どぶ板PR専門!新規開拓訪問営業PR×ポスター広告許可貼り交渉+ビラチラシ配布ポスティング=あなたの街の「ポスターPRドットコム」
あなたの街の「ポスターPR」貼る(掲示許可交渉)前に知っておきたい地域情報「ビジネスPR」8
裁判年月日 令和 2年 2月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(行ウ)535号
事件名 法人税更正処分等取消請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2020WLJPCA02288004
要旨
◆税務署長が、原告に対し、原告が租税特別措置法所定の国外関連者との間でしためっき薬品の半製品等の販売に係る取引及び当該半製品等を原料の一部とするめっき薬品を製造する際に必要とされるノウハウ、特許権等の無形資産の使用許諾取引について、原告が当該国外関連者から支払を受けた対価の額が、同法及び同法施行令所定の方法のうちの残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて算定した独立企業間価格に満たないとして、当該独立企業間価格によって当該取引がされたものとみなして所得金額を計算し、法人税に係る本件各更正処分及び本件各賦課決定処分(本件各更正処分等)をしたところ、原告が、本件各更正処分のうち申告額等を超える部分及び本件各賦課決定処分の全部の各取消しを求めた事案において、残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて各取引の独立企業間価格を算定すること及び同方法による算定の過程も適法であるとして、各請求を棄却した事例
出典
参照条文
租税特別措置法66条の4第1項(平26法10改正前)
租税特別措置法66条の4第2項(平23法82改正前)1号イ
租税特別措置法66条の4第2項(平23法82改正前)1号ハ
租税特別措置法66条の4第2項(平23法82改正前)1号ニ
租税特別措置法66条の4第2項(平23法82改正前)2号イ
租税特別措置法66条の4第2項(平23法82改正前)2号ロ
租税特別措置法施行令39条の12第7項
租税特別措置法施行令39条の12第8項(平23政令199改正前)1号
法人税法22条3項2号
租税特別措置法通達66の4(2)-1の(1)
租税特別措置法通達66の4(3)-1
租税特別措置法通達66の4(4)-5
租税特別措置法通達66の4(6)-6
OECD移転価格ガイドライン(平22改訂前)1
OECD移転価格ガイドライン(平29改訂前)1
裁判年月日 令和 2年 2月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(行ウ)535号
事件名 法人税更正処分等取消請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2020WLJPCA02288004
当事者の表示 別紙1「当事者目録」記載のとおり
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
別紙2「請求の趣旨目録」記載のとおりである(同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
第2 事案の概要
本件は,a税務署長が,めっき薬品(めっき用化学品)の製造及び販売等を業とする原告に対し,原告が租税特別措置法66条の4第1項(本件各事業年度を構成する年度によって適用されるものが異なるが,以下,特に断らない限り,便宜,最も新しい年度に適用される平成26年法律第10号による改正前のものを指す。)に規定する国外関連者との間でしためっき薬品の半製品等の販売に係る取引及び当該半製品等を原料の一部とするめっき薬品を製造する際に必要とされる無形資産(ノウハウ,特許権等)の使用を許諾すること(以下「使用許諾」という。)に係る取引(以下「使用許諾取引」という。)について,原告が当該国外関連者から支払を受けた対価の額が,同条2項(平成23年法律第82号による改正前のもの。以下,現行のものを摘示するときにその旨を特に記載する場合を除き,同じ。)1号ニ,同項2号ロ,租税特別措置法施行令39条の12第8項(平成23年政令第199号による改正前のもの。以下,現行のものを摘示するときにその旨を特に記載する場合を除き,同じ。)1号各所定の方法のうちの残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて算定した独立企業間価格(租税特別措置法66条の4第1項)に満たないとして,当該独立企業間価格によって当該取引がされたものとみなして所得金額を計算し,平成19年3月期ないし平成24年3月期の法人税に係る本件各更正処分及び本件各賦課決定処分(本件各更正処分等)をしたところ,原告が,①残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて上記の各取引の独立企業間価格を算定するのは違法である,②仮に,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて上記の各取引の独立企業間価格を算定することができるとしても,その算定の過程に誤りがあるために被告がした独立企業間価格の算定は違法であるなどとして,本件各更正処分のうち申告額等を超える部分及び本件各賦課決定処分の全部の各取消しを求める事案である。
1 関係法令等の定め
別紙3「関係法令等の定め」のとおり(別紙4も含む。)である(別紙3で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
2 前提となる事実関係(証拠の掲記がない事実については,当事者の間に争いがない又は当裁判所に顕著な事実である。以下「前提事実」という。)
(1) 当事者等
ア 原告は,昭和8年に設立された,めっき薬品及び表面処理用機械の製造及び販売,工業用薬品及び非鉄金属の仕入販売等の事業を行う内国法人であり,日本国内において上記の事業を行うのみならず,海外においても同事業を展開している株式会社である。原告が製造及び販売している製品(めっき薬品)には,プリント配線板を製造する際に用いられる複数の無電解ニッケルめっき液,無電解金めっき液等が含まれており,第三者に対し,当該めっき薬品を製造するために必要な無形資産(ノウハウ,特許権等)の使用許諾をするなどもしている。
原告には,めっき薬品に係る新製品の開発及び既存の製品の改良を担当する中央研究所があり,大きく3つの開発部に分けられている。第1開発部は,プリント基板,ウェハー,ICパッケージ等のめっき処理の開発を,第2開発部は,銅の配線パターンへのめっき手法の開発を,それぞれ担当し,いずれもめっきプロセスを開発するグループであって,研究開発全体の八,九割程度を占めている。第3開発部は,めっき装置,めっき薬品管理装置の開発を担当している。また,中央研究所には,以上のもののほか,基礎研究を担当する部門,管理部門等がある。
イ(ア) b有限公司(b Co.,Ltd.以下「b社」という。)は,台湾に本店を有し,めっき薬品の製造及び販売,表面処理用機械の仕入販売等の事業をしており,原告が本件各事業年度において,その発行済株式総数の50%以上(その割合は,平成19年3月期ないし平成21年3月期において87.78%,平成22年3月期において88.76%,平成23年3月期及び平成24年3月期において92.01%であった。)を直接に保有する外国法人であり,原告の国外関連者である(乙18の1ないし6)。なお,b社は,研究所である「c研究所」(以下「c研究所」という。)において,独自の製品の開発もしている。
(イ) d有限公司(d Co.,Ltd.以下「d社」といい,b社と併せて総称するときは,「本件国外関連者」という。)は,台湾に本店を有し,めっき薬品等の製造及び販売等の事業をしていた法人である。d社は,台湾における法人税の優遇措置を受けるため,平成15年にb社のいわゆる100%子会社として設立された法人であり,原告が本件各事業年度において,その発行済株式総数の50%以上を間接に保有する外国法人であって,原告の国外関連者であった。d社は,平成18年4月から平成23年3月までの5年間,製造したほとんどの製品による所得がいわゆる免税所得とされていたが,上記の優遇措置が終了した後である同年12月31日,b社に吸収合併されて解散した(以上,乙19)。
(ウ) 本件国外関連者は,台湾において,顧客に対し,①本来顧客が自ら行うべき認定取得の技術サポート業務(本件国外関連者の顧客が,その取引先から製品を受注する場合に必要な認定を受けるための試作テスト,プロセス確定テスト,報告書作成等のアシスト),新規ライン立ち上げ時のテクニカルスタッフの一定期間の常駐等の支援体制,②顧客サポート要員に24時間携帯電話を常備させ,クレーム発生時には顧客担当者との緊急連絡が取れ,数時間以内に対策ミーティングができるサポート体制,③競合他社がしていなかった各分析機器による高グレードのクレーム解析サービスを顧客に提供することができる体制及び④本来顧客が自ら行うべき品質管理業務であるめっき液の分析,めっき皮膜等の物性測定,耐食性テスト及びめっき付けテストを代行して提供し,又は顧客と並行して行い,信頼性を高めるサービス業務を提供することができる体制によるサービス(営業技術支援)を提供していたところ,台湾においては,他に,このようなサービスを顧客に対して提供していた企業は見当たらない。
本件国外関連者は,本件各事業年度において,プリント配線板を製造するために用いられるめっき液(無電解ニッケルめっき液)の台湾の市場において高い占有率(7割程度)を有していた(甲78,118,乙33,弁論の全趣旨)。
(エ) d社の売上高営業利益率は,平成19年3月期から平成24年3月期までの6事業年度の単純平均で40.44%であり,本件国外関連者の売上高営業利益率は,平成19年3月期から平成24年3月期までの6事業年度の単純平均で26.90%であった。なお,台湾において化学製品の製造業を営む企業22社の売上高営業利益率は,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの6年間の単純平均で約5.3%であった。
ウ(ア) e有限公司(e Co.,Ltd.以下「e社」という。)は,中華人民共和国(以下「中国」という。)香港特別行政区(以下「香港」という。)に本店を有し,めっき薬品,機械等の仕入販売の事業をしており,原告が本件各事業年度において,その発行済株式総数の75%を直接に保有する外国法人であって(いわゆる販売子会社(仕入販売の事業のみを営み,技術支援の業務を行っていない子会社のこと。以下同じ。)である。),原告の国外関連者である(乙18の1ないし6)。
(イ) f有限公司(f Co.,Ltd.以下「f社」という。)は,中国上海市に本店を有し,めっき薬品,機械等の仕入販売の事業をしているほか,独自の技術サポート拠点(「gセンター」との名称によるもの。以下「gセンター」という。)を有して技術支援の業務もしているところ,原告が本件各事業年度において,その発行済株式総数の100%を直接に保有する外国法人であって,原告の国外関連者である。
(ウ) h Pte.,Ltd.(以下「h社」という。)は,シンガポール共和国に本店を有し,めっき薬品及び表面処理用機械の仕入販売等の事業をしており,原告が本件各事業年度において,その発行済株式総数の100%を直接に保有する外国法人であって,原告の国外関連者である。
(エ) i Corporation(以下「i社」という。)は,アメリカ合衆国カリフォルニア州に本店を有し,めっき薬品及び表面処理用機械の仕入販売等の事業をしており,原告が本件各事業年度において,その発行済株式総数の100%を直接に保有する外国法人であって,原告の国外関連者である(乙17,18の1ないし6)。
(オ) j株式会社(j Co.,Ltd.。以下「j社」という。)は,平成22年7月に設立された,大韓民国(以下「韓国」という。)に本店を有する法人であり,原告が本件各事業年度の一部の年度(平成23年3月期及び平成24年3月期)において,その発行済株式総数の100%を直接に保有する外国法人であって,原告の国外関連者(なお,以下,原告及びこれまでに指摘した原告の国外関連者を含む原告の国外関連者の全体を総称して「原告グループ」という。)である。
エ(ア) k Co.,Ltd.(以下「k社」という。)は,韓国に本店を有し,表面処理用化学品及び自動めっき機械の製造等を営む法人であり,原告の国外関連者に該当しない者(以下,「非関連者」といい,原告の非関連者を「本件非関連者」という。)である。
(イ) l Co.,Ltd.(以下「l社」という。)は,タイ王国に本店を有する法人であり,本件非関連者である。
(2) 原告と本件国外関連者との間の契約等
ア 原告と本件国外関連者との間の契約関係の概要等
原告は,b社との間で,2006年(平成18年)4月1日付け「TECHNICAL COLLABORATION AND LICENSE AGREEMENT」(技術提携及びライセンス契約書。以下「b社ライセンス契約書」という。)により,めっき薬品の製造等に必要な無形資産の使用許諾に係る契約(以下「ライセンス契約」という。)を締結し,2007年(平成19年)12月31日まで,有効に存続した。また,原告は,d社との間で,2005年(平成17年)9月1日付け「TECHNICAL COLLABORATION AND LICENSE AGREEMENT」(技術提携及びライセンス契約書。2011年(平成23年)4月1日,同年9月1日及び2012年(平成24年)1月1日にそれぞれ内容を修正する旨の合意(ただし,同日の修正の合意は,2011年(平成23年)12月31日付けでd社を吸収合併したb社との間でされたものである。)がされている。以下,特に区別する必要がある場合を除き,上記の各修正の前後を問わず,「d社ライセンス契約書」といい,b社ライセンス契約書と併せて総称するときは,「本件ライセンス契約書」という。)により,めっき薬品の製造等に必要な無形資産の使用許諾に係る契約(以下,上記の原告とd社との間のライセンス契約と原告とb社との間のライセンス契約とを総称して「本件ライセンス契約」という。)を締結し,2011年(平成23年)12月31日までは,d社との間で,2012年(平成24年)1月1日以降は,b社との間で,それぞれ有効に存続している。
原告は,本件ライセンス契約に基づき,本件国外関連者に対し,めっき薬品の製造,販売及び使用に係る特許権並びに全ての技術情報(以下,これらの無形資産を総称して「ノウハウ等」ということがある。)の使用許諾並びに技術支援を行う取引(以下,総称して「本件ライセンス取引」という。)をするとともに,BB(ブラックボックス)品の名称で管理している物品(めっき薬品を製造する際に使用される原材料の1つであって,いわゆるライセンス製品の原材料,添加剤,半製品又は製品そのもの(ライセンス製品を製造するためのノウハウ等の一部を構成するもの)であり,ライセンシーに対してその成分を開示しないことにより,ライセンス製品を製造する過程の一部をブラックボックス化し,機密情報の漏えいを防ぐ,又は遅延させる目的のものである。以下「BB品」という。)を販売する取引(ただし,平成23年12月31日まではd社に対し,平成24年1月1日以降はb社に対するものである。以下,総称して「本件棚卸資産販売取引」といい,本件ライセンス取引と総称するときは,「本件国外関連取引」という。)をして,その対価を得ていた。
原告が本件国外関連者に対して本件ライセンス契約において開示したノウハウ等は,本件国外関連者が,上記のノウハウ等を使用してめっき薬品(以下,本件ライセンス契約において原告が本件国外関連者に対して使用を許諾したノウハウ等を使用して製造されためっき薬品を「本件ライセンス製品」という。)を製造する際に本件棚卸資産販売取引の目的物であるBB品を用いることを前提としたものであって,BB品を使用することなく本件ライセンス製品を製造することは不可能であり,原告も,本件国外関連者が,原告が本件ライセンス契約により本件国外関連者に使用を許諾したノウハウ等を使用してめっき薬品を製造する際には,その原材料の一部として本件棚卸資産販売取引の目的物であるBB品を必ず用いることを要求していた。
イ 本件ライセンス契約の概要
本件ライセンス契約は,概要,次のとおりのものである。
(ア) 原告が,本件国外関連者に対し,表面処理薬品(めっき薬品)の製造に関する特許権及び技術情報(ノウハウ等)を提供し,台湾で,当該めっき薬品を製造及び販売する排他的権利を付与するとともに,原告の技術専門家を本件国外関連者の工場に派遣して技術指導を行うこと及び本件国外関連者の従業員を原告の工場で受け入れて技術訓練を行うことを内容とする役務を提供する。
(イ) 本件国外関連者は,原告に対し,前記(ア)の使用許諾等に係るロイヤルティとして,本件ライセンス製品の純販売価格(販売された製品に関して顧客に請求した金額のうち輸送費用及び保険費用の額,値引きの額並びに公租公課の額を控除したもの。以下同じ。)の5%を支払う。
ウ 本件国外関連者と本件国外関連者以外の原告の国外関連者との間の取引の概要
本件国外関連者は,本件ライセンス製品を製造するとともに,当該製造した本件ライセンス製品を,直接,台湾の本件非関連者に販売しているほか,一旦,h社ほか数社の原告の国外関連者に販売した上で,当該国外関連者が台湾の本件非関連者に対して販売している(以下,本件国外関連者が他の原告の国外関連者を経由した上で本件非関連者に対して本件ライセンス製品を販売する取引を総称して「本件b社等取引」といい,本件国外関連者が,直接又は他の原告の国外関連者を経由して本件非関連者に対して本件ライセンス製品を販売した取引に係る売上高を総称して「本件ライセンス製品外部売上高」という。)。
本件b社等取引の概要は,別紙5のとおりであり,d社は,e社,f社及びh社に対し,それぞれ本件ライセンス製品を販売しているほか,i社に対する売上げもあり,b社は,e社及びf社に対し,それぞれ本件ライセンス製品を販売している。また,d社とb社との間でも,めっき薬品及び原料の取引がされている。
(3) 原告とk社及びl社との間の取引等について
ア k社との間の契約関係の概要
原告は,k社との間で,2002年(平成14年)12月1日付け「ノウハウ・ライセンス契約書」(2008年(平成20年)1月1日,2009年(平成21年)1月1日及び2010年(平成22年)1月1日にそれぞれ内容を修正する旨の合意がされている。以下,特に区別する必要がある場合を除き,上記の各修正の前後を問わず,「旧k社ライセンス契約書」という。)及び2011年(平成23年)6月9日付け「新ノウハウ・ライセンス契約書」(以下「新k社ライセンス契約書」といい,旧k社ライセンス契約書と総称して「k社ライセンス契約書」という。)により,契約(以下,特に区別する必要がある場合を除き,旧k社ライセンス契約書に基づくものと新k社ライセンス契約書に基づくものを区別することなく「k社ライセンス契約」といい,原告がk社ライセンス契約によってk社に対して使用を許諾した技術情報を使用して製造された製品を,以下「k社ライセンス製品」という。)を締結し,k社ライセンス契約に基づき,めっき薬品の製造等のノウハウの使用許諾及び役務の提供に係る取引(以下「k社ライセンス取引」という。)をしていた。
また,原告は,k社との間で,k社ライセンス取引のほか,原告がk社に対してBB品を販売する取引(以下「k社棚卸資産販売取引」という。)をしていた。
なお,原告は,2012年(平成24年)6月30日,k社との間の一切の取引を停止した。
イ k社ライセンス契約の概要
k社ライセンス契約は,概要,次のとおりのものである。
(ア) 原告が,k社に対し,契約品(原告が現在生産中の表面処理用のめっき薬品のうち一部のもの)につき,ノウハウ(契約品製造のため有用な技術情報及び技術データ)及び技術情報を提供し,韓国において契約品を製造,使用及び販売する非独占的実施権を付与するとともに,原告の技術専門家をk社の工場に派遣して技術指導を行うこと及びk社の訓練生を原告の工場に受け入れて技術訓練を行うことを内容とする役務を提供する。
(イ) k社が,原告に対し,ロイヤルティとして,契約期間中にk社により製造及び販売された契約品の総販売額から一部の費用の額(当該販売に要した包装費,広告宣伝費,保険費用,運送費用,車両維持費及び原告から購入した直接原料の額)を控除した後の金額(以下「正味販売額」という。)の5%に相当する金員を支払う。
ウ 原告とl社との間の契約等
原告は,l社との間で,原告が有するめっき薬品の製造等のノウハウの使用許諾及び役務の提供に係る取引(以下「役務提供取引」という。)に係る契約を締結し,l社又はその関連の企業を通じ,タイ王国においても,本件非関連者に対し,原告のめっき薬品が販売されている。
(4) 本件各更正処分等の経緯
ア 原告は,本件各事業年度の法人税について,別表1-1ないし1-6の各「区分」欄中の各「修正申告」欄(順号②。ただし,平成19年3月期については,順号②及び④)に対応する「年月日」欄に記載された年月日に,a税務署長に対し,上記の各「修正申告」欄に対応する「A所得金額」欄及び「B納付すべき税額」欄にそれぞれ記載された内容を記載した修正申告書をそれぞれ提出した。
a税務署長は,平成19年3月期ないし平成23年3月期の法人税について,別表1-1ないし1-5の各「区分」欄中の各「賦課決定処分」欄(順号③。ただし,平成19年3月期については,順号③及び⑤)に対応する「年月日」欄に記載された年月日に,原告に対し,上記の各「賦課決定処分」欄に対応する「C過少申告加算税」欄にそれぞれ記載されたとおり,過少申告加算税の賦課決定の処分をした。
イ a税務署長は,平成20年3月期ないし平成23年3月期の法人税について,平成25年4月25日付け(別表1-2ないし1-5の各「区分」欄中の各「減額更正処分等」欄(順号④)に対応する「年月日」欄参照)で,原告に対し,上記の各「減額更正処分等」欄に対応する「A所得金額」欄,「B納付すべき税額」欄及び「C過少申告加算税」欄にそれぞれ記載されたとおり,所得金額,納付すべき税額及び過少申告加算税を減額する旨の処分をした。
ウ a税務署長は,本件各事業年度の法人税について,平成25年6月27日付け(別表1-1ないし1-6の各「区分」欄中の各「更正処分等」欄(順号⑤。ただし,平成19年3月期については順号⑥,平成24年3月期については順号③)に対応する「年月日」欄参照)で,原告に対し,上記の各「更正処分等」欄に対応する「A所得金額」欄,「B納付すべき税額」欄及び「C過少申告加算税」欄にそれぞれ記載されたとおり,本件各更正処分等をした。
エ 原告は,平成25年8月23日(別表1-1ないし1-6の各「区分」欄中の各「異議申立て」欄(順号⑥。ただし,平成19年3月期については順号⑦,平成24年3月期については順号④)に対応する「年月日」欄参照),大阪国税局長に対し,本件各更正処分等について異議申立てをしたところ,大阪国税局長は,同年11月20日(別表1-1ないし1-6の各「区分」欄中の各「異議決定」欄(順号⑦。ただし,平成19年3月期については順号⑧,平成24年3月期については順号⑤)に対応する「年月日」欄参照),原告に対し,上記の異議申立てをいずれも棄却する旨の決定(以下「本件異議決定」という。)をした。
オ 原告は,平成25年12月12日(別表1-1ないし1-6の各「区分」欄中の各「審査請求」欄(順号⑧。ただし,平成19年3月期については順号⑨,平成24年3月期については順号⑥)に対応する「年月日」欄参照),国税不服審判所長に対し,本件異議決定を経た後の本件各更正処分等になお不服があるとして審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成27年3月5日,別表1-1ないし1-6の各「区分」欄中の各「審査裁決」欄(順号⑨。ただし,平成19年3月期については順号⑩,平成24年3月期については順号⑦)に対応する「A所得金額」欄,「B納付すべき税額」欄及び「C過少申告加算税」欄にそれぞれ記載されたとおり,本件更正処分等のうち平成19年3月期更正処分及び平成21年3月期更正処分並びにこれらに対応する過少申告加算税の各賦課決定の処分の一部を取り消し,その余の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決(本件裁決)をした。
(5) 本件訴えの提起
原告は,平成27年9月3日,本件訴えを提起した。
3 本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張
後記5に記載するもののほか,別紙6「本件各更正処分等の根拠及び適法性」に記載のとおりである(なお,同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
4 争点
(1) 本件国外関連取引の独立企業間価格を算定する方法(争点1)
ア 本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するにつき独立企業間価格の算定に当たり優先的に用いるべきものとされる方法(租税特別措置法66条の4第2項1号イないしハ所定の方法(以下,総称して「基本三法」という。)又は基本三法と同等の方法(同項2号イ))を用いることの可否(争点1-1)
イ 本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するために残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いることの可否(争点1-2)
(2) 被告が用いた残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法の相当性(争点2)
5 争点に対する当事者の主張の要点
争点1については,別紙7「争点1(本件国外関連取引の独立企業間価格を算定する方法)についての当事者の主張の要点」に,争点2については,別紙8「争点2(被告が用いた残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法の相当性)についての当事者の主張の要点」に,それぞれ記載のとおりである(なお,同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
第3 当裁判所の判断
1 争点1-1(本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するにつき基本三法又は基本三法と同等の方法を用いることの可否)について
(1) はじめに
ア 国外関連取引の独立企業間価格を算定するためには,独立企業間価格を算定する取引の単位をどのように捉えるべきかにつき,最初に検討する必要があるところ,国外関連取引の独立企業間価格の算定は,原則として,個別の取引ごとに行うとされるものの(租税特別措置法通達66の4(3)-1柱書き参照),一定の事情が認められる場合には,複数の取引を一の取引として独立企業間価格を算定することができるとされている(租税特別措置法通達66の4(3)-1(1)及び(2)参照)。
また,租税特別措置法66条の4第2項1号及び2号の各柱書きの括弧書は,その他の方法又はその他の方法と同等の方法は,基本三法又は基本三法と同等の方法を用いることができない場合に限りこれを用いることができる旨を規定するから,本件においても,棚卸資産の販売又は購入以外の取引である本件ライセンス取引については基本三法と同等の方法を,棚卸資産の販売の取引である本件棚卸資産販売取引については基本三法を,それぞれ用いることができるか否かを差し当たり検討する必要があることになる。
イ そうすると,本件においては,まず,基本三法又は基本三法と同等の方法を用いることができるか否かを念頭に置きつつ,本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するための取引の単位について検討する必要があることになるところ,被告は,基本三法又は基本三法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することができるか否かを検討する際には,本件ライセンス取引の全体又は本件棚卸資産販売取引の全体を,それぞれ1つの独立企業間価格を算定する単位として取り扱った上で,その独立企業間価格をそれぞれ算定することができるかという観点から主張し,原告は,本件国外関連取引を構成する個別の取引ごとに独立企業間価格を算定すべきである旨を主張するものと解される。
そこで,基本三法又は基本三法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することができるか否かを検討するに当たっては,上記の当事者の主張に沿い,本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引とを分けた上で,まずは,本件国外関連取引のうち主たるものであることが取引の内容に照らして明らかである本件ライセンス取引について検討を加えることとし,多数の本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引から構成される本件ライセンス取引について,本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごとに独立企業間価格を算定することが合理的であるか否かを検討するものとする(後記(3))。
その上で,原告が,基本三法と同等の方法のうちの1つである独立価格比準法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引の独立企業間価格を算定することができる旨を主張するから,独立価格比準法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引(又は本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごと)の独立企業間価格を算定することが可能であるか否かについて,検討を加えることとする(後記(4))。
さらに,原告は,仮に,独立価格比準法と同等の方法を用いることができないとしても,基本三法に準ずる方法と同等の方法のうちの1つである独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いることができる旨主張するところ,基本三法に準ずる方法と同等の方法は,その他の方法と同等の方法の1つであり,優先的に用いるべきものとされる基本三法と同等の方法と同列に取り扱うべきものとまでは直ちには解されないものの,独立価格比準法と同等の方法を用いることができるか否かという検討と重なる部分が多いものと解されることから,後記(4)の検討に引き続いて検討を加えることとし,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引(又は本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごと)の独立企業間価格を算定することが可能であるか否かについて,検討する(後記(5))。
ウ 前記イの検討に引き続き,本件国外関連取引のうち残る本件棚卸資産販売取引について基本三法を用いて独立企業間価格を算定することができるか否かについて検討する必要があるところ,原告は,基本三法のうちの1つである原価基準法を用いて本件棚卸資産販売取引を構成する個別の棚卸資産の販売の取引の独立企業間価格を算定することができる旨を主張するから,原価基準法を用いて本件棚卸資産販売取引(又は本件棚卸資産販売取引を構成する個別の棚卸資産の販売の取引ごと)の独立企業間価格を算定することが可能であるか否かについて,検討を加える(後記(6))。
(2) 証拠等により認定することができる事実関係(以下「認定事実」という。)
前提事実,当事者の間に争いのない事実,後に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
ア めっきに関する一般的な知見等
(ア) めっきとは,ある固体の表面に薄い金属の皮膜を形成させる技術を総称したものであり,約20種類の金属を始めとする材料(金属,合金,金属又は合金の酸化物及びそれらの複合材料)の皮膜が,耐食性,装飾性,機能性等を持たせる目的で用いられ,その用途に応じ,様々な特性が必要とされている。なお,本件国外関連者が販売しているめっき薬品は,本件国外関連者の顧客であるプリント基板を製造する企業が,プリント配線板を製造する際にするめっきに用いるものである。
めっきは,めっきをする対象となる固体に洗浄その他の前処理を施し,目的に沿って必要な特性に応じためっきを実現することができるめっき薬品に上記の固体を一定時間浸すなどのめっき処理をし,めっきされた当該固体に中和等の後処理を施すという複数の工程(めっきプロセス)を経て完成するものである。
めっきの結果得られる材料の表面に被覆される金属の薄膜の形状及び性質は,めっき薬品を構成する原料の微妙な配合比,組成の違い等に応じて微妙に異なり,それぞれに固有の特質を有するものとなる結果,当該微妙な差異により,顧客の様々な要望に応ずることが可能となる金属の薄膜の形状及び性質が得られることとなる。(以上,甲18ないし20,49,109,119,乙38,39,弁論の全趣旨)
(イ) プリント基板を製造する際に施されるめっきは,①回路形成用導電体としての金属を形成するもの,②回路形成用のエッチングレジストとして一時的に形成されるもの及び③外部との接続のための表面処理のためのものの3種類である。近時のプリント基板は,その配線密度が高くなり,非常に細かい導体回路が必要となっていることから,めっきの適否や精度が非常に重要な技術となっているほか,両面プリント配線板(基板の両面に回路があるもの),多層プリント配線板(ウエハース状に絶縁体と回路を積み重ねて作成された基板)において重要な導体層間の接続の信頼性には,めっきの物性が大きく関係することから,その意味においても,めっきの形成の技術が非常に重要となってきている。(以上,乙41,42,弁論の全趣旨)
イ 本件ライセンス取引とk社ライセンス取引との間の異同等
(ア) 原告が使用を許諾している無形資産の種類
a 原告が本件ライセンス契約において本件国外関連者に対して使用を許諾している無形資産は,特許権及び技術情報である(乙20,21)。
b 原告がk社ライセンス契約においてk社に対して使用を許諾している無形資産は,ノウハウ及びその他の技術情報である(乙27ないし31)。
(イ) 使用許諾の対象となる技術情報の内実
a 原告が本件ライセンス契約において本件国外関連者に対して使用を許諾している「技術情報」は,原告が製品の製造及び使用に関して使用する全ての情報及び知識であるとされているが,その具体的な内容についての定めは見当たらない(乙20,21)。
b 原告がk社ライセンス契約においてk社に対して使用を許諾している「ノウハウ」は,原告が生産中の表面処理用のめっき薬品を製造するために有用な技術情報及び技術データで,原告で利用され,商業的に応用されるものであるとされ,具体的には,旧k社ライセンス契約書(2002年(平成14年)12月1日付のもの)においては,①契約品配合カード,②製造指示書,③原料カード,④契約品品質管理書及び⑤設備仕様書と,上記の旧k社ライセンス契約書以外のk社ライセンス契約書においては,①化成品開示書,②製品性状カード,③配合カード,④製造指示カード,⑤原料カード,⑥品質管理カード及び⑦設備仕様カードと,それぞれ定められている(乙27ないし31)。
(ウ) 原告が使用を許諾した無形資産の対象となる製品の数
a 原告が本件ライセンス契約において本件国外関連者に対して使用を許諾している「技術情報」の対象となる「製品」の数は,246品目(b社ライセンス契約書),242品目(d社ライセンス契約書),180品目(2011年(平成23年)4月1日付けのd社ライセンス契約書の修正)又は189品目(2012年(平成24年)1月1日付けのd社ライセンス契約書の修正)である(乙20ないし22,24)。
b 原告がk社ライセンス契約においてk社に対して使用を許諾している「ノウハウ」の対象となる「契約品」の数は,9品目(旧k社ライセンス契約書)又は6品目(新k社ライセンス契約書)である(乙27ないし31)。
(エ) 原告が使用を許諾した無形資産の対象となる製品の内容
a 原告が本件ライセンス契約において本件国外関連者に対して使用を許諾した「技術情報」の対象となる「製品」は,従来から存在するめっき薬品だけではなく,顧客からの個別的な要望(プリント基板の性状等)にきめ細かに対応するために開発された新規のめっき薬品(固有製品。なお,原告は,本件国外関連者以外の者に対し,固有製品の製造等のノウハウ等の使用を許諾したことはない。)が,累次のd社ライセンス契約書の修正により追加的に含まれるようになったほか,複数のめっきプロセスに対応することができるような幅広い内容のめっき薬品から構成されている(乙22,24,46,47,56,弁論の全趣旨)。
b 原告がk社ライセンス契約においてk社に対して使用を許諾した「ノウハウ」の対象となる「契約品」は,全て従来から存在するめっき薬品であるほか,プリント基板の製造には用いることができないものも含まれているが,k社ライセンス契約における「契約品」に新たに開発されためっき薬品が追加されることはなく,また,必ずしも,めっきプロセスに的確に対応するような構成にはなっていなかった(乙27ないし31,46,56,弁論の全趣旨)。
(オ) めっき薬品の売上構成の異同
a 原告がk社ライセンス契約においてk社に対して使用を許諾した「ノウハウ」の対象となる「契約品」と同一のめっき薬品(共通製品及び汎用品である9品目)の売上高がd社めっき製品売上高に占める割合は,最も多い年(2006年(平成18年))で42.37%,最も少ない年(2010年(平成22年))で25.58%であり(なお,2011年(平成23年)は,新k社ライセンス契約書に基づき,「契約品」が6品目に減少したため,更に割合が減少し,11.52%となっている。),時間の経過とともに,おおむね減少傾向にある(なお,無電解ニッケルめっきに一般的に用いられる原告の主力商品の1つ(共通製品)であるめっき薬品(「○○NPR-4」)の占める割合は,最も多い年(2006年(平成18年))で19.20%,最も少ない年(2011年(平成23年))で9.46%である。)一方,原告が新規に開発し,本件ライセンス契約において本件国外関連者に対して使用を許諾した「技術情報」の対象となる「製品」にも追加されためっき薬品(固有製品)の売上高は,年々おおむね増加する傾向にある(乙50の4。なお,別表2も参照)。
b k社ライセンス製品の売上高における各「契約品」別の売上高及びその割合は,別表2のとおりであり,無電解ニッケルめっきに一般的に用いられる前記aの共通製品であるめっき薬品(「○○NPR-4」)の占める割合が極めて大きい(最も多い年(2010年(平成22年))で75.6%,最も少ない年(2008年(平成20年))で72.7%)傾向にある(乙52の1ないし20)。
(カ) 使用許諾の条件
a 本件ライセンス契約は,①原告が,本件国外関連者に対し,台湾において使用許諾の対象である特許権及び技術情報を用いて本件ライセンス製品を台湾で製造,販売及び使用することができる排他的なライセンスを付与する一方,本件国外関連者は,原告の許可を得ることなく台湾以外の国又は地域に本件ライセンス製品を輸出することはできず,そのおそれのある相手方に本件ライセンス製品を販売することもできない旨のものであり,②b社との間で2006年(平成18年)4月1日に,d社との間で2005年(平成17年)9月1日に,それぞれ締結され,③契約の有効期間を4年5か月又は5年とし,自動的に1年ずつ更新されるものであって,④本件国外関連者が原告に対して製品の純販売価格の5%をロイヤルティとして支払うものとされているが,⑤本件国外関連者が,本件ライセンス契約の契約期間中又は契約期間満了後一定期間,本件ライセンス契約により,本件ライセンス製品又はその類似品の製造及び販売に関して競業しない義務を負う旨の定めは見当たらない(乙20,21)。
b k社ライセンス契約は,①原告が,k社に対し,韓国において原告が生産中の表面処理用のめっき薬品を製造するために有用な技術情報及び技術データで,原告で利用され,商業的に応用されるものを使用し,上記のめっき薬品(k社ライセンス製品)を製造,使用及び販売する非独占的な権利を付与する旨のものであり,②k社との間で,2002年(平成14年)12月1日に,締結され,2008年(平成20年)1月1日,2009年(平成21年)1月1日及び2010年(平成22年)1月1日にそれぞれ内容を修正する旨の合意がされたほか,2011年(平成23年)6月9日に新たな内容によるものとして,締結され,③(あ)旧k社ライセンス契約書のうち2002年(平成14年)12月1日付け「ノウハウ・ライセンス契約書」においては,契約の有効期間を5年とし,原告とk社との合意の下で延長することができるものとされていたが,(い)その後の旧k社ライセンス契約書においては,契約の有効期間を1年とし,原告とk社との合意の下で延長することができるものとされ,(う)新k社ライセンス契約書においては,契約の有効期間を1年3か月とし,契約の更新はしないものとされており,④k社が原告に対してk社ライセンス製品の正味販売額の5%をロイヤルティとして支払うものとされ,⑤k社は,k社ライセンス契約の契約期間中又は契約期間満了後一定期間,k社ライセンス契約により,k社ライセンス製品又はその類似品の製造及び販売に関して競業しない義務を負うものとされている(乙27ないし31)。
(キ) 台湾の市場と韓国の市場との異同
台湾の市場と韓国の市場との間には,①k社ライセンス製品について,2004年度(平成16年度)の台湾の市場における価格と韓国の市場における価格比は,別表3のとおり,最少で21.2%(台湾での価格が韓国での価格の約5倍),最大で225.4%(台湾での価格が韓国での価格の約44%)という格差がある(乙53),②台湾には,収益性も技術力も高い大手のプリント基板メーカーが複数あって競争が激しく,様々なプリント基板を製造するために用いるめっき薬品が主要な取扱商品である一方,韓国では,最終のユーザーは大手のメーカーであるものの,その下請けとなるべき企業は,いずれも技術力の低い小さな会社がひしめいているにとどまり,利益率の高いめっき薬品のニーズもない(乙77),③台湾は,韓国と比較すると為替市場が安定している一方,韓国は,為替市場が不安定であり,企業の業績もそれに大きく左右されがちである(乙82,83,弁論の全趣旨)などの違いがある。
(3) 本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定する対象となる取引の単位
ア 複数の取引を一の取引として独立企業間価格を算定することができる場合について
(ア) 我が国の移転価格税制は,法人が国外関連者との間で独立企業間価格と異なる対価により取引をした場合に,当該取引を独立企業間価格でされたものとみなして法人税関係法令を適用する制度であり(租税特別措置法66条の4第1項),法人と国外関連者との間の具体的な取引における価格を問題とする制度であるから,原則として,個別具体的な取引1つごとに独立企業間価格を算定すべきものと解するのが相当であり,租税特別措置法通達66の4(3)-1柱書きも同旨を明らかにしたものということができる。
もっとも,独立企業間価格は,正常な対価で取引が行われたと仮定した場合の価格であり,実際の取引の実態を把握した上で算定されるべきものであると解されるから,いかなる場合においても,個別具体的な取引1つごとに独立企業間価格を算定しなければならないものではなく,個別具体的な取引のみに着目した場合には,その適正な独立企業間価格を算定することができない場合には,複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定することも許されるというべきである。租税特別措置法通達66の4(3)-1もこれと同旨を明らかにしたものということができる。
その上で,いかなる場合に複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定することができるのかについては,法令上その要件又は基準を明確に定めたものは見当たらないから,独立企業間価格を算定する対象となる取引に係る諸般の事情を総合的に考慮し,複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定することが合理的な場合であるといえるか否かにより,これを決すべきものと解するのが相当であるものの,国外関連取引の独立企業間価格の算定に関するものであることに照らし,国外関連取引の対象である資産の価格設定に影響を与えている事情の有無が,その重要な判断要素の1つとなると認められる(移転価格ガイドライン(2017年(平成29年)に改訂される前のもの)1.36,同1.42,同1.43及び同1.64も参照)。
(イ) 原告は,複数の取引をまとめて1個の取引とみなして独立企業間価格を算定することができるのは,複数の取引を構成する個々の取引の対価について,当該取引のみを個別に行った場合とは異なる価格設定をするであろう場合だけである旨主張する。
しかし,例えば,複数の取引を構成する個々の取引のみを個別に行うこと自体が合理的ではない場合又は当該取引の価格を算定すること自体が困難な場合には,原告の主張するところを前提とすると,適切な独立企業間価格を算定すること又は独立企業間価格を算定すること自体が不可能となる結果を招き得ることになり,不合理であるから,原告の主張は,採用することができない。
イ 本件ライセンス取引を構成する個々の使用許諾取引ごとに独立企業間価格を算定することの適否について
認定事実ア(ア)のとおり,めっきは,複数のめっき薬品が複数の工程の中で決められた順番で用いられることにより完成されるものであり,かつ,顧客の様々な要望に応ずることも可能となるものであるところ,これに加えて認定事実アの事実も前提とすると,顧客の多様な要望に応ずる様々な形状及び性質を有する薄膜を生み出すめっきを実現するためには,特定のめっき薬品の製造等のノウハウ等が個別的に開示されるだけではなく,様々なめっき薬品を様々な工程の中で使用することができるよう多種多様なめっき薬品の製造等のノウハウ等が包括的に開示される必要があると認められる。そして,認定事実イ(エ)aのとおり,本件ライセンス取引においては,複数のめっきプロセスに対応することができる多様なめっき薬品の製造等のノウハウ等が開示され,その中には,追加的に開示された新規のめっき薬品の製造等のノウハウ等も含まれていたものである。
これらの事実を前提とすると,本件ライセンス取引は,個別かつ独立に存在する本件ライセンス取引を構成する使用許諾取引(個別のめっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引)が単に集合したものではなく,それらの個別の使用許諾取引が多数存在し,それらの使用許諾取引の対象であるノウハウ等を組み合わせることにより多様な顧客の要望に応えることが可能となっており,このような個別のめっき薬品の製造等のノウハウ等それ自体を超えたものにも独自の経済的な価値が存し,本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引の価格(経済的な価値)にも,当該独自の経済的な価値が反映されるべきものと認められる。
そうすると,仮に,本件ライセンス取引を構成する個々の使用許諾取引のみに着目した場合の当該使用許諾取引の独立企業間価格と思われる価格を算定することが可能であったとしても,当該価格の総和が,本件ライセンス取引全体を1つの単位として算定した場合の独立企業間価格と等しくなるとはいえず,かつ,本件全証拠によっても,上記の独自の経済的な価値自体のみを抽出して当該経済的な価値の金額を個別に算出したり,それを個別の使用許諾取引に個別に割り付けて具体的な金額を算出したりすることが可能であるとも認め難いから,本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定するに当たっては,少なくとも,本件ライセンス取引全体を1つのものとして捉えるのが合理的である。
ウ 原告の主張に対する判断
前記イの認定及び判断に対する原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。
(ア)a 原告は,移転価格税制は,国外関連者との間でされた実際の取引を別の取引に置き換えることを認める制度ではなく,ある法人と当該国外関連者が実際にした取引を前提に,当該法人の所得の計算上,当該取引が価格の点についてのみ独立企業間価格でされたものとみなして当該法人の所得の計算をする制度であるところ,本件ライセンス取引は,ノウハウ等ごとに異なる時期にライセンス契約が成立して開始しているのに,これを本件ライセンス取引の対象となるめっき薬品全ての製造等のノウハウ等をパッケージとしてされた使用許諾取引とみなすことは,移転価格税制の制度の趣旨と整合しない旨主張する。
しかし,前記ア(ア)のとおり,いかなる場合に複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定することができるのかについては,法令上その要件又は基準を明確に定めたものは見当たらないから,ノウハウ等ごとに異なる時期にライセンス契約が成立したとの一事をもって直ちに,それらのノウハウ等のライセンス契約をまとめて1つの単位として独立企業間価格を算定することが許されないということにはならず,このことは,複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定することが合理的であるとされる場合を例示する租税特別措置法通達66の4(3)-1や移転価格ガイドライン(2017年(平成29年)に改訂される前のもの)3.9においても,ノウハウ等ごとに異なる時期にライセンス契約が成立している場合に,複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定してはならない旨の記載が見当たらないことからも裏付けられる。
その上で,複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定することを許容していること自体が,ノウハウ等ごとに異なる時期にライセンス契約が成立していることがあり得ることを当然に予定した上でのものであるとも解し得ることにも照らすと,原告が指摘する事情は,その点をもって直ちに,前記イの認定及び判断を覆すには足りない。
b 原告は,①本件ライセンス契約書は,多数のめっき薬品の製造等のノウハウ等の使用を一括して原告から本件国外関連者に対して許諾する旨を合意したことを示す文書ではなく,原告と本件国外関連者との間の多数のめっき薬品の個別の製造等のノウハウ等の使用許諾取引の全てに適用される共通の契約条件を合意した基本契約の趣旨の文書である,②本件ライセンス取引においても,k社ライセンス取引と同様,めっき薬品ごとに製造等のノウハウ等の使用許諾の合意をしている,③各めっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引の対価の額(ロイヤルティの額)は,他のめっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引の対価の額のいかんにかかわらず,業界水準や台湾で一般に認められているロイヤルティ料率を勘案し,当該めっき薬品の純販売価格の5%と,各めっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引ごとに個別に設定したのであって,かつ,異なる時期に成立した複数の使用許諾取引のそれぞれの対価の額は,他の使用許諾取引の対価の額を考慮して決定されていないなどとして,本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごとに独立企業間価格を算定すべきである旨主張する。
しかし,仮に,原告が,めっき薬品ごとに製造等のノウハウ等の使用許諾取引をするかどうかを検討し,当該使用許諾取引の対価の額も使用許諾取引ごとに設定し,かつ,他の使用許諾取引の対価の額を考慮してそれを決定していなかったことを前提としたとしても,そのことをもって直ちに,原告が設定した個別の使用許諾取引の対価の額が,本件ライセンス取引という複数の使用許諾取引から構成されるもののうちの1つとしての当該取引の独立企業間価格と必ず同額になるという関係が基礎付けられるわけではないから,原告が上記に指摘する各事情は,いずれも,本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごとの独立企業間価格と思われる価格を算定してこれを合算することが本件ライセンス取引全体の適切な独立企業間価格を算定したことにならない旨の前記イに判示した認定及び判断を左右しない。
(イ) 原告は,①2つのめっき薬品を使用することによって単体のめっき薬品を使用した場合以上の価値を生み出すことはなく,2つのめっきをすることによって個々のめっきが有する機能と異なる新たな価値が生み出されるわけではない,②複数のプロセスに対応するめっき薬品が存在するからといって,複数のめっき薬品の売上げが増加することはなく,当該複数のめっき薬品のうちの一方の価格が他方の価格を考慮して設定される関係も生じない,③めっき薬品の品ぞろえが豊富であることによってめっき薬品が多く売れることはあり得るが,原告が,新製品が販売されて品ぞろえが増加したことを理由としてめっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引の対価の額を変更したことはない,④めっきの各作業工程は独立であって,同一メーカーのめっき薬品を一括して用いる必要はなく,顧客はそれぞれの工程ごとに当該工程で用いる最適なめっき薬品を個別に選定し,めっきプロセスにおいて使用されるめっき薬品についても,常に当該めっきプロセスで使用される複数のめっき薬品がパッケージとして取引されるわけではないから,各種めっき薬品は,一般に,ユーザーに対してパッケージで販売されるのが定型的な販売方法であるとはいえないなどとして,めっき薬品の特徴を踏まえても,めっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引の対価の額が,他のめっき薬品の使用許諾取引を考慮して決定されているという関係が立証されているとはいえない旨主張する。
しかし,本件においては,本件全証拠によっても,本件国外関連者が各種めっき薬品を単体で販売することが大半であったとか,めっき薬品の品ぞろえが豊富であること自体に何らの価値もなかったとかいうことをうかがわせる具体的な事情等は見当たらず,むしろ,原告が,薬品,機械及びめっき液管理装置の3つの全てを手掛けるめっき薬品の製造に携わる業界における唯一の企業であり,顧客のニーズに合致しためっき薬品の供給や技術サポートをすることを事業の大きな推進力としている旨を標ぼうしているほか(乙17),原告自身,本件国外関連者は,めっきプロセスを構成する全てのめっき薬品を購入してもらえれば,めっきプロセスの全てについて本件国外関連者が責任を持つことをセールスポイントとして販売活動をしている旨を自認していること(原告準備書面(10)26頁)にも照らすと,個別のノウハウ等の使用許諾取引が多数存在し,それらの使用許諾取引の対象である製造等のノウハウ等を組み合わせることにより多様な顧客の要望に応えることが可能となっていること等の個別のめっき薬品の製造等のノウハウ等それ自体を超えたものにも独自の経済的な価値が存することを原告自身も当然の前提としていることがうかがわれる。
そうすると,原告が上記に指摘する事情は,いずれも,原告が設定した個別の使用許諾取引に係る対価の額と本件ライセンス取引という複数の使用許諾取引から構成される取引のうちの1つのものとしての当該使用許諾取引の独立企業間価格とが,必ず同額になるという関係を基礎付ける事情であるとは認められず,本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごとの独立企業間価格と思われる価格を算定してこれを合算することが本件ライセンス取引全体の適切な独立企業間価格を算定したことにならない旨の前記イに判示した認定及び判断を左右しないというべきである。
(ウ) 原告は,めっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾に伴ってされる役務提供取引(技術指導,技術訓練等)の対価を旅費交通費等の実費と定めており,本件ライセンス取引のうち上記のノウハウ等の使用許諾取引と役務提供取引を1つの取引として独立企業間価格を算定することはできず,それぞれの取引の独立企業間価格を個別に算定すべきである旨主張する。
しかし,証拠(乙20,21,23)によれば,本件ライセンス契約書においては,ノウハウ等の使用許諾取引と上記の役務提供取引とで,その対価の額が個別に定められていないことが認められ,他にこれらが個別に定められていることを具体的に認めるに足りる証拠もない。また,上記の役務の提供の対価を旅費交通費等の実費と定めているとされることについても,本件ライセンス契約書には,その旨の明示的な記載は見当たらない上,当該実費は,上記の役務の提供に伴って生ずる費用であって役務の提供の対価の性質を当然に帯びるものではないから,原告が本件国外関連者に対して上記の役務を提供したことによって生じた実費を本件国外関連者が負担する旨の合意をもって,費用の負担に係る合意だけではなく上記の役務の提供の対価に係る合意としての性質も有するものとも直ちには認め難い。
そうすると,本件においては,原告及び本件国外関連者の合理的意思としても,ノウハウ等の使用許諾取引と上記の役務提供取引とを一体のものとして捉えた上で,ロイヤルティ料率及びそれに基づく対価の額が決定されているものと認められ,上記の役務提供取引については,費用の負担に係る合意しか存在しない以上,当該費用の負担に係る合意は,役務の提供自体の対価を無償とする又はノウハウ等の使用許諾取引の対価の額に含める旨の合意であると実質的には解すべきものと認められる。
したがって,本件においては,ノウハウ等の使用許諾取引と役務提供取引とで,その対価の額をそれぞれ個別に算定する事実の基礎自体が欠けているというべきである。
エ まとめ
以上のとおり,本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定するに当たっては,本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごとに独立企業間価格を算定することは合理的ではなく,少なくとも,本件ライセンス取引の全体を1つのものとして捉えるのが合理的である。
(4) 独立価格比準法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することの可否
前記(3)のとおり,本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごとに独立企業間価格を算定すべきである旨の原告の主張を採用することができない以上,それを前提として独立価格比準法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定すべきである旨の原告の主張は,その余の点について判断するまでもなく,採用することができないものというべきであるが,前記(1)アのとおり,租税特別措置法が,基本三法と同等の方法を,その他の方法と同等の方法よりも優先的に用いるべき旨を規定していることに鑑み,本件ライセンス取引の全体を1つの単位として捉えた上で,独立価格比準法と同等の方法を用いてその独立企業間価格を算定することができるか否かについても,検討を加える。
ア 独立価格比準法と同等の方法を用いるための要件について
(ア) 独立価格比準法は,特殊の関係にない売手と買手との間で,ある国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を,当該国外関連取引と取引段階,取引数量その他が同様の状況下で売買した取引がある場合に,当該取引の対価の額(当該同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階,取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引がある場合において,その差異により生じる対価の額の差を調整することができるときは,その調整を行った後の対価の額を含む。)に相当する金額をもって,当該国外関連取引の独立企業間価格とするものであり(租税特別措置法66条の4第2項1号イ),独立価格比準法と同等の方法は,棚卸資産の販売又は購入以外の取引の独立企業間価格を,上記と同様の方法により算定するものである(同項2号イ)。
上記のとおり,独立価格比準法及び独立価格比準法と同等の方法は,いずれも,検証対象である国外関連取引の対象と同種の対象について,当該国外関連取引と同様の状況下でした特殊の関係にない売手と買手との間の取引がある場合に,当該取引の対価の額をもって独立企業間価格とするものであるから,独立価格比準法又は独立価格比準法と同等の方法による独立企業間価格の算定に当たっては,検証対象である国外関連取引と比較可能な独立当事者間取引(比較対象取引)が存することがその前提となる。
(イ) その上で,本件ライセンス取引のような無形資産の使用許諾取引について独立価格比準法と同等の方法を用いる場合には,比較対象取引に係る無形資産が国外関連取引に係る無形資産と同種であり,かつ,比較対象取引に係る使用許諾の時期,期間等の使用許諾の条件が当該国外関連取引と同様であることを要し,この場合において,比較対象取引と国外関連取引が,使用許諾の時期,期間等の使用許諾の条件に差異がある状況の下で行われた場合には,その差異により生ずる対価の額の差を調整することができるものに限られると解すべきであって,租税特別措置法通達66の4(2)-1の(1)及び同66の4(6)-6も,これと同旨を明らかにしたものというべきである。
イ 本件ライセンス取引とその比較対象取引とされるk社ライセンス取引とで取引対象である資産が「同種」であるといえるか否かについて
(ア) 前記アのとおり,棚卸資産の価格そのものを比較する独立価格比準法においては,棚卸資産についての厳格な同種性が要求されるというべきであり,これと同等の方法を用いる場合も同様に,取引対象の厳格な同種性が要求されるというべきであって,独立価格比準法についてのみ,「国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産」と定め,その余の方法については,いずれも「国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産」と定める租税特別措置法通達66の4(2)-1も,これと同旨を明らかにしたものというべきである。
その上で,認定事実イのとおり,①原告が本件ライセンス契約において使用を許諾している無形資産には,ノウハウだけではなく特許権も含まれ,かつ,当該無形資産の内容も必ずしも限定的なものとはいえない一方,原告がk社ライセンス契約において使用を許諾している無形資産はノウハウその他の技術情報のみであり,かつ,当該無形資産の内容もk社ライセンス契約書において限定的に定められているのであって,原告が使用を許諾した無形資産の種類,内容等に差異があったこと,②本件ライセンス契約においては,多数の品目(180~246)のめっき薬品の製造等のノウハウ等が使用許諾の対象とされ,契約期間中に,原告が追加的に製造等のノウハウ等の使用を許諾した品目もあった一方,k社ライセンス契約においては,限定的な品目(6~9)のめっき薬品の製造等のノウハウが使用許諾の対象とされるにとどまり,原告が契約期間中に追加的に製造等のノウハウの使用を許諾した品目もなかったのであり,使用許諾の対象となった無形資産の数,内容等にも差異があったこと,③本件各事業年度における本件国外関連者めっき製品売上高に占めるk社ライセンス製品と同一の製品の売上高の割合が,最大でも,4割強程度にとどまり,かつ,その割合が,時間の経過とともに,おおむね低下していく傾向にあることの各事実に加え,前記(3)のとおり,少なくとも本件ライセンス取引の全体を1つの単位として捉えるべきであることを前提とすると,その比較対象取引がk社ライセンス取引の全体となることも踏まえると,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引とでは,取引の対象となる無形資産が同種のものであるとは認められない。
(イ) 前記(ア)の認定及び判断に対する原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。
a(a) 原告は,めっき薬品の製造等のノウハウ等に係る技術の内容には,高度の類似性が認められ,ノウハウ等の相互間の優劣もないとして,めっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引については,①ノウハウ等の使用許諾の対象である製品が同一種類の製品群に属する場合,②製品が同一種類の製品群に属さないとしても,類似する製品群に属し,かつ,製品群の差異が価格に影響を及ぼす程度ではない場合には,いずれも相当程度の類似性があり,同種であるというべきである旨主張する。
しかし,認定事実ア(ア)のとおり,めっきの結果得られる材料の表面に被覆される金属の薄膜の形状及び性質は,めっき薬品を構成する原料の微妙な配合比,組成の違い等に応じて微妙に異なり,それぞれに固有の特質を有するから,個々のめっき薬品の製造等のノウハウ等は,それぞれに個別性の高い無形資産であると認められる。
そうすると,同一種類の製品群に属するめっき薬品の製造等のノウハウ等の相互間においても,独立価格比準法と同等の方法を用いる際に求められる「同種」性を満たすものとまでは認め難いのであり,類似する製品群に属する場合では,なおさら上記の「同種」性を満たすものとは認め難い。
(b) 原告は,原告が本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引において使用を許諾しているめっき薬品の製造等のノウハウ等は,いかなる原料をどのような比率で用いるのか,どのような順序でタンクに投入するのか,どれだけの時間かくはんするのかという点で共通しているから,使用する主要な原料が共通するめっき薬品の製造等のノウハウ等は,「同種」であるというべきである旨主張する。
しかし,原告が本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引において使用を許諾しているめっき薬品の製造等のノウハウ等が,原告が上記に指摘するとおりの共通点を有するとしても,前記(ア)のとおり,独立価格比準法と同等の方法を用いる場合においては,比較対象取引における資産との「同種」性が厳格に要求されること,前記(a)のとおり,原告が本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引において使用を許諾しているめっき薬品の製造等のノウハウ等が,それぞれに個別性の高い無形資産であることに照らすと,使用する主要な原料が共通するめっき薬品の製造等のノウハウ等が,独立価格比準法と同等の方法を用いる際に求められる資産の「同種」性を満たすものとまでは認め難い。
(c) 原告は,①様々なユーザーのニーズに対応するため,品ぞろえを増やしているとしても,一方のめっき薬品が他方のめっき薬品よりも高度なノウハウ等を有しているわけではなく,いずれのノウハウも原料の構成比であって,その構成比が異なるにとどまるから,ノウハウの個別性が高いとしても,それは原料の配合比が異なることに尽きている,②従来の製品の製造等のノウハウ等も新製品の製造等のノウハウ等も,材料の表面に薄膜を形成するためのものであり,特定のユーザーのニーズにより合致するかどうかに違いがあるにすぎず,ノウハウ等の質的な差異はないなどとして,同一の製品群に属するめっき薬品の製造等のノウハウ等は,同種である旨主張する。
しかし,原料の配合比が異なることによりめっきの形状及び性質にも違いが生じ,そのことが,様々な付加価値を有するものと認められ,原料の配合比が異なることそれ自体にも経済的な価値があり,かつ,当該経済的な価値は,付加価値の違いによっても異なってくるから,原告の主張は,その前提を異にするものである。また,顧客の特定のニーズに対応することができる新製品には,当該ニーズに対応することができるという意味で,従来の製品にはない付加価値があるということができ,新製品の製造等のノウハウ等と従来の製品の製造等のノウハウ等との間には,無形資産の付加価値という意味で差異があるから,原告の主張は,その意味においても,前提を異にするものである。
したがって,上記の点は,同一の製品群に属するめっき薬品の製造等のノウハウ等が,独立価格比準法と同等の方法を用いる際に求められる「同種」性を満たすことを基礎付けるものとは認め難い。
b(a) 原告は,無形資産の使用許諾取引等の計算式で対価の額が合意される取引については,その計算式に影響を及ぼす差異がない場合には,当然に「同種」のものといえるというべきである旨主張する。
しかし,独立価格比準法又は独立価格比準法と同等の方法は,前記アのとおり,取引の対象の価格そのものを比較する方法であり,当該価格を導く計算式を比較するものではない上,取引の対象が「同種」であるか否かが,価格を導く計算式が同様であるか否かのみによって左右されるとも解し難い。
(b) 原告は,異なる製品の製造等のノウハウ等であっても,当該ノウハウ等を構成する内容の類似性があり,当該ノウハウ等を用いて製品を製造するために必要な設備等も類似していて大きな追加投資やリスクの負担をすることなくある製品を製造するか別の製品を製造するかを選択することができるような場合には,製造等のノウハウ等の使用許諾取引における同種の要件を満たすものと判断し得ると解すべきである旨主張する。
しかし,前記アのとおり,無形資産の使用許諾取引の独立企業間価格を算定する際に用いる独立価格比準法と同等の方法において求められる「同種」性は,取引の対象である無形資産についてであり,かつ,前記(ア)のとおり,その程度も厳格なものが求められるから,無形資産そのものの類似性を離れ,無形資産を構成する内容の一部に類似性があるとか,当該無形資産を用いて稼働する設備が類似しているとか,追加投資又はリスクの負担が少ないとかいう事情が類似していることをもって直ちに,取引の対象である無形資産そのものが「同種」であるとまでは認め難い。
ウ 本件ライセンス取引とその比較対象取引とされるk社ライセンス取引とが「同様の状況」の下でされたものであるといえるか否かについて
(ア) 認定事実イによれば,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引との間には,①原告は,本件ライセンス契約においては,本件国外関連者に対し,台湾における独占的な実施権を付与しているのに対し,k社ライセンス契約においては,k社に対し,韓国における非独占的な実施権を付与するにとどまっていること及び②台湾の市場と韓国の市場との間には,(あ)同一のめっき薬品も含むめっき薬品の販売単価,(い)需要のあるめっき薬品,(う)顧客の規模,利益率等の属性にいずれも差異があるなどの市場の状況が異なっていることといった顕著な差異が存することが認められ,かつ,③本件ライセンス契約及びk社ライセンス契約の対象となる資産がいずれも無形資産であって,上記の差異が無形資産の対価の額に与える影響を具体的な金額として把握することが困難であること,④前記(3)のとおり,少なくとも本件ライセンス取引の全体を1つの単位として捉えるべきであり,その場合の比較対象取引がk社ライセンス取引の全体となることにも照らすと,当該差異を調整することは不可能であると認められる。
したがって,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引とが,同様の状況の下でされたものとは認め難い。
(イ) 前記(ア)の認定及び判断に対する原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。
a 原告は,独立価格比準法と同等の方法を用いるための要件である「同様の状況」の下という要件が満たされていないというためには,国外関連取引と比較対象取引との間の差異が対価の額に重大な影響を及ぼすことが客観的に明らかであることを要する旨主張する。
しかし,独立価格比準法又は独立価格比準法と同等の方法における「同様の状況」について,租税特別措置法66条の4第2項1号イ又は同項2号イの文言に照らし,原告が主張するように解すべき法令上の根拠は見当たらない。また,前記アのとおり,独立価格比準法又は独立価格比準法と同等の方法は,価格そのものを比較する方法であり,価格に重大ではない影響が生ずる場合であっても,当該影響(対価の額に生じた差)を調整することができない限り,比較可能性を喪失するものであるから(租税特別措置法通達66の4(2)-1の(1)参照),その意味においても,原告の主張するように解釈すべき理由はない。
b 原告は,①本件国外関連者も,k社も,(あ)共通製品のうちの1つのものをプリント基板メーカーに販売する目的で,原告から,ほぼ同時期に,当該めっき薬品の製造等のノウハウの使用許諾を受け,(い)同一の競合他社と製品の販売を競っている,②本件ライセンス契約も,k社ライセンス契約も,有効期間は,5年間である,③原告は,(あ)韓国においてはk社に対してのみ,台湾においては本件国外関連者に対してのみ,当該めっき薬品の製造等のノウハウを開示し,(い)本件国外関連者に対しても,k社に対しても,ノウハウの内容を記載した書面を交付するだけではなく,原告の技術者を派遣しており,かつ,その費用を本件国外関連者又はk社の負担とすることを合意しているなどとして,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引が「同様の状況」の下にあるものといえる旨主張する。
しかし,前記(ア)に指摘した差異に照らすと,原告が上記に主張するところをもって直ちに,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引が「同様の状況」の下でされたものであるとまでは認め難いから,原告の主張は,前記(ア)の判断を覆すには足りない。
c(a) 原告は,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引との差異による具体的な影響額を算出することができず,その差異を調整することができないことのみによっては,当該差異が対価の額に重大な影響を及ぼすことが客観的に明らかとはいえない旨主張する。
しかし,前記aで判示したとおり,「同様の状況」の下という要件が満たされていないというためには,国外関連取引と比較対象取引との間の差異が対価の額に重大な影響を及ぼすことが客観的に明らかであることを要すると解すべき理由はないから,原告の主張は,その前提を欠くものである。
(b) 原告は,本件ライセンス契約もk社ライセンス契約も,実質上同一の条件の契約であって,契約書における独占又は非独占という差異が,ロイヤルティ料率に影響を及ぼすことについて,通常の合理的な判断をする者であれば誰もが疑いを入れる余地がないほどに客観的に明らかとはいえない旨主張する。
しかし,原告の主張するところは,韓国においても台湾においても特定の企業に対してのみ無形資産の使用を許諾していたという点で結果的に同一の現象が生じたことのみに着目し,韓国においては,原告の自由な選択の結果としてk社に対してのみ無形資産の使用を許諾した反面,台湾においては,契約上の義務として本件国外関連者に対してしか無形資産の使用を許諾することができないために本件国外関連者に対してのみ無形資産の使用を許諾したという結果に至る過程の違いを完全に捨象したものであって,ライセンサーが他社に対して同一の無形資産の使用を許諾し得るという選択肢を保有していること自体にも,独立の経済的な価値があることを捨象するものといわざるを得ない。
そうすると,他社に対しても同一の無形資産の使用を許諾することが契約上も可能であるか,契約上の債務不履行を構成するかという点は,当該無形資産の使用を許諾するライセンサーの選択の幅に差異を生じさせるものであって,その性質上,当該無形資産の使用を許諾する際の対価の額にもそれが反映されるべきものであるから,独占的な使用を許諾する契約に基づく取引と非独占的な使用を許諾するにとどまる契約に基づく取引とで,取引の状況が同様であるとはいえない。
(c) 原告は,使用許諾を受けたノウハウ等を使用して製造した製品をどのような価格で販売するかはライセンシーの自由裁量に委ねられており,販売価格が異なればロイヤルティ料率も異なることが客観的に明らかとはいえない旨主張する。
しかし,前記イ(ア)のとおり,独立価格比準法と同等の方法は,国外関連取引と比較対象取引の価格そのものを比較する方法であって,ロイヤルティ料率を比較する方法ではないから,原告の主張は,その前提を異にするものである。そして,本件ライセンス取引及びk社ライセンス取引の対価の額が,いずれも,販売価格を基準とした金額に一定のロイヤルティ料率を乗じて求められるものであること(前提事実(2)イ及び(3)イ)に照らすと,販売価格の差は,取引の対価の額に影響を及ぼすものと認められる。
(d) 原告は,台湾と韓国とで,同一製品であっても販売価格に差異があるのは,本件国外関連者がユーザーに対してユニークなサービスを提供している半面,k社がユーザーに対して同様のサービスを提供していなかったことによるものである旨主張する。
しかし,証拠(乙53)によれば,本件ライセンス製品のうちの一部のものについては,韓国における価格よりも台湾における価格の方が安価であることが認められるところ,本件全証拠によっても,上記の製品についてのみ,本件国外関連者が他の製品について提供しているとされるサービスを提供しなかったことを認めるに足りないから,台湾と韓国とで製品の販売価格に差異があることの原因が,専ら,本件国外関連者がユーザーに対して提供しているとされるサービスの有無にあるとは認め難い。
(e) 原告は,本件国外関連者もk社も,グローバルにビジネスを展開する共通のエレクトロニクスメーカーにめっき薬品を販売しており,同一のエレクトロニクスメーカー向け基板の市場という統一の市場で事業を展開しているものといえ,本件ライセンス取引もk社ライセンス取引も,同一の市場で競争するプリント基板メーカー向けのめっき薬品に関するものである以上,その対象である市場は,同一である旨主張する。
しかし,原告の主張するところを前提としたとしても,例えば,①本件国外関連者のめっき薬品も,k社のめっき薬品も,最終的に同一のメーカーが全て購入していること,②本件国外関連者のめっき薬品とk社のめっき薬品が,それぞれ,最終的なメーカーに到達するまでの取引の経過が同一であることについて,原告は何ら主張立証しておらず,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引とで,取引段階,取引当事者の果たす機能の状況,直接の顧客等が同様であるとは直ちには認め難いから,原告が上記に指摘する事情のみによっては,直ちに本件ライセンス取引とk社ライセンス取引の市場が,同一であるとは認め難い。
エ まとめ
以上のとおり,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引が,その取引の対象である資産が同種のものであるとも,取引が同様の状況の下でされたものとも認められず,本件全証拠によっても,他に,独立価格比準法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することを可能とするような適切な比較対象取引も見当たらないから,本件においては,独立価格比準法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することはできないというべきである。
(5) 独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することの可否
ア はじめに
前記(4)のとおり,独立価格比準法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することができない上,当事者は,本件においては,基本三法と同等の方法のうち独立価格比準法と同等の方法以外のものを用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定すべき旨を主張しておらず,かつ,本件全証拠によっても,基本三法と同等の方法のうち独立価格比準法と同等の方法以外のものを用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することが相当であることを認めるに足りないから,基本三法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することはできず,その他の方法と同等の方法を用いてその独立企業間価格を算定するのが合理的であると認められる。
ところで,原告は,本件ライセンス取引を構成する個別の取引ごとに,その他の方法と同等の方法のうちの1つである独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いることができる旨を主張するところ,前記(3)のとおり,本件ライセンス取引を構成する個別の使用許諾取引ごとに独立企業間価格を算定すべきである旨の原告の主張を採用することができない以上,それを前提とする上記の原告の主張も,その余の点について判断するまでもなく,採用することができないものである。
もっとも,上記のとおり,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法は,その他の方法と同等の方法のうちの1つのものであり,この段階で検討しておくことが便宜であると考えられることから(前記(1)イ参照),ここで,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することができるか否かについて,検討を加える。
イ 独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法の意義について
(ア) 基本三法に準ずる方法と同等の方法は,棚卸資産の販売又は購入以外の取引において,それぞれの取引の類型に応じ,取引内容に適合し,かつ,基本三法と同等の方法の考え方からかい離しない合理的な方法をいうものと解するのが相当であるところ,それを前提とする限り,独立価格比準法と同等の方法については,前記(4)イ(ア)のとおり,価格そのものを比較する方法であって,国外関連取引と比較対象取引とで取引の対象が同種であること及び国外関連取引と比較対象取引とが同様の状況の下でされたものであることがいずれも重視される方法であること(移転価格ガイドライン(2017年(平成29年)に改訂される前のもの)2.14,租税特別措置法66条の4第2項が規定する基本三法の要件の違いも参照)に照らすと,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法とされる方法が,国外関連取引と比較対象取引とで取引の対象が同種であること及び国外関連取引と比較対象取引とが同様の状況の下でされたことと整合性を有するか否かとの観点から,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に該当するか否かを検討すべきものと解される。
(イ) 原告は,棚卸資産の販売又は購入以外の取引について,独立価格比準法と同等の方法を用いることができる程度の(理想的な価格に近似するという法律上の推定が及ぶまでの)比較可能性がないとされた取引を比較対象取引として当該比較対象取引の価格と比較することにより独立企業間価格を算定する方法を,独立価格比準法と同等の方法と基本的な考え方が同じ方法であるものとして,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法として取り扱い,独立企業間価格の算定のために用いることができると解すべきである旨主張し,その根拠として,同種とはいえない程度の取引対象の差異があり,当該差異により生ずる対価の額の差異が重大であって,かつ,当該対価の額の差異を調整することができない場合であっても,残余利益分割法と同等の方法を含むその他の方法を用いて算定され得る独立企業間価格よりも,客観的存在としての独立企業間価格に近似し,算定された独立企業間価格の相対的な信頼性が高い場合には,法律上の推定を行い得ないとの理由のみで,独立企業間価格を算定する方法としての信頼性が劣った他の方法を基に独立企業間価格を算定しなければならないことを正当化する理由はないことを挙げる。
しかし,前記(ア)のとおり,独立価格比準法と同等の方法は,国外関連取引と比較対象取引とで取引の対象が同種であること及び国外関連取引と比較対象取引とが同様の状況の下でされたものであることがいずれも重視される方法であり,このことは,移転価格ガイドライン(2017年(平成29年)に改訂される前のもの)においても,比較される取引間又はそれらの取引を行う企業間のいかなる差異も,価格に重大な影響を与えない場合,又はそのような差異の重大な影響を排除するために,相当程度正確な調整を行うことができることが,CUP法(これは,租税特別措置法66条の4第2項2号ロに含まれる独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法をも包含する概念である。)を用いるための要件とされていること(同2.14)からも明らかであって,原告が主張するように,独立価格比準法と同等の方法を用いることができる程度の比較可能性がないとされた取引を無制限に比較対象取引とすることは,CUP法においても想定されていないものと解するのが相当であるから,原告の主張は,およそ独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いる要件を満たしていない方法をもって,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法と取り扱うべき旨を主張するものであって,その前提を異にするものというべきである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
ウ 原告が主張する方法が独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法といえるか否かについて
(ア) 前記(4)イ及びウのとおり,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引とでは,取引の対象となる資産が同種のものであるとはいえず,かつ,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引が,同様の状況の下でされたものともいえないところ,前記(4)イ及びウに判示した差異の内容,程度等に加え,当該差異を調整することができないことにも照らすと,k社ライセンス取引を比較対象取引とし,k社ライセンス取引の価格と直接比較することにより本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することは,独立価格比準法と同等の方法の考え方からかい離しない合理的な方法であるとは認め難いのであり,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いて独立企業間価格を算定したものとはいえないというべきである。
(イ) 原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。
a 原告は,①原告が本件ライセンス取引において使用を許諾しためっき薬品の製造等のノウハウ等及び原告がk社ライセンス取引において使用を許諾しためっき薬品の製造等のノウハウは,いずれもめっき薬品の製造という同一の事業に係るものであること,②上記①のノウハウは,いずれも表面処理を行うという同一の機能を果たし,めっき薬品を製造するために必要とされる技術情報等の種類,内容等において高度の類似性があること,③独立企業間で無形資産の使用許諾取引がされる場合にロイヤルティがどのように決定されているかという実態,④原告が本件非関連者であるk社との間で無形資産の使用許諾取引を行う際にロイヤルティをどのように決定したかという事実及び⑤本件ライセンス契約の対象であるめっき薬品の製造等のノウハウ等の特徴に鑑みると,比較対象取引の類似性は十分に満たされており,かつ,基本的な考え方も共通しているから,原告が主張する方法(k社ライセンス取引を比較対象取引とする方法)は,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に該当する旨主張する。
しかし,前記イ(ア)及び前記(ア)のとおり,独立価格比準法と同等の方法が,取引の対象の同種性及び取引の状況の同様性を重視する方法であり,原告が上記に指摘するような事情があるとしても,直ちに,取引の対象の同種性及び取引の状況の同様性の点で,独立価格比準法と同等の方法の考え方からかい離しないとは認め難いから,原告が上記に主張する方法は,独立価格比準法と同等の方法の考え方からかい離しない合理的な方法とは認め難い。
b 原告は,本件においては,台湾における残余利益の発生に本件国外関連者のユニークな役務の提供を伴ったマーケティング活動が大きく貢献している反面,原告の研究開発活動の貢献は不明であり,少なくとも本件国外関連者の活動の貢献ほどには残余利益の発生に貢献していないと思われることに照らし,残余利益分割法と同等の方法は,独立企業間であったならばされたであろう利益分割に近似する結果を算定し得る方法とはいえず,信頼性が低い一方で,k社ライセンス取引を比較対象取引としてk社ライセンス取引のロイヤルティ料率を基に本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定する方法は,本件ライセンス取引もk社ライセンス取引も,業界の一般的なロイヤルティ料率の水準を基準にロイヤルティ料率を決定するという一般的な慣行に合致した方法で価格が設定されていることに照らし,独立企業間であれば成立したであろう価格に近似する価格を算定し得るから,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法として,本件ライセンス取引に係る独立企業間価格の算定に用いることができる旨主張する。
しかし,原告が主張する方法は,前記aのとおり,独立価格比準法と同等の方法の考え方からかい離しない合理的な方法とはいえず,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法とはなり得ない上,本件に残余利益分割法と同等の方法が適切に用いられたか否かという問題と,本件において原告が主張する方法が独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に該当するか否かという問題とは,論理的な関連がなく,別個の問題であって,仮に,被告が主張する残余利益分割法と同等の方法が不適切又は違法に用いられたものであったとしても,そのことをもって直ちに原告が主張する方法が独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に該当すると評価し得ることになるわけではないから,その前提を異にするものである。
エ まとめ
以上のとおり,k社ライセンス取引を比較対象取引として独立価格比準法と同等の方法と同様の手法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定する方法は,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法とは認められず,本件全証拠によっても,他に,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いることを可能とするような適切な比較対象取引も見当たらないから,本件においては,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することはできないというべきである。
(6) 原価基準法を用いて本件棚卸資産販売取引の独立企業間価格を算定することの可否
ア 原価基準法を用いるための要件について
原価基準法は,国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入,製造その他の行為による取得原価の額に通常の利潤の額(当該取得原価の額に通常の利益率を乗じて計算した額)を加算して独立企業間価格を算定する方法であり(租税特別措置法66条の4第2項1号ハ),上記の「通常の利益率」は,国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を購入,製造その他の行為により取得した者が当該同種又は類似の棚卸資産を特殊の関係にない者に対して販売した取引(比較対象取引)に係る当該販売者の売上総利益の額の当該原価の額の合計額に対する割合とするが,比較対象取引と当該国外関連取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には,その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合とするものとされている(租税特別措置法施行令39条の12第7項)。
そうすると,原価基準法を用いて本件棚卸資産販売取引の独立企業間価格を算定するためには,本件棚卸資産販売取引の対象資産であるBB品について,「通常の利益率」を算定する必要があることになる。
イ 本件棚卸資産販売取引における「通常の利益率」を算定することの可否について
(ア) まず,原価基準法を用いて本件棚卸資産販売取引の独立企業間価格を算定するとした場合,原価基準法を用いる対象となる取引の単位を,本件棚卸資産販売取引を構成する個別のBB品の販売取引とすべきか,本件棚卸資産販売取引の全体とすべきかが問題となるところ,本件棚卸資産販売取引についても,前記(3)において本件ライセンス取引について判示したところと同様の理由により,本件棚卸資産販売取引を構成する個々の取引ごとに独立企業間価格を算定することは合理的ではなく,少なくとも本件棚卸資産販売取引全体を1つのものとして取り扱うべきものと認めるのが相当である。
(イ) そして,本件棚卸資産販売取引における取引の対象物(棚卸資産)であるBB品は,機密情報の漏えいを防ぐ又は遅延させることを目的とする製品であり,その成分が開示されないことに意味があるもの(このことについては,当事者の間に争いはない。)であるから,市場で一般的に取引される製品であるとは認められず,原告が有するめっき薬品の製造等のノウハウ等という特定の無形資産の存在及び利用を前提とした特殊な製品であると認められる。
そうすると,BB品は,市場において一般的に取引される製品ではない以上,その「通常の利益率」を一般的な市場の取引から算定することは,そもそも不可能であると認められる。
(ウ) 前記(イ)の点をひとまずおき,仮に,k社棚卸資産販売取引を比較対象取引として,本件棚卸資産販売取引における「通常の利益率」を算定することができるか否かを考慮したとしても,証拠(乙104の2,乙105,106)によれば,①BB品の利益率は,その型番ごとに,最小のもので2%,最大のもので91%と大きな違いがあり,個別性が高い資産であること,②k社棚卸資産販売取引において取引されているBB品が共通製品に係る3種類のみであること,③本件棚卸資産販売取引において取引されているBB品は,時期によって異なるものの,最小で12種類,最大で22種類にも上っており,かつ,そのほとんどが固有製品に係るものであること,④本件棚卸資産販売取引におけるBB品の売上金額のうちk社棚卸資産販売取引においても取引されているBB品の売上金額が占める割合は,本件各事業年度の加重平均で0.76%にとどまることの各事実が認められる。
そうすると,前記(4)において本件ライセンス取引について判示したところに加え,上記①ないし④の事実も併せ考慮すると,k社棚卸資産販売取引におけるBB品は,本件棚卸資産販売取引との関係で,「同種又は類似の棚卸資産」であるとは認め難く,k社棚卸資産販売取引全体の利益率をもって,本件棚卸資産販売取引における「通常の利益率」を算定することも不可能であると認められるから,k社棚卸資産販売取引を比較対象取引として,原価基準法を用いて本件棚卸資産販売取引の独立企業間価格を算定することはできないというべきである。
(エ) したがって,原価基準法を用いて本件棚卸資産販売取引の独立企業間価格を算定することはできないというべきである。
ウ 原告の主張に対する判断
原告は,①本件国外関連者に対するのと同様,k社に対し,BB品を販売している,②原告がk社に対して販売しているBB品も,本件国外関連者に対して販売しているBB品も,めっき薬品を製造するための半製品等であり,その性状,構造,機能等の面で同一であるか類似する,③原告は,k社に対するBB品についても,本件国外関連者に対するBB品についても,めっき薬品の製造に必要な複数の原料を混合するという製造行為を行った上で出荷している,④k社棚卸資産販売取引と本件棚卸資産販売取引との間で,利益率に影響を及ぼすことが明らかな差異も認められないなどとして,k社棚卸資産販売取引を比較対象取引として原価基準法を用いて本件棚卸資産販売取引の独立企業間価格を算定することができる旨主張するが,原告が上記に指摘するところは,いずれも,前記イに判示したところに照らしてその認定及び判断を覆すには足りず,他に,上記の原告の主張に沿う証拠も見当たらない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(7) 小括
以上によれば,本件ライセンス取引及び本件棚卸資産販売取引のいずれについても,基本三法又は基本三法と同等の方法を用いてその独立企業間価格を算定することはできないと認められる。
2 争点1-2(本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するために残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いることの可否)について
(1) はじめに
前記1に判示したとおり,基本三法又は基本三法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することはできないから,その他の方法又はその他の方法と同等の方法(租税特別措置法66条の4第2項1号ニ又は2号ロ)を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定する必要があると認められる。
その上で,被告は,独立企業間価格を算定する取引の単位として,本件国外関連取引の全体を1つの単位と取り扱った上で,その他の方法及びその他の方法と同等の方法のうちの1つである残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定すべき旨を主張するから,まず,その他の方法又はその他の方法と同等の方法のうちの1つのものを用いる場合に,当該方法が,他のいかなる方法よりも適切であることを具体的に主張立証することを要するか否かを検討し(後記(2)),次に,本件国外関連取引の独立企業間価格を算定する取引の単位について,本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引を一体のものと評価した上で本件国外関連取引全体を1つの単位として取り扱うことが合理的であるか否かについて検討を加え(後記(3)),最後に,本件国外関連取引について,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いてその独立企業間価格を算定することが適切か否かについて検討を加える(後記(4))ものとする。
(2) その他の方法(基本三法以外の方法)又はその他の方法と同等の方法(基本三法以外の方法と同等の方法)を用いる場合の要件
ア 租税特別措置法66条の4第2項の解釈について
租税特別措置法66条の4第2項は,国外関連取引の独立企業間価格を算定する際,基本三法又は基本三法と同等の方法を優先的に用いて国外関連取引の独立企業間価格を算定すべき旨を規定する一方(同項1号柱書き,2号柱書き),その他の方法又はその他の方法と同等の方法を用いて独立企業間価格を算定する場合に,当該方法のうちどの方法を優先的に用いなければならないのかについて,何らの規定も設けていないから(同項1号ニ,2号ロ),その他の方法又はその他の方法と同等の方法を用いて独立企業間価格を算定する場合には,当該事案の特徴に照らし,その他の方法又はその他の方法と同等の方法の中から,合理的な方法を選択すれば足りるものと解するのが相当である。
イ 原告の主張に対する判断
原告は,①課税要件明確主義によれば,複数の独立企業間価格を算定する方法の中から任意の1つを課税庁が選択して用いることはあり得ず,租税特別措置法66条の4第2項の解釈によって,具体的な状況の下,独立企業原則に基づいて最も適切に独立企業間価格を算定することができる方法として一義的に決定され得る方法のみが適法な独立企業間価格を算定する方法である,②申告納税方式の下においては,課税庁の裁量次第で異なる数額の納税義務が確定することはあり得ない,③現行の租税特別措置法66条の4第2項が規定する「最も適切な方法」という文言は,確認規定にすぎない,④基本三法を優先的に用いるべき旨の租税特別措置法66条の4第2項の規定は,基本三法がその他の方法よりも適切な方法であるという法律上の推定を規定したものであるなどとして,その他の方法又はその他の方法と同等の方法を用いて国外関連取引の独立企業間価格を算定する場合には,課税庁が選択した方法がその他の方法又はその他の方法と同等の方法の中で最も適切な方法であることを要し,それを被告が主張立証すべきである旨主張する。
しかし,前記アのとおり,その他の方法又はその他の方法と同等の方法を用いる際,その適用の順序等を規定した法令上の根拠は見当たらず,また,課税庁がその他の方法又はその他の方法と同等の方法のうちで最も適切な方法を選択しなければならない旨を規定する法令上の明文の根拠も見当たらない上,課税庁が選択した方法が,適切な方法であることを要するのは,事柄の性質上当然のことであり,他に適切な方法が存する具体的な蓋然性があることがうかがわれるときに,課税庁が,当該他の方法よりも課税庁が選択した方法の方がより適切であることを具体的に検討し,その主張立証を要することはあり得るとしても,それを超えて,その他の方法又はその他の方法と同等の方法に属する全ての方法を用いることができるか否かを常に具体的に検討し,かつ,当該全ての方法によって一応算定される独立企業間価格とされるものの適否を具体的に比較検討した上で,課税庁が選択した方法が最善のものであることを常に具体的に主張立証しなければならないものとまでは解されないというべきである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(3) 本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引を一体のものとして捉えた上で本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することの可否
ア 本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引との関係について
(ア) 前提事実(2)アのとおり,BB品は,本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等の一部を構成し,かつ,本件ライセンス製品を製造するために不可欠な原料又は当該めっき薬品の一部(半製品等)であり,また,原告が本件国外関連者に対して開示した本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等は,当該ノウハウ等を使用して本件ライセンス製品を製造する際,原告が指定するBB品を使用することがその前提となっていた。
これを前提とすると,①BB品は,原告が本件ライセンス契約において使用を許諾しているノウハウ等を前提としない限り,それを有効に使用することが難しい物品であることになり,当該BB品単体としては,通常の取引の対象となり得ない不完全なものであったといえること,②本件ライセンス契約に基づいて原告が本件国外関連者に対して開示したノウハウ等も,原告が提供するBB品を使用しない限り,当該ノウハウ等のみによって本件ライセンス製品を製造することが不可能なものであるため,当該ノウハウ等は,それ単体としては不完全なものにとどまり,通常の取引の対象にもなり得ないものであったといえることの各事実が認められることとなる。
そうすると,本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等とそれに対応するBB品については,それらが合わさって初めて本件ライセンス製品を製造等することができる独立した完全なノウハウ等として成立し,通常の取引の対象としても観念し得るものとなって,その独立企業間価格を想定し得るものとなるものと認められる。
(イ) また,証拠(乙56,57,60,64,77)によれば,原告は,本件ライセンス取引に係るロイヤルティ収入のみでは,十分な利益を回収することができていないことから,価格を原告においてコントロールすることができ,かつ,本件ライセンス製品を製造するために必要不可欠であるBB品の取引によっても利益の回収を図る必要があるとの認識の下で本件ライセンス取引及び本件棚卸資産販売取引をしていたことが認められ,原告の主観的な認識においても,本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引とが,別個独立のものとしてではなく,一体のものとして捉えられていたことが認められる。
(ウ) したがって,本件の証拠関係の下においては,本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引を一体として捉えたものを1つの単位として,本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することが合理的である(なお,租税特別措置法通達66の4(3)-1の(2),移転価格ガイドライン(2010年(平成22年)に改訂される前のもの)1.42も参照)。
イ 原告の主張に対する判断
(ア) 原告は,平成19年3月期のBB品の取引は,240個の無形資産の使用許諾取引に対して僅か12品目にとどまっているとして,本件ライセンス製品を製造するに当たり,そのほとんどはBB品を原料として使用していないから,本件ライセンス取引のうちのほとんどのものには,その価格に影響を及ぼす可能性のあるBB品の取引(棚卸資産販売取引)がそもそも存在していない旨主張する。
しかし,証拠(乙139)によれば,BB品として管理される製品の数が,年々増加していることが認められ,また,本件全証拠によっても,本件国外関連者が,平成19年3月期当時,本件ライセンス製品の全てを実際に製造していたことを認めるに足りないから,本件ライセンス契約に記載された本件ライセンス製品の総数と,平成19年3月期当時に取引されていたBB品の数のみを殊更に取り出して比較した結果は,有意なものとはいえないと認められる。さらに,証拠(乙50の4,乙142)及び弁論の全趣旨によれば,本件各事業年度におけるd社めっき製品売上高に占めるBB品が使用されたd社本件ライセンス製品売上高の割合は,少なくとも6割を超えていることが認められるのであり,本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引との間には有意な連関があることもうかがわれる。
そうすると,原告が上記に指摘するところを前提としたとしても,本件棚卸資産販売取引と本件ライセンス取引とを1つの単位として取り扱って独立企業間価格を算定すべきであるとの前記アの認定及び判断を覆すには足りない(なお,前記1(3)ア(ア)のとおり,複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定することができるか否かについては,独立企業間価格を算定する対象となる取引に係る諸般の事情を総合的に考慮し,複数の取引を1つの単位としてまとめて独立企業間価格を算定することが合理的な場合であるといえるか否かにより,これを決すべきものであるから,本件棚卸資産販売取引と本件ライセンス取引とを1つの単位としてまとめて取り扱って独立企業間価格を算定することができるのは,本件各事業年度におけるd社めっき製品売上高に占めるBB品が使用されたd社本件ライセンス製品売上高の割合が10割である場合に限られるとはいえないのであり,これに反する原告の主張は,採用することができない。)というべきである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ) 原告は,①BB品自体は,混合された原料の価格の合計額以上の価値を有するものではなく,BB品を含むノウハウ等の開示を受けたライセンシーに対する原料の販売に係る対価の額と完全なノウハウ等の開示を受けたライセンシーに対する原料の販売に係る対価の額は,競争市場においては,理論的には同一であって,ノウハウ等を含むものとして高値で取引されているものでもないから,BB品を原料の1つとして用いている製品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引について,BB品の価格が無形資産の使用許諾取引の対価の額の影響を受けている事実も,無形資産の使用許諾取引の対価の額がBB品の価格の影響を受けている事実もない,②BB品を用いたライセンス契約のロイヤルティ料率がBB品を含まないライセンス契約のロイヤルティ料率よりも低く設定されるという事実はなく,本件においてその立証もないなどとして,本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引とを1つの単位としてまとめて取り扱って独立企業間価格を算定することはできない旨主張する。
しかし,原告が主張するところをもっても,本件ライセンス取引の対象である本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等も,本件棚卸資産販売取引の対象であるBB品も,いずれも単体としては,不完全なものであり,通常の取引の対象にもなり得ないものであったとの前記ア(ア)の認定を左右しないから,結局,前記アの認定及び判断も左右しない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(4) 残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することの是非
ア 残余利益分割法の特徴について
残余利益分割法は,棚卸資産の販売又は購入に係る国外関連取引について,第一段階として,分割対象利益のうち重要な無形資産を有しない非関連者間取引で通常得られる利益(基本的利益)を国外関連取引の両当事者にそれぞれ配分し,第二段階として,基本的利益を配分した後の残余利益(重要な無形資産により生じた利益)を,当事者双方の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する方法により,独立企業間価格を算定する方法であり(現行の租税特別措置法施行令39条の12第8項1号ハ,租税特別措置法通達66の4(4)-5参照),重要な無形資産により通常の非関連者間取引に比して,より多額の営業利益(すなわち残余利益)を獲得していると考えられる場合に用いることができる方法であり(乙8),残余利益分割法と同等の方法は,棚卸資産の販売又は購入以外の国外関連取引の独立企業間価格を,上記と同様の方法により算定するものである。
そうすると,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法は,その残余利益を重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分することをその特徴の1つとするものであることになるから,適用対象法人及び国外関連者の双方が独自の重要な無形資産を有する場合には,当該独自の重要な無形資産の貢献を分割要因に反映することができる点で合理的な算定手法であると認めることができるというべきである。
イ 残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することの可否について
本件においては,前提事実(1)ア及びイ並びに同(2)に摘示した各事実に加えてこれまでに判示したところによれば,①原告は,めっき薬品の製造等に係る研究開発活動をし,各種めっき薬品の製造等のノウハウ等(無形資産)を形成した上で,本件国外関連者に対し,当該ノウハウ等(無形資産)の使用を許諾し(本件ライセンス契約),その対価を得ていた(本件ライセンス取引)こと,②本件国外関連者は,原告から,上記のノウハウ等(無形資産)の開示を受けて多種多様なめっき薬品を製造することができるようになったことを前提として,顧客に対し,そのニーズにきめ細かに対応する表面処理(めっき)の技術を提供することが可能となったこと,③本件国外関連者は,顧客の認定取得の技術支援サポート,24時間サポート,クレーム解析,アフターサービス等の業務による技術支援を提供することに係る無形資産を形成したこと,④本件国外関連者は,上記②及び③により,台湾において,プリント基板を製造するために必要なめっき薬品の少なくとも一部については,高い市場の占有率を獲得することに成功し,高い収益を得ることにも成功したことの各事実が認められる。
そうすると,本件国外関連取引については,原告及び本件国外関連者の双方が重要な無形資産を有し,各無形資産が利益の獲得に寄与していると認められるから,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することは,合理的である。
ウ 原告の主張に対する判断
前記イの認定及び判断に係る原告の主張について,順に検討するが,次のとおり,いずれも採用することができない。
ただし,原告の主張のうち,残余利益の分割の基準が不合理であり,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いることが不適当である旨の主張については,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を具体的に用いて独立企業間価格を算定した結果の適否と密接に関連することから,後に検討する。
(ア) 原告は,本件においては,k社ライセンス取引という比較対象取引が存在し,移転価格ガイドラインが定めるCUP法に該当する租税特別措置法が規定する独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法を用いることができるから,残余利益分割法と同等の方法を用いるよりも適切な方法を用いることができる事案である旨主張するが,前記1(5)のとおり,原告が主張する方法は,独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に該当しないから,その前提を異にするものである。
(イ) 原告は,本件ライセンス取引とk社ライセンス取引との状況に差異があることを前提とし,これをロイヤルティ料率によって調整するとしても,当該調整により増えるロイヤルティ料率の割合は,5%を超えることはない(甲142,143)旨や,被告が主張する残余利益分割法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定した結果をロイヤルティ料率に引き直すと,平成19年3月期のロイヤルティ料率が20%に達するが,これは通常のマーケットレートからは常識的に見てあり得ず,被告が主張する方法を用いた結果が,理想的な価格や所得の配分から著しくかい離した結果しか算定し得ないことを示している旨も主張する。
しかし,認定事実イ(エ)aのとおり,本件ライセンス取引を構成するめっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引の大半が,本件国外関連者に対してのみその使用を許諾しているユーザーの個別のニーズにきめ細かに対応した固有製品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引であり,かつ,複数のめっきプロセスに対応することができるような幅広い内容のめっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引から構成されていることに照らすと,本件ライセンス取引は,通常のマーケットレートとされるものを想定することが困難な無形資産を使用許諾取引の対象とするものであると認められる。これに加え,原告が上記に主張する通常のマーケットレート(5%)又はそれを修正したとされるもの(最大でも10%)と,被告が主張する計算結果について原告が主張するところ(20%)との差の程度も前提とすると,仮に,原告がした上記の計算が正確であることを前提としたとしても,そのことのみをもって直ちに,残余利益分割法と同等の方法を用いて本件ライセンス取引の独立企業間価格を算定することが適切ではないとまではいえない。
(ウ) 原告は,台湾における圧倒的なシェア及び高い利益は,本件ライセンス契約が締結された後に,本件国外関連者のビジネスモデルの結果として達成されたものであり,現在も当該ビジネスモデルによって維持されているものである旨主張する。
しかし,前記イのとおり,本件国外関連者が,原告から使用許諾を受けた無形資産を使用して製造しためっき薬品(本件ライセンス製品)を用いて顧客のニーズにきめ細かに対応する表面処理の技術を提供することが可能であることが,本件国外関連者が提供している営業技術支援(原告が上記に主張する本件国外関連者のビジネスモデル)の前提となっているのであり,本件国外関連者が台湾において上げた高い収益が,専ら,上記の営業技術支援にのみ起因するものとは認め難い。
(エ) 原告は,①原告がする研究開発活動は,競合他社もしており,原告独自の機能ではない,②競合他社と比較して売上高に占める研究開発費の比率も高くない,③原告の研究開発活動の成果であるめっき薬品の製造等のノウハウ等を用いて製造されためっき薬品は,競合他社も同様の機能を持つ代替可能な競合製品を販売しており,格別の優位性も差別化もない,④原告の有するノウハウであるめっき薬品の原料の配合比等のノウハウは,日本,韓国及び台湾における共通の取引対象であるにもかかわらず,日本や韓国においては,台湾におけるほど高いシェアも営業利益率も実現していない,⑤原告がした調査の結果(甲113)によれば,原告の研究開発活動が利益の発生に貢献しているとは認められず,仮に,貢献があるとしても,その程度は,本件国外関連者の顧客に対するサービス活動と比較して極めて小さいなどとして,原告の研究開発活動の結果は,原告及び本件国外関連者がめっき薬品の市場のプレイヤーであり続けるために必要な機能であるにすぎず,類似するめっき薬品の製造及び販売の事業をするための必要条件であって,残余利益を生み出すほどのユニークな機能ではなく,当該結果により,本件国外関連者が台湾で優位な競争上の地位を築いたという事実は存在しない旨主張する。
しかし,前記イに判示したところに加え,原告が上記に主張するところも,原告にはめっき薬品の製造等のノウハウ等が存在しない又は原告が保有する上記のノウハウ等が無価値なものであるという趣旨のものではなく,原告が保有する上記のノウハウ等が,競合他社との相対的な比較において優位性がないという趣旨のものにとどまっているから,原告の主張は,原告も競合他社も,それぞれが独自の無形資産を有していることを指摘するものにすぎず,原告が保有するノウハウ等が本件国外関連取引における残余利益の源泉であること自体を否定するものとはいえない。そして,原告が指摘する証拠(甲113)は,計量経済学の知見に基づく統計的手法を用いた分析であって,様々な仮定及び条件の下に組み立てられた意見の1つであるにとどまり,かつ,本件各事業年度とは異なる年度についてのものであるから,原告の主張を直接的に裏付けない上,①b社の真の研究開発費と異なる変数を用いて測定誤差を生じさせていること,②b社とサンプル企業とで分析の前提となる変数の定義付けを異なるものに設定していること等の問題点があると認められる(乙152)から,そもそも,原告の主張を的確に裏付けるものとは認め難い。
(オ) 原告は,残余利益が生ずるためには,製品が高い価格で売れなければならないところ,顧客が製品をいくらで購入するかということと当該製品が顧客のニーズに合致していることとは無関係であるから,ノウハウ等が含まれた商品であり,顧客のニーズに合致した商品であるというだけでは,当該ノウハウ等の価値が高いとはいえず,また,仮に,ノウハウ等の含まれた商品の販売価格が高いものであるとしても,当該商品の販売とともに役務の提供もされている場合には,ノウハウ等の価値が高いから販売価格も高いのか,提供された役務の価値が高いから販売価格が高いのかを決する証拠を提示しない限り,高い販売価格の結果実現した残余利益の源泉が何に由来するものであるかが不明である旨主張する。
しかし,残余利益分割法又は残余利益分割法と同等の方法を用いる際に検討すべき残余利益は,重要な無形資産を有しない場合に得られる利益を超える部分の利益であり(租税特別措置法通達66の4(4)-5参照),製品の価格の高低のみによって左右される性質のものではないし,この点をおくとしても,ノウハウ等が含まれた顧客のニーズに合致した商品は,そのこと自体に付加価値があり,独自の経済的な価値を有することが明らかであって,それに起因する残余利益を生ずるものと認められるから,原告の主張するところは,その前提を異にするものである。
また,原告の主張は,残余利益を実現した原因がノウハウ等又は役務のいずれかのみに存する事態しかあり得ないことを前提とするものであり,その意味においても,前提を異にするものというべきである。
(5) まとめ
以上のとおり,本件の証拠関係の下においては,本件国外関連取引自体を1つの単位とした上で,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いてその独立企業間価格を算定することは,本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するための合理的な方法であると認められる。
そして,本件においては,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法以外の本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するために用いるべき適切な方法が存する具体的な蓋然性があることをうかがわせる事情等は見当たらないから,被告が,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定したことは,適法である。
3 争点2(被告が用いた残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法の相当性)について
(1) 残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いる対象となる取引の範囲
前提事実(2)ウのとおり,本件においては,複数の原告の国外関連者間で一連の取引(連鎖取引)がされていることから(本件b社等取引),残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するに当たり,本件b社等取引を含めて算定する必要があるか否かがまず問題となるため,その点について検討を加える。
ア 連鎖取引に係る残余利益分割法の適用について
ある国外関連取引と連鎖する国外関連者間の取引(連鎖取引)が行われており,かつ,当該連鎖取引が独立企業間価格でされていない場合には,上記の国外関連取引の当事者である国外関連者の所得が減少するなどして,当該国外関連取引に係る分割対象利益の計算にも影響を及ぼすから,そのような場合には,当該国外関連取引の独立企業間価格を算定する際,当該連鎖取引も含めて独立企業間価格を算定すべきものと解される。
他方,連鎖取引が存在する場合であっても,(あ)当該連鎖取引に移転価格税制上の問題(所得移転の蓋然性)があるとは認められない場合(例えば,業界の平均的な利益水準との比較等の検証をした結果,業界の平均的な利益水準と大差がなかった場合),(い)取引の規模が小さい(取引の金額が少額である)ために国外関連取引に係る分割対象利益の計算に及ぼす影響が小さく,当該連鎖取引を無視したとしても分割対象利益の計算の信頼性を揺るがすような影響がない場合等については,当該国外関連取引の独立企業間価格を算定する際,当該連鎖取引を含めることなく独立企業間価格を算定したとしても,当該国外関連取引の独立企業間価格を適切に算定することができるから,そのような場合は,独立企業間価格を算定する対象となる国外関連取引に当該連鎖取引を含める必要はないと解するのが相当である。(以上につき,国税庁作成の「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」(乙110)も参照)
イ d社とh社及びi社との間の取引について
(ア) 証拠(乙112)及び弁論の全趣旨によれば,①本件各事業年度において,d社全体売上高に占めるd社とh社との間の取引の売上高の割合が,最大で3.4%(2010年(平成22年)),最小で1.7%(2007年(平成19年)及び2008年(平成20年))であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの加重平均で2.3%であったこと,②d社とh社との間の取引の売上高は,本件各事業年度において,最も多額のもので4679万台湾ドル(2010年(平成22年)。なお,同年のd社全体売上高は,13億8056万1000台湾ドルである。),最も少額のもので2737万台湾ドル(2008年(平成20年)。なお,同年のd社全体売上高は,16億0016万3000台湾ドルである。)であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの6年間の累計で,2億1119万1000台湾ドル(なお,上記の6年間の累計のd社全体売上高は,90億9634万7000台湾ドルである。)であったこと,③本件各事業年度において,d社全体売上高に占めるd社とi社との間の取引の売上高の割合が,いずれも0.1%未満であったこと,④d社とi社との間の取引の売上高は,本件各事業年度において,最も多額のもので6万2000台湾ドル(2007年(平成19年)。なお,同年のd社全体売上高は,18億9420万7000台湾ドルである。),最も少額のもので500台湾ドル未満(2009年(平成21年)及び2011年(平成23年))であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの6年間の累計で,14万7000台湾ドル(なお,上記の6年間の累計のd社全体売上高は,90億9634万7000台湾ドルである。)であったことの各事実が認められる。
以上の事実を前提とすると,d社とh社及びi社との間の取引の売上高は,いずれも,d社全体売上高との関係では少額であり,かつ,d社全体売上高に占める割合も低いと認められる。
したがって,d社とh社及びi社との間の取引を含めて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定する必要はないと認められる。
(イ) 原告は,①独立企業間価格での取引であるか否かの検証は,年度ごとにされなければならず,6期の加重平均には,理論上の根拠はない上,本件各事業年度を構成する年度によっては,d社全体売上高に占めるd社とi社又はh社との間の取引の売上高の比率が3%を超えている年度もある,②少なくとも,平成21年3月期及び平成22年3月期については,d社とh社との間の取引の価格が独立企業間価格であったか否かにより,原告とd社間での独立企業間の利益配分を計算する基礎となる分割対象利益の額に重大な影響を及ぼすなどとして,原則どおり,d社とh社又はi社との間の取引も,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いる対象となる取引に含めるべきである旨主張する。
しかし,前記(ア)②のとおり,d社とh社との間の取引の売上高は,最大でも,4679万台湾ドル(2010年(平成22年))であり,同年のd社全体売上高は,13億8056万1000台湾ドルであることに照らすと,上記の取引を含むd社とh社及びi社との間の取引の売上高がd社全体売上高に占める割合は小さく,国外関連取引に係る分割対象利益の計算に及ぼす影響も小さいものと認められるところ,本件においては,他に,原告の主張に沿う具体的な事情等は見当たらない(原告も,そのような事情を具体的に指摘していない。)から,本件の証拠関係の下においては,原告が指摘するところをもっても,直ちに,前記(ア)の判断を覆すには足りないというべきである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
ウ 本件f社取引について
(ア)a 証拠(乙17,113,114の1ないし3,145の1・2)によれば,①f社の売上高営業利益率は,最高で26.51%(平成20年12月期),最低で14.58%(平成23年12月期)であり,6期(平成18年12月期から平成23年12月期まで)の加重平均で22.12%であったこと,②f社は,単なる販売子会社ではなく,gセンターを有し,顧客に対する技術サポートも行う機能を有する組織であること,③中国に所在し,主業種がf社と類似するSICコード5000番台及び5100番台の卸売業を営む企業として抽出した97社の中から,事業概況及び企業ウェブサイト等により,(あ)単独株主に発行済株式の50%以上を所有されている企業,(い)過去6事業年度のうち,4期以上財務のデータが入手できない企業,(う)過去6事業年度のうち,2期以上が連続して営業損失である企業又は3期以上営業損失である企業,(え)売上総利益に占める販売管理費の6期の平均がf社の同比率の上下5%から外れる企業,(お)純売上高がf社の6期の平均売上高の10分の1から10倍の範囲を外れる企業,(か)事業内容がf社と大きく異なる企業,(き)取扱製品がf社と大きく異なる企業及び(く)業務内容に技術サービスがない企業をいずれも除外した結果である9社の売上高営業利益率と比較しても,f社の売上高営業利益率は,本件各事業年度の全ての年度において,その最大値と最小値の範囲内に入っていることの各事実が認められる。
そうすると,f社の売上高営業利益率が,業務内容の技術サービスも併せて提供する同業他社の売上高営業利益率と比較して,顕著に高率であるとまではいえず,その比較的高い売上高営業利益率(6期の加重平均で22.12%)は,f社が顧客に対して提供する技術サービスにも起因するものであると推認することができるのであって,本件f社取引の価格が,独立企業間価格からかい離していることが明らかであるとも認められない。
b 証拠(乙112)によれば,①本件各事業年度において,d社全体売上高に占める本件f社取引の売上高の割合が,最大で7.6%(2006年(平成18年)),最小で1.7%(2008年(平成20年))であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの加重平均で4.7%であったこと,②本件f社取引の売上高は,本件各事業年度において,最も多額のもので1億3327万9000台湾ドル(2006年(平成18年)。なお,同年のd社全体売上高は,17億5306万3000台湾ドルである。),最も少額のもので2783万5000台湾ドル(2008年(平成20年)。なお,同年のd社全体売上高は,16億0016万3000台湾ドルである。)であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの6年間の累計で,4億2791万4000台湾ドル(なお,上記の6年間の累計のd社全体売上高は,90億9634万7000台湾ドルである。)であったことの各事実が認められる。
そうすると,本件f社取引の売上高は,最大でも,1億3327万9000台湾ドル(2006年(平成18年))であり,同年のd社全体売上高は,17億5306万3000台湾ドルであることに照らすと,上記の取引を含む本件f社取引の売上高がd社全体売上高に占める割合は比較的小さいものであるということができ,国外関連取引に係る分割対象利益の計算に及ぼす影響も比較的小さいものと認められる。
c 前記a及びbを前提とすると,本件f社取引の価格が,独立企業間価格からかい離していることが明らかであるとはいえず,かつ,本件f社取引が本件国外関連取引に係る分割対象利益の計算に及ぼす影響が比較的小さいものということができるから,本件の証拠関係の下においては,本件f社取引につき,移転価格税制上是正すべき所得移転の蓋然性があるとはいえないと認めるのが相当である。
その上で,いずれも国外に所在する国外関連者間の取引について,独立企業間価格を算定することが困難であることも併せ考慮すれば,本件f社取引を含めて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定する必要はないと認められる。
(イ) 原告は,本件f社取引の価格が独立企業間価格ではなかった場合,d社の営業利益は著しい影響を受け,そのような影響を受けた営業利益をd社と原告との間の利益分割の基礎としたのでは,独立企業間であればされたであろう利益分割の結果を正しく算定することはできないから,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いる対象となる取引に本件f社取引を含めるべきである旨主張する。
しかし,前記(ア)に判示したところに加え,本件において,他に,原告の主張に沿う具体的な事情等が見当たらない(原告も,そのような事情を具体的に指摘していない。)ことも併せ考慮すると,本件の証拠関係の下においては,原告が指摘するところをもっても,直ちに,前記(ア)の判断を覆すには足りない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
エ 本件e社取引について
(ア)a 証拠(乙17,115の2,146の1・2)によれば,①e社の売上高営業利益率は,最高で8.1%(2006年(平成18年)),最低で0.9%(2010年(平成22年))であり,6期(2006年(平成18年)から2011年(平成23年)まで)の加重平均で4.0%であったこと,②e社は,技術サービスを提供する機能を有しない販売子会社であること,③中国,台湾及び香港に所在し,主業種がe社と類似するSICコード5000番台及び5100番台の卸売業を営む企業として抽出した197社の中から,事業概況及び企業ウェブサイト等により,(あ)単独株主に発行済株式の50%以上を所有されている企業,(い)過去6事業年度のうち,4期以上財務のデータが入手できない企業,(う)過去6事業年度のうち,2期以上が連続して営業損失である企業又は3期以上営業損失である企業,(え)事業内容がe社と大きく異なる企業をいずれも除外した結果である23社の売上高営業利益率と比較しても,本件各事業年度の全ての年度について,e社の売上高営業利益率を下回る企業も,これを上回る企業も,複数存在していることの各事実が認められる。
そうすると,e社の売上高営業利益率が,本件各事業年度の全ての年度において,販売子会社としての機能のみを有する同業他社の売上高営業利益率と比較して,高率であるとは認められず,本件e社取引の価格が,独立企業間価格からかい離している蓋然性は低いと認められる。
b 証拠(乙112)によれば,①本件各事業年度において,d社全体売上高に占める本件e社取引の売上高の割合が,最大で15.3%(2007年(平成19年)),最小で1.9%(2011年(平成23年))であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの加重平均で9.7%であったこと,②本件e社取引の売上高は,本件各事業年度において,最も多額のもので2億9001万4000台湾ドル(2007年(平成19年)。なお,同年のd社全体売上高は,18億9420万7000台湾ドルである。),最も少額のもので2543万3000台湾ドル(2011年(平成23年)。なお,同年のd社全体売上高は,13億6588万9000台湾ドルである。)であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの6年間の累計で,8億8199万3000台湾ドル(なお,上記の6年間の累計のd社全体売上高は,90億9634万7000台湾ドルである。)であったことの各事実が認められる。
そうすると,本件e社取引の売上高は,最大でも,2億9001万4000台湾ドル(2007年(平成19年))であり,同年のd社全体売上高は,18億9420万7000台湾ドルであることに照らすと,上記の取引を含む本件e社取引の売上高がd社全体売上高に占める割合がそれほど大きなものとまではいえず,国外関連取引に係る分割対象利益の計算に及ぼす影響もそれほど大きなものとまではいえないと認められる。
c 前記a及びbを前提とすると,本件e社取引の価格が,独立企業間価格からかい離している蓋然性が低く,かつ,本件e社取引が本件国外関連取引に係る分割対象利益の計算に及ぼす影響がそれほど大きなものとまではいえないということができるから,本件の証拠関係の下においては,本件e社取引につき,移転価格税制上是正すべき所得移転の蓋然性があるとはいえないと認めるのが相当である。
その上で,いずれも国外に所在する国外関連者間の取引について,独立企業間価格を算定することが困難であることも併せ考慮すれば,本件e社取引を含めて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定する必要はないと認められる。
(イ) 原告は,①d社全体売上高のうち本件e社取引の売上高が占める割合は,平成18年が14.9%,平成19年が15.3%,平成20年が10.9%,平成21年が6.4%及び平成22年が4.4%であり,いずれも3%を超えるものであった,②2006年(平成18年)のe社の売上高営業利益率が8.1%であるのに対して前記(ア)の比較対象企業の売上高営業利益率の平均値は,4.8%であり,2010年(平成22年)のe社の売上高営業利益率が0.9%であるのに対して前記(ア)の比較対象企業の売上高営業利益率の平均値は,3.6%であって(乙146の2),著しい差異がある,③比較対象企業の売上高営業利益率の最大値と最小値の間にe社の売上高営業利益率があることは,本件e社取引の価格が独立企業間価格であることを示さないなどとして,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いる対象となる取引に本件e社取引を含めるべきである旨主張する。
しかし,ある企業の売上高営業利益率が,年度によって,比較対象企業の売上高営業利益率の平均値を上回ったり下回ったりすることがあるとしても,企業の業績が常に一定なものではなく,常に上下に変動し得るものであること,当該企業の売上高営業利益率の変動が特異な要因によるものである場合も排除されないこと等に照らし,その一事をもって直ちに,当該企業の売上高営業利益率と比較対象企業の売上高営業利益率とがかい離していると評価すべきものとはいえない。そして,前記(ア)に判示したところに加え,本件において,他に,原告の主張に沿う具体的な事情等が見当たらない(原告も,そのような事情を具体的に指摘していない。)ことも併せ考慮すると,本件の証拠関係の下においては,原告が指摘するところは,直ちに前記(ア)の判断を覆すには足りない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
オ d社とb社との間の取引について
(ア) 証拠(乙116)によれば,①本件各事業年度において,d社全体売上高に占めるd社がb社に対してめっき薬品を販売する取引の売上高の割合が,最大で1.5%(2011年(平成23年)),最小で0.1%(2007年(平成19年)及び2010年(平成22年))であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの加重平均で0.4%であったこと,②d社がb社に対してめっき薬品を販売する取引の売上高は,本件各事業年度において,最も多額のもので2102万2000台湾ドル(2011年(平成23年)。なお,同年のd社全体売上高は,13億6588万9000台湾ドルである。),最も少額のもので146万7000台湾ドル(2007年(平成19年)。なお,同年のd社全体売上高は,18億9420万7000台湾ドルである。)であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの6年間の累計で,4061万5000台湾ドル(なお,上記の6年間の累計のd社全体売上高は,90億9634万7000台湾ドルである。)であったこと,③本件各事業年度において,d社の全体の仕入金額に占めるd社がb社からめっき薬品を仕入れる取引の金額(仕入金額)の割合が,最大で14.2%(2006年(平成18年)),最小で0.1%(2008年(平成20年))であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの加重平均で1.9%であったこと,④d社のb社からの仕入金額は,本件各事業年度において,最も多額のもので4444万3000台湾ドル(2006年(平成18年)。なお,同年のd社の全体の仕入金額は,3億1229万4000台湾ドルである。),最も少額のもので43万台湾ドル(2008年(平成20年)。なお,同年のd社の全体の仕入金額は,5億8426万6000台湾ドルである。)であり,2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの6年間の累計で,5361万1000台湾ドル(なお,上記の6年間の累計のd社の全体の仕入金額は,28億1074万1000台湾ドルである。)であったことの各事実が認められる。
以上の事実を前提とすると,d社とb社との間の取引は,いずれも,d社全体売上高又はd社の全体の仕入金額との関係では少額であり,かつ,d社全体売上高又はd社の全体の仕入金額に占める割合も低いものであると認められる。
したがって,d社とb社との間の取引を含めて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定する必要はないと認められる。
(イ) 原告は,b社は,b社のためだけではなく,d社のためにも様々な販売管理活動をしていたが,形式的にはグループ間の役務提供取引に該当するこれらの活動の対価を請求していないため,d社及びb社の各分割対象利益には,d社とb社との間でグループ内の役務提供取引について独立企業間の取引としての対価が請求されていないことに由来する著しいゆがみが生じているから,d社とb社との間の対価が請求されていないグループ内の役務提供取引は,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いる対象となる取引に含められるべきである旨主張する。
しかし,本件においては,原告は,d社とb社との間の対価が請求されていないグループ内の役務提供取引とされる取引について,その役務(販売管理活動とされる活動)の具体的内容,規模,金額的評価等に係る具体的な事実を全く主張しておらず,本件全証拠によってもそれを認めるに足りないから,上記の役務提供取引とされるものが実際に存在していたこと自体に合理的な疑いを差し挟む余地がある。仮に,この点をひとまずおくとしても,証拠(乙64,91)及び弁論の全趣旨によれば,原告の主張するところを前提とする限り,上記の役務提供取引とされるものは,何らかの具体的な取引ではなく,本来d社が負担すべき費用をb社の費用として計上したという会計上の処理がされていることを意味するものと認められるから,営業利益の算定に当たってこれを考慮すれば足りると認められる。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
カ まとめ
以上によれば,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて本件国外関連取引の独立企業間価格を算定するにあたり,本件b社等取引を考慮する必要はなく,本件国外関連取引のみを考慮してその独立企業間価格を算定すれば足りるものと認められる。
(2) 原告の営業利益の算定
残余利益分割法を用いて国外関連取引の独立企業間価格を算定するための前提として,当該国外関連取引に係る分割対象利益を算定する必要があるところ,上記の分割対象利益は,当該国外関連取引に係る棚卸資産の販売等により当該国外関連取引をした法人及び国外関連者に生じた営業利益の合計額であることは,明らかである。
そうすると,本件においては,①原告については,本件国外関連取引による収入金額から原告に生じた売上原価その他の費用に係る金額を控除した後のものを,②本件国外関連者については,本件ライセンス製品外部売上高から本件国外関連者に生じた売上原価その他の費用に係る金額を控除した後のものを,それぞれ算定する必要があることになる。
そこで,原告の営業利益及び本件国外関連者の営業利益の各算定について,以下順に検討を加える。
ア 原告の営業利益の算定総論
(ア) 原告の営業利益は,原告の本件国外関連取引による収入金額から,売上原価の額,販売管理費の額その他の費用の額を控除して算定するところ,本件においては,上記の費用のうち,本件国外関連取引に共通するものとして,①研究開発費,②法務部費用及び③海外展開プロジェクト費用が,本件棚卸資産販売取引についてのみ問題になるものとして,④国際営業部費用及び⑤売上原価の額が,それぞれ問題とされ,それ以外の費用については,当事者がその存在及び具体的な金額を主張立証しないから,本件の証拠関係の下においては,上記の5つの費用に係る算定の適否を検討すれば足りるものと認められる。そして,上記⑤の存在及び算定方法については,当事者の間に争いがないから,以下においては,上記①から④までについて,順に検討することとする。
(イ) 原告は,本件各事業年度において,本件ライセンス取引に対応する費用は何も発生しないのであって,本件ライセンス取引に対応する原告の営業利益は,本件各事業年度に原告が収受したロイヤルティ収入の額そのものとすべきである旨主張する。
しかし,本件ライセンス取引の対象である無形資産(本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等)は,原告がした研究開発の結果形成されたものであり,何らの費用も生ずることなく形成されたものとは認め難い。また,上記の無形資産の形成及び維持に当たり,本件各事業年度において何らの費用も生じていないともおよそ認め難い(原告も,それを基礎付ける事情を具体的に主張立証しない。)上,ライセンサーである原告が上記の費用の全額を負担すべきものであるとしても,そのことをもって直ちに,本件ライセンス取引に対応する原告の営業利益の算定に当たって当該費用を収入金額から控除することが許されないことが基礎付けられるわけではない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
イ 原告の本件国外関連取引による収入金額から控除すべき費用その1―研究開発費について
(ア)a 前提事実及び証拠(乙86ないし88)によれば,①原告は,本件各事業年度において,本件国外関連取引以外にも,めっき薬品に係る取引をしていること,②原告は,本件各事業年度において,k社及びl社に対しても,めっき薬品の製造等のノウハウの使用許諾をしており,k社及びl社は,いずれも,当該ノウハウを使用して製造されためっき薬品を販売したこと,③原告は,その中央研究所において,表面処理用資材事業及び表面処理用機械事業の各事業について,研究開発をしていること,④中央研究所においてめっきプロセスの開発等を担当するのは,第1開発部及び第2開発部であること,⑤原告が本件各事業年度において支出した研究開発費は,おおむね9ないし10億円程度で一定していることの各事実が認められる。
b 本件国外関連取引が,原告の研究開発活動の成果であるめっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引(本件ライセンス取引)及び当該ノウハウ等を使用して本件ライセンス製品を製造する際に使用される原料等(BB品)の販売取引(本件棚卸資産販売取引)から構成されていることによれば,研究開発費は,本件国外関連取引に係る原告の営業利益を算定するに当たって控除されるべき費用に該当すると認められる。そして,前記aによれば,原告がする研究開発活動に係る費用が,原告グループのみならず,原告がその有するノウハウの使用許諾をしたk社及びl社のめっき薬品の売上高との関係でも,その営業利益を算定するに当たって控除されるべき費用に該当すると認められることも踏まえると,本件国外関連取引による収入金額から控除すべき研究開発費用は,本件各事業年度中に原告の中央研究所において生じた総費用(研究開発費及び共通管理費)の額に,中央研究所の総人員数に占める第1開発部及び第2開発部に所属する人員数の割合を乗じ,これに更に,本件連結売上高に占める本件ライセンス製品外部売上高の割合を乗じて計算した金額とするのが相当である。
(イ) 前記(ア)の認定及び判断に対する原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。
a 原告は,めっき薬品は,未来永劫同じ機能を発するものとして存続し,その価値が陳腐化により減ずることはないという特色があり,研究開発費に乗ずる配賦率(=本件国外関連者が当該年度に製造及び販売した数量÷当該製品が開発時以後将来にわたって販売される販売予想総数量)が限りなく零に近い数値となることから,各年度の受取ロイヤルティに対応する費用である研究開発費を零円とみなすことには合理性がある旨主張する。
しかし,表面処理技術は,日々進歩発展を遂げており,原告も,中央研究所において,多額の費用を投じて表面処理加工に係る新製品又は新技術の開発に日々取り組んでいることは,当事者の間に争いがない上,あるめっき薬品の機能が常に同じであることと,それをどのように金銭的に評価するかということは異なる問題であることも併せ考慮すると,あるめっき薬品が有する金銭的な価値がおよそ陳腐化によって減ずることがないとは到底認め難いのであって,原告の主張は,その前提を異にするものである。
b 原告は,①本件国外関連者に対して過去に開発されためっき薬品の製造等のノウハウ等の使用を許諾しているのであり,ロイヤルティを収受した年度の研究開発費は,本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等に係る研究開発活動のために支出されたものではなく,将来に製造を開始する新製品を開発するためのものであるし,製品の開発期間と販売期間とは異なるため,ある1年間に支出された研究開発費は当該1年間のロイヤルティ収入に対応する費用ではない,②開発が成功するかどうか不明であり,かつ,開発に成功したとしても当該めっき薬品の製造等のノウハウ等が開示されるかどうかも不明なめっき薬品の研究開発費について,別のめっき薬品の製造等のノウハウ等の使用許諾取引をしているライセンシーが負担することは,独立当事者間の取引ではあり得ない,③研究開発費は,当期の収益の発生に期間的に貢献しているものではなく,当期の収益に貢献しないことはもちろん,将来の収益に貢献するかどうかも不確かであるから,一度資産に計上した後に当該研究開発費を将来の収益に対応させて損益計算をすることを認めないものとされている上,分割対象利益を構成する営業利益は,企業会計上の営業利益そのものではなく,独立企業間であれば当事者の一方に帰属するのではなく双方で分け合う性質のものでなければならないなどとして,原告の営業利益を算定するに当たり,本件各事業年度のロイヤルティ収入から本件各事業年度に支出された研究開発費を控除することには合理性はない旨主張する。
しかし,前記(ア)aの各事実に加え,①法人のある事業年度の営業利益の額は,当該法人の当該事業年度の売上高から,売上原価の額並びに当該法人の当該事業年度の販売費及び一般管理費の各金額を控除した後のものであるとされていること(企業会計原則第二の三参照),②研究開発費は,一般管理費に該当し(法人税法22条3項2号参照),企業会計上,いわゆる期間対応により,発生した事業年度において計上されるべきものであること(乙84も参照)の各事実も前提とすると,本件各事業年度に生じた研究開発費を当該事業年度の収益に期間的に対応する費用として取り扱うこと及び営業利益を算定する際に控除すべき費用として取り扱うことには,いずれも合理性があるものと認められる。また,分割対象利益を構成する営業利益は,独立企業間であれば当事者の一方に帰属するのではなく双方で分け合う性質のものでなければならないとの解釈を採用すべき合理的な根拠はない。
c 原告は,BB品は,単に複数の原料を配合しただけのもので,その配合のために研究開発がされている事実はないから,本件棚卸資産販売取引における原告の営業利益の算定に当たって,研究開発費を控除することは誤りである旨主張する。
しかし,証拠(乙57,60)によれば,①BB品は,情報漏えいの防止を図るとともに,経済的な価値も考慮した上で,原料の一部のうち付加価値の高いものを指定していること,②BB品には,本来的に必要な原料に加え,ごく少量,かつ,性能に影響が出ない物質を加えるものもあることの各事実が認められる上,BB品自体,原告の研究開発活動の成果であるめっき薬品(本件ライセンス製品)の製造等のノウハウの一部であることも併せ考慮すれば,BB品も,原告による研究開発活動の成果の一部を成すものと認められるから,本件棚卸資産販売取引における原告の営業利益の算定に当たって研究開発費を控除することは合理的であると認められる。
ウ 原告の本件国外関連取引による収入金額から控除すべき費用その2―法務部費用について
(ア)a 前提事実,証拠(乙89)及び弁論の全趣旨によれば,①原告グループは,本件各事業年度において,本件国外関連取引以外にも,めっき薬品に係る取引をしていること,②法務部費用は,弁護士,弁理士等に対して支払う報酬等が計上される費目である法務部諸手数料と,一般的な法務,契約業務に関する人件費等の費用が計上される費目である法務部その他費用に区分されていること,③原告の法務部は,(あ)契約に関する受付,審査及び保管に関する事項,(い)工業所有権の出願,調査及び管理に関する事項,(う)技術関連諸契約の維持管理に関する事項並びに(え)その他法務に関する事項を担当していること,④原告は,平成25年5月1日,本件調査担当者に対し,法務部諸手数料は,無形資産の使用許諾取引から生じた利益との関連性が高い一方,法務部その他費用には,一般的な法務又は契約業務に関する人件費のように無形資産の使用許諾取引から発生した利益との関連性が低い費用も含まれているとして,法務部諸手数料に計上された金額の全額と法務部その他費用に計上された額の2分の1を合計したものを本件国外関連取引の分割対象利益の計算上控除すべき法務部費用の基礎とすべき旨の意見を述べたことの各事実が認められる。
b 前記aによれば,法務部費用は,本件国外関連取引に係る原告の営業利益を算定するに当たって控除されるべき費用に該当するものと認められる。そして,本件国外関連取引による収入金額から控除すべき法務部費用は,法務部諸手数料に計上された金額の全額と法務部その他費用に計上された額の2分の1を合計したものに,本件連結売上高に占める本件ライセンス製品外部売上高の割合を乗じて計算したものとするのが相当である。
(イ) 原告は,①本件ライセンス取引に対応して発生する法務部費用は存在しない,②使用許諾取引の対象製品の製造等のノウハウ等の権利の維持のための費用は,一般にライセンサー自らの責務であり,ライセンサーが費用を負担すべきものとされるのであって,ライセンサーとライセンシーとの間で分担がされるべき性質の費用ではないとして,原告の営業利益から法務部費用を控除するのは誤りである旨主張する。
しかし,前記(ア)のとおり,法務部費用は,本件ライセンス契約の締結,維持等に必要な費用であり,本件ライセンス取引に対応する費用であるといえる。また,分割対象利益を構成する営業利益を算定する際に営業利益から控除されるべき費用が,独立企業間であれば当事者の双方で分け合う性質のものでなければならないとの解釈を採用することができないのは,前記イ(イ)bと同様である。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
エ 原告の本件国外関連取引による収入金額から控除すべき費用その3―海外展開プロジェクト費用について
(ア)a 前提事実,証拠(乙65)及び弁論の全趣旨によれば,①原告グループは,本件各事業年度において,本件国外関連取引以外にも,めっき薬品に係る取引をしていること,②海外展開プロジェクトは,(あ)プリント配線板及び半導体パッケージ技術,(い)ウェハ関連技術,(う)汎用技術並びに(え)ハードディスク関連技術について,原告グループ全体の技術情報の共有化及び海外に進出する顧客への迅速な技術支援を目的とする営業本部直轄のプロジェクトであり,海外展開プロジェクト費用の多くは,旅費等の交通費であって,外国に所在する原告の国外関連者及びその主要顧客先を訪問するための費用を含むこと,③原告は,平成25年4月18日,本件調査担当者に対し,海外展開プロジェクトは,本件国外関連取引に関連のある業務であり,海外展開プロジェクト費用の総額に原告グループの海外売上高に占める本件ライセンス製品外部売上高の割合を乗じたものを本件国外関連取引による収入金額から控除すべき海外展開プロジェクト費用とすべきである旨の意見を述べたことの各事実が認められる。
b 前記aによれば,海外展開プロジェクト費用は,本件国外関連取引に係る原告の営業利益を算定するに当たって控除されるべき費用に該当するものと認められる。そして,本件国外関連取引による収入金額から控除すべき海外展開プロジェクト費用は,その総額に,原告グループの海外売上高に占める本件ライセンス製品外部売上高の割合を乗じて計算したものとするのが相当である。
(イ) 原告は,ライセンス対象製品の権利の維持のための費用は,一般にライセンサー自らの責務であり,ライセンサーが費用を負担すべきものとされるのであって,ライセンサーとライセンシーとの間で分担がされるべき性質の費用ではないとして,原告の営業利益から海外展開プロジェクト費用を控除するのは誤りである旨主張するが,原告の主張を採用することができないのは,前記ウ(イ)と同様である。
オ 原告の本件棚卸資産販売取引による収入金額から控除すべき費用―国際営業部費用について
前提事実,証拠(乙65,90)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,めっき薬品及び表面処理用機械の製造及び販売の事業を営んでいること,②原告の営業本部の下に国際営業部と称する組織が置かれていること,③国際営業部においては,本件棚卸資産販売取引と関連がある業務が行われていることの各事実が認められる。
そうすると,国際営業部費用は,本件棚卸資産販売取引に係る原告の営業利益を算定するに当たって控除されるべき費用に該当するものと認められる。そして,本件棚卸資産販売取引による収入金額から控除すべき国際営業部費用の額は,国際営業部費用の総額のうち国際営業部のめっき薬品の売上高に対応する部分を算出した上で,当該めっき薬品の売上高に占める本件棚卸資産販売取引の売上高の割合を乗じて計算したものとするのが相当である。
カ まとめ
以上を前提とすると,別表4の順号1ないし17欄にそれぞれ記載されているとおり,本件各事業年度における原告の営業利益を計算すべきものと認められる。
(3) 本件国外関連者の営業利益の算定
ア 本件国外関連者の営業利益の算定総論
本件国外関連者の営業利益は,本件ライセンス製品外部売上高から,本件国外関連者それぞれの売上原価の額及び販売管理費の額を控除し,平成21年3月期から平成24年3月期までについては,更に,b社のめっき加工サービスに係る営業損失に相当する額を控除して算出すべきものと認められる(算出する過程については,当事者の間に争いがあるため,順次検討する。)。
そこで,以下においては,まず,d社について控除すべき費用として,①L&R費用を除く販売管理費,②L&R費用及び③減価償却費の有無及び内容を検討し,次に,b社について控除すべき費用として,④L&R費用を除く販売管理費及び⑤めっき加工サービスに係る営業損失の有無及び内容を検討し,最後に,原告の主張に対する判断をまとめて加えるものとする。なお,本件国外関連者それぞれの売上原価の額を本件国外関連者の営業利益の算定に当たって控除すべきこと及びその金額については,当事者の間に争いがない。
イ d社について控除すべき費用
(ア) 販売管理費のうちL&R費用を除く部分については,証拠(乙85)及び弁論の全趣旨によれば,d社の決算書に計上されている販売管理費の額【〈A〉】のうちL&R費用の額【〈B〉】を控除した後のものに,d社全体売上高【〈C〉】に占めるd社本件ライセンス製品売上高【〈D〉】の割合を乗じた後のもの(=(〈A〉-〈B〉)×〈D〉/〈C〉)と算定するのが相当である。
(イ) 販売管理費のうちのL&R費用(ただし,減価償却費を除く。)については,証拠(乙85)及び弁論の全趣旨によれば,(あ)d社の決算書に計上されている販売管理費の額のうちのL&R費用の額【〈A〉】に,d社めっき製品売上高【〈B〉】に占めるd社本件ライセンス製品売上高【〈C〉】の割合を乗じた後のもの(=〈A〉×〈C〉/〈B〉)と,(い)b社の決算書に計上されている販売管理費の額のうちのL&R費用の額からd社に係る減価償却費の額(後記(ウ)参照)を控除したものには,c研究所のうち研発部の業務に従事する者が当該業務について支出した費用の額及びb社の研発部の技術要員が顧客に提供する営業技術支援に関連して支出されたものが含まれており,当該費用の額のうちの本件ライセンス取引に対応する部分は,本来,d社が負担すべき費用であると認められるから,b社の決算書に計上されている販売管理費の額のうちのL&R費用の額【〈D〉】からd社に係る減価償却費の額【〈E〉】を控除したものに,c研究所の総人員数【〈F〉】とb社の研発部の人員数【〈G〉】を合計したものに占める,c研究所のうちの研発部の業務に従事する人員数【〈H〉】とb社の研発部の人員数【〈I〉】とを合計したものの割合を乗じて求められたものに,さらに本件国外関連者めっき製品売上高【〈J〉】に占める本件ライセンス製品外部売上高【〈K〉】の割合を乗じた後のもの(=(〈D〉-〈E〉)×{(〈H〉+〈I〉)/(〈F〉+〈G〉)}×(〈K〉/〈J〉))とを合計した金額(=(あ)+(い))であると算定するのが相当である。
(ウ) 販売管理費のうちのL&R費用に含まれる減価償却費については,b社の決算書において固定資産の減価償却費が計上されているところ,証拠(乙64)及び弁論の全趣旨によれば,当該固定資産は,実際には,本件国外関連者の研発部及びc研究所が共通して利用し,本件国外関連取引にもその他の取引にも関連して利用されていたことから,上記の減価償却費も両者に関連するものと認められ,かつ,本件国外関連取引との関係では,d社が負担すべき費用であると認められるところ,証拠(乙85)及び弁論の全趣旨によれば,b社の決算書に計上された減価償却費の額【〈A〉】に,c研究所の総人員数【〈B〉】,b社の研発部の人員数【〈C〉】及びd社の研発部の人員数【〈D〉】を合計したものに占める,c研究所のうちの研発部の業務に従事する者の数【〈E〉】とd社の研発部の人員数【〈F〉】を合計した後のものの割合を乗じたものに,d社めっき製品売上高【〈G〉】に占めるd社本件ライセンス製品売上高【〈H〉】の割合を乗じた後の金額(=〈A〉×{(〈E〉+〈F〉)/(〈B〉+〈C〉+〈D〉)}×〈H〉/〈G〉)であると算定するのが相当である。
ウ b社について控除すべき費用
(ア) 販売管理費のうちL&R費用を除くものについては,証拠(乙85)及び弁論の全趣旨によれば,b社の決算書に計上された販売管理費の額【〈A〉】からL&R費用の額【〈B〉】を除いたものに,b社全体売上高【〈C〉】に占めるb社本件ライセンス製品売上高【〈D〉】の割合を乗じた後の金額(=(〈A〉-〈B〉)×〈D〉/〈C〉)であると算定するのが相当である。
(イ) 証拠(乙64,66)及び弁論の全趣旨によれば,b社のめっき加工工場は,本件国外関連者の顧客の認定取得支援,トラブルシューティング等の営業技術による販売支援に係る業務をしており,当該業務に係る損益には,本件国外関連取引に係るものも含まれていることが認められるから,当該損益の一部は,本件国外関連者の営業利益の算定に当たって反映させるのが相当である。そして,上記の損益の額は,証拠(乙85)及び弁論の全趣旨によれば,b社のめっき加工サービスに係る売上高【〈A〉】からb社の当該サービスに係る売上原価の額【〈B〉】及び販売管理費の額【〈C〉】をいずれも控除したものに,本件国外関連者めっき製品売上高【〈D〉】に占める本件ライセンス製品外部売上高【〈E〉】の割合を乗じた後の金額(=(〈A〉-〈B〉-〈C〉)×〈E〉/〈D〉)であると算定するのが相当である。
エ 原告の主張に対する判断
前記イ及びウの認定及び判断に対する原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。
(ア) 原告は,本件国外関連者の営業利益の算定に当たって控除すべき販売管理費を算定する際,販売管理費の発生と直接の対応関係のない売上高を基準としてあん分計算することは妥当ではなく,販売管理費の発生と対応関係のある売上総利益を基準とすべきである旨主張する。
しかし,一般的に見て,売上高の多寡と販売管理費の多寡との間には,相応の相関関係があると認められるから,売上高を基準として販売管理費のあん分計算をすること自体には,それが合理的なものとはいえない具体的な事情が見当たらない限り,相応の合理性を有するものであると認められる。他方,原告の主張するところは,営業利益が売上総利益から販売管理費を控除することによって計算されるという限度で,売上総利益と販売管理費との間に関連性があることを意味するにすぎないから,売上総利益を基準として販売管理費の額をあん分計算すべきことを基礎付ける合理的な理由となるものとは認め難い。その上で,売上総利益を基準に販売管理費をあん分する方法によると,①複数の事業セグメントのうち売上総利益が赤字のものと黒字のものがある場合には,販売管理費の全額が売上総利益が黒字の事業セグメントに配賦されることとなること,②複数の事業セグメントに係る売上高の額の多寡と売上総利益の額の多寡との間の相関関係がない場合には,売上高が少ないのに多額の販売管理費が配賦される事態が生じ得ること等の実態とはかけ離れたあん分計算をすることとなる事態が生じ得るのであり,その意味においても,適切な方法であるとは認め難い。以上のもののほか,本件において,売上高を基準として販売管理費のあん分計算をすることが合理性を欠く結果となることをうかがわせる具体的な事情等も見当たらない。
(イ) 原告は,本件国外関連者の事業活動の実態からすると,b社とd社を一体としてその合計の販売管理費の中から本件ライセンス製品の製造及び販売の事業活動に対応する費用を抽出する切り出し計算をしなければ,本件国外関連者の分割対象利益を適正に算出することはできないとして,被告が主張する本件国外関連者の営業利益の計算には誤りがある旨主張する。
しかし,d社とb社は,別個の法人格を有する企業であり,原告が主張するような事業の一体性も前提とした上で,それぞれ別の財務諸表を作成し,それぞれの企業ごとに,会計上の処理をしているものであるから(乙158及び159の各1・2),合理的な理由もなく,両社を一体のものとして取り扱って営業利益の計算をすることはできないものと解すべきところ,原告の主張は,当該会計上の処理を一切考慮することなく本件国外関連者の営業利益の計算をする取扱いをすることが合理的である理由になるとは認め難いものであり,他に,原告の主張に沿う事情等も見当たらない。
(ウ) 原告は,b社による顧客のニーズに即した製品の開発とd社による本件ライセンス製品の売上げは不可分一体の関係にあり,両者が相まって収益が獲得されているから,c研究所の製品開発活動は,d社の収益獲得と密接な関連があり,d社の売上げに対応する費用からc研究所の製品開発活動の費用を除外するのは誤りである旨主張する。
しかし,証拠(乙56,57)及び弁論の全趣旨によれば,c研究所においては,台湾における独自の研究テーマに基づく研究がされるとともに,それに基づく製品の開発もされており,c研究所において新規に開発された製品も,全て当該独自の研究テーマに基づくものであって,本件ライセンス製品又はこれに関連する研究に基づくものではないことが認められるから,c研究所の製品開発活動に要した費用を本件ライセンス製品の販売に係る費用として取り扱うべきものとは認め難い。また,仮に,上記の製品開発活動の成果が,本件ライセンス製品の売上げに影響を及ぼしていることを前提としたとしても,当該成果は,上記のとおり,本件ライセンス製品そのものが有する利益又は価値に対して及ぶ性質のものではなく,かつ,本件において,当該成果によりどれだけの本件ライセンス製品の売上げの向上につながったのかという具体的な数額を認めるに足りる証拠が見当たらないことにも照らすと,本件ライセンス製品の売上げの向上に何らかの寄与をしている面があるという間接的な影響を及ぼすにとどまると評価すべきものと認められる。そして,本件においては,前記イ(イ)のとおり,c研究所の活動の一部である本件国外関連者の研発部の業務に係る部分に要した費用については,本件ライセンス製品の販売に係る費用として取り扱っており,既に,本件ライセンス製品の売上げに対するc研究所の活動の影響を織り込んで評価しているということができる。
したがって,前記イ(イ)において評価したところを超えて,c研究所の製品開発活動に要した費用を本件ライセンス製品の販売に係る費用として取り扱うことが合理的であるとは認め難い。
オ まとめ
以上を前提とすると,別表4の付表5にそれぞれ記載されているとおり,本件国外関連者の本件各事業年度における営業利益を計算すべきもの(なお,同別表の付表1ないし4も参照)と認められる。
(4) 原告の基本的利益の算定
残余利益分割法を用いて国外関連取引の独立企業間価格を算定するための前提として,当該国外関連取引に係る分割対象利益を算定した後,当該分割対象利益のうち重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益に相当する金額(基本的利益)を算定する必要があるところ,上記の基本的利益は,上記の定義からも明らかなように,残余利益分割法を用いる対象となる国外関連取引そのものから当然に算出することができるものではなく,当該国外関連取引の各当事者について,それぞれ比較対象とすることが可能な類似の法人を選定した上で,当該比較対象である法人における利益指標を算出し,当該利益指標に基づいて残余利益分割法を用いる対象となる国外関連取引の各当事者におけるそれぞれの基本的利益を算出するという過程を経て算出することができるものと解するのが相当である。
そうすると,本件においては,本件国外関連取引における基本的利益については,原告及び本件国外関連者とそれぞれ類似した比較対象法人を別個に選定した上で当該比較対象法人における利益指標を算出し,当該利益指標に基づいて原告及び本件国外関連者の各基本的利益をそれぞれ算定する必要があることになる。
そこで,原告及び本件国外関連者の各基本的利益の算定について,以下,それぞれ順に検討を加える。原告の基本的利益については,まず,本件国外関連取引を構成する本件ライセンス取引と本件棚卸資産販売取引とに分けて検討することとし,さらに,本件棚卸資産販売取引については,a税務署長が採用した方法及び内容が適正であるかについて順に検討し,最後に,原告の主張に対する判断を加えることとする。
ア 本件ライセンス取引における原告の基本的利益
本件ライセンス取引は,原告が有する重要な無形資産の使用許諾取引であり,その性質上,重要な無形資産が関係しない取引を想定すること自体も,また,これと類似した重要な無形資産を有しない非関連者間取引を観念することも不可能であるから,本件ライセンス取引における原告の基本的利益は,存在しないものと認めるのが相当である。
イ 本件棚卸資産販売取引における原告の基本的利益の算定において採用すべき利益指標
本件棚卸資産販売取引は,原告を売手とし,本件国外関連者を買手とする取引であり,売手である原告の基本的利益を算定するために用いる利益指標を求める必要があるところ,本件においては,当事者の果たす機能その他の差異が指標に与える影響等が小さく,比較可能性を確保しやすい点等を考慮すれば,上記の利益指標としては,営業利益率を用いるのが相当であると認められる。
そして,利益指標としての営業利益率を求めるについては,上記のとおり,売手である原告の基本的利益を算定する以上,原告が売手である取引(原告の売上げに該当する取引であり,原告の収入金額に計上されるべきもの。本件棚卸資産販売取引もこれに該当する。)を含めて営業利益率を求めることは,検証する対象自体を指標の算出に含むこととなって不適切であるから,売上高に占める営業利益の割合である売上高営業利益率ではなく,総費用に対する営業利益の割合である総費用営業利益率を用いるのが適切であると認められ,複数の企業と比較することを前提とすると,総費用営業利益率の単純平均値を利益指標として採用することが合理的であると認められる。
ウ 本件棚卸資産販売取引における日本側比較対象企業の選定
まず,a税務署長が,いかなる方法によって日本側比較対象企業を選定したのかという事実を認定し,その上で,当該選定の内容が適正なものであるか否かについて,検討を加える。
(ア) 日本側比較対象企業の選定過程及びその結果は,次のとおりであり,当該事実関係については,当事者の間に争いはない。
a 原告は,OSIRISを用いて,日本に所在し,主業種が原告と類似するSICコード2800番台の化学工業である企業として抽出した227社の中から,事業概況及び企業ウェブサイト等により,①単独株主に発行済株式の50%以上を所有されている企業,②直近3期分の財務のデータを入手することができない企業,③直近3事業年度のうち2期以上連続して営業損失が生じている企業,④売上高に占める研究開発費の割合が3期の加重平均で3%を超過する企業,⑤売上高に占める販売管理費の割合が3期の加重平均で15%を超過する企業,⑥事業内容が原告と大きく異なる企業を全て除外した結果として19社を選定し,平成24年8月頃,本件調査担当者に提示した。
b a税務署長は,OSIRISを用いて,日本に所在し,主業種が原告と類似するSICコード2800番台の化学工業である企業として抽出した225社の中から,事業概況及び企業ウェブサイト等により,①単独株主に発行済株式の50%以上を所有されている企業,②過去6事業年度のうち3期以上財務のデータを入手することができない企業,③過去6事業年度のうち2期以上連続して営業損失が生じている企業又は3期以上営業損失が生じている企業,④売上高に占める研究開発費の割合が3%を超過する企業,⑤売上高に占める販売管理費の割合が15%を超過する企業,⑥事業内容が原告と大きく異なる企業及び⑦製品の用途が半導体関連業ではない企業を全て除外した結果として,原告が,本件調査担当者に対して提示した前記aの19社からさらに7社を除外した12社(m1株式会社,m2株式会社,m3株式会社,m4株式会社,m5株式会社,m6株式会社,m7株式会社,m8株式会社,m9株式会社,m10株式会社,m11株式会社及びm12株式会社)を選定した。
a税務署長は,前記aのとおり,原告が,本件調査担当者に対して提示した19社のうち,m13株式会社及びm14株式会社は,肥料等エレクトロニクス製品とは関連性のない製品を取り扱っており,m15株式会社,m16株式会社,m17株式会社,株式会社m18及びm19株式会社については,売上高に占める研究開発費の割合が3%を超過することから,これら7社を除外し,上記のとおり,選定したものである。
本件調査担当者は,平成25年3月頃,原告に対し,上記の結果を提示した。
c 原告は,平成25年4月4日,本件調査担当者に対し,前記bにおいて本件調査担当者が提示した結果に対し,金額的にそれほど影響はない,納税者有利に判断してもらったなどとして,更に意見はない旨を伝えた。
(イ) 前記(ア)によれば,a税務署長は,日本側比較対象企業を,①化学工業を主たる業種とする企業から選定しており,原告と比較的類似した事業を営む企業の中から選定していること,②他社に支配されず,複数年の財務データを入手することができ,適正かつ安定的に通常の利益率を確保する企業の中から選定していること,③研究開発費を多く支出している企業を除外することで,重要な無形資産が売上高により強く反映している可能性が高い企業を除外して選定していること,④事業内容又は製品の用途が原告と大きく異なることが判明した企業を除外して選定していることの各事実が認められる上,原告は,少なくとも,調査の段階においては,これに納得していたことも併せ考慮すれば,a税務署長がした日本側比較対象企業の選定は,適切なものであったと認められる。
エ 原告の主張に対する判断
前記イ及びウに対する原告の主張は,次のとおり,いずれも,採用することができない。
(ア) 原告は,移転価格ガイドライン(2017年(平成29年)に改訂される前のもの)1.55,同2.68,同2.69及び同2.71において,厳格な比較可能性の確保が要求されている旨主張する。
しかし,これは,取引単位営業利益法を用いるに当たり非関連者間の比較対象取引を特定する場面について移転価格ガイドライン(2017年(平成29年)に改訂される前のもの)が指摘するところと,残余利益分割法を用いる場合における基本的利益の算定に当たって求めるべき営業利益率の算出の過程とが同様でなければならない旨の見解を前提とするものであり,その前提を異にするものというべきである。
(イ) 原告は,日本側比較対象企業は,いずれも,原告と棚卸資産の同種性又は類似性がなく,かつ,原告のユニークな機能であると被告が主張する研究開発活動の機能と同等の機能を有しているから,比較可能性があるとはいえない旨主張する。
しかし,利益指標としての営業利益率を算出する前提としての棚卸資産の類似性は,独立価格比準法における比較対象取引の同種性等とは異なり,その性質上,厳密なものまでは要求されず,比較的緩やかなもので足りると解するのが相当である(前記イも参照)。
本件においては,①日本側比較対象企業が全部で12社という相応の規模の母数であること,②日本側比較対象企業は,いずれも,化学品及びその関連品の製造業を営む企業であり,原告が取り扱う表面処理剤の製造も化学品及びその関連品の製造業の中に含まれていること,③最終的に,営業利益率の平均値をもって利益指標としての営業利益率とされることにより,個々の企業の差異が相当程度捨象されると認められることに照らすと,原告と日本側比較対象企業との間に,原告が主張するような棚卸資産の違いがあることを前提としたとしても,総費用営業利益率を算出する前提としての棚卸資産の類似性は,満たしているものと認められるというべきである。
また,原告の比較対象企業となり得るような化学品及びその関連品の製造業を営むいわゆる上場企業のうち,何らの研究開発をしていないものは,極めて少数にとどまると合理的に推測され,そのような企業のみを比較対象企業として総費用営業利益率を算出した場合には,指標としての合理性を有さない特異な値が算出される蓋然性が高まるというべきである上,前記ウ(ア)のとおり,a税務署長は,売上高に占める研究開発費の割合が3%を超過する企業を全て除外して日本側比較対象企業を選定しており,重要な無形資産がその売上高に相当程度の貢献をしているとうかがわれる企業が除外されていると推認することができ,かつ,それらの企業の総費用営業利益率の平均値を採用することにより,個々の企業における差異も相当程度捨象されると推認することができることにも照らすと,原告が主張するところをもっても,a税務署長がした日本側比較対象企業の選定が,研究開発活動との関係で比較可能性を有する程度に合理性があるとの認定を覆すには足りないというべきである。
(ウ) 原告は,BB品は,めっき薬品の製造等のノウハウである原料の配合比を不明とすることだけを目的として,単に複数のめっき薬品の原料を混ぜ合わせているだけのものであり,BB品の開発自体には研究開発活動は不要であって,新たな価値が生み出されるわけでもないし,めっき薬品の価値は,BB品を用いる場合もBB品を用いない場合も全く同じであるところ,日本側比較対象企業は,重要な研究開発活動をしており,その結果生み出される無形資産が高い収益を実現している可能性があって,原告のBB品の開発とは明らかに研究開発活動の機能のレベルが異なるのであり,本件棚卸資産販売取引の基本的利益を算定する比較対象取引としては不適切である旨主張する。
しかし,BB品は,めっき薬品の原料の配合比というめっき薬品の製造のノウハウそのものが反映された製品であるから,仮に,BB品それ自体の開発に何らの研究開発活動を要しなかったとしても,その基となるめっき薬品については,相応の研究開発活動を要することが明らかであり,原告の主張は,その前提を異にするものというべきである。その上で,前記(ア)及び(イ)に判示したところも併せ考慮すれば,原告が上記に主張するところによっても,a税務署長がした日本側比較対象企業の選定が,研究開発活動との関係で比較可能性を有する程度に合理性があるとの認定を覆すには足りないというべきである。
オ まとめ
以上に判示したもののほか,原告の基本的利益の算定について,それが合理性を欠くものであることをうかがわせる事情等は見当たらない。
したがって,本件においては,原告の基本的利益の算定に当たって算出すべき総費用営業利益率は,別表4付表6の順号13に記載されているとおりであると認められ(その算出過程については,同付表の順号1ないし12も参照),それを踏まえた原告の基本的利益の額は,別表4の順号24に記載されているとおりであると認められる(なお,その算出過程については,同別表順号20ないし23も参照)。
(5) 本件国外関連者の基本的利益の算定
本件国外関連者の基本的利益については,まず,採用すべき利益指標を検討し,その上で,a税務署長が採用した方法及び内容が適正であるかについて検討し,最後に,原告の主張に対する判断を加えることとする。
ア 本件国外関連取引における本件国外関連者の基本的利益の算定において採用すべき利益指標
本件国外関連取引は,原告を売手とし,本件国外関連者を買手とする取引であり,買手である本件国外関連者の基本的利益を算定するために用いる利益指標を求める必要があるところ,本件においては,当事者の果たす機能その他の差異が指標に与える影響等が小さく,比較可能性を確保しやすい点等を考慮すれば,原告の基本的利益の算定におけるのと同様,上記の利益指標として,営業利益率を用いるのが相当であると認められる。
そして,利益指標としての営業利益率を求めるについては,上記のとおり,買手である本件国外関連者の基本的利益を算定する以上,本件国外関連者が買手である取引(本件国外関連者の仕入れに該当する取引であり,本件国外関連者の費用に計上されるべきもの。本件国外関連取引もこれに該当する。)を含めて営業利益率を求めることは,検証する対象自体を指標の算出に含むこととなって不適切であるから,総費用に占める営業利益の割合である総費用営業利益率ではなく,売上高に占める営業利益の割合である売上高営業利益率を用いるのが適切であると認められ,複数の企業と比較することを前提とすると,売上高営業利益率の単純平均値を利益指標として採用することが合理的であると認められる。
イ 本件国外関連取引における台湾側比較対象企業の選定
まず,a税務署長が,いかなる方法によって台湾側比較対象企業を選定したのかという事実を認定し,その上で,当該選定の内容が適正なものであるか否かについて,検討を加える。
(ア) 台湾側比較対象企業の選定過程及びその結果は,次のとおりであり,当該事実関係については,当事者の間に争いはない。
a 本件調査担当者は,平成24年11月28日,原告に対し,OSIRISを用いて,台湾に所在し,主業種が原告と類似するSICコード2800番台の化学工業である企業として抽出した101社の中から,事業概況及び企業ウェブサイト等により,①単独株主に発行済株式の50%以上を所有されている企業,②過去6事業年度のうち,3期以上財務のデータが入手できない企業,③過去6事業年度のうち,2期以上が連続して営業損失である企業又は3期以上営業損失である企業,④売上高に占める研究開発費の割合が3%を超過する企業,⑤売上高が本件国外関連者の売上高の10倍以上又は10分の1以下の企業,⑥事業内容あるいは取扱製品が本件国外関連者と大きく異なる企業,⑦製品の用途が半導体関連業でない企業を除外した結果として,22社(〈A〉n1,〈B〉n2 CORP.,〈C〉n3 INC.,〈D〉n4 CORPORATION,〈E〉n5 LTD.,〈F〉n6 CORPORATION,〈G〉n7 COMPANY LIMITED,〈H〉n8 CO.,〈I〉n9 CO.,LTD.,〈J〉n10 CO.,LTD.,〈K〉n11 CO.,〈L〉n12 CO.,LTD.,〈M〉n13 CORP.,〈N〉n14 CORPORATION,〈O〉n15 CORP.,〈P〉n16 COMPANY LTD.,〈Q〉n17 COMPANY, LTD.,〈R〉n18 INCORPORATED,〈S〉n19 COMPANY LIMITED,〈T〉n20 CORPORATION,〈U〉n21 COMPANY LIMITED,及び〈V〉n22.CO.,LTD.)を抽出し,台湾側比較対象企業の候補として提示した。
b 原告は,平成25年2月19日,本件調査担当者に対し,前記aの22社のうち,〈E〉n5 LTD.を除く21社は,本件国外関連者と著しく異なる製品を取り扱っていることを理由として,台湾側比較対象企業から除外するべきである旨の意見を述べるとともに,別の3社(〈W〉n23 CORPORATION,〈X〉n24 CO.,LTD.,及び〈Y〉n25 CO.,LTD.)を台湾側比較対象企業の候補とすべきである旨の意見を述べた。
c 本件調査担当者は,平成25年3月12日,原告に対し,前記bを踏まえ,11社(〈B〉n2 CORP.,〈C〉n3 INC.,〈E〉n5 LTD.,〈F〉n6 CORPORATION,〈L〉n12 CO.,LTD.,〈N〉n14 CORPORATION,〈O〉n15 CORP.,〈Q〉n17 COMPANY, LTD.,〈R〉n18 INCORPORATED,〈T〉n20 CORPORATION,及び〈Y〉n25 CO.,LTD.)を台湾側比較対象企業の候補として提示した。
d 原告は,平成25年3月26日,本件調査担当者に対し,前記cの11社に,エレクトロニクス産業向けの製品を取り扱っている4社(〈I〉n9 CO.,LTD.,〈M〉n13 CORP.,〈P〉n16 COMPANY LTD.,及び〈V〉n22.CO.,LTD.)を台湾側比較対象企業に加えるべきである旨の意見を述べた。
e 本件調査担当者は,平成25年4月4日,原告に対し,前記cの11社に原告が前記dにおいて指摘した4社のうちの3社(〈I〉n9 CO.,LTD.,〈M〉n13 CORP.,及び〈P〉n16 COMPANY LTD.)を加えた14社を台湾側比較対象企業の候補として提示した。
f 原告は,平成25年4月15日,本件調査担当者に対し,再度,前記dにおいて指摘したものの,前記eにおいて本件調査担当者が採用しなかった1社(〈V〉n22.CO.,LTD.)を台湾側比較対象企業に加えるべきである旨の意見を述べた。
g 本件調査担当者は,平成25年4月25日,原告が前記fにおいて指摘した企業(〈V〉n22.CO.,LTD.)を台湾側比較対象企業に加えるとともに,従前,台湾側比較対象企業の候補としていた企業(〈Y〉n25 CO.,LTD.)が,売上高の水準が本件国外関連者と異なることを理由として,これを台湾側比較対象企業から外すこととし,最終的に,14社(①n2 CORP.,②n3 INC,③n5 LTD.,④n6 CORPORATION,⑤n9 CO.,LTD.,⑥n12 CO.,LTD.,⑦n13 CORP.,⑧n14 CORPORATION,⑨n15 CORP.,⑩n16 COMPANY LTD.,⑪n17 COMPANY, LTD.,⑫n18 INCORPORATED,⑬n20 CORPORATION及び⑭n22.CO.,LTD.)を台湾側比較対象企業とする旨を伝えた。そして,a税務署長は,同年6月27日,上記の14社を台湾側比較対象企業とすることを前提とした本件各更正処分をした。
(イ) 前記(ア)によれば,a税務署長は,台湾側比較対象企業を,①化学工業を主たる業種とする企業から選定しており,本件国外関連者と比較的類似した事業を営む企業の中から選定していること,②他社に支配されず,複数年の財務データを入手することができ,適正かつ安定的に通常の利益率を確保する企業の中から選定していること,③研究開発費を多く支出している企業を除外することで,重要な無形資産が売上高により強く反映している可能性が高い企業を除外して選定していること,④売上高の規模が本件国外関連者と明らかに異なることが判明した企業を除外して選定していることの各事実が認められる上,本件調査担当者と原告との間で,複数回にわたってやり取りをし,原告からの指摘を少なからず取り入れた形で台湾側比較対象企業が決定されていることも併せ考慮すれば,a税務署長がした台湾側比較対象企業の選定は,適切なものであったと認められる。
ウ 原告の主張に対する判断
前記イに対する原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。
(ア) 原告は,被告が用いた台湾側比較対象企業のうち,(あ)台湾側比較対象企業①の主要な取扱製品は,繊維強化プラスチック等の合成樹脂製品であり,(い)台湾側比較対象企業④の主要な取扱製品は,コバルト,マンガン等の結晶体及び粉末であり,(う)台湾側比較対象企業⑥の主要な取扱製品は,プラスチック製品等の結晶体及び粉末であり,(え)台湾側比較対象企業⑨の主要な取扱製品は,ポリウレタン樹脂であり,(お)台湾側比較対象企業⑬の主要な取扱製品は,プラスチック製品であるから,いずれも本件国外関連者と棚卸資産の同種性又は類似性がない旨主張する。
しかし,証拠(乙99)によれば,①台湾側比較対象企業①の取扱製品の用途の一部に,プリント基板用(エッチングインク,はんだ防腐用樹脂等)が挙げられているところ,これは,原告が調査段階において台湾側比較対象企業の候補として容認していた台湾側比較対象企業③(前記イ(ア)b参照)の取扱製品の用途であるとされるプリント基板のエッチング用と同様であるとうかがわれること,②台湾側比較対象企業④の取扱製品が,コバルト,マンガン,ニッケルの金属系特殊化学品,電子部品であり,その用途がプリント基板であること,③台湾側比較対象企業⑥の取扱製品が電子化学品であり,同企業の取扱製品の用途の一部にプリント基板(PCB)があること,④台湾側比較対象企業⑨の取扱製品の一部にコーティング剤があり,同企業の取扱製品の用途の一部にプリント基板があること,⑤台湾側比較対象企業⑬の取扱製品の一部に電子部品があり,同企業の取扱製品の用途の一部にモニターの半導体があることの各事実が認められ,前記(4)エ(イ)のとおり,利益指標としての営業利益率を算出する前提としての棚卸資産の類似性は,独立価格比準法における比較対象取引の同種性等とは異なり,その性質上,厳密なものまでは要求されず,比較的緩やかなもので足りると解するのが相当であるほか,最終的に,営業利益率の平均値をもって利益指標としての営業利益率とされることにより,個々の企業の差異が相当程度捨象されると推認することができることにも照らすと,原告と原告が指摘する台湾側比較対象企業の一部の企業との間に,原告が主張するような棚卸資産の違いがあることを前提としたとしても,売上高営業利益率を算出する前提としての棚卸資産の類似性は,満たしているものと認められる。
(イ)a 原告は,台湾側比較対象企業⑧は,主として,不飽和ポリエステル樹脂及び樹脂塗料を製造し,日本,東南アジア,オーストラリア,南アメリカ,中東,アフリカ等に対してこれらを供給する企業であるところ,不飽和ポリエステル樹脂の用途は,船舶等であるから,事業内容又は取扱製品が本件国外関連者と大きく異なる企業であって,その製造及び販売する製品の用途は,半導体関連ではない上,本件国外関連者が,主として台湾におけるプリント基板メーカーに対してその製造した製品を販売しているのに対し,台湾側比較対象企業⑧は,その製造した製品の大半を輸出するグローバル企業であるから,その市場も異なるとして,台湾側比較対象企業⑧は,本件国外関連者の比較対象企業とすることができない旨主張し,これに沿う証拠もある。
しかし,証拠(甲129の1・2,乙160)によれば,台湾側比較対象企業⑧の製品が,プリント基板や電子部品に使用されていることが認められ,台湾側比較対象企業⑧が,専ら,不飽和ポリエステル樹脂や樹脂塗料を取り扱っているわけではなく,半導体関連の事業も営み,プリント基板に使用される製品(本件国外関連者と同様の用途の製品)も取り扱っていることが認められる。
また,a税務署長が選定した台湾側比較対象企業のうち,原告から提案があった台湾側比較対象企業⑤,台湾側比較対象企業⑦及び台湾側比較対象企業⑩については,証拠(乙95)及び弁論の全趣旨によれば,(あ)台湾側比較対象企業⑤は,同企業のホームページ上で,取扱製品の用途が電子部品向けと記載されているにとどまり,半導体関連の事業を営んでいるとまでは確認することができないこと,(い)台湾側比較対象企業⑦は,同企業のホームページ上で,取扱製品の用途がリチウム電池である旨の記載があるにとどまっていること,(う)台湾側比較対象企業⑩は,同企業のホームページ上で,取扱製品の用途がLED向けと記載されており,プリント基板とは用途が異なっていることの各事実が認められ,本件においても,原告は,上記の各台湾側比較対象企業の本件国外関連者との比較可能性を争っていないところ,台湾側比較対象企業⑧と本件国外関連者との棚卸資産の類似性が,上記の各台湾側比較対照企業と本件国外関連者との間の棚卸資産の類似性との比較において,類似の程度が著しく異なっているとも認め難い。
その上で,前記(ア)と同様,利益指標としての営業利益率を算出する前提としての棚卸資産の類似性は,独立価格比準法における比較対象取引の同種性等とは異なり,その性質上,厳密なものまでは要求されず,比較的緩やかなもので足りると解するのが相当であるほか,最終的に,営業利益率の平均値をもって利益指標としての営業利益率とされることにより,個々の企業の差異が相当程度捨象されると推認することができることにも照らすと,本件国外関連者と台湾側比較対象企業⑧との間に,原告が主張するような棚卸資産の違いがあることを前提としたとしても,売上高営業利益率を算出する前提としての棚卸資産の類似性は,いまだ失われていないものと認められる。
なお,原告は,本件国外関連者と台湾側比較対象企業⑧の顧客(市場)が異なっている旨も主張するが,顧客(市場)が異なるとしても,同様の事業を営む企業の売上原価(人件費,原材料費等)は,同じ国又は地域であれば,同様の水準にあると推認することができることに加え,顧客(市場)の違いが売上高営業利益率の直接的な差異を直ちにもたらす,との一般的な知見は見当たらず,本件全証拠によってもそれを裏付ける事情がうかがわれるとも認め難いから,原告の上乱の主張は,上記の認定及び判断を覆すには足りない。
b 原告は,台湾側比較対象企業⑫は,接着剤の製造メーカーであり,その製品の用途は,段ボール箱の梱包用のもの等であって,汎用的な建設資材,食品,飲料,太陽電池,靴等の接着剤,医療機器及びオフィス機器に用いられており,事業内容又は取扱製品が本件国外関連者と大きく異なる企業であって,その製造及び販売する製品の用途は,半導体関連ではない上,台湾側比較対象企業⑫の製品は,世界中に輸出されて販売されており,本件国外関連者とは,市場も異なるから,台湾側比較対象企業⑫は,本件国外関連者の比較対象企業とすることができないというべきである旨主張する。
しかし,前記aに判示したところと同様の理由により,本件国外関連者と台湾側比較対象企業⑫との間に,原告が主張するような棚卸資産の違いがあることを前提としたとしても,売上高営業利益率を算出する前提としての棚卸資産の類似性は,失われていないと認められる。
(ウ) 原告は,平成19年3月期の台湾側比較対象企業の売上高営業利益率について,台湾側比較対象企業②の数値が欠落しており,実際には,同社の平成19年3月期の売上高が,8億1434万3000台湾ドル,営業利益が2億0620万4000台湾ドル,売上高営業利益率が25.3215168547%であることを前提とすると,売上高営業利益率の平均値は,7.0404468172%ではなく,7.8433484758%となるから,被告がした平成19年3月期の本件国外関連者の基本的利益の算定は誤りである旨主張する。
しかし,証拠(乙153ないし157,166,167(ただし,枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,①台湾側比較対象企業②は,従来,高雄市内に唯一の工場を有していたが,2005年(平成17年)10月,屏東県(高雄市の南東にある県)に工場を移転させる事業に着手し,2006年(平成18年)12月に新しい工場が完成したこと,②上記①の従来の工場の移転に係る補償金が,台湾側比較対象企業②の2005年(平成17年)の営業外収入に計上されていること,③台湾側比較対象企業②の2006年(平成18年)の年報において,工場移転のために生産を繰り上げて完成品を蓄えておき,生産が停止している時期の顧客の需要に備えていた旨の記載が見られることに加え,④(あ)台湾側比較対象企業②の工場作業員の期末の人数が,2004年(平成16年)は76人であったところ,2005年(平成17年)は17人と減少し,2006年(平成18年)は42人と増加していること,(い)台湾側比較対象企業②が2005年(平成17年)及び2007年(平成19年)にそれぞれ給与として支出した金額(2005年(平成17年)につき5239万8000台湾ドル,2007年(平成19年)につき3918万4000台湾ドル)と2006年(平成18年)に給与として支出した金額(56万7000台湾ドル)との間には,大きな差があること,(う)台湾側比較対象企業②は,2005年(平成17年)及び2007年(平成19年)には,営業原価に属するものとして,労務費の一部である社会保険料,退職給付費用及びその他の人件費並びに固定資産減価償却費を計上している反面,2006年(平成18年)には,これらの営業原価に属するものを全く計上していないことの各事実によれば,台湾側比較対象企業②は,2006年(平成18年)において,売上原価の額に製造費用の額(労務費の一部である社会保険料,退職給付費用及びその他の人件費並びに固定資産減価償却費)を計上せず,かつ,直接労務費の額も少額しか計上していなかったといえるところ,これは,同年中には,工場で製品を製造していなかったことに起因するものと推認することができることの各事実を認めることができる。
そうすると,台湾側比較対象企業②は,2006年(平成18年)において,ほとんど製品を製造しておらず,本件国外関連者及び他の台湾側比較対象企業と同様の状況にはなかったものと認められるから,平成19年3月期については,台湾側比較対象企業②に係る数値を除外して台湾側比較対象企業の売上高営業利益率を算出するのが合理的であると認められ,a税務署長が,これと同様の考慮の下に,台湾側比較対象企業の売上高営業利益率を算出したことも,適切であると認められる。
エ まとめ
以上に判示したもののほか,本件国外関連者の基本的利益の算定が合理性を欠くことをうかがわせる事情等は見当たらない。
したがって,本件においては,本件国外関連者の基本的利益の算定に当たって算出すべき売上高営業利益率は,別表4付表7の順号15に記載されているとおりであると認められ(その算出過程については,同付表の順号1ないし14も参照),それを踏まえた本件国外関連者の基本的利益の額は,別表4の順号27に記載されているとおりであると認められる(なお,その算出過程については,同別表順号25及び26も参照)。
(6) 残余利益の分割要因
前記(2)及び(3)により本件国外関連取引における分割対象利益を,前記(4)及び(5)により本件国外関連取引における基本的利益を,それぞれ算出することができ,上記の分割対象利益から上記の基本的利益を控除した後の金額が,本件国外関連取引における重要な無形資産が獲得に寄与したと認められる利益(残余利益)であると認めることができる(別表4順号28参照)。そして,原告及び本件国外関連者の双方が有する重要な無形資産の価値(分割要因)に応じ,当該残余利益を配分することにより,本件国外関連取引の独立企業間価格を算定することができることになる。
そこで,以下順に,原告及び本件国外関連者の各分割要因を算定する過程及び結論の合理性について,検討を加える。
ア 残余利益の配分の方法
残余利益の配分は,取引当事者が有する重要な無形資産の価値に応じて配分されるべきものであるところ,無形資産の価値それ自体を金額として的確に把握することがその性質上困難であることに加え,当該無形資産を生み出すために要した費用の額と当該無形資産の価値との間には,一定の合理的な相関関係があるとの一般的な経験則が存在することにも照らすと,当該無形資産の価値それ自体に代えて当該無形資産の開発のために支出した費用等の額を用いることも許されるものと解するのが相当である(租税特別措置法通達66の4(4)-5の注も参照)。
イ 原告の分割要因の算定に関する検討
これまでに判示してきたとおり,本件国外関連取引における利益の獲得に寄与した原告が有する重要な無形資産は,本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等であるところ,当該ノウハウ等の個別性等に照らし,当該ノウハウ等の価値自体を具体的な金額で評価することは困難であるから,当該ノウハウ等の開発のために支出した費用等の額を用いることとするのが相当であると認められる。
その上で,本件の証拠関係の下においては,個々のノウハウ等の開発のために支出した費用等の額を特定することができず,かつ,ノウハウ等を開発するために支出している費用(研究開発費用)の額が毎年おおむね一定していること(前記(2)イ(ア)a⑤)に照らすと,前記(2)イ(ア)と同様の理由により,本件国外関連取引の売上げと期間的に対応している当該費用の額をもって上記の売上げにおける利益の獲得に寄与した原告が有する重要な無形資産の価値と評価するのが相当である。
したがって,原告の分割要因は,本件各事業年度を構成する事業年度ごとの原告のめっき薬品の研究開発費の総額に,本件連結売上高に占める本件ライセンス製品外部売上高の割合を乗じた後のものと算出すべきものと認められる。
ウ 本件国外関連者の分割要因の算定に関する検討
これまでに判示してきたとおり,本件国外関連取引における利益の獲得に寄与した本件国外関連者が有する重要な無形資産は,本件国外関連者が顧客に対して提供していた様々な営業技術支援(前提事実(1)イ(ウ))であるところ,当該営業技術支援の内容,個別性等に照らし,当該営業技術支援の価値自体を具体的な金額で評価することは困難であるから,当該営業技術支援を遂行するために支出した費用等の額を用いることとするのが相当であると認められる。
その上で,本件の証拠関係の下においては,上記の営業技術支援に要した費用は,前記(3)イ(イ)のとおり,本件国外関連者の営業利益を算出するに当たりd社の販売管理費の一部を成すものとして評価すべきL&R費用の額(①d社の決算書に計上されている販売管理費の額のうちのL&R費用の額【〈A〉】に,d社めっき製品売上高【〈B〉】に占めるd社本件ライセンス製品売上高【〈C〉】の割合を乗じた後のもの(=〈A〉×〈C〉/〈B〉。前記(3)イ(イ)(あ)参照)と,②b社の決算書に計上されている販売管理費の額のうちのL&R費用の額【〈D〉】からd社に係る減価償却費の額【〈E〉】を控除したものに,c研究所の総人員数【〈F〉】とb社の研発部の人員数【〈G〉】を合計したものに占める,c研究所のうちの研発部の業務に従事する者の数【〈H〉】とb社の研発部の人員数【〈I〉】を合計したものの割合を乗じたものに,本件国外関連者のめっき製品売上高【〈J〉】に占める本件ライセンス製品外部売上高【〈K〉】の割合を乗じた後のもの(=(〈D〉-〈E〉)×{(〈H〉+〈I〉)/(〈F〉+〈G〉)}×(〈K〉/〈J〉)。前記(3)イ(イ)(い)参照)とを合計した後の金額(=①+②)のことである。)に,証拠(乙64,66,85)によれば,本件国外関連者の分割要因とすることが相当であると認められるb社のめっき加工工場に係る費用の額を加算した後の金額であると認めるのが相当である。
したがって,本件国外関連者の分割要因は,本件各事業年度を構成する事業年度ごとの本件国外関連者の営業利益を算出するに当たりd社の販売管理費の一部を成すものとして評価すべきL&R費用の額に,b社のめっき加工工場に係る費用の額を加算した後の金額として算出すべきものと認められる。
エ 原告の主張に対する判断
前記アないしウに対する原告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。
(ア) 原告は,①台湾における原告が開発しためっき薬品の製造及び販売の事業の極めて高い利益の源泉は,日本(約20%。なお,ピーク時でも35%程度のシェアにすぎなかったものである。)及び韓国(約15%)と比較しても極めて高い台湾におけるシェア(約80%)によるものであるところ,これは,本件国外関連者が,台湾で他社にはないユニークな営業活動を行うことによって,機能めっきの分野では後発企業であったにもかかわらず,プリント基板・ICパッケージ用プリント基板向けめっき薬品の市場において圧倒的な市場のシェアを占めるに至ったことによるものである,②原告の研究開発活動は,競合他社と比較して格別のユニークさはなく,競合他社も同様の研究開発活動をしていることから,原告が,同じ製品を市場に投入し,様々な営業活動をしているにもかかわらず,台湾以外では台湾で見られるような圧倒的な市場のシェアを実現していない,③上記①及び②によれば,台湾の市場において生み出されている残余利益に主として貢献しているのは,台湾での本件国外関連者の営業活動であり,原告の研究開発活動が台湾における残余利益の発生に貢献しているのかどうかは明らかではなく,仮に,貢献があったとしても,本件国外関連者の顧客サービスの貢献と比較すると極めてその程度が低いものにとどまっていたことを示しているとして,④原告の研究開発費の額と本件国外関連者の営業技術費用の額を分割要因としたのでは,このような実際の残余利益の発生の実態を反映しないのであって,原告の研究開発費の額と本件国外関連者の営業技術費用の額は,原告及び本件国外関連者の残余利益の発生に寄与した程度を推測するに足りるものとはいえない旨主張する。
しかし,前記2(4)ウ(ウ)に判示したとおり,本件国外関連者が,原告から使用許諾を受けた無形資産を使用して製造した製品を用いて顧客のニーズにきめ細かに対応する表面処理の技術を提供することが可能であることが,台湾における本件国外関連者の営業技術支援の前提となっているから,本件国外関連者が台湾において上げた高い収益が,本件国外関連者が提供した営業技術支援のみに起因するとか,原告の研究開発活動が台湾における残余利益の発生に貢献している程度が極めて低いとかいう事実があるとまでは直ちに認め難い。また,証拠(乙77)によれば,原告が,本件国外関連者の営業に関連する研究開発活動に重点を置いて,めっき薬品の製造等のノウハウ等の研究開発活動をしていたことが認められるから,その意味においても,本件国外関連者が本件ライセンス製品の販売により得た収益に,原告がした研究開発活動が寄与し,当該研究開発活動に要した費用の額をもって原告の分割要因とすることが合理的であることが裏付けられていると認められる。
(イ)a 原告は,仮に,原告及び本件国外関連者がそれぞれ有する無形資産がいずれも残余利益の発生に寄与しているとしても,原告が有する無形資産である本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等の寄与の程度と,本件国外関連者が有する無形資産である本件ライセンス製品の販売に際して提供する技術サービスの寄与の程度の比率が,費用の額の比率であること,すなわち,本件国外関連者の技術サービスの費用1円当たりと,原告の研究開発費1円当たりとが,同様の割合で残余利益の発生に貢献したことを合理的に推測するに足りる証拠が,何も存在しない旨主張する。
確かに,前記イ及びウの認定及び判断は,原告の研究開発費1円当たりと,本件国外関連者の営業技術支援の費用1円当たりとが,同様の割合で残余利益の発生に貢献したことを前提とするものであることは,原告が指摘するとおりであるところ,無形資産が残余利益の発生に貢献した程度を金額として具体的に把握することはその性質上困難である上,これを無形資産ごとに異なるべきものと認めるべき合理的な理由も見当たらないから,ある無形資産に関連して支出された費用の額と当該無形資産が残余利益の発生に貢献した程度との関連性が無形資産ごとに異なることを認めるに足りる具体的な証拠又は事情が認められない限り,ある無形資産に関連して支出された金額の比率をもって当該無形資産が残余利益の発生に貢献した程度の比率であると評価することには相応の合理性があるというべきである。
その上で,本件においては,本件全証拠によっても,原告が有する無形資産である本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等に係る研究開発活動に要した費用に当たると認められる原告の研究開発費の額と,本件国外関連者が有する無形資産である本件ライセンス製品の販売に際して提供する営業技術支援等に要した費用(L&R費用の額及びb社のめっき加工工場に係る費用の額を合計したもの)との比率をもって,原告が有する無形資産である本件ライセンス製品の製造に係るノウハウ等の寄与の程度と本件国外関連者が有する無形資産である本件ライセンス製品の販売に際して提供する営業技術支援等の寄与の程度の比率であると認めることができない具体的な証拠又は事情は見当たらないから,上記の費用の額の比率をもって寄与の程度の比率であると評価することは合理的である。
b 原告は,仮に,原告及び本件国外関連者がそれぞれ有する無形資産がいずれも残余利益の発生に寄与しているとしても,①原告の研究開発活動という機能と本件国外関連者の技術サービスという機能は,別個の独立した機能であって,全く異なる無形資産である,②異なる性質の無形資産が存在する場合,それらを無形資産として一くくりにしてそれぞれの費用の合計額を分割要因とすることはできず,無形資産ごとにその性質に照らした分割要因を検討し,かつ,それらの無形資産間の価値の重み付けをすることが必要である,③研究開発活動と技術サービスという種類の異なる機能によって残余利益が生み出されている場合には,各機能によって生み出された残余利益ごとに利益の分割を行わなければならないのであって,2つの異なる無形資産を区別することなく,その形成のために支出された費用の比率をもって2つの無形資産の価値の比率であるとするのは全く無意味であるとして,上記の費用の比率は,「所得(残余利益)の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因」(租税特別措置法施行令39条の12第8項1号)に該当しない旨主張する。
しかし,本件においては,原告が有する無形資産である本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等も,本件国外関連者が有する無形資産である本件ライセンス製品の販売に際して提供する営業技術支援も,本件ライセンス製品を第三者に対して販売することに向けて使用される無形資産であるから,共に本件ライセンス製品の販売によって生ずる残余利益の発生に寄与するものであると認められる。また,残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法は,元々,国外関連取引の両当事者の有する無形資産がそれぞれ独自の機能を果たす場合に用いることが想定される方法である(前記2(4)ア参照)上,残余利益分割法又は残余利益分割法と同等の方法を用いて独立企業間価格を算定する際,国外関連取引の両当事者が有する無形資産が同様又は同種のものであることがその前提となっていることを認めるに足りる証拠等も見当たらない。
したがって,原告の主張は,その前提を異にするものである。
(ウ)a 原告は,①本件国外関連取引の対象は,過去の研究開発活動によって生み出されためっき薬品に係るものであり,本件各事業年度の残余利益の発生と因果関係があるのは,本件各事業年度よりも前の過去の研究開発費である,②めっき薬品の製品としての寿命は極めて長期に及び,一定の期間ごとにモデルチェンジが繰り返されて短期間で陳腐化する製品とは異なるから,いまだ原告が使用を許諾していないめっき薬品(将来開発されるという結果が生じるかもしれない製品)の製造等のノウハウ等に係る研究開発活動のために支出されている現在の研究開発費を,過去の開発によって生み出された製品の売上げから生ずる残余利益の発生に寄与している費用とすることの合理性は全くないとして,本件各事業年度の研究開発費は,本件国外関連取引における本件各事業年度の残余利益の発生には貢献しておらず,残余利益の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因ともいえない旨主張する。
しかし,租税特別措置法施行令39条の12第8項1号は,「当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因」と規定しており,その「程度を推測するに足りる」との文言に照らすと,これが,分割要因と残余利益との間に,直接的な因果関係や比例関係が存することまで要求する趣旨のものとは解し難いから,過去の研究開発活動によって生み出された無形資産が残余利益の発生に貢献した程度を評価するに当たり,現在の研究開発費をもって残余利益の分割要因とすること自体が直ちに,上記にいう「当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因」を満たさないものとまでは認め難い。その上で,前記イに判示したところを踏まえると,原告が上記に指摘するところをもっても,前記イの認定及び判断を覆すには足りない。
b 原告は,過去に開発されためっき薬品の製造及び販売の利益と関連する研究開発費は,当該めっき薬品の開発期間に支出された研究開発費の累積額を当該めっき薬品に係る本件国外関連者の販売数量と当該めっき薬品が市場に登場してから退場するまでの予想販売累積量の合計に係る割合を乗じた後の金額であるところ,めっき薬品の開発には3年程度は要し,めっき薬品が市場に登場してから退場するまでの期間は,特許の期間である20年を下回らないから,製品の開発期間を3年,製品を開発した後の存続期間を20年と仮定し,年々の開発や販売に係る状況が安定的に推移すると仮定して原告の分割要因となる金額を計算すべきである旨主張する。
しかし,原告の主張は,無形資産の開発に要した費用の額を一定の期間に均等にあん分した後のものをもって当該無形資産の価値であるとすることを前提とするものと解されるところ,そのように無形資産の価値を算出することが合理的であることを基礎付ける根拠は見当たらない。また,原告の主張を前提とすると,存続する期間が長い無形資産ほど1年当たりの価値又は価額が低くなることになるが,存続する期間が短い無形資産の方が,存続する期間の長い無形資産よりも価値又は価額が高いとの一般的な経験則は存在しない(むしろ,多額の費用をかけて開発したとしても,短い期間しか存続し得ないものの方が価値又は価額が低いとみる余地は十分に存する。)から,その意味においても,原告の主張は,合理性を欠くものというべきである。さらに,本件においては,本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等について,一律に,開発期間を3年,存続期間を20年と仮定することが合理的であると認めるに足りる証拠ないし事情等も見当たらない。
(エ)a 原告は,台湾の顧客は,本件国外関連者の研発部の技術要員等だけではなく,日常的に接する営業部の技術者が24時間体制で競合他社にはない技術サービスを提供することから,競合他社からではなく本件国外関連者から高い価格で多くのめっき薬品を購入していたのであり,本件国外関連者の研発部の技術要員等だけではなく営業部の技術者が提供している技術サービスも残余利益の発生に貢献しているから,本件国外関連者の研発部の費用のみが残余利益の発生に貢献した費用であるとしてこれを分割要因とするのは誤りである旨主張する。
しかし,原告は,原告が上記に指摘する「営業部の技術者が24時間体制で競合他社にはない技術サービスを提供する」とされるものの具体的な内容を何ら主張立証しておらず,本件においては,本件国外関連者が,顧客サポート要員に24時間携帯電話を常備させ,クレーム発生時には顧客担当者との緊急連絡が取れ,数時間以内に対策ミーティングができるサポート体制(前提事実(1)イ(ウ)②)を超えて,営業部の技術者が24時間体制で競合他社にはない営業技術支援に係る役務を提供していたことを認めるに足りる的確な証拠はないから,原告の主張は,その前提を異にするものというべきである。この点をひとまずおくとしても,本件国外関連者が提供していた営業技術支援(前提事実(1)イ(ウ))については,本件国外関連者の分割要因として考慮されている(前記ウ②)から,それを超える部分については,特段の事情のない限り,当該営業技術支援に係る無形資産を有しない企業によるものと有意な差があるものとは認め難いのであって,基本的利益を算出する際に既に考慮されているものにおいて評価し尽くされていると認められるところ,本件においても,原告が指摘する「営業部の技術者が24時間体制で競合他社にはない技術サービスを提供する」とされるものが,他の企業が提供する営業上の技術サービスと有意な差のあるものであることを認めるに足りる的確な証拠ないし事情等は見当たらないから,仮に,上記のような営業技術支援に係る役務の提供が存するとしたとしても,それは,本件国外関連者の基本的利益を算出した際に,既に評価され尽くされているものというべきである。
b 原告は,c研究所は,台湾のプリント基板メーカーのニーズに即した製品やめっきのプロセスを開発するという機能を有しており,本件国外関連者の技術営業の活動と密接不可分な関係にあって,両者の活動が相まって顧客に新たな価値を提供し,本件国外関連者に高い収益をもたらしているから,c研究所の費用の全額が分割要因に含まれるべきである旨主張する。
しかし,前記(3)エ(ウ)と同様の理由により,本件の証拠関係の下においては,前記(3)イ(イ)において評価したところを超えて,c研究所の製品開発活動に要した費用を本件国外関連取引に係る費用として取り扱うことが合理的であるとは認め難いから,原告の主張は,その前提を異にするものというべきである。
オ まとめ
以上に判示したもののほか,原告及び本件国外関連者の各分割要因の算定について,それが合理性を欠くものであることをうかがわせる事情等は見当たらない。
したがって,本件においては,原告の分割要因は,別表4の順号32に,本件国外関連者の分割要因は,同別表の順号36に,それぞれ記載されているとおりであり,これを合計すると,本件各事業年度を構成する各事業年度に対応する同別表の順号37にそれぞれ記載された金額になると認められる(その算出過程については,同別表の付表1及び付表8も参照)。
(7) 残余利益の配分及び本件国外関連取引に係る所得移転額
ア 原告に帰属する残余利益
前記(6)の残余利益(別表4の順号28)に,前記(6)オの原告及び本件国外関連者の分割要因を合計した金額(同別表の順号37)に占める原告の分割要因(同別表の順号32)の割合を乗じた後の金額が,本件各事業年度を構成する各事業年度の原告に帰属すべき残余利益の額であり,本件各事業年度を構成する各事業年度に対応する同別表の順号38にそれぞれ記載された金額と同額であると認められる。
イ 本件国外関連取引に係る独立企業間価格
(ア) 本件国外関連取引に係る独立企業間価格は,原告が支出した費用と原告に帰属すべき利益(基本的利益と残余利益を合計したもの)とを合計した後のものであることになるから,原告が本件国外関連取引について支出した費用(売上原価の額及び販売管理費の額),原告の基本的利益(前記(4)オ)並びに原告の残余利益(前記ア)を全て合計したものであり,本件各事業年度を構成する各事業年度に対応する別表4の順号39にそれぞれ記載された金額と同額であると認められる。
(イ) 原告は,移転価格税制の適用に関して用いられる移転価格の算定方法は,当該具体的な取引状況等に照らし,独立企業間であればそのような価格付けをするであろうといえるものでなければ,独立企業原則に基づいた合理的な方法であるとはいえないところ,本件においては,支出した開発費用の1.7倍から3.6倍にも及ぶ巨額の利益を原告が得ることができる価格が独立企業間価格であることになるが,そのような巨額の利益を得ることができる開発の活動に関する取引が第三者間で成立することはあり得ない旨主張する。
しかし,そもそも,本件ライセンス取引のように,原告が有する重要な無形資産である本件ライセンス製品の製造等のノウハウ等の使用を包括的に許諾することを内容とする取引が第三者間又は独立企業間で成立することは,現実にはほぼ期待することができないとうかがわれることからすると,巨額の利益を得ることができる開発の活動に関する取引が第三者間で成立することがあり得ないとされることをもって直ちに,支出した費用の1.7倍から3.6倍の利益を原告が得ることができるとされる価格が,独立企業間価格として不相当であることが基礎付けられるものとは認め難い。そして,本件ライセンス取引のような無形資産の包括的な使用を許諾することを内容とする取引が独立企業間で成立すると仮定した場合に成立する価格を求めるとすると,一般に成立し得る取引と比較して高額の対価を伴うものとなったとしても,何ら不合理ではないことにも照らすと,原告が上記に指摘するところをもっても,前記(ア)において認定した本件国外関連取引に係る独立企業間価格が相当なものであることを覆すには足りないというべきである。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
ウ 本件国外関連取引に係る所得移転額
本件国外関連取引に係る原告から本件国外関連者に対する所得移転額は,前記イ(ア)の本件国外関連取引に係る独立企業間価格から実際の本件国外関連取引の対価の額(乙85。別表4の順号3参照)を控除した後のものと認められるから,本件においては,本件国外関連取引について,同額の所得移転があったものと認めるのが相当である。
(8) 小括
以上によれば,a税務署長が,租税特別措置法66条の4第1項の規定により,原告の本件各事業年度の所得に係る法人税法その他法人税に関する法令の規定の適用について,本件国外関連取引が,前記(7)イ(ア)の独立企業間価格で行われたものとみなして本件各更正処分をしたことは,適法なものというべきである。
4 本件各更正処分等の適法性について
以上に述べたところのほか,証拠(甲1ないし6,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,本件各更正処分等の根拠及びその適法性については,別紙6に記載のとおり認めることができ,この認定判断を左右するに足りる証拠ないし事情は見当たらない。
5 結論
よって,原告の請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
(裁判長裁判官 鎌野真敬 裁判官 福渡裕貴 裁判官 獅子野裕介)
別紙1
当事者目録
大阪市〈以下省略〉
原告 X株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 B
同補佐人税理士 C
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 D
処分行政庁 a税務署長 E
被告指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
同 W5
同 W6
同 W7
同 W8
同 W9
同 W10
同 W11
同 W12
同 W13
同 W14
以上
*******
■どぶ板選挙ドットウィン!にしかできない「地獄のどぶ板PR代行」の強み
(1)「地獄のドブ板」に特化した広報PR支援会社ですので、一番しんどい部分のみご相談ください
(2)候補(予定)者の認知度拡大に向けて、貼る場所(箇所)に差をつける!どぶ板PRマーケティング
(3)どぶ板実績No.1 ポスタリストの豊富な経験と実績で、候補(予定)者の選挙区をPRで完全包囲
(4)政治活動に必須となる地域密着型どぶ板PRで候補(予定)者と有権者を繋ぐご挨拶回り握手代行
(5)選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立する
(6)ご挨拶回り!ビラ手渡し!ポスター貼り(掲示交渉)!街頭演説!で、どぶ板の相乗効果を狙え
■どぶ板選挙PR代行の流れ
■どぶ板OJTとは?
■どぶ板同行OJT内容(座学研修および実地特訓)
■どぶ板OJT当日配布資料
■どぶ板の学校オンライン
■ドブ板選挙にはじまり、どぶ板選挙で終わる!
ポスタリング | 掲示交渉実績 | お問い合わせ |
無料ワッポン | どぶ板MENU | 握手挨拶代行 |
よくある質問 | 各種資料一覧 | お申込み流れ |
ポスターPR党 | どぶ板OJT | 弁士相手探し |
党員獲得代行 | 選挙妨害対策 | 立札看板交渉 |
①新規開拓PR | ②他党多党PR | ③一戸建てPR |
⑧政策ビラPR | ポスタリング | ④集合住宅PR |
⑦意外注目PR | ⑥公的公共PR | ⑤独占単独PR |
【よくある質問 Q&A 一覧】
■街頭ポスター貼り(掲示交渉)代行について
Q&A【1】街頭ポスター貼付(掲示交渉代行)サービスとはどのようなものですか?
Q&A【2】どのくらいの期間で何枚くらいの街頭ポスター貼付ができるのですか?
Q&A【3】街頭ポスターを貼る際は先方(許可承諾者)に許可をいただいて貼るのですか?
Q&A【4】ポスターの①貼付依頼~②貼付開始~③貼付完了等の流れについて教えていただけますか?
Q&A【5】ポスターの料金は1枚いくらで貼ってくれるのですか?
Q&A【6】ポスターの貼付エリアや貼り付け枚数等は指定できますか?
Q&A【7】ポスター貼付後のメンテナンス(貼り替え・剥がし)も依頼できますか?
Q&A【8】最低何枚から街頭ポスター貼りを依頼できますか?
Q&A【9】ポスター貼り替え期間の指定はできますか?貼りっぱなしではないですか?
Q&A【10】街頭ポスターの貼付交渉(新規掲示)の実績や事例はありますか?
■政治活動における広報支援について
Q&A【11】「ドブ板選挙プランナー」とはどのようなお仕事ですか?
Q&A【12】「ポスタリング」とはどのようなサービスですか?
Q&A【13】政治活動等の特殊な業界についてのポスター掲示交渉は難しいですか?
Q&A【14】政治活動用の街頭ポスター(二連|三連)貼りをお願いしたいのですが、特定政党の支援は可能ですか?
Q&A【15】政治活動におけるポスターについて公職選挙法や政治資金規正法等の知識はありますか?
Q&A【16】街頭で無料の「ウィン!ワッポン」をよく見かけますが、これで選挙の勝率が上がりますか?
Q&A【17】二連ポスターや三連ポスター製作前に「弁士の相手」のご提案もしてくれますか?
Q&A【18】ポスター「掲示責任者代行」とはどのようなものでしょうか?
Q&A【19】選挙妨害やその他クレーム対応等の代行も可能でしょうか?
Q&A【20】政治活動(選挙運動)における広報支援プランはどのようなものがありますか?
■営業専門会社による広報PR支援について
Q&A【21】飛び込み訪問、戸別訪問、挨拶回り代行等、ポスター貼り以外でもお願いできますか?
Q&A【22】飲食店や実店舗等の店内やトイレ等にポスターを貼ったり、ビジネスカード設置、チラシ配布等は可能ですか?
Q&A【23】全国どこでもポスター貼りが可能なのですか?
■ご検討中の方々に
Q&A【24】お問い合わせについて
Q&A【25】資料をダウンロード
Q&A【26】ノウハウ・テクニックを大公開!
■ご依頼(お申し込み)の前に
Q&A【27】お申し込みの流れ
Q&A【28】ご用意いただきたいもの
■ご依頼(ご契約)の後に
Q&A【29】進捗報告について
Q&A【30】お友達ご紹介キャンペーンについて
【ポスター【制作前の】候補予定者様】のメニューです。
「政治活動用ポスターのデザイン」は、こちらです。
公職選挙法規定の法的審査(レギュレーションチェック)対応済みの、個人ポスター、2連ポスター、3連ポスター等のデザインを制作!
「弁士相手探しマッチング」は、こちらです。
「探して、交渉して、お隣りへ!」理想の有名人や著名人の弁士相手を探して、地域有権者に対して認知度拡大の相乗効果を狙う!
「ポスターの掲示責任者代行」は、こちらです。
【全国対応】ポスターを掲示した選挙区からのクレーム対応・妨害等の「総合窓口」として、ポスター掲示責任者の代行をいたします。
【ポスター【制作後の】候補予定者様】のメニューです。
政治活動期間における「どぶ板専門!ポスター貼り(掲示交渉)代行」は、こちらです。
【稼働の流れ】
①新規ご挨拶回り|戸別訪問代行|握手代行
選挙区(指定エリア)の有権者(民家・飲食店・その他施設)に対して、候補予定者に代わって選挙ドットウィン!が直接ご訪問致します。
②名刺|ビラ|リーフレット等の手渡し配布
候補予定者と有権者を繋ぐため、名刺・ビラ・政策レポート・討議資料・リーフレットなど活動報告資料の直接手渡し配布を致します。
③留守宅|候補者PR資料ポスティング投函
ご訪問先がご不在の場合には、配布物を郵便受け等にポスティング投函致します。(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率!)
④政治活動ポスター貼り(新規掲示交渉!
【完全成果報酬】地獄のドブ板活動に必須となる、政治活動用ポスター貼り(新規掲示交渉代行!)(貼れた分だけの枚数課金となります)
⑤掲示(貼付)後のフォロー|クレーム対応
ポスター掲示(貼付)完了後における掲示許可承諾者へ、フォローやクレーム対応等のストレスな部分は選挙ドットウィン!が致します。
所属政党の「党員募集獲得代行」、政治団体および後援会等の「入会募集獲得代行」は、こちらです。
当該政党の「党員」「サポーター」募集等の規定に従って、選挙立候補(予定)者様に代わって政党への入党におけるご案内を促します。
どぶ板同行OJT(座学研修および実地特訓)で学ぶ「スパルタ個別訪問同行OJT」は、こちらです。
候補予定者様ご本人・選挙事務所スタッフ・ボランティア様が効率良く「どぶ板の政治活動」が行なえるようアドバイスいたします。
絶対的な地盤を構築する「立札看板設置交渉代行」は、こちらです。
選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立するためのご支援をさせていただきます。
あらゆる政治選挙におけるお困りごとを支援する「選挙の窓口」活動支援一覧は、こちらです。
「地上戦」「空中戦」「ネット戦略」などを駆使し、当選に向けたコンサルティングおよびプランニングのご支援をいたします。
■ポスターPRプラン一覧(枚数・サイズの選択)
選挙区エリアにおいて、ポスターの当該掲示許可承諾者に対して交渉し、同一箇所にどのように掲示するかをお選びいただきます。
【臨機応変型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率88% ★こちらをご確認下さい。
【連続二枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率6% ★こちらをご確認下さい。
【限定一枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率4% ★こちらをご確認下さい。
【個別指定型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率2% ★こちらをご確認下さい。
※ポスターのサイズは、A1サイズ、A2サイズをはじめ、ご希望に応じてご提案させていただきます。
■掲示場所・貼付箇所
「首都圏などの大都市」「田舎などの地方都市」「駅前や商店街」「幹線道路沿いや住宅街」等により、訪問アプローチ手段が異なりますので、ご指定エリアの地域事情等をお聞かせ下さい。
※貼付箇所につきましては、弊社掲示交渉スタッフが当該ターゲットにアプローチをした際の先方とのコミュニケーションにて、現場での判断とさせていただきます。
■訪問アプローチ手段
【徒歩圏内】
駅周辺の徒歩圏内における、商店街や通行人の多い目立つ場所でのPR
【車両移動】
広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン!の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
「全国統一地方選挙」・「衆議院議員選挙」・「参議院議員選挙」・「都道府県知事選挙」・「都道府県議会議員選挙」・「東京都議会議員選挙」・「市長選挙」・「市議会議員選挙」・「区長選挙」・「区議会議員選挙」・「町長選挙」・「町議会議員選挙」・「村長選挙」・「村議会議員選挙」など、いずれの選挙にもご対応させていただいておりますので、立候補をご検討されている選挙が以下の選挙区エリアに該当するかご確認の上、お問い合わせいただけますようお願いいたします。
コメント