮処分命令が発令されたとしても，その命ずる義務の内容が包括的かつ概括的となるために，仮処分命令の文言に応ずる強制執行をなす余地がなく，上記の包括的かつ概括的な権利義務関係を基礎として派生する具体的な義務の履行については，債務者の任意の履行を待たなければならないこととなること，〈b〉一般に，労働者に使用者に対する就労請求権を認めることはできないと考えられること，〈c〉保全によって認められるのはあくまでも仮の地位であるところ，本件大学の在校生に教育を提供する義務がある債務者が，上記任意の履行として，そのような不安定な地位にある教員に講座を開講させて在校生たる学生に教育を受けさせることはおよそ期待できないこと，以上の点からすると，債権者が求める地位保全の仮処分命令を発令したとしても，上記④に係る「債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避ける」ことにならない。よって，上記④の点を理由とする保全の必要性は認められない。
（エ） ⑤外部の職を喪失する可能性が大きい点について，これを一応認めるに足りる的確な証拠は認められない。
（オ） ⑥これまで積み重ねてきた対外的信用の点については，債権者の主張する「対外的信用」自体抽象的であり，どのような信用がどのように毀損され得るのかが明確ではなく，「債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険」があると直ちに認め難い上，保全によって認められるのはあくまでも仮の地位であり，本案訴訟の確定まで債務者との係争中であることに何ら変わりはないのであるから，債権者が求める地位保全の仮処分命令を発令したとしても，「債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避ける」ことにはならない。
（カ） 以上のとおり，債権者に地位保全に係る保全の必要性があることについて疎明がなされているということはできない。
(2) 賃金仮払いの必要性について
ア 疎明資料（甲１７，３０ないし３６）及び審尋の全趣旨によれば，債権者は，債権者の配偶者との２人家族であること，世帯支出額は，平成３１年２月度が４５万８１００円（帰省費３万円を含む。），同年３月度が６１万５７００円（スマートフォン購入代４万０２００円及びノートパソコン修理代６万０４００円を含む。）であること，債権者の配偶者の収入は月額１０万３１６７円であること，債権者名義の銀行預金は，少なくとも合計３４８万７２１８円存在すること，債権者の配偶者名義の銀行預金は，少なくとも５１３万２４３５円存在すること，以上の事実が一応認められる。
イ 上記事実からすると，債権者世帯は，特別な支出を除き，毎月約３０万円程度の赤字であることとなるが，そもそも債権者の上記２か月の支出額自体が２人家族の支出額としては相当高額であり，このような高額な支出がまかなえないことをもって「債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避ける」ための必要があるとはいい難い。加えて，①債務者は，債権者に対し，従前，手取額としても毎月５０万円以上の給与を支給しており（甲３），賞与額も相当高額であったと推認されること，②債権者は，上記２か月（平成３１年２月及び３月）の時点で，債務者から懲戒処分を確定するまでの間自宅待機を命じられているが（前提事実(3)ア），その状況にあっても，債権者の支出額は上記の相当高額なものであり，また高額な電子機器の購入等を行っていることからすると，債権者の流動資産が上記預金のみであることには疑問があること，③債権者の提出した預金額に関する疎明資料は取引履歴が不明であり，本件懲戒処分前後以降多額の預金の引き出しが存在しないことの疎明はないこと，以上の点を併せみると，債権者が主張するその他の支出の存在を踏まえても，賃金の仮払いが，債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要とすることについての疎明があるとはいえない。
なお，債権者は，本件のように被保全権利が明確に認められる事例において，老後に備えて貯蓄していた預貯金を切り崩して生活するように強いることは著しく正義に反するから，保全の必要性は債務者の違法行為によりこれまで得ていた収入を失ったかどうかで判断されるべきであるとも主張するが，本案訴訟において債権者の請求が認められ，これが確定すれば，債務者から，遅延損害金を含めた未払の賃金全額が支払われることとなるのであるから，一時的に預貯金を切り崩して生活することになることが著しく正義に反するとはいえないし，当該事情をもって債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるための必要性が認められることにもならない。債権者の主張は採用できない。
(3) 小括
以上によれば，本件の地位保全及び賃金の仮払いのいずれについても，保全の必要性があるということはできない。
第６ 結論
以上の次第で，債権者の申立ては保全の必要性が認められないから，その余の点について検討するまでもなく却下することとし，申立費用の負担につき民事保全法７条，民訴法６１条を適用して，主文のとおり決定する。
大阪地方裁判所第５民事部
（裁判官 大寄悦加）
〈以下省略〉
*******
 |
||
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
||
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
||
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
■どぶ板選挙ドットウィン！にしかできない「地獄のどぶ板PR代行」の強み
(１)「地獄のドブ板」に特化した広報PR支援会社ですので、一番しんどい部分のみご相談ください
(２)候補(予定)者の認知度拡大に向けて、貼る場所(箇所)に差をつける！どぶ板PRマーケティング
(３)どぶ板実績No.1 ポスタリストの豊富な経験と実績で、候補(予定)者の選挙区をPRで完全包囲
(４)政治活動に必須となる地域密着型どぶ板PRで候補(予定)者と有権者を繋ぐご挨拶回り握手代行
(５)選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立する
(６)ご挨拶回り！ビラ手渡し！ポスター貼り(掲示交渉)！街頭演説！で、どぶ板の相乗効果を狙え
■どぶ板選挙PR代行の流れ
■どぶ板OJTとは？
■どぶ板同行OJT内容(座学研修および実地特訓)
■どぶ板OJT当日配布資料
■どぶ板の学校オンライン
■ドブ板選挙にはじまり、どぶ板選挙で終わる！
 |
 |
メディア関係者様向けのプレスリリース記事
 |
||
| ポスタリング | 掲示交渉実績 | お問い合わせ |
 |
 |
 |
| 無料ワッポン | どぶ板MENU | 握手挨拶代行 |
 |
 |
 |
| よくある質問 | 各種資料一覧 | お申込み流れ |
 |
 |
 |
| ポスターPR党 | どぶ板OJT | 弁士相手探し |
 |
 |
 |
| 党員獲得代行 | 選挙妨害対策 | 立札看板交渉 |
 |
 |
 |
| ①新規開拓PR | ②他党多党PR | ③一戸建てPR |
 |
 |
 |
| ⑧政策ビラPR | ポスタリング | ④集合住宅PR |
 |
|
 |
| ⑦意外注目PR | ⑥公的公共PR | ⑤独占単独PR |
 |
 |
 |
【よくある質問 Q&A 一覧】
■街頭ポスター貼り(掲示交渉)代行について
Q&A【1】街頭ポスター貼付(掲示交渉代行)サービスとはどのようなものですか？
Q&A【2】どのくらいの期間で何枚くらいの街頭ポスター貼付ができるのですか？
Q&A【3】街頭ポスターを貼る際は先方(許可承諾者)に許可をいただいて貼るのですか？
Q&A【4】ポスターの①貼付依頼～②貼付開始～③貼付完了等の流れについて教えていただけますか？
Q&A【5】ポスターの料金は１枚いくらで貼ってくれるのですか？
Q&A【6】ポスターの貼付エリアや貼り付け枚数等は指定できますか？
Q&A【7】ポスター貼付後のメンテナンス(貼り替え・剥がし)も依頼できますか？
Q&A【8】最低何枚から街頭ポスター貼りを依頼できますか？
Q&A【9】ポスター貼り替え期間の指定はできますか？貼りっぱなしではないですか？
Q&A【10】街頭ポスターの貼付交渉(新規掲示)の実績や事例はありますか？
■政治活動における広報支援について
Q&A【11】「ドブ板選挙プランナー」とはどのようなお仕事ですか？
Q&A【12】「ポスタリング」とはどのようなサービスですか？
Q&A【13】政治活動等の特殊な業界についてのポスター掲示交渉は難しいですか？
Q&A【14】政治活動用の街頭ポスター(二連|三連)貼りをお願いしたいのですが、特定政党の支援は可能ですか？
Q&A【15】政治活動におけるポスターについて公職選挙法や政治資金規正法等の知識はありますか？
Q&A【16】街頭で無料の「ウィン！ワッポン」をよく見かけますが、これで選挙の勝率が上がりますか？
Q&A【17】二連ポスターや三連ポスター製作前に「弁士の相手」のご提案もしてくれますか？
Q&A【18】ポスター「掲示責任者代行」とはどのようなものでしょうか？
Q&A【19】選挙妨害やその他クレーム対応等の代行も可能でしょうか？
Q&A【20】政治活動(選挙運動)における広報支援プランはどのようなものがありますか？
■営業専門会社による広報PR支援について
Q&A【21】飛び込み訪問、戸別訪問、挨拶回り代行等、ポスター貼り以外でもお願いできますか？
Q&A【22】飲食店や実店舗等の店内やトイレ等にポスターを貼ったり、ビジネスカード設置、チラシ配布等は可能ですか？
Q&A【23】全国どこでもポスター貼りが可能なのですか？
■ご検討中の方々に
Q&A【24】お問い合わせについて
Q&A【25】資料をダウンロード
Q&A【26】ノウハウ・テクニックを大公開！
■ご依頼(お申し込み)の前に
Q&A【27】お申し込みの流れ
Q&A【28】ご用意いただきたいもの
■ご依頼(ご契約)の後に
Q&A【29】進捗報告について
Q&A【30】お友達ご紹介キャンペーンについて
【ポスター【制作前の】候補予定者様】のメニューです。
「政治活動用ポスターのデザイン」は、こちらです。
公職選挙法規定の法的審査(レギュレーションチェック)対応済みの、個人ポスター、２連ポスター、３連ポスター等のデザインを制作！
「弁士相手探しマッチング」は、こちらです。
「探して、交渉して、お隣りへ！」理想の有名人や著名人の弁士相手を探して、地域有権者に対して認知度拡大の相乗効果を狙う！
「ポスターの掲示責任者代行」は、こちらです。
【全国対応】ポスターを掲示した選挙区からのクレーム対応・妨害等の「総合窓口」として、ポスター掲示責任者の代行をいたします。
【ポスター【制作後の】候補予定者様】のメニューです。
政治活動期間における「どぶ板専門！ポスター貼り(掲示交渉)代行」は、こちらです。
【稼働の流れ】
①新規ご挨拶回り|戸別訪問代行|握手代行
選挙区(指定エリア)の有権者(民家・飲食店・その他施設)に対して、候補予定者に代わって選挙ドットウィン！が直接ご訪問致します。
②名刺|ビラ|リーフレット等の手渡し配布
候補予定者と有権者を繋ぐため、名刺・ビラ・政策レポート・討議資料・リーフレットなど活動報告資料の直接手渡し配布を致します。
③留守宅|候補者PR資料ポスティング投函
ご訪問先がご不在の場合には、配布物を郵便受け等にポスティング投函致します。(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率！)
④政治活動ポスター貼り(新規掲示交渉！
【完全成果報酬】地獄のドブ板活動に必須となる、政治活動用ポスター貼り(新規掲示交渉代行！)(貼れた分だけの枚数課金となります)
⑤掲示(貼付)後のフォロー|クレーム対応
ポスター掲示(貼付)完了後における掲示許可承諾者へ、フォローやクレーム対応等のストレスな部分は選挙ドットウィン！が致します。
所属政党の「党員募集獲得代行」、政治団体および後援会等の「入会募集獲得代行」は、こちらです。
当該政党の「党員」「サポーター」募集等の規定に従って、選挙立候補(予定)者様に代わって政党への入党におけるご案内を促します。
どぶ板同行OJT(座学研修および実地特訓)で学ぶ「スパルタ個別訪問同行OJT」は、こちらです。
候補予定者様ご本人・選挙事務所スタッフ・ボランティア様が効率良く「どぶ板の政治活動」が行なえるようアドバイスいたします。
絶対的な地盤を構築する「立札看板設置交渉代行」は、こちらです。
選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立するためのご支援をさせていただきます。
あらゆる政治選挙におけるお困りごとを支援する「選挙の窓口」活動支援一覧は、こちらです。
「地上戦」「空中戦」「ネット戦略」などを駆使し、当選に向けたコンサルティングおよびプランニングのご支援をいたします。
■ポスターPRプラン一覧(枚数・サイズの選択)
選挙区エリアにおいて、ポスターの当該掲示許可承諾者に対して交渉し、同一箇所にどのように掲示するかをお選びいただきます。
【臨機応変型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率88％ ★こちらをご確認下さい。
【連続二枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率6％ ★こちらをご確認下さい。
【限定一枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率4％ ★こちらをご確認下さい。
【個別指定型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率2％ ★こちらをご確認下さい。
※ポスターのサイズは、A1サイズ、A2サイズをはじめ、ご希望に応じてご提案させていただきます。
■掲示場所・貼付箇所
「首都圏などの大都市」「田舎などの地方都市」「駅前や商店街」「幹線道路沿いや住宅街」等により、訪問アプローチ手段が異なりますので、ご指定エリアの地域事情等をお聞かせ下さい。
※貼付箇所につきましては、弊社掲示交渉スタッフが当該ターゲットにアプローチをした際の先方とのコミュニケーションにて、現場での判断とさせていただきます。
■訪問アプローチ手段
【徒歩圏内】
駅周辺の徒歩圏内における、商店街や通行人の多い目立つ場所でのPR
【車両移動】
広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン！の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
「全国統一地方選挙」・「衆議院議員選挙」・「参議院議員選挙」・「都道府県知事選挙」・「都道府県議会議員選挙」・「東京都議会議員選挙」・「市長選挙」・「市議会議員選挙」・「区長選挙」・「区議会議員選挙」・「町長選挙」・「町議会議員選挙」・「村長選挙」・「村議会議員選挙」など、いずれの選挙にもご対応させていただいておりますので、立候補をご検討されている選挙が以下の選挙区エリアに該当するかご確認の上、お問い合わせいただけますようお願いいたします。
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
コメント