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裁判年月日 令和 2年 1月24日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平３０（ワ）１９１８８号・平３０（ワ）２５７９３号
事件名 債務不存在確認等請求事件（本訴）、違約金請求反訴事件（反訴）
裁判結果 請求棄却（本訴）、認容（反訴） 文献番号 2020WLJPCA01248013
要旨
◆原告会社が、被告会社において、両社間の業務委託契約（本件委託契約）上、ホテルの清掃業務を被告会社のスタッフで行うべき義務があるのに同業務を外注し、また、インターネットのサイト利用に関し、不要なオプション機能の利用設定をしたと主張して、同社に対し、債務不履行に基づく損害賠償を求めた（本訴）ところ、被告会社が、原告会社から即時解除条項（信頼関係の著しい毀損）に基づき本件委託契約を解除する旨の本件意思表示がされたところ、同解除が無効であり、本件意思表示が解約の申入れであると主張して、原告会社に対し、本件委託契約に基づく約定違約金の支払を求めた（反訴）事案において、被告会社は、原告会社から了承を得てホテルの清掃業務を外注することにしたことが認められ、また、被告会社には、業務の遂行にあたり、相当な範囲での裁量が与えられており、同社において、オプション機能の利用設定をしてはならない義務があったとは認められないから、本訴請求には理由がないとする一方、本件委託契約上の両社間の信頼関係が著しく損なわれた事情があるとは認められないから、本件意思表示による解除は無効であって、反訴請求には理由があるとして、本訴請求を棄却し、反訴請求を認容した事例
出典
参照条文
民法４１５条
民法４２０条
民法５４０条
民法６４４条
民法６５６条
裁判年月日 令和 2年 1月24日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平３０（ワ）１９１８８号・平３０（ワ）２５７９３号
事件名 債務不存在確認等請求事件（本訴）、違約金請求反訴事件（反訴）
裁判結果 請求棄却（本訴）、認容（反訴） 文献番号 2020WLJPCA01248013
平成３０年（ワ）第１９１８８号 債務不存在確認等請求事件（以下「本訴」という。）
平成３０年（ワ）第２５７９３号 違約金請求反訴事件（以下「反訴」という。）
東京都港区〈以下省略〉
原告（反訴被告） 株式会社ジュネイ（以下「原告」という。）
同代表者代表取締役 Ａ
同訴訟代理人弁護士 杉本佳英
同 松繁三知代
同 伊与田美幸
神戸市〈以下省略〉
被告（反訴原告） ＮＢＳホテルズ＆リゾーツ株式会社（以下「被告」という。）
同代表者代表取締役 Ｂ
同訴訟代理人弁護士 上入佐輝史
主文
１ 原告の本訴請求をいずれも棄却する。
２ 原告は，被告に対し，２４８４万円及びこれに対する平成３０年８月１７日から支払済みまで年６分の割合による金員を支払え。
３ 訴訟費用は，本訴反訴を通じ，原告の負担とする。
４ この判決は，第２項に限り，仮に執行することができる。
事実及び理由
第１ 請求の趣旨
１ 本訴
被告は，原告に対し，２４９万５５０３円及びこれに対する平成３０年６月３０日から支払済みまで年６分の割合による金員を支払え。
２ 反訴
主文第２項同旨
第２ 事案の概要
１ 事案の要旨
本件のうち本訴は，原告が，被告において，両者間の業務委託契約上，ホテルの清掃業務を被告のスタッフにより行うべき義務があるのに，同業務を外注し，また，インターネットのサイトの利用に関し，不要なオプション機能の利用設定をしたと主張して，債務不履行に基づいて，被告に対し，損害金２４９万５５０３円（同業務の外注費２３９万８３０３円及び同機能の利用料９万７２００円の合計相当額）及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成３０年６月３０日から支払済みまで商事法定利率年６分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であり，本件のうち反訴は，被告が，原告から即時解除条項（信頼関係の著しい毀損）に基づく同委託契約の解除の意思表示がされたところ，同解除が無効であり，同解除の意思表示が解約の申入れであると主張して，同委託契約に基づいて，原告に対し，約定の違約金２４８４万円及びこれに対する反訴状送達日の翌日である同年８月１７日から支払済みまで商事法定利率年６分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
なお，原告は，当初，上記約定の違約金支払債務が存在しないことの確認を求めていたが，反訴の提起に伴い，同請求に係る訴えを取り下げた。
２ 前提事実
以下の各事実は，当事者間に争いがない事実であるか，後掲各証拠により容易に認められる事実である。
(1) 当事者
ア 原告は，旅館業等を目的とし，平成２８年４月１日に設立された株式会社である（当事者間に争いがない事実，甲１）。
イ 被告は，ホテル，旅館，飲食店，ゴルフ場，テニス場，スキー場，キャンプ場，遊技場，遊園地，釣堀，碁会所，公衆浴場，病院，スーパーマーケット，その他の商業施設等の経営，保安，管理，企画，事業再生業務等を目的とし，平成２７年１１月２日に設立された株式会社である（当事者間に争いがない事実，甲２）。
(2) ホテルの運営に関する業務委託契約の締結
原告と被告は，平成２９年１月３１日，契約期間を同年５月１日から５年間とし，原告が被告に対し，京都市〈以下省略〉所在の「ａホテル」（以下「本件ホテル」という。）の運営及び管理等の業務（以下「本件業務」という。）を委託する内容の，以下の各条項を含む業務委託契約（以下「本件委託契約」という。）を締結した（当事者間に争いがない事実，乙１）。
ア 被告は，本件業務の遂行にあたって，ホテル運営，方針等に基づく合理的努力の範囲にて，本件ホテルの収益の最大化を目的とする（１条）。
イ 本件業務の内容は，以下のとおりとする（２条４項）。
① 本件ホテルの運営及び管理業務
② 本件ホテルの建物及び設備の維持管理業務
③ 特定建物定期検査等の各種検査，法定点検及び監督官庁への対応業務
④ 防火管理業務
⑤ その他①から④までに付随する業務
ウ 被告は，各月２０日までに，前月及び当該年度開始から同月までのＯＣＣ，ＡＤＲ，ＡＰＲ等の運営状況，及び売上げ，人件費，運営費，管理手数料，営業損益を記載した損益計算書を作成し，原告に対して月次報告を行わなければならない（２条７項）。
エ 被告は，善良なる管理者の注意をもって本件業務を履行するものとする（５条）。
オ 被告は，本件業務の遂行に必要な施設賠償責任保険，受託物賠償責任保険等の各種賠償責任保険，及び現金動産保険，設備動産保険，労働災害保険等の各種保険を自己の負担において付保，継続する（７条１項）。
カ 原告又は被告が本件委託契約に違反し，相手方から催告されたにもかかわらず相当期間内にこれを是正しない場合には，相手方は，本件委託契約を解除することができるものとする（１５条１項）。
原告又は被告が次の⑧に該当した場合には，相手方は，何らの催告なしに本件委託契約を直ちに解除することができるものとする（１５条２項。以下，同項８号を「本件即時解除条項」という。）。
⑧ 原告と被告間の信頼関係が著しく損なわれたとき
キ 原告が契約期間（平成２９年５月１日から５年間）満了までに本件委託契約を解約する場合は，原告は，被告に対し，違約金として，残存月×５０万円（消費税別途）を支払うものとする（１７条２項）。
ク 原告又は被告に本件委託契約を継続することが困難な事由が生じた場合は，協議により，合意の日から６か月後に本件委託契約を解約することができる（１８条）。
(3) 本件ホテルの開業
本件ホテルは，平成２９年７月１日，開業した（当事者間に争いがない事実）。
(4) 原告による本件委託契約の解除の意思表示
原告は，平成３０年４月１３日，被告に対し，本件即時解除条項に基づいて，同年６月３０日をもって本件委託契約を解除する旨の意思表示（以下「本件意思表示」という。）をした（当事者間に争いがない事実）。
(5) 本件委託契約の終了
本件委託契約は，平成３０年６月３０日に終了した。その結果，本件委託契約の契約期間のうち残存期間は，４６か月である。（当事者間に争いがない事実）
３ 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 被告において本件ホテルの清掃業務を被告のスタッフにより行うべき義務があったか（本訴・反訴関係）。
（原告の主張）
被告は，本件委託契約の締結の際，原告に対し，本件ホテルの清掃業務を自社のスタッフにより行うために費用が発生しないと説明し，これを前提とする収支予測を示し，原告との間でその旨の合意をしたから，同業務について，被告のスタッフにより行うべき本件委託契約上の義務があった。
しかるに，被告は，平成２９年７月から，ピーエムサービス株式会社（以下「ピーエムサービス」という。）に対し，上記業務を委託し，同月１２日頃，原告から，同業務を自社に切り替える準備をし，清掃外注費を削減するように依頼されたのに，漫然と同業務の外注を継続した。
（被告の主張）
本件ホテルの清掃業務を自社のスタッフにより行うか，外注により行うかは，本件ホテルの運営管理業務を受託した被告の判断により決められるべきものである。
本件ホテルの清掃業務は，被告のスタッフにより行われる予定であったが，パート職員の確保が困難であったことから，外注をすることにつき事前に原告に伝え，原告から了承を得ている。原告自身，少なくとも１年間，同業務を外注することを理解していたはずであり，原告代表者も，ピーエムサービスの清掃業務を評価し，平成３０年以降もピーエムサービスによる清掃業務が行われることを前提とした対応をしている。
(2) 被告においてプライスリサーチ機能の利用設定をしてはならない義務があったか（本訴・反訴関係）。
（原告の主張）
被告は，宿泊予約サイトの一元管理システム「ＴＥＭＡＩＲＡＺＵシリーズ（手間いらず）」（以下「本件システム」という。）を利用していたが，本件システムのオプション機能であるプライスリサーチ機能を利用する必要がなく，原告に対しても同機能を利用することはないと説明していたのに，本件システムを利用する際，同機能の利用設定を行い，原告に不要な支出をさせた。
（被告の主張）
本件システムのうちどのような機能を利用するかは，被告の裁量に委ねられており，プライスリサーチ機能を利用したことが何らかの義務違反を構成することはない。また，プライスリサーチ機能は，本件ホテルの運営現場において，有効に活用されていた。
(3) 原告が被った損害（本訴関係）
ア 本件ホテルの清掃業務を外注したことによる損害
（原告の主張）
原告は，ピーエムサービスに支払われた平成２９年７月分から平成３０年２月分までの本件ホテルの清掃外注費合計２３９万８３０３円を負担し，同額の損害を被った。
（被告の主張）
被告が自社のスタッフにより清掃業務を行えば，固定費用としての人件費を要することとなり，外注費がそのまま損害となるわけではない。実際，外注費の実績額は予算よりも低額で，固定のパート職員２名を雇用するよりも安価であった。
イ 本件システムのプライスリサーチ機能の利用設定をしたことによる損害
（原告の主張）
原告は，平成２９年７月分から平成３０年３月分までの本件システムのオプション機能の利用料合計９万７２００円を負担し，同額の損害を被った。
（被告の主張）
本件システムのオプション機能の利用料の負担が原告の損害であることは争う。
(4) 原告と被告間の信頼関係が著しく損なわれた事情が認められるか（反訴関係）。
（原告の主張）
本件即時解除条項は，本件ホテルに多額の資本を投じた原告が，被告から本件委託契約を解除されることにより本件ホテルの経営が中断し，投下資本の回収が不可能となる事態を回避するという原告を保護するための規定であるから，原告と被告間の信頼関係の破壊は，原告の期待を保護すべく，原告の利益が侵害されているか否かを基準に判断されるべきである。後記①の被告による売掛金の管理ミスは，極めて重大な債務不履行であり，その不履行により本件ホテルの経営という原告の根本的な利益が侵害されたから，原告と被告間の信頼関係は破壊されている。
また，前記(1)及び(2)の（原告の主張）並びに後記①から⑥までのとおり，被告による本件業務の遂行には，債務不履行を含む様々な不備が散見され，原告は，不備を発見する都度，被告に対し，その旨を指摘し，改善を求めてきたのに，被告から一切の説明がなく，当該不備もほとんど改善がされなかった。とりわけ被告の説明懈怠は，単に説明を怠ったというものではなく，度重なる原告からの問合せに対して一切対応しないというものであった。したがって，原告と被告間の信頼関係は，本件委託契約を継続することができないほど著しく損なわれた。
① 被告には，原告に対して毎月２０日までに月次報告をすべき義務があったのに，２０日を過ぎることが多く，その際に遅れる旨の事前連絡及び遅れた理由の説明がされることはなく，その内容も，月次損益計算書と収支月報の内容が一致しないなど，誤りが多かった。被告は，平成２９年１２月になると，原告から要求されたのに，売上げと入金の関係を示すエクセルファイルの収支表（以下「エクセル収支表」という。）を提出することすらなくなり，平成３０年２月１４日以降，原告の顧問税理士からエクセル収支表の提出を求められたのに，これにも応じなかった。その結果，原告は，各ＯＴＡ（インターネット上のみで取引を行う旅行会社のこと。以下同じ。）の売上げに係る入金の状況を把握することができなくなり，月次損益計算書により被告から報告される各ＯＴＡの累計売上額と，各ＯＴＡから原告に支払われる累計入金額との差額が次第に大きくなって，その額が１００万円を超えた。実際，被告は，平成２９年１１月の売掛金１３８万１２５１円及び平成３０年３月の売掛金８９万７４９５円の請求を怠り，また，平成２９年１１月の売掛金５８万０８００円の請求を５か月近くも放置した。
② 被告は，原告との間で宿泊価格を変更する場合にその都度協議する旨を合意し，各ＯＴＡ上に本件ホテルの宿泊料金等を適切に表示すべき義務があったのに，Ａｇｏｄａのサイト上に開業当初から誤った価格を掲載したり，原告の承諾なく，一律の割引価格を設定して掲載したりし，原告からの修正依頼等に応じることがなかった。
③ 被告は，宿泊に支障が生じないようにリネンの在庫確認を適切に行うべき義務があったのに，在庫確認を怠ったため，平成２９年１２月末頃から平成３０年１月３日までリネンが不足し，同月３日には新たな顧客の予約を受け付けることができなかった。
④ 被告は，宿泊予約のキャンセル料が発生した場合に，これを確実に徴収することができるように各ＯＴＡの設定を適切に行うべき義務があったのに，クレジットカード情報の入力を不要とする設定をし，キャンセル料金の請求ができないという設定のまま放置した。
⑤ 被告は，本件業務の遂行に必要な施設賠償責任保険その他の各種保険への加入手続をすべき義務があったのに，同手続をしなかった。
⑥ 被告は，平成２９年５月末日から同年６月１３日までに，業務マニュアル，英語接客マニュアル，インフォメーションブック，周辺観光マップ及び中国語版ホームページを作成すべき義務があったのに，同年７月１日になっても，同作成を完了させなかった。
（被告の主張）
本件委託契約のような継続的契約においては，契約当事者は，契約の継続を期待して人的・物的資本を投下することが通常であり，契約終了を求められる相手方の投下資本回収への期待等を保護する必要があるから，信義則上，契約の解除には，当事者が将来にわたって契約を継続することができないほどの，信頼関係の破壊が必要である。原告の主張を前提としても，被告の行為に違法性はなく，その損害も非常に小さなものであり，原告が指摘する点は本件意思表示までに解消されていたから，継続的契約である本件委託契約における原告と被告間の信頼関係を著しく損なわせるものとはいえない。
① 月次報告が２０日を過ぎることはあったが，その旨の事前連絡をしていたし，遅れた原因は，取引先からの請求書類が揃わなかったこと等のほか，原告から原告が独自に支出した費用を本件ホテルの収支に反映させるように求められ，その判断が困難なときがあったからである。被告は，原告代表者又は原告の顧問税理士からの問合せに対応していたし，エクセル収支表の提出をすることができなかったのは，各ＯＴＡ及びクレジットカード会社からの入金が原告名義の口座に変更されたため，その入金額を把握することができなくなったからである。
② 被告は，被告の裁量に基づき，稼働率等を考慮して本件ホテルの売上げが最大になるように。割引を含めた宿泊価格を決定し，設定しただけである。
③ 平成２９年末にリネンの不足が生じたが，被告が別の会社からリネンを手配したことから，宿泊のキャンセル等は発生していない。また，リネンの不足は，原告がリネンを自ら保有する方法に拘った上，被告からの在庫の増加要望に応じなかったためである。
④ 被告は，本件ホテルの売上げの最大化を図るという観点から，被告の裁量に基づき，事前徴収を必須とすることによるキャンセル料の確保より，事前徴収を必須としないことによる予約の増加を図ることの利益が大きいと考え，事前徴収を必須としない設定としたものである。
⑤ 被告は，被告の事業活動を包括して補償する超ビジネス保険（事業活動包括保険）に加入をしていた。
⑥ 被告が業務マニュアル等を作成すべき義務はなく，本件ホテルの運営に際し，どのような案内，マニュアルを作成するかは被告の裁量である。なお，被告は，日本語及び英語のインフォメーションブックを作成し，平成２９年７月１日付けで，原告に対し，これを送信している。
第３ 当裁判所の判断
１ 認定事実
前記第２の２の前提事実（以下「前提事実」という。），後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば，以下の各事実が認められる。
(1) 被告は，原告から，ホテルの運営に関するノウハウを一切有していないという説明を受け，原告に対し，被告には長年にわたる同運営の経験があり，同運営に関する業務の全てを提供することができる旨を申し向け，平成２９年１月３１日，原告との間で，本件委託契約を締結した（前提事実(2)，当事者間に争いがない事実，乙１５（２頁））。
(2)ア 被告は，平成２８年１１月頃，原告に対し，開業から３年間の月別の収支予測表を示したが，同表においては，「直接営業費」，「ハウスキーピング」が０円とされ，本件ホテルの清掃業務を被告が行うために外注費用が発生しないことが前提とされていた。また，被告は，本件ホテルの開業前に清掃業務に従事するスタッフ１名を雇用し，原告の費用によりトレーニングを受けさせた。（甲４（７～９枚目），３２の１～３，甲３３～３６，原告代表者（調書１３頁））
イ しかし，被告は，清掃業務を円滑に実施するだけのスタッフを雇用することができなかったため，同業務を外注することとし，原告から了承を得た。被告は，平成２９年６月２７日，原告に対し，年間収支及び予算の一覧表を添付した電子メールを送信したが，同表には，「直接営業費」，「ハウスキーピング」として，年額５３０万９４２１円から５５２万３９２２円までの額が計上されていた。（乙２，１６（３頁），証人Ｃ（調書２頁），原告代表者（調書１４頁））
ウ 被告は，平成２９年６月２９日，原告に対し，同年７月２１日から清掃業務を委託すべく交渉中であるとしつつ，被告がピーエムサービスに対して本件ホテルの清掃等の業務を委託し，その契約期間を同年８月１日から１年間とする室内清掃管理業務委託契約書の案を添付した電子メールを送信し，その確認を求めた（乙３）。
エ 被告は，平成２９年７月から，本件ホテルの清掃業務をピーエムサービスに委託したところ，原告代表者は，同月１２日，被告に対し，「清掃は自社に切り替える準備をし，清掃外注費を削減する。」よう依頼した（甲５，６，７の２）。
オ 原告は，ピーエムサービスから請求を受けた平成２９年７月分から平成３０年２月分までの客室清掃外注費として，合計２３９万８３０３円を負担した（甲１０～１６）。
(3) 被告は，保険期間を平成２９年２月１日から合計２年間，業種を旅館，ホテル，簡易宿所とし，財産，休業及び賠償責任に関する補償を内容とし，被告の事業活動を包括して補償する超ビジネス保険（事業活動包括保険）に加入をしていた。被告は，同年５月１１日，原告に対し，旅館保険への加入を予定している旨を伝え，同年６月２６日，顧客がホテルの物品を破損させた場合に対応することができないとし，「ＪＴＢ旅ホ連の保険」の見積もりを依頼中であると伝えたが，実際に加入をすることはなかった。被告は，同年７月頃，火災保険及び損害賠償保険に加入をし，平成３０年３月１３日，本件ホテルについて，保険期間を同月２日から同年１２月１日までとする旅館賠償責任保険等に加入をした。（甲２５，４２，４３，５４，乙６の１～５，乙１０の１（３２枚目），弁論の全趣旨）
(4) 原告代表者は，平成２９年６月３０日，被告に対し，業務マニュアルの作成等の完了が未確認であるという電子メールを送信したが，同メールに添付されたエクセルファイルには，被告が担当すべき未完了の作業として，運営マニュアル作成（５月末まで），英語接客マニュアル作成（同）及びインフォメーションブック作成（６月１３日まで）が記載されている。被告は，原告に対し，同年７月１日，日本語及び英語によるインフォメーションブックを送信したところ，原告は，同年８月１２日，被告に対し，「英語の接客Ｑ＆Ａ」を送信したほか，被告から提出されたインフォメーションブックに相当数の誤り等があったため，その修正版を作成した。（当事者間に争いがない事実，甲２６の１，２，甲２７の１，２，甲４４，５７（３，４頁），乙７，原告代表者（調書３～５頁））
(5) 本件ホテルは，平成２９年７月１日に開業した。本件ホテルの宿泊基本料金は，同開業までに，原告と被告間の協議の結果として設定されたが，被告は，Ａｇｏｄａのサイトにおいて，宿泊価格の割引設定を行っていた。原告代表者は，同年８月４日，本件ホテルの支配人に対し，Ａｇｏｄａのサイト上の価格が他のサイトのものより安い理由についての説明を求め，同月５日，同価格の修正をするように要請したが，被告が同割引設定を解除することはなかった。（当事者間に争いがない事実，甲１７，１８，２４，５７（８頁），乙１６（４頁），証人Ｃ（調書２，３，７～９頁），原告代表者（１０頁），弁論の全趣旨）
(6)ア 被告は，原告に対し，毎日の収支日報，及び毎月の月次損益計算書を提出したほか，１週間ごとに被告名義の預金口座から原告名義の預金口座に金員の振込送金をしていた。被告は，原告から，収支報告上の売上額と実際の入金額との差額を確定する必要があるとして問合せを受けたことから，これを明らかにするためのエクセル収支表を作成し，原告に対し，これを送信した。もっとも，同年１１月頃，各ＯＴＡの売上げの振込先が被告名義の預金口座から原告名義の預金口座に変更されたため，被告において入金額の管理をすることができなくなり，その結果，同月のエクセル収支表を最後に，エクセル収支表が原告に送信されることはなかった。（当事者間に争いがない事実，甲５７（４～６頁），乙９，１０の１～３，乙１１の１，２，乙１６（６頁））
イ 被告は，Ｅｘｐｅｄｉａの平成２９年１１月チェックアウト分に係る売掛金１３８万１２５１円及び平成３０年３月チェックアウト分に係る売掛金８９万７４９５円の請求を怠った。また，被告は，Ｃ－ｔｒｉｐの平成２９年１０月チェックアウト分に係る売掛金５８万０８００円の請求を怠り，平成３０年５月７日に至り，同売掛金が入金された。これらの事実は，いずれも本件意思表示の後に原告に発覚し，Ｅｘｐｅｄｉａからの入金は，同年７月以降になった。（甲４８の１，甲４９，５０，５１の１～３，甲５７（７頁），乙１６（６頁），証人Ｃ（調書５頁），原告代表者（調書５～７頁））
(7) 本件ホテルにおいては，平成２９年１２月３１日から平成３０年１月３日までの間，リネン（シーツ，枕カバー，タオル）の不足が生じた。被告は，他の業者からリネンの手配をしてもらうことにより対応し，予約客に必要な枚数を確保したが，同月３日に新たな顧客を宿泊させることができない状況となった。（当事者間に争いがない事実，甲２３，乙１６（５頁），証人Ｃ（調書４，１１～１３頁））
(8) 本件ホテルにおいては，予約のキャンセル料の設定がされていたが，被告は，ＯＴＡの一部において，宿泊日当日の早い時間帯の予約以外の予約時のクレジットカード情報の入力を不要とする設定をするなど，各ＯＴＡにおいて，予約時のクレジットカード情報の入力を不要とする設定をしていた。原告代表者は，平成３０年２月２２日，被告に対し，「以前・・・ノーショー対策でクレジットカード情報入力は必須とお伝えしましたよね？」とした上，クレジットカード情報の入力を必須とするように要請した。もっとも，被告がこれに応じることはなかった。（当事者間に争いがない事実，甲２４，４０，４１，５７（１０頁），乙１６（５頁），証人Ｃ（調書５頁），原告代表者（調書１２，１３頁））
(9) 被告は，本件ホテルの開業以後，本件システムのプライスリサーチ機能の利用設定をしていた。原告代表者は，平成３０年２月１４日，被告に対し，本件システムの「プライスリサーチ機能，使っていないですよね？」と記載した上，無料で他社の価格が分かるし，原告は当初から希望してないし，お願いもしていないと記載した電子メールを送信した。被告は，同メールの送信を受け，同機能の利用を止めた。（甲２０，５７（９頁），乙１６（３頁），証人Ｃ（調書３，４頁），原告代表者（調書１１，１２頁））
原告は，本件システムを運営する比較．ｃｏｍ株式会社から請求を受けた平成２９年７月分から平成３０年３月分までの本件システムのオプション機能の利用料として，合計９万７２００円を支払った（甲８～１６，２２）。
(10) 平成３０年４月１３日に本件意思表示がされたが，被告は，同月１７日頃，本件意思表示による解除はできないとしつつ，本件委託契約の解約はやむを得ないとし，約定の違約金の支払を求めた。同年６月３０日，本件委託契約は終了した。（前提事実(4)，(5)，甲３１）
２ 争点(1)（被告において本件ホテルの清掃業務を被告のスタッフにより行うべき義務があったか。）について
被告は，原告との合意により，本件ホテルの清掃業務を被告のスタッフにより行うべき本件委託契約上の義務があったのに，平成２９年７月からピーエムサービスに対して同業務を委託し，また，同月１２日頃，原告から，同業務を自社に切り替える準備をし，清掃外注費を削減するように依頼されたのに，漫然と同業務の外注を継続したと主張し，なるほど，前記１の認定事実（以下「認定事実」という。）(2)アの事実によれば，本件委託契約の締結時において，本件ホテルの清掃業務を被告が雇用するスタッフにより行うことが予定されていたことが認められる。
しかし，認定事実(2)イ及びウの各事実によれば，被告は，本件ホテルの清掃業務を円滑に実施するだけのスタッフを雇用することができなかったため，原告から了承を得て，同業務を外注することにしたことが認められるとともに，平成２９年７月，ピーエムサービスとの間で，原告から了承を得て，契約期間を１年間とする室内清掃管理業務委託契約を締結したものと推認される。そうすると，被告において，同月以降，本件ホテルの清掃業務を被告のスタッフにより行わなければならない義務があったとは認められない。
なお，本件ホテルの運営管理等という本件業務の性質に加え，本件委託契約の目的として，被告が，本件業務の遂行にあたり，ホテル運営，方針等に基づく合理的努力の範囲にて，本件ホテルの収益を最大化するとされていること（前提事実(2)ア）からすると，被告には，本件業務の遂行にあたり，相当な範囲での裁量が与えられていると認められるから，平成２９年７月１２日，原告代表者から，「清掃は自社に切り替える準備をし，清掃外注費を削減する。」よう依頼されたこと（認定事実(2)エ）により，上記判断が左右されるものではない。
したがって，原告の上記主張は，採用することができない。
３ 争点(2)（被告においてプライスリサーチ機能の利用設定をしてはならない義務があったか。）について
被告は，本件システムのオプション機能であるプライスリサーチ機能を利用する必要がなく，原告に対しても同機能を利用することはないと説明していたのに，本件システムを利用する際，同機能の利用設定を行い，原告に不要な支出をさせたと主張し，なるほど，認定事実(9)のとおり，被告が同機能の利用設定を行っていたことが認められる。
しかし，本件ホテルにおいて，本件システムのオプション機能であるプライスリサーチ機能を利用する必要がなく，被告が原告に対して同機能を利用することはないと説明していたという事実を認めるに足りる証拠はない。また，前記２で説示したとおり，被告には，本件業務の遂行にあたり，相当な範囲での裁量が与えられていると認められるところ，他の同種の無料サイトが存在するからといって，同機能の利用設定をしてはならないという義務が，本件委託契約上の受託者の善管注意義務（前提事実(2)エ）として直ちに生じるものともいえない。そうすると，被告において，同機能の利用設定をしてはならない義務があったとは認められない。
したがって，原告の上記主張は，採用することができない。
４ 本訴請求のまとめ
前記２及び３で説示したところによれば，原告の本訴請求は，争点(3)（原告が被った損害）について判断するまでもなく，いずれも理由がない。
５ 争点(4)（原告と被告間の信頼関係が著しく損なわれた事情が認められるか。）について
(1) 被告は，本件即時解除条項が，本件ホテルに多額の資本を投じた原告が，被告から本件委託契約を解除されることにより本件ホテルの経営が中断し，投下資本の回収が不可能となる事態を回避するという原告を保護するための規定であるから，原告と被告間の信頼関係の破壊は，原告の期待を保護すべく，原告の利益が侵害されているか否かを基準に判断されるべきであると主張する。
しかし，本件委託契約の債務の履行上，人材の確保等のために資本の投下が必要であることは，被告においても同様であり，本件委託契約において原告のみを保護すべき合理的な理由はない。実際，前提事実(2)カのとおり，本件即時解除条項は，本件即時解除条項に基づく解除について，原告によるものだけでなく，被告によるものをも認めている。また，前提事実(2)キのとおり，本件委託契約においては，契約期間満了までに本件委託契約の解約がされる場合について，原告による解約申入れがされた場合にのみ，原告のみに発生する義務として，約定の違約金の支払義務を定めているのであるから，むしろ被告における本件委託契約の継続への期待の保護こそを図っている部分もあるということができる。そうすると，本件即時解除条項が原告を保護するための規定であるとは認められない。
したがって，原告の上記主張は，採用することができない。
(2) また，原告は，被告による売掛金の管理ミスは，極めて重大な債務不履行であり，その不履行により本件ホテルの経営という原告の根本的な利益が侵害されたから，原告と被告間の信頼関係が破壊されていると主張し，なるほど，認定事実(6)イのとおり，被告は，Ｅｘｐｅｄｉａの平成２９年１１月チェックアウト分に係る売掛金１３８万１２５１円及び平成３０年３月チェックアウト分に係る売掛金８９万７４９５円の請求，並びにＣ－ｔｒｉｐの平成２９年１０月チェックアウト分に係る売掛金５８万０８００円の請求を怠り，その結果，各売掛金の原告への入金が大幅に遅れたことが認められる。
しかし，上記売掛金の入金の遅れは，あくまでもＥｘｐｅｄｉａ及びＣ－ｔｒｉｐに対する請求を被告が失念したにすぎないものと推認され，それ以上に，被告において，原告に損害を与えようとしたり，自らが利得を得ようとしたりするなどの悪質な意図等を有していたといった事情をうかがわせる証拠はない。また，同入金の遅れは，相当額にのぼるものであり，本件ホテルの運営上，現金の資金繰りに問題を生じさせるべきものではあるが，同入金の遅れにより原告に具体的な損害が生じたことを認めるに足りる証拠もない。さらに，同入金の遅れは，各ＯＴＡにおける累計売上額と各ＯＴＡからの累計入金額との間に乖離を生じさせるものではあるが，認定事実(6)アのとおり，平成２９年１１月頃以降，各ＯＴＡからの売掛金の入金は原告名義の預金口座にされるようになり，原告が管理することになっているのであるから，同乖離は，被告による各ＯＴＡの売上げに係る報告の正確性（過大計上）を疑わせる事情にはなるものの，被告が同売上げ（売掛金）の一部を横領しているのではないかといった疑念を生じさせるものではなく，原告の事業年度末後における計算書類の作成に直ちに影響を与えるものであるともいえない。なお，各ＯＴＡに対する原告の債権は，各ＯＴＡとの間の契約に基づく債権であると考えられ，短期に時効消滅する危険があり，債権を失うべき具体的な危険があったともいえない。そうすると，上記請求の懈怠とそれに伴う売掛金の入金の遅れは，被告が本件委託契約上負っている善管注意義務（前提事実(2)エ）の違反に当たるべきものということができるが，当該事実が発覚したのが本件意思表示の後であったこと（認定事実(6)イ）を措くとしても，そのような違反をもって，原告と被告間の信頼関係を著しく損なわせる事情に当たるとはいうことはできない。
したがって，原告の上記主張は，採用することができない。
(3) さらに，原告は，前記第２の３(1)及び(2)の各（原告の主張）並びに同(4)の（原告の主張）の①から⑥までのとおり，被告による本件業務の遂行には，債務不履行を含む様々な不備が散見され，原告が，不備を発見する都度，被告にその旨を指摘し，改善を求めてきたのに，被告から一切の説明がなく，当該不備もほとんど改善がされなかったのであり，とりわけ被告の説明懈怠が，単に説明を怠ったというものではなく，度重なる原告からの問合せに一切対応しないというものであったから，原告と被告間の信頼関係は，本件委託契約を継続することができないほど著しく損なわれたと主張する。
ア しかし，まず，証拠（甲５２，５５，５７（４～６頁），乙１１の３，乙１２等）から認められる原告又は原告の顧問税理士と被告との間のやり取りをみても，被告が，原告又は原告の顧問税理士からの求め又は問合せに対し，一切の説明をしなかったり，一切の対応をしなかったりしたとは認められない。
イ また，被告において，本件ホテルの清掃業務を被告のスタッフにより行うべき義務があったとも，本件システムのプライスリサーチ機能の利用設定をしてはならない義務があったとも認められないことは，前記１及び２で説示したとおりである。
ウ さらに，認定事実(5)のとおり，本件ホテルの宿泊基本料金は，開業までに，原告と被告間の協議の結果として設定されたが，被告が，Ａｇｏｄａのサイトにおいて，宿泊価格の割引設定を行っており。原告代表者から同価格の修正を求められたのに，これに応じなかったこと（前記②関係），認定事実(8)のとおり，本件ホテルにおいては，予約のキャンセル料の設定がされていたが，被告が，各ＯＴＡにおいて，予約時のクレジットカード情報の入力を不要とする設定を行っており，原告代表者からその修正を求められたのに，これに応じなかったこと（前記④関係）がそれぞれ認められる。
しかし，原告と被告の各主張によっても，本件ホテルの開業後の稼働率は，十分なものでなかったと推認することができ，このような状況の中，本件ホテルの収益の最大化を図るため，まずは本件ホテルへの予約数を増加させようという運営判断をすることについては，一定の合理性が認められる。そうすると，前記２で説示したとおり，被告には，本件業務の遂行にあたり，相当な範囲での裁量が与えられていると認められるところ，前段の各事実をもって，直ちに，その裁量の範囲を逸脱したり，その裁量を濫用したりしたものということはできず，本件委託契約上の受託者としての善管注意義務（前提事実(2)エ）違反が生じるものとはいえない。
エ これに対し，認定事実(6)アのとおり，被告は，原告に対し，毎日の収支日報及び毎月の月次損益計算書を提出していたが，その提出が遅れたり，誤りが存在する状況であったりしたこと（弁論の全趣旨），平成２９年１１月以降，エクセル収支表が作成されることがなかったこと（以上，前記①関係），認定事実(7)のとおり，本件ホテルにおいては，同年１２月３１日から平成３０年１月３日までの間，リネン（シーツ，枕カバー，タオル）の不足が生じ，同月３日に新たな顧客を宿泊させることができない状況となったこと（前記③関係），認定事実(3)のとおり，被告は，平成２９年５月１１日，原告に対し，旅館保険への加入を予定している旨を伝え，同年６月２６日，顧客がホテルの物品を破損させた場合に対応することができないとし，「ＪＴＢ旅ホ連の保険」の見積もりを依頼中であると伝えたが，実際に同保険に加入をすることがなかったこと（前記⑤関係）がそれぞれ認められ，認定事実(4)の事実によれば，被告は，少なくとも本件ホテルの運営（業務）マニュアル（同年５月末まで），英語接客マニュアル（同）及びインフォメーションブック（同年６月１３日まで）を作成すべき義務があったところ，運営（業務）マニュアル及び英語接客マニュアルが原告により作成された様子はなく，日本語及び英語によるインフォメーションブックは作成されたが，相当数の誤り等があったこと（前記⑥関係）が認められる。
しかし，認定事実(6)アのとおり，平成２９年１１月頃，各ＯＴＡの売上げの振込先が被告名義の預金口座から原告名義の預金口座に変更されたため，被告において入金額の管理をすることができなくなり，エクセル収支表の作成が困難となった事情があること（前記①関係），認定事実(7)のとおり，不足したリネンについては，他の業者からリネンの手配をしてもらうことにより対応し，予約客に必要な枚数だけは何とか確保したこと（前記③関係），認定事実(3)のとおり，被告は，顧客による本件ホテルの備品の毀損等に対応するものではないが，保険期間を平成２９年２月１日から合計２年間，業種を旅館，ホテル，簡易宿所とし，財産，休業及び賠償責任に関する補償を内容とし，被告の事業活動を包括して補償する超ビジネス保険（事業活動包括保険）に加入をしていたこと（前記⑤関係）がそれぞれ認められる。そうすると，前段の各事実については，本件委託契約上の義務又は受託者の善管注意義務（前提事実(2)エ）の違反を問議すべき部分もあるが，その程度は，重大なものであるとすることはできず，むしろ比較的軽微なものにとどまるといわざるを得ない。したがって，前段の各事実を全部併せ，更に前記(2)で説示した被告による売掛金の管理ミスに係る善管注意義務違反を併せてみても，本件委託契約の基礎となる原告と被告間の信頼関係を「著しく」損なわせる事情であるとは認められない。
６ 反訴請求のまとめ
前記５で説示したとおり，本件委託契約上の原告と被告間の信頼関係が著しく損なわれた事情があるとは認められないから，本件意思表示による解除は，無効である。そして，認定事実(10)のとおり，被告は，本件意思表示に対し，本件意思表示による解除が認められないとしつつ，本件委託契約の解約をやむを得ないものとし，約定の違約金の支払を求めた結果，本件委託契約が平成３０年６月３０日に終了したのであるから，本件委託契約は，原告の申入れにより，契約期間の満了までに解約されたものと認められる。そうすると，本件委託契約１７条２項（前提事実(2)キ）により，原告において，被告に対し，違約金２４８４万円（５００，０００円×４６か月（前提事実(5)）×１．０８）を支払うべき義務が生じたと認められる。
７ 結論
よって，原告の本訴請求はいずれも理由がないから，これらを棄却し，被告の反訴請求は理由があるから，これを認容することとして，主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第４９部
（裁判官 松本真）
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