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裁判年月日 平成29年12月 8日 裁判所名 札幌地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(行ウ)3号
事件名 政務調査費返還履行請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2017WLJPCA12086002
主文
1 被告は,別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補助参加人(ただし,同表の「認容額」欄記載の認容額が0円の被告補助参加人を除く。以下,この項において同じ。)に対し,各被告補助参加人に対応する同表の「認容額」欄記載の各金員を北海道に支払うよう請求せよ。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを20分し,その11を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補助参加人の補助参加によって生じた訴訟費用は,これを各被告補助参加人に対応する同表の「原告負担の補助参加費用」欄記載の各割合で原告の負担とし,その余を同各被告補助参加人の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告は,別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補助参加人に対し,各被告補助参加人に対応する同表の「請求額」欄記載の各金員を北海道に支払うよう請求せよ。
第2 事案の概要
1 本件は,地方自治法100条14項(平成23年法律第35号による改正前のもの。以下,特に断らない限り,同じ。)の規定により定められた北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する条例(平成13年北海道条例第41号。平成23年北海道条例第44号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)に基づいて,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部としてその議会における会派又は議員である被告補助参加人ら(以下,単に「補助参加人ら」という。)に対し被告から交付された平成22年度政務調査費(以下,単に「政務調査費」という。)について,北海道の住民を構成員とする権利能力なき社団である原告が,北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する規程(平成13年北海道議会告示第1号。平成24年北海道議会告示第1号による改正前のもの。以下「本件規程」という。)4条並びに別表第1及び第2に定める使途基準に従って使用されておらず,その政務調査費の使用は本件条例8条に違反する違法なものであって,補助参加人らは交付された政務調査費の全部又は一部について法律上の原因なく利得をしているにもかかわらず,北海道の執行機関である被告が補助参加人らに対して不当利得返還請求権の行使を違法に怠っていると主張して,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づいて,被告が別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補助参加人に対して各被告補助参加人に対応する同表の「請求額」欄記載の各金員を北海道に支払うよう請求をすることを求める事案である。
2 関係法令等の定めと手引
関係法令の定めは,別紙3「関係法令等の定め」記載のとおりである。
なお,北海道議会議長が平成21年7月17日に本件規程4条2項に基づいて決定した本件運用方針の内容は,平成22年4月に発行された北海道議会作成に係る「政務調査費の手引~実務・留意事項等~」に記載されているほか,同月に発行された「政務調査費の手引(様式編)」には,本件運用方針及び本件規程の定めを踏まえ,必要な書類の様式及び記載例が記載されている(以下,これらの手引を総称して「本件各手引」という。)(甲3,甲4,弁論の全趣旨)。
3 前提事実(当事者間に争いがない事実は証拠原因を掲記しない。)
(1) 当事者及び補助参加人ら
ア 原告は,北海道の住民を構成員とし,その事務局を札幌市に置いて活動している権利能力なき社団である。
イ 被告は,普通地方公共団体である北海道の執行機関である。
ウ 被告補助参加人自由民主党・道民会議北海道議会議員会(以下,単に「自民党議員会」という。)は,北海道議会内で同一の行動をとるために,自由民主党に所属する北海道議会議員を中心に構成された会派である。
エ 被告補助参加人北海道議会民進党・道民連合議員会(旧名称は「北海道議会民主党・道民連合議員会」。以下,単に「民主党議員会」といい,自民党議員会と併せて「本件各会派」という。)は,北海道議会内で同一の行動をとるために,民進党(旧名称は,民主党。以下「民主党」という。)に所属する北海道議会議員を中心に構成された会派である。
オ 別紙1「当事者目録」の補助参加人らのうち各住所の左に番号(整理番号)が付されている各個人は,平成22年4月1日から平成23年3月31日までの間(以下,当該期間を「平成22年度」とする。),北海道議会の議員であった者であり(以下「本件各議員」といい,特定の個人の呼称については,氏名の後に「議員」を付けることとする。),会派である自民党議員会,民主党議員会,北海道議会公明党議員団,北海道議会フロンティア議員会又は日本共産党北海道議会議員団のいずれかに所属していた(なお,本件各議員の個別の表示は,戸籍上の氏名ではなく,北海道議会における通称のみを用いることとする。)。
(2) 補助参加人らに対する政務調査費の交付
被告は,平成22年度中,本件条例7条1項及び2項に基づいて,補助参加人らに対する政務調査費の交付を決定し,本件条例3条1項及び4条1項に基づいて,自民党議員会に対して合計6000万円,民主党議員会に対して合計4680万円,本件各議員に対して1人当たり合計516万円の政務調査費を交付した。
(3) 補助参加人らによる政務調査費の使用
ア 自民党議員会
(ア) 自民党議員会は,平成22年度中,自由民主党北海道支部連合会(以下「自民党道連」という。)に対し,道政調査委託業務の処理を委託して(以下,この契約を「本件委託契約1」といい,同契約に基づく受託業務を「本件受託業務1」という。),これに基づいて委託料4510万円を支払い(以下,この支払を「本件会派支出1」という。),本件会派支出1の全額に対して政務調査費を充当した(丙A自共1,2,)。
(イ) 自民党議員会は,平成22年度中,交付を受けた政務調査費から,本件会派支出1を含め,合計6001万0159円を支出した(丙A自共1,9)。
イ 民主党議員会
(ア) 民主党議員会は,平成22年度中,民進党北海道総支部連合会(旧名称は「民主党北海道総支部連合会」。以下「民主党北海道」という。)に対し,道政調査に係る事務等補助業務の処理を委託して(以下,この契約を「本件委託契約2」といい,同契約に基づく受託業務を「本件受託業務2」という。),これに基づいて委託料2960万円を支払い(以下,この支払を「本件会派支出2」という。),本件会派支出2の全額に対して政務調査費を充当した(丙A民共2,12の1ないし19)。
(イ) 民主党議員会は,平成22年度中,日本労働組合総連合会北海道連合会(以下「連合北海道」という。)に対し,道政調査に係る事務等補助業務の処理を委託して(以下,この契約を「本件委託契約3」といい,同契約に基づく受託業務を「本件受託業務3」という。),これに基づいて委託料117万円を支払い(以下,この支払を「本件会派支出3」という。),本件会派支出3の全額に対して政務調査費を充当した(丙A民共8)。
(ウ) 民主党議員会は,平成22年度中,北海道季節労働組合(以下「季節労組」という。)に対し,道政調査に係る事務等補助業務の処理を委託して(以下,この契約を「本件委託契約4」といい,同契約に基づく受託業務を「本件受託業務4」といい,本件委託契約1ないし3と併せて「本件各委託契約」という。),これに基づいて委託料39万円を支払い(以下,この支払を「本件会派支出4」といい,本件会派支出1ないし3と併せて「本件各会派支出」という。),本件会派支出4の全額に対して政務調査費を充当した(丙A民共10)。
(エ) 民主党議員会は,平成22年度中,交付を受けた政務調査費から,本件会派支出2ないし4を含め,合計4595万5065円を支出し,残額の84万4935円を北海道に返納した(丙A民共1,弁論の全趣旨)。
ウ 本件各議員
本件各議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し(以下,この支出を「本件各議員支出」といい,本件各会派支出と併せて「本件各支出」という。),本件各議員支出に対して同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
なお,本件各議員が平成22年度中に政務調査費を充当した経費の支出合計額は,別紙4主張整理表の「支出合計」欄記載のとおりであるところ,本件各議員のうち,G2議員,G4議員,G5議員,G7議員,G10議員,G12議員,G15議員,G17議員,G18議員,G23議員,G25議員,G29議員,G32議員,G33議員,G34議員,G35議員,G38議員,G40議員,G42議員,G43議員,G44議員,G45議員,G48議員,G50議員,G52議員,G54議員,G55議員,G57議員,G58議員,G59議員,G60議員,G62議員,G65議員,G67議員,G68議員,G70議員,G72議員,G77議員,G79議員,G80議員,G81議員,G84議員,G87議員,G88議員,G91議員及びG92議員は,いずれも同表の「支出合計」欄記載の額が,交付を受けた政務調査費の総額(516万円)よりも下回ったことから,被告に対し,本件条例11条に基づいて,その差額である残余の政務調査費を返納した。
(以上につき,甲6の1から4まで,甲8の1から3まで,甲10の1から4まで,甲12の1から4まで,甲16の1から3まで,甲18の1,2,甲22の1から3まで,甲24の1から甲25の4まで,甲31の14まで,甲33の1から5まで,甲37の1,2,甲40の1から甲43の4まで,甲46の1から4まで,甲48の1から3まで,甲50の1から甲53の3まで,甲56の1から3まで,甲58の1から3まで,甲60の1から3まで,甲62の1から甲63の3まで,甲65の1から68の3まで,甲71の1から3まで,甲75の1から3まで,甲77の1から甲78の3まで,甲80の1から3まで,甲82の1から4まで,甲86の1から3まで,甲88の1から甲90の4まで,甲93の1から3まで,甲96の1から甲97の2まで,甲100の1から101の4まで,乙9,12,13,弁論の全趣旨)
(4) 住民監査請求
原告は,平成23年10月20日付けで,北海道監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づいて,本件各支出が違法又は不当な公金の支出であると主張して,本件各支出相当額の金員の返還を求めるなどの損害を填補するために必要な措置を講ずるよう請求をしたが,同監査委員から同年12月26日付けで同監査請求を棄却する旨の通知を受けた(甲1,2)。
(5) 本件訴えの提起
原告は,平成24年1月25日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
4 争点
(1) 政務調査費の使途基準適合性判断基準とその主張立証責任の所在
(2) 本件各会派による政務調査費の本件各会派支出への使用の違法性
(3) 本件各議員による政務調査費の使用の違法性
ア 本件各議員による政務調査費の事務所費への使用の違法性
イ 本件各議員による政務調査費の人件費への使用の違法性
(4) 本件各会派及び本件各議員による政務調査費の支出に違法な部分があるとした場合,本件各会派及び本件各議員が北海道に返還すべき不当利得の金額
5 政務調査費の使途基準適合性判断基準とその主張立証責任の所在(争点(1))について
(原告の主張)
(1) 地方自治法100条14項は「普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができる。」と規定し,また,この規定を受けた本件条例1条も,「北海道議会議員(以下「議員という。)の調査研究に資するため必要な経費の一部として,北海道議会(以下「議会」という。)における会派及び議員に対する政務調査費の交付に関し必要な事項を定める」と規定している。したがって,政務調査費は,調査研究に資するために必要な経費の一部としてのみ支出されるべきものである。そして,政務調査費の使途基準は,本件規程によって定められている上,北海道議会が本件各手引を作成していることを踏まえると,政務調査費の適法性については,本件各手引を基準に判断されるべきである。
政務調査費が基本的に地方公共団体の住民の税金であり公金であることに鑑みれば,その使途については透明性や公平性が求められていることからすると,本件各会派ないし本件各議員による政務調査費の具体的使途の適法性,すなわち,本件各手引の基準を満たした支出であるかどうかについての主張立証責任は,本件各会派及び本件各議員にあるというべきである。そうとすれば,政務調査費が議員の調査研究に資するために必要な経費に支出されたことについて本件各会派及び本件各議員による立証がされず,使途が不明なものについては,違法な支出であると判断されるべきであり,本件各会派及び本件各議員は,使途不明部分について法律上の原因なく利得したというべきである。
(2) また,仮に本件各会派や本件各議員が政務調査費の使途を明らかにすることができたとしても,地方議員の活動は多面性を有するものであり,1つの活動の中に,調査研究活動としての要素のほか,政党活動や後援会活動,私的活動などの他の活動の要素が混在することがあり得る。したがって,複数の要素が混在する議員の活動によって生じた費用については,社会通念上相当な割合によって按分し,調査研究活動に関して生じた費用といえる部分についてのみ政務調査費の支出が許されるものと解するのが相当であり,それを超えてされた政務調査費の支出は,やはり違法と判断されるべきである。
具体的には,本件各手引の記載内容を参考として,調査研究活動としての要素と後援会活動及び政党活動の要素が混在するような場合においては,当該活動に関して生じた費用のうち3分の1についてのみ政務調査費の支出が許されるべきであり,調査研究活動としての要素と後援会活動及び私的活動の要素が混在するような場合においては,当該活動に関して生じた費用のうち4分の1についてのみ政務調査費の支出が許されるべきものと判断されるべきである。
(被告及び補助参加人らの主張)
原告の主張は争う。
政務調査費制度は,地方自治における地方議会の役割の重要性に鑑み,議会の審議能力を強化し,議員の調査活動基盤の充実を図るためのものである。そして,会派及び議員の政務調査活動が極めて多岐にわたるものであることからすれば,政務調査費の使途については,会派又は議員の合理的な裁量に委ねられ,自主的・自律的に運用されるべきものである。したがって,政務調査費の使途は,会派又は議員の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきであるから,政務調査費の支出が違法となるのは,個々の事実関係の下で実質的に見て会派又は議員に与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したといえる場合に限定されるというべきである。
なお,原告が,被告が行使を怠っていると主張する請求権が不当利得返還請求権である以上,会派又は議員の利得について法律上の原因がないこと,すなわち,会派又は議員の政務調査費の支出が違法であることについては,原告が主張立証すべきである。
6 本件各会派による政務調査費の本件各会派支出への使用の違法性(争点(2))について
(原告の主張)
(1) 北海道議会における政務調査費は,本件条例及び本件規程において規定されている使途基準に従って使用しなければならないこととされており,本件規程別表第1においては,使途の項目別に支出が許される費目の内容が規定されている上,実際の使途については,本件規程に定められた様式に従って収支報告書を作成し,これを北海道議会議長に提出しなければならないこととされている。
また,本件条例及び本件規程において,北海道議会議長は,政務調査費の適正な運用を期すために収支報告書が提出されたときには,必要に応じて調査を行うこととされ,また,収支報告書については何人であっても同議長に対してその閲覧を請求することができるとされているところ,その趣旨は,政務調査費の実際の使途について,北海道議会議長及び一般市民が事後的に検証することを可能にするという点にあると解される。
上記の本件条例及び本件規程の内容並びにその趣旨に加えて,本件各手引において,活動記録の整理,活動記録簿,契約書の作成,成果物の確認等が求められていることを踏まえると,政務調査費の支出内容については,本件規程に定める使途基準への適合性や使途の透明性が厳格に要求されていると解すべきである。
したがって,北海道議会の会派が調査業務を委託する場合にも,事後的な検証が可能となるように,当該委託業務は個別具体的なものである必要があり,一般的・抽象的で,包括的な業務委託の方法によって生じた費用に対する政務調査費の支出は,本件条例や本件規程で定められた使途基準を潜脱するものというほかないから,その全額が違法となるというべきである。
しかるところ,本件各委託契約に係る業務は,いずれも一般的・抽象的で,包括的な業務委託の方法によるものであるから,それによって生じた費用に対してされた政務調査費の支出はその全額が違法となる。
(2) 仮に,本件各委託契約に係る委託の方法のみをもってその業務によって生じた費用に対してされた政務調査費の支出の全額が違法となると直ちにいうことができない場合でも,政務調査活動としての性質を有しない活動に対する政務調査費の支出が違法であることはいうまでもない。また,地方議員の活動は多面性を有することから,1つの活動の中に,調査研究活動としての要素,政党活動や後援会活動,私的活動などの他の活動の要素が混在することがあり得る。そして,政務調査費がこのような要素が混在する事項に関する経費のために使用された場合には,社会通念上相当な割合によって支出した費用を按分した上で政務調査費を支出することができる範囲を確定すべきであることは前述のとおりである。これを前提とした本件各会派の支出の違法性については,以下のとおりである。
ア 本件会派支出1について
(ア) 自民党議員会は,政務調査業務に係る委託金額について,過去の実績を踏まえて人件費を基本に調査活動に要する経費を積算の上,算出しているなどと主張するから,本件委託契約1に係る業務費の実態の相当部分は人件費であると考えられる。
そして,本件委託契約1の相手方たる自民党道連においては,本件委託契約1の収支について独立した会計処理がされておらず,また,自民党議員会と自民党道連が一体となった会議等の行事における自民党道連負担分と本件委託契約1の業務費との負担割合についての基準も設けられていない。また,自民党議員会と自民党道連とは,両者にとって必要となる活動を共同で実施するなどしており,北海道議会議員の集まりとしてはほぼ同じものであり,各種会合等において地域や団体から出る要望の中には北海道と国の両方にまたぐ案件も多い。さらに,自民党道連の職員のうち本件受託業務1に関与していたとされる職員の中には,国政の小選挙区ごとにその選挙区を地元とする国会議員を中心として行われる移動政調会や,自民党道連が主催者となって衆参両院議員が出席して国政に関する要望聴取をも行う団体政策懇談会の準備に携わっている上,本件受託業務1として自民党道連が管理する自民党議員会のホームページ上には「打倒民主政権を誓い合った集会の実施を報告する」といった完全に政党活動でしかない活動についての内容も掲載されている。
したがって,本件受託業務1の中には,政党活動と評価すべきものが混在していたということができる。
また,自民党議員会の控室は,自民党議員会の政務調査活動のみに使用されているわけではない。このことからすれば,同室内において勤務する職員の日常業務については,政務調査活動ではなく,自民党議員会の議会活動や自民党議員会の維持管理等にのみ関連する業務が多々存在していたということができる。
(イ) 以上のとおり,本件受託業務1の中には,政務調査活動とそれ以外の活動の要素が混在していたといえるが,その要素を明確に区分することは困難である。そして,本件受託業務1に混在していた要素には政務調査活動と政党活動以外のものが含まれていることからすると,本件委託契約1に関して生じた費用のうち政務調査費の充当が許される部分は,少なくともその2分の1を超えることはない。
イ 本件会派支出2について
民主党議員会の主張からすれば,本件委託契約2の委託金額は,実質的には人件費に該当するものと考えられる。
そして,民主党北海道が本件受託業務2の履行として開催を補助した政策懇談会(市町村長等や企業団体の代表者等との間で道政課題について意見交換を行う会議)は,衆議院比例代表の選挙区割りごとに実施され,民主党所属の国会議員,道議会議員及び市町村議会議員の多くが出席していた上,一部の地域における政策懇談会は,前年に民主党と統一会派を結成した新党大地と共催する形式が採用されていた。このように,民主党北海道が開催を補助した政策懇談会は,民主党ないし新党大地の支持基盤の拡大強化を図るという実態を有していたということができる。
また,本件受託業務2に従事していたとされる職員の中には,議員との面会を求める一般市民への対応や市民からの陳情・要望の対応等にも従事した者がいる上,統一地方選挙準備のために業務量が増えたと考えられる職員も存在している。
そうすると,本件受託業務2に従事したとされる職員については,政務調査業務への専従を肯定することができず,上記職員らが従事している業務には,政党活動などの政務調査活動以外の活動を有するものが多分に含まれているといえるから,本件委託契約2に関して生じた費用のうち,政務調査費の充当が許される部分は,少なくともその2分の1を超えることはない。
ウ 本件会派支出3について
連合北海道が履行した本件受託業務3の成果物は,いずれも連合北海道の要求や陳情を集約したものであって,民主党議員会による政策形成を目的として作成されたものではなく,また,民主党議員会において委託料を支払わなくても容易に入手することが可能なものや,民主党議員会による委託がなかったとしても制作されることが予定されていたりするものであった。
そうすると,連合北海道が履行した本件受託業務3の内容は,民主党議員会「が行う道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託」(本件規程4条及び同別表第1)に当たらないから,民主党議員会は,本件受託業務3に係る委託料として支払った本件会派支出3について,政務調査費を充当することは許されず,民主党議員会がした本件会派支出3に対する政務調査費の支出は全額が違法である。
エ 本件会派支出4について
本件会派支出4については,「調査研究に資するため必要な経費」ではなく,政務調査費を政務調査以外の用途に用いるための方便として利用された可能性が高く,その全額が違法である。
(被告,被告補助参加人自民党議員会及び同民主党議員会の主張)
(1) 原告の主張(1)は争う。
調査委託費について政務調査費による支出が認められるためには,当該委託に係る調査が会派の議会活動の基礎となるものであること,及び当該委託費が調査委託のため支出する必要があるものであることを要する。
そして,政務調査費の趣旨目的が,議員及び会派の審議能力を高め,地方議会の活性化を図り,議員の調査研究費の基盤を充実強化することにあることに照らせば,被告から政務調査費の交付を受けた会派が特定の目的のために政務調査費を支出するか否かの判断は,使途基準に従ってするという制約の下で,当該会派の裁量に委ねられているといえる。したがって,本件各会派がした政務調査費の支出が違法であるとして不当利得の問題が生じるのは,本件各会派が与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した場合に限られる。
また,会派が行う政務調査活動の中に所属する議員の政治活動を支援する活動や政党支部の政党活動という性格を兼ね備えたものがある場合には,当該活動それ自体について「会派が行う道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費」(本件規程4条及び同別表第1)といえるかどうかによって決すべきであり,当該活動が政務調査活動以外の活動としての性格を兼ね備えているからといって,政務調査費による支出が許されなくなるということはない。したがって,このような場合であっても,費用の按分の問題が生じることはない。
(2) そして,以下のとおり,本件各会派に上記裁量権の逸脱や濫用はなく,本件各会派支出は,いずれもその全額が適法である。
ア 本件会派支出1について
(ア) 自民党議員会は,道政に関する市町村や各種団体の要望等をとりまとめ,道民のニーズを的確に把握するとともに,道政に反映させることなどを目的として,様々な政務調査活動をしているが,そのような活動のすべてについて,自民党議員会に所属する北海道議会議員が分担して行うことは非効率かつ不経済であり,自民党議員会の政務調査活動に関わる事務全般の運営,連絡調整に携わる人員等の確保が不可欠である。
そして,自民党議員会としての効率的かつ経済的な政務調査活動を実施するための上記人員等は,自民党議員会の目指す道政の方向性を熟知している者がその担い手となる必要があり,また,執行機関や他の会派からの干渉を防ぎ,会派としての政務調査活動の独立性を保障するためには,活動内容の秘匿性を保つことのできる者である必要がある。
このような観点を踏まえ,自民党議員会は,市町村等の要望集約や道民のニーズ把握などについて専門的なノウハウを有するとともに自民党議員会の目指す道政の方向性を熟知している自民党道連を本件委託業務1の委託先とし,道の行財政に係る諸問題及びその対応と国及び市町村における動向並びに各種団体の要望とこれに係る道の対応等に関する事務等補助業務を本件受託業務1の内容とし,過去の人件費の実績を基本に調査活動に要する経費を積算の上,本件委託契約1に係る委託金額を算出したのである。
(イ) また,自民党道連は,実際に,職員4名を本件受託業務1に専属させ,職員5名を本件受託業務1の補助に従事させ,地域や団体の要望把握,代表質問の作成補助,政策集の作成補助,地方自治法99条に基づく意見書の作成補助,ホームページの運営・管理といった自民党議員会が道政を通じて主義・主張を実現するための準備活動を行っており,自民党道連その他の政党の利益を目的とした業務は行っていない。
このことは,会派が,各議員の主義・主張を同じくする議員が自らその政策を実現するための組織であり,特定の政党の党員のみで結成される団体ではなく,複数の政党の党員で結成されることを予定した組織であることも踏まえれば,自明の理であるということができる。
なお,原告は,自民党道連の職員のうち本件受託業務1に関与していたとされる職員の中に移動政調会や団体政策懇談会の準備に携わっていた者がいることを問題視するが,当該職員がその業務に従事した日数はごくわずかであり,本件受託業務1が政務調査のためのものであったとする被告,被告補助参加人自民党議員会及び同民主党議員会の主張に影響を与えるような事実ではない。
(ウ) したがって,本件委託契約1に基づいてされた本件受託業務1は,すべて政務調査活動であり,本件委託契約1に基づいてされた本件会派支出1に裁量権の逸脱・濫用はないから,同支出の全額が適法である。
イ 本件会派支出2について
(ア) 民主党議員会の活動内容,道政調査業務委託の必要性については,本件会派支出1に関する自民党議員会の主張と同旨である。
そして,そのような観点から,民主党議員会は,市町村等の要望集約や道民のニーズの把握などについて専門的なノウハウを有するとともに民主党議員会の目指す道政の方向性を熟知している民主党北海道を本件受託業務2の委託先とし,データの収集・整理,地域における調査,調査結果の集計及び分析,その他,連絡調整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる業務を本件受託業務2の内容とした上で,過去の人件費の実績を基本に調査活動に要する経費を積算の上,本件委託契約2に係る委託金額を算出したのである。
(イ) また,民主党北海道は,実際に,職員4名を本件受託業務2に従事させ,地域や団体の要望把握,代表質問の作成補助,地方自治法99条に基づく意見書の作成補助,民主党議員会内の各プロジェクトチーム補助業務といった民主党議員会が道政を通じて主義・主張を実現するための準備活動を行っており,民主党北海道その他の政党の利益を目的とした業務は行っていない。
特に,政策懇談会は,民主党議員会が地域の要望等を把握して,これを道政に実現することを目的として開催されたものであり,民主党議員会と新党大地釧根連合とで共催した政策懇談会については,地域住民からより多くの意見を集めるため,釧路・根室地域に多くの支持者を有する新党大地の関係者に出席を求めて形式上共催としたにすぎず,実質的な準備や運営等は民主党議員会において行われたものであるから,政党活動としての性質を有しない。
(ウ) したがって,本件委託契約2に基づいてされた本件受託業務2は,すべて政務調査活動であり,本件委託契約2に基づいてされた本件会派支出2に裁量権の逸脱・濫用はないから,同支出の全額が適法である。
ウ 本件会派支出3について
(ア) 民主党議員会が本件委託契約3を締結した連合北海道は,労働組合の日本最大の連合組織である日本労働組合総連合会の地方組織であり,その参加者は,44の産業別労働組合を中心に約26万人である。また,北海道内には,その地域組織として,振興局(支庁)ごとに地域協議会があるほか,市町村ごとに地区連合会が置かれている。
連合北海道は,こうした組織体制を活かして様々な情報を得ることが可能であり,また,連合北海道自身も,雇用問題をはじめ,産業政策,勤労者全体の生活に関する政策や制度の改善策などについて地方自治体などへの政策提言,道民的な課題について労働者の視点からの意見表明や運動,雇用や福祉の場における実態調査など,多岐にわたる活動をしている。
連合北海道のこうした諸活動を通じて得られた優れた識見は,民主党議員会が求める資料や情報の提供元として最も適切であり,他にこれと同等の役割を果たし得る団体はないと考えられた。
このような観点から,民主党議員会は,連合北海道を本件受託業務3の委託先とし,データの収集・整理,関連資料の整理,地域における調査,調査結果の集計及び分析,調査結果に基づく研究報告書(提言)などの策定補助,その他連絡調整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる業務を本件受託業務3の内容とした上,その業務内容や過去の実績に加え,政務調査費の収支見積を勘案して,民主党議員会に所属する北海道議会議員1人当たり3万円程度の支出が相当であると判断し,本件委託契約3締結当時の民主党議員会所属の北海道議会議員39名分合計117万円を本件委託契約3の委託金額としたのである。
(イ) また,連合北海道は,実際に,労働政策のほか,地域の厳しい状況を踏まえた医療や福祉の維持確保に関わる諸課題への対応について活発な検討をしており,民主党議員会に対し,本件委託契約3に基づいて,それらの政策課題についての資料や情報を提供し,民主党議員会所属の北海道議会議員が各定例会において代表質問や意見書の文案を作成する際などには,必要に応じて,当該代表質問や意見書に係る政策課題に関する資料や情報をも提供した。そして,これらは,いずれも「道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託」(本件規程4条及び同別表第1)に該当するものである。
(ウ) したがって,本件委託契約3に基づいてされた本件受託業務3は,すべて政務調査活動であり,本件委託契約3に基づいてされた本件会派支出3に裁量権の逸脱・濫用はないから,同支出の全額が適法である。
エ 本件会派支出4について
(ア) 民主党議員会は,季節労働者問題の調査研究について季節労組が専門的なノウハウを有していることから,本件委託契約4を締結し,季節労働者問題に関するデータの収集・整理,関連資料の整理,地域における調査,調査結果の集計・分析,調査結果に基づく研究報告書(提言)などの策定補助,その他連絡調整を含め,季節労働者問題に係る道政調査活動に必要なあらゆる業務を本件受託業務4の内容とし,その業務内容や過去の実績に加え,政務調査費の収支見積を勘案して,民主党議員会に所属する北海道議会議員1人当たり1万円程度の支出が相当であると判断し,本件委託契約4締結当時の民主党議員会所属の北海道議会議員39名分合計39万円を本件委託契約4の委託金額としたのである。
(イ) また,季節労組は,実際に,本件委託契約4に基づき,平成22年7月20日から同月31日までにかけて,北海道内5地域の季節労働者2800人を対象として,季節労働者の職種,雇用形態などについての実態調査を行い,回答を得られた1381人についての回答を集計し,分析を行った上で,民主党議員会に報告している。そして,これらは,いずれも「道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託」(本件規程4条及び同別表第1)に該当するものである。
(ウ) したがって,本件委託契約4に基づいてされた本件受託業務4は,すべて政務調査活動であり,本件委託契約4に基づいてされた本件会派支出4に裁量権の逸脱・濫用はないから,同支出の全額が適法である。
7 本件各議員による政務調査費の使用の違法性(争点(3))について
(原告の主張)
(1) 本件各議員による政務調査費の事務所費への支出の違法性
ア 議員の事務所費については,事務所としての要件を備えており,かつ,その事務所が政務調査活動に使用されている場合には,政務調査費を当該事務所の費用に充当することができるとされているが,本件運用方針上,自宅兼用の事務所,道議会議員選挙に使用される期間(公示期間)の事務所,議員所有又は議員と生計を一にする親族所有の事務所については,政務調査費を充当することは許されないこととされている。
イ また,本件運用方針において,議員の事務所が議員と生計を一にする親族が所有する建物である場合に当該事務所の賃借料に対して政務調査費を支出することができない旨を定めている趣旨は,政務調査費が議員の政務調査活動に要した経費の一部に対する実費弁償として支出されることを目的として交付されるものであるところ,議員と生計を一にする親族が所有する建物の賃借料に対して政務調査費が使用されると,当該親族と生計を一にする議員の収益となって議員の資産形成につながることとなり,上記目的に反するから,このような事態を防ぐために支出の対象を制限したものと解される。そうすると,議員が代表取締役ないし取締役を務める会社が所有する建物の事務所費に対して政務調査費が充当される場合にも,社会通念上,議員の収益となって議員の資産形成につながることとなり,上記目的に反するものといえる。したがって,本件運用方針の趣旨に鑑みると,議員が代表取締役ないし取締役を務める会社が所有する建物の事務所費に対して政務調査費を充当することは,特段の事情のない限り違法である。
ウ さらに,本件運用方針は,札幌以外の選挙区から選出された議員が札幌市内にある建物を宿舎として使用する場合について,当該建物の賃借料に対する政務調査費の充当が認められるための基準として,当該建物が「現に政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができる。ただし,当該マンションが政務調査活動の拠点となっているか否か,という実態的判断を伴う。なお,定例会等開会中にあっては,その日数分は控除する。」と定めている。
したがって,札幌以外の選挙区から選出された者であって,札幌市内にある建物を宿舎として使用している議員のうち,使用実態が不明な者については,その事務所費に充てられた政務調査費の全額が違法となる。
エ 以上のような問題のある議員以外についても,議員の活動については少なくとも政務調査活動以外に政党活動及び後援会活動の要素が存在している以上,客観的な資料によって事務所における議員の活動内容が明らかにされない限り,政党に属している議員については,事務所に係る経費の3分の1を超える部分について政務調査費を充当することは許されず,また,政党に属していない議員については,同経費の2分の1を超える部分について政務調査費を充当することは許されないというべきである。
(2) 本件各議員による政務調査費の人件費への支出の違法性
ア 議員の行う調査研究活動を補助する職員を雇用する経費については,人件費として政務調査費から支出することが許されている。
しかし,本件運用方針上,配偶者,扶養関係にある者,同居し生計を一にする者のいずれかに該当する者の人件費に政務調査費を充当することは,明確に禁止されている。
イ 議員から領収書及び雇用契約書が未開示であるなど,職員の氏名や住所が不明である場合には,そもそも職員の実在性や同人に関する支出が「人件費」としての支出であったか否かを判断することができない上,上記アのとおり政務調査費を充当することが明確に禁止される者かどうかも判断できないことになる。
したがって,職員に関する情報が不明である場合には,人件費としての適法性は何ら裏付けられていないため,その支出の全額が違法となる。
ウ また,開示された証拠(雇用契約書等)によっても,職員が政務調査活動に従事していたかどうかが裏付けられない場合,すなわち,開示された証拠上,雇用目的や職務内容の記載が政務調査活動以外の活動のみの記載となっている場合や,特に目的や職務内容が特定されておらず,あるいは雇用主が「後援会」,「政党」及びそれらの肩書が付記された議員となっている場合には,その職員は,そもそも政務調査活動に従事することが予定されていない者であるということができるから,その支出の全額が違法となる。
エ さらに,証拠上,政務調査活動が雇用の目的であるとされていたとしても,当該職員が現実に政務調査活動に従事していたことが立証されなければ,その支出の全額が違法になるといえる。
なお,仮に当該職員が政務調査活動に従事していたとしても,議員の活動の多様性に鑑みれば,政務調査活動に従事していた割合が客観的な資料によって裏付けられない限り,政務調査費の支出が適法となる範囲は,当該議員の活動に占める要素の数によって按分するべきであり,政党に属している議員については,事務所に係る経費の3分の1を超える部分について政務調査費を充当することは許されず,また,政党に属していない議員については,同経費の2分の1を超える部分について政務調査費を充当することは許されないというべきである。
(3) 以上の諸点を踏まえ,本件各議員による証拠の提出状況を考慮すると,事務所費及び人件費に関し,政党に所属している議員についてはその3分の1を超えて,政党に所属していない議員についてはその2分の1を超えて,政務調査費を充当することが許されると認めるに足りるだけの事情を立証することができている議員はおらず,本件各議員に生じた事務所費及び人件費のうち政務調査費を充当することが許される割合,適法な充当額及び違法な充当額は,別紙4主張整理表の「原告の主張」欄記載のとおりとなる。
なお,政党に所属している議員のうち,適法な按分割合を3分の1としなかった議員については,以下の理由によるものである。
ア G5議員(整理番号6(自3))
同議員は,札幌市内所在の事務所を定例会開催時等の宿舎として利用しているが,その利用実態に鑑みれば,仮にその期間中同所において何らかの政務調査活動を行ったとしても,その活動時間がごくわずかなものにとどまることは明らかである。
そうすると,同議員による上記事務所の使用は,「自宅」としてのものであったと評価すべきであり,事務所費のうち札幌市内に所在するものに対する政務調査費の充当は,その全額が違法である。
イ G7議員(整理番号9(自4))
同議員は札幌市内に事務所及び駐車場を賃借しているが,その賃貸人は,同議員が代表取締役を務めるJ1株式会社である。この場合,政務調査費を事務所費に充てることが許されないことは,前述のとおりである。
ウ G9議員(整理番号12(自5))
同議員が雇用した職員のうちH1,H2及びH3については,雇用契約書上,雇用主として「G9後援会事務所代表H4」,仕事の内容として「後援会事務」と明記されており,これら3名の職員については,いずれも後援会活動のみに従事していたと考えざるを得ない。
したがって,これらの各職員のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
エ G15議員(整理番号19(自10))
(ア) 同議員はI1町内に事務所を賃借しているが,事務所の賃借人は,「G15十勝連合後援会会長H5」であり,議員本人ではなく後援会会長である。
したがって,同事務所は,専ら後援会活動を目的として使用されていたものと考えざるを得ず,同事務所の経費のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
(イ) また,同議員は,札幌市内の事務所を「宿舎」として利用していたことを自認しているが,同事務所が定例会開催時の宿舎として利用されていたことに照らすと,仮に同議員が同事務所において何らかの政務調査活動をしたとしても,その活動時間がごくわずかなものにとどまることは明らかである。
したがって,同事務所の管理運営費のうち政務調査費から支出された部分は,その全額が違法となる。
オ G16議員(整理番号20(民7))
(ア) 事務所費
同議員は,I2町内の建物を賃借し,事務所として使用しているが,同建物は,同議員が自宅として賃借した物件であり,実際に当該建物には妻及び娘1名と共に居住していたから,当該建物は自宅兼用の物件であったといえる。また,当該事務所の建物の所有者及び賃貸人は,同議員の父であるH6であり,かつ,同人と同議員との生計が別個であったことを示す客観的な証拠もない。そうすると,同議員が同事務所の費用のうち政務調査費から支出された部分は,その全額が違法となる。仮に同建物を事務所部分と自宅部分とに明確に区分することができるとしても,事務所部分と自宅部分の面積比率は1:2くらいであり,同議員の家族も含めて24時間使用していた自宅部分は,日中のみ使用される事務所部分と比べて,使用時間の上でも2倍以上であると考えられる。また,議員の活動の多様性に鑑みれば,同事務所においては政務調査活動のみならず,政党活動や後援会活動も行われていると考えられる上,同議員が同事務所において政務調査活動に従事していた割合については客観的な資料によって裏付けられていない。そうすると,仮に同建物を事務所部分と自宅部分とに明確に区別することができるとしても,政務調査費を充当することが許されるのは,同建物に生じた費用のうち9分の1(建物に占める事務所部分の割合3分の1に同議員の活動に占める政務調査活動の割合を乗じた割合)を超えない部分についてであり,これを超える支出は違法である。
(イ) 人件費
同議員が雇用した職員のうち,H7は,同議員の実子であるが,①同議員がH7を雇用するに至った理由について,平成22年度は同人が建築会社の営業の非常勤として勤務しており,雇用状況が不安定であったことを挙げていること,②H7が平成22年4月1日時点で妻と離婚しており,1歳の子の親権者であったことから,時間的にも金銭的にも援助を必要とする状態であったこと,③同議員が平成22年度中の一時期,釧路市内に所有する住宅にH7を居住させており,同人から賃料や水道光熱費等の金銭の支払を受けていたことを示す客観的な証拠もないことといった事情を考慮すれば,同議員によるH7の雇用は,同人に対する援助であり,配偶者,扶養関係にある者,同居し生計を一にする者のいずれかに該当する者の人件費の支出と同様の性質を持つものといえる。
したがって,同議員の人件費のうちH7に関して生じた費用への政務調査費の支出は,その全額が違法となる。
カ G18議員(整理番号22番(民9))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同議員は,同事務所を宿舎として利用していたことを自認しており,同事務所の賃貸借契約書上も,「居住のみを目的として本物件を使用しなければならない」と記載されている。また,同事務所が定例会開催時の宿舎として利用されていたことからすると,そこで何らかの政務調査活動がされたとしても,その活動時間がごくわずかなものにとどまることは明らかであり,利用としての実態は,宿舎としてのものであったと言わざるを得ない。
したがって,上記事務所の賃料のうち政務調査費から支出された部分は,その全額が違法である。
キ G20議員(整理番号25(自12))
同議員は,事務所として札幌市内の住宅を賃借しているが,同賃借に係る賃貸借契約書上,同住宅が家具付きであり,その使用目的が居住に限定されていることは明らかである。
そうすると,同住宅は政務調査活動に利用されていないと考えられるから,同住宅の費用への政務調査費の支出は,その全額が違法となる。
ク G21議員(整理番号26(自13))
同議員は美唄市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同議員の父親であるH8である。そして,同議員とH8との平成22年当時における住民票上の住所は別であるが,生計まで別にしていたことを証する客観的証拠はない。
したがって,同事務所の費用への政務調査費の支出は,その全額が違法となる。
ケ G22議員(整理番号27(民10))
同議員が雇用した職員のうちH9については,その勤務場所が選挙事務所であるから,選挙活動・政党活動への専従者であると考えられるし,選挙後においては後援会事務所に勤務していたことになるから,そもそも政務調査活動のための職務をしていない。したがって,同人の人件費への政務調査費の支出は,その全額が違法となる。
コ G23議員(整理番号28(自14))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同議員の実子であるH10である。そして,同議員は,同議員とH10の生計が別である点について,客観的証拠を提出していない。
したがって,同事務所の費用への政務調査費の支出は,その全額が違法となる。
サ G25議員(整理番号30(自15))
(ア) 事務所費
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同議員は,同事務所を宿舎として利用していることを自認している上,証人尋問において同事務所において政務調査活動をしていたことを明確に否定する証言をしている。
そうすると,同議員が札幌市内に賃借している事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
(イ) 人件費
a 同議員はH11を職員として雇用しているが,同議員は,H11が,同議員が代表取締役を務めていた有限会社J2を中心とする企業グループの事業において右腕以上の存在として事業を補佐していたことを認めており,実際に,H11は,同企業グループに属する有限会社J3の取締役や有限会社J4の代表取締役も務めている。また,同議員は,H11が後援会活動や政党活動にも広く携わっていたことを認めている。
このように,H11の活動が,同議員の私的活動,後援会活動及び政党活動にも及んでいたことや,本件運用方針において,「政務調査活動と後援会活動及び私的活動とが混在する場合」における政務調査費の按分割合が4分の1であると定められていることを踏まえると,H11の人件費のうち政務調査費を支出することが許される部分は,6分の1の範囲にとどまるというべきであって,H11の人件費のうち6分の1を超える部分に対して支出された部分は,その全額が違法となる。
b 同議員は,雇用しているH12について,有限会社J3の業務に従事していたほか,政党活動にも従事していたことを認めている。
そうすると,H12の活動には,政務調査活動のほか少なくとも私的活動と政党活動が混在していたことが明らかであるが,「政務調査活動と後援会活動及び私的活動とが混在する場合」における政務調査費の按分割合が4分の1であることは前述のとおりである。
したがって,H12の人件費のうち政務調査費の支出が許されるのは,その4分の1を超えない部分に限られ,これを超えて支出された部分は,その全額が違法となる。
シ G26議員(整理番号31(自16))
同議員が使用する旭川市内の事務所の賃借人は,同議員の後援会会長H13である。
このように,同議員本人ではなく,同議員の後援会会長が事務所の賃借人である以上,同事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ス G27議員(整理番号32(自17))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,その賃貸人は,同議員が代表取締役を務める有限会社J5である。そして,このような場合に事務所費への政務調査費の支出が許されないことは前述のとおりである。
したがって,同事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
セ G34議員(整理番号39(自20))
(ア) 事務所費
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,親族であるH14であるが,同人が同議員と生計を同一にしていないことが明らかではない。また,同事務所の契約書上,その利用目的は居住とされており,同議員は,実際に同事務所を宿舎として使用している。
そうすると,同事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
(イ) 人件費
同議員は,H15及びH16のほかに2名の職員を雇用し,同2名の職員らについて生じた人件費については,いずれもその全額について政務調査費から支出している。しかし,これらの職員については,雇用実態が十分に明らかにされているとはいえない。
したがって,同政務調査費の支出は,その全額が違法となる。
ソ G35議員(整理番号40(民14))
同議員は士別市に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同議員が取締役を務める株式会社J6である。そして,このような場合に事務所費への政務調査費の支出が許されないことは前述のとおりである。
したがって,同事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
タ G37議員(整理番号42(民15))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は,同居している妻の所有物件であり,かつ,同議員は,同事務所を宿舎として使用していたことを自認している。また,同事務所が定例会開催時の宿舎として利用されていたことに照らすと,仮に同議員が同事務所において何らかの政務調査活動をしていたとしても,その活動時間はごくわずかなものにすぎない。
したがって,同事務所に生じた費用(同議員については管理運営費)のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
チ G39議員(整理番号44(自22))
(ア) 同議員は,札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所を主に宿泊に利用する目的で賃借したことを認めている。
(イ) また,同議員は,I3町内に別紙4主張整理表「整理番号44」欄に対応する枝番2ないし4記載の各事務所を平成22年度中に順次賃借した(枝番2の事務所については平成22年7月31日まで,枝番3の事務所については同年8月1日から平成23年1月14日まで,枝番4の事務所については同月15日以降)が,同議員がそれぞれの事務所において政務調査活動をしたことを裏付ける客観的な証拠はない。
(ウ) 以上によれば,同議員が前記各事務所の費用のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ツ G42議員(整理番号47(自23))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は,宿舎として用いられていたものであり,仮に同議員が同所において何らかの政務調査活動をしていたとしても,その時間はごくわずかなものにとどまる。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
テ G43議員(整理番号48(民19))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は,自宅兼用であったと考えられるから,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ト G44議員(整理番号49(民20))
同議員は,I4町内に事務所の駐車場を,札幌市内に事務所をそれぞれ賃借しているが,上記駐車場及び札幌市内の事務所の賃借人は,いずれも同議員の親族であり,同議員と同親族とが生計を異にするとの客観的な証拠も提出されていない。
したがって,上記駐車場及び札幌市内の事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ナ G46議員(整理番号51(民21))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は,宿舎として利用されており,同議員が同事務所において何らかの政務調査活動がされていたとしても,その活動時間はごくわずかなものにとどまる。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ニ G51議員(整理番号56(自26))
同議員は札幌市内に別紙4主張整理表「整理番号56」欄に対応する「事務所費」「枝番」「1」欄記載の事務所を賃借したが,同事務所の賃貸人は,同議員の父親であるH17であり,同議員とH17とが生計を異にすることについての客観的な証拠はない。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ヌ G55議員(整理番号60(自28))
同議員は,札幌市内に所有する建物を議員事務所として使用し,その管理運営費のために政務調査費を支出しているが,当該事務所において政務調査活動がされた旨の主張や従事した政務調査活動の具体的内容,その比重等に関する客観的な立証はされていない。また,上記管理運営費の中には同事務所の駐車場使用料も含まれているが,かかる駐車場の使用実態についても何ら立証されておらず,本件運用方針で支出が禁じられている議員専用駐車場の賃借料に該当する可能性も払しょくされていない。
したがって,同建物の管理運営費のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ネ G56議員(整理番号61(民27))
同議員はI5町内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸借契約書上,その種類は「店舗兼居宅」とされている上,同議員が別件訴訟において提出した陳述書の住所地も同事務所所在地であった。このような事情を踏まえれば,同事務所は自宅兼事務所であるということができ,その区別等を明らかにするだけの主張立証もされていないから,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ノ G61議員(整理番号67(自32))
同議員は,H18及びH19を雇用し,その人件費及び社会保険料のために政務調査費を支出した。しかし,H18の雇用契約書によると,その雇用主は,「G61後援会」(会長H20)であり,その業務内容は後援会事務とされている。また,H19の雇用契約書によると,その雇用主は,「自由民主党北海道支部札幌北区第4支部」(代表同議員)であり,その業務内容は同支部職員としての立場で行う党勢拡大と組織強化とされている。そうすると,H18は後援会活動の専従者であり,H19は政党活動専従者であると言わざるを得ず,これらの職員の人件費ないし社会保険料のために政務調査費を充てることは許されないといえる。
したがって,これらの職員の人件費ないし社会保険料のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ハ G63議員(整理番号69(民30))
同議員は,事務所として賃借している札幌市内の居宅について,宿舎として利用していることを自認している。そして,このような場合に,その賃料について政務調査費を充当することは許されない。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ヒ G64議員(整理番号71(自34))
(ア) 同議員は,I6町内に賃借する事務所を自宅として利用していることを自認しており,別件訴訟における同議員の陳述書に記載された住所も同事務所の所在地であった。そうすると,同事務所は同議員の自宅であるから,同事務所の管理運営費のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
(イ) また,同議員は札幌市内にも事務所を賃借しているが,同事務所は宿舎として使用されているにすぎないから,その使用実態は,「居住用」と何ら変わるところがないといえる。そうすると,同事務所のために支出された政務調査費も,その全額が違法となる。
フ G66議員(整理番号73(民31))
同議員は伊達市内に事務所を賃借しているが,別件訴訟における同議員の陳述書に同事務所の住所が現住所であるとの記載があることからすると,同事務所は,自宅兼事務所であることが疑われ,これに対する的確な反証もない。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ヘ G72議員(整理番号79(民34))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所は自宅兼事務所となっており,使用実態も宿舎としてのものであったから,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ホ G76議員(整理番号83(自39))
同議員は,北見市内に事務所及び付属の駐車場を,札幌市内に事務所をそれぞれ賃借しているほか,同事務所の通信機器を借り上げている。しかし,上記各事務所の賃貸借契約書上の使用目的は,いずれも後援会事務所である上,賃貸人の書面による承諾を得ないで使用目的を変更することができないことが明記されているから,上記各事務所は,いずれも後援会活動のみに使用されていたといえる。
したがって,上記各事務所のために支出された政務調査費は,北見市内の事務所に付属する駐車場の費用及び札幌市内の事務所の通信機器の費用に充てられた分も含め,その全額が違法となる。
マ G81議員(整理番号88(自42))
同議員は,札幌市内に賃借している事務所について自ら自宅兼用である旨を報告しているから,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ミ G85議員(整理番号92(民40))
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同議員の姉であるH21であり,同議員とH21が生計を異にしていることを示す客観的な証拠はない。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
ム G89議員(整理番号96(自46))
同議員は室蘭市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同議員が代表取締役を務める株式会社J7である。そして,このような場合にその事務所の費用のために政務調査費を支出することが許されないことは前述したとおりである。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
メ G92議員(整理番号99(自49))
(ア) 事務所費
同議員は札幌市内に事務所を賃借しているが,同事務所の賃貸人は,同議員が取締役を務める株式会社J8である。そして,このような場合にその事務所の費用のために政務調査費を支出することが許されないことは前述したとおりである。
したがって,同事務所のために支出された政務調査費は,その全額が違法となる。
(イ) 人件費
同議員は,雇用していた職員のうち,H22,H23及びH24について,政務調査活動のみならず,政党活動や後援会活動にも従事させたとする一方,証人尋問においては,政党活動に対する対価についての支払はしたが,後援会活動に対する対価の支払をしていないと証言している。したがって,これらの職員らに関して生じた費用の2分の1について政党活動の対価が支払われたと考えた場合,残りの2分の1の部分には後援会活動の対価も含まれていると考えるべきであるから,政務調査費を支出することが許されるのは,多くとも職員らに関して生じた費用の4分の1の部分に限られ,これを超えて支出された部分は,その全額が違法となる。
(被告及び本件各議員の主張)
(1) 原告の主張(1)及び(2)は争う。特に,以下の点について反論する。
原告は,議員が取締役を務める会社その他の議員の関連会社が所有する物件について,政務調査費からの支出が禁じられると主張する。しかし,地方自治法,本件条例,本件規程及び本件各手引において,原告主張の場合に政務調査費を支出することは禁止されていないし,原告の主張は会社の法人格を無視するものである。また,恣意的に事務所の賃借料を高額に設定し,その賃借料に政務調査費を支出したというのであれば別であるが,適切な賃借料であれば,賃借人が第三者であろうが議員であろうが,会社の利益に差異はないはずである。
(2) 原告の主張(3)は争う。
本件各議員は,いずれも,事務所における活動実態や雇用した職員の活動実態に合わせて,その費用のうち政務調査費を充てるべき按分割合を定め,政務調査費を支出しており,何ら違法な点はない。なお,本件各議員が定めた按分割合とその理由については,別紙4主張整理表「補助参加人らの主張」欄記載のとおりである。また,「補助参加人らの主張」欄のうち「後援活動」欄,「政党活動」欄については,事務所の使用状況又は職員の業務内容の中にそれらの活動に関わる使用や業務が混在していたことを明確に認める場合には○印が,それらの活動に関わる使用や業務が混在していたことを明確に否認する場合には×印が,それぞれ付されている。
8 本件各会派及び本件各議員による政務調査費の支出に違法な部分があるとした場合,本件各会派及び本件各議員が北海道に返還すべき不当利得の金額(争点(4))について
(原告の主張)
以上のとおりであり,本件各会派及び本件各議員が不当利得として被告に対して返還しなければならない政務調査費の金額は,別紙2一覧表の各被告補助参加人に対応する同表「請求額」欄記載のとおりとなる。
(被告の主張)
原告の主張は争う。
会派又は議員が交付を受けた政務調査費から返納すべき額について,本件条例11条は,「会派の代表者又は議員は,その年度において交付を受けた政務調査費の総額から,当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による支出(中略)の総額を控除して残余がある場合,当該残余の額に相当する額の政務調査費を返納しなければならない」と規定している。
また,収支報告書の記載内容と返納額の関係等については,本件各手引のうち実務編において,収支報告書の収入欄記入額から支出の合計欄記入額を差し引いた残余の額が返納額となることや,議長に提出した収支報告書等の内容に誤りがあった場合の修正報告の方法が定められている。そして,実際に提出後に収支報告書の内容について誤りが判明した場合には,当該会派又は議員は,これらの規定に基づいて,修正した収支報告書を議長に提出し,修正によって新たに生じた残余の額を返納している。
したがって,補助参加人らのうち,収支報告書における支出の合計額が収入額を上回る会派ないし議員については,原告が主張する額の支出が違法なものであったとしても,被告が補助参加人らに対して返還の請求をすべき金額は,違法と認められる政務調査費の支出から収支報告書における支出の合計額と収入額の差額を控除した金額と考えるべきである。
第3 当裁判所の判断1(争点(1)について)
1 地方自治法100条14項は,政務調査費の交付につき,普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができると定めており,その趣旨は,議員の審議能力を強化し,議員の調査研究活動の基盤の充実を図るため,議会における会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化したものであると解される。そうすると,同項の規定に基づいて定められた本件条例の施行に関して必要な事項を定める本件規程4条1項が会派に係る政務調査費に関する使途基準として別表第1に定める「会派が行う道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費(調査委託費,交通費,宿泊費等)」,同項が議員に係る政務調査費に関する使途基準として別表第2に定める「議員が行う調査研究活動のために必要な事務所の設置,管理に要する経費(事務所の賃借料,管理運営費等)」,「議員が行う調査研究を補助する職員を雇用する経費(給料,手当,社会保険料,賃金等)」とは,会派については議員の議会活動の基礎となる調査研究に要する経費及び調査の委託に要する経費をいい,議員についてはその議会活動の基礎となる調査研究に要する経費をいうものであり,議員としての議会活動を離れた活動に関する経費ないし当該行為の客観的な目的や性質に照らして議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性が認められない行為に関する経費は,これに該当しないものというべきである(最高裁平成25年1月25日第二小法廷判決・集民243号11頁参照)。
そして,北海道議会議長が平成21年7月に本件条例の委任を受けた本件規程4条2項に基づいて本件運用方針を決定し,その内容を踏まえた本件各手引が平成22年4月に作成された経緯や,本件運用方針の内容が地方自治法100条14項の制度趣旨に適合的なものであると認められることからすれば,本件運用方針に従った政務調査費の支出がされていない場合には,その政務調査費の支出は,議員としての議会活動を離れた活動に対する経費ないし議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性が認められない行為に関する経費に対してされたものであって,違法なものと評価するのが相当である。
また,一般に地方公共団体の議会の議員の活動は,政務調査活動以外にも,政治活動,後援会活動,選挙活動,政党活動等のほか,議員としての立場を離れた私的な活動もあり,多面性を有するものであって,それらの要素を明確に区分することができない場合が生じることは避けられない。本件運用方針が活動の実態により明確に区分することができない場合に按分率を定めているのもこのような実態を踏まえたものであるということができる。しかし,本件運用方針が,当該議員ないし会派の活動に議員としての議会活動を離れた活動や議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性が認められない行為としての要素が混在している場合の取扱いをすべて網羅することができているわけではなく,本件運用方針に具体的な類型が定められていない場合であっても,前記の政務調査費の交付の趣旨に鑑みれば,当該議員ないし会派の活動のうち,議員としての議会活動を離れた活動や議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性が認められない行為に関する部分に生じた経費について,政務調査費を支出することが許されないことはいうまでもない。
したがって,議員又は会派がした支出に政務調査活動以外による経費が含まれている場合やその活動が本件運用方針に定める類型に該当しない場合には,本件運用方針の定めを踏まえ,社会通念に従って相当な按分率を認定の上,当該活動に係る経費のうち政務調査活動に関して生じたといえる部分を超える経費に充てられた政務調査費の支出については,違法なものであると評価するのが相当である。
2 ところで,会派又は議員による政務調査費の支出が本来政務調査費に充てることができない経費の支出であったときは,当該会派又は議員は,政務調査費を交付した普通地方公共団体に対し,その支出相当額を不当利得として返還すべき義務を負うものというべきである。本件においても,これまで説示したところによれば,補助参加人らがした本件各支出が本件運用方針に反する違法な支出である場合には,補助参加人らは,被告に対し,その支出額に相当する金員を不当利得として返還すべき義務があるというべきである。
しかして,一般に不当利得返還請求訴訟においては,不当利得の返還を請求する者において,利得者が法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受けた者であることについての主張・立証をすべきであると解される(最高裁昭和59年12月21日第二小法廷判決・集民143号503頁参照)ところ,この理は,怠る事実に係る相手方に不当利得の返還請求をすべき措置を当該普通地方公共団体の執行機関に対して求める住民訴訟においても当てはまるというべきである。したがって,原告は,補助参加人らによる政務調査費の支出が本件運用方針に反する違法なものであり,補助参加人らが法律上の原因なく利得していることについて立証責任があるというべきである。
もっとも,本件規程が,会派又は議員が自らの政務調査費の使用が使途基準を満たして適正であったことについて,第三者による事後的な検証が可能となるように,会計帳簿を調製し,その内訳を明確にするとともに,証拠書類を整理し,保管しなければならない義務を負うと定めていること,会派又は議員が政務調査費の使途等に関する資料をすべて保有していることといった事情を考慮すれば,原告において,補助参加人らによる政務調査費の支出の全部又は一部が本件運用方針ないしその趣旨に合致したものでないことを推認させる一般的,外形的な事実の存在を立証した場合には,補助参加人らにおいて適切な反証をする必要が生じると解すべきであり,その反証がない限り,補助参加人らがした政務調査費の支出の全部又は一部は,本件運用方針ないしその趣旨に合致しない違法な支出であると推認されると考えるのが相当である。
以上を前提として,以下,本件各会派支出の違法性及び本件各議員による政務調査費の使用の違法性について検討を加えるが,本件各議員による政務調査費の使用の違法性に関する共通の問題として,以下の点を指摘しておく。本件で問題とされた議員の中には,第三者から賃借した政務調査事務所を,政務調査活動のみならず,後援会事務所や政党活動の拠点としても使用し,また,雇用した職員をそれらの活動に従事させ,その賃借した事務所に係る事務所費や人件費について,事務所の使用実態や職員の業務実態について特段の裏付け資料を証拠として提出していないにもかかわらず,自らが算定した政務調査活動が占める割合に政務調査費を充当したとしても本件運用方針に反する違法なものではないと主張している議員が少なからずいる。しかし,本件運用方針によれば,議員の活動が政務調査活動とその他の活動(後援会活動,政党活動等)の要素が混在している場合において,議員がその活動に要した経費に政務調査費を充当するに当たっては,事務所の使用実態や職員の業務実態に応じた合理的な割合で按分することとされているところ,使用実態や業務実態に関してその按分割合が合理的であることを示す特段の資料も論拠もなく,本件運用方針が定める上限を超えて,議員が自ら適切であると判断した按分割合で政務調査費を充当することは,政務調査費の使用について第三者による事後的な検証はできず,議員による恣意的な政務調査費の支出を許すものであって,前記で説示した本件規程の趣旨に反するものであるといわなければならず,もとより政務調査費から充当する合理的な按分割合であることについての反証があったとはいえない。そもそも,政務調査活動とそれ以外の活動の要素が混在し,その使用実態や業務実態により明確に区分することができない経費(事務所費,人件費)に本件運用方針で定められた上限を超えて政務調査費を支出することは,議員の政務調査活動との間に合理的な関連性がない活動に関する経費に政務調査費を充当したことを推認させる一般的,外形的な事情があるということができるのであるから,事務所費や人件費について使用実態や業務実態に関して合理的な割合であることを示す具体的な資料を提出しない議員については,按分による政務調査費の充当において合理的に区分することが困難である場合に当たるものとして,本件運用方針が定める按分率を上限として政務調査費からの充当が許されるものというべきである。
第4 当裁判所の判断2(争点(2)について)
1 原告は,本件各委託契約に係る委託業務の内容が,一般的,抽象的,包括的なものであり,本件各委託契約に係る経費が記載された収支報告書等においても,委託業務の具体的内容やこれに要する具体的な支出の内訳の記載がないことから,本件各会派支出に対して政務調査費を充当することは許されない旨主張する。
しかし,本件条例,本件規程及び本件運用方針には,会派が第三者に調査研究業務を委託するに当たり,会派に対してその委託業務の内容を個別具体的に特定し,支出の内訳を記載することを義務付ける旨の定めは存在しない。また,一般に,会派が議会活動の基礎として行う地方行財政に関する調査研究は,その性質上多岐にわたるものであることからすると,会派がその調査研究に係る業務を第三者に委託するに当たり,会派に対してその委託業務の内容を個別具体的に特定することを要求することが現実的であるとも言い難い。のみならず,本件条例及び本件規程は,会派の代表者に対し,年度終了の翌日から起算して30日以内に議長に対し領収書その他の支出の事実を証する書類の写しを添付して収支報告書を提出しなければならない旨を定めているものの,収支報告書の記載例をみると,調査委託費の支出額を記載するのみで,個々の支出に係る政務調査活動の目的や内容等を具体的に記載する様式になっていない(甲4)。その趣旨は,政務調査費は議会の執行機関に対する監視の機能を果たすための政務調査活動に充てられることも多いと考えられるところ,執行機関と議会ないしこれを構成する議員又は会派との抑制と均衡の理念に鑑み,議会において独立性を有する団体として自主的に活動すべき会派の性質及び役割を前提として,政務調査費の適正な使用についての各会派の自律を促すとともに,政務調査活動に対する執行機関や他の会派からの干渉を防止しようとするところにあるものと解される(最高裁平成21年12月17日第一小法廷判決・集民232号649頁参照)。
そうすると,本件条例,本件規程及び本件運用方針において,会派が調査研究に係る業務を第三者に委託するに当たり委託業務の内容を個別具体的に特定することが要求されているとか,その契約に係る経費が記載された収支報告書等に委託業務の具体的内容やこれに要する具体的な支出の内訳の記載がされることが要求されていると解釈することはできないから,本件各委託業務の内容が個別具体的でなく,収支報告書等にもその具体的内容や内訳等について記載がないからといって,本件各会派支出に対してされた政務調査費の支出が全額違法なものであるということはできない。
しかるところ,原告は,本件会派支出4に対してされた政務調査費の支出の違法性について,政務調査費を政務調査活動以外の用途に用いる方便として利用された可能性が高いと概括的に主張するのみで,それ以上の主張・立証をしないから,本件会派支出4に対してされた政務調査費の支出が違法であるということはできない。他方,原告は,本件会派支出1ないし本件会派支出3の違法性について別途主張するので,以下,項を改めて検討する。
2 本件会派支出1について
(1) 前記前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 自民党道連及び自民党議員会の概要(甲105の1,2,丙A自共37,証人H25)
(ア) 自民党道連は,国政政党である自由民主党の地方組織であり,道内にある自由民主党の支部の連合体として,国政に関する政策立案,宣伝,選挙等の政治活動を主として行う団体である。道内にある自由民主党の支部は,国会議員及び地方公共団体の議会議員のほか一般党員で組織され,道内の12の衆議院議員小選挙区にそれぞれ設置された選挙区支部,各市町村及び札幌市の各行政区にそれぞれ設置された市区町村支部,一定の職域ごとに設置された職域支部があるほか,衆議院比例区支部,参議院選挙区支部,参議院比例区支部などがある。そして,上記各支部のうち12の衆議院議員小選挙区にそれぞれ設置された選挙区支部を中心として自由民主党の政党活動が行われ,市区町村支部及び職域支部は,選挙区支部の傘下組織として活動している。
(イ) 自民党議員会は,北海道議会内部の議員団体として組織された会派であり,道政に関する政策立案等の政治活動を主として行う団体である。自民党議員会の構成員は北海道議会議員のみであるが,必ずしも自由民主党の党員を構成員とするものではない。
(ウ) 自民党道連と自民党議員会は,それぞれ別個に独立して活動することを基本としながらも,政策立案に係る地域ないし団体の要望把握等の活動については共同して行っていた。
イ 本件受託業務1の内容(丙A自共2)
本件受託業務1の内容は,調査対象を「国,道,市町村他府県の行財政の動向及び各種団体等の要望等」とし,調査内容を「(1)道の行財政に係る諸課題及びその対応と国及び市調査音における動向,(2)各種団体の要望とこれに係る道の対応等」とし,調査方法を「(1)移動政調会の開催,各種団体からの要望聴取,意見交換,(2)定例回代表質問等の作成補助(執行機関に対するヒアリングの実施等),(3)議員提案条例の立案補助,(4)各種意見書の作成補助(執行機関に対するヒアリングの実施等),(5)ホームページの管理運営,(6)その他,連絡調整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる業務の実施」とするものであった。
ウ 本件受託業務1の履行補助者(甲105の1,2,丙A自共37,38,証人H25)
自民党道連は,自民党道連の職員9名を本件受託業務1に従事させた。
このうち,自民党道連の参事であるH25(以下「H25」という。)は,自民党議員会における事実上の事務局長の地位に就いて本件受託業務1を統括し,その他の職員3名と共に,北海道議会の庁舎内の自民党議員会に割り当てられた部屋において常時活動をした。また,本件受託業務1に従事した職員らのうち残りの5名の職員は,自民党道連の事務所において,自民党道連の業務全般を本務としながら,本件受託業務1の活動をも行った。
エ 本件受託業務1の履行内容(甲105の1,2,丙A自共3から8まで,10の1から33の2まで,36の1から38まで,証人H25,弁論の全趣旨)
(ア) 自民党道連は,自民党議員会に対し,本件受託業務1の履行として,北海道内の各地域や諸団体が有する要望の把握,道議会の定例会で行われる代表質問の作成補助,北海道民に配布される政策集の作成補助,国会又は関係行政庁に提出される意見書の作成補助,自民党議員会の広報活動としてホームページの運営及び管理等を行った。
(イ) 上記履行に係る業務のうち自民党道連が行った北海道内の各地域や諸団体が有する要望の把握の活動は,移動政調会及び団体政策懇談会という各会議の開催並びにアンケート調査の実施等をすることによって行われた。
移動政調会は,年に10日程度(準備期間を含めると20日程度),北海道内12の各衆議院議員小選挙区支部の地域において,当該地域の市町村や団体との間で,政策に関する要望の聴取や意見交換を行うというものであり,団体政策懇談会は,年に1回(準備期間は5日程度),北海道議会庁舎内において,札幌を拠点として北海道全体を活動範囲とする各種団体との間で,政策に関する要望の聴取や意見交換を行うというものであったが,いずれも自民党道連と自民党議員会との共同で開催され,配付資料上の主催者は自民党道連ないし自由民主党選挙区支部であり,自民党議員会の議員のみならず,自由民主党所属の国会議員も出席して,国政に関する要望聴取も行われたほか,自民党道連の職員も開催準備に従事した。
(ウ) また,上記履行に係る業務のうち,自民党道連がその作成補助に携わった政策集には自由民主党への支持を呼びかける旨の表現が含まれていたり,代表質問の文案やホームページの掲載文には他の政党を批判する表現が含まれていたりすることがあった。
(エ) さらに,本件委託業務1に係る業務に従事していたH25は,上記(ア)のほかにも,議会の開議中にテレビ中継等を介して質疑を傍聴するなどして,議会対応に従事したほか,自民党議員会の総会運営や自民党議員会と他の会派との間の政策調整にも従事した。
(2) 検討
自民党道連は,自由民主党の地方組織として,国政に関する政策立案,宣伝,選挙等の政治活動を主として行う団体であるから,政党活動を主として行う団体であるということができるところ,自民党道連が履行した本件受託業務1の内容は,いずれも会派が行う議会活動の基礎となる北海道の事務及び地方行財政に関する調査研究ないしこれと客観的な合理的関連性を有しないものであるとまではいえないものの,本件受託業務1の履行内容のうち,少なくとも移動政調会及び団体政策懇談会については,いずれも配付資料において対外的には自民党道連ないし自民党選挙区支部が主催者であることを示した上で,自由民主党所属の国会議員が出席して,国政に関する要望聴取も行われたほか,自民党道連の職員も開催準備に従事したことが認められるから,このような実態に鑑みれば,自民党道連ないし自由民主党選挙区支部が固有の業務として行う政党活動の側面も有していたということができる。そして,自民党道連が,本件受託業務1の履行において,会派に所属する議員の議会活動の基礎となる調査研究に係る活動と政党活動の側面を有する活動とを明確に区分して活動時間や活動経費を分別管理したと認めるに足りる証拠もない。加えて,自民党道連は,本件受託業務1に常時従事するH25その他3名の職員を北海道議会庁舎内に配置していたものの,自民党道連の事務所においても自民党道連の業務全般を本務とする5名の職員にも本件受託業務1に従事させていたことからすると,本件受託業務1には,政党活動と政務調査活動が混在し,これを明確に区分することも困難であるから,本件受託業務1に政務調査費全額を支出することは,議員としての議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的な関連性がない経費にも充てられたものと評価すべき一般的,外形的な事情が存在するということができる。
これに対して,H25は,移動政調会ないし団体政策懇談会の開催について,自民党道連,自由民主党支部及び自民党議員会のそれぞれの職員ごとに職務を分担することができていた旨の証言及び陳述(丙A自共38,丙A自共105の1。なお,別件訴訟における証人尋問における証言(丙A自共105の2)にも同旨の部分がある。)をするが,本件受託業務1の内容として履行された移動政調会ないし団体政策懇談会の開催,運営それ自体が,政党活動の側面を有すること,それぞれの職員ごとの活動時間や活動経費を分別管理したと認めるに足りる証拠はないことは前記のとおりであって,H25の上記証言等は,議員としての議会活動の基礎となる調査研究活動と合理的な関連性が認められない活動に対しても政務調査費が支出されたという上記評価を左右する的確な反証であるということはできず,他に上記評価を妨げる事情を認めるに足りる証拠もない。
(3) 小括
本件受託業務1には政務調査活動と政党活動が混在し,また,両者を活動実態に応じて明確に区分することができないから,自民党議員会がした本件会派支出1には政務調査費を充当することができない部分が存在していたことになり,本件会派支出1のうちその部分に対してされた政務調査費の支出は違法なものと推認すべきこととなる。そして,本件会派支出1のうち政務調査活動と政務調査費を充てることができない政党活動に関する費用の按分割合は,本件運用方針の定めの趣旨を踏まえ,それぞれ2分の1とするのが相当である。
3 本件会派支出2について
(1) 前記前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 民主党北海道及び民主党議員会の概要(甲106の1,丙A民共30)
(ア) 民主党北海道は,北海道内12の衆議院議員選挙の小選挙区を単位として設置されている総支部等で構成された民主党の地方組織であり,それぞれの総支部は,市町村や札幌市の行政区を活動区域とする行政区支部を設置している。
(イ) 民主党議員会は,北海道議会内部の議員団体として組織された会派であり,民主党所属及び主義・主張を同じくする無所属の北海道議会議員を構成員として,道政に関する政策立案等の政治活動を主として行う団体である。
イ 本件受託業務2の内容(丙A民共2)
本件受託業務2の内容は,目的を「道政調査に係る事務等補助業務」とし,委託事項を「(1)データの収集・整理,関連資料の整理,(2)地域における調査,(3)調査結果の集計及び分析,(4)調査結果に基づく提言などの策定補助,(5)その他,連絡調整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる業務」とするものであった。
ウ 本件受託業務2の履行補助者(甲106の1から3まで,丙A民共30,31)
民主党議員会の政策審議会事務局長であり本件受託業務2を統括したH26(以下「H26」という。)を始めとする民主党北海道の職員5名は,いずれも北海道議会の庁舎内の民主党議員会に割り当てられた部屋において本件受託業務2に従事し,民主党北海道の固有の業務を行うことはなかった。また,民主党北海道の固有の業務を担当していた職員が本件受託業務2の履行に従事することはなかった。
エ 本件受託業務2の履行内容(甲106の1から3まで,丙A民共3から7まで,13の1から25まで,27から31まで,弁論の全趣旨)
(ア) 民主党北海道は,民主党議員会に対し,本件受託業務2の履行として,地域政策懇談会(旧名称は「道政懇話会」。)の開催等による北海道内の各地域や諸団体が有する要望の把握,道議会の定例会で行われる代表質問の作成補助,国会又は関係行政庁に提出される意見書の作成補助,民主党議員会の議員が広報活動をする際に用いられる「道議会活動の報告」と題する冊子の作成及び民主党議員会の内部に設置された政策立案のプロジェクトに関する事務運営等を行った。
(イ) 上記履行に係る業務のうち地域政策懇談会は,平成22年度中は合計18日程度,北海道内の13の各支庁を単位とした17の地域において,当該地域の市町村や団体との間で,政策に関する要望や意見交換を行うというものであり,民主党議員会を主催者として対外的に表示された懇談会もあるが,後志地域の地域政策懇談会については民主党北海道及び民主党支部が共催として対外的に表示され,釧根地区の地域政策懇談会については新党大地が共催として対外的に表示された。また,地域政策懇談会には,民主党議員会所属の議員のほかに,民主党所属の国会議員も出席して,国政に関する要望把握や情報提供も行われ,その開催準備には民主党北海道の地元支部の職員も協力した。
(2) 検討
民主党北海道は,民主党の地方組織として,国政に関する政策立案,宣伝,選挙等の政治活動を主として行う団体であるから,政党活動を主として行う団体であるということができるところ,民主党北海道が履行した本件受託業務2の内容は,いずれも会派が行う議会活動の基礎となる北海道の事務及び地方行財政に関する調査研究ないしこれと客観的な合理的関連性を有しないものであるとまではいえないものの,本件受託業務2の履行内容のうち,地域政策懇談会については,その一部において対外的には民主党北海道ないし民主党支部が共催であることを示した上で,民主党所属の国会議員が出席して,国政に関する要望聴取や情報提供も行われたほか,民主党支部の職員も開催準備に従事したことが認められるから,このような実態に鑑みれば,民主党北海道ないし民主党支部が固有の業務として行う政党活動の側面も有していたということができる。そして,民主党北海道が,本件受託業務2の履行において,会派に所属する議員の議会活動の基礎となる調査研究に係る活動と政党活動の側面を有する地域政策懇談会の活動とを明確に区分して活動時間や活動経費を分別管理したと認めるに足りる証拠もない。
そうすると,本件受託業務2を履行するに当たり,これに専従するH26その他5名の職員を北海道議会庁舎内に配置して,民主党北海道の固有の業務に従事する職員に本件受託業務2を担当させなかったという事情を踏まえても,本件受託業務2には,政党活動と政務調査活動が混在し,これを明確に区分することも困難であるから,本件受託業務2に政務調査費全額を支出することは,議員としての議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的な関連性がない経費にも充てられたものと評価すべき一般的,外形的な事情が存在するということができ,他にこの評価を妨げるような事情の存在を認めるに足りる的確な反証もない。
(3) 小括
本件受託業務2には政務調査活動と政党活動が混在し,また,両者を活動実態に応じて明確に区分することができないから,民主党議員会がした本件会派支出2には,政務調査費を充当することができない部分が存在していたことになり,本件会派支出2のうちその部分に対してされた政務調査費の支出は違法なものと推認すべきこととなる。そして,本件会派支出2のうち政務調査活動と政務調査費を充てることができない政党活動に関する費用の按分割合は,本件運用方針の定めの趣旨を踏まえ,それぞれ2分の1とするのが相当である。
4 本件会派支出3について
(1) 証拠(丙A民共8)によれば,民主党議員会は,平成22年4月1日,連合北海道に対し,委託調査の目的を「道政調査に係る事務等補助業務」とし,委託調査の事項を「①データの収集・整理,関連資料の整理,②地域における調査,③調査結果の集計及び分析,④調査結果に基づく研究報告書(提言)などの策定補助,⑤その他,連絡調整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる業務」と定めて,委託料合計117万円で委託する旨の本件委託契約3を約したことが認められる。
しかし,証拠(丙A民共9の1から4まで)によれば,連合北海道が議会の定例会が開会する前に民主党議員会に対して書面で提供した政策課題に関する情報資料は,その多くは連合北海道の国又は北海道に対する要望であったり,連合北海道が取り組む政治活動の紹介であったりするものであることが認められ,これらは本件委託業務3の委託調査の目的である「道政調査に係る事務等補助業務」とは無関係のものであると指摘せざるを得ない。また,民主党議員会の事務局長であるH26の陳述(甲106の2,丙A民共30,31)及び別件訴訟の証人尋問における証言(甲106の3)によっても,連合北海道が民主党議員会に対して口頭で提供した政策課題に関する調査及び報告の具体的内容は明らかでない。これらの事情は,本件委託契約3が,民主党議員会「が行う道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託」(本件規程4条及び同別表第1)に該当しない業務の委託であったことを推認させるものであって,本件受託業務3に政務調査費全額を支出することは,議員としての議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的な関連性がない経費に充てられたものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,これに対する的確な反証はない。
(2) 小括
以上によれば,本件会派支出3は,本件運用方針に反する違法な支出であると認められる。
第5 当裁判所の判断3(争点(3)について)
1 G1議員(整理番号1(自1))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲5の1から4まで,丙A自1の1の1,丙A自1の2の1から丙A自1の2の20まで,丙A自1の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G1議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G1議員は,別紙4主張整理表「整理番号1」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われており,前記各職員もこれらの活動に従事していた。
ウ G1議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動や後援会活動が行われ,前記各職員もこれらの活動に従事したことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費や対価のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G1議員は,前記事務所における政党活動の内容は会計事務などに限られた形式的なものであり,実質的な政党活動はしていなかったから,事務所費及び人件費のうち2分の1に相当する部分について政務調査費を支出することが許される旨主張し,これに沿う陳述(丙A自1の3)をするが,同議員が陳述するところの前記事務所における使用実態や各職員の政務調査活動以外の関与の度合いについて客観的な裏付けを欠くから,同議員の上記陳述はたやすく採用することができず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
(3) 以上によれば,前記事務所に係る事務所費及び前記職員に係る人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであるから違法であるというべきである。
2 G2議員(整理番号2(公1))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲6の1から4まで,丙B1の1から丙B1の10まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G2議員は公明党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G2議員は,別紙4主張整理表「整理番号2」欄に対応する「摘要」欄記載の各住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「旭川市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を旭川市内の事務所において職員として雇用した。
なお,G2議員が作成した事務所状況報告書のうち旭川市内の事務所に関するものには,「他用途との兼用の有無」の項目中「政党事務所」の部分に丸印が付されている。
ウ 旭川市内の事務所においては,少なくとも政務調査活動のみならず後援会活動も行われており,また,前記事務所で稼働していた職員のうちH27は,政務調査活動のみならず後援会活動にも従事した。
他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
エ G2議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 旭川市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,旭川市内の事務所では政務調査活動のみならず後援会活動が行われていたことが認められることに加え,同事務所に関する事務所状況報告書には,「他用途との兼用の有無」の項目中「政党事務所」の部分に丸印が付されていることからすると,同事務所においては,政務調査活動及び後援会活動のほかに,政党活動も行われていたことを推認することができるから,同事務所に係る事務所費として支出された経費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しないものが含まれていると推認させる一般的,外形的な事情があるといえる。また,同事務所における使用実態からすると,同事務所で雇用されていた前記各職員も,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動にも従事していたものと推認されるから,前記各職員に係る人件費として支出されたものには,議員の議会活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるといえる。そして,これらの事務所費及び人件費については,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困難である。そうすると,的確な反証がない限り,支出された経費や対価のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G2議員は,同事務所で雇用したH28について,政務調査活動以外の業務を行わせなかった旨主張するが,これを裏付ける的確な証拠はなく,また,証拠(丙B1の1から丙B1の10まで)を精査しても,上記推認を妨げるような的確な反証がされているということはできない。
したがって,同事務所に係る事務所費及び前記各職員に係る人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであるから違法であるというべきである。
(3) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG2議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではなく,また,同事務所を政党活動にも使用していたことを同議員も自認していることからすると,札幌市内の事務所に係る事務所費として政務調査費から支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない部分があることを推認させる一般的,外形的な事情があり,また,政務調査活動とそれ以外の活動(同事務所が宿舎としても使用されていたことからすると,私的活動も含まれる。)を明確に区分することができない。そして,①平成22年度中の休日(行政機関の休日に関する法律1条参照)の合計が118日であり(公知の事実),②本件運用方針において使用日数から控除されるべきであるとされる当該年度中の議会の定例会及び委員会の開催日数が158日である(弁論の全趣旨)ことに加え,③平成25年3月までに本件運用方針が改訂され,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内のマンションの賃借料及びその管理運営費に関し,使用した実績により明確に区分することができない場合の按分率の上限を3分の1にする旨の規定が設けられた(乙16)ことを踏まえると,この場合における政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当である。なお,G2議員は,同事務所における活動内容について,政務調査活動が2分の1を占めていたと主張するが,これを裏付ける客観的な証拠はない。
したがって,同事務所の事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当をすることは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
3 G3議員(整理番号3(民1))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲7の1から3まで,丙A民1の1の1から丙A民1の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G3議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G3議員は,別紙4主張整理表「整理番号3」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所及びこれに付随する駐車場を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。上記事務所は,民主党北海道小樽支部が賃貸人から賃借を受けた事務所の一部を同議員が転借しているものである。同議員は,同支部との間で,事務所費について,同支部が賃貸人に支払う賃料15万円のうち7万円,光熱水費のうち前年度総額の約2分の1に当たる12万円,駐車場料金の半額を同議員が負担し,残額は同支部が負担する旨の覚書を交わした。また,同議員は,同支部との間で,上記職員2名の給与月額合計24万円のうち9万円,賞与合計年65万円のうち30万円を同議員が負担し,残額は同支部が負担する旨の覚書を交わした。
ウ 前記事務所においては,政務調査活動及び政党活動が行われており,また,前記各職員も政務調査活動及び政党活動に従事した。
エ G3議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 以上を前提に検討すると,G3議員が,前記事務所において,後援会活動を実施したことをうかがわせる証拠はない。また,同議員は,平成22年度中,後援会の役員会や総会,集会などの会合を開催することもなく,選挙活動については,事務所の3階を借りており,また,前記各職員を後援会活動やその補助業務に従事させなかった旨陳述(丙A民1の3)しており,これに反する的確な証拠もない。
そうすると,前記事務所においては,政務調査活動及び政党活動が行われており,前記各職員もこれらの活動に従事し,これらの活動のために事務所費及び人件費が支出されたものと認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があり,その事務所の使用実態及び職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困難である。もっとも,このような場合には,本件運用方針によれば,支出された経費や対価のうち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされているところ,G3議員が事務所費及び人件費について政務調査費から充当した割合は,いずれも上記の範囲内であると認められるから,同議員が事務所費及び人件費について政務調査費から支出した部分については,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
4 G4議員(整理番号4(民2))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲8の1から3まで,丙A民2の1の1から丙A民2の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G4議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G4議員は,別紙4主張整理表「整理番号4」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を職員として上記事務所において雇用した。
前記職員の雇用契約書(丙A民2の2の1)には,仕事内容として「G4道議の政治活動の補佐全般」との記載がある。
ウ 前記事務所においては,政務調査活動のほか,後援会活動も行われていた。なお,政党活動は,民主党北海道第11区総支部で行われた。
エ G4議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われていたこと,政党活動は民主党北海道第11区総支部において行われていたことが認められる。そうすると,同事務所に係る事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に関する経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があり,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することは困難であるが,本件運用方針によれば,支出された経費の2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。しかるところ,G4議員が事務所費として政務調査費から支出した割合は,上記の範囲内のものであると認められるから,同議員が政務調査費から支出した部分について,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
前記事務所で雇用された職員の職務内容についてみると,同職員の雇用契約書には,仕事内容として「G4道議の政治活動の補佐全般」との記載があることは前記認定のとおりである。しかし,G4議員は,前記職員とは別に後援会活動に従事する者としてH29を雇用しているから前記職員には後援会活動をさせていない旨主張し,これに沿う陳述(丙A民2の3)をするとともに,後援会が管理するH29の賃金台帳であるとする書面(丙A2の2の14)を提出している。同書面は,電子データを印刷したものであり,責任者の押印等はないものの,それのみで直ちにその信用性を否定することは困難であり,他にこの書面の信用性を否定すべき事情もうかがわれないことからすると,前記職員が政務調査活動以外の活動に従事し,そのための対価として政務調査費が支出されたことを推認させる一般的,外形的な事情があるということはできない。
したがって,前記職員に係る人件費の全額について,政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
5 G5議員(整理番号6(自3))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲10の1から4まで,丙A自3の1の1から丙A自3の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G5議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G5議員は,別紙4主張整理表「整理番号6」欄に対応する「摘要」欄記載の各住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「留萌市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人を留萌市内の事務所において職員として雇用した。
ウ 留萌市内の事務所においては,政務調査活動のほか,政党活動及び後援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事した。
他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
エ G5議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 留萌市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,留萌市内の事務所では,政務調査活動に加えて政党活動及び後援会活動が行われており,前記職員もこれらの活動に従事していたことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対して,G5議員は,留萌市内の事務所に係る事務所費及び人件費について,平成21年4月から同年6月までの政務調査活動(①調査研究活動,②意見聴取,意見交換,各種会議,③①及び②に関する移動,調査)の実績をもとにして,政務調査費に充当することができる按分割合を算出し,事務所費及び人件費の一部に政務調査費を充当した旨の主張をし,これに沿う陳述(丙A自3の4)をしているところ,同議員の陳述する按分割合は,算出根拠となる前年度の政務調査活動の実績に関する資料(丙A自3の3の1から丙A自3の3の3まで)を提出した上で詳細な計算根拠を示したものであることに照らすと,一定の合理性のあるものであると認められる。
したがって,同議員がその算出した按分割合で留萌市内の事務所に係る事務所費及び人件費の一部に政務調査費を充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG5議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同事務所が政務調査活動のための拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができると定められているところ,G5議員は,手帳などから札幌市内の事務所の使用日数を173日であると把握していたと陳述する(丙A自3の4)。同陳述は,使用日数を算出したもととなる手帳等の具体的な資料が証拠として提出されていないため客観的な裏付けを欠くものと指摘せざるを得ないが,その点をひとまず措くとしても,前記2(3)のとおり,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であるから,結局のところ,同議員が札幌市内の事務所の事務所費に関してその3分の1を政務調査費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとまでは認められない。
6 G6議員(整理番号8(民3))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲11の1から6まで,乙6,丙A民3の1から丙A民3の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G6議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G6議員は,別紙4主張整理表「整理番号8」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人5名を上記事務所において職員として雇用した。
ウ 前記事務所は,政務調査活動に利用されたほか,平成22年7月中の夜間,参議院議員選挙のための民主党の会議場として使用された。
また,前記各職員は,いずれも政務調査活動に従事した。
なお,G6議員の後援会活動は,前記事務所とは別に設けられた後援会事務所で行われ,また,政党活動については,倶知安町労働福祉センター内の北海道教職員組合後志支部で行われた。
エ G6議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所では,平成22年7月の一時期に前参議院議員選挙のための会議場として使用されたことはあるが,後援会活動及び政党活動は前記事務所とは別の場所で行われたものと認められる。
そうすると,前記事務所における活動には,平成22年7月の一時期に政党活動が混在していたということはでき,その時期に事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということはできるが,他方で,同事務所で雇用された各職員が政務調査活動以外の活動に従事し,その人件費に政務調査費が充当されたと推認させる一般的,外形的な事情があると認めることはできない。
したがって,前記事務所に係る事務所費のうち,平成22年7月分に関しては,本件運用方針に従いその2分の1の限度で,それ以外の月に関しては全額を政務調査費から充当することができ,人件費については,その全額を政務調査費から充当することができる。しかるところ,G6議員が事務所費の一部として政務調査費から充当した割合は,上記の範囲を超えるものではなく,また,人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
7 G7議員(整理番号9(自4))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲12の1から4まで,丙A自4の1の1から丙A自4の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G7議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G7議員は,別紙4主張整理表「整理番号9」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所及びこれに付随する駐車場を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を上記事務所において職員として雇用した。
なお,上記事務所及び駐車場の賃貸人は,G7議員が代表取締役を務めるJ1株式会社である。
ウ 前記事務所においては,政務調査活動のほか,政党活動及び後援会活動も行われた。また,前記各職員のうちH30を除く職員らについては,いずれも,政務調査活動のほか政党活動及び後援会活動にも従事した(なお,H30の職務内容については後記(4)のとおりである。)。
エ G7議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸人は,G7議員が代表取締役を務めるJ1株式会社であると認められるが,本件運用方針においてそのことを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当することができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所有の場合の事務所賃借料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段の事情がない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるからといって,その事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違法であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するということはできないというべきである。そして,G7議員について提出された証拠(丙A自4の1の1から丙A自4の3まで)を精査しても,J1株式会社が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたなどの特段の事情は見当たらないから,同議員が代表取締役を務める同会社が賃貸人であることを理由として,前記事務所及び駐車場の事務所費に政務調査費を充当することが違法である旨の原告の主張は採用することができない。
(3) ところで,前記事務所においては政務調査活動以外にも政党活動及び後援会活動が行われており,前記各職員のうち少なくともH30以外の職員がこれらの活動に従事していたことは前記認定のとおりである。前記事務所の使用実態及びこれに従事していた少なくともH30を除く職員らの業務実態からすると,前記事務所及び駐車場に係る事務所費及び人件費については,政務調査活動に加えて,政党活動及び後援会活動に関わる経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することもできない。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費や対価のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G7議員は,前記事務所における活動及び前記各職員のうちH30以外の職員らの職務内容については,政務調査活動の割合が2分の1であり,政党活動及び後援会活動の合計が2分の1であったと主張し,これに沿う陳述(丙A自4の3)をするが,客観的な裏付けを欠いており,他に同議員が主張する政務調査活動とそれ以外の活動の割合を裏付ける的確な反証はない。
(4) また,G7議員は,H30については同議員の政務調査活動における運転業務等に専従したと主張し,これに沿う陳述(丙A自4の3)をするが,客観的な裏付けを欠いている。
かえって,証拠(丙A自4の2の2)によれば,H30は,平成22年4月1日から平成23年3月31日までを雇用期間とし,午前8時30分から午後5時まで(ただし休憩時間は午後0時から午後1時まで)を就業時間とし,前記事務所を就業場所として,日給8000円を毎月25日払の約定でG7議員に雇用されていたことが認められることからすると,政務調査活動として移動する際に自動車運転業務にH30が専従していたとは認めがたい。のみならず,H30の就業場所である前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動も行われていたことからすると,H30は,政務調査活動に加えて,政党活動及び後援会活動にも従事し,その人件費に政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することもできないから,同人に係る人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
8 G8議員(整理番号11(民5))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲14の1から3まで,丙A民5の1の1ないし丙A民5の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G8議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G8議員は,別紙4主張整理表「整理番号11」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下,この事務所のことを「札幌市内の事務所」という。)を賃借した。
ウ G8議員は,北海道砂川市a条b丁目c番d号所在の事務所(本項においては,以下,「地元事務所」という。)において,別紙4主張整理表「整理番号11」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人2名を職員として雇用した。
なお,同議員の後援会活動については,全日本自治団体労働組合で行われ,また,政党活動については,民主党北海道第10区総支部で行われた。
エ G8議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
G8議員は,札幌以外の選挙区から選出された議員であり,証拠(丙A民5の3)によれば,同議員は,札幌市内の事務所を宿舎として利用していたことを認めるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができると定められているところ,G8議員が陳述する(丙A民5の3)ところによっても,その具体的な使用日数は明らかではない。そして,前記2(3)のとおり,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当である。そうすると,G8議員が,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち3分の1を超える部分について政務調査費を充当したことについては違法であるというべきである。
(3) 人件費について
前記認定事実によれば,後援会活動については全日本自治団体労働組合が行い,政党活動については民主党北海道10区総支部で行われたものと認められるところ,地元事務所で雇用された前記職員2名が同議員の政務調査活動補助業務以外に従事したことを認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると,前記事務所における各職員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということはできないから,前記事務所における人件費について,その全額を政務調査費から充当したことについて違法であるとはいえない。
9 G9議員(整理番号12(自5))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲15の1から3まで,丙A自5の1の1から丙A自5の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G9議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G9議員は,別紙4主張整理表「整理番号12」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所を設け,同欄記載のある個人4名をそれぞれ上記事務所において職員として雇用した。
ウ 前記事務所の賃借人は,G9議員の後援会の代表者である。同人とG9議員は,前記事務所を後援会事務所と共同で使用するに際して生じる賃料,共益費,電気料金及び灯油代をそれぞれ2分の1とする旨の覚書を交わした。
エ 前記各職員のうちH31以外の職員らに係る各雇用契約書の「仕事の内容」欄には,いずれも「後援会事務」と記載されている(なお,H31の雇用契約書は証拠として提出されていない。)。
オ G9議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所の賃借人は,G9議員の後援会の代表者であると認められるが,同人とG9議員との間では,前記事務所使用に係る覚書が交わされ,前記事務所を後援会事務所と共同で使用する旨の合意がされていること,前記事務所以外で政務調査用の事務所が設けられていたなどの事情もうかがわれないことからすれば,前記事務所で政務調査活動が一切行われていないにもかかわらず,前記事務所の事務所費に政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまではいうことができない。
しかし他方で,前記事務所が後援会事務所との共同使用であることに加え,G9議員は,前記事務所では政務調査活動のみならず政党活動もしていた旨の陳述(丙A自5の3)をしていることからすると,前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費に政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することもできない。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G9議員は,前記事務所においては実質的な政党活動はされておらず,前記事務所の事務所費の按分割合は政務調査活動を2分の1,後援会活動と政党活動を合計2分の1としたと主張し,これに沿う同旨の陳述(丙A自5の3)をするが,前記事務所における政務調査活動とそれ以外の使用実態に関する客観的な裏付けはなく,他に同議員が主張する政務調査活動とそれ以外の活動割合を裏付ける的確な証拠はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 人件費について
前記認定事実によれば,前記事務所で雇用された前記各職員のうち,H31以外の職員らに係る各雇用契約書の「仕事の内容」欄には,いずれも「後援会事務」と記載されていることが認められるが,同人らの就業場所が前記事務所であり,G9議員の後援会の代表者とG9議員との間では,前記事務所使用に係る覚書が交わされ,前記事務所を後援会事務所と共同で使用する旨の合意がされていること,前記事務所以外で政務調査用の事務所が設けられていたなどの事情もうかがわれないことからすれば,上記各雇用契約書に「後援会事務」と記載があるからといって,同人らが後援会活動に専従し,政務調査活動に従事していないにもかかわらず,その人件費に政務調査費が充当されたと推認させる一般的,外形的な事情があるとまではいうことができない。また,H31については,雇用契約書が提出されていないことは前記認定のとおりであるが,雇用契約書が作成されていないとしても,同人が政務調査活動と何ら関連性を有しない活動に従事し,その人件費に政務調査費が充当されたと推認させる一般的,外形的な事情があるとまではいうこともできない。
しかし他方で,前記各職員の就業場所は前記事務所であり,前記事務所では政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動が行われていたことは前記のとおりであって,同人らの職務内容にも,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動も含まれていたものと認められる。そして,前記事務所における政務調査活動とそれ以外の活動について明確に区分することは困難であるから,前記事務所でこれらの活動に従事した前記各職員に係る人件費についても,それぞれの業務実態を明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるというべきところ,的確な反証がないことは前記事務所費で指摘したところと同旨である。
10 G10議員(整理番号13(自6))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲16の1から3まで,丙A自6の1の1から丙A自6の2の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G10議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G10議員は,別紙4主張整理表「整理番号13」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所及び駐車場を賃借し,同欄記載の個人3名を上記事務所において職員として雇用した。なお,上記各職員に係る雇用契約書の「仕事の内容」欄には,「書類整理,資料作成他」,「議員活動補佐」,「事務所雑用他」と記載されている。
ウ G10議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
エ G10議員は,平成23年4月19日,北海道議会議員の任期を満了した。
(2) G10議員は,平成23年4月19日の任期満了をもって北海道議会議員を引退することを表明していたから,後援会活動はほとんど行っておらず,平成21年12月31日,上記事務所における政党活動を廃止したため,平成22年度中は政党活動を行わなかった旨主張する。G10議員が平成23年4月19日,北海道議会議員の任期を満了したことは前記認定のとおりであるが,引退する議員が,党勢の拡大に努め,また,後援会に所属する支援者に,後継者として指名した議員の支援を依頼するなどの後援会活動をすることも当然考えられるところである。しかるところ,G10議員は,前記事務所における使用実態及び前記各職員の職務内容に関して陳述書を提出するなどの具体的な説明をしておらず,他に前記事務所において政務調査活動以外の活動がほとんど行われなかったと認めるに足りる証拠もない。そうとすれば,前記事務所における活動内容及び前記各職員の職務内容には,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動も混在しており,政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費や対価に政務調査費が支出されたものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,本件全証拠を検討してみても,政務調査活動とそれ以外の活動の割合を裏付ける的確な証拠はない。
そして,前記事務所に係る事務所費及び人件費については,政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価ついて,事務所の使用実態や職員の業務実態により明確に区分することができないから,本件運用方針によれば,政務調査活動に充当することができる按分割合は3分の1であり,それを超えて政務調査費を充当することは違法であるというべきである。
11 G11議員(整理番号14(自7))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲17の1から3まで,丙A自7の1の1から丙A自7の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G11議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G11議員は,別紙4主張整理表「整理番号14」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所(本項においては,以下「石狩市内の事務所」という。)を設けたほか,北海道石狩郡I8町内に所在する事務所(本項においては,以下「I8町内の事務所」という。)を設け,その駐車場として同欄記載の駐車場を賃借した。
石狩市内の事務所の賃借人は,G11議員の後援会の代表者である。I8町内の事務所は,自由民主党当別支部が賃借人となり,同支部のほか,G11議員及びその後援会,当別ライオンズクラブによって共同使用されていた。なお,I8町内の事務所の駐車場の賃借人は,G11議員である。
ウ G11議員は,別紙4主張整理表「整理番号14」欄に対応する「摘要」欄記載の個人7名をそれぞれ職員として雇用したが,このうちH32,H33及び氏名不詳者A(以下「石狩事務所の職員ら」という。)はいずれも石狩市内の事務所において勤務し,その余の者ら(以下「I8事務所の職員ら」という。)はいずれもI8町内の事務所において勤務した。
エ G11議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 石狩市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,石狩市内の事務所の賃借人は,G11議員の後援会の代表者であると認められるところ,G11議員は,本件各手引が作成される前の平成19年4月に同事務所の賃貸借契約に係る契約書(丙A自7の1の2)を作成し,特段不都合がなかったため,平成22年当時もこの契約書に基づいて事務所を使用していた旨陳述(丙A自7の4)しており,その内容もあながち不合理とまではいえないことからすると,同事務所の賃借人が後援会代表者であるからといって,同事務所が政務調査活動のために使用されておらず,政務調査活動と合理的な関連性を全く有しない経費に政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまでいうことはできない。また,同事務所において,政党活動がされていたことをうかがわせる的確な証拠もない。
そうすると,石狩市内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われているものと認められるところ,その使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することは困難であるから,本件運用方針によれば,石狩市内の事務所の費用については,その2分の1を上限として政務調査費からの充当が許されることになる。そして,同議員が事務所費について政務調査費から支出した割合は,本件運用方針の範囲内であるから,同議員が同事務所費について政務調査費から支出した部分について違法であるとはいえない(ただし,上記按分割合によって石狩市内の事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
(3) I8町内の事務所の駐車場について
前記認定事実によれば,I8町内の事務所は,G11議員及びその後援会,自由民主党当別支部,当別ライオンズクラブによって共同使用されていると認められるが,同事務所の駐車場の賃借人は,G11議員であると認められること,G11議員がI8町内の事務所において政務調査活動をしていなかったことをうかがわせる的確な証拠もないことからすると,I8町内の事務所の駐車場が上記4者で共同使用されていたと認めることは困難である。
しかるところ,G11議員は,事務所状況報告書(甲17の2)において,前記駐車場が後援会との共同使用であった旨報告していることからすると,前記駐車場の使用実態は,政務調査活動及び後援会活動のために来客兼用のものとして使用していたものと推認することができるところ,前記駐車場の賃借料については,その使用実態により,政務調査活動に係るものと後援会活動に係るものとに明確に区分することができないが,本件運用方針によれば,駐車場費の2分の1に相当する部分に政務調査費を充当することは許容されているから,G11議員が,前記駐車場の費用の2分の1に相当する部分に政務調査費を充当したことは違法であるとはいえない。
(4) 人件費について
ア G11議員に生じた人件費について検討すると,石狩市内の事務所においては,政務調査活動のみならず後援会活動も行われていたことは前記のとおりであるから,同事務所において勤務していた石狩事務所の職員らは,政務調査活動及び後援会活動に従事しており,その人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,業務実態において政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,石狩事務所の職員らに生じた人件費については,本件運用方針に従い,その2分の1を上限として政務調査費を充当することが許されることになる。
もっとも,氏名不詳者Aについては,雇用契約書が証拠として提出されておらず,G11議員は,親族ではなく第三者であると陳述するが,これを裏付ける証拠も提出されていない。本件運用方針によれば,仮に親族であれば,当該親族が政務調査活動に関して国家資格等の専門的知識を有している場合であって,社会通念上妥当と判断される雇用形態を有している場合に限り,政務調査費を充当することができるとしているところ,結局のところ,氏名不詳者Aが具体的に明らかとなっておらず,その雇用実態も明らかではない以上,本件運用方針に従った支出であると認めることはできないから,氏名不詳者Aの人件費の2分の1に相当する部分について政務調査費を充当することは許されないことになる。
そうすると,石狩市内の事務所に勤務していたH32及びH33に関する人件費として政務調査費から充当された部分は,本件運用方針で定める範囲内であるから,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない(ただし,上記按分割合によって上記2名の人件費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)が,氏名不詳者Aの人件費として政務調査費から充当した部分については,その全額が本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
イ 他方,前記認定事実によれば,I8町内の事務所の賃借人は自由民主党当別支部であり,同支部及び後援会事務所他の共同使用であったことが認められることからすると,I8町内の事務所に勤務する職員らは,その業務実態として,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動にも従事し,その人件費として支出されたものには議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G11議員は,政党活動については自由民主党当別支部の被用者が従事しており,同議員が雇用したI8町内の事務所の職員らは政党活動に従事しなかった旨陳述(丙A自7の4)し,同被用者に関して同支部から人件費が支出されていたことを裏付ける預金通帳(丙A自7の3)を提出する。しかし,前記で指摘したI8町内の事務所の使用形態に照らすと,I8町内の事務所の職員らが一切の政党活動に関与していなかったとまで認めるに足りず,他に上記推認を妨げるような的確な反証もない。
したがって,I8事務所の職員らの人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
12 G12議員(整理番号15(民6))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲18の1,2,丙A民6の1の1から丙A民6の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G12議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G12議員は,別紙4主張整理表「整理番号15」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地の事務所を民主党北海道第二区総支部北区から転借し,また,同欄記載の住所地の駐車場を賃借した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動も行われていた。
ウ G12議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動以外に政党活動がされていたものと認められる。他方,G12議員は,後援会活動は同議員の自宅で行っていた旨陳述(丙A民6の3)しており,これに反する的確な証拠はないから,前記事務所で後援会活動が行われていたと認めるのは困難である。そうすると,前記事務所の事務所費については,政務調査活動に関するものと政党活動に関するものが混在しており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情が存在するということができ,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費と政党活動に係る経費とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G12議員は,前記事務所の事務所費について,業務内容や使用面積に応じて,民主党北海道第二区総支部北区が賃貸人に支払っていた賃料と電気料金のうち4万円を同議員が負担し,その全額を政務調査活動に要した費用として政務調査費から充当した主張し,それに沿う陳述(丙A民6の3)をする。上記陳述に係る按分割合は,前記事務所における使用実態を客観的に検証することができる根拠を示した上での積算であるとは認められないが,前記事務所の事務所費として政務調査費から充当された額は,上記の範囲内であると認められるから,結局のところ,違法な政務調査費の支出であるとはいえない。
なお,G12議員は,政務調査費から,街頭に設置されている前記事務所付近の地図に「G12事務所」の案内を掲載するための費用(3500円)を支出していることが認められるが,同費用は,市町村や関係諸団体の関係者が同議員に要請するために前記事務所を訪問する際の便宜となるものであり,政務調査活動によって生じたものと認められるから,この費用を政務調査費から支出したことについて違法であるとまではいえない。
(3) 駐車場に関する費用について
G12議員は,前記駐車場とは別に民主党北海道第2区総支部北区が借りた駐車場を専用として使用していた旨陳述し,これに沿う証拠(丙A民6の1の28から40まで)を提出していることからすると,前記駐車場は,前記事務所の来客専用として使用されていたものと認められる。
もっとも,前記駐車場は,前記事務所における活動のために賃借されたものであると認められるところ,前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動も行われていたことは前記のとおりである。そうとすれば,前記駐車場は,政務調査活動に関する来客のためのみに使用されていたと認めることはできず,前記駐車場に係る賃借料については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その使用実態により政務調査活動に係る経費と政党活動に係る経費とを明確に区分することはできない。
そうすると,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,これに反する的確な反証はない。
13 G13議員(整理番号16(自8))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲19の1から3まで,丙A自8の1の1から丙A自8の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G13議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G13議員は,別紙4主張整理表「整理番号16」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名(H34)のほか,H35を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動も行われていた。
ウ G13議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動とともに,政党活動及び後援会活動も行われていたと認められるところ,G13議員は,前記事務所の1階部分において政務調査活動を,2階部分において政党活動と後援会活動をそれぞれ行っていたこと,1階部分が79.5㎡,2階部分が31.5㎡であるが,1階部分にトイレや台所などの共用設備があり,後援会活動及び政党活動でもこれらの共用部分を使用することから,事務所費の按分割合について政務調査活動を65%,後援会活動及び政党活動を35%と算出した旨主張し,同旨の陳述(丙A自8の4)をするとともに,前記事務所の1階部分と2階部分の面積が示された平面図(丙A自8の1の1)を提出している。そして,上記陳述は,具体的なものであってこれに反する的確な証拠も見当たらないから,前記事務所における政務調査活動とそれ以外の活動は,明確に区分することができるだけの事情があるということができ,また,G13議員が算出した按分割合についても不合理なものと言い難い。
そうすると,事務所費について,G13議員がその算出した按分割合で政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって前記事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
(3) 人件費について
前記事務所ではH34のほか,H35が雇用されていたところ,証拠(丙A自8の2の1,丙A自8の2の2)によれば,H34の勤務形態は午後5時から午後7時までのパートタイムであるのに対して,H35の勤務形態は午前9時から午後5時までであると認められる。前記事務所では,政務調査活動のほか,後援会活動及び政党活動も行われていたことは前記のとおりであるが,G13議員は,H35には政務調査活動のほか後援会活動及び政党活動にも従事してもらっており,その人件費については本件運用方針に従ってその3分の1を政務調査費から充当し,他方,H34にはパートタイムで1階の政務調査活動の事務所で資料の収集等をしてもらっていた旨陳述しているところ,その勤務形態や前記事務所の使用区分に鑑みると,同議員の上記陳述が一概に不合理なものであるとは言い難い。
そうすると,H34に関する人件費については,政務調査活動以外の活動によって生じた部分が混在しており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということはできないから,H34に関する人件費の全額を政務調査費から支出したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
14 G14議員(整理番号18(自9))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲21の1から3まで,丙A自9の1の1から丙A自9の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G14議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G14議員は,別紙4主張整理表「整理番号18」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人4名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動が行われていた。
また,少なくとも前記各職員のうちH36は,政務調査活動とともに政党活動及び後援会活動にも従事した。
ウ G14議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所は,政務調査活動のみならず,政党活動や後援会活動のためにも利用されていたと認められるから,同事務所に係る事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G14議員は,前記事務所では,基本的に政務調査活動が行われ,必要に応じて年に数日程度の後援会活動及び政党活動が行われていたから,事務所費の按分割合としては政務調査活動を2分の1,政党活動及び後援会活動を合計2分の1とした旨主張し,これに沿う陳述(丙A自9の3)をするが,同議員が陳述するところの前記事務所における使用実態に関する具体的な裏付けを欠いており,上記陳述をたやすく採用することができず,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
(3) 人件費について
前記事務所で雇用された前記各職員のうち,H37及びH38については,「資料整理」に従事したことを示す領収証(丙A自9の2の3から丙A自9の2の6まで)が提出されているのみで雇用契約書が証拠として提出されていないが,H37及びH38が前記事務所で政務調査活動に従事していなかったと認めるに足りる証拠はない。もっとも,前記で認定した前記事務所における使用実態に鑑みれば,同事務所で勤務していた前記各職員は,いずれも政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動にも従事しており,その人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,その業務実態により,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,的確な反証がない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
しかるところ,G14議員は,前記各職員のうちH36については,前記事務所の使用実態からして,政務調査活動に関する按分割合が2分の1であったと主張し,これに沿う陳述をするが,同議員の陳述するところの前記事務所の使用実態については具体的な裏付けを欠くものであって採用することができないことは前記のとおりである。また,G14議員は,前記各職員のうちH39については,同人が政務調査活動における自動車運転業務に従事していた旨主張し,これに沿う陳述をする。しかし,その雇用契約書(丙A自9の2の2)の「従事すべき業務の内容」欄には「政務調査 資料整理等」と記載されている上,同契約書によれば,同人は常勤の職員であったと認められるから,同議員が政務調査活動として移動する際に自動車運転業務に専属していたとは認めがたく,H39に関する人件費について,政務調査活動のみならず政党活動や後援会活動に従事していたことによる対価が含まれているとの上記推認を妨げるものではない。
他方,前記各職員のうちH37及びH38については,証拠(丙A自9の2の3から丙A自9の2の6まで)によれば,平成22年9月から同年11月までの間,「資料整理」のために短期間雇用されたものであると認められるから,H37及びH38の職務内容については,道政報告会実施の準備や当日の手伝い,アンケート作成であった旨のG14議員の陳述の信用性をあながち排斥することはできず,上記推認を妨げる事情が存在するということができる。
したがって,前記各職員のうちH36及びH39の人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものというべきであるが,前記各職員のうちH37及びH38の人件費の全額を政務調査費から充当したことは違法なものであるとはいえないというべきである。
15 G15議員(整理番号19(自10))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲22の1から3まで,乙12,丙A自10の1の1から丙A自10の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G15議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G15議員は,別紙4主張整理表「整理番号19」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「I1町内の事務所」という。)を設け,また,同欄に記載のある個人2名をI1町内の事務所において職員として雇用した。
I1町内の事務所の賃借人は,G15議員の後援会会長であった。また,I1町内の事務所においては,政務調査活動のほか,後援会活動及び政党活動が行われていた。他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
ウ G15議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区であるG15議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)のとおりである。しかるところ,G15議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費については,賃料については政務調査費から充当せず,水道光熱費及び管理費のうち4分の1の限度で政務調査費を充当したにとどまるから,同費用について政務調査費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない。
(3) I1町内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,I1町内の事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動が行われていたことが認められるから,同事務所に係る事務所費については,政務調査活動と関連性を有しない部分が混在しており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外に係る経費とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費は,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G15議員は,I1町内の事務所における政務調査活動の割合が4割であったと主張し,それに沿う陳述(丙A自10の4)をするが,その使用実態に関して具体的な裏付けを欠いているからたやすく採用することができず,他に政務調査活動とそれ以外の活動の割合を裏付ける的確な反証もない。
そうすると,I1町内の事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を支出することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
(4) 人件費について
前記で認定したI1町内の事務所の使用実態を踏まえると,同事務所において雇用されていた前記各職員の職務内容にも政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動が含まれていたと認められるから,同事務所に係る人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G15議員は,前記各職員のうち,H40についてはその活動の4割が政務調査活動であり,また,H41についてはその活動の6割が政務調査活動であった旨主張し,これに沿う陳述をするが,いずれもその業務実態に関して具体的な裏付けを欠いているから採用することができず,他に政務調査活動とそれ以外の活動の割合を裏付ける的確な反証もない。
そうすると,前記各職員に係る人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を支出することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
16 G16議員(整理番号20(民7))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲23の1から4まで,丙A民7の1の1から丙A民7の3まで,証人G16)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G16議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G16議員は,別紙4主張整理表「整理番号20」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する建物を賃借して事務所を設け,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の所在する建物の賃貸人は,G16議員の実父であるH6であり,また,同建物は,前記事務所のほか,同議員の住居としても利用されていた。なお,前記各職員のうちH7は,G16議員の実子である。
前記事務所においては政務調査活動が行われ,前記各職員もこれに従事した。なお,G16議員の後援会活動は北海道釧路郡I2町I9e-f所在の後援会事務所で,政党活動は民主党北海道第7区総支部で行われた。
ウ G16議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した(事務所費のうち事務所管理運営費については,灯油代金の2分の1のみ政務調査費から充当した。)。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所の所在する建物の賃貸人は,G16議員の実父であると認められるが,同議員は,実父は北海道釧路市I10に居住して同居しておらず,年金生活をしている旨証言及び陳述(丙A民7の3。以下,この項において同議員の証言及び陳述を併せて「証言等」という。)をしており,これに沿う実父の住民票(丙A民7の1の3)を提出しているところ,同証言等に反する的確な証拠はないから,本件運用方針で政務調査費を充当することができない一例である「議員と生計を一にする親族所有の場合の事務所賃料」に当たらない。
もっとも,前記事務所の所在する建物がG16議員の住居としても利用されていたことは前記認定のとおりであるところ,G16議員は,前記事務所の所在する建物を実父から賃借するに当たり,事務所部分と住居部分の賃料を3万5000円ずつとしたこと,上記建物の事務所部分と住居部分は物理的にも機能的にも分離していたことから,事務所部分の賃料全額に政務調査費を充当したと主張し,これに沿う証言等(丙A民7の3)をする。
検討するに,証拠(丙A民7の1の16)によれば,前記事務所は,住居部分とは別々の玄関が設けられており,物理的にも機能的にも分離していることが認められる。また,住居部分に関する賃貸借契約書は提出されていないが,住居部分に関する領収証(丙A民7の1の4から15まで)が提出されており,事務所部分に関しては,事務所状況報告書(甲23の2)の添付資料(甲23の3)として平成22年4月分の事務所費3万5000円を実父が領収した旨の領収証が添付されていることからすると,事務所部分と住居部分に分けてそれぞれ実父から月額3万5000円で賃借した旨のG16議員の証言等を排斥することは困難である。そして,前記事務所部分においては,政務調査活動のみが行われ,政党活動及び後援会活動については別の場所で行われていたことは前記認定のとおりである。
そうすると,前記事務所に係る事務所費全額及び事務所管理運営費のうち灯油代金2分の1について政務調査費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
上記認定事実によれば,前記各職員のうちH7は,G16議員の実子であると認められるところ,同人は,北海道釧路市I10g丁目h番i号に居住しており(丙A民7の2の14),本件全証拠を検討してみても,G16議員がH7を扶養しているとか,生計を同一にしていると認めるに足りる的確な証拠はない。
そして,前記事務所においては,政務調査活動のみが行われていたことは前記認定のとおりである。
そうすると,前記事務所に係る職員2名の人件費全部について,政務調査費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものとはいえない。
17 G17議員(整理番号21(民8))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲24の1から3まで,丙A民8の1の1から丙A民8の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G17議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G17議員は,別紙4主張整理表「整理番号21」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所及び駐車場を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事した。また,前記駐車場は来客専用のものと来客兼用のものがあった。
ウ G17議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動が行われており,前記職員もこれらの活動に従事したことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所に付随する駐車場についても同様のことがいえる。そして,事務所費(駐車場に係る賃借料を含む。)及び人件費について,政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G17議員は,後援会活動及び政党活動が全体の業務に占める割合は10%であり,前記事務所における政務調査活動の割合が9割であったと主張し,これに沿う陳述(丙A民8の3)をするが,その業務実態に関して具体的な裏付けを欠くから,同議員の上記陳述はたやすく採用することができず,他に前記事務所における政務調査活動とそれ以外の活動の割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであるから違法であるというべきである。
18 G18議員(整理番号22(民9))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲25の1から4まで,丙A民9の1の1から丙A民9の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G18議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G18議員は,別紙4主張整理表「整理番号22」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「苫小牧市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を,苫小牧市内の事務所において職員として雇用した。
ウ 苫小牧市内の事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動が行われていた。なお,政党活動については,民主党北海道苫小牧支部で行われていた。他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
前記職員の雇用主は,G18議員の後援会の代表者であったが,同人とG18議員の間には,前記職員を政務調査活動に使用し,その経費を等分する旨の覚書が交わされている。
エ G18議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG18議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)のとおりである。しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費に関してその3分の1を政務調査費を充当したにとどまるから,同事務所費の支出の一部を政務調査費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとまでは認められない。
(3) 苫小牧市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,苫小牧市内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,政党活動は民主党北海道苫小牧支部で行われていたものと認められ,これに反する客観的な証拠はない。
また,前記職員の雇用主は,G18議員の後援会の代表者であるが,同人とG18議員他との間で交わされた覚書の存在を考慮すると,前記職員が後援会活動のみに従事していたと認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると,苫小牧市内の事務所における事務所費及び人件費については,政務調査活動と後援会活動に係る経費や対価が含まれており,その使用実態や業務実態について政務調査活動に係る経費や対価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分することができないが,本件運用方針によると,それぞれ2分の1を上限として政務調査費から支出されることが許されているところ,同議員が事務所費及び人件費として支出したもののうち政務調査費から充当した割合は上記の範囲内であるから,同議員が事務所費及び人件費として政務調査費を充当したことについて本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって苫小牧市内の事務所に係る事務所費及び人件費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
19 G19議員(整理番号24(自11))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲27の1から3まで,丙A自11の1の1から丙A自11の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G19議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G19議員は,別紙4主張整理表「整理番号24」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動も行われ,また,前記各職員も,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動にも従事した。
ウ G19議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動や後援会活動が行われており,前記各職員もこれらの活動に従事したことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に関する経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
ところで,事務所費については,本件運用方針によれば,政務調査事務所と後援会等の事務所とを兼ねている場合には,使用領域(面積)によって按分することができるとされているところ,G19議員は,前記事務所の内部を仕切って,政務調査活動のための場所として約35㎡使用し,後援会活動及び政党活動のための場所として約35㎡を使用したので,政務調査活動による事務所費の按分割合は2分の1である旨陳述(丙A自11の4)をしているところ,前記事務所の使用状況に関する客観的な証拠は提出されていないが,同陳述が事務所の面積(21.97坪。丙A自12の3)と整合する具体的なものであることに照らし,上記陳述の信用性をあながち排斥することは困難である。そうすると,同議員が事務所費としてその使用実態に照らして算出した按分割合で政務調査費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものとまではいえない。
他方で,G19議員は,前記事務所における前記各職員の業務実態について,政務調査活動は2分の1以上であり,後援会活動及び政党活動は2分の1未満であった旨陳述するが,その具体的な裏付けはなく,たやすく採用することはできない。そして,前記各職員の人件費(社会保険料を含む。以下,この項において同じ。)については,その業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,前記で説示したところによれば,その按分割合に関する的確な反証がないから,前記各職員に係る人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
20 G20議員(整理番号25(自12))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲28の1,2,丙A自12の1の1から丙A自12の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G20議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G20議員は,別紙4主張整理表「整理番号25」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「釧路市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人6名を釧路市内の事務所において職員として雇用した。
札幌市内の事務所は,家具付きの賃貸住宅であり,宿舎としても利用された。
ウ 釧路市内の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われていた。
前記各職員の各雇用契約書には,いずれも就業場所の欄に釧路市内の事務所の住所とともに「G20後援会事務所」との記載があるが,仕事内容欄には「政務調査に係る調査補助及び後援会関係事務」との記載がある。
エ G20議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG20議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点として実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない(同事務所が家具付きの賃貸住宅であり,また,賃貸の目的が居住用のみとされている(丙A自12の1の2)からといって,政務調査活動の拠点として実態がなく,議員の政務調査活動と関連性を全く有しない経費に政務調査費を支出したことを推認させる一般的,外形的な事情であるとまではいうことができない。)。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかでないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査活動を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)で述べたとおりである。そうすると,同議員が札幌市内の事務所費に関してその3分の1を政務調査費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとまでは認められない。
(3) 釧路市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,釧路市内の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動も行われ,前記各職員もこれらの活動に従事したものと認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G20議員は,釧路市内の事務所における活動や前記各職員の職務内容の割合について政務調査活動が2分の1であった旨主張し,これに沿う陳述(丙A自12の3)をするが,同議員が陳述するところの前記事務所における使用実態や職員の政務調査活動以外の関与の度合いに関する具体的な裏付けを欠くからたやすく採用することができず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な証拠はない。
そうすると,釧路市内の事務所に係る事務所費及び人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
21 G21議員(整理番号26(自13))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲29の1から4まで,丙A自13の1の1から丙A自13の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G21議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G21議員は,別紙4主張整理表「整理番号26」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用していた。
前記事務所の賃貸人は,G21議員の実父であるH8であった。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動も行われており,前記各職員もこれらの活動に従事した。
ウ G21議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸人は,G21議員の実父であると認められるが,同議員は,実父の住所は北海道美唄市j条k丁目l番m号に居住して同居しておらず,生計も別であった旨陳述し(丙A自13の4),これに沿う住民票(丙A自13の3の1,丙A自13の3の2)を提出しているところ,上記陳述に反する的確な証拠はないから,本件運用方針で政務調査費を充当することができない一例である「議員と生計を一にする親族所有の場合の事務所賃料」に当たらない。
もっとも,前記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動が行われていたものと認められるから,事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があり,また,事務所の使用実態により,政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することができない。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G21議員は,後援会活動は年10回程度の役員会,新春の集いなどの行事の開催などであって準備期間等を含めて年間48日間程度の作業であり,政党活動についても年2,3回程度の党支部役員会やポスターの配布等が主たる活動であって年間15日程度であったから,前記事務所における政務調査活動とそれ以外の活動をそれぞれ2分の1として政務調査費を支出した旨主張し,これに沿う陳述(丙A自13の4)をするが,同議員の陳述するところの前記事務所における使用実態を裏付ける具体的な証拠はないから,上記陳述はたやすく採用することができず,他に前記事務所における事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 人件費について
前記事務所で雇用されていたH42及びH43の雇用契約書が提出されておらず,また,H42の領収書(丙A13の2の1から丙A13の2の12まで)の宛名には「G21と進む会」との記載があることが認められるが,前記事務所では政務調査活動も行われていたことからすると,H42及びH43が政務調査活動に従事しておらず,議員の政務調査活動と関連性を有しない活動に従事したことによる対価に政務調査費が充当されたことを推認させる一般的,外形的な事情があるとまでいうことはできない。
もっとも,これらの職員は,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動に従事していたことは前記認定のとおりであるから,前記各職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるということができるところ,G21議員は,前記事務所における前記各職員の業務実態について前記のとおり陳述の上,政務調査活動に従事した割合が2分の1であった旨主張及び陳述をするが,その業務実態に関して具体的な裏付けを欠いていることは前記のとおりであってたやすく採用することはできず,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記各職員に係る人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
22 G22議員(整理番号27(民10))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲30の1から5まで,丙A民10の1の1から丙A民10の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G22議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G22議員は,別紙4主張整理表「整理番号27」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のあるH9を,平成23年1月から同年3月頃までH44を,いずれも職員として上記事務所において雇用した。なお,上記事務所の使用実態及び職員の業務実態については当事者間に争いがある。
ウ 前記事務所の平成19年4月における賃貸借契約書の使用目的欄には「選挙事務所」と記載されている。また,G22議員が北海道議会議長に提出した事務所状況報告書には,前記事務所が後援会活動と兼用である旨の記載があり,平成23年9月時点において前記事務所の入口には「後援会事務所」と表示した看板が設置されていた。
H9の雇用契約書には,就業場所について「G22議員事務所」,仕事内容について「政務調査活動及び後援会活動の事務補助について」との記載がある。
エ G22議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
前記事務所の賃貸借契約書には,事務所の使用目的として「選挙事務所」と記載があることが認められるが,同契約書は平成19年4月に作成されたものであり,以後更新されているものと認められるから,契約書の使用目的欄の記載をもって平成22年度においても前記事務所が選挙活動のみに使用されており,政務調査活動と何ら関連性を有しない経費に政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまではいえない。
ところで,G22議員は,前記事務所において,政務調査活動及び政党活動の拠点として使用していたと主張し,同旨の陳述(丙A民10の3)をする。しかし,H9の雇用契約書の仕事内容欄に「政務調査活動及び後援会活動の事務補助」と記載されていること,G22議員が北海道議会議長に対して提出した事務所状況報告書には後援会事務所と併用している旨の記載があること,平成22年度の終了から半年程度後の時点で前記事務所に後援会事務所の看板が掲示されていたことからすると,前記事務所では後援会活動が行われていたものと認められ,この認定に反する上記陳述はたやすく採用することができない。そうすると,前記事務所では,政務調査活動のほか,後援会活動及び政党活動が行われていたものと認められ,これらの活動に係る経費として事務所費が支出されたものと認められる。
これに対して,G22議員は,後援会活動が行われていなかったことを前提として,前記事務所における使用実態について,事務所の使用日数平均23日のうち政党活動が行われるのは5日以内であったので,政務調査活動を10分の7の割合で按分して政務調査費を支出した旨主張し,これに沿う陳述をする。しかしながら,上記陳述は,具体的な裏付けを欠いておりたやすく採用することができない。
しかして,これまで説示したところによれば,前記事務所に係る事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があり,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外に係る経費とに明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法なものであると評価するのが相当であるところ,事務所費に関する按分割合に関して的確な反証はない。
したがって,前記事務所の事務所費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 人件費について
ア H9の人件費について
前記事務所では,政務調査活動のほか,政党活動及び後援会活動が行われていたことは前記で説示したとおりであり,H9は,その就業時間が午前9時から午後5時までとされている(丙A民10の2の1)ことからすると,H9は,前記事務所の職員としてこれらの活動に従事していたものと認められる。そうすると,H9に対する人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるといえる。
しかるところ,G22議員は,前記事務所では後援会活動が行われていなかったことを前提として,民主党北海道第三区総支部との間で,H9の業務量に応じて,月額21万円の給与のうち5万円を同支部が支払う旨の取決めをし,これに応じた按分割合で政務調査費を充当した旨主張し,これに沿う陳述をする。確かに,H9の雇用契約書(丙A民10の2の1)には「政務調査費充当分」として16万円と記載されていることが認められるが,前記事務所における使用実態及びH9の職務の遂行状況に関する具体的な裏付けがなく,同人の人件費については,上記契約書の記載に拠って政務調査活動とそれ以外の活動に係る按分割合を認定することはできず(なお,前記事務所で後援会活動が行われたと認められることは前記で説示したとおりである。),他に同人の人件費の按分割合に関する的確な証拠もない。
そうすると,H9の人件費に関しては,その業務実態を踏まえて政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
イ H44の人件費について
前記認定事実によれば,H44の雇用期間は短期間であり,また,領収書(丙A民10の2の2)によれば,月額報酬2万円が支払われていることからすると,同人がパートで道政報告の配布及び発送業務などの政務調査活動補助業務に専従した旨のG22議員の陳述の信用性を排斥することは困難であり,同人に関する人件費について,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
そうすると,H44の人件費について,政務調査費から全額を充当したことについては,本件運用方針に反する違法なものとまではいえない。
23 G23議員(整理番号28(自14))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲31の1から4まで,丙A自14の1の1から丙A自14の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G23議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G23議員は,別紙4主張整理表「整理番号28」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所の賃貸人は,G23議員の実子であるH10であった。r/> また,前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事した。なお,政党活動については自民党札幌支部連合会西区連で行われた。
ウ G23議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸人は,G23議員の実子であると認められるが,同議員は,実子は札幌市I11区内の別の場所に居住しており,同人と生計も同じではない旨の陳述(丙A自14の4)をし,これに沿う住民票(丙A自14の2の1,丙A14の2の2)を提出しているところ,この陳述に反する的確な証拠はないから,本件運用方針で政務調査費を充当することができない一例である「議員と生計を一にする親族所有の場合の事務所賃料」に当たらない。
ところで,前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事していたこと,政党活動については自民党札幌支部連合会西区連で行われたことは前記認定のとおりである。
そうすると,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があり,また,政務調査活動に係る経費や対価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分することは困難であるが,本件運用方針によれば,その2分の1を上限として政務調査費を充当することが許される。しかるところ,同議員がした政務調査費の支出は,いずれもこの範囲内であるから,事務所費及び人件費として支出したもののうち政務調査費から充当した部分について,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
24 G24議員(整理番号29(民11))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲32の1から3まで,丙A民11の1の1から丙A民11の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G24議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G24議員は,別紙4主張整理表「整理番号29」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動とともに,政党活動及び後援会活動が行われていた。
ウ G24議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われていたものと認められるから,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
この点について,G24議員は,前記事務所における活動のうち平成22年4月から平成23年2月までは政務調査活動が2分の1を占め,同年3月については後援会活動による事務所の使用が多かったため政務調査活動が3分の1を占めており,また,前記各職員はいずれも政党活動に従事しておらず,業務実態からして政務調査活動に従事していた割合が4分の3であった旨主張し,これに沿う陳述(丙A民11の3)をするが,同議員の陳述するところの事務所の使用実態や職員の業務実態を裏付ける具体的な証拠は提出されておらず,たやすく採用することができない。
そして,前記事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費については,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,事務所費及び人件費の按分割合に関する的確は反証はない。
したがって,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
25 G25議員(整理番号30(自15))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲33の1から8まで,丙A自15の1の1から丙A自15の4まで,証人G25)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G25議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G25議員は,別紙4主張整理表「整理番号30」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,以下,事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「名寄市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を名寄市内の事務所において職員として雇用した。
ウ 前記各職員のうちH11は,G25議員が代表取締役を務めていた有限会社J2を中心とする企業グループの事業を補佐する立場にもあり,同企業グループに属する有限会社J3の取締役や有限会社J4の代表取締役も務めている。前記各職員のうちH12は,前記有限会社J3の業務にも従事していた。なお,前記企業グループの所在地は,名寄市内の事務所が入居していた建物とは別である。
また,名寄市内の事務所が入居していた建物の別フロアには,自由民主党の支部が入居していた。
エ G25議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
オ G25議員は,平成23年4月19日,北海道議会議員として任期満了となった。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
G25議員は,札幌市内の事務所についてはほとんど寝泊まりのみに利用していた旨の証言をしているから,札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として利用していたと認めることは困難である。これと異なる同議員の陳述(丙A自15の4)は採用することができない。なお,証拠(丙A自15の6)によれば,G25議員は,平成28年1月13日,多発性脳梗塞を発症し,軽度の認知・記名能の低下を後遺している旨の診断を受けたことが認められるが,上記陳述に係る陳述書の作成及び上記証言は,いずれも脳梗塞発症後にされたものであるから,同議員が上記の診断を受けたからといって陳述と証言が異なる理由とはならない。また,H11は,G25議員の上記陳述に沿う陳述書(丙A自15の5)を提出するが,同陳述はG25議員に対する証人尋問実施後に提出されたものであり,反対尋問を経ていないものであるから,たやすく採用することができない。
したがって,札幌市内の事務所の費用の一部に対してされた政務調査費の支出は,本件運用方針に反するものであり,その全額が違法となるというべきである。
(3) 名寄市内の事務所に係る事務所費について
G25議員は,前記各職員のうちH11が政党活動や後援会活動にも従事し,H12が後援会活動に従事していた旨の証言をしているが,前記認定事実によれば,政党支部が名寄市内の事務所が入居する建物の別のフロアにあったことが認められるから,名寄市内の事務所の使用実態として政党活動が行われ,同事務所の事務所費として,政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動に係る経費にも政務調査費が支出されたものと推認される一般的,外形的な事情があるとまではいえない。また,G25議員が平成23年4月19日に北海道議会議員を任期満了となったことは前記認定のとおりであるが,同議員は,後援会事務所は名寄市内の事務所とは別の場所にあり,北海道議会議員を引退するので後援会活動はほとんど行っていなかった旨の証言をしており,この証言の信用性を排斥する的確な証拠はないから,名寄市内の事務所において後援会活動が行われ,同事務所の事務所費として,政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費にも政務調査費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまではいえない。
のみならず,H11及びH12が勤務していた企業が名寄市内の事務所とは別の場所に存在している(甲33の6から8まで,証人G25)ことが認められることからすると,名寄市内の事務所において企業活動が行われ,同事務所費の事務所費として,政務調査活動と合理的な関連性を有しない企業活動に係る経費にも政務調査費が支出されたものと推認させる一般的,外形的事情があるとまではいえない。
そうすると,名寄市内の事務所では,政務調査活動のみが行われていたものと認められるから,同事務所の事務所費全額について政務調査費から支出したことは,本件運用方針に反するものとまではいえない。
(4) 人件費について
前記各職員がG25議員の政務調査活動等を補佐する業務に従事した以外に企業活動にも従事していたことは前記認定のとおりである。また,G25議員は,前記各職員のうちH11は政党活動や後援会活動にも従事し,H12は後援会活動に従事したほか,H11については,名寄市内の事務所とは別に設けられた後援会事務所において,G25議員の実子が立候補した名寄市長選挙を支援する活動を行った旨の証言をする。そうすると,H11の職務内容には,政務調査活動以外に,政党活動,後援会活動及び企業活動が混在し,H12の職務内容には,政務調査活動以外に,政党活動及び企業活動が混在しており,前記各職員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
この点について,G25議員は,H12については名寄市内の事務所とは別の場所で法人の業務に従事しており,H11については政務調査活動以外の報酬として別途役員報酬を受け取っていたと主張する。確かに,証拠(丙A15の3の3)によれば,H12は,有限会社J3から報酬を受領したことが認められるから,H12に関する人件費に企業活動に関する報酬が含まれていたことを否定するだけの反証がされているということはできる。しかし他方で,H11に関しては,上記主張を裏付ける証拠は提出されておらず,G25議員の陳述及び証言によっても,同人に関する具体的な業務実態は明らかではなく(なお,H11の上記陳述は,同議員の尋問後に提出され,反対尋問を経ないものであるから,たやすく採用することはできないことは前記のとおりである。),その人件費について企業活動に関する報酬が含まれていることを否定するだけの反証はない。
そうすると,H12については,政務調査活動以外に後援会活動に関する活動に従事しており,その人件費については,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないから,本件運用方針によれば,支出された人件費の2分の1を上限として政務調査費を充当することが許されるところ,政務調査費から充当された割合は,上記の範囲内であるから,同議員が同人の人件費について政務調査費から支出した部分について本件運用方針に反する違法なものであるということはできない。他方,H11については,政務調査活動以外にも,政党活動,後援会活動及び企業活動に従事しており,その人件費については,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,本件運用方針の趣旨を踏まえると,その6分の1を超えて政務調査費から支出したことについては違法であるというべきである。
26 G26議員(整理番号31(自16))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲34の1から3まで,丙A自16の1の1から丙A自16の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G26議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G26議員は,別紙4主張整理表「整理番号31」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人5名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の賃貸借契約書の賃借人欄には,「G26連合後援会会長H13」の記載がある。
また,前記各職員のうちH45及びH46の給与に関する全ての領収証並びにH47の領収証の一部には,G26議員の後援会が宛名ないし名宛人として記載されている。
ウ G26議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸借契約書には,G26議員の後援会会長が賃借人である旨記載されていることが認められるところ,同議員は,その経緯として,前記事務所は従前民間企業の旭川支店が置かれていた物件であり,3分の2に相当する事務所と3分の1に相当する支店長室に仕切られていたが,前者を後援会事務所及び政党事務所とする予定であったので,対外的には広いスペースを利用している後援会事務所の関係者を賃借人とすることとした旨陳述(丙A自16の4)している。上記陳述は,前記事務所の間取り図(丙A自16の3)により裏付けられた具体的なものであって,その信用性を排斥することは困難であるから,上記賃貸借契約書の記載をもって前記事務所で後援会活動のみが行われており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動のみに政務調査費が支出されたものと推認する一般的,外形的な事情があるとまではいえない。
そして,上記陳述及び間取り図によれば,前記事務所は賃借した一室が後援会事務所及び政党事務所と政務調査活動の事務所に分けられていることが認められるところ,本件運用方針によれば,政務調査事務所が後援会事務所等を兼ねている場合には,その使用領域により事務所費を按分することとされている。しかるところ,前記事務所は,間取り図によると全体の3分の1であると認められるから,前記事務所の事務所費として3分の1を政務調査費から支出したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
G26議員は,前記各職員が政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動に従事していた旨陳述するところ,前記各職員のうち一部の者の給与に関する領収証の宛名ないし名宛人がG26議員の後援会となっていることは前記認定のとおりである。この点に関して,同議員からその経緯について具体的な陳述等はないが,H45,H46及びH47が後援会活動のみに専従していたと認めるに足りず,上記3名の職員が後援会活動のみに従事しており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費に政務調査費が支出されたと推認させる一般的,外形的な事情があるとまでいうことはできない。
そして,前記各職員が,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動にも従事していたものと認められるから,前記各職員に係る人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があり,その業務実態により,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G26議員は,前記各職員の職務内容について,後援会活動の補助は行事を行う際の案内状の発送などであり,政党活動の補助は年に3日程度であったから,政務調査活動が占める割合が2分の1であったと主張し,これに沿う陳述(丙A自16の4)をするが,その業務実態について具体的な裏付けを欠くから,上記陳述をたやすく採用することができず,他に前記各職員の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記各職員の人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
27 G27議員(整理番号32(自17))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲35の1から4まで,丙A自17の1の1から丙A自17の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G27議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G27議員は,別紙4主張整理表「整理番号32」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の賃貸人は,G27議員が代表取締役を務める有限会社J5であった。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動も行われていた。
ウ G27議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸人は,G27議員が代表取締役を務める有限会社J5であると認められるが,本件運用方針においてそのことを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当することができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所有の場合の事務所賃料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段の事情がない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるからといってその事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違法であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するとまではいうことができないことは前記7(2)で説示したとおりである。そして,本件全証拠を検討してみても,有限会社J5が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたなどの特段の事情は見当たらないから,同議員が代表取締役を務める同会社が賃貸人であることを理由として,前記事務所の事務所費を政務調査費から充当することが違法である旨の原告の主張は採用することができない。
(3) ところで,前記事務所においては,政務調査活動以外にも政党活動及び後援会活動が行われていたことは前記認定のとおりであるところ,前記各職員もこれらの活動に従事していたと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び人件費については,政務調査活動に加えて,政党活動及び後援会活動に関わるものが混在し,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に関する経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することはできない。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G27議員は,前記事務所における後援会活動及び政党活動はいずれも集会の企画,運営,後援会便りの作成配布などの一時的なものであったから,前記事務所における活動の割合は政務調査活動がその2分の1を占めており,前記各職員は政務調査活動のみに従事しており,後援会活動や政党活動は議員の親族やボランティアが行った旨主張し,これに沿う陳述(丙A自17の3)をするが,上記陳述に係る前記事務所の使用実態や職員の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することはできず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な証拠はない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費及び前記各職員に係る人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
28 G28議員(整理番号33(フ3))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲36の1から5まで,丙Aフ3の1の1から丙Aフ3の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G28議員は,無所属の北海道議会議員である。
イ G28議員は,別紙4主張整理表「整理番号33」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所(本項においては,以下「札幌市内の事務所」という。)を設けたほか,北海道浦河郡I12町内及び北海道日高郡I13町内にも自身の事務所(以下,本項においては,順に「I12町内の事務所」,「I13町内の事務所」という。)を設けた。
G28議員は,同欄記載の各個人のうちH48をI13町内の事務所において,H49及びH50を札幌市内の事務所において,H51,H52及びH53をI12町内の事務所において,職員として雇用した。
ウ G28議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
G28議員は,無所属の議員であるところ,証拠(丙Aフ3の1の4)によれば,札幌市内の事務所は宿舎として利用されていないことが認められるほか,同所で後援会活動が行われたと認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると,札幌市内の事務所において,政務調査活動以外の活動がされており,その事務所費として支出したものに議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情は見当たらないから,同事務所に係る事務所費全額を政務調査費から支出することは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
ア 札幌市内の事務所では,専ら政務調査活動が行われていたことは前記のとおりであるから,同事務所で勤務していたH49及びH50の人件費について,その全額を政務調査費から充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
イ また,G28議員は,I12町内の事務所は主として後援会活動を行っていたが,H51,H52及びH53については,臨時職員として,同議員が地域の視察や意見交換,意見聴取等の際の運転業務などに従事した旨陳述(丙Aフ3の3)するところ,H51については平成22年11月分及び同年12月分の領収証(丙Aフ3の2の41,丙Aフ3の2の42),H52については平成22年7月分及び同年8月分の領収証(丙Aフ3の2の43,丙Aフ3の2の44。ただし書には「アルバイト代として」との記載がある。),H53については平成23年1月分から同年3月分までの領収証(丙Aフ3の2の45から丙Aフ3の2の47まで)が提出されていること,I12町内の事務所の事務所費については政務調査費から支出されていないことに照らすと,これらの職員が政務調査活動の補助業務として臨時で雇用された者である旨の上記陳述の信用性を排斥することは困難である。したがって,これらの職員についての人件費について,政務調査費から全額を支出したことについては,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
ウ 他方,H48は,I13町内の事務所において,政務調査活動以外に後援会活動にも従事していたことが認められる(丙Aフ3の3,弁論の全趣旨)から,同人の人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G28議員は,H48の職務内容のうち政務調査活動が7割を占めていた旨主張し,これに沿う陳述(丙Aフ3の3)をするが,その陳述に係るH48の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いているから,たやすく採用することができず,他に同人に関する人件費についての按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,H48の人件費として支出したもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであるから違法であるというべきである。
29 G29議員(整理番号34(公2))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲37の1,2,丙B2の1から丙B2の4まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G29議員は,公明党に所属する北海道議会議員である。
イ G29議員は,別紙4主張整理表「整理番号34」欄に対応する「摘要」欄記載の個人を職員として雇用した。
ウ G29議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 以上を前提に検討すると,前記職員の雇用契約書(丙B2の4)によれば,仕事内容として,パソコン入力,調査研究補助,図書検索と記載されていることが認められるから,同職員が政務調査活動に従事していたことがうかがわれるが,他方で,G29議員は,政党活動の補助者の賃金は政党支部から支払われ,後援会活動の補助者は都度臨時で雇い入れており,前記職員は政務調査活動に専従していたと主張しながら,これを裏付ける証拠や陳述書を提出するなど具体的な説明をしていない。このような事情に加え,G29議員が公明党に所属する北海道議会議員であることをも踏まえれば,前記職員が,政務調査活動以外にも,政党活動や後援会活動に従事し,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価に政務調査費から充当されたことを推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,この推認を妨げるような反証もない。
そして,前記職員の業務実態として,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他にこの認定を覆す的確な反証はない。
30 G30議員(整理番号35(民12))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲38の1から3まで,丙A民12の1の1から丙A民12の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G30議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G30議員は,別紙4主張整理表「整理番号35」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所及び駐車場を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を上記事務所において職員として雇用した。
G30議員は,平成22年4月1日,後援会活動業務については,前記事務所とは別の事務所で行う旨の異動届を提出した。
ウ G30議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 以上を前提として検討すると,G30議員は,後援会活動は自宅で行っており,政党活動については民主党北海道第10区総支部で行っているため,前記事務所では政務調査活動のみが行われており,また,前記事務所の職員も政務調査活動のみに専従していた旨陳述する(丙A民12の3)ところ,上記陳述は,「資金管理団体届出事項の異動届」(丙A民12の1の5)により裏付けられており,また,前記事務所で政党活動が行われ,政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動に係る経費が前記事務所の事務所費に含まれていることを推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
また,前記各職員の就業場所が前記事務所であったことからすると,前記各職員が政務調査活動以外の活動に従事していたと認めるに足りる的確な証拠もない。
そうすると,G30議員が前記事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費の全額について政務調査費から支出したことについては,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
31 G31議員(整理番号36(自18))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲39の1から3まで,丙A自18の1の1から丙A自18の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G31議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G31議員は,別紙4主張整理表「整理番号36」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動が行われ,前記各職員もこれらの活動に従事した。
ウ G31議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動や後援会活動も行われており,前記各職員もこれらの活動に従事したことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に関する経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により,政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費は,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対してG31議員は,後援会活動及び政党活動は必要に応じて年に数日程度しか行われず,特に政党活動は1年のうち数日程度の事務しか行われなかったから,前記事務所における政務調査活動の割合が75%であり,また,後援会活動の補助が行事に関する案内状の作成程度であり,後援会活動が行われるのは選挙活動が行われる3か月程度であったから,前記各職員の職務における政務調査活動の割合はいずれも40%であったと陳述する(丙A自18の3)が,いずれも事務所の使用実態及び職員の業務実態に関して具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであるから違法であるというべきである。
32 G32議員(整理番号37(自19))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲40の1から3まで,丙A自19の1の1から丙A自19の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G32議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G32議員は,別紙4主張整理表「整理番号37」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を同事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず後援会活動も行われていた。政党活動については,自由民主党北海道支部連合会及び自由民主党白老支部支部長宅で行われた。
ウ 前記各職員のうちH54は,常勤の職員であり,政務調査活動とともに少なくとも後援会活動に従事したが,H54の雇用契約書には,雇用者として「自由民主党北海道胆振総合振興局第一支部支部長G32」,従事する職務として「議員の政務調査活動に関する業務及び政党活動に関する補助」との記載がある。
前記各職員のうちH55の雇用契約書には,勤務時間の記載がなく,賃金欄には日額5000円との記載があるほか,雇用者として「北海道議会議員G32事務所代表G32」との記載や,従事する職務として「議員の政務調査活動に関する運転業務」との記載がある。
エ G32議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動のみならず後援会活動が行われていたと認められる(なお,G32議員は,政党活動については自由民主党北海道支部連合会及び自由民主党白老支部支部長宅で行っていた旨陳述しており(丙A自19の3。なお,同陳述書では,前記事務所では年に数日程度政党活動も行われたかのような部分もあるが,その直後に「この事務所を政党活動に使用することはありませんでした。」との記載があるから,上記部分は誤記と認める。),これに反する的確な証拠はない。)から,前記事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に関する経費も含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することは困難であるから,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G32議員は,前記事務所では政務調査活動のほか年に数日程度の後援会活動を行っていたので,前記事務所の使用実態としては政務調査活動が3分の2を占めていた旨陳述するが,前記事務所における使用実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に前記事務所の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所の事務所費として支出したもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 人件費について
ア 前記事務所では常勤職員としてH54が雇用されていたが,同人の雇用契約書には,政務調査活動以外にも政党活動に関する補助業務が含まれる旨記載され,また,「自由民主党北海道胆振総合振興局第一支部支部長」の肩書きでG32議員がH54を雇用していると認められるから,H54は,前記事務所で行われていた政務調査活動及び後援会活動のみならず,政党支部等で政党活動の補佐にも従事しており,その人件費には政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対し,G32議員は,H54は政党活動の補助業務には従事していない旨陳述するが,上記で指摘した雇用契約書の記載に照らしてたやすく採用することができない。
そして,H54に係る人件費については,その業務実態を踏まえて政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することができないから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるというべきところ,これに反する的確な反証はない。
イ 他方,H55に関して,G32議員は,政務調査活動のための運転手として臨時に雇用した者である旨陳述しているところ,雇用契約書の従事する職種の記載,勤務時間の記載はなく,賃金が日額で記載されていることからすると,上記陳述の信用性を排斥することはできない。
そうすると,H55の人件費について政務調査費から全額充当したことは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
33 G33議員(整理番号38(民13))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲41の1から3まで,丙A民13の1の1から丙A民13の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G33議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G33議員は,別紙4主張整理表「整理番号38」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所を賃借した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われた。なお,政党活動については,民主党北海道第10区総支部で行われた。
ウ G33議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われていたものと認められる(なお,政党活動については民主党北海道第10区総支部で行われたものと認められ,これに反する的確な証拠はない。)から,前記事務所に係る事務所費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があり,また,事務所の使用実態により,政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することが困難であるから,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費は,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G33議員は,後援会活動については空知農民政治力結集連絡会議で行っており,前記事務所で行われることは少なかったので,前記事務所では政務調査活動が5分の4を占めていた旨主張し,これに沿う陳述(丙A民13の3)をするが,前記事務所における後援会活動の実態に関する具体的な裏付けを欠いているから,たやすく採用することができず,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所の事務所費として支出したもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
34 G34議員(整理番号39(自20))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲42の1から4まで,丙A自20の1の1から丙A自20の5まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G34議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G34議員は,別紙4主張整理表「整理番号39」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「札幌市内の事務所」という。)を賃借したほか,北海道中川郡I14町内に事務所を設けた(本項においては,以下「I14町内の事務所」という。)。また,G34議員は,I14町内の事務所において同欄記載の各個人のうちH15及びH16を職員として雇用した(なお,同欄記載の各個人のうちH56及びH57の雇用実態の有無については後に検討する。)。
札幌市内の事務所の賃貸人は,G34議員の親族である。
H15及びH16は,I14町内の事務所で政務調査活動以外に政党活動及び後援会活動にも従事した。
ウ G34議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG34議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的証拠はない。なお,原告は,札幌市内の事務所の賃貸人が同議員の親族であることを問題視するようであるが,同議員が同事務所の賃貸人と生計を一にするものとは認められないから,本件運用方針に反するものとはいえない。
しかるところ,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃料については,政務調査活動の拠点として使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるものとされているところ,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではないが,宿舎としての事務所の使用実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)のとおりである。そうすると,同議員が札幌市内の事務所に係る事務所費に関してその3分の1を政務調査費から支出したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとは認められない。
(3) 人件費について
ア H15及びH16の人件費(同人らについて生じたと考えられる社会保険料及び労働保険料(別紙4主張整理表「整理番号39」欄に対応する「摘要」欄記載のもの)を含む。)
上記認定事実によれば,H15及びH16は,I14町内の事務所で政務調査活動以外に後援会活動及び政党活動に従事していたことが認められることからすると,同人らの人件費については,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価が混在しており,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することはできないから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G34議員は,上記2名の職員について,後援会活動の補助として,新年交礼会や親睦のためのパークゴルフ大会の運営などに従事し,政党活動の補助として,ポスターや広報誌の配布,政党支部にかかる党員名簿の整理や会計事務などに従事したのであるから,上記2名の活動実態として政務調査活動が2分の1であった旨主張し,これに沿う陳述(丙A自20の5)をするが,前記各職員の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,上記2名の職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
イ H56及びH57の人件費について
原告は,上記2名の職員について雇用実態が明らかではない旨主張するので,以下検討する。
確かに,証拠(甲42の4)によれば,G34議員が北海道議会議長に対して提出した雇用状況報告書には,上記2名に関する記載がないことが認められる。しかし,証拠(丙A自20の2の3から丙A自20の2の6まで)によれば,上記2名の職員は,資料整理や自動車運転業務などの短期間の業務に対する対価として,平成22年9月と同年12月の2回にわたって,それぞれ月額3万円ないし5万円が支払われていると認められるところ,G34議員は,これらの職員について,忙しい時に臨時に雇用した者であり,政務調査活動の補助のみに従事してもらった旨の陳述をしており,支払われた賃金額や領収証に記載された業務内容に照らすと,上記陳述の信用性を排斥することは困難である。
そうすると,上記2名の職員について雇用実態がなく,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない人件費に政務調査費を充当したことを推認させる一般的,外形的な事情があるということはできないし,また,同人らが政務調査活動以外の活動にも従事しており,政務調査活動以外の活動に係る対価に政務調査費を充当したことを推認させる一般的,外形的な事情があるとも認め難いから,同人らの人件費に対して政務調査費から全額が支出されたことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
35 G35議員(整理番号40(民14))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲43の1から4まで,丙A民14の1の1から丙A民14の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G35議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G35議員は,別紙4主張整理表「整理番号40」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に各事務所(本項においては,その所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「士別市内の事務所」という。)を賃借し(なお,士別市内の事務所は,同議員のほか,H58士別後援会,民主党北海道第6区総支部が共同して賃借した。),また,同欄に記載のある個人1名を士別市内の事務所において職員として雇用した。
ウ 士別市内の事務所の賃貸人は,G35議員が取締役を務める株式会社J6であった。士別市内の事務所は,H58衆議院議員の後援会事務所,民主党北海道第6区総支部の事務所との兼用であり,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われた(なお,前記職員が政務調査活動及び後援会活動以外に政党活動にも従事したことについては当事者間に争いがある。)。
他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
エ G35議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG35議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2(3)で説示したとおりである。
しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち2分の1について政務調査費から支出している。したがって,同事務所の事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 士別市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,士別市内の事務所の賃貸人は,G35議員が取締役を務める株式会社J6であると認められるが,本件運用方針においてそのことを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当することができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所有の場合の事務所賃借料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段の事情がない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるからといって,その事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違法であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するということができないことは前記7(2)で説示したとおりである。そして,本件全証拠を検討してみても,株式会社J6が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたなどの特段の事情は見当たらないから,同議員が取締役を務める会社が賃貸人であることを理由として,前記事務所の事務所費に政務調査費を充当することが違法である旨の原告の主張は採用することができない。
ところで,上記認定事実によれば,士別市内の事務所は,衆議院議員の後援会事務所及び民主党北海道第6区総支部の事務所として兼用されたことが認められるところ,G35議員は,それぞれの各業務の量やスペース等を考慮し,H58衆議院議員,民主党北海道第6区総支部及びG35議員との間で,1室の賃料月額5万円のうち2万円を同議員が支払うことを約したが,同議員が負担する2分の1を同議員の後援会が負担することとして,残額を政務調査費に充当した旨の陳述をする。G35議員が陳述するところによっても,H58衆議院議員の後援会事務所,民主党北海道第6区総支部及びG35議員の政務調査事務所のそれぞれの使用実態に関して裏付けを欠いていると指摘せざるを得ないが,それぞれの使用実態を明確に区分することができない場合であっても,本件運用方針の趣旨に照らせば,事務所全体の賃料のうち4分の1を上限として政務調査費を充当することは違法であるとまではいえない。しかるところ,G35議員は,士別市内の事務所に係る事務所費のうち20%を政務調査費から支出したから,結局のところ,その支出が本件運用方針に反するものであるとまではいえない。
(4) 人件費について
士別市内の事務所では,政務調査活動のみならず,H58衆議院議員の後援会活動,政党活動及び後援会活動が行われていたことは前記のとおりであるから,同事務所に勤務していた前記職員がH58衆議院議員の後援会活動を除くこれらの活動に従事しており,前記職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G35議員は,前記職員は政務調査活動以外に後援会活動に従事し,その業務実態として政務調査活動が5分の3を占めていた旨主張し,これに沿う陳述をするが,政務調査活動に従事する事務所の一室の一区画で同議員が所属する民主党の政党支部があることからすると,同職員が政党活動に関する業務に従事しておらず,そのための対価が前記職員の人件費に含まれることについて的確な反証があるとはいえず,また,それぞれの業務実態に関して具体的な裏付けを欠くから,上記陳述はたやすく採用することができず,他に前記職員の人件費の按分割合に関する的確は反証はない。
したがって,前記職員に関する人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費から充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
36 G36議員(整理番号41(自21))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲44の1から3まで,丙A自21の1の1から丙A自21の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G36議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G36議員は,別紙4主張整理表「整理番号41」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に事務所(以下,便宜上,本項において「政務調査事務所」という。)を賃借し,同欄に記載のある個人8名を前記事務所において職員として雇用した。
後援会活動は,北海道紋別市I15町n丁目o番p号所在の事務所で行われ,政党活動については,同市I16町q丁目r番s号所在の自由民主党紋別支部で行われた。
ウ 前記各職員のうちH59及びH60は,常勤の職員であったが,H59の雇用契約書には,仕事内容として「政務調査に係る調査補助及び後援会関係事務」と記載され,H60の雇用契約書には,仕事内容として「政務調査に係る調査補助及び関係書類の作成」と記載されている。
前記各職員のうちH59は,政務調査活動のみならず後援会活動にも従事した。
なお,同議員は,上記職員2名を除く6名の職員に関して政務調査業務に関する実績表(勤務時間数,うち政務調査業務に従事した時間数,政務調査業務内容が記載されている。)を作成した上,勤務実績に時給800円で換算した金額を人件費として上記6名の職員に支給した。
エ G36議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,G36議員が雇用したH59及びH60を除く6名の職員のうち,H61以外の5名については,臨時の職員であり,また,それぞれの職員が従事した政務調査活動に関する実績表が作成され,それに応じた人件費が支払われていること,上記実績表には,勤務時間数,政務調査活動に従事した時間数,政策調査業務内容が記載されていることが認められる。そして,G36議員は,これらの臨時職員について,H61を除く5名の臨時職員については政務調査活動に従事してもらい,H61については1か月の勤務時間合計49時間のうち36時間は政務調査活動に,13時間については個人的な用事のために送迎してもらった旨陳述する。上記陳述は,実績表に基づいた具体的なものであり,その信用性を排斥することはできない。
また,上記認定事実によれば,常勤職員であるH59の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査に係る調査補助及び後援会関係事務」と,同じく常勤職員であるH60の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査に係る調査補助及び関係書類の作成」と記載されている。そして,G36議員は,H59については政務調査活動のほか必要に応じて後援会事務所で後援会活動の補助を行っており,H60については政務調査活動の補助に専従した旨陳述するところ,上記陳述は,上記の雇用契約書の仕事内容欄の記載と整合する具体的なものである。そして,上記認定事実によれば,同議員については,政務調査事務所とは別に同議員に係る後援会事務所及び政党活動に係る民主党紋別支部の事務所がそれぞれ設けられていることが認められることからすると,政務調査事務所で後援会活動や政党活動が行われ,事務所費として支出されたものには政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
しかるところ,G36議員は,H59については後援会活動を行っていたことを踏まえてその人件費として支出されたもののうち2分の1について政務調査費を充当し,H61は勤務実績に基づいて政務調査活動に係る割合を按分し,その余の職員及び政務調査事務所の事務所費についてはその全額を政務調査費から支出しているところ,これらの支出は,上記で説示したところによれば,本件運用方針に反する違法なものであるとは認められない。
37 G37議員(整理番号42(民15))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲45の1から3まで,丙A民15の1の1から丙A民15の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G37議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G37議員は,別紙4主張整理表「整理番号42」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,以下,それぞれ「札幌市内の事務所」,「旭川市内の事務所」という。)を設け,また,同欄に記載のある個人6名を旭川市内の事務所において職員として雇用した。
札幌市内の事務所の所有者は,G37議員と生計を一にするG37議員の妻であり,同議員は,同事務所を宿舎としても利用していた。他方,旭川市内の事務所には「G37政務事務所」の看板が掲げられており,同事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われた。なお,政党活動については,民主党北海道第6区総支部で行われた。
ウ G37議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る管理運営費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG37議員が宿舎としても利用していることが認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点として実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
原告は,札幌市内の事務所の所有者がG37議員の妻であることを理由として,同事務所の管理運営費に政務調査費を充当することは違法である旨主張するが,本件運用方針においては,生計を一にする親族所有の場合の事務所賃料に政務調査費を充当することはできないが,管理運営費については政務調査費を充当することができる旨定めているから,宿舎としても利用されている札幌市内の事務所の管理運営費に政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反するものであるとまではいえない。
そして,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,G37議員の陳述(丙A民15の3)するところによっても,札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は明らかではないが,宿舎としての使用実態が政務活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2(3)で説示したとおりである。
しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る管理運営費のうち40%について政務調査費から支出している。したがって,札幌市内の事務所に係る管理運営費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法というべきである。
(3) 旭川市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
前記認定事実によれば,旭川市内の事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動が行われていたことが認められる(なお,政党活動については,民主党北海道第6区総支部で行われており,これに反する的確な証拠はない。)から,同事務所に勤務する6名の職員もこれらの活動に従事しているものと推認することができ,同事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があり,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分することができない。したがって,的確な反証がない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G37議員は,後援会活動はほとんど自宅においてされていたが,「G37政務事務所」の看板が設置されていたことに鑑みて政務調査活動の按分割合を5分の4とした旨主張し,これに沿う陳述をするが,事務所における使用実態に関する具体的な裏付けを欠いており,上記陳述をたやすく採用することができない。
したがって,旭川市内の事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
38 G38議員(整理番号43(民16))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲46の1から4まで,丙A民16の1の1から丙A民16の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G38議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G38議員は,別紙4主張整理表「整理番号43」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「I17町内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある各個人のうちH62を札幌市内の事務所において,H63及びH64をI17町内の事務所において,それぞれ職員として雇用した。
I17町内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,同事務所に勤務するH63及びH64は,これらの活動に従事した。他方,札幌市内の事務所は,宿舎としても利用されたほか,後援会活動にも利用された。なお,政党活動については,民主党北海道12区総支部で行われた。
ウ G38議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG38議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動としての拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員は,各月ごとにその日数に対する定例会等開催日数を控除した後の日数を按分した上でその政務調査活動の割合を約64%とした旨陳述する(丙A民16の3)が,具体的な裏付けを欠いており,採用することは困難である。そうすると,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動として使用した日数は明らかではないことになるが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2(3)で説示したとおりである。
しかるところ,G38議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち約64%について政務調査費から支出している。したがって,同事務所費のうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって,違法であるというべきである。
(3) H62の人件費について
前記認定事実によれば,宿舎としても利用された札幌市内の事務所では,政務調査活動及び後援会活動にも利用されたことが認められる。そうすると,同事務所に勤務するH62の人件費については,政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係るものが含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があると認められる(なお,政党活動が同事務所で行われたとうかがわせる的確な証拠はない。)。そして,職員の業務実態において,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G38議員は,札幌市内の事務所における後援会活動はごくわずかな時間であり,H62は政務調査活動に専従していた旨陳述するが,その陳述するところの業務実態に関する具体的な裏付けを欠いているのでたやすく採用することができず,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,H62に係る人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(4) I17町内の事務所に係る事務所費及び人件費について
前記認定事実によれば,I17町内の事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われており,同事務所に勤務するH63及びH64も,これらの活動に従事していたものと認められる(なお,政党活動については,民主党北海道12区総支部で行われていたものと認められ,同事務所で政党活動が行われたことをうかがわせる的確な証拠はない。)。
そうすると,I17町内の事務所費及び前記2名の職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に関する経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があり,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により,政務調査活動に係る経費や対価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分することができないものと認められるが,本件運用方針によれば,事務所費及び人件費として支出されたもののうち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされているところ,G38議員がした政務調査費の支出は,いずれもこの範囲内のものであるから,I17町内の事務所費及び前記2名の職員の人件費として政務調査費から充当したことについて,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
39 G39議員(整理番号44(自22))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲47の1から6まで,丙A自22の1の1から丙A自22の3まで,証人G39)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G39議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G39議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表「整理番号44」欄に対応する「摘要」記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,それぞれ,枝番1を「札幌市内の事務所」,枝番2を「I3町内の事務所1」,枝番3を「I3町内の事務所2」,枝番4を「I3町内の事務所3」という。)を賃借した。
また,G39議員は,政党活動については同議員の自宅に,後援会活動については後援会会長の自宅に,それぞれ拠点を置いて活動し,政務調査事務所として,平成22年7月31日までI3町内の事務所1を賃借したが,同事務所が手狭であったため,同年8月1日から平成23年1月14日までI3町内の事務所2を賃借した。しかし,I3町内の事務所2は利便性が悪く,また,平成23年4月の統一地方選挙を控えており,後援会活動も行う事務所として,同年1月15日以降,I3町内の事務所3を賃借した。そして,I3町内の事務所3においては,政務調査活動及び後援会活動が行われた。
ウ G39議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表「整理番号44」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人3名を職員として雇用したが,前記各職員のうちH65及びH66は,I3町内の事務所1ないし同3で勤務し,H67は,I3町内の事務所2及び同3で勤務した。なお,H67の勤務時間は1日3時間とされており,同人は,午前中は政務調査に係る補助業務に従事し,午後は後援会活動に従事することがあった。
エ G39議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区から選出された議員であるG39議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションについては,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員が陳述する(丙A自22の3)ところによっても,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当である。しかるところ,同議員が札幌市内の事務所に係る事務所費として政務調査費から支出した額は,上記の範囲内であるから,その支出は本件運用方針に反するものであるとはいえない。
(3) I3町内の事務所1ないし同3に係る事務所費について
ア I3町内の事務所1及び同2の事務所費について
前記認定事実によれば,政党活動及び後援会活動はI3町内の事務所1及び同2とは別の場所をそれぞれ拠点として行われていたことが認められることに加え,I3町内の事務所2からI3町内の事務所3に移転した経緯について,G39議員が具体的に証言及び陳述(以下,この項において「証言等」という。)していることからすると,I3町内の事務所1及び同2において政党活動及び後援会活動が行われており,議員の政務調査活動と合理的な関連性のない上記各事務所の事務所費に政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情の存在を認めることはできない。したがって,これら2つの事務所に係る事務所費全額について政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
イ I3町内の事務所3に係る事務所費について
前記認定事実によれば,I3町内の事務所3において政務調査活動及び後援会活動が行われていたと認められるから,同事務所に係る事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるというべきところ,事務所費について,その使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することができない場合であっても,本件運用方針によれば2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされており,同議員がI3町内の事務所3に係る事務所費として政務調査費から支出した額は,上記の範囲内であるから,その支出は本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(4) 人件費について
前記各職員は,G39議員の事務所がI3町内の事務所3に移転する前から雇用されていたものであるが,移転前のI3町内の事務所1及び同2においては政務調査活動以外の活動が行われていなかったことは前記認定のとおりである。もっとも,I3町内の事務所3では,政務調査活動に加えて後援会活動が行われることになったことは前記認定のとおりである。しかるところ,H67を除く他2名の職員が事務所の移転に伴って職務内容に後援会活動の業務が当然に加わったとまで推認することができず,また,G39議員は,H67は午前中の3時間は政務調査業務に専従し,午後は後援会活動の手伝いをしてもらったことがあるが,それ以外の職員2名は政務調査業務に専従し,後援会活動は後援会の役員が行っていた旨の具体的な証言等をしており,この証言等の信用性を排斥するに足りる的確な証拠もない。
そうとすれば,これらの職員に係る人件費の全額を政務調査費から充当したことは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
40 G40議員(整理番号45(民17))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲48の1から3まで,丙A民17の1の1から丙A民17の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G40議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G40議員は,別紙4主張整理表「整理番号45」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の賃貸借契約書には,賃借人欄に「G40後援会連合会代表G40」との記載があるが,一方,G40議員とG40後援会連合会会計責任者との間には,「G40後援会事務所に関する協定書」が作成されており,同書には,前記事務所を政務調査活動にも使用する旨の記載がある。
前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職員もこれに従事した。なお,政党活動については,北海道電力労働組合政治連盟の事務所で行われた。
ウ G40議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所の賃貸借契約書の賃借人の肩書は,G40議員の後援会の代表であることが認められるが,G40議員と同後援会の会計責任者との間で交わされた覚書の内容によれば,前記事務所が後援会活動のみに利用されていたと認めることはできない。
そして,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われたことは前記認定のとおりであるところ,G40議員は,前記事務所の床面積のうち約7割を政務調査事務所部分が占めていたことを根拠として,事務所費及び人件費の7割に政務調査費を支出した旨主張し,後援会事務所の使用区分が示された平面図を添付して,同旨の陳述(丙A民17の3)をする。しかして,上記陳述及び平面図によると,前記事務所では,政務調査事務所と後援会事務所の使用区分が明確に区分されているから,政務調査事務所に係る部分を全体で按分して政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反するものではなく,その按分割合は,前記平面図によると全体の7割が政務調査事務所であると認められるから,事務所費として支出したもののうち7割について政務調査費を支出したとしても,違法であるとまではいえない(ただし,上記按分割合によって前記事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
他方,人件費については,使用区分に応じて政務調査に係る業務量が定まるものではなく,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とをその業務実態により明確に区分することができないから,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他にこれに反する的確な反証はない。
41 G41議員(整理番号46(民18))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲49の1から3まで,丙A民18の1の1から丙A民18の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G41議員は,民主党から推薦を受け,選出された北海道議会議員である。
イ G41議員は,別紙4主張整理表「整理番号46」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事した。
ウ G41議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,G41議員は,政党に所属しない北海道議会議員であると認められるから,前記事務所で政党活動が行われていたと認めることはできず,他にこの認定に反する的確な証拠はない。
しかるところ,前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われていたところ,同議員は,活動実態により明確に区分することができない按分割合率に従って,事務所費及び人件費として支出したもののうち2分の1を政務調査費から充当した旨陳述しており,この取扱いは,本件運用方針に反するものとはいえないから,G41議員のした政務調査費の支出は違法ではないというべきである。
42 G42議員(整理番号47(自23))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲50の1から4まで,丙A自23の1の1から丙A自23の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G42議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G42議員は,別紙4主張整理表「整理番号47」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「I2町内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名をI2町内の事務所において職員として雇用した。前記各職員のうち,H68及びH69は,常勤職員であり,雇用契約書の仕事の内容欄には「政務調査に係る活動補助及び後援会活動の補助」と記載されている。他方,H70は,非常勤の職員であり,雇用契約書の仕事の内容欄には「政務調査に係る運転業務及び活動の補助」と記載されている。
ウ 札幌市内の事務所は宿舎としても利用された。
I2町内の事務所には駐車場が付属されており,6台分の駐車場のうち4台分が来客専用,2台分が来客兼用であり,同事務所の賃料の内訳は,建物の賃料が月額8万円,駐車場の賃料が月額3万円であった。I2町内の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われた。
エ G42議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG42議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,G42議員の陳述(丙A自23の3)するところによっても,同事務所が政務調査活動の拠点として使用された日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)で説示したとおりである。
しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち3分の1を政務調査費から支出したにとどまるから,同議員による支出は,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって札幌市内の事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
(3) I2町内の事務所に係る事務所費及び駐車場の賃借料について
前記認定事実によれば,I2町内の事務所では,政務調査活動以外にも政党活動及び後援会活動が行われたことが認められるから,同事務所に係る事務所費及び駐車場の賃借料として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,また,その使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することが困難である。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち事務所費及び来客専用の駐車場の賃借料については3分の1を超えて,来客兼用の駐車場については6分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G42議員は,I2町内の事務所における使用実態として,政務調査活動が2分の1,後援会活動及び政党活動がそれぞれ4分の1であったから,同事務所に係る事務所費及び来客専用の駐車場に係る賃借料として支出したもののうち2分の1,来客兼用の駐車場の賃借料として支出したもののうち4分の1にそれぞれ政務調査費を支出した旨主張し,これに沿う陳述をするが,同議員が陳述するところの同事務所の使用実態に関する具体的な裏付けはなく,たやすく採用することができず,他に事務所費及び駐車場の賃借料の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,事務所費及び来客専用の駐車場の賃借料として支出したもののうち3分の1を超えて,来客兼用の駐車場の賃借料として支出したものののうち6分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(4) 人件費について
前記認定事実によれば,前記各職員は,I2町内の事務所において,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動に従事していたものと認められるから,これらの職員に係る人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
この点について,G42議員は,H68は後援会活動及び政党活動の補助にも従事し,政務調査活動の割合が2分の1であった,H70は非常勤の職員で政務調査活動の補助に専従した,H69は非常勤の職員であったが後援会活動及び政党活動の補助にも従事し,政務調査活動の割合が3分の1であった旨主張し,これに沿う陳述をする。G42議員の陳述する各職員の業務実態については具体的な裏付けに乏しいと指摘せざるを得ないが,H70については,非常勤の職員であり,雇用契約書の仕事の内容欄にも政務調査活動に係る運転業務等が記載されていることから,上記陳述の信用性を排斥することはできない。
そうすると,H70については,政務調査活動の補助に専従していたものと認められるから,同人に関する人件費全額について政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであるとまではいえない。他方,H68の人件費(社会保険料を含む。)及びH69の人件費については,その業務実態を踏まえて政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,G42議員の上記陳述はたやすく採用することはできず,他に上記2名の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
43 G43議員(整理番号48(民19))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲51の1から4まで,乙12,乙17,丙A民19の1の1から丙A民19の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G43議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G43議員は,別紙4主張整理表「整理番号48」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「函館市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を函館市内の事務所において職員として雇用した。前記職員は,統一地方選挙を迎えて,平成23年1月から同年3月までの間は後援会活動にも従事した。
ウ 札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。また,政党活動については,民主党函館支部事務所を拠点として行われた(なお,函館市内の事務所における使用実態及び活動実態については後記のとおりである。)。
エ G43議員は,函館市内の事務所の近隣に駐車場を賃借し,これを函館市内の事務所の来客兼用の駐車場として利用した。
オ G43議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出(事務所の支出については,前記駐車場に関する費用を含む。)し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG43議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述する(丙A民19の3)ところによっても,使用した実績については明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2(3)で説示したとおりである。しかるところ,G43議員が札幌市内の事務所に係る事務所費としてした政務調査費の支出はこの範囲内のものであるから,上記支出は違法ではないというべきである(ただし,上記按分割合によって札幌市内の事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
(3) 函館市内の事務所に係る事務所費について
前記認定事実によれば,政党活動については,民主党函館支部事務所で行われていたものと認められるから,函館市内の事務所に係る事務所費に議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。また,後援会活動については,G43議員の陳述(丙A民19の3)によれば,平成22年4月から同年12月までは同議員の自宅で支援団体の関係者等の手伝いにより後援会活動を行っていたが,平成23年4月の統一地方選挙を迎えるに当たり,後援会活動が増えたため,同年1月から函館市内に後援会事務所を賃借した旨陳述するところ,同陳述は具体的でその信用性を排斥することは困難であるから,函館市内の事務所に係る事務所費に議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情の存在を認めることはできない。
そうすると,函館市内の事務所に係る事務所費の全額について政務調査費から充当することは本件運用方針に反するものとはいえず,また,同事務所の来客兼用の駐車場の賃借料についても,本件運用方針によれば2分の1を上限として政務調査費を充当することが許されるから,同議員が上記駐車場の賃借料の2分の1に政務調査費を充当したことについては,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(4) 人件費について
G43議員は,前記職員は,平成22年4月から同年12月までは政務調査活動に専従したが,平成23年1月から同年3月までは選挙前のため後援会活動業務が多忙となり,午前中1時間程度後援会事務所に出向いて後援会活動にも従事した旨陳述しているところ,函館市内の事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われたと推認させる事情がないことは前記で説示したとおりであり,また,統一地方選挙前に後援会活動が多忙となったことを理由として政務調査活動の補助に専従していた前記職員が後援会事務所で短期間手伝ってもらった旨の上記陳述は具体的であり,その信用性を排斥することは困難である。もっとも,上記陳述のうち,前記職員が平成23年1月から同年3月までの間の午前中1時間程度後援会事務所で勤務したとする部分については,その活動実態に関する具体的な裏付けがないため,たやすく採用することができない。そうすると,上記期間における前記職員の人件費については,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価が混在しており,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,上記期間の按分割合については,本件運用方針によれば2分の1を上限として政務調査費を充当することができることになるところ,他にこれと異なる按分割合に関する的確な反証はない。したがって,前記職員に係る人件費については,8分の7を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
44 G44議員(整理番号49(民20))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲52の1から6まで,丙A民20の1の1から丙A民20の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G44議員は,民主党から推薦を受け,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G44議員は,別紙4主張整理表「整理番号49」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,この事務所のことを「札幌市内の事務所」という。)を賃借したほか,北海道河東郡I4町内にも事務所(本項においては,この事務所のことを「I4町内の事務所」という。)を設け,同事務所の来客専用の駐車場として同欄記載の住所地に駐車場(本項においては,この駐車場のことを「I4町内の駐車場」という。)を賃借した。また,G44議員は,同欄に記載のある個人4名をI4町内の事務所において職員として雇用した。
札幌市内の事務所の賃貸人は,G44議員の長女であり,I4町内の駐車場の賃貸人は,同議員の義理の兄である。
ウ 札幌市内の事務所は宿舎としても利用された。
I4町内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われており,前記各職員のうちH71及びH72も,これらの活動に従事した。なお,後援会活動は,同事務所の隣地にあるG44議員の自宅でも行われていた。
エ G44議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出(事務所の支出については,前記駐車場に関する費用を含む。)し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所の賃貸人は,G44議員の長女であることが認められるが,証拠(丙A民20の1の7,丙A民20の3)によれば,同人は夫及び子とともに台湾で居住しているものと認められ,G44議員と長女が生計を一にする親族に当たると認めることはできないから,札幌市内の事務所の賃借料に政務調査費を充当することは本件運用方針に反するものであるとはいえない。
ところで,上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG44議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点として実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,G44議員の陳述するところによっても,その使用した実績は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは、前記2(3)で説示したとおりである。そして,G44議員が札幌市内の事務所に係る事務所費として支出した政務調査費はこの範囲内のものであるから,上記支出は違法であるとはいえない。
(3) I4町内の駐車場に係る賃借料について
上記認定事実によれば,I4町内の駐車場の賃貸人は,G44議員の義理の兄であることが認められるところ,証拠(丙A民20の1の1)によれば,同人は,北海道野付郡I18町内に居住していることが認められ,同人とG44議員は生計を一にする親族に当たるものとは認められないから,I4町内の駐車場に係る賃借料について政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものとはいえない。
しかして,上記認定事実によれば,I4町内の事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動も行われていたことが認められることからすると,同駐車場についても,政務調査活動及び後援会活動に関係する来客用の駐車場として利用されていたものと推認されるから,上記駐車場の賃借料については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することは困難であるから,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
この点について,G44議員は,後援会活動は隣地にある同議員の自宅で大半が行われていたから,前記駐車場の利用のうち政務調査活動に係るものが8割であった旨主張し,これに沿う陳述(丙A民20の3)をするが,使用実態について具体的な裏付けを欠くものであって,たやすく採用することはできず,他に駐車場の賃借料の按分割合に関する的確な反証はない。 したがって,前記駐車場の賃借料として支出したもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(4) 人件費について
ア H71及びH72の人件費(労働保険料を含む。以下,本項において同じ。)について
上記認定事実によれば,H71及びH72は,いずれも政務調査活動及び後援会活動に従事していたことが認められるから,同人らの人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるといえ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することが困難であるから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G44議員は,H71については政務調査活動の事務補助に従事したが,事務所にかかってくる後援者からの電話応対に時々応じたことから,同人の職務のうち政務調査活動が占める割合とし,H72については,基本的にはH71と同じ活動実態であるが,平成23年1月頃以降は統一地方選挙のために別途賃借していた後援会事務所に出向いて後援会活動に従事する割合が増えたため,同年2月の政務調査活動の割合を8割,同年3月の政務調査活動の割合を5割とした旨主張し,これに沿う陳述をしている。確かに,上記の陳述のうち,統一地方選挙を迎えるに当たり,H72が後援会活動に従事する割合が増えた旨の陳述は具体的であるけれども,H71の業務実態を含めて,政務調査活動の補助業務が9割程度を占めていた旨の業務実態に関する裏付けに乏しいことを指摘せざるを得ず,上記陳述を採用することは困難であり,他に上記2名の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,上記2名の職員に関する人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
イ H73及びH74の人件費について
G44議員は,H73及びH74については,不定期に政務調査活動の自動車運転業務に従事した旨主張し,これに沿う陳述をするところ,上記2名の職員に係る人件費の領収書(丙A民20の2の9から丙A民20の2の21まで)によれば,上記2名は,自動車運転業務に従事したことの対価として人件費が支払われていることが認められるから,上記陳述の信用性を排斥することはできない。
そうすると,上記2名の職員の人件費全額について政務調査費から支出したことについては,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
45 G45議員(整理番号50(自24))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲53の1から3まで,丙A自24の1の1から丙A自24の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G45議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G45議員は,別紙4主張整理表「整理番号50」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われており,前記各職員は,いずれもこれらの活動に従事した。なお,前記事務所は,政党支部として登録されているが,政党活動については,函館市内の自由民主党函館支部で行われた。
ウ G45議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われ,これらの活動に前記各職員が従事したことが認められるが,政党活動については自由民主党函館支部で行われたものと認められるから,事務所費及び人件費として支出されたものに政党活動により生じた経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまでは認めることはできない。
そうすると,前記事務所の事務所費及び前記事務所で雇用された職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性のない後援会活動に係る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるといえる。もっとも,本件運用方針によれば,政務調査活動と後援会活動を事務所の使用実態や職員の業務実態により明確に区別することができない場合であっても,その2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされているところ,G45議員が事務所費及び人件費として政務調査費から充当した割合は上記の範囲内であるから,その政務調査費の支出は,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
46 G46議員(整理番号51(民21))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲54の1から3まで,丙A民21の1の1から丙A民21の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G46議員は,民主党から推薦を受け,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G46議員は,別紙4主張整理表「整理番号51」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「網走市内の事務所」という。)及び網走市内の事務所の駐車場を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を網走市内の事務所において職員として雇用した。なお,札幌市内の事務所は,G46議員の宿舎としても利用された。
ウ G46議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出(なお,網走市内の事務所には駐車場の賃借料を含む。)し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG46議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述する(丙A民21の3)ところによっても,その使用した日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2(3)で説示したとおりである。そして,G46議員が札幌市内の事務所に係る事務所費について政務調査費から充当した金額は上記の範囲内のものであるから,その支出は,本件運用方針に反する違法なものとはいえない。
(3) 網走市内の事務所に係る事務所費及び人件費(労働保険料及び社会保険料を含む。以下,本項において同じ。)について
前記認定事実によれば,G46議員は,民主党から推薦を受けて選出された議員であるが,民主党には所属していないから,網走市内の事務所で政党活動が行われたと認めることは困難である。また,同議員は,平成22年1月に当選し,網走市内の事務所では平成22年度期間中は後援会活動はほとんど行っていなかったと主張し,同旨の陳述(丙A民21の3)をするところ,上記陳述の信用性を排斥するに足りる具体的な証拠はないから,網走市内の事務所に係る事務所費及び同事務所で雇用された前記各職員の人件費には,政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情の存在を認めることはできない。
そうすると,網走市内の事務所に係る事務所費及び人件費について,政務調査費から全額充当したことは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
47 G47議員(整理番号52(民22))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲55の1から4まで,丙A民22の1の1から丙A民22の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G47議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G47議員は,別紙4主張整理表「整理番号52」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所を賃借し,同欄に記載のある個人2名を上記各事務所において職員として雇用した。
前記各事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われていた。
ウ G47議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 前記各事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,前記各事務所では,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動がされていたことが認められるから,前記各事務所に係る事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G47議員は,後援会活動はほぼ別に設けられた民主党北海道会議室で行っており,政党活動は民主党豊平支部で行っており,前記各事務所では政党活動は月1回(1時間程度)の頻度で定例幹事長会議の開催等が行われたにすぎず,前記各事務所の政務調査活動は9割を占めていた旨主張し,同旨の陳述(丙A民22の3)をするが,同議員の陳述するところの前記各事務所の使用実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に前記各事務所の事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記各事務所に係る事務所費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 人件費について
前記各事務所では,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動も行われていたことは前記認定のとおりであるから,前記各事務所に職員として雇用されていたH75及びH76の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対して,G47議員は,前記各事務所における政党活動については,民主党豊平支部の幹事長及び会計担当副幹事長などが行い,後援会活動の補助については,後援会会長,幹事長及び庶務担当副幹事長が行い,いずれも通常の勤務時間外に行っていたので,H75は,政務調査活動の事務の補助に専従していたこと,また,H76については,年4回の定例議会ごとに発行する道議会報告を配布するために自動車運転業務に従事していたと主張し,これに沿う陳述をする。上記陳述は,後援会活動及び政党活動の補助に従事した具体的な職員が挙げられていることに加えて,H75が月額8万円を「アルバイト代」名目で受領した旨の領収証(丙A民22の2の1から丙A民22の2の12まで)が作成されており,給与の額及び支払名目に照らすと同人が短時間の業務に専従していたことがうかがわれること,また,H76が平成22年4月,同年7月,同年10月,同年12月に「車両借上げ料,アルバイト代」名目でそれぞれ5万円を,同年5月に「札幌~I7~I19~札幌 運転アルバイト代(ガソリン代を含む。)」の名目で1万円を受領した旨の領収証(丙A民22の2の13から17まで)が作成されており,これらの領収証の記載は,G47議員が年4回の定例議会ごとに道議会報告を配布するためにH76を自動車運転手として雇った旨の上記陳述に沿うものであることからして,上記陳述の信用性を排斥することはできない。
そうすると,H75及びH76に係る人件費については政務調査活動の補助業務に係る対価として支払われたものと認められるから,その人件費について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
48 G48議員(整理番号53(民23))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲56の1から3まで,丙A民23の1の1から丙A民23の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G48議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。なお,同議員は,平成23年4月19日をもって北海道議会議員の任期を満了した。
イ G48議員は,別紙4主張整理表「整理番号53」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所の所在する建物の賃借人は,G48議員と民主党北広島であった。なお,前記事務所の使用に関し,G48議員と民主党北広島との間では,前記事務所賃料月額7万2000円のうち6万円を同議員が負担すること,駐車場料金月額6000円のうち5000円を同議員が負担すること,冬期間(4月,11月から3月まで)の暖房費として,同議員は,民主党北広島に対し,月額8000円を支払うことなどを約した「確認書」(本項においては,以下「本件確認書」という。)が交わされた。
ウ G48議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出(事務所の支出については駐車場等に関する費用を含む。)し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所は,G48議員及び民主党北広島が共同で賃借したものと認められるから,前記事務所では政務調査活動のみならず政党活動が行われており,前記事務所の賃借料として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動に関する経費が含まれているものと一般的,外形的に推認される事情があるとはいえる。なお,G48議員が平成23年4月19日をもって北海道議会議員の任期満了となったことは前記認定のとおりであるから,前記事務所の賃借料として支出されたものには,後援会活動に関する経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
しかるところ,G48議員は,前記事務所(80㎡)のうち政務調査活動に使用した面積は68㎡であるので,民主党北広島との間で,本件確認書により,経費等を含めた事務所費のうち85%を同議員が負担することを約した旨主張し,同旨の陳述(丙A民23の3)をする。上記陳述は,本件確認書により裏付けられているものであるし,また,民主党北広島とG48議員の事務所はそれぞれ異なる電話番号が用いられていることからすると,前記事務所では政務調査活動と政党活動がその使用実態により明確に区分されていたものと認められる。そうすると,本件確認書に基づいて前記事務所のうちG48議員が負担した事務所費全額について政務調査費を充当したことは,本件運用方針に反する違法なものとはいえない。
また,前記事務所では,政党活動と政務調査活動がその使用実態により明確に区分されていたことに加え,G48議員は,民主党北広島では政党活動については同党役員が行っており,H77及びH78が政党活動に携わることはなかった旨陳述しており,これに反する的確な証拠もないから,上記2名の職員の人件費として支出されたものには,前記職員が政党活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということはできない。そうすると,上記2名の職員に係る人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
49 G49議員(整理番号54(自25))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲57の1から4まで,丙A自25の1の1から丙A民25の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G49議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G49議員は,別紙4主張整理表「整理番号54」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,この事務所のことを「帯広市内の事務所」という。)を賃借したほか,札幌市内にも事務所(本項においては,この事務所のことを「札幌市内の事務所」という。)を設け,帯広市内の事務所において同欄に記載のある各個人のうちH79及びH80を,札幌市内の事務所においてH81を,それぞれ職員として雇用した。
ウ 帯広市内の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われ,H79及びH80も,これらの活動に従事した。
他方,札幌市内の事務所は,G49議員が所有する物件であり,宿舎としても利用された。
エ G49議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 帯広市内の事務所に係る事務所費及び人件費について
上記認定事実によれば,帯広市内の事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われ,同事務所に雇用されたH79及びH80も,これらの活動に従事したことが認められることからすると,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれていたものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態や業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G49議員は,同事務所における後援会活動は年に数回開催するイベントの企画,準備であり,政党活動は自民党広報誌の管理等にすぎなかったから,同事務所における使用実態又は活動実態として政務調査活動が2分の1を占めていたと主張し,これに沿う内容の陳述書を提出するが,同事務所における使用実態及び職員の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所に係る事務所費及び前記2名の職員の人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
(3) H81の人件費について
上記認定事実によれば,H81は,札幌以外の選挙区から選出されたG49議員が宿舎としても利用している札幌市内の事務所で職員として雇用されたものであると認められる。
しかして,G49議員は,H81は資料の整理や作成などを行うアルバイトであり,政務調査活動の補助に専念してもらっていた旨陳述する。しかし,上記陳述によっても,H81が従事していたとされる政務調査活動の補助業務の実態は具体的なものであるとは到底いえない上,上記陳述によれば,H81はアルバイトとして政務調査活動の補助業務に従事していたというのであるから,その業務実態によっては支払われる賃金が定額になるとは考えられないにもかかわらず,同人には毎月3万円の「アルバイト料」が支払われている。むしろ,H81の職務内容には,同事務所に同議員に面会や陳情に来た地元後援者や政党関係者の接遇業務が含まれており,同人に関する人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動及び政党活動に従事した対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,同人に関する人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきであり,これに反する的確な反証はない。
50 G50議員(整理番号55(民24))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲58の1から3まで,丙A民24の1の1から丙A民24の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G50議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G50議員は,別紙4主張整理表「整理番号55」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を同事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動については,民主党ていねで行われた。
ウ G50議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出(事務所の支出については駐車場の賃借料を含む。)し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事したものと認められるから,同事務所に係る事務所費及び前記職員の人件費(社会保険料及び労働保険料を含む。以下,この項において同じ。)として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価と後援会活動に係る経費や対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるということができる。なお,政党活動については,民主党ていねで行われていたものと認められ,前記事務所に係る事務所費及び前記職員の人件費として支出されたものに政党活動に関する経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情の存在を認めることはできない。
これに対して,G50議員は,後援会活動は年間6回程度の行事の開催であり,行事の準備期間は2週間程度であったので,同事務所における使用実態又は業務実態として政務調査活動が4分の3を占めていた旨主張し,同旨の陳述を(丙A民24の3)をするが,その使用実態や業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,同事務所に係る事務所費及び人件費として支出したもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
51 G51議員(整理番号56(自26))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲59の1から4まで,丙A自26の1の1から丙A自26の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G51議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G51議員は,別紙4主張整理表「整理番号56」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「I20の事務所」,「I21の事務所」という。)を賃借し,同欄に記載のあるH82のほか,H83をI20の事務所において職員として雇用した。なお,H82の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査に係る調査補助及び関係書類の作成」とあり,H83の雇用契約書の仕事内容欄には「後援会活動並びに政党関連事務」と記載されている。
ウ I20の事務所の賃貸人は,G51議員の実父であるH17であった。
I20の事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われた。
エ G51議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) I20の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,I20の事務所の賃貸人は,G51議員の実父であると認められるが,証拠(丙A自26の1の3,丙A自26の1の4)によれば,G51議員と実父はそれぞれ住民票上の住所地は異なるものであり,他にG51議員と実父が生計を一にしていることを推認させるような事情は見当たらないから,実父所有の不動産に係る事務所賃借料に政務調査費を支出したとしても,本件運用方針に反するものであるとは認められない。
しかして,I20の事務所では,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動が行われたものと認められるから,同事務所に係る事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することが困難である。したがって,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G51議員は,同事務所における政党活動は企業・団体献金の入金口座管理のみが行われていたにすぎないから,同事務所における使用実態としては政務調査活動と後援会活動及び政党活動の割合は概ね1対1であった旨主張し,同旨の陳述(丙A自26の3)をするが,同事務所における使用実態について具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費に関する按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,I20の事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) I21の事務所に係る事務所費について
I21の事務所について,G51議員は,後援会活動及び政党活動はI20の事務所で行われており,同事務所では政務調査活動のみが行われていた旨陳述するところ,この陳述の信用性を疑わしめる具体的な証拠はないから,同事務所の事務所費として支出されたものには,政務調査活動以外の活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとは認められない。したがって,同事務所に係る事務所費の全額を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(4) 人件費について
G51議員は,I20の事務所においては,H82とH83を雇用しており,H83が政党活動及び後援会活動の補助に従事し,H82は政務調査活動に専従していた旨主張し,同旨の陳述をする。上記陳述は,前記で認定した雇用契約書の仕事内容欄の記載にも合致しており,その信用性を排斥することはできないから,H82が政務調査活動以外の業務に従事していたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
そうすると,H82の人件費の全額について政務調査費を充当したことは,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
52 G52議員(整理番号57(民25))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲60の1から3まで,丙A民25の2の1,丙A民25の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G52議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G52議員は,自宅を事務所として使用しており,別紙4主張整理表「整理番号57」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人を上記事務所において職員として雇用した。なお,同職員の雇用契約書の職種欄には「運転業務,政務調査業務補助他」と記載され,給与は日給7230円,勤務時間は午前8時45分から午後5時30分と記載されている。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動が行われていた。
ウ G52議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動がされていたことが認められるから,前記事務所に職員として雇用されていた前記職員は,これらの活動に従事しており,その人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することは困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対し,G52議員は,後援会活動の補助業務は支援者がボランティアで行っており,また,政党活動の補助業務は民主党函館支部及び民主党8区総支部専従の職員が行っており,前記職員は,これらの活動には関与していない旨主張し,同旨の陳述(丙A民25の3)をする。しかしながら,同議員の陳述する前記事務所の職員の業務実態については具体的な裏付けを欠いている上,前記職員の勤務時間や日給から推測される勤務日数(同人の人件費には年額130万1400円が支給されているから,年間180日間勤務したことが認められる。)からすると,前記職員が政務調査活動のみに専従した旨の上記陳述はたやすく採用することはできず,他に上記推認を覆すに足りる的確な証拠はない。
したがって,前記職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
53 G53議員(整理番号58(自27))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲61の1から3まで,丙A自27の1の1から丙A自27の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G53議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G53議員は,別紙4主張整理表「整理番号58」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人2名を北海道斜里郡I22町内に設けた事務所において職員として雇用した。
前記各職員は,いずれも政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動にも従事した。
ウ G53議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記各職員は,政務調査活動以外に後援会活動及び政党活動にも従事したと認められるから,その人件費(社会保険料及び労働保険料を含む。以下,本項において同じ。)として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することも困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G53議員は,政党活動の補助は主に自民党斜里支部の職員が行ったため,前記各職員の業務実態としては政務調査活動が2分の1を占めていた旨主張するが,業務実態に関する具体的な裏付けを欠くからたやすく採用することができず,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記各職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
54 G54議員(整理番号59(民26))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲62の1から3まで,丙A民26の1の1から丙A民26の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G54議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G54議員は,別紙4主張整理表「整理番号59」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所及び前記事務所のための駐車場を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動とともに後援会活動も行われた。
なお,政党活動は,民主党第9区総支部で行われた。
前記駐車場には3台分の駐車スペースがあり,そのうち1台分については来客専用,2台分については来客兼用であった。
ウ G54議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われていたものと認められるから,前記事務所の使用実態に照らすと,前記事務所の事務所費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる(なお,政党活動については,民主党第9区総支部で行われていたものと認められ,前記事務所で政党活動が行われたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。)。そして,前記事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することはできないから,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G54議員は,前記事務所で後援会活動が行われた日数は年間約80日であり,1週間当たりの事務所使用時間45時間のうち政務調査活動に使用した時間は30時間であったから,前記事務所における活動時間のうち政務調査活動に占める割合が3分の2であったと主張し,同旨の陳述(丙A民26の3)をするが,その陳述するところの事務所の使用実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所に係る事務所費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
また,前記駐車場は,前記事務所のために利用されていたことからすると,前記駐車場に係る賃借料についても,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があり,それぞれの使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができないから,来客専用に係る駐車場の賃借料については2分の1を超えて充当された政務調査費について,来客兼用に係る駐車場の賃借料については4分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,これに反する的確な反証はない。
(3) 人件費について
前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われていたことは前記認定のとおりであるから,前記事務所に職員として雇用されていたH84及びH85もこれらの活動に従事し,前記2名の職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対し,G54議員は,H84及びH85はいずれも政務調査活動に専従していたが,H84については稀に後援会活動に対応することがあったため,政務調査活動に従事していた割合を9割として政務調査費を充当した旨主張し,同旨の陳述をする。しかし,同議員の陳述するところのH84に関する業務実態については,具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができない。他方,証拠(丙A民26の2の2から丙A民26の2の13まで)によれば,H85については,短期間の不定期な勤務であり,給与として支払われた金額も僅少であり,政務調査補助の名目で支払われていることが認められることからすると,上記陳述を排斥することは困難である。
そうすると,H84に係る人件費については,政務調査活動及び後援会活動の補助業務に対する対価として支払われたものであり,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないから,同人の人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきであり,これに反する的確は反証はない。他方,H85に係る人件費については,政務調査活動の補助業務に対する対価として支払われたものと認められるから,その全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
55 G55議員(整理番号60(自28))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲63の1から3まで,乙12,丙A自28の1から丙A自28の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G55議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G55議員は,別紙4主張整理表「整理番号60」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する自己の所有に係る建物を事務所(本項においては,この事務所のことを「札幌市内の事務所」という。)として利用したほか,北海道上川郡I23町内にも事務所(本項においては,この事務所のことを「I23町内の事務所」という。)を設け,同欄に記載のある個人4名をI23町内の事務所において職員として雇用した。
ウ 札幌市内の事務所は,G55議員の自己所有物件であり,宿舎としても利用された。札幌市内の事務所には駐車場が存在していた。
前記各職員のうち,H86,H87及びH88は,いずれも政務調査活動及び後援会活動に従事した。
エ G55議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。なお,事務所費の中には,駐車場の使用料金月額1万5000円が含まれている。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG55議員が,自己所有物件を宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
しかして,本件運用方針によれば,議員が所有する札幌市内の賃貸マンションの事務所賃料には政務調査費を充当することができないが,管理運営費については,それが政務調査活動の拠点としての実態を有している限り,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述する(丙A自28の3)ところによっても,札幌市内の事務所を使用した日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2(3)で説示したことと同旨である。そうすると,札幌市内の事務所に係る管理運営費として支出したもののうち3分の1を政務調査費から充当することは,本件運用方針に反する違法なものとまではいえない。
他方,G55議員は,札幌市内の事務所に付属する駐車場(1台分)の賃借料について,来客専用であることを前提として,その3分の1を政務調査費から充当している。しかるところ,札幌市内の事務所は,同議員の自己所有物件であり,同議員が宿舎としても利用していたことは前記認定のとおりであるから,上記1台分の駐車場は,同議員専用の駐車場であり,その賃借料は,議員の政務調査活動と合理的な関連性のない経費であることを推認させる一般的,外形的な事情があるといえるが,同議員は,その陳述(丙A自28の3)においても,来客専用の使用実態であったことについて何ら言及していない。そうすると,札幌市内の駐車場に係る賃借料について政務調査費から支出することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
(3) 人件費について
ア 前記認定事実によれば,H86,H87及びH88は,I23町内の事務所で,政務調査活動及び後援会活動に従事していたものと認められる。
なお,G55議員は,政党活動についてはI23町及びその周辺に居住する党員との連絡調整及びポスターの配布程度であり,同議員が1人で行っていた旨主張し,同旨の陳述をしているところ,この陳述の信用性を排斥することは困難であるから,I23町内の事務所に勤務する上記3名の職員が政党活動にも従事し,議員の政務調査活動に合理的な関連性を有しない政党活動に係る対価に人件費が支出されたと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
しかして,前記3名の職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれるものと推認される一般的,外形的な事情があるといえるが,職員の業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に困難することができない場合であっても,本件運用方針によればその2分の1を上限として政務調査費から充当することができるとされているところ,同議員は,上記3名の職員の人件費のうち,上記の範囲内で政務調査費から支出しているから,その支出が本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
イ 他方,G55議員は,H89の人件費については,同議員の政務調査活動のための自動車運転業務に専従していたから,政務調査費全額を充当することが許される旨主張し,同旨の陳述をする。しかし,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われており,H89以外の3名の職員がこれらの活動に従事していたから,H89も,後援会活動にも従事しており,同人の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事していたことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるといえるところ,同人に関する領収証(丙A自28の2の1)を見ても,自動車運転業務に専従していたものと認めるのは困難であり,その他同人の業務実態を裏付ける具体的な証拠もないから,上記陳述はたやすく採用することができない。
そして,H89に関する人件費については,業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないから,支出された人件費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるというべきであり,他に上記推認を覆すに足りる的確な反証はない。
56 G56議員(整理番号61(民27))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲64の1から3まで,丙A民27の1の1から丙A民27の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G56議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G56議員は,別紙4主張整理表「整理番号61」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する建物の1階部分を賃借して事務所として使用し,また,同欄に記載のある個人1名を職員として前記事務所において雇用した。
前記建物の種類は店舗兼居宅であり,居宅部分にはG56議員が入居し,自宅として使用していた。また,前記建物の居宅部分と店舗(事務所)部分にはそれぞれ出入口があり,電気代も各部分ごとに請求がされていた。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記事務所で雇用された前記職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動は,民主党北海道稚内支部及び民主党北海道第12区総支部で行われた。
ウ G56議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 前記で認定した前記建物の状況からすると,前記建物においては事務所部分と居宅部分が明確に区分されているということができるから,前記事務所に関する費用が本件運用方針において政務調査費を充当することができない例とされている「自宅兼用の場合の事務所費」に該当するということはできない。
次に,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記事務所で雇用された職員もこれらの活動に従事していたものと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動による経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる(なお,政党活動については,民主党支部等で行われていたものと認められ,これに反する証拠はない。)。もっとも,前記事務所に係る事務所費及び人件費について,本件運用方針上,その使用実態及び業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することができない場合であっても,2分の1を上限として政務調査費から充当することができるとされているから,同議員が,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出したもののうち2分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
57 G57議員(整理番号62(自29))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲65の1から3まで,丙A自29の1から丙A自29の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G57議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G57議員は,別紙4主張整理表「整理番号62」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動については,自民党恵庭支部で行われた。
ウ G57議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動以外にも後援会活動が行われており,前記事務所で雇用された前記職員もこれらの活動に従事したと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動による経費や対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるといえる。なお,政党活動については,自民党恵庭支部で行われていたと認められ,これに反する証拠はない。
しかして,G57議員は,前記事務所全体の面積(49.68㎡)のうち37.26㎡を政務調査活動に使用したので,事務所費についてはこの床面積の割合で按分し,また,前記職員の人件費についても,後援会活動は平成22年7月に行われた総会及び道政報告会,同年12月に行われた拡大役員会及び道政報告会にすぎないので,その4分の3を政務調査費から充当した旨主張し,同旨の陳述をする。上記陳述のうち,政務調査活動に使用した区分に関して,同議員は,その範囲を示した平面図(丙A自29の1の2)を提出しており,それぞれの区分には出入口があるなど使用区分が明確になっているものと認められるから,前記事務所の事務所費について,床面積割合で政務調査活動の割合を算出して政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反するものとはいえない(ただし,上記按分割合によって前記事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
他方,その陳述に係る前記職員に係る業務実態については,具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができない。そして,前記職員に係る人件費については,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,上記推認を覆すに足りる的確な反証はない。したがって,前記職員に係る人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
58 G58議員(整理番号63(民28))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲66の1から4まで,丙A民28の1の1,丙A民28の2の1から丙A民28の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G58議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G58議員は,別紙4主張整理表「整理番号63」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動以外に,政党活動及び後援会活動が行われ,前記各職員のうちH90及びH91は,常勤職員であり,政務調査活動とともに,少なくとも後援会活動に従事した。
ウ G58議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,事務所費として支出されたものには議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G58議員は,前記事務所で政党活動はほとんど行っておらず,後援会活動としては年に3,4回開催するパークゴルフ大会の開催の程度でその準備のために年間日数のうち3割程度を後援会活動に兼用した旨陳述する(丙A民28の3)が,その陳述に係る事務所の使用実態について具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所の事務所費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費から充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 人件費について
前記事務所では,政務調査活動以外にも後援会活動及び政党活動が行われていたことは前記認定のとおりであり,前記事務所で雇用されていた3名の職員もこれらの活動に従事し,前記各職員の人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるといえる。
しかるところ,G58議員は,H90は年に3,4回開催する後援会主催のパークゴルフ大会の準備作業を行うこともあったので年間日数のうち3割程度を後援会活動に従事したことから,その人件費の7割について政務調査活動から支出し,H91はほぼ政務調査活動の事務補助に従事したが,後援会活動のために地方出張に同行し運転業務をすることがあったから,その人件費の6割について政務調査費から支出し,H92は同議員が政務調査活動のため外部に出向く際の運転業務の補助として不定期にアルバイトで雇用したので政務調査業務に専従した旨主張し,これに沿う陳述(丙A民28の3)をする。
検討するに,H92については,人件費として支出された金額が僅少であることから,同人が不定期のアルバイトとして運転業務に専従した旨の上記陳述の内容も首肯できるが,H90及びH91については,その業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができない。
そうすると,H90及びH91の人件費については,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他にこれを覆すに足りる的確な反証はない。他方で,H92の人件費の全額について,政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であるということはできない。
59 G59議員(整理番号64(民29))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲67の1から3まで,丙A民29の1の1から丙A民29の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G59議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G59議員は,札幌市内に事務所を賃借したほか,別紙4主張整理表「整理番号64」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する駐車場を賃借し,前記事務所の来客兼用の駐車場として利用した。また,G59議員は,同欄に記載のある個人2名のほか1名を職員として上記事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われていた。
ウ G59議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 駐車場の賃借料について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われていたと認められるから,前記事務所のために利用されていた前記駐車場の賃借料として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。そして,前記駐車場が来客兼用のものであり,その使用頻度により,政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動による経費とを明確に区分することができないことからすると,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち6分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,これに対する的確な反証はない。
(3) 人件費について
前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動も行われていたことは前記認定のとおりであるから,前記事務所に勤務する前記各職員も,これらの活動に従事し,その対価として支出された人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G59議員は,H93は政務調査活動に関わる来客,電話対応に加えて各種団体や企業等を訪問する際の同行及び森林,環境行政に関わる助言等に携わるなど政務調査活動の事務補助に専従し,H94は政務調査活動に関わる来客,電話対応に加えて調査への同行等も行うなど政務調査活動の事務補助に専従していた旨陳述(丙A自29の3)するが,上記2名の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に上記2名の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,上記2名の職員に関する人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
60 G60議員(整理番号65(自30))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲68の1から3まで,丙A自30の1から丙A自30の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G60議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G60議員は,札幌市内に事務所を賃借し,別紙4主張整理表「整理番号65」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人2名を職員として前記事務所において雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われていた。
ウ G60議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,前記事務所に勤務する前記各職員もこれらの活動に従事し,その対価として人件費が支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G60議員は,後援会活動の一部や政党活動は別の職員が行ったと主張し,同旨の陳述(丙A自30の3)をするが,具体的な職員やその業務の実態は明らかにされていないから,たやすく採用することができず,他に前記各職員の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記2名の職員に関する人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反し違法であるというべきである。
61 G61議員(整理番号67(自32))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲70の1,2,丙A自32の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G61議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G61議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) G61議員は,別紙4主張整理表「整理番号67」欄に対応する「摘要」欄に記載のあるH18及びH19を職員として雇用し,政務調査活動に従事させた旨主張するので,この点について検討する。
ア 証拠(丙A自32の2の1,丙A自32の2の2)によれば,①H18の雇用契約書の雇用主は「G61後援会 会長 H20」であると記載され,また,「G61後援会(会長H20)と(以下G61後援会)H18は後援会事務担当としてG61後援会職員として双方確認のもと雇用契約を締結する。」と明記されていること,②H19の雇用契約書の雇用主は「自由民主党北海道札幌市北区第4支部」「代表G61」であると記載され,また,「自由民主党北海道札幌市北区第4支部(代表G61)と(以下第4支部)H19は党勢拡大と組織強化を目指し第4支部職員として双方確認のもと雇用契約を締結する。」と明記されていることがそれぞれ認められる。
上記で認定した各雇用契約書の雇用主及び雇用の目的からすると,H18については後援会の専従者として,H19については政党支部の専従者として,それぞれ業務に従事していたと推認することができる。
イ これに対し,G61議員は,前記各職員との間で政務調査活動に関する雇用契約書は作成していないが,H18及びH19はいずれも政務調査活動にも従事しており,それぞれの活動における政務調査活動が占める割合について,H18については6割,H19については7割から8割であった旨陳述(丙A自32の3)するが,前記2名の職員に関する業務実態に関する具体的な裏付けを欠いているのみならず,政務調査活動に関する雇用契約書が作成されていないにもかかわらず,H18及びH19の職務の大半が政務調査活動に関するものであったとは認めがたいことからすると,上記陳述は採用することができない。
ウ したがって,H18及びH19が政務調査活動に従事したとは認められないから,同人らに関する人件費(社会保険料を含む。)として支出したものについて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
62 G62議員(整理番号68(公3))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲71の1から3まで,丙B3の1から丙B3の7まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G62議員は,公明党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G62議員は,別紙4主張整理表「整理番号68」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「釧路市内の事務所」という。)を賃借した。
札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
ウ G62議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
札幌市内の事務所に係る事務所費について
(2) 上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG62議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2(3)で説示したとおりである。
そうすると,札幌市内の事務所に係る事務所費として支出したもののうち,3分の1を政務調査費から充当することは,本件運用方針に反するもの違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって札幌市内の事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
(3) 釧路市内の事務所に係る事務所費について
G62議員は,釧路市内の事務所では政務調査活動のみが行われ,後援会活動及び政党活動については,前記事務所の所在する建物の1階で行われており,政務調査活動とそれ以外の活動は明確に区分されていた旨主張する。
検討するに,証拠(丙B3の7)によれば,釧路市内の事務所の所在する建物1階には公明党釧路総支部事務所並びに同党に所属する各市議及び道議の後援会事務所が設けられており,釧路市内の事務所と公明党支部及び後援会事務所の郵便受けもそれぞれ別に設けられていることが認められることからすると,釧路市内の事務所では政務調査活動以外の活動がされ,そのための活動に係る事務所費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
したがって,釧路市内の事務所に係る事務所費全額について政務調査費から支出することは,本件運用方針に反する違法なものとはいえない。
63 G63議員(整理番号69(民30))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲72の1から3まで,丙A民30の1の1から丙A民30の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G63議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G63議員は,別紙4主張整理表「整理番号69」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「北斗市内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人4名を北斗市内の事務所において職員として雇用した。
上記4名のうちH95の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査活動補助及び後援会活動補助」と記載され,その余の3名の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査」と記載されている。
ウ 札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
他方,北斗市内の事務所は,G63議員が賃借人として借りたものであるが,連合北海道北斗地区連合会と共同で使用されていた。G63議員は,連合北海道北斗地区連合会及び同議員の後援会との間で,北斗市内の事務所に関する覚書を交わし,賃料等の負担割合について合意をした。
エ G63議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG63議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査費の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述(丙A民30の3)によっても札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは,前記2(3)で説示したとおりである。
そうすると,札幌市内の事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 北斗市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,北斗市内の事務所は,G63議員及び連合北海道北斗地区連合会と共同で使用されていたこと,G63議員は,連合北海道北斗地区連合会との間で,同事務所の使用に関する覚書を交わして,同事務所の賃借料や光熱費等に関する負担割合を合意したことが認められる。なお,上記覚書においては,北斗市内の事務所の使用に関し,G63議員の後援会とも合意がされているが,後援会については「使用の実態が僅少」であると記載されていることが認められること,同議員は,後援会活動は自宅で行っている旨陳述していることからすると,北斗市内の事務所における使用実態において,その事務所費に後援会活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまではいえない。
もっとも,北斗市内の事務所は,連合北海道北斗地区連合会と共同使用されていたから,同事務所に係る事務所費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるというべきところ,G63議員は,北斗市内の事務所に関して,連合北海道北斗地区連合会の活動にも兼用されていたことから,同連合会との間で取り決めをし,事務所全体面積35.17㎡のうち政務調査活動に使用した部分は14㎡であるから,事務所賃料の按分割合を5分の2とした旨陳述している。同議員が陳述するところの北斗市内の事務所における政務調査活動と同連合会による政党活動に係るそれぞれの使用区分が具体的に明示されていないが,仮に議員による政務調査活動と同連合会の活動に係る使用実態が明確に区分することができない場合であっても,本件運用方針によれば,2分の1を上限として政務調査費を支出することができるとされていることからすると,北斗市内の事務所に係る賃料について40%を政務調査費から支出したことは,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない。
(4) 人件費について
北斗市内の事務所では,G63議員による政務調査活動のほか,連合北海道北斗地区連合会による活動が行われていたものと認められるところ,同連合会の活動は,G63議員の所属する政党や後援会の活動とは異なり,同議員が関与することが当然に予定されているものであるとまではいえない上,証拠(丙A民30の2の5の1から丙A民30の2の15まで)によれば,同連合会は別途職員を雇用していたことが認められること,北斗市内の事務所に勤務する前記各職員の雇用契約書には同連合会による活動に従事する旨の記載がないことが認められることからすると,北斗市内の事務所が同連合会と共用されていたとしても,前記各職員が同連合会による活動にも従事していたものとまでは認めることはできない。
そうすると,H96は平成23年2月及び同年3月にG63議員の自宅において後援会活動にも関与し,H95はG63議員の自宅において後援会活動にも従事した旨のG63議員の陳述の信用性を排斥することはできず,他に前記各職員が後援会活動や政党活動に関与しており,これらの活動に係る対価として人件費が支出されたことを推認させる一般的,外形的な事情を認めることはできない。
したがって,H97及びH98の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,その支出は,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。また,H96については,政務調査活動にのみ従事していたと考えられる期間と後援会活動をも兼務していた期間を明確に区分することができ,政務調査活動と後援会活動を兼務していた期間が2か月であると認められることからすると,本件運用方針によれば,H96の人件費として支出されたもののうち12分の11を上限として政務調査費を支出することができることになるところ,同人に関する人件費として支出されたもののうち平成22年4月分から平成23年1月分までは全額が,同年2月分及び同年3月分についてはその2分の1が政務調査費から充当されており,その支出は,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。他方,H95は,政務調査活動及び後援会活動に従事し,その人件費は,政務調査以外の活動による対価が含まれていることになるが,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,本件運用方針によれば,2分の1を上限として政務調査費を充当することができるところ,G63議員がした政務調査費の支出は,この範囲内のものであるから,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
64 G64議員(整理番号71(自34))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲74の1から3まで,乙12,丙A自34の1から丙A自34の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G64議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G64議員は,別紙4主張整理表「整理番号71」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「I6町内の事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある各個人のうちH99及びH100をI6町内の事務所において職員として雇用した(氏名不詳者Bについては,後述する。)。
ウ 札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。他方,I6町内の事務所の所在する建物には,G64議員の自宅として使用されている部分があるが,事務所部分と自宅部分とは,壁で区切られ,それぞれ別に出入口が設けられている。
I6町内の事務所においては,政務調査活動以外に,政党活動及び後援会活動がされており,H99及びH100は,いずれもこれらの活動に従事した。
エ G64議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG64議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,本件全証拠を検討してみても,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)で説示したとおりである。そうすると,札幌市内の事務所費として支出したもののうち3分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものとはいえない(ただし,上記按分割合によって札幌市内の事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
(3) I6町内の事務所に係る事務所費(ただし,管理運営費に限る。以下この項において同じ。)及び人件費について
ア 上記認定事実によれば,I6町内の事務所の所在する建物には,G64議員の自宅部分が存在するが,事務所部分と自宅部分は明確に区切られていると認められるから,I6町内の事務所が本件運用方針において政務調査費から充当することができないこととされる議員の自宅兼用の事務所に当たるということはできない。
イ 上記認定事実によれば,I6町内の事務所では,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動が行われており,同事務所で雇用されたH99及びH100も,これらの活動に従事していたものと認められるから,I6町内の事務所に係る事務所費並びにH99及びH100の人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により,政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することが困難である。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G64議員は,後援会活動は年に数回の役員会,総会の開催案内,後援会通信の作成,名簿整理などであり,政党活動は党員との日程調整を行う程度であり,事務所の使用実態において1週間の事務所使用時間40時間のうち20時間が政務調査活動であり,職員の活動実態とともに政務調査活動の按分割合を2分の1とした旨主張し,同旨の陳述(丙A自34の3)をするが,その陳述に係る事務所の使用実態や職員の業務実態に関する具体的な裏付けがなく,たやすく採用することができず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,I6町内の事務所に係る事務所費並びにH99及びH100の人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費から充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(4) なお,G64議員は,氏名不詳者Bを雇用し,平成22年9月から同年10月までの間は政務調査活動の補助業務に専従させ,同年11月から平成23年3月までの間は政務調査活動,政党活動及び後援会活動の補助業務に従事させた旨主張する。
しかし,氏名不詳者Bに係る雇用契約書も氏名不詳者Bが人件費を受領したことを裏付ける領収書の提出もなく,また,氏名不詳者Bが本件運用方針において人件費を政務調査費から充当することができないとされている配偶者,扶養関係にある者又は同居し生計を一にする者のいずれかに該当する者であるか否かも明らかではない。
そうすると,氏名不詳者Bに関する人件費については,政務調査費を充当することができない一般的,外形的な事情があるということができ,これに対する的確な反証もないから,同人に係る人件費について政務調査費から充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというほかない。
65 G65議員(整理番号72(自35))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲75の1から3まで,丙A自35の1から丙A自35の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G65議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G65議員は,別紙4主張整理表「整理番号72」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動以外に,政党活動及び後援会活動が行われた。
ウ G65議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所においては,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われていたことが認められることからすると,前記事務所に係る事務所費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれていたものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
しかるところ,G65議員は,前記事務所の床面積36.6㎡のうち18.3㎡を政務調査活動に利用した旨主張し,同旨の陳述(丙A自35の3)をするとともに,同事務所の平面図(丙A自35の1の2)を提出する。しかし,上記平面図によれば,前記事務所の出入口は1か所であり,また,後援会活動及び政党活動のために使用された部分にはトイレ,給湯室があり,これらは政務調査活動に従事する職員や道政に関する陳情や議員との面会に訪れた者らも使用するものであると認められる。そうとすれば,同事務所の使用区分は,同議員が主張するように同事務所の床面積の半分に当たる区分が専ら政務調査活動に使用されたとも認めがたい。
そうすると,前記事務所に係る事務所費については,政務調査活動に係る経費と後援会活動及び政党活動に係る経費とを使用実態で明確に区分することができないということになるから,本件運用方針によれば,事務所費の3分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。したがって,前記事務所の事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反して違法であるというべきである。
(3) 人件費について
前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動も行われたことは前記認定のとおりであるから,前記事務所で雇用された前記各職員2名に係る人件費(社会保険料及び労働保険料を含む。以下,この項において同じ。)については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G65議員は,前記各職員が政務調査活動及び後援会活動に従事したが,政党活動については同議員及び自民党余市支部の役員らが行ったから,前記各職員の人件費として支出したもののうち2分の1を政務調査費から充当することができる旨主張し,自民党余市支部役員名簿(丙A35の2の3)を証拠として提出した上で同旨の陳述をする。しかしながら,同議員が陳述する前記各職員の業務実態については具体的な裏付けを欠いているのみならず,上記役員名簿は,自民党余市支部における役員の存在を裏付けるにすぎず,同役員らのみで前記事務所で政党活動が行われていた旨の裏付けとはなり得ず,上記推認を覆すに足りる的確な反証はない。
そうすると,前記各職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
66 G66議員(整理番号73(民31))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲76の1から4まで,丙A民31の1の1から丙A民31の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G66議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G66議員は,別紙4主張整理表「整理番号73」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人4名を上記事務所において職員として雇用した。
ウ 前記事務所には,来客専用の駐車場が存在していた。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,後援会活動も行われた。なお,政党活動は,民主党北海道第9区総支部で行われた。
エ G66議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費及び駐車場に係る賃料について
原告は,G66議員が,別件訴訟において,前記事務所の所在地を現住所とする陳述書を提出しているから,前記事務所がG66議員の自宅であったことが疑われると主張する。しかし,陳述者が陳述書に職場の住所地を記載することは少なからず認められるし,証拠(丙A民31の1の3)によれば,平成22年当時のG66議員の住民票上の住所地は,前記事務所と異なる場所にあったと認められることからすると,前記事務所がG66議員の自宅兼事務所であると認めることはできない。
しかして,上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われていたと認められるから,事務所費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,前記駐車場は前記事務所の来客専用の駐車場であると認められるから,前記駐車場に係る賃借料についても,同様のことを指摘することができる。なお,政党活動は,民主党支部で行われていたものと認められるから,前記事務所において政党活動が行われており,そのための経費に政務調査費が支出されたものと推認される一般的,外形的な事情があると認めるに足りる証拠はない。
しかるところ,G66議員は,後援会活動は年に2回の後援会主催で行う親睦行事の準備のために使用した程度であり,駐車場については政務調査活動に関わる来客専用であって後援会活動に関わる来客用としては近隣に別途駐車場を借りていたから,事務所費についてはその2分の1に政務調査費を充当し,前記駐車場に係る賃借料はその全額に政務調査費を充当した旨陳述(丙A民31の3)をする。しかし,事務所費については,その陳述に係る前記事務所の使用実態についての具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができないが,事務所費について,その使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができない場合であっても,本件運用方針によれば,2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされているから,前記事務所の事務所費についてその按分割合を2分の1として政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものとまではいえない。他方,前記事務所で後援会活動に関わる来客専用の駐車場を別途賃借していたことを裏付ける証拠は提出されていないから,上記陳述はたやすく採用することができず,前記駐車場に係る賃借料については,その使用頻度により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができないから,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他にこれに反する的確な反証はない。
(3) 人件費について
前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動も行われていたことは前記認定のとおりであり,前記事務所における使用実態に照らすと,前記事務所で雇用されていた前記各職員もこれらの活動に従事し,その人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
しかるところ,G66議員は,後援会活動の補助はほとんど後援会の役員がボランティアで行っており,H101は,ほぼ政務調査活動の補助に従事し,週に数回程度後援会活動に関する郵便発送業務や電話対応に従事することがあったため,政務調査費を充当する按分割合を9割とし,H102及びH103は,政務調査活動の事務補助,郵送物の処理等に必要となった際に不定期で雇用し,H104は,伊達市内を巡会して行う道政報告会の運転業務のみに従事したので,H102,H103及びH104については,その人件費全額を政務調査費から充当した旨主張し,同旨の陳述をする。
上記陳述は,前記各職員の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いているが,証拠(丙A民31の2の2から丙A民31の2の14まで)によれば,H101以外の3名の職員に関する領収証には「バイト代」として不定期に報酬が支払われていることが認められ,上記陳述と整合するものであるから,上記3名が政務調査活動の補助に従事した旨の上記陳述の信用性を排斥することは困難である。
そうすると,H101以外の3名の職員に係る人件費の全額について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえないが,他方,H101に係る人件費については,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他にこれと異なる按分割合に関する的確な反証はない。
67 G67議員(整理番号74(自36))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲77の1から4まで,丙A自36の1から丙A自36の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G67議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G67議員は,別紙4主張整理表「整理番号74」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人6名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず後援会活動も行われ,前記各職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動については,自民党江別支部で行われた。
ウ G67議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動のみならず後援会活動が行われ,同事務所で雇用された前記各職員もこれらの活動に従事したものと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び人件費として支出されたものには,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費及び対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。なお,政党活動は,自民党支部で行われていたことは前記認定のとおりであって,これに反する証拠はない。
そして,前記事務所に係る事務所費及び前記各職員の人件費については,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G67議員は,前記事務所の一週間の使用時間40時間のうち25時間を政務調査活動に使用したことを踏まえ,前記事務所に係る事務所費のうち賃借料についてはその8分の5に政務調査費を充当し,管理運営費及び人件費についてはその2分の1に政務調査費を充当した旨主張し,同旨の陳述(丙A自36の3)をするが,上記陳述に係る前記事務所の使用実態及び前記各職員の業務実態に係る具体的な裏付けを欠くものであり,たやすく採用することができない。
そうすると,前記事務所に係る賃借料については,その支出に係る2分の1を超えて政務調査費を充当することは本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。他方,前記事務所に係る管理運営費及び前記各職員の人件費についてそれぞれ2分の1を政務調査費から充当したことは,本件運用方針で示された範囲内であるから,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない。
68 G68議員(整理番号75(民32))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲78の1から3まで,丙A民32の1の1から丙A民32の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G68議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G68議員は,別紙4主張整理表「整理番号75」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「釧路市I24の事務所」という。)を賃借したほか,北海道釧路市I25町にも事務所(本項においては,以下「釧路市I25町の事務所」という。)を設け,また,同欄に記載のある個人3名を職員として雇用した。
釧路市I25町の事務所は,民主党北海道第7区総支部の1室であり,同事務所においては,政務調査活動のみならず政党活動も行われていた。前記各職員のうちH105及びH106は,釧路市I25町の事務所で勤務した。
ウ G68議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 釧路市I24の事務所に係る事務所費について
G68議員は,釧路市I24の事務所を政務調査活動のために賃借し,政党活動については釧路市I25町の事務所で行い,また,平成22年度は釧路市I24の事務所では後援会活動はしていない旨陳述する(丙A民32の3)ところ,本件全証拠を検討してみても,釧路市I24の事務所で政党活動や後援会活動が行われ,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しないこれらの活動に事務所費として政務調査費が充当されたものと推認させる一般的,外形的な事情はうかがわれない。
そうすると,釧路市I24の事務所の事務所費の全額に政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
上記認定事実によれば,釧路市I25町の事務所は,民主党北海道第7区総支部の1室であり,同所においては政党活動も行われていたことが認められる。そして,本件全証拠を検討してみても,釧路市I25町の事務所において,それぞれの使用区分が明確に区分されていたと認めるに足りる認めるに足りる証拠はないから,同所に勤務するH105及びH106も,政務調査活動のみならず政党活動にも従事し,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動にも従事したことによる対価が支払われたものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる(なお,本件全証拠を検討してみても,上記2名の職員が後援会活動に従事したことによる対価が支払われたものと推認させる一般的,外形的な事情を認めることはできない。)。
そして,上記2名の人件費については,その業務実態により政務調査活動に係る対価と政党活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価することができる。
これに対して,G68議員は,釧路市I25町の事務所における政党活動は,同支部が別途雇用した職員がしていた旨主張し,同旨の陳述をするが,同支部が政党活動のために雇用した職員に関する雇用契約書その他の証拠が提出されていないから,上記陳述をたやすく採用することができず,他に上記2名の職員の人件費の按分割合に関する的確な反証もない。
したがって,釧路市I25町の事務所に勤務するH105及びH106に関する人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
他方で,G68議員は,H107について,炭鉱関連業務の対応のため,平成22年5月のみ不定期に雇用された職員であり,政務調査活動に専従したのでその人件費の全額について政務調査費から充当した旨主張し,同旨の陳述をする。検討すると,H107に対しては,平成22年5月20日に「給与として」1万5000円が支払われたことを証する領収証(丙A民32の2の3)が証拠として提出されており,上記陳述に沿うものであるから,同人が特定の政務調査活動のために臨時に雇用された職員であるとのG68議員の陳述の信用性を排斥することは困難である。そうすると,H107に対する人件費の全額について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
69 G69議員(整理番号76(自37))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲79の1から3まで,丙A自37の1から丙A自37の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G69議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G69議員は,別紙4主張整理表「整理番号76」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人7名のうち氏名不詳者C以外の者を上記事務所において職員として雇用した(氏名不詳者Cについては,別途検討する。)。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず,政党活動及び後援会活動が行われた。
ウ G69議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 前記事務所に係る事務所費及び人件費(ただし,氏名不詳者Cに係るものを除く。)
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動による経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対して,G69議員は,事務所費については,前記事務所の床面積36.855㎡のうち24.57㎡を政務調査活動に使用しており,その使用実態に照らして前記事務所に係る事務所費についての政務調査活動に係る按分割合を3分の2にした旨主張していた。ところが,同議員は,前記事務所全体の床面積36.6㎡のうち18.3㎡を政務調査活動に使用したので,前記事務所に係る事務所についての政務調査活動に係る按分割合を2分の1とした旨陳述する(丙A自37の3)。上記陳述は,本件における重要な争点である事務所費における使用実態に関して,その主張を大きく変遷させており,およそ採用することはできない。そうすると,前記事務所の事務所費に関して,上記推認を覆すに足りる的確な反証はなく,前記事務所の使用実態において,政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することができないから,本件運用方針によれば,3分の1を上限として政務調査費を充当することができる。したがって,前記事務所の事務所費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
また,G69議員は,前記事務所における政党活動については,党員との面談,自民党への意見陳述,パンフレットの配布程度であったので同議員が行い,職員による補助を要しないものであった旨主張し,同旨の陳述をするが,その業務実態に関して具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができない。そうすると,前記事務所における人件費に関して上記推認を覆すに足りる的確な反証はなく,前記事務所における職員の活動実態において,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動による対価とを明確に区分することもできないところ,本件運用方針によれば,支出されしたがって,前記事務所における氏名不詳者Cを除く6名の職員の人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
(3) 氏名不詳者Cの人件費について
G69議員は,氏名不詳者Cを雇用し,政務調査活動に従事させたと主張し,同旨の陳述をする。
しかし,同議員が氏名不詳者Cを雇用したことを証する雇用契約書も,氏名不詳者Cが労務に従事したことの対価を受領したことを証する領収書も提出されていない。のみならず,氏名不詳者Cが政務調査費を充当することができない例とされる配偶者,扶養関係にある者,同居し生計を一にする者のいずれかに該当するか否かも明らかではない。
そうすると,氏名不詳者Cについては,政務調査費を充当することができない一般的,外形的な事情があるということができ,これに対する的確な反証はないから,同人に係る人件費について政務調査費を充当することは,本件運用方針に反して違法であるというべきである。
70 G70議員(整理番号77(共1))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲80の1から3まで,丙C1の1から丙C1の10の12まで,丙C3の1から丙C3の6まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G70議員は,日本共産党に所属する北海道議会議員である。
イ G70議員は,別紙4主張整理表「整理番号77」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「本件議員事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を本件議員事務所において職員として雇用した。
ウ 日本共産党は,個人の後援会を組織せず,議員の選挙区に対応した後援会が議員の後援会活動を行う方針を採用しており,G70議員に係る後援会活動は,本件議員事務所とは別に設けられた日本共産党小樽後援会で行われた。もっとも,G70議員は,北海道選挙管理委員会に対し,本件議員事務所の住所を所在地として同議員の個人名を冠した後援会を届け出ているが,その収支報告書によると,収入及び支出ともに零と記載されている。
政党活動については,日本共産党小樽後援会が所在する地区委員会の事務所及び北海道委員会事務所等で行われた。
エ G70議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動は本件議員事務所とは別に設けられた事務所等で行われ,本件議員事務所では政務調査活動のみが行われたものと認められる。
もっとも,G70議員は,北海道選挙管理委員会に対して,本件議員事務所を所在地として同議員の個人名を冠した後援会を届け出ているが,それは政治資金規正法に抵触する可能性を踏まえて念のため届け出られたものと認められ(丙C3の2),実際のところ,同議員の個人名を冠した後援会の収支報告書には収入も支出も零と記載されていることからすると,本件議員事務所では後援会活動が行われていないものと認められ,これに反する証拠はない。
そうすると,本件議員事務所の事務所費及び同事務所に雇用された前記各職員の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない。
71 G71議員(整理番号78(民33))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲81の1から3まで,乙8,丙A民33の1の1から丙A民33の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G71議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G71議員は,別紙4主張整理表「整理番号78」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所は,政務調査活動のほか,少なくとも後援会に関する郵便物の受領先として使用されていた。
ウ G71議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会に関する郵便物の受領先としても利用されていたものと認められるから,前記事務所の使用実態に照らすと,前記事務所の事務所費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるといえる。なお,前記事務所の事務所費に政党活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情はない。
そして,前記事務所の事務所費については,その使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G71議員は,後援会活動はG71連合後援会事務局長の自宅でされており,前記事務所は郵便物の受領先として使用されていたにすぎず,1週間当たりの事務所使用時間に占める割合は1割程度であった旨主張し,同旨の陳述(丙A民33の3)をするが,上記陳述に係る事務所の使用実態に関する具体的な裏付けがなく,たやすく採用することができず,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記事務所の事務所費として支出したもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 人件費について
前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われていたことは前記認定のとおりであるから,前記事務所に職員として雇用されている前記各職員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G71議員は,前記各職員はいずれも政務調査活動に専従した旨主張し,同旨の陳述をするが,その活動実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に上記推認を覆すに足りる的確な反証はない。
したがって,前記各職員の人件費として支出したもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
72 G72議員(整理番号79(民34))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲82の1から4まで,乙9,乙12,丙A民34の1の1から丙A民34の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G72議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G72議員は,別紙4主張整理表「整理番号79」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「函館市内の事務所」という。)を賃借し,函館市内の事務所において同欄に記載のある個人4名を職員として雇用した。前記各職員のうちH108及びH109は,函館市内の事務所で政務調査活動の補助業務に従事したほか,外部で行われた後援会活動に際し,同議員に同行することがあった。
札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。なお,政党活動は,民主党第8総支部で行われた。
ウ G72議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG72議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる証拠はない。なお,原告は,同議員が事務所状況報告書(甲82の2)に札幌市内の事務所を「自宅兼事務所」として届け出ていることから,札幌市内の事務所は政務調査活動の拠点としての実態を有しない旨主張するが,札幌市内の事務所については後に「専用事務所」に修正された(乙12)から,上記事務所状況報告書の記載をもって札幌市内の事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであると認めることはできない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述する(丙A民34の3)ところによっても,政務調査活動としての使用実績は明らかではない。しかして,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)で説示したとおりである。
しかるところ,同議員は,札幌市内の事務所に係る事務所費のうち35%について政務調査費から充当している。したがって,同事務所の事務所費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費から充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 函館市内の事務所に係る事務所費について
G72議員は,後援会事務所は同議員の自宅又は後援会会長の自宅で行った旨陳述しており,これに反する具体的な証拠はなく,他に函館市内の事務所で後援会活動が行われ,そのための経費として政務調査費が充当されたと推認させる一般的,外形的な事情はない。また,政務調査活動は,民主党支部で行われたことは前記認定のとおりである。
そうすると,函館市内の事務所に係る事務所費については,政務調査活動以外の活動のために利用された経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情はないから,同事務所費の全額について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(4) 人件費について
ア H108及びH109の人件費について
函館市内の事務所では政務調査以外の活動が行われたことを推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえないことは前記で説示したとおりであるところ,H108及びH109については,函館市内の事務所で政務調査活動の補助業務に従事したほか,外部で行われた後援会活動に際して議員と同行したことが認められる。なお,前記2名の職員に係る人件費について,同人らが政党活動に従事したことによる対価が含まれていると推認させる一般的,外形的な事情はない。
そして,前記2名の職員に係る人件費について,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないところ,本件運用方針によれば,人件費として支出されたもののうち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。したがって,同議員が前記職員2名の人件費として支出したもののうち2分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
イ H110及びH111の人件費について
G72議員は,函館市内の事務所で雇用したH110については短期アルバイトで政務調査活動の補助(原簿整理等)に従事し,同じくH111については短期アルバイトで政務調査活動の補助(函館市内の学校グラウンド整備状況の調査への同行等)に従事した旨陳述する。しかるところ,H110に関しては,勤務した日付けが記された月額1万円から2万円を受領したことを証する領収証(丙A民34の2の5から丙A民34の2の11まで)が,H111については,函館市内小学校の教育環境調査に1日5000円,2日間従事した旨の領収書(丙A民34の2の12,丙A民34の2の13)が,それぞれ証拠として提出されている。そうすると,前記2名の職員は,上記陳述に沿ってそれぞれ政務調査活動の補助に従事したものと認められ,これに反する証拠はない。
そうすると,前記2名の職員の人件費の全額について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
73 G73議員(整理番号80(民35))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲83の1から3まで,丙A民35の1の1から丙A民35の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G73議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G73議員は,別紙4主張整理表「整理番号80」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所には2台分の駐車場があり,1台は来客専用であり,もう1台は来客兼用であった。
ウ G73議員の後援会活動は,札幌市I26区t条u丁目v-w所在の「広志会」又は同市I27区x条y丁目所在の「共生のネットワーク」で行われた。また,政党活動は,民主党白石で行われた。
エ G73議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 前記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動については,前記事務所とは別の場所で行われたものと認められ,前記事務所の事務所費について議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
また,G73議員は,後援会活動については別途必要な職員を都度雇用しており,政党活動補助については民主党支部が別途雇用する職員及びボランティアが行っていた旨陳述する(丙A民35の3)ところ,上記陳述の信用性を排斥する具体的な証拠はない。かえって,前記事務所で雇用された職員のうち,H112については,「子育てカウンセリング」に従事した日数が記載された月額1万5000円から2万5000円を受領した旨の領収証(丙A民35の2の2から丙A民35の2の13まで)が証拠として提出されており,同人が専ら政務調査活動に従事していたことを裏付けるものである。そうすると,前記各職員の人件費について,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
したがって,前記事務所の事務所費の全額(ただし,来客兼用の駐車場に関しては2分の1の限度で)及び前記各職員に係る人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
74 G74議員(整理番号81(民36))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲84の1から3まで,丙A民36の1の1から丙A民36の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G74議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G74議員は,北海道檜山郡I28町に事務所を設け,別紙4主張整理表「整理番号81」欄に対応する「摘要」欄に記載のある個人4名を上記事務所において職員として雇用した。なお,上記職員のうち,H113の雇用契約書には,仕事内容欄に「政務調査に係る調査補助」と記載されているほか,就業時間は午前10時から午前10時30分まで,給与は月額5000円と記載されている。
ウ G74議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) G74議員は,H113は一日30分程度,月額5000円の報酬の約定で,政務調査活動に関わる書類整理や電話対応等の事務補助のみに従事していた旨陳述している(丙A民36の3)ところ,上記陳述は,前記で認定したH113に係る雇用契約書の記載とも整合するものであり,他にH113の人件費について議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
また,G74議員は,H114,H115及びH116は短期アルバイト雇用で政務調査活動に関わる広報広聴のために地方出張する際の運転業務,道政便りの配布業務のみに従事した旨陳述するところ,上記3名が議員から報酬を受領したことを証する領収書(丙A民36の2の2から丙A民36の2の6まで)には,1日5000円で2日分の報酬として支払われた旨の記載やバイト料といった記載があることが認められることに加え,上記3名に支払われた報酬は年額にしていずれも3万円であることからしても,上記3名の職員がアルバイトとして政務調査活動に関わる広報広聴のために地方出張する際の運転業務等のために短時間就労した旨の上記陳述の信用性を排斥することはできず,他に上記3名の人件費について議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
そうすると,前記事務所で雇用された4名の職員の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
75 G75議員(整理番号82(自38))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲85の1から4まで,丙A自38の1の1から丙A自38の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G75議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G75議員は,平成22年4月から同年6月までの間,別紙4主張整理表「整理番号82」欄に対応する「摘要」欄記載のうち北海道日高郡I13町I29町z丁目a’番地b’号の事務所(本項においては,この事務所のことを「事務所1」という。)を賃借し,同年7月から平成23年3月までの間,同欄のうち同町I29町c‘丁目d’番地e’号の事務所(本項においては,この事務所のことを「事務所2」という。)を賃借し,それぞれ事務所として使用した。なお,事務所1及び事務所2の賃借料の振込みの名義人は,G75議員の後援会となっている。
また,G75議員は,同欄記載の駐車場を賃借し,事務所の駐車場として使用したが,同駐車場は来客専用であった。
前記各事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われた。
ウ G75議員は,同欄に記載のある個人3名を職員として雇用し(なお,平成23年3月からH117も雇用した。),前記各事務所において勤務させた。上記3名の職員は,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動にも従事した。
エ G75議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 前記認定事実によれば,事務所1及び事務所2では,いずれも政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われ,また,上記各事務所で雇用された前記職員3名もこれらの活動に従事したものと認められるから,事務所1及び事務所2に係る事務所費(事務所1の塵芥収集運搬業務に係る費用を含む。以下,この項において同じ。)及び前記職員3名の人件費(労働保険料を含む。以下,この項において同じ。)については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費や対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態や職員の業務実態により政務調査活動に係る経費や対価とそれ以外の活動に係る経費や対価とを明確に区分することはできない。したがって,的確な反証がされない限り,事務所費及び人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G75議員は,事務所1及び事務所2の1か月の使用時間192時間のうち144時間を政務調査活動に使用したので,事務所費のうち4分の3を政務調査活動を充当し,また,職員として雇用した4名のうち,H118,H119及びH120は政務調査活動の補助と後援会活動及び政党活動の補助に従事した割合は概ね3対1であったので,人件費のうち4分の3を政務調査費を充当した旨主張し,同旨の陳述(丙A自38の3)をするが,上記陳述に係る事務所の使用実態及び職員の業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費及び人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
また,事務所の駐車場は来客専用であると認められるが,事務所1及び事務所2では政務調査活動以外に後援会活動及び政党活動が行われていたことは前記で説示したとおりである。そして,駐車場の賃借料についても,その使用頻度において政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区分することができないから,支出された経費のうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,これに反する的確な反証はない。
したがって,事務所1及び事務所2に係る事務所費,駐車場に係る賃借料,前記職員3名の人件費として支出したもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
76 G76議員(整理番号83(自39))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲102の1から8まで,丙A自39の1の1から丙A自39の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G76議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G76議員は,別紙4主張整理表「整理番号83」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「北見市内の事務所」という。)を賃借し,また,北見市内の事務所において同欄に記載のある個人2名を職員として雇用した。前記各職員の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査に係る調査補助及び関係書類の作成」,「後援会活動に係る秘書活動及び関係事務・経理事務」と記載されている。
北見市内の事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動が行われ,前記各職員もこれらの活動に従事した。
ウ 札幌市内の事務所及び北見市内の事務所の各賃貸借契約書の使用目的の項には,G76議員がこれらの事務所をそれぞれ後援会事務所として使用し,賃貸人の承諾なく使用目的を変更してはならない旨の記載がある。
G76議員は,札幌市内の事務所を宿舎としても利用したほか,同事務所において同欄記載の通信機器を賃借し,また,同欄記載の駐車場(以下「本件駐車場」という。)を賃借して北見市内の事務所の来客専用駐車場として利用した。
エ G76議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
ア 上記認定事実によれば,札幌市内の事務所及び北見市内の事務所の各賃貸借契約書にはその使用目的としていずれも後援会事務所として使用することが明記されていることが認められる。しかし,弁論の全趣旨によれば,北見市はG76議員の地元であると認められるところ,G76議員が,同市内又はその近郊に政務調査活動のための事務所を別途設けていたことをうかがわせる事情はないし,また,北海道議会が開かれている間,政務調査活動の拠点と目すべき場所を札幌市内の事務所以外に別途設けていたことをうかがわせるような事情もない。そうすると,前記各賃貸借契約書の使用目的に後援会事務所として使用することが記載されているからといって,札幌市内の事務所及び北見市内の事務所が政務調査活動の拠点としての実態がなく,事務所費として政務調査活動と何ら合理的な関連性を有しない活動に支出したものと推認させる一般的,外形的な事情があるということはできない。
イ 札幌市内の事務所に係る事務所費及び通信機器賃借料について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG76議員が宿舎としても利用したものであると認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点として実態を有しないものと認めるに足りる証拠はないことは前記で説示したとおりである。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員の陳述(丙A自39の3)するところによっても,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)で説示したとおりである。そうすると,札幌市内の事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の1について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。なお,札幌市内の事務所で賃借されていた通信機器については,政務調査活動と無関係なものであることを推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠がなく,本件運用方針によれば,政務調査活動,後援会活動及び私的活動が混在し,活動の実態により明確に区分することができない場合であっても,その4分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされていることからすれば,札幌市内の事務所で賃借されていた通信機器の賃借料のうち4分の1を政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
ウ 北見市内の事務所に係る事務所費及び本件駐車場に係る賃借料について前記認定事実によれば,北見市内の事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われ,本件駐車場もこれらの活動のための来客専用の駐車場として利用されたことが認められるから,北見市内の事務所に係る事務所費及び本件駐車場の賃借料として支出された経費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係るものも含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができる。なお,本件全証拠を検討してみても,北見市内の事務所で政党活動が行われ,そのための経費に政務調査費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとは認めるに足りる的確な証拠はない。
しかして,北見市内の事務所に係る事務所費及び本件駐車場に係る賃借料については,その使用実態において政務調査活動に係る経費と後援会活動に経費とを明確に区分することができないから,本件運用方針によれば支出された経費のうち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。そうすると,北見市内の事務所に係る事務所費として支出したもののうち3分の1,本件駐車場の賃借料として支出したもののうち30%を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費(社会保険料を含む。以下,本項において同じ。)について
前記認定事実によれば,北見市内の事務所で雇用された前記各職員が政務調査活動のみならず後援会活動に従事したことが認められるから,前記各職員の人件費として支出された対価には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができる。なお,政党活動について,G76議員は,別に雇い入れた「H121」が従事し,前記2名の職員は従事していない旨主張し,同旨の陳述(丙A自39の3)をするところ,北見市内の事務所では政党活動が行われたことを推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はないことからすると,上記陳述の信用性を排斥することは困難であり,同事務所で雇用された前記各職員が政党活動に従事し,そのための経費として政務調査費が支出されたと推認させる一般的,外形的な事情があると認めることはできない。
そして,前記各職員に係る人件費については,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動による対価とを明確に区分することが困難であるから,本件運用方針によれば支出された人件費のうち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。そうすると,前記各職員に係る人件費として支出されたもののうち2分の1に政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
77 G77議員(整理番号84(民37))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲86の1から3まで,丙A民37の1の1から丙A民37の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G77議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G77議員は,別紙4主張整理表「整理番号84」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人8名を上記事務所において職員として雇用した。前記各職員のうちH122,H123,H124,H125,H126及びH127は,いずれも不定期の短期間の業務に従事した。他方,前記各職員のうちH128及びH129は,政務調査活動のほか,前記事務所とは別に設けられた後援会事務所に出向いて,議員の後援会活動にも従事した(なお,H128は,就業時間外に政党活動にも従事したが,その報酬は民主党から月額2万円が支払われた。)。
ウ G77議員は,後援会活動のために前記事務所が所在する建物の203号室を賃借した。また,政党活動については,前記事務所が所在する建物の204号室で行われた。
エ G77議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動については,前記事務所とは別の部屋で行われたものと認められるから,前記事務所の事務所費として支出された経費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動が含まれるものと推認させる一般的,外形的な事情の存在を認めるに足りる証拠はない。
したがって,前記事務所の事務所費全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
前記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動は前記事務所とは別に設けられた事務所でそれぞれ行われたことに加え,前記事務所で雇用されたH122,H123,H124,H125,H126及びH127は,いずれも不定期の短期雇用の職員であることが認められることからすると,上記6名の職員は道政報告書の発送作業等のために短期のアルバイト雇用として採用した旨のG77議員の陳述(丙A民37の3)の信用性を排斥することはできず,他に上記6名の職員に係る人件費として支出されたものについて,政務調査活動以外の活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると,上記6名の人件費全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものとはいえない。
他方,前記認定事実によれば,H128及びH129は,政務調査活動以外に後援会活動にも従事したことが認められる。しかして,G77議員は,H128は平成23年1月から同年3月まで,H129は平成22年7月から平成23年3月まで,それぞれ前記事務所以外に設けられた後援会事務所で後援会活動に従事した旨陳述するところ,上記期間以外に前記2名の職員が議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる人件費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情があると認めるに足りる的確な証拠はない。もっとも,G77議員は,前記2名の職員が政務調査活動と後援会活動に従事していた期間については,その職務内容の6割が政務調査活動であった旨陳述するが,その業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができない。そうすると,前記2名の職員が後援会活動にも従事していた期間の人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれていると推認される一般的,外形的な事情があり,これらはその業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することが困難であるということができるから,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。したがって,H128についての人件費として支出されたもののうち8分の7(平成22年4月から同年12月までのすべての活動を政務調査活動とし,平成23年1月から同年3月までの活動についてはその2分の1を政務調査活動であるとみなした場合に算定できる平成22年度中のH128の職務内容に占める政務調査活動の割合)を超えて,H129についての人件費として支出されたもののうち8分の5(平成22年4月から同年6月までのすべての活動を政務調査活動とし,同年7月から平成23年3月までの活動についてはその2分の1を政務調査活動であるとみなした場合に算定できる平成22年度中のH129の職務内容に占める政務調査活動の割合)を超えて,政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
78 G78議員(整理番号85(自40))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲87の1から3まで,丙A自40の1から丙A自40の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G78議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G78議員は,別紙4主張整理表「整理番号85」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,この事務所を「事務所1」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人5名を事務所1において職員として雇用した。事務所1では,後記ウの事務所が賃借されるまでの間,政務調査活動のみならず,後援会活動及び政党活動が行われていた。
ウ G78議員は,平成23年1月15日から同年4月15日までの間,後援会活動及び政党活動を行うための事務所として,登別市内に別の事務所(本項においては,この事務所を「事務所2」という。)も賃借した。
エ G78議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,事務所1では,事務所2を賃借した平成23年1月14日まで,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,上記期間の事務所1に係る賃借料については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動のための経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるということができる。
これに対して,G78議員は,事務所1においては,その床面積の約2分の1に当たる約30㎡を政務調査活動のために利用し,平成23年1月から同年3月までは,後援会活動及び政党活動を事務所2で行ったため,政務調査活動のみに利用された旨主張し,同旨の陳述(丙A自40の3)をする。しかし,証拠(丙A自40の1)によれば,事務所1は,2階建ての1棟の建物(床面積57.96㎡)であると認められるところ,事務所1を政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分して使用していたことを裏付ける証拠はなく,上記陳述はたやすく採用することができない。そうすると,事務所2が賃借されるまでの間,事務所1は,政務調査活動とそれ以外の活動のために利用されており,事務所1の事務所費については,その使用実態により政務調査活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費とを明確に区別することができないから,本件運用方針によれば,3分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。
したがって,事務所1の事務所費については,平成22年4月1日から平成23年1月14日までは3分の1を超えて政務調査費を充当することは本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。他方,同月15日から平成23年3月末までは,政務調査活動のみに利用されたものと認められるから,事務所費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反するものとはいえないから,結局のところ,事務所1の年間の事務所費については,36分の17を超えて政務調査費を充当することは違法であるというべきである。
(3) 人件費について
上記認定事実によれば,事務所1及び事務所2では政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動が行われていたものと認められるから,事務所1で雇用された前記各職員もこれらの活動に従事しており,その人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により,政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することが困難である。したがって,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G78議員は,前記各職員のうちH130,H131及びH132はいずれも政務調査活動に専従し,H133及びH134は政務調査活動とともに後援会活動に従事し,政党活動はG78議員及び自民党北海道登別市第一支部の職員が行った旨主張し,同旨の陳述をする。しかしながら,上記陳述は,その業務実態に関する具体的な裏付けを欠いているのみならず,かえって,H130,H131及びH132の領収書(丙A自40の2の1から丙A自40の2の3まで)と異なり,H133及びH134の給与に関する領収証(丙A自40の2の4,丙A自40の2の5)の宛名ないし名宛人は「自由民主党北海道登別市第一支部支部長G78」となっていることが認められることからすると,H133及びH134は政党活動にも関わっていたと推認することができ,上記陳述はたやすく採用することができず,他に前記各職員の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記各職員の人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
79 G79議員(整理番号86(自41))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲88の1から3まで,丙A自41の2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G79議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G79議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) G79議員は,別紙4主張整理表「整理番号86」欄に対応する「摘要」欄記載の氏名不詳者D,E,Fを職員として雇用し,政務調査活動に従事させた旨主張し,同旨の陳述をする(丙A自41の2)。しかし,同議員が氏名不詳者D,E,Fを雇用したことを証する雇用契約書も,氏名不詳者D,E,Fが労務に従事したことの対価を受領したことを証する領収書も提出されていない。のみならず,氏名不詳者D,E,Fが政務調査費を充当することができない例とされる配偶者,扶養関係にある者,同居し生計を一にする者のいずれかに該当するか否かも明らかではない。
そうすると,氏名不詳者D,E,Fの人件費については政務調査費を充当することができない一般的,外形的な事情があるということができ,これに対する的確な反証はないから,これら3名に係る人件費について政務調査費を充当することは,本件運用方針に反して違法であるというべきである。
80 G80議員(整理番号87(共2))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲89の1から3まで,丙C2の1から丙C2の13の34まで,丙C3の1から6まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G80議員は,日本共産党に所属する北海道議会議員である。
イ G80議員は,別紙4主張整理表「整理番号87」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(この項において「本件議員事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人5名を本件議員事務所において職員として雇用した。なお,上記職員のうち,H135の雇用契約書の給与支払欄には「共産党勤務を兼務により1/2に按分」との記載がある。
ウ 日本共産党は,個人の後援会を組織せず,議員の選挙区に対応した後援会が議員の後援会活動を行う方針を採用しており,G80議員に係る後援会活動は,本件議員事務所とは別に設けられた日本共産党旭川地区後援会で行われた。もっとも,G80議員は,北海道選挙管理委員会に対し,本件議員事務所の住所を所在地として同議員の個人名を冠した後援会を届け出ているが,その収支報告書によると,収入及び支出ともに零と記載されている。
政党活動については,日本共産党旭川後援会が所在する地区委員会の事務所及び北海道委員会事務所等で行われた。
エ G80議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 上記認定事実によれば,後援会活動及び政党活動は本件議員事務所とは別に設けられた事務所等で行われ,本件議員事務所では政務調査活動のみが行われたものと認められる。
もっとも,G80議員は,北海道選挙管理委員会に対して,本件議員事務所の住所を所在地として同議員の個人名を冠した後援会を届け出ているが,それは政治資金規正法に抵触する可能性を踏まえて念のため届け出られたものと認められ(丙C3の2),実際のところ,同議員の個人名を冠した後援会の収支報告書には収入も支出も零と記載されていることからすると,本件議員事務所では後援会活動が行われていないものと認められ,これに反する証拠はない。
そうすると,本件議員事務所の事務所費及び同事務所に雇用されたH135以外の職員4名の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
なお,本件議員事務所で雇用されたH135については,前記で認定したその雇用契約書の記載及び弁論の全趣旨によると,本件議員事務所で政務調査活動の補助に従事したほか,日本共産党旭川地区委員会で政党活動にも従事したことが認められる。そうすると,同人に係る人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない政党活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があるといえるが,その業務実態により政務調査活動に係る対価と政党活動に係る対価とを明確に区分することができない場合であっても,本件運用方針によれば2分の1を上限として政務調査費を支出することができるとされており,同人に係る人件費について政務調査費を充当した金額は上記の範囲内であるから,その支出が本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
81 G81議員(整理番号88(自42))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲90の1から3まで,乙13,丙A自42の1の1から丙A自42の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G81議員は,自由民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G81議員は,別紙4主張整理表「整理番号88」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する各事務所(本項においては,各事務所の所在地に応じて,それぞれ「札幌市内の事務所」,「根室市内の事務所」という。)を賃借し,また,根室市内の事務所において同欄に記載のある個人2名を職員として雇用した。
同議員の後援会活動は,根室市内の別の場所に設けられた「G81を応援する会」で行われ,また,政党活動は,根室市内の別の場所に所在する自民党北海道根室支部で行われた。他方,札幌市内の事務所は,同議員の宿舎としても利用された。
根室市内の事務所で雇用された前記各職員は,政務調査活動のみならず後援会活動にも従事した。
ウ G81議員は,北海道議会議長に対して提出した平成22年度事務所状況報告書(甲90の3)において,札幌市内の事務所について自宅兼事務所であり,他の用途との兼用はないと報告していたが,後に,同事務所が事務所であり,宿舎として兼用しているとの内容に訂正する報告書(乙13)を提出した。
エ G81議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所費について
上記認定事実によれば,G81議員は,北海道議会議長に対し,当初,札幌市内の事務所が自宅兼用である旨の報告書を提出していたが,後に,宿舎として兼用している旨に訂正する報告書を提出していることが認められることに加え,G81議員の住民票上の住所は,平成22年度においては北海道根室市内にあったと認められる(丙A自42の1の3)ことからすれば,札幌市内の事務所が自宅兼用である旨の当初の報告書の記載は,単なる誤記である可能性があると認められる。したがって,札幌市内の事務所に係る事務所費については,政務調査費を充当することができない例とされる自宅兼用の事務所費に当たると認めることはできない。
しかして,上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG81議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員が主張するところの按分割合は,政務調査活動として使用した実績に基づく試算とはいえないから,採用することはできないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)で説示したとおりである。
したがって,札幌市内の事務所に係る事務所費について3分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 根室市内の事務所に係る事務所費について
前記認定事実によれば,G81議員の後援会活動及び政党活動については,根室市内の事務所とは別の事務所等で行われたものと認められ,根室市内の事務所で政務調査活動以外の活動が行われ,その事務所費として支出されたものには議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,根室市内の事務所に係る事務所費の全額について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(4) 人件費について
前記認定事実によれば,前記各職員は,政務調査活動のみならず後援会活動にも従事したことが認められるから,前記各職員に係る人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるといえ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G81議員は,前記各職員の活動のうち政務調査活動が8割を占めていた旨主張し,同旨の陳述をするが,その陳述に係る業務実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
したがって,前記各職員の人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
82 G82議員(整理番号89(自43))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲91の1から3まで,丙A自43の1の1から丙A自43の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G82議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G82議員は,別紙4主張整理表「整理番号89」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在し,自由民主党札幌南区連合支部が所有して使用する建物の一部を,同支部から賃借して事務所として利用したほか,同欄に記載のある駐車場を賃借し,上記事務所の来客専用の駐車場として利用した。また,同議員は,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
ウ 前記事務所の所在する建物内は,自由民主党札幌南区連合支部の使用区分とG82議員が使用する事務所部分に区分されており,床面積50.89㎡のうち約半分を同議員が事務所として使用した。前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記各職員もこれらの活動に従事した。
エ G82議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費及び駐車場の賃借料について
上記認定事実によれば,前記事務所が入居する建物は,自由民主党札幌南区連合支部が使用する建物の一部であるが,G82議員の使用する前記事務所部分と自由民主党札幌南区連合会が使用する部分に区分されていると認められるから,前記事務所の事務所費には議員の政務調査活動と合理的な関連性のない政党活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとは認めることはできない。
しかして,上記認定事実によれば,前記事務所では政務調査活動及び後援会活動が行われたものと認められるから,前記事務所に係る事務所費及び駐車場の賃借料には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができるところ,その使用実態及び使用頻度により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができない場合であっても,本件運用方針によれば,2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。そうすると,前記事務所の事務所費及び駐車場の賃借料のうち2分の1を政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
前記認定事実によれば,前記事務所で雇用された前記各職員は,政務調査活動のみならず後援会活動にも従事したものと認められるから,前記各職員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれていると推認される一般的,外形的な事情があるといえるが,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができない場合であっても,本件運用方針によれば,その2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。
しかして,G82議員は,H136についてはその人件費の2分の1を,H137についてはその人件費の17分の7を政務調査費から充当しており,いずれも本件運用方針の定める範囲内であると認められるから,前記各職員の人件費に関する政務調査費の充当は,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
83 G83議員(整理番号90(民38))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲92の1から3まで,乙10,丙A民38の1の1から丙A民38の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G83議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G83議員は,別紙4主張整理表「整理番号90」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
ウ G83議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) G83議員は,後援会活動については,前記事務所が所在する建物の4号室を借りて行われたほか,区民センターや町内会館を使用して後援会総会や道政報告会を開催し,政党活動については,前記事務所が所在する建物の2号室を借りて行われた旨陳述しているところ,この陳述に反する具体的な証拠はないから,前記事務所で政務調査活動以外の活動が行われ,その事務所費には政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があると認めるに足りる証拠はない。そうすると,前記事務所に係る事務所費の全額について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
また,前記事務所では前記職員1名が雇用されたことは前記認定のとおりであるところ,G83議員は,前記職員は政務調査補助として雇用し,後援会活動は後援会会長,後援会事務局長及び同議員が行い,政党活動は民主党第1区総支部の職員1名が2号室で事務補助を行っていた旨陳述する。上記陳述には具体的な裏付けに乏しいが,上記のとおり,後援会活動や政党活動が前記事務所とは別の場所で行われていたことからすると,前記職員が政務調査活動以外の後援会活動や政党活動に従事し,その人件費には政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとまで認めるのは困難である。そうすると,前記職員の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
84 G84議員(整理番号91(民39))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲93の1から5まで,丙A民39の1の1から丙A民39の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G84議員は,民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G84議員は,別紙4主張整理表「整理番号91」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を前記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,平成23年9月当時,G84議員の後援会の看板が掲げられていたほか,同後援会が発行した平成22年12月15日付け文書には,同後援会の連絡先として前記事務所の所在地が記載されていた。
なお,政党活動は,前記事務所とは別の場所にある民主党十勝総支部で行われた。
ウ G84議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,政党活動は民主党支部で行われていたものと認められ,前記事務所で政党活動が行われており,前記事務所の事務所費に政党活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があると認めるに足りる証拠はない。
G84議員は,後援会活動は同議員の自宅で行われ,前記事務所は政務調査活動のみに使用された旨主張し,同旨の陳述(丙A民39の3)をする。しかし,平成22年度の終了から半年程度後の時点で前記事務所にG84議員の後援会の看板が掲示されていたこと,平成22年度中に発行された同後援会発行に係る文書に連絡先として前記事務所の所在地が記載されていることが認められることからすれば,前記事務所においては後援会活動も行われたものと認められ,これに反する上記陳述は採用することはできない。
そうすると,前記事務所は,政務調査活動及び後援会活動が行われていたものと認められるから,その事務所費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に係る経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があり,また,事務所の使用実態により政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができないから,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
(3) 人件費について
前記事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動が行われたものと認められることは前記認定のとおりであるから,前記各職員もこれらの政務調査活動以外に後援会活動にも従事し,その対価として人件費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。なお,政党活動については,前記事務所とは別の場所にある民主党支部で行われたものと認められるから,前記各職員が政党活動にも従事し,その対価として人件費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
しかるところ,G84議員は,前記各職員はいずれも政務調査活動にのみ従事していた旨主張し,同旨の陳述をするが,上記で指摘した前記事務所における使用実態に照らし,採用することができない。
そして,前記各職員の人件費については,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないから,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
85 G85議員(整理番号92(民40))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲94の1から5まで,丙A民40の1の1から丙A民40の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G85議員は,民主党に所属し,札幌以外の選挙区から選出された北海道議会議員である。
イ G85議員は,別紙4主張整理表「整理番号92」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「札幌市内の事務所」という。)を賃借したほか,北海道旭川市内にも事務所を設け(本項においては,以下「旭川市内の事務所」という。),旭川市内の事務所において同欄に記載のある個人2名を職員として雇用した。上記職員のうちH138の雇用契約書の仕事内容欄には「政務調査活動の事務補助業務」と記載されており,毎週月曜日と火曜日の午前9時から午後5時まで勤務し,時給850円の報酬を支払うこととなっている。また,上記職員のうちH139の雇用契約書の仕事内容欄には「後援会活動及び政務調査活動の事務補助業務」と記載されている。
ウ 札幌市内の事務所の賃貸人は,G85議員の実姉である。札幌市内の事務所は,宿舎としても利用された。
また,旭川市内の事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,H139は,これらの活動に従事した。なお,政党活動は,民主党北海道第6区総支部で行われた。
エ G85議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 札幌市内の事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,札幌市内の事務所の賃貸人は,G85議員の実姉であるが,証拠(丙A民40の1の2)によれば,同人の平成22年度中の住民票上の住所地が横浜市内にあったことが認められることからすると,札幌市内の事務所の賃貸人がG85議員の実姉であるからといって,同人がG85議員と生計を同一にしていると認めることはできない。
しかして,上記認定事実によれば,札幌市内の事務所は,札幌以外の選挙区の議員であるG85議員が宿舎としても利用したものと認められるが,同事務所が政務調査活動の拠点としての実態を有しないものであったことをうかがわせる客観的な証拠はない。
もっとも,本件運用方針上,札幌以外の選挙区の議員が宿舎としている札幌市内の賃貸マンションの賃借料については,政務調査活動の拠点として継続的に使用していることが明らかであれば,使用した実績(使用日数)に応じた額を充当することができるとされているところ,同議員による札幌市内の事務所を政務調査活動の拠点として使用した日数は証拠上明らかではないが,宿舎としての事務所の使用の実態が政務調査活動とそれ以外の活動に明確に区分することができない場合であっても,改訂された本件運用方針の内容等を踏まえて,政務調査費を充当することができる按分割合は3分の1とするのが相当であることは前記2(3)で説示したとおりである。そうすると,札幌市内の事務所費の3分の1について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって札幌市内の事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
(3) 人件費について
旭川市内の事務所では,政務調査活動のみならず後援会活動が行われたものと認められるから,前記事務所で雇用されたH139のみならずH138も,これらの活動に従事し,その対価として人件費が支払われたものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。なお,政党活動については,民主党支部で行われており,前記各職員が政党活動にも従事し,その対価として人件費が支払われたことを推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
しかるところ,G85議員は,H138がアルバイトとして政務調査活動のための帳票整理や書類整理等に従事し,後援会活動には従事していたなかった旨主張し,同旨の陳述(丙A民40の3)をする。検討するに,前記認定事実によれば,H139の雇用契約書には後援会活動にも従事する旨の記載があるのに対して,H138にはその旨の記載がないこと,H138の雇用形態は月曜日及び火曜日の勤務時間とされ,報酬も時給850円とされていることからすると,H138が政務調査活動の事務補助としてアルバイトとして雇用されていた旨の上記陳述の信用性は排斥することはできない。したがって,H138に関する人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反するものとはいえない。
他方,G85議員は,H139が携わる後援会活動の事務はスケジュール管理のみであったので,同人の人件費のうち月額3万円を後援会活動分とし,日額9600円を政務調査活動分としたと主張し,同旨の陳述をするが,その業務実態に関する具体的な裏付けはなく,たやすく採用することはできない。そうすると,H139の人件費については,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができないから,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であり,他に同人に関する人件費についての按分割合に関する的確な反証はない。
86 G86議員(整理番号93(自44))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲95の1から3まで,丙A自44の1の1から丙A自44の2の2まで,丙A自44の4,証人G86)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G86議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G86議員は,別紙4主張整理表「整理番号93」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所及び来客専用の駐車場を賃借し,また,同欄に記載のある個人3名を上記事務所において職員として雇用した。上記職員のうち,H140は,上記事務所の常勤職員であるが,H141及びH142は,1日ないし7日の短期のアルバイトとして報酬が支払われた。
ウ G86議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
エ G86議員は,平成23年4月19日,北海道議会議員の任期を満了した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,G86議員は,平成23年4月19日をもって北海道議会議員を任期満了となったものと認められるところ,同議員は,平成21年3月に後援会を解散し,平成22年度中は自民党道連の役職には就任していなかったため政党活動は行わなかった旨主張し,同旨の陳述及び証言(以下,本項においては「証言等」という。)をする。
検討するに,確かに,G86議員は,選挙がある年には,前記各職員のうちH140が後援会の事務所へ電話を取り次いでいたことを認める旨の証言をするが,事務所にかかってきた電話を後援会事務所に取り次いだからといって,前記事務所で同議員のための後援会活動が行われ,職員も後援会活動の補助業務に従事したとまでは認めることはできない。そして,G86議員が平成23年4月19日に北海道議会議員の任期を満了したことは前記のとおりであって,これに先立ち後援会を解散した旨の同議員の陳述等の信用性を疑わしめる具体的な証拠はないから,前記事務所の事務所費及び来客専用の駐車場に係る賃借料について,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動や政党活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情を認めることはできない。
そうすると,前記事務所に係る事務所費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
前記事務所の事務所費に政務調査活動以外の活動に係る経費が含まれていると推認させる一般的,外形的な事情を認めることができないことは前記で説示したとおりである。また,上記認定事実によれば,前記各職員のうち,H141及びH142は,短期のアルバイトに従事して報酬が支払われていることが認められるところ,G86議員は,これらの職員は運転手として臨時で雇っていた旨証言しており,この証言に反する的確な証拠はない(なお,証拠(丙A自44の2の2)によれば,H141には同議員の任期満了となる直前の平成23年3月30日に7日分の人件費が支払われていることが認められるところ,同議員は,その具体的な活動業務について尋問では明らかにすることができなかった。しかし,議員の任期満了の直前であるからといって政務調査活動に従事する必要性がないとまではいえないし,また,同議員が任期満了となってから相当期間が経過した後に尋問が実施されたことからすると,具体的な政務調査活動について言及することができなかったからといって,その人件費が政務調査活動以外の業務に従事したことによる対価であると推認することまではできない。)。
そうすると,前記各職員の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない。
87 G87議員(整理番号94(自45))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲96の1から4まで,丙A自45の1から丙A自45の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G87議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G87議員は,別紙4主張整理表「整理番号94」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動とともに後援会活動が行われ,前記職員もこれらの活動に従事した。
ウ G87議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 前記事務所における管理運営費について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われたものと認められるところ,本件全証拠を検討してみても,前記事務所の管理運営費について,政党活動が行われたことによる経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる的確な証拠はない。
しかるところ,G87議員は,前記事務所の管理運営費の電気料金について,平成22年5月分から平成23年3月分までの全額について政務調査費を充当し,平成22年4月分はその28分の5を,平成23年3月8日から同月31日まではその6分の5をそれぞれ政務調査費を充当した旨主張し,同旨の陳述(丙A自45の3)をする。しかし,本件運用方針によれば,事務所の管理運営費については,①後援会等の事務所と兼ねている場合には政務調査活動の使用領域や使用頻度により按分し,②後援会等の事務所を兼ねない場合は政務調査従事時間により按分し,③①により明確に区分することができない場合には2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。そして,本件全証拠を検討しても,①又は②により前記事務所における管理運営費について按分することはできず,結局のところ,前記事務所における管理運営費については,2分の1を上限として政務調査費を支出することができることになる。したがって,前記事務所における管理運営費については,その2分の1を超えて政務調査費を充当することは本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
(3) 人件費について
前記認定事実によれば,前記事務所で雇用された前記職員は,政務調査活動及び後援会活動に従事したことが認められるから,前記職員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができる。なお,本件全証拠を検討してみても,前記職員の人件費について,政党活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。
そして,本件全証拠を検討してみても,前記職員が政務調査活動に従事した時間は明らかではないが,本件運用方針によれば,その業務実態により政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することができない場合であっても,人件費として支出されたもののうち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされているから,前記職員の人件費のうち2分の1を政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとまではいえない。
88 G88議員(整理番号95(公4))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲97の1,2,丙B4の1から丙B4の6まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G88議員は,公明党に所属する北海道議会議員である。
イ G88議員は,別紙4主張整理表「整理番号95」欄に対応する「摘要」欄記載の個人1名を職員として雇用した。
ウ G88議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 以上を前提に検討すると,G88議員は,前記職員が政務調査活動の補助に専従したと主張する。確かに,前記職員の雇用契約書(丙B4の4)の仕事の内容欄には,「議会報告ニュース作成のための取材補助ならびに発送元データ管理,議会質問の資料収集,議会報告会の準備,企業経営懇談会や地域懇談会等の自動車運転業務」と記載されていること,前記職員が報酬を受領したことを証する領収証(丙B4の3)のただし書欄には上記雇用契約書に記載された仕事の内容欄に対応する業務に従事したことが記載されていることからすると,前記職員がG88議員の政務調査活動の補助業務に従事したことはうかがわれる。しかしながら,G88議員は公明党に所属する北海道議会議員であるから,同議員に関わる後援会活動や同議員が所属する政党活動も行われたものと推認されるところ,同議員は,後援会活動や政党活動の実態に関して陳述書を提出するなどして具体的な説明をしていない。そうとすれば,前記職員の人件費には,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動にも従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,この推認を妨げるような反証もされていない。
そして,前記職員の人件費については,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,上記按分割合と異なる反証もない。したがって,前記職員の人件費については,その3分の1を超えて政務調査費を充当することは本件運用方針に反する違法なものであるというべきである。
89 G89議員(整理番号96(自46))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲98の1から5まで,丙A自46の1から丙A自46の3まで,証人G89)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G89議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G89議員は,別紙4主張整理表「整理番号96」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「議員事務所」という。)を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を議員事務所において職員として雇用した。
議員事務所の賃貸人は,G89議員が代表取締役を務める株式会社J7であった。また,議員事務所の隣室にはG89議員の後援会の事務所(本項においては,以下「後援会事務所」という。)が存在し,出入口はそれぞれ別であるが,議員事務所と後援会事務所は内扉を通じて行き来することができる状態となっていた。
なお,政党活動については,議員事務所及び後援会事務所とは別に設けられた自民党室蘭支部で行われた。
ウ G89議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 議員事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,議員事務所の賃貸人は,G89議員が代表取締役を務める株式会社J7であると認められるが,本件運用方針においてはそのことを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当することができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所有の場合の事務所賃料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段の事情がない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるからといって,その事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違法であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するということができないことは前記7(2)で説示したとおりである。そして,本件全証拠を検討してみても,株式会社J7が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたなどの特段の事情は見当たらないから,同議員が代表取締役を務める会社が賃貸人であることを理由として,議員事務所の事務所費に政務調査費を充当することが違法である旨の原告の主張は採用することができない。
ところで,上記認定事実によれば,議員事務所の隣室には後援会事務所が存在し,両事務所が内扉を通じて行き来できる状態となっていることが認められるが,他方で,両事務所はそれぞれ別々の出入口が設けられ,それぞれ別の部屋に区切られていたことが認められることからすると,内扉を通じて行き来ができる状態になっていたからといって,議員事務所で後援会活動が行われており,その事務所費には後援会活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。なお,政党活動については,議員事務所とは別に設けられた自民党室蘭支部で行われたことは前記認定のとおりであり,議員事務所の事務所費に政党活動に係る経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえない。
そうすると,議員事務所の事務所費全額について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
前記各職員は,議員事務所で雇用された職員であると認められるところ,前記認定事実によれば,議員事務所で政務調査活動以外の活動が行われ,その活動に係る経費が支出されたものと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえないことは前記認定のとおりである。
そうすると,前記各職員が政務調査活動以外の活動にも従事し,そのための人件費が支払われたと推認させる一般的,外形的な事情があるとはいえないから,前記各職員の人件費の全額について政務調査費から充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
90 G90議員(整理番号97(自47))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲99の1から4まで,丙A自47の1から丙A自47の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G90議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G90議員は,別紙4主張整理表「整理番号97」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人2名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動及び後援会活動が行われ,前記各職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動は,前記事務所が所在する同じ建物の2階で行われた。
ウ G90議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
上記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われたが,政党活動は前記事務所が所在する同じ建物の2階で行われたことが認められる。
しかるところ,G90議員も同旨の陳述(丙A自47の3)をするところであるが,前記事務所における政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とはその使用実態により明確に区分することができないから,本件運用方針によれば支出された経費の2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。したがって,前記事務所における事務所費の2分の1について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない(ただし,上記按分割合によって前記事務所に係る事務所費を按分すると違算があり,その限度で違法であるというべきである。)。
(3) 人件費について
前記認定事実によれば,前記事務所で雇用された前記各職員は,政務調査活動及び後援会活動に従事したことが認められる。しかし,政党活動は,前記事務所が所在する建物の2階で行われていたことは前記認定のとおりであり,G90議員は,政党活動については自民党稚内支部に勤務する別の職員が行っていた旨陳述するところ,これに反する具体的な証拠はない。
しかるところ,G90議員も同旨の陳述をするところであるが,政務調査活動は多岐にわたり,政務調査活動に係る対価と後援会活動に係る対価とを明確に区分することは困難であるから,本件運用方針によれば,支出された人件費のうち2分の1を上限として政務調査費を充当することができるとされている。したがって,前記各職員の人件費の2分の1について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
91 G91議員(整理番号98(自48))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲100の1から3まで,丙A自48の1から丙A自48の3まで)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G91議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G91議員は,別紙4主張整理表「整理番号98」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所を賃借し,また,同欄に記載のある個人1名を上記事務所において職員として雇用した。
前記事務所においては,政務調査活動のみならず後援会活動も行われ,前記職員も,これらの活動に従事した。なお,政党活動は,前記事務所とは別に所在する自民党千歳支部で行われた。
ウ G91議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 事務所費について
前記認定事実によれば,前記事務所では,政務調査活動及び後援会活動が行われたが,政党活動については,前記事務所とは別に所在する自民党千歳支部で行われたものと認められる。そうすると,前記事務所の事務所費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,事務所の使用実態により,政務調査活動に係る経費と後援会活動に係る経費とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,支出された経費のうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G91議員は,前記事務所における使用実態において1週間の事務所使用時間40時間のうち28時間を政務調査活動に使用したため,事務所費の10分の7に政務調査費を充当した旨陳述(丙A自48の3)するが,その陳述に係る事務所の使用実態に関する具体的な裏付けを欠いており,たやすく採用することができず,他に事務所費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記事務所の事務所費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
(3) 人件費について
前記事務所で雇用された前記職員は,政務調査活動及び後援会活動に従事したものと認められる。なお,G91議員は,政党活動については自民党千歳支部の職員が従事し,前記職員がこれに従事したことはない旨陳述するところ,これに反する証拠はない。そうすると,前記職員の人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない後援会活動に従事したことによる対価が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情があるということができ,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当である。
これに対して,G91議員は,前記職員は政務調査活動と後援会活動に従事した割合は7対3であったので,人件費を按分して10分の7に政務調査費を充当した旨陳述するが,その陳述に係る業務実態についての具体的な裏付けはなくたやすく採用することはできず,他に人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
そうすると,前記職員の人件費として支出されたもののうち2分の1を超えて政務調査費を充当することは,本件運用方針に反するものであって違法であるというべきである。
92 G92議員(整理番号99(自49))
(1) 前記前提事実に加え,証拠(甲101の1から4まで,丙A自49の1の1から丙A自49の3まで,証人G92)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア G92議員は,自由民主党に所属する北海道議会議員である。
イ G92議員は,別紙4主張整理表「整理番号99」欄に対応する「摘要」欄記載の住所地に所在する事務所(本項においては,以下「議員事務所」という。)を賃借し,同欄に記載のある個人4名を上記事務所において職員として雇用した。また,G92議員は,同欄に記載のある各駐車場を賃借したが,このうち枝番2の駐車場は議員事務所の来客専用の駐車場として,枝番3の駐車場は議員事務所の来客兼用の駐車場として,それぞれ利用した。
議員事務所の賃貸人は,G92議員が代表取締役を務める株式会社J8であった。
ウ 前記各職員のうちH23及びH24は,いずれも,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動にも従事した。
また,前記各職員のうちH22は,平成22年10月に雇用されたが,遅くとも同年11月から平成23年3月までの間,政務調査活動のみならず後援会活動及び政党活動にも従事した。
G92議員の後援会事務所(本項においては,以下「後援会事務所」という。)及び自由民主党札幌市西区第2支部の事務所(本項においては,以下「支部事務所」という。)は,いずれも議員事務所が入居する建物の4階に入居していた。
エ G92議員は,平成22年度中,別紙4主張整理表の「使途」欄及び「摘要」欄に記載された経費について,同表の「支出額」欄記載の額を支出し,この支出に対し,同表の「充当額」欄記載の額の範囲で政務調査費を充当した。
(2) 議員事務所に係る事務所費について
上記認定事実によれば,議員事務所の賃貸人は,G92議員が代表取締役を務める株式会社J8であると認められるが,本件運用方針においてそのことを禁ずる定めはないから,本件運用方針において政務調査費を充当することができない例として定める「議員所有又は議員と生計を一にする親族所有の場合の事務所賃料」を潜脱する目的で当該法人が設立されたなどの特段の事情のない限り,事務所の賃貸人が当該議員が役員を務める法人であるからといって,その事務所の賃借料に対して支出された政務調査費の全額が違法であることを推認させる一般的,外形的な事情が存在するということができないことは前記7(2)で説示したとおりである。そして,本件全証拠を検討してみても,株式会社J8が本件運用方針を潜脱する目的で設立されたなどの特段の事情は見当たらないから,同議員が代表取締役を務める会社が賃貸人であることを理由として,議員事務所の事務所費に政務調査費を充当することが違法である旨の原告の主張は採用することはできない。
ところで,上記認定事実によれば,前記各職員のうちH23,H24及びH22は,いずれも,政務調査活動のみならず政党活動及び後援会活動にも従事していたことが認められる(なお,G92議員は,H22は政党活動には従事していない旨陳述するが,他方で,別紙4主張整理表の「補助参加人の主張」欄のとおり,同人は政党活動にも従事していた旨主張しており,上記陳述は採用しない。)が,他方で,議員事務所が入居する建物であるとはいえ,別の階に後援会事務所と支部事務所が設けられていたことが認められることからすると,上記職員3名が議員事務所で政務調査活動以外の活動に従事していたとまでは認めることはできず,他に議員事務所において政党活動や後援会活動が行われ,その活動に係る経費としても事務所費が支出されたことを推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると,議員事務所の事務所費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえず,また,議員事務所の駐車場については,来客専用の駐車場については全額について,来客兼用の駐車場についてはその2分の1について,それぞれ政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
(3) 人件費について
G92議員は,H23については1週間40時間のうち約20時間程度政務調査活動に従事し,H24については1週間40時間のうち約28時間程度政務調査活動に従事し,また,H22については,試用期間である平成22年10月は政務調査活動のみに従事させたが同年11月から平成23年3月までは1週間40時間のうち約30時間程度政務調査活動に従事したとして,それぞれの労働時間のうち政務調査活動に従事した時間から算出した按分割合によって政務調査費を充当した旨主張し,同旨の陳述(丙A自49の3)及び証言(以下,本項において「証言等」という。)をする。
しかし,G92議員は,上記3名の各職員の業務実態について,客観的な報告書を作成したり,タイムカードで管理するなどしていない旨証言しているのであるから,各職員の政務調査活動に従事した業務実態に関する証言等はたやすく採用することができない。そうすると,上記3名の職員に関する人件費については,議員の政務調査活動と合理的な関連性を有しない活動に従事したことによる経費が含まれているものと推認される一般的,外形的な事情があり,また,その業務実態により政務調査活動に係る対価とそれ以外の活動に係る対価とを明確に区分することができないから,的確な反証がされない限り,人件費として支出されたもののうち3分の1を超えて充当された政務調査費については,本件運用方針に反する違法な政務調査費の支出であると評価するのが相当であるところ,これと異なる上記3名の職員の人件費の按分割合に関する的確な反証はない。
他方,G92議員は,前記各職員のうちH143について,平成22年4月1日から同年8月末日までの間,同議員の運転手やパソコン操作に従事したものであり,政務調査活動に専従した旨証言等をする。しかして,議員事務所の事務所費には,政務調査活動以外の活動による経費が含まれているものと推認させる一般的,外形的な事情はないことは前記認定のとおりであり,他にH143が別の階にある後援会事務所で後援会活動に従事し,また,支部事務所で政党活動に従事し,これらの活動に従事したことによる対価として人件費が支出されたと推認させる一般的,外形的な事情を認めるに足りる証拠はない。そうとすれば,H143の人件費の全額について政務調査費を充当したとしても,本件運用方針に反する違法なものであるとはいえない。
第6 当裁判所の判断4(争点(4)について)
1 本件条例11条が,「会派の代表者又は議員は,その年度において交付を受けた政務調査費の総額から,当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による支出(8条に規定する使途基準に従って行った支出をいう。)の総額を控除して残余がある場合,当該残余の額に相当する額の政務調査費を返納しなければならない」と定めていることからすると,本件各会派又は本件各議員による政務調査費の支出に違法な部分がある場合における本件各会派及び本件各議員が北海道に返還すべき不当利得の金額については,以下のとおり計算されるべきである。すなわち,
(1) 当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による支出がその年度において交付を受けた政務調査費の総額を上回る場合において,①当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による支出から当該会派又は議員による政務調査費の支出のうち違法な部分に相当する額を控除し,その控除した額(以下,この項において「適法であると認められた政務調査費の支出額」という。)がなお交付を受けた政務調査費の総額を上回るときは,当該会派ないし議員には利得はなく,北海道には損失が生じたとはいえないが,②適法であると認められた政務調査費の支出額が交付を受けた政務調査費の総額を下回るときは,その差額が当該会派ないし議員の利得であり,北海道に生じた損失であるといえる。
(2) 当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による支出がその年度において交付を受けた政務調査費の総額を下回る場合においては,当該会派又は議員による政務調査費の支出のうち違法な部分に相当する額が当該会派又は議員による利得であり,北海道に生じた損失であるといえる。
2 上記を踏まえて,本件各会派及び本件各議員が北海道に返還すべき不当利得の金額について計算すると,別紙5計算結果説明書の「返還すべき額」欄記載の金額となる(ただし,返還すべき額が請求額を超える場合は請求額のとおりとした。)。
第7 結論
以上によれば,原告の請求は,別紙2一覧表の「相手方」欄記載の各被告補助参加人に対し,各被告補助参加人に対応する同表の「認容額」欄記載の各金員を北海道に支払うよう請求することを求める限度で理由があるから,これを認容し,その余の部分はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担については,地方自治法242条の2第11項,行政事件訴訟法43条3項,7条,民事訴訟法61条,64条本文,66条の各規定を適用して,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第5部
(裁判長裁判官 岡山忠広 裁判官 渡邉充昭)
裁判官山田雅秋は,差し支えのため署名押印することができない。裁判長裁判官 岡山忠広
別紙
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