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裁判年月日 令和 3年 4月 2日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 決定
事件番号 令３（ヨ）２００４５号
事件名 新株予約権無償割当差止仮処分命令申立事件
裁判結果 認容 上訴等 保全異議 文献番号 2021WLJPCA04027001
要旨
【判例タイムズ社（要旨）】
◆株式会社が，その経営支配権に現に争いが生じている場面において，当該株式会社の株式の敵対的買収によって経営支配権を争う特定の株主の持株比率を低下させ，経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持することを主要な目的としてする新株予約権の無償割当てが，会社法２４７条２号所定の「著しく不公正な方法により行われる場合」に該当するとされた事例
出典
判タ 1500号215頁①事件
参照条文
会社法２４７条
裁判年月日 令和 3年 4月 2日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 決定
事件番号 令３（ヨ）２００４５号
事件名 新株予約権無償割当差止仮処分命令申立事件
裁判結果 認容 上訴等 保全異議 文献番号 2021WLJPCA04027001
債権者 株式会社X
同代表者代表取締役 W1
同代理人弁護士 町田行人
野崎竜一
水上高佑
渥美陽子
都築翔
田中一洋
中島章智
債務者 Y株式会社
同代表者代表取締役 W2
同代理人弁護士 小舘浩樹
赤川圭
飛岡和明
菅隆浩
中島真嗣
舛谷寅彦
白石佳壽朗
天野里美
深見暖
室谷裕樹
山田智希
主文
1 債務者の令和3年3月22日の取締役会決議に基づいて現に手続中の甲種新株予約権の無償割当てを仮に差し止める。
2 申立費用は債務者の負担とする。
理由
第1 申立て主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は，債務者の株主である債権者が，債務者に対し，債務者が令和3年3月22日の取締役会決議に基づいて現に手続中の株主に対する甲種新株予約権の無償割当ては，①株主平等の原則に反し，②著しく不公正な方法によるものであると主張して，会社法247条1号及び2号に基づき，これを仮に差し止めることを求める事案である。
2 債権者の申立ての趣旨及び理由は，「仮処分命令申立書」及び「準備書面（1）」記載のとおりであり，債務者の答弁及び主張は，「答弁書（債務者の反論要旨）」，「答弁書（全体版）」及び「第1主張書面」記載のとおりであるから，引用する。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
掲記の疎明資料及び審尋の全趣旨によれば，別紙2「認定事実」記載の事実（以下「認定事実」という。）が一応認められる。
2 被保全権利の有無について
（1）ア 株主に割り当てられる新株予約権の内容に差別のある新株予約権無償割当てが，会社の企業価値ひいては株主の共同の利益を維持するためではなく，専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するためのものである場合には，その新株予約権無償割当ては，株主の共同の利益の保護という観点から新株予約権無償割当てを正当化する特段の事情がない限り，著しく不公正な方法によるものと解すべきである。
イ そして，株式会社の経営支配権に現に争いが生じている場面において，株式の敵対的買収によって経営支配権を争う特定の株主の持分比率を低下させ，経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持することを主要な目的として新株予約権無償割当てがされた場合は，上記アの場合に該当するというべきであり，株式会社は，上記アの特段の事情として，敵対的買収者が真摯に合理的な経営を目指すものではなく，敵対的買収者による経営支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情があることを疎明すべきである。
（2）これを本件についてみると，認定事実によれば，次の事情を指摘することができる。
ア 債務者は，令和2年11月5日，債務者の代表取締役であるW2の債務者に対するマネジメント・バイアウト（本件MBO）の一環として本件MBO公開買付けが行われることが公表されると，取締役会において，これに賛同する意見を表明し，債務者の株主に対して本件MBO公開買付への応募を推奨する旨の決議をした（認定事実1
（2），同2（1））のに対し，債権者は，同月10日以降，債務者株式の買付けを行い（認定事実2（2）），債務者やCらとの間で，本件MBOの不当性を訴えて協議や書簡のやりとりをするなどしたところ，本件MBO公開買付価格は引き上げられたものの，債務者からは債権者による債務者に対するデューディリジェンスの実施を拒否されるなどしたこと（認定事実2（3）～（8））から，令和3年2月5日，債務者株式の買付けを内容とする旧公開買付けを実施するに至った（認定事実2（8））。
そして，債務者は，令和3年2月9日に本件MBO公開買付けが不成立になった後（認定事実2（9）），①同月19日には，取締役会において，旧公開買付に対して反対の意見を表明する旨の決議をし（認定事実2（10）），②同年3月1日には，本件臨時株主総会における株主の承認を条件とし，同月18日を基準日とし，配当額を債務者株式1株当たり300円とする本件特別配当の実施を公表し（認定事実2（12）），③債権者が同月3日に旧公開買付けを撤回した後も債務者株式を追加取得していたこと（認定事実2（13）・（14））等を踏まえ，同月9日，取締役会の決議により本件買収防衛策の導入をし（認定事実3），同月22日，取締役会の決議により本件買収防衛策の対抗措置として本件新株予約権無償割当ての実施を決定するに至った（認定事実4）というのである。
以上の経緯に照らすと，令和3年3月22日（取締役会の決議による本件新株予約権無償割当ての決定）当時，債務者の経営を担当していた取締役（W2ら）と債権者との間においては，債務者の経営支配権に現に争いが生じていたものといえる。
イ 本件買収防衛策は，①大量買付者に対して所定の手続に従うことを要求する一方で，大量買付者がその手続を遵守せず，対抗措置の発動議案のための株主総会の開催以前に本件買付行為を実行又は継続しようとする場合は，取締役会の判断により対抗措置を発動するとされ，②当該対抗措置は，㋐大量買付者等の特定株式保有者による権利行使は認められない旨の差別的行使条件等及び㋑債務者が，ⓐ特定株式保有者以外の者からは債務者株式と引き換えに新株予約権を取得し，ⓑ特定株式保有者からは乙種新株予約権と引き換えに新株予約権を取得する旨の差別的取得条件等が付された甲種新株予約権の無償割当てを行うというものである。この乙種新株予約権は，㋐大量買付者が大量買付行為を継続しておらず，かつ，その後も大量買付行為を実施しないことを誓約した場合であって，大量買付者の株券等保有割合が20.5％を下回っている場合等を除き，行使することができない旨の差別的行使条件及び㋑債務者がその交付から10年以上経過した所定の日になお行使されていないものを所定の金銭と引き換えに乙種新株予約権を取得する旨の差別的取得条件が付されている（以上につき，認定事実3及び別紙3「本件買収防衛策の対抗措置の概要」）。
このような本件買収防衛策の仕組み及び対抗措置の内容に加え，債務者が取締役会の決議により本件買収防衛策の導入をした令和3年3月9日当時，債権者の株券等保有割合が既に22.53％となっていたこと（認定事実2（14）），本件新株予約権無償割当てが本件買収防衛策の対抗措置として上記に沿うものとなっていること（認定事実4（4）），上記アの経緯に照らせば，債権者は，債務者からみれば，債務者株式の敵対的買収を行う者といえること等に照らすと，本件買収防衛策の対抗措置としての本件新株予約権無償割当ては，債務者株式の敵対的買収によって経営支配権を争う債権者の持分比率を低下させる効果を有するものであったといわざるを得ない。
ウ 本件買収防衛策は，上記イのような対抗措置を伴う仕組みを定めたものであるところ，債務者の株主総会の決議を経ずに，取締役会の決議により導入されたものであり（認定事実3），その対抗措置の発動についても，取締役会の決議のみによって行われ，当該対抗措置の発動の是非等につき，株主総会の決議を経ることは予定されていない（認定事実4（4））というのである。
そうすると，本件新株予約権無償割当ては，上記対抗措置の発動の是非等に関する株主の意思が明らかでなく，事後的にこれが明らかにされる状況もない中で，経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するという事実上の効果を有するものであることは否定し難い。
エ 以上の事情を総合すれば，本件新株予約権無償割当ては，債務者の経営支配権に現に争いが生じている場面において，債務者株式の敵対的買収によって経営支配権を争う債権者らの持分比率を低下させ，経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持することを主要な目的としてされたものと推認することができる。
本件買収防衛策は，上記のような仕組みに照らし，株主が大量買付行為の是非を適切に判断できるようにする債務者（取締役会）の意図，目的及び効果があることは否定できないものの，現に取締役会の決議のみで発動された対抗措置が上記イで説示したように債務者株式の敵対的買収によって経営支配権を争う債権者の持分比率を低下させる効果を有することに鑑みると，この一事をもって上記推認を妨げることはできない。また，債務者が本件買収防衛策の導入及び対抗措置の発動（本件新株予約権無償割当ての実施）を決定するに当たり，特別委員会の諮問を経たこと等も，上記ウで説示したところも併せてみれば，上記推認を妨げるものとはいえない。さらに，債権者らが令和3年3月9日の本件買収防衛策の導入後に債務者株式を市場内外で追加取得したこと（認定事実4（1）・（2）），債権者が同月17日に買付予定数の上限及び下限の設定をなしとする再公開買付けを行う予定を公表したこと（認定事実4（3））は，たとえ債務者の株主に対する強圧性を有するものであったとしても，上記推認を妨げるものとはいえない。
オ 債権者が，債務者との書簡のやりとり等（認定事実2（3）～（11））において，債務者株式取得後の具体的な経営方針等に関し，債務者からみて十分な回答をしていなかったとしても，債権者が入手できる債務者に関する情報が限られていたこと等をも併せ考慮すれば，そのことから直ちに，債権者らによる債務者株式の追加取得行為が，会社の資産の切り売りによる株主還元を目的とした解体的買収であるとか，債権者が真摯に合理的な経営を目指すものではないと断じることはできない。他に，敵対的買収者である債権者が真摯に合理的な経営を目指すものではなく，債権者による経営支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情の疎明があったとはいえない。
（3）以上の事情を総合すれば，本件新株予約権無償割当ては，債務者の経営支配権に現に争いが生じている場面において，債務者株式の敵対的買収によって経営支配権を争う特定の株主の持分比率を低下させ，経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持することを主要な目的とするものであるというべきであるから，株主に割り当てられる新株予約権の内容に差別があり，会社の企業価値ひいては株主の共同の利益を維持するためではなく，専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するためのものであると認められ，他方，上記（1）の特段の事情は認められない。したがって，本件新株予約権無償割当ては，著しく不公正な方法によるものというべきである。
これに対し，債務者は，①本件新株予約権無償割当ては，債権者らによる債務者株式の追加取得による強圧性を排除し，株主が大量買付行為の是非を適切に判断することができるようにする目的で行われるものであり，現経営陣の経営支配権の維持を主要な目的とするものではない，②債権者らによる債務者株式の追加取得行為は，会社の資産の切り売りによる株主還元を目的とした解体的買収であり，債権者は，真に合理的な経営を目指すものではなく，債務者を食い物にしようとするものである，③債権者らが本件買収防衛策所定の手続に違反して債務者株式を追加取得したことにより，本件臨時株主総会における株主の意思決定は歪められているから，本件臨時株主総会は本件買収防衛策の発動についての株主の意思を確認する機会とならないなどと主張するが，債務者の上記主張は，以上に説示したところに照らし，採用することができない。
（4）そして，株主は，株主としての資格に基づいて新株予約権の割当てを受けるところ，会社法278条2項は，株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法についての定めは，株主の有する株式の数に応じて新株予約権を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定するなど，株主に割り当てる新株予約権の内容が同一であることを前提としているものと解される。しかし，上記（2）で説示したところによれば，本件新株予約権無償割当ては，割り当てられる新株予約権の内容につき，債権者らとそれ以外の株主との間で差別的な行使条件等及び取得条件等が定められているため（認定事実3（3）及び別紙3「本件買収防衛策の対抗措置の概要」），債権者ら以外の株主に対して本件新株予約権無償割当てに係る甲種新株予約権と引き換えに債務者株式が交付された場合は，債権者らは，その持株比率が大幅に低下するという不利益を受けることとなる。
（5）したがって，債権者は，本件新株予約権無償割当てが著しく不公正な方法により行われ，これにより不利益を受けるおそれがあるから，債務者に対し，本件新株予約権無償割当てをやめることを請求することができるというべきであり，被保全権利が認められる。
3 保全の必要性の有無
債務者の本件新株予約権無償割当てにより，債権者が著しい損害を被るおそれがあることは，前記2（4）で説示したところに照らして明らかであり，本件では保全の必要性も認められる。
4 結語よって，当裁判所は，債権者の申立てを相当と認め，債権者に，債務者のために8億円の担保を立てさせて，主文のとおり決定する。
（裁判長裁判官 林史高 裁判官 西山渉 裁判官 高橋浩美）
別紙2 認定事実
1 当事者等
（1）ア債権者は，投資業，経営コンサルティング等を目的とする会社法2条5号所定の公開会社でない株式会社である（甲1）。
イ 債権者は，投資及び状況に応じて経営権への助言，重要提案行為等を行うことを目的として，債務者の発行する普通株式（以下「債務者株式」という。）を保有しており，債権者と金融商品取引法（以下「金商法」という。）第27条の23第5項に定める共同保有者（以下，債権者及び当該共同保有者を「債権者ら」という。）を合わせた保有株式数及び株券等保有割合（金商法27条の23第4項）は，次のとおりであった。
時点 保有株式数 株券等保有割合
令和3年3月16日当時 718万3600株 25.87%
令和3年3月24日当時 854万3600株 30.77%
（2）ア債務者は，測量並びに空間情報（地理情報）の取得，解析，活用及び販売，再生可能エネルギー発電による電力供給等の事業を営む会社
（外国会社を含む。）の株式又は持分を所有することにより，当該会社の事業活動を支配・管理することを目的とする資本金40億2444万6125円の株式会社であり，東京証券取引所第一部に上場している。
債務者の発行可能株式総数は，6785万3480株であり，その発行済株式総数は2776万3880株（単元株式数100株）である（以上につき，甲3，4）。
イ W2（以下「W2」という。）は，債務者の代表取締役会長兼社長であり，令和2年9月30日時点において，債務者株式49万2030株を保有していた（債務者が令和2年11月11日に提出した第34期第2四半期の会計期間に係る四半期報告書に記載された債務者の発行済株式（自己株式を除く。）の総数に対するW2の所有株式数の割合は，1.79％である。甲5・8頁）。
（3）A株式会社（以下「A社」という。）は，測量並びに空間情報（地理情報）の取得，加工，販売及びこれらに係るコンサルティング等を目的とする株式会社であり，債務者の完全子会社である（甲4，6）。
（4）B株式会社（以下「B社」という。）は，再生可能エネルギー発電施設の開発，EPC，O＆M及び電力小売事業等を業とする株式会社であり，債務者の完全子会社である（甲4，7）。
（5）Cグループ（以下「C」という。）は，グローバルに展開する投資会社であり，Dホールディングス エルピー（以下「Dファンド」という。）は，Cに属する投資ファンドである（甲8）。
2 CによるMBOのための公開買付けの決定及びその実施
（1）アDファンドは，令和2年11月5日，W2による債務者に対するマネジメント・バイアウトの一環として，W2の依頼に基づき，債務者株式の全部の取得を目的として，買付価格を1株につき600円とする債務者株式の公開買付け（以下「本件MBO公開買付け」といい，本件MBO公開買付けに係る買付価格を「本件MBO公開買付価格」という。）及び後記のスキームによる一連の取引（以下「本件MBO」という。）を同月6日から開始することを決定し，同月5日，債務者を通じてその旨の公表（甲8）をした。
本件MBOのスキームは，①Dファンドが，債務者株式の全部を対象とする本件MBO公開買付けを実施する，②上記①によりDファンドが，債務者株式の全部を取得できなかった場合には，株式売渡請求又は株式併合の手法によるスクイーズアウト手続を実施する，③上記②のスクイーズアウト手続の完了後，Dファンドが債務者株式の全部を所有する（その結果，債務者は東京証券取引所の上場規程に基づき，上場廃止となる。），④W2及びW2がその発行済株式の全てを保有するE株式会社（以下「E社」という。）を引受先とする債務者による第三者割当増資の方法により，W2及びE社が債務者に再出資（W2にて総額600万円，E社において総額5400万円の出資）をする，⑤債務者による自己株式取得及び子会社株式譲渡の方法により，Dファンドが，上記③で取得した債務者株式の全部（当該価額は本件MBO公開買付価格に基づき金164億7268万円相当）及び現金（金205億2731万2000円）と引き換えに，DファンドがA社の発行済株式の80％及びB社の発行済株式の70％を取得するというものである（以上につき，甲8・8～9頁，40～41頁）。
イ 令和2年11月5日開催の債務者の取締役会において，W2及びCから提案を受けた買付価格（債務者株式1株につき600円）が，買付価格を含む本件MBOに係る取引条件の公正さを担保する措置が十分に講じられた上で，特別委員会がW2及びCとの間で十分な交渉を重ねた結果合意された価格であること等を理由として，本件MBO公開買付けに賛同する意見を表明するとともに，債務者の株主に対して，本件MBO公開買付けへの応募を推奨する旨の決議をした（甲8・32～33頁）。
ウ Dファンドは，令和2年11月6日，本件MBO公開買付けを開始し（甲9），債務者は，同日，上記イのとおりの意見表明報告書（甲10）を提出した。
（2）債権者は，その試算によれば，W2及びE社が，本件MBOにより6000万円の出資で約180億円の純資産を保有する債務者に係る債務者株式の全てを所有することになり（甲11），他の株主の犠牲のもと，W2及びE社のみが莫大な利益を得ることになる本件MBOは極めて不当なものであり，債務者の取締役会及びCに再考を促す交渉を行うためなどとして，令和2年11月10日，市場内取引による債務者株式の買付けを開始し，大量の債務者株式を取得した（甲12の1～12の12）。
（3）債権者は，令和2年11月16日頃から令和3年1月5日頃までの間，債務者の取締役会及びCらとの間で書簡のやりとり（甲13～20）をし，本件MBOの不当性を訴え，本件MBOの完了後の債務者の純資産額を明らかにするように求めたが，債務者から，当該純資産額が未確定である旨等の回答を受けた。
そこで，債権者は，令和3年1月8日夕刻から同月13日までの間，Cと協議を行ったが，Cから合理的な解決策が提示されるには至らなかったため，同月13日をもってCとの協議を打ち切り，債権者において，本件MBO公開買付価格よりも高い価格で公開買付けを実施することにより，債務者の株主に株式売却の機会を提供することを検討した（甲21～23）。
（4）債権者は，令和3年1月14日，買付価格を債務者株式1株につき840円（本件MBO公開買付価格600円に対して40％のプレミアムを加えたものであり，連結の1株当たり自己資本の額と同水準）とする公開買付け（以下「旧公開買付け」という。）を同年2月上旬から行う方針を決定し，上記決定を公表した（甲24）。
（5）債権者は，令和3年1月15日頃，債務者の特別委員会宛てに，本件MBOを容認したことについて質問等をする旨の書簡（甲25）を送付したところ，債務者から，債務者の特別委員会に対する質問については回答を控えさせていただく旨，本件MBOが完了した後の債務者の純資産を重視することは適切ではない旨等の回答（甲27）を受けた。
（6）Dファンドは，令和3年1月26日，本件MBO公開買付価格を債務者株式1株につき600円から1200円に引き上げることとし（甲28），その旨のプレスリリース（甲29，30）をした。
（7）債権者は，令和3年1月27日，債務者の特別委員会宛てに，債権者による債務者に対するデューディリジェンスの機会を与えるべきである旨を記載した書簡（甲31）及び債務者の特別委員会からの質問に対する回答を記載した書面（甲32）を送付した。
また，債権者は，令和3年1月28日，債務者から，対象者の具体的な経営方針等についての追加質問事項を記載した書簡（甲33）を受領し，同日，債務者の取締役会に対し，上記追加質問事項に関して，①本来，具体的な経営方針はデューディリジェンスを踏まえて詳細を協議することによって確定するものであり，令和3年1月29日から同月31日までの期間でW2，債務者の取締役会及び債務者特別委員会と実質的な議論を行いたいこと，②デューディリジェンスについても当該議論と並行して進行させたい意向がある旨の書簡（甲34）を送付するとともに，債務者の特別委員会宛てに，旧公開買付けに関する追加質問に対する回答書（甲35）を送付した。
債権者は，令和3年1月29日，債務者から，同月31日に債務者の特別委員会による債権者との面談を行いたい旨の回答（甲36）を受け，同月30日，債務者に対し，当該面談に応じる旨及び上記特別委員会の質問に対する回答等を記載した書簡（甲37，38）を送付した。
債権者は，令和3年1月31日，債務者の特別委員会と面談し（甲22），同年2月1日，債務者特別委員会委員長から，債権者が旧公開買付けにおける買付予定数の下限を本件MBO公開買付けと同水準である3分の2以上に設定するならば，債権者によるデューディリジェンスを受け入れる方向で検討する旨の回答（甲41）を受領したことから，同日，デューディリジェンスの重要性に鑑み，債務者特別委員会委員長の要望に従って，債権者によるデューディリジェンスの実施を認めてもらえるのであれば，W2及びW2が支配する管理会社2社とF證券との各応募契約締結を条件に旧公開買付けにおいても上記の買付予定数の下限を設定する用意があるが，これが実現できない場合は下限の設定は困難である旨の回答（甲42）をした。
しかし，債務者は，令和3年2月2日，債権者に対し，債権者による債務者に対するデューディリジェンスの実施を拒否する旨の書簡（甲39）を受領した。
（8）債権者は，債務者に対するデューディリジェンスの実施を断念し，令和3年2月4日，買付価格を債務者株式1株につき1210円（Cが決定し債務者が応募を推奨した変更後の本件MBO公開買付価格よりも10円高い価格）とし，買付予定数の上限及び下限の設定をなしとする旧公開買付けを同月5日から同年3月22日まで実施することを決定し，同年2月5日，旧公開買付けを実施した（甲22）。
（9）本件MBO公開買付けは，令和3年2月9日，応募株式数が買付予定数の下限に到達せず，不成立となった（甲43）。
（10）債務者は，債権者に対し，令和3年2月10日，旧公開買付けが債務者の企業価値及び債務者株主の共同の利益の向上に資するものであるかという点について更なる評価・検討を行う必要があるとして追加質問をし，債権者による旧公開買付けに対する意見の表明を留保する旨の書簡
（甲44～46）を送付した。
これに対し，債権者は，債務者に対し，令和3年2月15日，①債権者が，債務者に対し，本件MBOの不当性を説明し，本件MBO公開買付けを公正なものに改めることはできないかという提案を行ったもののこれが拒否され，また，債務者の取締役会及び債務者特別委員会がお墨付きを与えている本件MBO公開買付けの買付期間の満了が迫っている中で，債務者株主に債権者が警鐘を鳴らすだけでは，不当な価格による本件MBO公開買付けを阻止することは困難であったことから，やむを得ず，債務者株主に甚大な損害を与える本件MBO公開買付けを阻止し，債務者株主に対し債務者株式の売却機会を提供するため，旧公開買付けを開始したこと，②債権者は，債務者に対し数百億円という多額の投資をしようとするものであるから，当然に債務者の事業経営に強い関心を持っており，企業価値向上のためできる限りの調査・検討を行っているものの，債務者の取締役会及び債務者特別委員会が債権者によるデューディリジェンスを拒否しているため，子会社を含む債権者の経営方針について具体的に検討することが困難である旨等を記載した対質問回答報告書
（甲47，48）を送付した。
（11）令和3年2月19日開催の債務者の取締役会において，債権者から旧公開買付け後の債務者グループの具体的な経営方針が一切示されておらず，むしろ，旧公開買付け後，債権者が債務者の経営権を取得した場合には，債務者の企業価値ないし株主の共同の利益を毀損する可能性が否定できないこと等を理由として，旧公開買付けに対して反対の意見を表明することが決議され，その旨の公表（甲49～51）をされた。
（12）債務者は，令和3年3月1日，同年4月下旬開催予定の臨時株主総会（以下「本件臨時株主総会」という。）における株主の承認を条件として，同月18日を基準日とする債務者株式1株当たり300円（配当金の総額は82億3481万8500円）の特別配当（以下「本件特別配当」という。）を実施する旨の公表（甲52）をした。
（13）債権者は，令和3年3月3日，本件特別配当の基準日に照らせば本件特別配当を受けることができず，配当落ち分だけ債務者株式1株当たり資産価値が減少するにもかかわらず当初の高値での買付価格（普通株式1株につき1210円）による株式取得を余儀なくされると考え，旧公開買付けを撤回した（甲53，54）。
なお，債権者が令和3年3月3日に提出した第1回公開買付けに係る公開買付撤回届出書（甲54）及び同日付で公表した「Y株式会社株券（証券コード：1111）に対する公開買付けの撤回に関するお知らせ」（甲53）のいずれにも，債権者が債務者株式を更に追加取得しない旨又は債務者の経営権の取得を目指さないこととした旨の記載はなかった。
（14）債権者らは，令和3年3月4日から同月9日までの間，次のとおり，市場において，債務者株式を売買により取得した。これにより，債権者らの株券等保有割合は，同日当時，22.53％となった。
取得日 取得株式数
令和3年3月4日 20万2100株
同月5日 13万9100株
同月8日 16万3000株
同月9日 13万0700株
3 債務者の取締役会による本件買収防衛策の導入令和3年3月9日開催の債務者の取締役会において，債権者らが，①市場で債務者株式を買い集める，又は，②再度債務者株式に対する公開買付けを開始するなどして債務者の経営権の取得を図る具体的かつ切迫した懸念があることを理由として，要旨次のような内容の株主への差別的行使条件及び取得条項付き新株予約権の無償割当てを用いた買収防衛策（以下「本件買収防衛策」という。）を導入することを決議し（甲55），その旨の公表（甲56）をした。
（1）対象となる大量買付行為（以下，ア～ウの買付け等を「大量買付行為」といい，大量買付行為を行い又は行おうとする者を「大量買付者」という。）ア 債務者の株券等の一定数以上の買付けその他の有償の譲受け又はこれらに類似する行為の結果，①債務者の株券等の保有者が保有する債務者の株券等に係る株券等保有割合の合計，②債務者の株券等の買付けその他の有償の譲受け又はこれらに類似する行為を行う者が所有し又は所有することとなる債務者の株券等及びその者の特別関係
者が所有する債務者の株券等に係る株券等所有割合の合計のいずれかが，20.5％以上となる者（当該行為より前に，20.5％以上であった者を含み，以下「特定保有者」という。）による債務者の株券等の買付けその他の有償の譲受け若しくはこれらに類似する行為又はその提案
イ 結果として特定保有者になる者による上記アに規定される行為
ウ 上記ア及びイに規定される行為の実施の有無にかかわらず，債務者の株券等の保有者又は債務者の株券等の買付けその他の有償の譲受け若しくはこれらに類似する行為を行う者及びその特別関係者（以下「特定株主グループ」という。）が，債務者の他の株主との間で行う行為であり，かつ，当該行為の結果として当該他の株主が当該特定株主グループの共同保有者に該当するに至るような合意その他の行為，又は当該特定株主グループと当該他の株主との間にその一方が他方を実質的に支配し若しくはそれらの者が共同ないし協調して行動する関係を樹立するあらゆる行為（ただし，債務者が発行者である株券等につき当該特定株主グループと当該他の株主の株券等保有割合の合計が20.5％以上である場合，又は当該行為により20.5％以上となるような場合に限る。）
（2）対抗措置の発動に至るまでの手続債務者の株主に，大量買付行為が行われるかどうかについての情報を提供し，大量買付行為がなされる場合には，大量買付行為がなされることを受け入れるか否かについてその意思を表明する機会を確保するため，大量買付者に対し，次に定める手続に従うことを要求する。すなわち，①債務者は，大量買付行為を行う具体的なおそれがある者に対し，大量買付行為の予定の有無の確認及び大量買付者に対する情報提供を要求し，②債務者取締役の検討手続を経た上で，③株主総会の開催及び対抗措置の発動議案についての採決を行う。
そして，大量買付行為は，取締役会評価期間（60日以内又は90日以内で取締役会が定める期間であり，最大30日間延長が可能。）の経過後（但し，株主総会が開催されることとなった場合には，対抗措置の発動に関する議案の否決及び株主総会の終結後）にのみ開始されるべきものとする。
（3）対抗措置の発動条件上記（2）③の株主総会において，株主が，債務者の取締役会が提案する対抗措置（その概要は，別紙3「本件買収防衛策の対抗措置の概要」を参照）の発動に関する議案を承認し，かつ，大量買付行為が中止又は撤回されない場合には，債務者の取締役会は，対抗措置として差別的行使条件等及び取得条項等が付された新株予約権の無償割当てを実施する。ただし，大量買付者が上記（2）①及び②に記載した手続を遵守せず，上記（2）③に記載する株主総会を開催する以前において大量買付行為を実行又は継続しようとする場合，債務者の取締役会は，株主総会を経ることなく，特段の事由がない限り，対抗措置を発動する。
4 本件買収防衛策導入後の経緯
（1）債権者らは，令和3年3月10日から同月16日までの間，次のとおり，市場において，債権者株式を売買により取得した。16日までの間，次のとおり，市場において，債権者株式を売買により取得した。
取得日 取得株式数
令和3年3月10日 13万7800株
同月11日 11万0300株
同月12日 21万5600株
同月15日 9万4100株
同月16日 37万0300株
（2）株式会社G（債権者の共同保有者）は，令和3年3月17日，債務者株式136万株を市場外で取得した。これにより，債権者らの債務者株式の株券等保有割合は，同日時点で，30.77％に達した。
（3）債権者は，令和3年3月17日，①買付価格を債務者株式1株につき金910円（旧公開買付価格1210円から本件特別配当300円を控除したもの），買付期間を30営業日，買付予定数の上限及び下限の設定をなしとする公開買付け（以下「再公開買付け」という。）を行う予定である旨，
②再公開買付けの開始前に市場又は市場外で債務者株式を買い付ける可能性があるが，それによって再公開買付け前の債権者らの債務者に対する議決権割合が3分の1を超えないようにする旨，再公開買付け終了後の所有議決権の割合が3分の2以上となったときは，株式併合等により，債務者株式全てを取得する予定である旨等を公表した
（甲57）。
（4）令和3年3月22日開催の債務者の取締役会において，債権者らが，同月10日以降，債務者の株式を買い集めていることなどから，本件買収防衛策の手続に従わずに大量買付行為を実施したとして，債務者の株主に対して，本件買収防衛策の対抗措置に係る本新株予約権と同内容の甲種新株予約権を無償割当ての基準日（同年4月12日）に保有する株式1株につき1個の割合により割り当てる旨の決定（この新株予約権無償割当てを，以下「本件新株予約権無償割当て」という。）をした（甲58，59）。
なお，債務者は，令和3年3月22日，上記のとおり本件新株予約権無償割当てを行うことを公表するとともに，債権者らが本件買収防衛策の導入後から本件臨時株主総会の基準日（令和3年3月18日）までの間に本件買収防衛策に違反して，強圧性の問題のある状態で債務者株式の追加取得をしているなどとして，本件臨時株主総会においては，上記のような対抗措置の発動の是非等の議案を付議することを予定していないこと等を公表した（甲58）。
以上別紙3 本件買収防衛策の対抗措置の概要
債務者は，概要次のとおり，特定株式保有者による権利行使は認められない旨の差別的行使条件等及び債務者が特定株式保有者以外の者から債務者株式と引換えに新株予約権を取得する旨の差別的取得条項等が付された甲種新株予約権（以下「本新株予約権」という。）を，新株予約権の無償割当ての方法（会社法277条以下）により，債務者の全ての株主に対して割り当てる。
ア 割り当てる本新株予約権の内容
① 本新株予約権の目的となる株式の種類債務者株式
② 本新株予約権の目的となる株式の数新株予約権1個当たりの目的となる株式の数は，債務者の取締役会が別途定める数とする。
③ 本新株予約権の行使に際して出資される財産の価額新株予約権の行使に際してする出資の目的は金銭とし，その価額は1円に各新株予約権の目的となる株式の数を乗じた額とする。
④ 本新株予約権を行使することができる期間本新株予約権を行使することができる期間は，債務者の取締役会が別途定める一定の期間とする。
⑤ 本新株予約権の行使の条件
（a）特定株式保有者が保有する本新株予約権 （実質的に保有するものを含む。）は，行使することができない。「特定株式保有者」とは，以下のいずれかに該当する者をいう。
（ⅰ）大量買付者
（ⅱ）大量買付者の共同保有者（金商法27条の23第5項及び第6項）
（ⅲ）大量買付者の特別関係者（金商法27条の2第7項）
（ⅳ）債務者の取締役会が特別委員会による勧告を踏まえて以下のいずれかに該当すると合理的に認定した者
（x）上記（ⅰ）から本（ⅳ）までに該当する者から債務者の承認なく本新株予約権を譲り受け又は承継した者
（y）上記（ⅰ）から本（ⅳ）までに該当する者の 「関係者」。「関係者」とは，これらの者との間にファイナンシャル・アドバイザリー契約を締結している投資銀行，証券会社その他の金融機関その他これらの者と実質的利害を共通にしている者，公開買付代理人，弁護士，会計士その他のアドバイザー若しくはこれらの者が実質的に支配し又はこれらの者と共同ないし協調して行動する者をいう。組合その他のファンドに係る「関係者」の判定においては，ファンド・マネージャーの実質的同一性その他の諸事情が勘案される。
（b）新株予約権者は，債務者に対し，上記⑤
（a）の特定株式保有者に該当しないこと（第三者のために行使する場合には当該第三者が上記⑤
（a）の特定株式保有者に該当しないことを含む。）についての表明・保証条項，補償条項その他債務者が定める事項を記載した書面，合理的範囲内で債務者が求める条件充足を示す資料及び法令等により必要とされる書面を提出した場合に限り，本新株予約権を行使することができるものとする。
（c）適用ある外国の証券法その他の法令等上，当該法令等の管轄地域に所在する者による本新株予約権の行使に関し，所定の手続の履行又は所定の条件の充足が必要とされる場合，当該管轄地域に所在する者は，当該手続及び条件が全て履行又は充足されていると債務者が認めた場合に限り，本新株予約権を行使することができる。なお，債務者が上記手続及び条件を履行又は充足することで当該管轄地域に所在する者が本新株予約権を行使することができる場合であっても，債務者としてこれを履行又は充足する義務を負うものではない。
（d）上記⑤（c）の条件の充足の確認は，上記⑤（b）に定める手続に準じた手続で債務者の取締役会が定めるところによるものとする。
（e）各本新株予約権の一部行使は，できないものとする。
⑥ 取得条項
（a）債務者は，本新株予約権の無償割当ての効力発生日以後の日で債務者の取締役会が定める日において，未行使の本新株予約権で，上記⑤（a）及び（b）の規定に従い行使可能な（すなわち，特定株式保有者に該当しない者が保有する）もの
（下記⑥（b）において「行使適格本新株予約権」という。）について，取得に係る本新株予約権の数に，本新株予約権1個当たりの目的となる株式の数を乗じた数の整数部分に該当する数の債務者株式を，対価として取得することができる。
（b）債務者は，本新株予約権の無償割当ての効力発生日以後の日で債務者の取締役会が定める日において，未行使の本新株予約権で行使適格本新株予約権以外のものについて，取得に係る本新株予約権と同数の新株予約権で特定株式保有者の行使に一定の制約が付されたもの（以下に記載する行使条件及び取得条項その他債務者の取締役会が定める内容のものとする。以下，当該新株予約権を「乙種新株予約権」という。）を対価として取得することができる。
（ⅰ）行使条件特定株式保有者は，次に定める場合その他債務者の取締役会が定める場合を除き，乙種新株予約権を行使することができない。なお，各乙種新株予約権の一部行使は，できないものとする。（x）
大量買付者が大量買付行為を継続しておらず，かつ，その後も大量買付行為を実施しないことを誓約した場合であって，かつ，（y）①大量買付者の株券等保有割合（ただし，本（ⅰ）において，株券等保有割合の計算に当たっては大量買付者やその共同保有者以外の特定株式保有者についても当該大量買付者の共同保有者とみなして算定を行うものとし，また，特定株式保有者の保有する乙種新株予約権のうち行使条件が充足されていないものは除外して算定する。）として債務者の取締役会が認めた割合が20.5％を下回っている場合，又は②大量買付者の株券等保有割合として債務者の取締役会が認めた割合が20.5％以上である場合において，当該大量買付者その他の特定株式保有者が，債務者が認める証券会社に委託をして債務者株式を処分し，当該処分を行った後における大量買付者その他の特定株式保有者の株券等保有割合として債務者の取締役会が認めた割合が20.5％を下回ったときは，当該大量買付者その他の特定株式保有者は，乙種新株予約権につき，行使後の株券等保有割合として債務者の取締役会が認める割合が20.5％を下回る割合の範囲内でのみ行使することができる。
（ⅱ）取得条項債務者は，乙種新株予約権が交付された日から10年を経過する日以降，11年を経過する日までの間において債務者の取締役会が別途定める日に，なお行使されていない乙種新株予約権が残存するときは，当該乙種新株予約権（ただし，行使条件が充足されていないものに限る。）を，その時点における当該乙種新株予約権の公正価額に相当する金銭を対価として取得することができる。
（c）本新株予約権の強制取得に関する条件充足の確認は，上記⑤（b）に定める手続に準じた手続で債務者の取締役会が定めるところによるものとする。なお，債務者は，本新株予約権の行使が可能となる期間の開始日の前日までの間は，いつでも，債務者が本新株予約権を取得することが適切であると債務者の取締役会が認める場合には，債務者の取締役会が別途定める日の到来日をもって，全ての本新株予約権を無償で取得することができるものとする。
⑦ 譲渡承認譲渡による本新株予約権の取得には，債務者の取締役会の承認を要する。
⑧ 資本金及び準備金に関する事項本新株予約権の行使及び取得条項に基づく取得等に伴い増加する資本金及び資本準備金に関する事項は，法令等の規定に従い定めるものとする。
⑨ 新株予約権証券の発行本新株予約権については新株予約権証券を発行しない。
イ 株主に割り当てる本新株予約権の数債務者株式（債務者の有する債務者株式を除く。）1株につき本新株予約権1個の割合で割り当てることとする。
ウ 本新株予約権の無償割当ての対象となる株主債務者の取締役会が別途定める基準日における最終の株主名簿に記載又は記録された債務者株式の全株主（債務者を除く。）に対し，本新株予約権を割り当てる。
エ 本新株予約権の総数債務者の取締役会が別途定める基準日における債務者の最終の発行済株式総数（ただし，債務者が有する債務者株式の数を除く。）と同数とする。
オ 本新株予約権の無償割当ての効力発生日債務者の取締役会が別途定める基準日以降の日で債務者の取締役会が別途定める日とする。
カ その他
本新株予約権の無償割当ては，①株主総会による承認が得られ，かつ，大量買付行為が中止若しくは撤回されないこと，又は，②大量買付者が本件買収防衛策の対抗措置の発動に至るまでの手続を遵守せず，同手続における株主総会を開催する以前において大量買付行為を実施しようとする場合の何れかが充足されるることを条件として効力を生じるものとする。
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