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裁判年月日 令和 2年 3月31日 裁判所名 さいたま地裁 裁判区分 判決
事件番号 平３０（わ）１７１号・平３０（わ）３７６号・平３０（わ）４５８号・平３０（わ）５８４号・平３０（わ）８１５号・平３０（わ）１３０５号
事件名 道路交通法違反、有印私文書偽造・同行使、電磁的公正証書原本不実記録・同供用、詐欺、窃盗、傷害、監禁、死体遺棄被告事件
裁判結果 有罪 文献番号 2020WLJPCA03316002
要旨
◆被告人が、３人の遺体を遺棄した死体遺棄、遺棄した死体の名義のキャッシュカード等を利用し、ＡＴＭから現金を引き出す等した窃盗、有印私文書偽造・同行使、電磁的公正証書原本不実記録・同供用、詐欺、及び被害者Ａ１４に対し、暴行を加え、傷害を負わせ、不法に監禁した傷害、監禁等の事案につき、傷害、監禁についてみると、被告人は、Ａ１４から経済的に搾取する目的で、同人を当時の被告人方に誘い込んだものの、稼働能力の低いＡ１４が金員の支払に応じられなかったこと等から、激高して傷害の犯行に及ぶとともに、引き続き、同様の目的で監禁の犯行に及んだというもので、甚だ自己中心的で身勝手であり、また、死体遺棄についてみると、被告人は、３名の遺体を長期間人目に付かない家屋内に隠匿する等して遺棄したというものであり、発見されたときにはいずれの遺体も白骨化する等、無残な姿に変わり果てていたこと等から、被告人に懲役６年を言い渡した事例
出典
参照条文
刑法６０条
刑法１５７条１項
刑法１５８条１項
刑法１５９条１項
刑法１６１条１項
刑法１９０条
刑法２０４条
刑法２２０条
刑法２３５条
刑法２４６条
道路交通法６４条１項
道路交通法１１７条の２の２第１号
裁判年月日 令和 2年 3月31日 裁判所名 さいたま地裁 裁判区分 判決
事件番号 平３０（わ）１７１号・平３０（わ）３７６号・平３０（わ）４５８号・平３０（わ）５８４号・平３０（わ）８１５号・平３０（わ）１３０５号
事件名 道路交通法違反、有印私文書偽造・同行使、電磁的公正証書原本不実記録・同供用、詐欺、窃盗、傷害、監禁、死体遺棄被告事件
裁判結果 有罪 文献番号 2020WLJPCA03316002
主文
被告人を懲役６年に処する。
未決勾留日数中５１０日をその刑に算入する。
さいたま地方検察庁で保管中の住民異動届１通（平成３０年さいたま領第１５７３号符号１）の偽造部分を没収する。
理由
（罪となるべき事実）
被告人は，
第１ 平成２８年３月頃，群馬県伊勢崎市〈以下省略〉所在のａアパート１０号室において，Ａ１（以下「Ａ１」という。）の死体を同室から搬出した上，情を知らないＡ２（以下「Ａ２」という。）運転の軽貨物自動車により埼玉県大里郡〈以下省略〉所在の当時の被告人方である借家まで運搬して，同所において隠匿し，もって死体を遺棄し，
第２ 同月頃，東京都板橋区〈以下省略〉ｂハイツ３０１号室において，Ａ３の死体及びＡ４の死体を同室から搬出した上，情を知らないＡ２運転の軽貨物自動車により前記借家まで運搬して，同所において隠匿し，もって死体を遺棄し，
第３ 平成２９年４月下旬頃から同年５月上旬頃までの間に，前記借家において，Ａ１の死体，前記Ａ３の死体及び前記Ａ４の死体を同所から搬出した上，情を知らないＡ２運転の軽貨物自動車により埼玉県深谷市〈以下省略〉当時の被告人方である借家まで運搬し，同所において隠匿し，もって死体を遺棄し，
第４ Ａ１名義のキャッシュカードを不正に使用して金融機関から現金を窃取しようと考え，
１ 同年６月１５日午前９時１０分頃，群馬県伊勢崎市〈以下省略〉所在のｃ信用金庫ｄ支店において，同所に設置された現金自動預払機に，Ａ１名義のキャッシュカードを挿入するなどして同機を作動させ，同機から同支店支店長Ａ５管理の現金１７万８０００円を引き出して窃取し，
２ 同年８月１５日午前９時１分頃，埼玉県本庄市〈以下省略〉ｅ信用金庫ｆ支店において，同所に設置された現金自動預払機に，Ａ１名義のキャッシュカードを挿入するなどして同機を作動させ，同機から同支店支店長Ａ６管理の現金１７万８０００円を引き出して窃取し，
第５ Ａ１になりすまし，同人の住民登録を不正に異動させようと考え，同年１１月１４日，同県深谷市〈以下省略〉所在のｇ市役所において，行使の目的で，住民異動届用紙の「氏名」欄に「Ａ１」，「新しい住所」欄に「○○ １０ ３７」などと各記入し，もってＡ１作成名義の住民異動届１通（平成３０年さいたま領第１５７３号符号１）を偽造した上，その頃，同所において，同市役所職員Ａ７に対し，Ａ１になりすまし，前記偽造の住民異動届１通をあたかも真正に作成されたもののように装って提出して行使し，その頃，同所において，情を知らない同市役所職員Ａ８に，電気通信回線を通じ，同市役所に設置されている権利義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ，即時同所にこれを備え付けさせて公正証書の原本としての用に供し，
第６ Ａ２と共謀の上，不正に入手したＡ１を被保険者とする国民健康保険被保険者証を用いて国民健康保険法による療養の給付を受けようと考え，
１ 同月１７日，群馬県伊勢崎市〈以下省略〉所在の医療法人ｈ・ｉ病院において，同病院職員Ａ９に対し，Ａ２がＡ１であるかのように装い，同人を被保険者とする国民健康保険被保険者証を提出するなどして同法による療養の給付を申し込み，前記Ａ９及び同人を介して同病院医師Ａ１０を，Ａ２が国民健康保険の被保険者であるＡ１であると誤信させ，よって，同日，同病院において，前記Ａ１０らに，Ａ２に対して同法による療養の給付である診察（診療報酬３５３０円相当）を行わせ，もって人を欺いて財産上不法の利益を得，
２ 同日，同市〈以下省略〉所在の株式会社ｊ薬局ｋ店において，同薬局事務員Ａ１１に対し，Ａ２がＡ１であるかのように装い，同人を被保険者とする前記国民健康保険被保険者証及び同人の氏名等が記載された前記ｉ病院発行の処方せんを提出するなどして，同法による療養の給付を申し込み，前記Ａ１１並びに同人を介して同薬局薬剤師Ａ１２及び同薬局薬剤師Ａ１３を，Ａ２が国民健康保険の被保険者であるＡ１であると誤信させ，よって，同日，同店において，前記Ａ１２らに，Ａ２に対して同法による療養の給付である薬剤（薬価等合計３２００円相当）の支給を行わせ，もって人を欺いて財物を交付させ，
第７ 平成３０年１月上旬頃，埼玉県深谷市〈以下省略〉当時の被告人方において，Ａ１４（当時５９歳，以下「Ａ１４」という。）に対し，その顔面等を拳で殴るなどの暴行を加え，よって，同人に全治まで約１週間を要する右前額部挫傷の傷害を負わせ，
第８ 同月１６日頃から同月１９日までの間，同所において，前記暴行等により，被告人を畏怖していたＡ１４に対し，その面前に刃物を突き付け，「借金の２０万どうするつもりなんだ。」，「金が返せないなら，指を詰めろ。」，「刺すぞ。」，「殺すぞ。」などと語気鋭く申し向けて脅迫した上で，同人から運転免許証，通帳，印鑑等を差し出させて取り上げ，「俺の方を向いてそこに座っていろ。」，「ここから逃げたら許さねえぞ。」などと申し向けながら同人の行動を監視し，さらに，その顔面等を殴打し，足蹴にする暴行を加え，Ａ１４をして，逃走すれば，その生命身体にいかなる危害をも加えられるかもしれない旨畏怖させ，前記被告人方からＡ１４が脱出することを著しく困難にし，もって不法に人を監禁し，
第９ 公安委員会の運転免許を受けないで，同年２月５日午後１０時５７分頃，さいたま市〈以下省略〉付近道路において，普通乗用自動車を運転した。
（証拠の標目）〔括弧内の甲乙の番号は検察官請求証拠の番号を，弁の番号は弁護人請求証拠の番号をそれぞれ示す。〕
判示事実全部について
被告人の公判供述
判示第１ないし第３の各事実について
第４回公判調書中の被告人の供述部分
Ａ１５（甲１６１【不同意部分を除く】）及びＡ１６（甲１６３【不同意部分を除く】）の各警察官調書
捜査報告書（甲２５２）
写真撮影報告書（甲１６２）
検証調書（甲２８０【不同意部分を除く】）
判示第１及び第３の各事実について
実況見分調書（甲２２８，２３３，２３４，２３６【甲２３６を除きいずれも不同意部分を除く】）
捜査報告書（甲２３７，２８２【不同意部分を除く】）
検証調書（甲２３５）
捜査関係事項照会書（甲２３８）
鑑定書（甲２３９，２８３【不同意部分を除く】）
判示第１の事実について
Ａ２の検察官調書（甲１５３【不同意部分を除く】）
捜査報告書（甲１５７）
「死後経過の推定について（意見書）」と題する書面（甲２２９）
判示第２及び第３の各事実について
Ａ１７（甲２０３【不同意部分を除く】）及びＡ２（甲２０８）の各検察官調書
Ａ１８の警察官調書（甲２１０）
実況見分調書（甲２５３ないし２５８【甲２５５及び２５６については不同意部分を除く】）
捜査報告書（甲２０７，２０９，２８４，２８６【甲２０９を除きいずれも不同意部分を除く】）
写真撮影報告書（甲２５９）
鑑定書（甲２８５，２８７【いずれも不同意部分を除く】）
判示第２の事実について
Ａ１９の警察官調書（甲１７５）
捜査報告書（甲１８２）
検証調書（甲１８０）
判示第３，第６ないし第８の各事実について
捜査報告書（甲２５０）
検証調書（甲２５１【不同意部分を除く】）
判示第３の事実について
Ａ２０の警察官調書（甲２１９【不同意部分を除く】，２２０，２２１）
捜査報告書（甲２１４【不同意部分を除く】，２１８，２２５）
写真撮影報告書（甲２２４）
判示第４の各事実について
捜査関係事項照会書謄本（甲６１）
捜査関係事項照会回答書謄本（甲６２）
判示第４の１の事実
Ａ２１の警察官調書（甲７５）
捜査報告書（甲７４）
答申書（甲７３）
判示第４の２の事実
Ａ２２の警察官調書（甲８２）
捜査報告書（甲８１）
写真撮影報告書（甲８３）
答申書（甲８０）
判示第５，第６及び第９の各事実について
第１回公判調書中の被告人の供述部分
判示第５及び第６の各事実について
被告人の検察官調書（乙１２）及び警察官調書（乙１０【不同意部分を除く】，１１）
Ａ２の検察官調書謄本（甲５１）及び警察官調書謄本（甲４７ないし４９）
写真撮影報告書（甲２４２）
判示第５の事実について
Ａ２の検察官調書謄本（甲２７【不同意部分を除く】）
Ａ７（甲１３，２９０【抄本】）及びＡ８（甲２９１【抄本】）の各警察官調書
捜査報告書（甲１７，２９３【抄本】）
写真撮影報告書（甲１８，２９２【抄本】）
住民異動届１通（甲２６９。平成３０年さいたま領第１５７３号符号１）
判示第６の各事実について
捜査報告書（甲３３）
判示第６の１の事実について
Ａ１０の検察官調書（甲３９）及び警察官調書（甲３８）
Ａ２の検察官調書謄本（甲５０）
Ａ９の警察官調書（甲３６）
被害届（甲３４）
写真撮影報告書（甲３５）
判示第６の２の事実について
Ａ１１（甲４２），Ａ１２（甲４３）及びＡ１３（甲４４）の各警察官調書
被害届（甲４０）
捜査報告書謄本（甲４５）
写真撮影報告書（甲４１）
判示第７及び第８の各事実について
証人Ａ１４の公判供述
Ａ１４の検察官調書（甲９７，９８【いずれも不同意部分を除く】）及び警察官調書（甲３２【不同意部分を除く】）
Ａ２３（甲１１４【不同意部分を除く】），Ａ２（甲１１６【不同意部分を除く】）及びＡ２４（甲１２１【不同意部分を除く】）の各検察官調書
Ａ２５（甲１０７，１０８【いずれも不同意部分を除く】）及びＡ２６の各警察官調書（甲１１９）
実況見分調書（甲２４４）
捜査報告書（甲１１０，１２３【謄本。ただし不同意部分を除く】，１２６，１２８，１３３【謄本】）
写真撮影報告書（甲１０９，１２７）
鑑定嘱託書謄本（甲１２４，１２９，１３１）
鑑定書謄本（甲１２５，１３０，１３２）
診断書（甲１０６【不同意部分を除く】）
判示第８の事実について
Ａ２７の検察官調書（甲２９８【弁５と同じ】）
Ａ２８（甲１１１）及びＡ２９（甲２９４）の各警察官調書
捜査報告書（甲１０５【不同意部分を除く】，１１２）
写真撮影報告書（甲９９，１０１【抄本】，１０４【不同意部分を除く】）
判示第９の事実について
被告人の警察官調書謄本（乙２【不同意部分を除く】）
捜査報告書（甲２，６）
現行犯人逮捕手続書（甲１【不同意部分を除く】）
写真撮影報告書（甲４，５）
捜査関係事項照会回答書（甲３）
（事実認定の補足説明）
１ 判示第７の事実（以下「傷害事件」という。）につき，被告人が，判示の日時頃，当時の被告人方（以下「○○借家」という。）においてＡ１４と居合わせたこと，判示第８の事実（以下「監禁事件」という。）につき，Ａ１４が，判示の期間，同所にいたことは争いがない。本件の争点は，①傷害事件につき，被告人がＡ１４に対し，判示の暴行を加えて傷害を負わせたかどうか，②監禁事件につき，被告人がＡ１４に対し，判示の暴行脅迫を加えるなどして同人を監禁したかどうかである。
当裁判所は，被告人から各被害に遭ったというＡ１４の公判供述が核心部分において信用性の高いものであると判断して各犯罪事実を認定したので，以下，その理由を補足して説明する。
２ Ａ１４の公判供述について
(1) 供述の要旨
Ａ１４は，被告人から各被害に遭った経緯や状況について，平成２９年１０月から同年１２月下旬にかけて，被告人から紹介された４か所の稼働先の寮に住み込みで働き，受け取った前借分や給料の多くを紹介料や送迎料等の名目で被告人に支払っていたところ，３か所目の稼働先を辞めた頃から被告人に暴力を振るわれるようになり，怖くて逆らうことができなくなった，４か所目の稼働先の寮を出る際，被告人から「お前に２０万円の貸しがあるんだから，俺のところに来い」などと言われ，仕方なく○○借家で生活するようになり，その後，被告人から借金のことなどで度々暴行を加えられ，判示のとおりの各被害に遭った，などと供述する。
(2) 供述の信用性
ア まず，Ａ１４供述のうち主に傷害事件に係る供述部分の信用性についてみると，Ａ２５医師（以下「Ａ２５医師」という。）は，その検察官調書において，平成３０年２月４日（以下，日時について，平成３０年中は月日で表記する。）に撮影されたＡ１４の写真を見ると，Ａ１４の右前額部の挫傷部位に茶色っぽい色素沈着が見られたのに対し，４月２８日にＡ１４を診察した際には，右前額部はわずかに赤みが残っているものの，ほぼ退色しきっている状態になっており，このような経過変化からすれば，Ａ１４が１月頃に受傷したものと考えて矛盾しないと述べており，暴行を加えられた部位やその時期に関するＡ１４供述は，Ａ２５医師の所見とよく整合する。また，Ａ１４が○○借家６畳和室の布団の上で被告人から殴られて右前額部等から出血したと述べる点や，外出の際はこの傷を隠すためにハット帽を被っていたと述べる点は，○○借家から発見された掛布団やＡ１４のハット帽の右前額部が接する内側部分から，いずれもＡ１４のＤＮＡ型と一致する血液が検出されたことにより客観的に裏付けられている。さらに，Ａ２３（以下「Ａ２３」という。）の検察官調書によれば，１月２０日，被告人が，Ａ２３に対し，「まずいことになった。カッとなってＡ１４を殴ったり，蹴ったりしたら，Ａ１４が逃げた」「Ａ１４には合計で２０万以上貸している」「そんなこともあって，カッとなって殴ったり蹴ったりしてしまった」と告げ，更に，１月２５日には，自身の右額辺りに右の手のひらを当てながら，「カッとなって，殴る蹴るしたら，Ａ１４がここを腫らした」と告げた事実が認められるところ，これらの事実は，被告人が，犯行を告白したものと考えられるものであり，Ａ１４の供述が真実であったことを裏付けている。
イ 次に，Ａ１４供述のうち主に監禁事件に係る供述部分の信用性についてみると，Ａ１４が被告人に刃物を突き付けられた旨述べている点については，○○借家からその特徴の符合する刃物が発見されたことにより客観的に裏付けられている。また，Ａ１４が通帳や運転免許証等の貴重品の入ったセカンドバッグを被告人に取り上げられ，逃走時に持ち出すことができずに置いてきたと述べる点についても，○○借家等から，Ａ１４の預金通帳，キャッシュカード，印鑑，携帯電話機，国民健康保険被保険者証，自動車運転免許証等が発見されたことにより客観的に裏付けられている。さらに，Ａ１４が本件監禁期間前の１月５日過ぎ頃，○○借家にいる被告人の下から逃走を図ろうとしたと述べる点については，Ａ３０も同趣旨の供述をしており，これによりほぼ裏付けられている。そして，○○借家近くのコンビニエンスストアの経営者Ａ２８（以下「Ａ２８」という。）の警察官調書等によれば，１月１９日午前７時過ぎ頃，Ａ１４が同コンビニエンスストアを訪れ，怯えた様子で，「警察を呼んでくれないか」「去年の暮れから監禁されていて，今朝逃げて来たんだ」「追っ手も来ているから早く警察を呼んでくれ」などと依頼した事実が認められるところ，この事実は，当時Ａ１４の身体等に重大な危険が切迫していたことを推認させるものであり，Ａ１４の供述内容とよく整合している。その日のうちにＡ１４が，埼玉県深谷警察署において，監禁被害に遭ったと訴えていることも，Ａ１４の供述が真実であったことを裏付けている。
ウ さらに，傷害事件及び監禁事件に共通する供述部分についてみると，Ａ１４が，平成２９年１０月から同年１２月下旬にかけて，４か所の稼働先の寮に住み込みで働き，給料を受け取っていたという点については，稼働先関係者の供述等の証拠により裏付けられている。また，Ａ２の検察官調書によれば，１月下旬ころ，Ａ１４がひどく怯えた様子で，Ａ２に対し，「被告人のところにいた。ひどい目に遭った。被告人に殴られたり，蹴られたりした。携帯や免許を取られた。警察に駆け込んだ」などと話した事実，その後，Ａ１４が，Ａ２を介して被告人から２回にわたり示談の申入れを受けたものの，いずれも拒否した事実，そして，Ａ１４の携帯電話機や運転免許証等を被告人方に取りに行こうというＡ２の提案に対しても，Ａ１４が異様に怯えた様子でこれを拒否した事実が認められるところ，これらの事実は，Ａ１４が被告人に対して強い恐怖心を抱き続けていたことを推認させるものであり，Ａ１４の供述内容とよく整合している。
エ これに対し，弁護人は，Ａ１４の公判供述中，傷害事件に係る供述部分について，①Ａ１４が右前額部から出血した後にハット帽を被ったとすれば，ハット帽の右前額部が接する内側部分ではなく，へりの部分に血液が濃厚に付着するはずであるが，同部分にはこすれた血痕様のものしか付着してない，②Ａ２８は，１月１９日には一見してＡ１４がけがをして出血している様子は見受けられなかったと述べ，同日に対応したＡ２７警察官（以下「Ａ２７警察官」という。）も，Ａ１４には出血を伴うようなけがや明らかな腫れなどは目に付かなかったと述べ，さらに，１月２０日に被告人と会った近隣住民や同月２２日に対応した市役所職員も，Ａ１４の体や顔に傷やあざはなかった，Ａ１４がけがをしている様子はなかったとそれぞれ述べている，③４月１６日に撮影されたＡ１４の胸腹部の写真を見ても，Ａ１４が蹴られたと述べる脇腹にあざ等の痕跡はない，などと主張する。
しかし，①については，負傷後の出血状況やハット帽のかぶり方等によって，ハット帽への血液の付着状況は様々であると考えられるから，弁護人の主張は当を得たものではない。②については，そもそもＡ１４の傷は全治約１週間の軽傷であり，１月上旬という受傷時期に照らせば，前記関係者らがＡ１４の傷に気付かなかったとしても不自然ではない。③については，脇腹を蹴られた場合に必ずしもあざ等の傷が生じるとは限らないし，②と同様に時間の経過によって傷が治癒したことも十分に考えられる。
また，弁護人は，Ａ１４の公判供述中，監禁事件に係る供述部分について，④Ａ２７警察官の検察官調書等によれば，Ａ１４は，当初警察に被害申告した際，Ａ２７警察官に対し，被告人から刃物を突き付けられ，「刺すぞ」「殺すぞ」などと怒鳴られたことを告げていない，⑤Ａ１４が１月５日過ぎ頃に○○借家の風呂場から逃走しようとしたという点は，逃走するのであれば，北側４畳間の窓から逃げれば被告人の後ろを通る必要はなかったのであるから，Ａ１４が風呂場に向かったのは逃走を図るためであったとは認められない，⑥Ａ１４は，Ａ２３との自動車取引をめぐる被告人の対応等が気に入らず被告人を逆恨みして，あるいは市からの家賃支給の停止事由となった市に対する自己の連絡懈怠を正当化するため，市役所職員や警察官に虚偽の被害申告をしたなどと主張する。
しかし，④については，Ａ１４は，公判廷において，警察に被害申告した際に被害状況を全て説明したと供述しているが，Ａ２７警察官の検察官調書中に，被害申告時にＡ１４が訴えた暴行脅迫の内容が全て記載されているとは限らないのであって，弁護人の主張は採用できない。⑤については，Ａ１４は前記４畳間の窓が開くかどうか明確には認識していなかったというのであるし，そもそもＡ１４にとっては突然訪れた逃走の機会であり，とっさに最善の手段を選択できなかったとしても不自然とはいえないから，弁護人の主張は当たらない。⑥については，いずれも抽象的可能性を主張するものにすぎず，これも採用することはできない。
オ 以上によれば，弁護人の主張を踏まえて検討しても，Ａ１４の公判供述は，核心部分において信用性の高いものであるということができる。
３ 被告人の公判供述について
(1) これに対し，被告人は，傷害事件について，Ａ１４に判示の暴行は加えておらず，Ａ１４の右前額部挫傷の原因については，平成２９年１２月２９日朝稼働先の寮に退寮するＡ１４を迎えに行ったところ，Ａ１４が酒に酔った状態であり，同人から，荷物を搬出する際に転倒して顔に傷を負ったという話があったとして，そのときの転倒が傷の原因と考えられる，などと供述する。しかし，前記稼働先の用務員Ａ２４は，その検察官調書において，前記退寮日の状況として，Ａ１４が酒に酔っている様子はなく，顔に傷もなかった旨供述しており，被告人の弁解は，Ａ１４の公判供述のほか，前記Ａ２４の供述とも整合していない。
(2) また，被告人は，監禁事件について，当時Ａ１４が居住していたアパートに同人の郵便物を取りに行った際，Ａ１４方居室の前に家賃未納を知らせる内容の張り紙がしてあるのを見て，Ａ１４が同アパートに住めなくなってしまったと誤解し，前述したＡ１４の退寮時に同人にその旨説明したところ，帰る当てがないので○○借家に居候させてほしいとＡ１４から頼まれて，同人を○○借家に連れ帰った，その後，食費等の負担が生じてしまうことから，Ａ１４に対し，毎日のように○○借家から早く出ていくように促していたものの，Ａ１４は，借金を返済するまでは退去できない，借金を返済しないまま退去するのであれば指を詰めるしかないが，そうなれば被告人が犯罪者になると言って，○○借家に居座っていた，などと供述する。
しかしながら，被告人が述べる張り紙は，「賃料についてのご連絡」と題し，平成２９年１２月分の家賃の支払が未了であるとして，未払賃料額と振込先口座が記載された書面であって，一見して未払賃料の支払を求める内容であることは容易に理解できるものであって，これを読んだ被告人が，Ａ１４が前記アパートを退去しなければならなくなったと誤解するとはおよそ考えられない。また，Ａ１４が○○借家に居座っていたという供述は，あまりにも不自然な内容であるというほかないし，前述したように１月５日過ぎ頃にＡ１４が○○借家から逃走を図った際にこれを制止した被告人の行動とも整合していない。
(3) したがって，被告人の公判供述は，全体として信用し難いものであり，これによりＡ１４の公判供述の核心部分の信用性が左右されるものではない。
４ 弁護人の主張
弁護人は，監禁事件について，被告人の公判供述に依拠して，被告人にはＡ１４を○○借家に監禁する動機がないと主張する。しかし，信用できるＡ１４の公判供述等の関係証拠によれば，前述したようにＡ１４は，平成２９年１０月頃から同年１２月２８日までの間，被告人から紹介された複数の稼働先で住み込みで働き，給料の多くを被告人に支払っていたほか，借金と称して２０万円を請求されていたのであって，当時被告人が定職に就いておらず，さしたる収入もなかったことも考慮すると，将来的に再びＡ１４を働かせて，その給料を搾取する目的で，同人を○○借家に囲い込んでいたものと合理的に推認することができる。この判断は，同月２９日から１月１９日までの間，Ａ１４が働いていなかったことなど弁護人が種々指摘する点を踏まえて検討しても左右されない。
５ 結論
以上のとおり，核心部分において信用できるＡ１４の公判供述に，その他の前掲各証拠を併せれば，前記各犯罪事実を認定することができる。
（法令の適用）
罰条
判示第１ないし第３の各所為（判示第２及び第３については死体ごとに） いずれも刑法１９０条
判示第４の各所為 いずれも刑法２３５条
判示第５の所為のうち
有印私文書偽造の点 刑法１５９条１項
偽造有印私文書行使の点 刑法１６１条１項，１５９条１項
電磁的公正証書原本不実記録の点 刑法１５７条１項
不実記録電磁的公正証書原本供用の点 刑法１５８条１項，１５７条１項
判示第６の１の所為 刑法６０条，２４６条２項
判示第６の２の所為 刑法６０条，２４６条１項
判示第７の所為 刑法２０４条
判示第８の所為 刑法２２０条
判示第９の所為 道路交通法１１７条の２の２第１号，６４条１項
科刑上一罪の処理
判示第２及び第３の罪につき 刑法５４条１項前段（各死体遺棄罪について犯情の軽重を決し難いから，刑法１０条によって各死体遺棄罪のうちいずれが重いか決することはできず，いずれも死体遺棄罪の刑で処断）
判示第５の罪につき 刑法５４条１項後段，１０条（刑及び犯情の最も重い偽造有印私文書行使罪の刑で処断）
刑種の選択
判示第４，第７及び第９の各罪につき いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法４５条前段，４７条本文，１０条（最も重い判示第７の罪の刑に加重。ただし，短期は判示第８の罪のそれによる。）
未決勾留日数の算入 刑法２１条
没収 刑法１９条１項１号，２項本文
訴訟費用 刑事訴訟法１８１条１項ただし書（不負担）
（量刑の理由）
１ まず，判示第７の傷害及び第８の監禁についてみると，被告人は，Ａ１４から経済的に搾取する目的で，同人を当時の被告人方に誘い込んだものの，稼働能力の低いＡ１４が金員の支払に応じられなかったことなどから，激高して判示第７の犯行に及ぶとともに，引き続き，同様の目的で判示第８の犯行に及んだというもので，甚だ自己中心的で身勝手というほかない。判示第８の監禁の期間は約４日間に及んでおり，短期間とはいえない。Ａ１４が受けた精神的苦痛は大きく，被告人に対する厳罰を希望するのも当然である。判示第７の暴行の態様自体はそれほど強度とまではいえず，傷害結果も比較的軽微なものにとどまっているが，前記の犯行経緯に照らせば，犯情は軽いものではない。
２ 次に，判示第１ないし第３の各死体遺棄についてみると，被告人は，３名の遺体を長期間人目に付かない家屋内に隠匿するなどして遺棄したというものであり，発見されたときにはいずれの遺体も白骨化するなど無残な姿に変わり果てていた。死者に対する遺族を含む社会の敬虔感情が大きく害されたことは明らかである。
被告人は，前記３名が死亡した経緯や死体遺棄の動機等について，同人らは異なる機会に被告人の周囲でそれぞれ不慮の死を遂げたもので，被告人がその死亡結果に関与していないことを分かってもらうために各遺体を隠匿したなどと供述するが，死体が腐敗等すればするほど死因の究明は難しくなり，被告人が死亡結果に関与していないことを説明するのも困難になるのであるから，被告人の前記供述は，不合理極まりないものであって信用できない。もっとも，前記３名が死亡した具体的経緯は明らかではなく，各遺体を遺棄した動機も不明といわざるを得ないが，経緯及び動機において酌量すべき事情は見当たらないのであって，死体遺棄の犯情としては，相当悪質というべきである。
３ さらに，第４の窃盗及び第６の詐欺についてみると，被告人は，自身の関与した死体遺棄に係る死者Ａ１名義のキャッシュカード及び同人を被保険者とする国民健康保険被保険者証を不正使用したもので，被害額は，窃盗が合計３５万６０００円，詐欺が合計約６７００円であり，少ないものではない。また，判示第５の有印私文書偽造・同行使，電磁的公正証書原本不実記録・同供用についても，前同様に死者Ａ１になりすまして，同人の住民登録を不正に異動させたもので，公正証書等に対する社会の信用を害した結果を軽視することはできない。被告人は，体調の悪いＡ２を病院に受診させるため，国民健康保険被保険者証を取得すべく犯行に及んだなどと述べるが，そうであったとしても，特段酌量すべき事情とはいえない。
４ 以上の犯情に鑑みれば，被告人の刑事責任は重いといわなければならない。
そこで，被告人が，昭和６２年から平成２７年までの間に，傷害致死罪を含む前科８犯を有し，そのうち６回服役しており，規範意識が著しく鈍麻していること，判示第１ないし第６，第９の各犯行自体は認めつつも，判示第７，第８の各犯行につき不自然，不合理な弁解に終始するなど，真摯な反省の態度が見られないことなども考慮して，主文のとおり量刑した。
（検察官佐野嘉信，国選弁護人岡田晃知 各出席）
（求刑：懲役８年，主文同旨の没収）
さいたま地方裁判所第３刑事部
（裁判長裁判官 田尻克已 裁判官 藏本匡成 裁判官 須川智裕）
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■街頭ポスター貼り(掲示交渉)代行について
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②名刺|ビラ|リーフレット等の手渡し配布
候補予定者と有権者を繋ぐため、名刺・ビラ・政策レポート・討議資料・リーフレットなど活動報告資料の直接手渡し配布を致します。
③留守宅|候補者PR資料ポスティング投函
ご訪問先がご不在の場合には、配布物を郵便受け等にポスティング投函致します。(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率！)
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■ポスターPRプラン一覧(枚数・サイズの選択)
選挙区エリアにおいて、ポスターの当該掲示許可承諾者に対して交渉し、同一箇所にどのように掲示するかをお選びいただきます。
【臨機応変型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率88％ ★こちらをご確認下さい。
【連続二枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率6％ ★こちらをご確認下さい。
【限定一枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率4％ ★こちらをご確認下さい。
【個別指定型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率2％ ★こちらをご確認下さい。
※ポスターのサイズは、A1サイズ、A2サイズをはじめ、ご希望に応じてご提案させていただきます。
■掲示場所・貼付箇所
「首都圏などの大都市」「田舎などの地方都市」「駅前や商店街」「幹線道路沿いや住宅街」等により、訪問アプローチ手段が異なりますので、ご指定エリアの地域事情等をお聞かせ下さい。
※貼付箇所につきましては、弊社掲示交渉スタッフが当該ターゲットにアプローチをした際の先方とのコミュニケーションにて、現場での判断とさせていただきます。
■訪問アプローチ手段
【徒歩圏内】
駅周辺の徒歩圏内における、商店街や通行人の多い目立つ場所でのPR
【車両移動】
広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン！の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
「全国統一地方選挙」・「衆議院議員選挙」・「参議院議員選挙」・「都道府県知事選挙」・「都道府県議会議員選挙」・「東京都議会議員選挙」・「市長選挙」・「市議会議員選挙」・「区長選挙」・「区議会議員選挙」・「町長選挙」・「町議会議員選挙」・「村長選挙」・「村議会議員選挙」など、いずれの選挙にもご対応させていただいておりますので、立候補をご検討されている選挙が以下の選挙区エリアに該当するかご確認の上、お問い合わせいただけますようお願いいたします。
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