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裁判年月日 平成29年 1月20日 裁判所名 静岡地裁 裁判区分 判決
事件番号 平２７（ワ）３９０号
事件名 地位確認等請求事件
裁判結果 一部認容 上訴等 控訴 文献番号 2017WLJPCA01206003
事案の概要
◇学校法人である被告Ｙ１学園の経営する短期大学の准教授であった原告が、被告Ｙ１学園から懲戒解雇する旨の処分（本件懲戒解雇）を受けたが、本件懲戒解雇については、懲戒事由が存在しないこと又は公益通報者保護法３条１号又は２号に当たることから無効であると主張して、被告Ｙ１学園に対し、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、本件懲戒解雇後の給与及び賞与等の各支払を求め、また、被告Ｙ１学園の理事長である被告Ｙ２、同理事である被告Ｙ３及び同総務課長補佐であった被告Ｙ４の共謀等により、被告Ｙ１学園において違法・無効な本件懲戒解雇を行ったことについて、原告に対する不法行為が成立する旨を主張して、被告らに対し、慰謝料３００万円等の連帯支払を求めた事案
裁判経過
控訴審 平成29年 7月13日 東京高裁 判決 平２９（ネ）６４０号 地位確認等請求控訴事件
保全抗告審 平成28年 9月 7日 東京高裁 決定 平２８（ラ）２６３号 地位保全仮処分決定認可決定に対する保全抗告事件
保全異議申立審 平成28年 1月25日 静岡地裁 決定 平２７（モ）２０６４号 保全異議申立事件
仮処分命令申立審 平成27年 7月 3日 静岡地裁 決定 平２７（ヨ）１９号 地位保全仮処分命令申立事件
出典
労判 1155号77頁
労働法律旬報 1894号73頁
評釈
西澤美和子・労働法律旬報 1894号40頁
裁判年月日 平成29年 1月20日 裁判所名 静岡地裁 裁判区分 判決
事件番号 平２７（ワ）３９０号
事件名 地位確認等請求事件
裁判結果 一部認容 上訴等 控訴 文献番号 2017WLJPCA01206003
静岡県沼津市〈以下省略〉
原告 Ｘ
同訴訟代理人弁護士 西ヶ谷知成
同 白山聖浩
同 宋昌錫
同 西澤美和子
静岡市〈以下省略〉
被告 学校法人Ｙ１学園
同代表者理事長 Ｙ２
静岡市〈以下省略〉
被告 Ｙ２
静岡市〈以下省略〉
被告 Ｙ３
静岡市〈以下省略〉
被告 Ｙ４
上記４名訴訟代理人弁護士 齋藤安彦
同 加藤将和
同 木村絵美
同訴訟復代理人弁護士 相川洋介
主文
１ 原告が，被告学校法人Ｙ１学園に対し，労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
２ 被告学校法人Ｙ１学園は，原告に対し，平成２７年４月１日から本判決確定の日まで，毎月２１日限り月額４０万４９００円及びこれに対するそれぞれ支払期日の翌日から支払済みまで年５分の割合による金員を支払え。
３ 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
４ 訴訟費用は，原告と被告学校法人Ｙ１学園との間で生じた費用は，これを４分し，その１を原告の負担とし，その余を被告学校法人Ｙ１学園の負担とし，原告と被告Ｙ２，原告と被告Ｙ３及び原告と被告Ｙ４との間に生じた各費用は，いずれも原告の負担とする。
事実及び理由
第１ 請求
１ 主文第１項と同旨。
２ 被告学校法人Ｙ１学園は，原告に対し，平成２７年４月１日から本判決確定の日まで，毎月２１日限り月額４３万５２１０円及びこれに対するそれぞれ支払期日の翌日から支払済みまで年５分の割合による金員を支払え。
３ 被告学校法人Ｙ１学園は，原告に対し，平成２７年４月１日から本判決確定の日まで，毎年６月２１日限り６８万７３１８円及び毎年１２月２１日限り９１万４１３３円並びにこれらに対するそれぞれ支払期日の日の翌日から支払済みまで年５分の割合による金員を支払え。
４ 被告らは，原告に対し，連帯して，３００万円及びこれに対する平成２７年２月１９日から支払済みまで年５分の割合による金員を支払え。
第２ 事案の概要
本件は，被告学校法人Ｙ１学園（以下「被告学園」という。）が経営するａ大学短期大学部（以下「被告短大」という。）の准教授であった原告が，被告学園から，平成２７年３月３１日をもって懲戒解雇する旨の処分（以下「本件懲戒解雇」という。）を受けたが，本件懲戒解雇については，懲戒事由が存在しないこと又は公益通報者保護法３条１号又は２号に当たることから無効であると主張して，被告学園に対し，労働契約上の地位の確認，平成２７年４月１日以降の給与及び賞与並びにこれらに対する各弁済期の翌日から支払済みまで民法所定の年５分の割合による遅延損害金の各支払を求めるとともに，被告Ｙ２（以下「被告Ｙ２」という。），被告Ｙ３（以下「被告Ｙ３」という。）及び被告Ｙ４（以下「被告Ｙ４」という。）の共謀等により，被告学園において違法・無効な本件懲戒解雇を行ったことについて，原告に対する不法行為が成立する旨を主張して被告らに対し，不法行為（被告Ｙ２，被告Ｙ３及び被告Ｙ４に対しては，民法７０９条，７１９条，被告学園に対しては，民法７０９条，民法７１５条，理事長である被告Ｙ２については，さらに，私立学校法２９条，一般社団法人及び一般財団法人に関する法律７８条）に基づき，慰謝料３００万円及びこれに対する本件懲戒解雇の日である平成２７年２月１９日から支払済みまで民法所定の年５分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
１ 前提事実（争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実）
(1) 当事者
ア 被告学園は，静岡県内において高等学校及び大学等（被告短大を含む。）を経営する学校法人であり，被告Ｙ２が理事長を務め，被告Ｙ３は理事を務めている（争いがない）。
イ 被告Ｙ４は，静岡県警察で暴力団対策を担当していた元警察官であり，本件懲戒解雇当時，被告学園の総務課長補佐を務め，被告学園の危機管理担当をしていた（争いがない）。
ウ 原告は，平成１４年４月，被告学園との間で，原告が被告学園の大学教育職員として勤務することを内容とする期限の定めのない労働契約を締結し，本件懲戒解雇当時，被告短大のｂ学科准教授を務めていた（争いがない）。
(2) 本件懲戒解雇に至る経緯
ア 原告は，被告学園が，平成２１年７月２１日に主催したｃ音楽祭（以下「本件音楽祭」という。）において，会場整理係を担当していたところ，集合時刻が１５時であったにもかかわらず，被告学園に連絡をすることもなく，３時間以上も遅刻した。原告は，この遅刻について，会場整理係の責任者であるＡ教授（以下「Ａ教授」という。）から，多数の教職員の面前で叱責を受け，またＢ事務部長（以下「Ｂ事務部長」という。）からも注意を受けた（乙１ないし３，５ないし８，弁論の全趣旨）。
イ 原告は，平成２１年１１月５日付けで，被告Ｙ２に対し，「本件音楽祭の際，Ａ教授から多数の教職員の面前で傍若無人で執拗な叱責（十数回の謝罪），Ｂ事務部長から原告の人格を否定するような言動（お前は「クズ」という発言）など極めて乱暴な扱いを受け，専門医から心的外傷によるうつ状態と診断され，いまだ体調が悪いこと，及び被告学園においてパワーハラスメントがなく，研究面が生かした教育を実践できるような基本的な職場環境と啓発活動をお願いできればと思います。」などと記載した手紙を送付した。
また，原告は，同日付けで，当時の被告短大の学長であったＣ（以下「Ｃ学長」という。）に対し，上記と同様に，Ａ教授から叱責されたこと及びＢ事務部長から乱暴な扱いを受けた旨を記載した手紙を送付した。（以上につき，乙１ないし３）
ウ 原告は，平成２１年１１月１７日，被告短大のキャンパスハラスメント対策委員会（以下「ハラスメント委員会」という。）の当時の委員長であったＤ委員長（以下「Ｄ委員長」という。）に対し，本件音楽祭での多数の面前での執拗な叱責，お前はクズ発言以降体調を崩し，専門医から心的外傷によるうつ病の診断を受け，今後労災保険や民事等の法的手続を含め，被告学園と直接交渉したいと思っている旨のメールを送信した（乙４）。
エ ハラスメント委員会は，上記ウの原告の申出を受け，平成２２年１月２０日，原告から本件音楽祭のことについて聴き取り調査を行った。
原告は，その際，ハラスメント委員会のメンバーであるＥ教授（以下「Ｅ教授」という。）に対し，被告学園が，日本私立学校振興・共益事業団から私立大学等経常費補助金（以下「本件補助金」という。）を不正に受給しており，これは詐欺罪に該当し得るのではないかと指摘した。（以上につき，甲３，乙８）
オ 原告は，平成２２年５月頃，原告の研究室前に警察の担当部署及び連絡先を記載したハラスメント防止啓発ポスター（以下「本件ポスター」という。）を掲示するとともに，被告Ｙ２及び平成２２年４月から被告短大の学長を務めていた被告Ｙ３に対し，被告短大内の各所に本件ポスターを掲示するように依頼した（争いがない）。
カ 被告Ｙ４は，平成２２年６月１６日，原告の研究室を訪れ，原告と面談を行った（以下「本件面談１」という。）。原告と被告Ｙ４は，翌日に，静岡労働局に行くことを合意し，本件面談１は終了した。
原告は，同月１６日，被告Ｙ３を訪れ，被告Ｙ４から本件ポスターを掲示することについて，静岡県警の許可を取らないと犯罪になるということを言われた旨を報告した。（以上につき，甲８，９）
キ 原告と被告Ｙ４は，平成２２年６月１７日，静岡労働局へ行き，相談員のＦ（以下「Ｆ相談員」という。）同席の下，面談を行った（以下「本件面談２」という。争いがない，甲１０。）。
ク 原告は，平成２４年８月２２日，本件面談１及び同２の際，被告Ｙ４が，原告に対し，被告学園による本件補助金の不正受給について捜査機関に告発することなどを断念するよう強要し（以下「本件強要」という。），被告Ｙ２及び被告Ｙ３が，本件強要を行ったことにつき事前に被告Ｙ４と共謀していたなどとして，静岡地方検察庁に対し，別紙「告訴事実」記載のとおりの告訴事実について強要罪（刑法２２３条１項）に当たるとして告訴（以下「本件告訴」という。）した（争いがない）。
本件告訴については，平成２５年１月４日付けで，いずれも「罪とならず，嫌疑なし」として，被告らに対する不起訴処分がされた（甲２４の１ないし３）。
ケ 原告は，平成２４年１２月１１日，被告学園内部の公益通報窓口に対し，週６時間以上の授業を行う専任教員がいる場合には日本私立学校振興・共益事業団から本件補助金を受けることができるところ，平成１４年から平成１６年に作成された教員コマ数，時間割等関係書面，資料と，被告学園において専任教員とされていたＢ事務部長の勤務実態が全て食い違っている可能性があり，Ｂ事務部長が専任教員に該当しない可能性があるので調査されたいとして公益通報を行った（以下「本件公益通報」という。甲１６）。
コ 被告学園の公益通報調査委員会は，平成２５年５月１６日，平成１４年度から平成１６年度までのＢ事務部長が担当の授業において，Ｂ事務部長は２回目以降の授業に出席せず助手であるＧ助手（以下「Ｇ助手」という。）に任せており，本件補助金の算定基準となる週６時間以上の授業を行っているとはいえず，日本私立学校振興・共済事業団への申請内容は，授業の実態と異なっていたものと判断した（甲１６）。
サ 被告学園は，平成２５年７月３日，「教職員の懲戒処分の手続に関する規程」（以下「本件懲戒規程」という。）を制定し，教職員の懲戒処分については，理事長の下に懲戒委員会を設置し，懲戒委員会の審査を経て決定すること（第５条）が定められた（甲１７）。
シ 被告学園は，平成２６年２月２６日，平成１３年度から平成１６年度において，本件補助金を過大に受給していたことを公表し，翌日，その旨の新聞報道がされた（甲１８）。
ス 被告学園は，平成２６年４月，本件懲戒規程に基づき，懲戒委員会（以下「本件懲戒委員会」という。）を組織し，同年５月９日，原告に対し，本件告訴について懲戒審査を行う旨の通知をした（争いがない）。
セ 被告学園は，平成２７年２月１９日，以下のとおりの理由で，原告を懲戒解雇（本件懲戒解雇）した（甲２０，乙３２）。
「 被処分者（原告）は，平成２４年８月２２日付で，Ｙ１学園法人本部職員（被告Ｙ４），Ｙ１学園理事長（被告Ｙ２）及び副理事長兼ｄ短期大学学長（被告Ｙ３）を強要罪に当たるとして，静岡地方検察庁に告訴（結果は不起訴）した。しかし，本部職員，理事長及び学長が被処分者に対し，共謀の上強要したという事実は認められず，かつ同人において，かかる事実が存すると信じるに足りる相当な理由も存しないことから，被処分者の行為は，学校法人Ｙ１学園就業規則第５８条第１項第２号に規定する『学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害したとき。』に該当するため，『懲戒解職』に処する。」
(3)ア 被告学園における給与支給日は毎月２１日であり，原告の平成２７年２月分の額面給与額は，基本給３９万４９００円，勤続手当１万円及び通勤手当３万０３１０円の合計４３万５２１０円であった（争いがない）。
イ 被告学園における賞与は，毎年６月及び１２月に支給されていたところ，原告は，平成２６年６月に６８万７３１８円，同年１２月に９１万４１３３円の賞与の支給を受けた（争いがない）。
(4) 被告学園は，平成２８年５月１３日の第７回弁論準備手続において，本件懲戒解雇の事由として，①原告は，本件告訴について不起訴処分とされた後も，被告学園に対し，強要行為を理由として損害賠償を請求している事実（以下「追加の懲戒事由①」という。），及び②原告が，本件告訴について不起訴処分とされた後，被告学園内で被告Ｙ４の懲戒処分を求めている事実（以下「追加の懲戒事由②」という。）を追加した（当裁判所に顕著な事実）。
２ 争点
(1) 本件懲戒解雇の有効性（争点１）
(2) 本件懲戒解雇をしたことについて被告らの不法行為責任の成否（争点２）
(3) 原告の損害額（争点３）
３ 争点に対する当事者の主張
(1) 争点１（本件懲戒解雇の有効性）について
（被告学園の主張）
以下のとおり，本件懲戒解雇は有効である。
ア 懲戒事由の存在
（ア） 本件懲戒解雇により原告に告知された懲戒事由について
学校法人Ｙ１学園就業規則（以下「就業規則」という。）５８条１項２号には，「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害したとき」に該当する場合には，懲戒解雇することができる旨規定されている。
原告は，別紙「告訴事実」記載のとおり，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３は，共謀の上，原告が，被告学園において本件補助金を不正に受給していることを捜査機関に告発しようとしていることを知り，被告Ｙ４をして，原告に対し，上記の不正受給等を捜査機関に告発するなどした場合には，業務上の不利益を与えたり，現職警察官に働きかけて原告を逮捕させたり，暴力団員を介して原告に何らかの危害を加えたりすることができるなどと告知して脅迫し，原告が上記の不正受給を捜査機関に告発するなどして被告学園の不正を表沙汰にすることを断念させたもので，これらの行為は強要罪に当たる旨を主張して，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３を被告訴人として本件告訴を行った。
しかし，被告Ｙ４が原告に対し，原告が主張するような脅迫を行って強要をした事実はない。被告Ｙ４が，平成２２年６月１６日に原告の下を訪れた目的は，原告が，静岡県警の承諾なく本件ポスターに静岡県警の電話番号を掲載していたこと及び被告学園内の所定の手続を経ていなかったことから，本件ポスターの掲示を中止させるためであり，本件告訴事実にあるような，本件補助金の不正受給について告発や監督官庁に対する情報提供をすることを断念させる目的ではなかった。
そして，被告Ｙ４が被告Ｙ２及び被告Ｙ３と上記強要について共謀した事実もなく，本件告訴については，いずれも「罪とならず，嫌疑なし」として上記被告らに対する不起訴処分がされたことからすれば，原告は，本件告訴事実に当たるような事実はなく，かつ原告において，そのような事実が存すると信じるに足りる相当な理由もないにもかかわらず，本件告訴をしたものといえる。
告訴は，一般通常人にとって，それを捜査機関から告げられ，自らが犯罪捜査の対象になっていることを知ることで，大きな不安に駆られることは当然であり，そのために私生活や仕事上の自由な行動が抑制されることになる。特に被告Ｙ２と被告Ｙ３は，被告学園の最高管理責任者であり，本件告訴によって，被告学園の管理行為の執行等が抑制され，ひいては被告学園の秩序を維持すること等ができなくなり，被告学園の秩序を乱すことになることは明らかである。また，本件告訴は，被告学園全体の信用，信頼を毀損する行為にほかならない。
したがって，原告が本件告訴をしたことは，被告学園の就業規則５８条１項２号の「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害したとき」に該当するというべきである。
（イ） 本件訴訟において追加主張された懲戒事由について
追加の懲戒事由①（原告が，本件告訴について不起訴処分とされた後も，被告学園に対し，強要行為を理由として損害賠償を請求している事実）及び同②（原告が，本件告訴について不起訴処分とされた後，被告学園内で被告Ｙ４の懲戒処分を求めている事実）は，原告が，「罪とならず，嫌疑なし」という検察庁の判断を全く無視し，紛争を蒸し返して被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３に実質的な責任追及を行っているものであるから，使用者である被告学園と労働者である原告との間の信頼関係を破壊するものといえる。
したがって，追加の懲戒事由①及び同②に当たる事実は，原告が本件告訴を行ったことと併せて，原告と被告学園間の労使間の信頼関係を破壊し，「学園の秩序を乱」す行為に該当するというべきである。
なお，被告学園は，本件訴訟において懲戒事由を追加して主張したものであるところ，追加の懲戒事由①及び同②は，本件懲戒解雇時において被告学園が認識し，かつ本件懲戒解雇の事由と実質的同一性，同種性ないしは密接関連性を有するから，本件懲戒解雇の際に原告に告知していなくても，本件懲戒解雇の事由として追加することができるというべきである。
イ 懲戒解雇の相当性について
原告による本件告訴は，被告Ｙ２及び被告Ｙ３を被告学園から排斥するという不当な目的によるもので，原告は，その必要性も緊急性もないのに，あえて積極的に本件告訴を行ったものであるから，その行為は，被告学園に対する背信性の極めて高い行為と言わざるを得ない。
したがって，被告学園が原告を本件懲戒解雇したことは，相当性を欠くものではないというべきである。
ウ 適正手続について
学校教育法（平成２６年６月改正前のもの。以下同じ。）９３条１項は，「大学には，重要な事項を審議するため，教授会を置かなければならない。」と規定されているが，同規定は，教員の人事に関する事項には及ばないため，本件懲戒解雇の際に教授会で審議していないとしても違法ではない。
（原告の主張）
以下のとおり，本件懲戒解雇は無効である。
ア 本件懲戒解雇について，就業規則５８条１項２号に該当する懲戒解雇の事由がないこと
（ア） 本件懲戒解雇の事由について
被告Ｙ４は，平成２２年６月１６日及び同月１７日に原告と面談（本件面談１及び同２）を行った際，原告に対し，暴力団との関係を誇示する発言をしたり，被告学園内の問題を外部機関に持ち込むと原告が被告学園の組織の中にいられなくなると繰り返し警告したり，原告が行ったポスターの掲示等の行為が犯罪行為に当たり，逮捕される可能性があるなどと言ったりして，原告が，外部機関に対して被告学園が本件補助金を不正に受給している旨を通報することを断念させようとした。上記被告Ｙ４の言動は，原告に対する強要罪に該当する。
被告Ｙ３は，平成２２年６月１６日及び平成２５年２月２７日，原告に対し，被告Ｙ４を原告の下に派遣したのは被告Ｙ２自身であると認めた。
そのため，原告は，本件強要は，被告Ｙ２，被告Ｙ３及び被告Ｙ４が共謀をした上で行われたものと判断し，本件告訴を行った。なお，静岡地方検察庁の担当検事は，原告に対し，本件告訴事実の存在は合理的に推認し得るから虚偽告訴にはならない旨の説明をしている。
したがって，本件強要の存在は明らかであるし，仮に原告に対する強要の事実までは認められないとしても，少なくとも原告が，本件強要に当たる事実が存在したと信じるについて相当な理由があったといえるから，本件懲戒解雇について，被告学園の就業規則５８条１項２号に該当する懲戒解雇事由は存在しない。
また，本件告訴は，被告学園の関係者に対し，捜査に協力する必要を生じさせたものの，それによって「学園の秩序」を乱したということはないし，本件告訴による刑事手続は結果的に不起訴処分により終了していることからしても，被告学園の名誉や信用を害することはなかった。
以上のとおり，原告が本件告訴により「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害した」とは認められないから，原告に就業規則５８条１項２号に該当する事由があるということはできない。
（イ） 追加の懲戒事由①及び同②について
被告学園は，本件訴訟において，本件懲戒解雇の事由として，追加の懲戒事由①及び同②を追加して主張する。しかし，本件告訴は刑事手続であるのに対し，追加の懲戒事由①及び同②はいずれも民事の損害賠償請求であって質的に異なる。また，刑事上処罰の対象とならなくとも，民事上不法行為が成立する場合は少なからず存在するのであり，刑事上不起訴処分となったことが民事上の損害賠償請求権を否定する根拠となり得ないのは当然のことである。
したがって，本件懲戒解雇の当初の事由と追加の懲戒事由①及び同②とは同一性，同種性，密接関連性はないため，本件懲戒解雇の時に事由とされていなかった追加の懲戒事由①及び同②を，本件訴訟中に懲戒事由として追加することは認められないというべきである。
イ 公益通報者保護法により無効であること
（ア） 公益通報者保護法３条は，公益通報者が，通報対象事実が生じ，又はまさに生じようとしていると思料する場合に，当該労務提供先等に対して公益通報を行ったこと（同条１号）及び通報対象事実が生じ，又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合に，当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対して公益通報を行ったこと（同条２号）を理由として，当該労働者を自ら使用する事業者が行った解雇は，無効とすると規定している。
（イ） 原告は，被告学園による本件補助金の受給が不正であるとして本件公益通報を行ったところ，被告学園は，公益通報調査委員会が，日本私立学校振興・共済事業団への申請内容とＢ事務部長の授業の実態は異なっていたと判断した後に本件懲戒規程を制定し，平成２６年２月２７日の新聞報道によって上記不正受給が広く社会に知れ渡るや否や，原告に対し，約２年前の本件告訴を理由に懲戒審査をする通知をしている。
このような一連の経過に鑑みれば，本件懲戒解雇が，原告による本件公益通報を契機とするものであること並びに本件公益通報に対する報復目的及び他の従業員に対する見せしめ目的であることは明らかである。
したがって，本件懲戒解雇は，公益通報者保護法３条１号により無効である。
（ウ） また，本件告訴は，行政機関に対する公益通報にあたるところ，上記ア（ア）のとおり，本件告訴事実（本件強要）が生じたか，または少なくとも生じたと信じるに足る相当な理由があったといえる。
したがって，本件告訴を理由とする本件懲戒解雇は，公益通報者保護法３条２号により無効である。
ウ 本件懲戒解雇は社会的相当性を欠くこと
（ア） 本件懲戒解雇について
本件懲戒解雇は業務命令違反や職務懈怠を理由とするものではなく，法律上許容されている告訴を行ったことを理由とするものであり，それにもかかわらず，懲戒処分として「解雇」を選択したことは重きに失する。
特に原告はこれまで懲戒処分歴も有していなかったことからすれば，仮に本件告訴によって何らかの懲戒処分がされ得るとしても，より軽い処分を選択すべき事案であったことは明らかである。
（イ） 追加の懲戒事由①及び②について
被告学園は，本件訴訟を本案とする地位保全仮処分命令申立事件において，被告Ｙ４が，本件面談の際，「元警察官という身分でありながら，断定的に傷害罪になる等の発言をしたことは不適切とはいえない」，「やくざ，親分という言葉を使うこと自体は適切ではない」等と主張し，被告Ｙ４の原告に対する発言が不適切であることを認めている。
それにもかかわらず，原告による同発言の責任追及行為を懲戒理由とすることは明らかに背理である。
また，原告は，本件強要について刑事上処罰の対象とならなくとも民事上不法行為が成立し，又は懲戒処分の対象となる余地は十分にあり得ると判断して，被告学園に対する損害賠償請求及び被告Ｙ４の処分を求めたのであり，原告が静岡地方検察庁の判断を無視して紛争を蒸し返すために責任追及を行ったなどという主張は，被告学園の偏見に過ぎない。
したがって，仮に追加の懲戒事由①及び同②を本件懲戒解雇の事由として追加できるとしても，これらを理由とする懲戒解雇は，明らかに客観的合理性及び社会的相当性を欠くものであるから，無効である。
エ 適正手続違反
学校教育法９３条１項は，「大学には，重要な事項を審議するため，教授会を置かなければならない。」と規定しているところ，被告学園は，本件懲戒解雇という重要事項について教授会における審議，決定を経ていないから，本件懲戒解雇は，同条項に違反し，適正手続に違反するものとして無効である。
(2) 争点２（本件懲戒解雇をしたことについて被告らの不法行為責任の成否）について
（原告の主張）
ア 被告Ｙ４について
被告Ｙ４は，本件強要を行ったにもかかわらず，本件懲戒委員会から事情を聴取された際，「強要罪で訴えられたことについて，何を強要したのか，権利行使を妨害するというそのもの自体がなく・・・」と虚偽の事実を述べたり，「事実のないことを告訴し検察を動かすことは，学校とすれば募集からすべてに影響し多大な損害を負うことにもなりかねず，そういう危険性を冒したことは重大な犯罪である。」と述べたりするなど，積極的に原告を批判する発言をした。
これらの被告Ｙ４の発言は，本件懲戒委員会の判断を誤らせるものであり，被告Ｙ４は，違法無効な懲戒解雇手続に積極的に加担したものといえるから，原告に対し，不法行為責任を負うというべきである。
イ 被告Ｙ２及び被告Ｙ３について
本件懲戒解雇は，被告学園の就業規則の定める懲戒事由がそもそも存在しないのにされたもので，公益通報者保護法にも反するものであったから，これが無効であることは誰の目にも明らかであった。
被告Ｙ２及び被告Ｙ３は，原告が被告学園の補助金の不正受給等の問題を表沙汰にすることを断念させることについて，被告Ｙ４と共謀していたのであるから，本件懲戒解雇が懲戒事由を欠き，無効であることを熟知していたといえる。万が一，被告Ｙ２及び被告Ｙ３について，被告Ｙ４との共謀が認められないとしても，被告Ｙ２は，労働基準監督署から助言指導を受けたことにより，被告Ｙ３は，原告から直接報告を受けたことにより，被告Ｙ４による本件強要の事実を知っていたといえるから，本件懲戒解雇について懲戒事由が存在しないことは十分に知り得たものである。
それにもかかわらず，被告Ｙ２は，理事長として懲戒委員会を招集した上で本件懲戒解雇を行い，被告Ｙ３は，原告の所属上長及び常務理事としての立場で本件懲戒解雇の手続に積極的に関与したのであるから，被告Ｙ２及び被告Ｙ３は，上記のとおり無効な本件懲戒解雇をしたことについて，原告に対し，被告Ｙ４と連帯して損害を賠償すべき責任（民法７０９条，７１９条）を負うというべきである。
ウ 被告学園について
被告学園は，故意又は過失により違法無効な本件懲戒解雇を行ったものとして，原告に対して固有の不法行為責任（民法７０９条）を負うとともに，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３の使用者として，これらの被告らと連帯して損害を賠償すべき責任（民法７１５条）を負うというべきである。
（被告らの主張）
原告の主張は，いずれも争う。
(3) 争点３（原告の損害額）について
（原告の主張）
本件懲戒解雇は，原告の公益通報に対する報復であるとともに被告学園の他の教職員に対する見せしめの目的による不利益処分であり，このような処分は，組織内部の改善を目指して勇気ある行動をとった者に対して甚大な不利益を課すものであって，公益通報に対する萎縮効果も強く，教育機関としての倫理にも反するものである。
また，本件懲戒解雇を決定した懲戒委員会の手続は，審理の冒頭から，原告が被告らを合理的根拠もないのに告訴したことを前提として審理を行い，原告の弁解の機会においても主張立証責任を原告に転嫁するなどし，原告の処分の内容について，十分な議論を尽くすことなく，「懲戒解職」の選択に至っており，極めて不適正な手続であった。
このような違法・不当な本件懲戒解雇による原告の精神的損害を慰謝するための金額は，３００万円を下らないというべきである。
（被告らの主張）
原告の主張は，争う。
第３ 当裁判所の判断
１ 認定事実
前提事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば，次のとおりの事実が認められる。
(1) 原告は，平成２１年７月２１日に行われた本件音楽祭において，集合時刻に３時間以上遅刻したため，Ａ教授から，多数の教職員の面前で叱責を受けたほか，Ｂ事務部長からも注意を受け，心身の不調を余儀なくされたことについて，被告Ｙ２やＣ学長に対し，上記のような不適切な叱責等について抗議し，組織の対応の問題を指摘する趣旨の手紙を送付とともに，ハラスメント委員会の委員長であったＤ委員長に対し，今後，労災保険や民事等の法的手続を含め，被告学園と交渉したいと思っている旨のメールを送信した。
そして，原告は，平成２２年１月２０日に実施されたハラスメント委員会による聴き取り調査において，Ａ教授及びＢ事務部長の言動は，乱暴なやり方であり，不適切な叱責方法であった旨を述べるとともに，本件音楽祭の集合時刻について失念していたこと及び人員にゆとりがあり過ぎるので，そういう人達に業務を任せることにより代替できたのではないかと考えている旨の発言をした。
また，原告は，上記委員会による聴き取り調査の席上，Ｅ教授に対し，Ｂ事務部長について，被告学園の時間割表上教授と記載したことが教授の数を水増しして本件補助金を不正に受給したことになり，詐欺罪に該当し得るのではないかということを懸念してきたこと，弁護士に相談した際，実態と異なる時間割を作成した原告も補助金の不正受給による詐欺罪の共犯に問われる可能性があり，懲役刑も覚悟しておいた方がよいなどと言われたことなどを話した。これに対し，Ｅ教授は，被告学園全体がそうした不正の問題を知って行ったわけではなく，教務委員としての業務を行ったにとどまる原告が責任を問われるわけではないなどと話し，原告の話を聞き置くにとどまった。このようなＥ教授の反応を受けて，原告は，改めて，被告学園としてパワーハラスメントを業務遂行の手段として行ってきたとすれば問題であり，啓発が必要であることを訴えたが，補助金の不正受給問題を追及するような話はしなかった。（以上につき，前提事実(2)アないしエ，甲３・５頁，８頁ないし１１頁）
(2) 原告は，平成２２年２月頃，Ｇ助手及び被告学園の教務部長であるＨ（以下「Ｈ教務部長」という。）に対し，Ｂ事務部長が，平成１４年から平成１６年頃までの間に被告短大において，授業を実際に担当していたか否かの確認を行った（甲５５，５６，弁論の全趣旨）。
(3) 原告は，平成２２年５月２２日，被告学園の理事長室を訪ね，被告Ｙ２に対し，被告短大内に本件ポスターを掲示するよう求めるとともに，本件ポスターを渡した。また，原告は，同年６月３日頃，被告Ｙ３に対しても被告短大内に本件ポスターを掲示するよう求める旨の手紙を送付した（甲５，６，乙１８の２，１９の２，原告本人５頁，６頁，被告Ｙ２本人４頁ないし６頁，被告Ｙ３本人７頁，弁論の全趣旨）。
(4) 被告Ｙ２は，被告学園の危機管理担当をしていた被告Ｙ４に対し，上記(3)の手紙と本件ポスターを原告に返すように依頼し，これを受けて，被告Ｙ４は，平成２２年６月１６日，原告の研究室を訪れ，原告と面談（本件面談１）を行った。
原告及び被告Ｙ４は，本件面談１において，大要以下のような発言（以下「本件発言」という。）をした。
ア 原告が，本件ポスターに静岡県警の電話番号を掲載したことについて，静岡県警の総合相談室に連絡をした旨を発言した際，被告Ｙ４は，「私も元警察官ですよ，実を言うと。」などと発言した。
イ 原告が，本件ポスターに関して，被害主張が行き過ぎることには気を付けている旨の発言をした際，被告Ｙ４は，「ただね，文章とかメールとかで瑕疵（もし）があると，これはとんでもないことになるもんでね。」，「それでもって，もしなんか体に支障をきたしたとなると，今度はもう傷害罪で，それは被害届はいらないもんでね。」などと発言した。
ウ 原告が，本件ポスターの掲示について，市民活動として配布するために，今後は直接警察に行って許可をもらう旨の発言をしたところ，被告Ｙ４は，「わしらも今言ったようにルートはたくさん持っていますし，」，「僕も，まぁ，ずっと政治家相手に仕事をしてきているもんで。」，「また，暴力団と，僕の場合は政治家，あと公務員を専門にやっている人間だもんで。それひとすじでやってきている。いろんな面じゃ顔はきくと思うからね。」などと発言した。（以上につき，甲８，乙１４の１・２，被告Ｙ２本人６頁，被告Ｙ３本人６頁，被告Ｙ４本人３頁）
(5) 原告と被告Ｙ４は，平成２２年６月１７日，静岡労働局の労働相談コーナーにおいて，Ｆ相談員の同席の下，本件面談２を行った。
原告及び被告Ｙ４は，本件面談２において，大要以下のような発言をした。
ア 原告は，Ｆ相談員に対し，「昨日Ｙ４さんと２時間お話しして，Ｙ４さんの要件は，私が内部ですべきであって，いきなり外へもっていったこと，ポスターの掲示に関しても，外の窓口を付けたことは理解しがたいということで。」などと発言した。
イ 原告が，被告Ｙ４に対してハラスメント委員会のＤ委員長にメールを出すことが傷害罪になるのかと質問したところ，被告Ｙ４は，「間違いない」，「弁護士に聞いてもらえば分かる。」などと発言した。
ウ Ｆ相談員が，被告Ｙ４に対し，本件音楽祭の際に原告がＡ教授やＢ事務部長から叱責された件に関し，被告学園の経営者にもペナルティーが課せられる可能性がある旨を指摘したところ，被告Ｙ４は，「経営者と話してみたところで今の話は解決はつかない。」，「個人対個人ですから，個人が納得しない限り無理ですよ。」，「経営者側に処分をくれたとしても，今度は原告の方が組織全体を敵にしますよ。」，「組織の中に残っていれますか？」などと発言した。
エ 被告Ｙ４は，原告から，理事長である被告Ｙ２に進言するよう依頼された際，「理事長もね，今言った僕が一人でそんなのに決裁を伺っていくという形ではないもんで。」，「やくざもんも，政治家もそうだけど，みんな相談してくれるんですけどね。」，「今でもしょっちゅう電話が掛かってくる。親分ちがみんな電話してくる。」などと発言した。（以上につき，前提事実(2)キ，甲１０）
(6) 原告は，平成２４年１２月１１日及び平成２５年２月６日，被告Ｙ３に対し，被告Ｙ４による強要の件について，ハラスメント委員会で扱わない理由について釈明等を求める内容のメールを送信した（乙５５，７８）。
(7) 原告は，平成２５年６月１１日，被告学園に対し，平成２１年３月以降，原告が本件補助金の不正受給について追及していることについて，被告学園が原告の労働環境を悪化させる等のハラスメントを継続して行い，被告Ｙ４を介して，原告に対し，本件補助金の不正受給の追及を断念するよう脅迫，強要を行っているなどとして，不法行為に基づく損害賠償請求として３００万円の支払を求める旨の内容証明郵便を送付した（乙６６）。
(8)ア 被告学園は，本件懲戒規程に基づき，本件懲戒委員会を組織し，平成２６年４月２３日，同年５月１５日，同月２８日，同年６月２０日，同年７月７日，同年９月１日，同年１０月１７日及び同年１１月１９日にそれぞれ懲戒委員会を開いた（乙２４ないし３１（ただし，枝番を含む。））。
イ 被告Ｙ４は，平成２６年５月１５日に開かれた第２回の懲戒委員会に出席し，本件面談１の際，被告学園の不正，不祥事については話しておらず，本件面談１の時点では本件補助金の受給に係る問題が発覚していない状態であるから，不正，不祥事を知り得ることはないこと，また，雑談の中で弁護士や暴力団などの話をしたが，現職の警察官に逮捕させるとか暴力団に危害を加えさせるなどと言っていないことなどを述べた（乙２５）。
ウ 原告は，平成２６年５月２８日に開かれた第３回の懲戒委員会に，弁護士と共に出席し，本件告訴事実は，原告の供述や録音記録を検察事務官がまとめ，検察庁から素案が郵送されてきたものに，自ら加筆したものである，告訴事実にいう学園の不正，不祥事は，本件補助金の不正受給問題と被告学園が運営するｅ大学（以下「ｅ大学」という。）の職員が学長に怒鳴られ，その後本部へ移動したものの辞めてしまった件に係るハラスメントの問題の２点である，原告がハラスメント委員会で本件補助金の不正受給について指摘し，被告Ｙ２にハラスメント防止のポスターや本件補助金の不正受給問題などの一連の出来事に対処してほしいと直接手紙を書いたが，その後１か月も経たないうちに，被告Ｙ４が原告の下に来たことから，被告Ｙ２の指示により，被告Ｙ４が自分を抑えようとしているものと推定したなどと述べた（乙２６）。
エ 被告Ｙ３は，平成２６年７月７日に開かれた第５回の懲戒委員会に出席し，被告Ｙ２は，被告Ｙ４に対し，本件ポスターの件で，被告学園としての対応を話しただけで，被告Ｙ２が，被告学園の不正，不祥事を外に出さないよう圧力を掛けたということはないなどと述べた（乙２８）。
オ 原告は，平成２６年１０月１７日に開かれた第７回の懲戒委員会に，弁護士と共に出席し，被告Ｙ４と被告Ｙ２，被告Ｙ３が本件強要について共謀したと考える根拠について，被告Ｙ３と被告Ｙ４が，緊急連絡網のとおり直接に承認と報告を行う立場にあり，学内の問題への対処には，被告Ｙ３の指示又は承認があったという関係にあること，ｆ高校での不祥事について被告Ｙ４が関与したのは，被告Ｙ２が被告Ｙ４と密接に関係し，もみ消しを指示しただろうと推認されることが根拠であり，少なくとも原告は，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３間に上記共謀があったと信じるにつき相当な理由があるなどと述べた（乙３０）。
カ 本件懲戒委員会は，平成２６年１１月１９日，本件告訴について，告訴事実の裏付けが確認できないことから，虚偽のものであって，就業規則５８条１項２号に規定する「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害したとき」に該当し，原告を同条２項６号の定める懲戒解職とすることが相当であると，委員全員の一致で決定した。
また，本件懲戒委員会は，被告Ｙ２に対し，上記懲戒解職はやむを得ないが，原告に対し自主退職を勧めるなどの慎重な対応が必要であるとの意見を付した。（以上につき，乙３１）
(9) 被告Ｙ２は，就業規則５８条１項２号の「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害したとき」について，「学園の秩序を乱し，」かつ「学園の名誉または信用を害したとき」と解釈し，上記カ(8)の本件懲戒委員会の意見を踏まえ，平成２７年２月１９日，原告に対し，本件懲戒解雇を行った（甲２０，乙３２，被告Ｙ２本人・３８頁，３９頁）。
２ 争点１（本件懲戒解雇の有効性）について
(1) 被告学園は，本件告訴事実が存在せず，かつ原告において，そのような事実が存すると信じるに足りる相当な理由も存在しないことを前提に，本件告訴により，就業規則５８条１項２号の「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害したとき」に該当する旨を主張する一方，原告は，本件懲戒解雇の事由である就業規則５８条１項２号に該当する事由が存在しない旨を主張する。
そこで，本件において，原告について就業規則５８条１項２号に該当する事由が存在するか否かについて，まず検討する。
ア 別紙「告訴事実」及び認定事実(8)ウによれば，本件告訴事実の中心は，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３が共謀の上，原告が，被告学園の本件補助金の不正受給やｅ大学において学長が職員に対してパワーハラスメントに当たる行為をした件について捜査機関への告発若しくは監督官庁への情報提供を行うなど，被告学園の不正を表沙汰にすることを断念させるため，被告Ｙ４をして原告を脅迫したということにあると解される。
イ 認定事実(1)によれば，原告は，平成２２年１月２０日には，既に本件補助金の受給が不正受給に当たるのではないかという疑念を抱き，同年２月頃には，Ｇ助手やＨ教務部長に対し，Ｂ事務部長が平成１４年から平成１６年頃に実際に授業を担当していたか否かについて問い合わせるなど，本件補助金の受給の問題に関して強い関心を持っていたことがうかがわれる。
しかしながら，認定事実(1)及び証拠（甲３）によれば，平成２２年１月２０日に実施されたハラスメント委員会の聴き取り調査において，原告が訴えた内容の中心は，本件音楽祭におけるＡ教授とＢ事務部長の叱責がパワーハラスメント等に当たり不適切ではないかという点であって，被告学園の本件補助金の受給が不正受給に当たることについて言及した部分もあるが，それは，原告が，本件音楽祭の当日集合時刻に遅刻した際に，Ｂ事務部長から多数の教職員の面前で叱責されたことについて，その言動等を批判し，被告学園のパワーハラスメントへの対応を問う文脈の中でのごく一部にとどまっていたと認められ，その後，本件面談１及び同２に至るまでの事実経過の中で，原告と被告学園ないしその役職員との間で，本件補助金の不正受給問題に関してやりとりがされた形跡はうかがわれない。
また，ｅ大学におけるパワーハラスメントについては，原告自身がこれを直接指摘した事実は認められない。
さらに，認定事実(3)のとおり，原告が被告Ｙ２に手渡した手紙（甲５，乙１９の２）や被告Ｙ３に送付した手紙（甲６，乙１８の２）には，本件音楽祭に関連して，パワーハラスメント防止の啓発を目的とした本件ポスターの掲示を求める旨の記載はあるものの，被告学園の本件補助金の受給が不正受給に当たる可能性やｅ大学におけるパワーハラスメントに言及した記載は一切ない。
加えて，原告と被告Ｙ４との本件面談１及び同２においても，話題の中心は，やはり本件音楽祭におけるパワーハラスメント問題や本件ポスターの記載内容に関わるものであり，直接的に本件補助金やｅ大学におけるパワーハラスメントの問題が話題になったとは認められない。
以上の事実からすれば，原告自身は，本件面談１及び同２の当時，本件補助金の受給が不正受給に当たるのではないかと疑念を抱いていたと認められるものの，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３が，そのような原告の問題意識を深刻に受け止め，本件補助金の不正受給やｅ大学におけるパワーハラスメントの問題について，急ぎ対応しなければならないほどの問題であると認識していたとは認めるに至らない。
ウ そうであれば，確かに，前記認定事実(4)及び(5)のとおり，被告Ｙ４が本件面談１及び同２の過程で，原告に対し，暴力団との関わりをほのめかすなど，明らかに不穏当で不適切な言動を行っており，被告Ｙ２及び被告Ｙ３において，そのような被告Ｙ４に原告との交渉を任せていたことなどから，原告において，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３が何らかの意思を連絡して，原告の行動を抑えようとしたとの疑念を抱いたことには無理からぬ点があったといえるとしても，本件面談１及び本件面談２が行われた当時，上記意思の連絡の対象は，本件音楽祭におけるパワーハラスメント問題や本件ポスターの記載内容を巡る原告への対応に関するものであって，その範囲を超えて，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３に，原告に対し，本件補助金の不正受給問題やｅ大学におけるパワーハラスメントについて表沙汰にすることを断念させる意図があったとまでは認めることができない。
そして，原告は，被告Ｙ４との本件面談１及び同２の会話について録音をしていた（甲８及び１０）のであるから，本件告訴を行う前に，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３は，これらを再生して聞き直すことにより，原告に対し，本件補助金の不正受給問題やｅ大学におけるパワーハラスメントについて表沙汰にすることを断念させる意図を有していたわけでないことについて，格別の困難なく認識し得たものと認められる。
エ なお，本件告訴事実のその余の事実（被告学園が，静岡県知事選挙に際して学校組織を利用して特定の候補者の支援活動をした件を表沙汰にすることを断念させたこと）については，本件懲戒解雇に至る過程で，原告と被告らとの間で，およそ問題として顕在化していたとは認められない。
オ 以上に認定したところによれば，原告は，本件告訴事実とした，本件面談１及び同２の際の強要の事実が存在しないことについて，慎重に検討すれば十分認識し得たにもかかわらず，検討不十分なままに本件告訴を行ったと評価することができ，原告が本件告訴事実が存在したと信じるにつき相当な理由があるということはできない。
そして，本件告訴により，被告Ｙ２や被告Ｙ３は，被告学園の理事長又は被告短大の学長として，捜査機関への捜査協力や被告学園内における調査等を余儀なくされることになり，業務に支障を生ずることは明らかであるから，原告が本件告訴により，就業規則５８条１項２号の定めるとおり「学園の秩序を乱し」たことは否定できないところである。
もっとも，就業規則５８条１項２号は，「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害した」ことを教職員に対する懲戒解雇の要件として規定しているところ，当該規定の文言に加え，懲戒解雇の事由については，その性質上慎重に解釈することを要することからすると，上記規定の定める懲戒解雇の事由については，当該教職員が被告学園の秩序を乱したことに加え，被告学園の名誉又は信用を害したことを要すると解すべきであり（なお，認定事実(9)のとおり，被告学園の理事長である被告Ｙ２も，同様の理解をしている。），上記規定の定める学園の名誉又は信用に関する要件についても，学園の名誉又は信用を害するおそれがあるというだけでは足りず，当該行為によって現実に学園の名誉又は信用を害したことを要すると解するのが相当である。
このような見地からみると，前記認定事実によれば，原告は，捜査機関に対して本件告訴を行ったものの，本件告訴を行ったことをマスコミその他の外部に公表したわけではなく，本件全証拠によっても，本件告訴によって現実に被告学園の名誉や信用が害されたと認めるには至らないから，原告が本件告訴したことが，就業規則５８条１項２号の定める懲戒解雇の事由に該当するということはできない。
(2) 次に，被告学園は，本件訴訟において，原告が，本件告訴について不起訴処分とされた後も，被告学園に対し，強要行為を理由として損害賠償を請求していること（追加の懲戒事由①）及び被告Ｙ４の懲戒処分を求めていること（追加の懲戒事由②）を懲戒事由として追加して主張しているため，この点について検討する。
使用者が懲戒当時に認識していなかった非違行為は，懲戒事由とされた非違行為と密接に関連する同種行為であるなどの特段の事情のない限り，当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから，その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないというべきである（最高裁平成８年９月２６日第一小法廷判決・裁判集民事１８０号４７３頁参照。）。
これを本件についてみると，認定事実(6)及び(7)のとおり，原告が，被告学園に対し，３００万円の損害賠償を請求したこと及び被告Ｙ４の懲戒処分を求めていることがうかがわれるメールを送信していることが認められるが，本件懲戒解雇の当時，被告学園が，上記の追加の懲戒事由①及び同②を認識していなかったことは明らかであるところ，認定事実(3)及び(4)によれば，被告Ｙ４は，原告に対し，本件面談１及び同２の際，暴力団と親しい関係にあることを不必要に誇示しており，このような言動は，本件音楽祭に係るＡ教授及びＢ事務部長のパワーハラスメントの問題について，原告が外部に公表することを断念させようとしたと評価されるものということができる。そうであれば，これらの問題に関して，被告学園に損害賠償請求をしたり，被告Ｙ４の行為をハラスメント委員会で扱わないことについて釈明等を求めたことをもって，懲戒事由とされた非違行為と密接に関連する同種行為に当たるということはできないというべきである。
したがって，追加の懲戒事由①及び②が就業規則５８条１項２号の懲戒事由に該当するとする被告の上記主張も，採用することができない。
(3) なお，仮に，原告が本件告訴をしたことが，就業規則５８条１項２号の「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害した」ときに該当するとしても，本件懲戒解雇は，教職員の地位を一方的に喪失させ，その社会生活上重大な不利益を与えるもので，被告学園における懲戒処分のうち最も重い処分であること（弁論の全趣旨）からすると，その選択に当たっては慎重な検討を要するというべきであり，懲戒解雇の選択が処分として重きに失する場合には，当該懲戒解雇は無効となると解するのが相当である。
これを本件についてみると，前提事実(2)クないしセ並びに認定事実(8)及び(9)のとおり，原告は，本件告訴をした後，本件補助金の受給に関して本件公益通報を行い，その後に本件告訴について不起訴処分となっているところ，被告学園は，上記不起訴処分の後すみやかに本件懲戒解雇を行わず，むしろ本件補助金の受給が過大であったことが新聞報道された後に本件懲戒規程を制定し，本件懲戒委員会を組織して本件懲戒解雇をしたという経緯が認められることからすれば，本件懲戒解雇は，本件公益通報に対する報復とまでは認められないものの（したがって，原告の公益通報者保護法３条に基づく無効の主張は認めることはできない。），本件公益通報後，これに関する問題が大きくなるのを防ぐために性急に行ったものであるとの評価を免れない。
そして，認定事実(8)カによれば，本件懲戒委員会は，被告Ｙ２に対し，原告に対し自主退職を勧めるなどの慎重な対応が必要であるとの意見を付したにもかかわらず，被告Ｙ２（又は被告学園）において，そのような慎重な対応を経た形跡がないことに照らせば，本件懲戒解雇は，処分として重きに失すると言わざるを得ない。
この点に関し，被告学園は，原告による本件告訴は，被告Ｙ２及び被告Ｙ３を被告学園から排斥するという不当な目的によるもので，原告は本件告訴をする必要性も緊急性もないにもかかわらず，あえて行ったものであるから，被告学園に対する背信性は極めて高い旨を主張するが，本件全証拠によっても，原告が，被告Ｙ２及び被告Ｙ３を被告学園から排斥するという不当な目的で本件告訴をしたと認めるには足りないから，被告学園の上記主張を採用することはできない。
(4) 以上によれば，本件懲戒解雇は無効というべきであるから，原告は，被告学園との雇用契約上の地位を有していると認められる。
３ 争点２（本件懲戒解雇をしたことについて被告らの不法行為責任の成否）について
原告は，被告Ｙ４が本件懲戒委員会において，虚偽の事実を述べたり，原告を批判する発言をしたことにより，本件懲戒委員会の判断を誤らせたこと及び被告Ｙ２及び被告Ｙ３が，本件懲戒解雇事由がないことを知っていた又は十分知り得たにもかかわらず，本件懲戒解雇の手続に積極的に関与したことについて，不法行為が成立する旨を主張する。
しかし，原告から強要等をされたと疑われている被告Ｙ４が，本件懲戒委員会において反論をすること自体は正当な行為として許容されると解される上，被告Ｙ２及び被告Ｙ３は，本件懲戒委員会の当時，被告学園の理事長及び被告学園の常務理事であったことから，本件懲戒委員会の手続に関与することは当然であるといえる。
そして，認定事実(8)ウ及びオ，カのとおり，本件懲戒委員会は，原告に対し，本件懲戒委員会に弁護士とともに出席し，弁明の機会を与えられ，資料等を提出する機会を与えた上で，本件告訴について，原告が提出した資料等によっては告訴事実の裏付けが確認できないことを理由として，就業規則５８条１項２号に規定する「学園の秩序を乱し，学園の名誉または信用を害したとき。」に該当すると判断している（なお，告訴事実の裏付けが確認できないとした点については，上記２の当裁判所の判断と大きく異なるものではない。）。
上記事実関係によれば，本件懲戒委員会が，被告Ｙ４，被告Ｙ２及び被告Ｙ３の手続への関与の結果，誤った事実認定を基に本件懲戒解雇に係る懲戒事由該当性の有無を判断したと認めることはできないし，被告Ｙ２及び被告Ｙ３が，本件懲戒解雇の手続に積極的に関与したことをもって違法ということもできないから，原告主張の不法行為の成立は，いずれにしても認めることができない。
４ まとめ
(1) 雇用契約上の地位確認請求について
上記２において判断したとおり，原告は，被告学園との雇用契約上の地位を有していると認められる。
(2) 労働契約に基づく賃金等の請求について
前提事実(3)ア及びイのとおり，原告は，本件懲戒解雇の直前である平成２７年２月には，基本給３９万４９００円，勤続手当１万円及び通勤手当３万０３１０円の合計４３万５２１０円の給与の支給を受け，毎年６月に６８万７３１８円，１２月に９１万４１３３円の賞与の支給を受けていたと認められる。
しかし，上記給与のうち通勤手当は，実費補償的な性質を有するものと考えられ，原告は，本件懲戒解雇をされた後，被告短大に出勤したと認められないことから，被告に対して通勤手当（月額３万０３１０円）を請求することはできないというべきである。また，賞与は，人事考課ないし成績査定によって初めて具体的権利として生ずると考えられるため，原告が本件懲戒解雇によって被告短大に出勤していなかった期間については，原告は，被告に対して上記賞与を請求することはできないというべきである。
したがって，原告は，被告学園に対し，労働契約に基づく賃金請求として，平成２７年４月１日から本判決確定の日まで，毎月２１日限り月額４０万４９００円（基本給３９万４９００円及び勤続手当１万円の合計）及びこれに対する支払期日の翌日から支払済みまで年５分の割合による遅延損害金を請求することができる。
第４ 結論
以上によれば，原告の請求は，上記第３の４の限度で理由があるから，その限度で認容し，その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして，主文のとおり判決する。
静岡地方裁判所民事第１部
（裁判長裁判官 関口剛弘 裁判官 飯野里朗 裁判官 植木亮）
別紙
告訴事実
被告訴人甲，Ｙ４は，静岡県警で暴力団対策を担当していた元警察官で，平成２２年４月から静岡市〈以下省略〉所在の学校法人Ｙ１学園法人本部総務課長補佐，被告訴人乙は同学園理事長，被告訴人丙は同学園副理事長兼静岡市〈以下省略〉所在のｄ短期大学学長であるが，同短期大学准教授である告訴人が，同短期大学に支給されている私立大学等経常費補助金を同短期大学が不正に受給している旨を捜査機関等に告発しようとしていること及び，同学園ｅ大学において学長がパワーハラスメントを起こした件や同学園が静岡県知事選挙に際して学校組織を利用して特定の候補者の支援活動をした件について公にしようとしていることを知り，それらを断念させ同学園が計画する系列大学の統合に関する文部科学大臣による認可への影響を防ごうと企て共謀のうえ，被告訴人甲をして，
(1)平成２２年７月１６日午後１時ころｄ短大Ｘ研究室において，告訴人に対し，「警察官になって，３４年間一筋刑事をやっていますし，だからいろんな知り合いがいますけど，事件になるかならないかたぶん弁護士さんもしょっちゅう相談に来ますから，しょっちゅう交流もありますし，いろんな話をするんだけど。」「また暴力団と，僕の場合は政治家，あと公務員を専門にやってきている人間だもんで。いろんな面じゃ顔は利くと思うから，逆に。」「だから弁護士と僕はしょっちゅう話をしていますから。ある意味じゃね。だからあの右よりの弁護士さんも左よりの弁護士さんもみんな来ますから，僕のところに。議員さんもみんなそうですから，やくざもんもみんなそうですから。だからいろんな話が入ってくるんだけど。」などと申し向け，さらに告訴人が同短期大学内のハラスメント委員会に対し，前記不正受給等についての対応を要求するに際し，ハラスメント委員にメールを送信したことや，前記研究室前の掲示板に静岡県警ふれあい相談室の電話番号を入れたパワハラ防止啓発ポスターを掲示したことについて，「文書とかメールとかで瑕疵があるとこれはとんでもないことになる，はっきりいって，それでもってもしなんか体に支障をきたしたとなると，今度はもう傷害罪で，それは被害届はいらないもんでね，はっきりいって，正直まったなしだもんで。こういうのもそう貼り付けちゃうと，詐称でもって，標章の盗用になっちゃうから」などと申し向け，
(2)同月１７日午後３時ころ静岡労働基準監督署５階において，告訴人に対し，前記メールを送信したハラスメント委員が精神疾患にり患したことについて，「間違いなく傷害罪になる」と申し向け，さらに「やくざもんも，政治家もそうだけどみんな相談してくれるんですけどね。今でもしょっちゅう電話がかかってくる，みんな親分ちがみんな電話してくるからやっぱ」と申し向け，さらに告訴人が被告訴人甲に対し警察を辞めた現在でも親分が来るのか尋ねたところ，「しょっちゅうくるよ，しょっちゅう来るよ，あの何日か前にもしょっちゅう，携帯にもびっくりするくらいたくさん」。「やくざにいいやつはひとりもいないんですよ，みんな悪いやつである…，やくざでもフォローしてやる…。それが人間の付き合いなんですよ。」「署長さんに会ったり，中央署なんかもみんな同期なので，ぱっぱいける，刑事部長も同期なのでどんどんいける。」「じゃあ，政治家はどうかと言えば，政治家もずっとやってきたし，政治家の衆もみんな知っているし。」「Ｙ１の中の内部の問題が警察に行くと事が大きくなる，取り返しがつかなくなる」などと申し向け，
(3)同月２２日午前１１時ころ，同短大６３１教室で，短大生Ｉさんらに講義中の告訴人を同教室前の廊下に呼び出し，同所において，告訴人に対して「俺はお前をやるぞ」などと語気鋭く申し向け，
(4)同月２３日から２５日ころのいずれかの日，前記研究室にいた告訴人に対して電話をかけ，「仕事がなくなってもいいのか」などと申し向け，
被告訴人が，現職時代に培った警察官や暴力団組長との親交が，警察官退職後の今現在でも続いていることをことさら誇示し，告訴人が前記不正受給について捜査機関へ告発するなど同学園の不正を表ざたにすることを断念しなければ，告訴人に業務上の不利益を与えたり，現職警察官に働きかけて告訴人を逮捕させたり事件をもみ消したり，暴力団員を介して告訴人に対して何らかの危害を加えたりすることができる旨を告知して脅迫し，告訴人が前記不正受給について捜査機関へ刑事告発もしくは，監督官庁へ情報提供するなど同学園の不正を表ざたにすることを断念させたものである。
以上
決定
静岡県沼津市〈以下省略〉
原告 Ｘ
同訴訟代理人弁護士 西ヶ谷知成
同 白山聖浩
同 宋昌錫
同 西澤美和子
静岡市〈以下省略〉
被告 学校法人Ｙ１学園
同代表者理事長 Ｙ２
静岡市〈以下省略〉
被告 Ｙ２
静岡市〈以下省略〉
被告 Ｙ３
静岡市〈以下省略〉
被告 Ｙ４
上記４名訴訟代理人弁護士 齋藤安彦
同 加藤将和
同 木村絵美
同訴訟復代理人弁護士 相川洋介
上記当事者間の当庁平成２７年（ワ）第３９０号地位確認等請求事件につき，平成２９年１月２０日当裁判所が言い渡した判決に，仮執行宣言の裁判を脱漏したので，職権により，民事訴訟法２５９条５項に基づいて次のとおり決定する。
主文
判決主文第５項に，「この判決は，第２項に限り，仮に執行することができる。」と補充する。
平成２９年２月１日
静岡地方裁判所民事第１部
裁判長裁判官 関口剛弘
裁判官 飯野里朗
裁判官 植木亮
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Q&A【6】ポスターの貼付エリアや貼り付け枚数等は指定できますか？
Q&A【7】ポスター貼付後のメンテナンス(貼り替え・剥がし)も依頼できますか？
Q&A【8】最低何枚から街頭ポスター貼りを依頼できますか？
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【個別指定型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率2％ ★こちらをご確認下さい。
※ポスターのサイズは、A1サイズ、A2サイズをはじめ、ご希望に応じてご提案させていただきます。
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※貼付箇所につきましては、弊社掲示交渉スタッフが当該ターゲットにアプローチをした際の先方とのコミュニケーションにて、現場での判断とさせていただきます。
■訪問アプローチ手段
【徒歩圏内】
駅周辺の徒歩圏内における、商店街や通行人の多い目立つ場所でのPR
【車両移動】
広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン！の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
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