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裁判年月日 平成16年 2月24日 裁判所名 山口地裁下関支部 裁判区分 判決
事件番号 平１３（ワ）２８１号
事件名 損害賠償請求事件 〔下関セクハラ（食品会社営業所）事件・第一審〕
裁判結果 一部認容、一部棄却 上訴等 控訴 文献番号 2004WLJPCA02246001
裁判経過
控訴審 平成16年 9月 2日 広島高裁 判決 平１６（ネ）１６３号 損害賠償請求控訴事件 〔下関セクハラ（食品会社営業所）事件・控訴審〕
出典
労判 881号34頁
評釈
夏井高人・判例地方自治 319号108頁
裁判年月日 平成16年 2月24日 裁判所名 山口地裁下関支部 裁判区分 判決
事件番号 平１３（ワ）２８１号
事件名 損害賠償請求事件 〔下関セクハラ（食品会社営業所）事件・第一審〕
裁判結果 一部認容、一部棄却 上訴等 控訴 文献番号 2004WLJPCA02246001
原告 Ｘ１
同 Ｘ２
原告ら訴訟代理人弁護士 山元浩
近本佐知子
被告 Ｙ１
同訴訟代理人弁護士 吉田祐治
同 Ｙ２株式会社
同代表者代表取締役 Ａ
同訴訟代理人弁護士 立花充康
大森克磨
主文
1 被告Ｙ１は，原告Ｘ２に対し，145万円及びこれに対する平成13年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Ｙ２株式会社は，原告Ｘ２に対し，55万円及びこれに対する平成13年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告Ｘ２のその余の請求及び同Ｘ１の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は，原告Ｘ２と被告Ｙ１との間においては，同原告に生じた費用の10分の4を同被告の負担とし，同被告に生じた費用の10分の1を同原告の負担とし，その余は各自の負担とし，原告Ｘ２と被告Ｙ２株式会社との間においては，同原告に生じた費用の10分の5を同被告の負担とし，その余は各自の負担とし，原告Ｘ１と被告らとの間においては，被告らに生じた費用の各2分の1を同原告の負担とし，その余は各自の負担とする。
5 この判決は，第1，2項に限り，仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告Ｙ１は，原告らに対し，各165万円及びこれらに対する平成13年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Ｙ２株式会社は，原告らに対し，各55万円及びこれらに対する平成13年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は，職場内で上司からセクシュアル・ハラスメントを受けたとして，被害女性が，夫とともに，上司及び使用者に対し，不法行為（民法709条）に基づく損害賠償として，慰謝料及び弁護士費用並びに遅延損害金（不法行為後の日である訴状送達の日の翌日を起算日とする民法所定の年5分の割合による金員）を請求した事案である。
1 前提事実
以下は，当事者間に争いがないか，弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。
(1)ア 原告Ｘ２は，平成6年11月1日，被告Ｙ２株式会社（以下「被告会社」という。）に雇用され，山口県下関市所在の山口営業所に勤務したが，平成13年7月31日退職した。
イ 原告Ｘ１は，同Ｘ２の夫である。
(2) 被告Ｙ１は，被告会社の従業員であり，平成10年10月，北部第2ブロック長（北九州地域及び中四国地方の支店及び営業所等を統括する職をいう。）に着任し，平成13年5月31日，営業本部付として松山支店に転勤するまで，その地位にあった。
(3) Ｂは，被告会社の従業員であり，平成12年9月21日から平成13年4月まで，山口営業所長の地位にあった。
2 争点
(1) 被告Ｙ１の責任原因（争点1）
(2) 被告会社の責任原因（争点2）
(3) 原告Ｘ１の被侵害利益（争点3）
(4) 損害の発生及び額（争点4）
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1（被告Ｙ１の責任原因）について
ア 原告らの主張
被告Ｙ１は，部下である原告Ｘ２に対し，多数回にわたって卑猥な内容のメールを送信した上，営業所内で抱き付いたり，自身の性器を露出するなどの行為に及び，さらには勤務中の同原告を強引に誘い，ホテルで性交渉を持つなどした。
以上は，同原告の意に反する不快な性的言動（セクシュアル・ハラスメント）として，不法行為に該当する。
イ 被告Ｙ１の反論
被告Ｙ１において，原告ら主張の各行為に及んだことは認めるが，いずれも原告Ｘ２の了解のもとに行われたものである。
(2) 争点2（被告会社の責任原因）
ア 原告らの主張
原告Ｘ２は，被告会社に勤務中，前記(1)アの被害を受けた外，Ｂからも，複数の社内不倫に及ぶなど誰とでも肉体関係を持つような性癖の女である旨の事実無根の中傷をされており，被告会社は，社内におけるセクシュアル・ハラスメントを防止し，良好な職場環境に配慮すべき注意義務に反した。
イ 被告会社の反論
被告会社は，セクシュアル・ハラスメントの防止について，早期に十分な社内の啓発活動を行っており，前記注意義務違反を問われるべき謂われはない。
(3) 争点3（原告Ｘ１の被侵害利益）に関する原告らの主張
原告Ｘ１は同Ｘ２の夫であり，被告Ｙ１のセクシュアル・ハラスメントや被告会社の義務違反行為は，配偶者に貞操を求める権利の侵害として，原告Ｘ１に対する関係でも不法行為に該当する。
(4) 争点4（損害の発生及び額）に関する原告らの主張
ア 被告Ｙ１について
慰謝料 原告ら各自150万円
弁護士費用 原告ら各自15万円
合計 各165万円
イ 被告会社について
慰謝料 原告ら各自50万円
弁護士費用 原告ら各自5万円
合計 各55万円
第3 当裁判所の判断
1 前記第2の1に認定した事実に加え，証拠（〈省略〉，証人Ｃ，原告Ｘ２，被告Ｙ１，分離前相被告Ｂ。個別の認定事実に関する証拠は後掲する。）及び弁論の全趣旨を総合すれば，以下の事実経過を認めることができ，前掲証拠中，これに反する供述ないし供述記載部分は，全て採用の限りでない。
(1) 原告Ｘ２の経歴等について
原告Ｘ２（昭和○年○月○日生）は，平成6年11月1日，被告会社に嘱託従業員として雇用され，平成10年3月準社員（1年ごとに契約更新する雇用形態であるが，嘱託従業員に比べ給与や賞与額が優遇され，若干の退職金も支給される。）となり，山口営業所において，一般事務等を担当していた。同営業所所属の女性従業員は，同原告のみであり，他に営業所長以下，数人の男性従業員が在籍していた。
(2) Ｂに係るセクシュアル・ハラスメントの事実経過について
ア Ｂは，かねて原告Ｘ２と面識があり，同原告の就職に際し，被告会社宛ての推薦も同人によるものであったが，徳山営業所長であった平成11年7月末ころ，同原告に電話をかけ，北九州支店所属の男性従業員との間で社内不倫の噂があると告げ，事実の有無を問い質したが，同原告から言下にこれを否定された。
イ Ｂは，その後，山口営業所長に着任したが，平成12年10月21日，社外での販売促進業務に従事し，原告Ｘ２と付近のレストランで昼食を共にした際，飲酒の上，同原告に対し，前項の男性従業員との間で肉体関係があったはずだと決めつけた上，山口営業所の前所長や前々所長の男性とも交際しており，「お前はサセコになっている。」などと，同原告が誰とでも肉体関係を持つような，ふしだらな性癖を持つ女である旨を中傷した。
ウ その後，Ｂから同旨の追及は止んだものの，後記のとおり，こうした言動が社内の事実調査の対象となるまで，原告Ｘ２に対する謝罪等は，一切なされていない。
(3) 被告Ｙ１に係るセクシュアル・ハラスメントの事実経過について
ア 被告Ｙ１は，当時，山口営業所を管轄する北部第2ブロック長であったが，業務上の必要から原告Ｘ２と接触を持つようになり，平成12年9月ころには，同原告との間で，プロ野球の話題等をめぐって，会話を時折交わしたり，メールのやり取りを行うようになったが，特に親密な間柄という訳ではなく，プライベートな交際も特段なかった。
同被告は，その後，同原告に対する言動をエスカレートさせ，自己の性体験を自慢するなどの性的会話を頻繁にするようになり，同年10月下旬ころから，同原告宛てに著しく卑猥なメールを十数回にわたって送信した上（中には，自身の性器に関する露骨な描写をしたものもある。），度々，同原告に性交渉を求めるような言動に出た。
（〈証拠省略〉）
イ 被告Ｙ１は，平成12年11月2日午前，山口営業所において，他の従業員が外出中であることに乗じ，原告Ｘ２に対し，「ダンスをしよう。」などと言って抱き付き，渋々これに応じた同原告の胸を触るなどした上，勤務時間中であるにもかかわらず，「今からホテルに行こう。」などと言って自身との性交渉に応じるように求め，やむなく了承した同原告とともに付近のラブホテルに赴いた上，同原告との間で性交渉を持った。
同被告は，同年12月7日，山口営業所において，再度，同原告をホテルに誘って性交渉を持とうとし，これを拒否した同原告に対し，自身の性器を露出して見せ，逃げようとする同原告に抱き付いて業務机の上に押し倒すなどした。
(4) その後の経緯及び被告会社の対応等について
ア 原告Ｘ２は，平成12年12月上旬，山口労働局雇用均等室の担当者に対し，Ｂや被告Ｙ１から受けたセクシュアル・ハラスメントについて電話相談し，同担当者から，勤務会社宛てに被害申告すべきであり，所管の大分労働局を経由して，被告会社に対し，相談窓口を設けるように至急，勧告すると助言された。なお，同原告は，その際，前記担当者に対し，自身の特定に繋がるような個人情報を秘匿するように希望しており，被害内容についても，被告Ｙ１の強引な誘いによって性交渉を持った事実は明らかにしていない。
イ 一方，被告会社においては，これに先立ち，平成12年9月ころ，北九州市所在の労働関係機関の担当者から，匿名で，Ｃ（被告会社総務部長）に対し，支店や営業所等でセクシュアル・ハラスメントがあるようなので注意されたい旨の電話があり，北九州支店長宛ての社内調査に及んだが，被害状況の把握には至らなかった。
Ｃは，これを機に，セクシュアル・ハラスメントの防止について啓発活動を行うべく，広報資料やパンフレット，ポスター，ビデオテープ等を準備し，同年10月7日開催の幹部職員を対象とした社内会議の際に，出席者に対し，前記のとおり労働関係機関から匿名の注意があったことを告げ，広報資料等を用いて従業員の啓発を行うように指示した。同会議には被告Ｙ１及びＢも出席しており，いずれもこうした注意喚起を受けながら，前記(2)及び(3)の所為に及んだものである。なお，これ以前に被告会社において，セクシュアル・ハラスメントの防止に関する措置は，特に取られていなかった。
（〈証拠省略〉）
ウ 原告Ｘ２は，平成12年12月11日，Ｃ宛てに匿名で，社内でセクシュアル・ハラスメントが横行しており，相談窓口を設けるとともに，就業規則でこうした行為の禁止を明示するなどの対応を取ってほしい旨の文書を送付した。
Ｃは，同月15日，大分労働局雇用均等室の担当者から電話連絡を受け，被告会社の従業員からセクシュアル・ハラスメントに関する相談があったとして，至急対策を講じるように勧告され，同日，セクシュアル・ハラスメントの防止に関する社内規定を作成し，相談窓口を総務部業務課所属の女性担当者と定めた上，こうした事項を記載した広報文書を社内に回覧した。
Ｃは，これまでの経緯から，北九州支店においてセクシュアル・ハラスメントがあった可能性があると考え，同月16日，同支店を管轄する北部第2ブロック長の被告Ｙ１に対し，同支店でのセクシュアル・ハラスメントの有無について聴取したが，同被告は，これを否定した。
（〈証拠省略〉）
エ 被告Ｙ１は，平成12年12月16日，原告Ｘ２宛てに電話をかけて，自身との間で何もなかったことにしてほしいと求めた。
原告Ｘ２は，同日，夫である同Ｘ１に対し，社内でセクシュアル・ハラスメントを受けていると打ち明け，所轄警察署宛てに被害申告するように勧められたが，なおも事柄の推移を待ちたいとして，これに応じなかった。なお，同Ｘ２は，その際も，被告Ｙ１にホテルに誘われて性交渉を持った旨の告白はしていない。
オ 被告Ｙ１は，平成12年12月25日，山口営業所において，原告Ｘ２に対し，「先日の返事を聞かせてほしい」などと言って，シクラメンの鉢花を贈った。同原告は，その後，同被告宛てに，謝意を記した年賀状を送付した。
(5) 被告会社における懲戒処分の経緯等について
ア 原告Ｘ２は，平成13年5月初旬，山口労働局雇用均等室の前記担当者に対し，電話相談の上，自身の氏名を被告会社宛てに開示しても構わないと述べた。
Ｃは，同月7日，大分労働局雇用均等室の担当者から，先日来のセクシュアル・ハラスメントの件について，被害者本人から追って相談がある旨の電話連絡があり，同日，同原告から被害申告の電話を受け，同月11日，同原告から被害内容について聴取調査を行うとともに，ことの詳細を記した書面2通を受領した。
Ｃは，同日，Ｂに事実確認の上，セクシュアル・ハラスメントの自覚はなかったが，事実経緯は間違いない旨の回答を得，同月13日には，被告Ｙ１を対象として同様の聴取調査を行い，勤務時間中に原告Ｘ２と肉体関係を持ったこと，同原告主張の卑猥な言動に及んだことを自認する旨の回答を得た。
（〈証拠省略〉）
イ その後，被告会社は，こうした調査結果を踏まえ，社内稟議の上，被告Ｙ１について，ブロック長職から降格し営業本部付とした上，減給10パーセント12か月の懲戒処分とし，Ｂについても，減給10パーセント1か月に加え，譴責の懲戒処分とする旨を決定した。
被告会社は，平成13年5月18日，原告Ｘ２に対し，両名に対する懲戒処分の内容を通知した上，同月31日付けで同旨を記載した書面を交付した。なお，これと相前後して，被告Ｙ１及びＢから同原告宛てに謝罪文が提出されている。
その後，同被告について，同年6月1日付けで，営業本部付として松山支店に転勤させる旨の人事異動が発令された。
（〈証拠省略〉）
ウ 原告Ｘ２は，その後，被告Ｙ１及びＢに対する懲戒処分の内容や，自身に対する処遇，被告会社の対応等を不満として，平成13年7月31日付けで被告会社を退職した。
（〈証拠省略〉）
2 争点1（被告Ｙ１の責任原因）について
(1) 卑猥なメールの送信について
前記1(3)アに認定のとおり，被告Ｙ１は，職場内の異性である原告Ｘ２に対し，十数回にわたって卑猥なメールを送信しており，その一部は自身の性器に関する露骨な描写を含むものであって，その内容や態様に鑑み，これがセクシュアル・ハラスメントとして不法行為に当たることは，明らかである。
この点，同被告は，かねてプロ野球の話題や贔屓球団の優勝に伴う祝勝会の打合せ等をめぐって，同原告との間で頻繁なメール交換があり，これがエスカレートして先の卑猥なメール送信に至ったものであると供述し，同原告からも静かなところで食事をしよう云々と思わせぶりな返答があったというのであるが，こうしたやり取りは職場内で交わされる日常的な雑談の域を超えるものでなく，同原告の返答内容にせよ，殊更，性的な内容を含むとはいい難いのであって，いずれも同原告が卑猥なメール送信を許容していた根拠とはなり得ない。
(2) 性交渉その他の性的言動について
ア 前記1(3)イに認定のとおり，被告Ｙ１は，勤務時間中，職場内において，他の従業員の不在に乗じ，原告Ｘ２に抱き付いて胸を触るなどした上，ホテルに誘って同原告と性交渉を持ち，或いは自身の性器を露出して見せ，同原告に抱き付き業務机に押し倒すなどの行為に及んでおり，その態様は著しく破廉恥で悪質といえ，これがセクシュアル・ハラスメントとして不法行為に当たることは，明らかである。
イ この点，被告Ｙ１は，いずれの行為についても，原告Ｘ２に嫌がる素振りはなく，ホテルに誘った際も，即答で了承を得ており，現にホテルに向かう途中，所有自動車に分乗して同原告が先導し，道すがら配偶者の稼働先付近を通過する際にその旨の雑談に及ぶなど，余裕ある態度をみせていたと供述する。
しかしながら，本件事案において，両者間でプライベートな交際を重ねていた経緯は全く窺い難く，勤務時間中の職場で，今からホテルに行って性交渉を持とうと上司に誘われ，不倫発覚の危険を全く念頭に置くことなく唯々諾々とこれに応じる女性など存在するはずもなく，同被告の供述するところは，異性の性的放埒さに対する過度の期待としてはともかく，社会常識と一致しない不合理極まりない内容というべきであるし，ホテルに向かう際の同原告の言動についても，殊更，性交渉への容認があったことを推知させるべき事情とは解し難く，前記認定判断を左右しないというべきである（なお，同被告は，夫に見られたらどうするのかと問うと，人違いと惚ければいいなどと返答され，恐ろしい女性と思ったなどと供述するが，作為的な印象が著しく強い不自然な会話内容であり，反対趣旨の同原告の供述に照らし，信用できない。）。
ウ また，被告Ｙ１は，自身が贈ったシクラメンの鉢花について，原告Ｘ２が謝意を記した年賀状を送付したことをもって，同原告が自身にみせた好意の証と主張する。
しかしながら，前記1(4)に認定のとおり，平成12年12月7日の被害後，同原告において，公的機関に電話相談を行い，担当者の助言を得て被告会社宛てに匿名の告発に及び，これを端緒として被告Ｙ１を対象とした社内調査が実施され，その直後に，同被告から事態の揉消しとも取れる要求があった上で，シクラメンの鉢花が贈与されているのであり，これをもって恋愛関係にある男女間の行為とは解し難く，同被告において，自身への責任追及がこれ以上先鋭化するのを避けるべく，同原告の気持ちを宥める意図があったものと推認するのが相当である。同原告は，当時，なおも勤務継続の希望を有しており，上司である同被告から沈静化を求める意向を示され，これ以上事態を公にすべきか揺れる心情にあり（原告Ｘ２，弁論の全趣旨），前記年賀状も，その記載上，単に社会的儀礼として謝意を表したものと解するより外ないのであり（〈証拠省略〉），これをもって同原告の好意の顕れというは，いささか飛躍に過ぎる推論というべきであろう。
(3) セクシュアル・ハラスメントの認定に関するまとめ
前記1に認定の経緯を素直にみる限り，本件は，被告Ｙ１において，原告Ｘ２に対し，上司と部下という社会一般の間柄にすぎないのに，同原告の心情を全く慮ることなく，如上の著しい性的言動に及んだ事案というべきであって，結果的に非常識な要求を受け容れた同原告の心情の機微までは図り難いものの，その点は，事柄の性質上，前記認定を妨げるものでない。同被告の一連の所為は，その態様に鑑み，恋愛関係にない異性において，それを許容することが一般に想定し難い内容であり，明確な拒否の有無にかかわらず，相手方の性的自由を侵害する不法行為に当たるというべきである。
したがって，同被告は，同原告に対する不法行為責任を負う。
3 争点2（被告会社の責任）について
(1) 使用者は，従業員に対し，良好な職場環境を整備すべき法的義務を負うのであり，セクシュアル・ハラスメントの防止に関しても，職場における対処方針を明確化し，これを周知徹底するべく種々の具体的な啓発活動を行うなど，適切な措置を講じることが要請されるのであって，こうした義務違反によって，従業員を対象としたセクシュアル・ハラスメントを招いた場合，使用者自ら従業員に対する不法行為責任を免れないと解される。
(2) 被告会社は，前記1(4)イに認定のとおり，平成12年9月に公的機関から匿名電話を受けるまで，社内において，セクシュアル・ハラスメントの防止に向けた措置を何一つ講じていない。立法の上では，平成11年4月1日をもって，セクシュアル・ハラスメントの防止に係る事業主の責務を明示した改正法（「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」）及び事業主の配慮すべき事項に係る具体的指針（平成10年労働省告示第20号）が施行されており（公知の事実），セクシュアル・ハラスメントの防止が社会喫緊の課題となっていたことは，誰しもが認めるところであり，被告会社の不作為はこうした諸法規に反するものであった。前記改正法や具体的指針が直ちに裁判規範としての性質を有するとはいえないが，公序の一翼を担うものとして，使用者に係る前記法的義務違反の判断に当たっては，当然に斟酌されると解すべきである。
そして，被告会社は，公的機関から社内のセクシュアル・ハラスメントの存在を示唆されるなど，いわば危急の事態を迎えていながら，その後，社内会議の場を利用して，出席者にパンフレット等を配付し一般的な注意を与えるなど通り一遍の措置を取ったにすぎず，その出席者である被告Ｙ１において，数か月のうちに露骨なセクシュアル・ハラスメントを繰り返す事態を招き，或いはＢにあっても，同会議のわずか1か月後に公共の場で性的な誹謗中傷に及んでおり，被告会社の対応は，何らこうした明白な不法行為の歯止めとなり得ていない。両名は，本件の応訴態度に鑑み，その当時，自身らの行為がセクシュアル・ハラスメントとして違法の評価を受けることの認識すら有していなかったものと推認され（弁論の全趣旨），職場を共にする異性への配慮に乏しい常況にあった可能性もあり，いずれも使用者を補佐すべき管理職の地位にあったことを考慮すると，本件セクシュアル・ハラスメントの被害を両名の個人的所為のみに帰するのは相当でなく，被告会社の不作為や社内啓発の不十分さがその一因となったものと解すべきである。
(3) したがって，被告会社には，良好な職場環境の整備に係る義務違反があり，原告Ｘ２に対し不法行為責任を負う。
4 争点3（原告Ｘ１の被侵害利益）について
原告らは，被告Ｙ１のセクシュアル・ハラスメントや被告会社の義務違反行為は，配偶者に貞操を求める権利の侵害として，原告Ｘ１に対する関係でも不法行為に当たると主張する。
しかしながら，セクシュアル・ハラスメントは，性的領域における自己決定権を侵害するが故に違法行為の評価を受けるのであり，その性質上，被害を受けた特定個人を救済の対象とすべきが筋合いといえ，仮に配偶者が当該行為により不快の念を抱いたとしても，それ自体をもって不法行為上の被侵害利益に当たるとは解されず，その慰藉は被害者自身の権利救済を通じて実現すべき事柄というべきである。
また，原告Ｘ１の請求は，被告Ｙ１に対し不貞の第三者として慰謝料支払いを求める趣旨とも善解し得るが，本件において最も保護されるべきセクシュアル・ハラスメントの被害者が，その加害者と共同不法行為の関係に立つことを是認するような法解釈が正当なものとは解し難く，本件をもって，配偶者が第三者との間で不倫の関係を結んだ事案と同一視すべきではなく，婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益の侵害が生じたものとは認められないというべきである。
したがって，原告らの主張は，理由がない。
5 争点4（損害の発生及び額）について
(1) 被告Ｙ１について
先の（ママ）説示したとおり，被告Ｙ１の所為は，その内容や程度に鑑み，悪質かつ執拗であって，権利侵害の度合いは相当高く，同被告のセクシュアル・ハラスメントにより原告Ｘ２の被った精神的苦痛を慰藉するに130万円の金員支払いが相当であり，同認容額や本訴追行の状況等を考慮し，弁護士費用として15万円を認める。
(2) 被告会社について
被告Ｙ１やＢに係るセクシュアル・ハラスメントの内容，両名の地位，本件被害の防止に係る被告会社の落ち度，事後的対応の経緯等を総合考慮し，慰謝料50万円の支払いをもって相当とし，同認容額や本訴追行の状況等を考慮し，弁護士費用として5万円を認める。
第4 結論
よって，原告Ｘ２の請求のうち，被告Ｙ１に係る部分は，145万円及び遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからその限度で認容し，その余は理由がないからこれを棄却し，被告会社に係る部分は，理由があるから全部認容すべきである。一方，原告Ｘ１の請求は理由がなく，いずれも棄却を免れない。
（裁判官 高島義行）
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Q&A【18】ポスター「掲示責任者代行」とはどのようなものでしょうか？
Q&A【19】選挙妨害やその他クレーム対応等の代行も可能でしょうか？
Q&A【20】政治活動(選挙運動)における広報支援プランはどのようなものがありますか？
■営業専門会社による広報PR支援について
Q&A【21】飛び込み訪問、戸別訪問、挨拶回り代行等、ポスター貼り以外でもお願いできますか？
Q&A【22】飲食店や実店舗等の店内やトイレ等にポスターを貼ったり、ビジネスカード設置、チラシ配布等は可能ですか？
Q&A【23】全国どこでもポスター貼りが可能なのですか？
■ご検討中の方々に
Q&A【24】お問い合わせについて
Q&A【25】資料をダウンロード
Q&A【26】ノウハウ・テクニックを大公開！
■ご依頼(お申し込み)の前に
Q&A【27】お申し込みの流れ
Q&A【28】ご用意いただきたいもの
■ご依頼(ご契約)の後に
Q&A【29】進捗報告について
Q&A【30】お友達ご紹介キャンペーンについて
【ポスター【制作前の】候補予定者様】のメニューです。
「政治活動用ポスターのデザイン」は、こちらです。
公職選挙法規定の法的審査(レギュレーションチェック)対応済みの、個人ポスター、２連ポスター、３連ポスター等のデザインを制作！
「弁士相手探しマッチング」は、こちらです。
「探して、交渉して、お隣りへ！」理想の有名人や著名人の弁士相手を探して、地域有権者に対して認知度拡大の相乗効果を狙う！
「ポスターの掲示責任者代行」は、こちらです。
【全国対応】ポスターを掲示した選挙区からのクレーム対応・妨害等の「総合窓口」として、ポスター掲示責任者の代行をいたします。
【ポスター【制作後の】候補予定者様】のメニューです。
政治活動期間における「どぶ板専門！ポスター貼り(掲示交渉)代行」は、こちらです。
【稼働の流れ】
①新規ご挨拶回り|戸別訪問代行|握手代行
選挙区(指定エリア)の有権者(民家・飲食店・その他施設)に対して、候補予定者に代わって選挙ドットウィン！が直接ご訪問致します。
②名刺|ビラ|リーフレット等の手渡し配布
候補予定者と有権者を繋ぐため、名刺・ビラ・政策レポート・討議資料・リーフレットなど活動報告資料の直接手渡し配布を致します。
③留守宅|候補者PR資料ポスティング投函
ご訪問先がご不在の場合には、配布物を郵便受け等にポスティング投函致します。(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率！)
④政治活動ポスター貼り(新規掲示交渉！
【完全成果報酬】地獄のドブ板活動に必須となる、政治活動用ポスター貼り(新規掲示交渉代行！)(貼れた分だけの枚数課金となります)
⑤掲示(貼付)後のフォロー|クレーム対応
ポスター掲示(貼付)完了後における掲示許可承諾者へ、フォローやクレーム対応等のストレスな部分は選挙ドットウィン！が致します。
所属政党の「党員募集獲得代行」、政治団体および後援会等の「入会募集獲得代行」は、こちらです。
当該政党の「党員」「サポーター」募集等の規定に従って、選挙立候補(予定)者様に代わって政党への入党におけるご案内を促します。
どぶ板同行OJT(座学研修および実地特訓)で学ぶ「スパルタ個別訪問同行OJT」は、こちらです。
候補予定者様ご本人・選挙事務所スタッフ・ボランティア様が効率良く「どぶ板の政治活動」が行なえるようアドバイスいたします。
絶対的な地盤を構築する「立札看板設置交渉代行」は、こちらです。
選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立するためのご支援をさせていただきます。
あらゆる政治選挙におけるお困りごとを支援する「選挙の窓口」活動支援一覧は、こちらです。
「地上戦」「空中戦」「ネット戦略」などを駆使し、当選に向けたコンサルティングおよびプランニングのご支援をいたします。
■ポスターPRプラン一覧(枚数・サイズの選択)
選挙区エリアにおいて、ポスターの当該掲示許可承諾者に対して交渉し、同一箇所にどのように掲示するかをお選びいただきます。
【臨機応変型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率88％ ★こちらをご確認下さい。
【連続二枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率6％ ★こちらをご確認下さい。
【限定一枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率4％ ★こちらをご確認下さい。
【個別指定型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率2％ ★こちらをご確認下さい。
※ポスターのサイズは、A1サイズ、A2サイズをはじめ、ご希望に応じてご提案させていただきます。
■掲示場所・貼付箇所
「首都圏などの大都市」「田舎などの地方都市」「駅前や商店街」「幹線道路沿いや住宅街」等により、訪問アプローチ手段が異なりますので、ご指定エリアの地域事情等をお聞かせ下さい。
※貼付箇所につきましては、弊社掲示交渉スタッフが当該ターゲットにアプローチをした際の先方とのコミュニケーションにて、現場での判断とさせていただきます。
■訪問アプローチ手段
【徒歩圏内】
駅周辺の徒歩圏内における、商店街や通行人の多い目立つ場所でのPR
【車両移動】
広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン！の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
「全国統一地方選挙」・「衆議院議員選挙」・「参議院議員選挙」・「都道府県知事選挙」・「都道府県議会議員選挙」・「東京都議会議員選挙」・「市長選挙」・「市議会議員選挙」・「区長選挙」・「区議会議員選挙」・「町長選挙」・「町議会議員選挙」・「村長選挙」・「村議会議員選挙」など、いずれの選挙にもご対応させていただいておりますので、立候補をご検討されている選挙が以下の選挙区エリアに該当するかご確認の上、お問い合わせいただけますようお願いいたします。
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