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裁判年月日 平成 8年 1月25日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平6(ワ)23642号
事件名 損害賠償請求事件
上訴等 控訴 文献番号 1996WLJPCA01250006
要旨
◆警備保障会社がホームセキュリティ契約に基づいて一階の厨房部分にのみ煙感知器を設置したが、夏季に、二階和室の電気掘ごたつのプラグとコンセントの接触部分からの出火によつて発生した火災につき、防火関係機器の設置方法とこれに関する説明について債務不履行ないし不法行為は認められないとされた事例
出典
判タ 918号150頁
参照条文
民法415条
民法709条
裁判年月日 平成 8年 1月25日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平6(ワ)23642号
事件名 損害賠償請求事件
上訴等 控訴 文献番号 1996WLJPCA01250006
原告 甲野太郎
同 甲野一郎
同 甲野春子
右三名訴訟代理人弁護士 久保田昭夫
同 大熊政一
被告 セコム株式会社
右代表者代表取締役 小峰顯一
右訴訟代理人弁護士 角田愛次郎
同 内藤潤
同 中川秀宣
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一 原告らの請求
一 被告は、原告甲野太郎(以下「原告太郎」という)に対し、金四〇〇〇万円及びこれに対する平成六年一二月一四日(訴状送達日の翌日)から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告甲野一郎(以下「原告一郎」という)及び原告甲野春子(以下「原告春子」という)に対し、各金一四〇〇万円及びこれに対する平成六年一二月一四日(前同)から支払ずみまで年六分の割合による金員をそれぞれ支払え。
第二 事案の概要
本件は、原告太郎が被告との間で原告一郎及び同春子夫婦の居住する住宅についてホームセキュリティに関する契約を締結していたところ、煙感知器が一階の厨房部分の一箇所にしか設置されていなかったという欠陥(不完全履行)のため、その後、右住宅二階で発生した火災を早期に感知できず、そのため早期発見と初期消火を遅らせ、原告らに対し別紙のとおりの損害を被らせたなどとして、原告太郎が債務不履行責任を理由として、原告一郎及び同春子が第三者のためにする契約の締結に基づく右同様の責任、又は不法行為責任を理由として、被告に対し、それぞれ損害賠償を求めたという事案である。
一 争いのない事実など
1 原告らは、平成三年七月四日当時、東京都葛飾区新小岩〈番地略〉所在の鉄筋コンクリート造三階建て住宅に居住しており、右住宅は、原告太郎居住部分(西側)と原告一郎及び同春子居住部分(東側。ただし、二階まで。以下「単に「原告一郎居住部分」という)から成る二世帯住宅である。
2 被告は、警備の請負及び保障に関する事業、警備及び安全に関する調査、指導、助言及び出版に関する事業、防火、防犯、防災、救急及び安全に関する設備、機器及びシステムの開発事業等を主たる目的とする会社である。
3 原告太郎は、平成三年七月四日、被告との間で、原告一郎居住部分について、ホームセキュリティ設備・機器の一括購入に関する契約及びホームセキュリティサービス契約を締結した(以下これらを「本件契約」という)。
4 被告は、本件契約に基づき、原告一郎居住部分について右設備・機器の設置工事をなし、右セキュリティサービスを継続して行っていたが、煙感知器は、一階の厨房部分の一箇所に設置しただけであり、二階には設置しなかった。
5 原告一郎居住部分では、平成六年七月一七日午前三時五八分頃に火災が発生したが(以下「本件火災」という)、この火災原因については、二階南側和室六畳間中央に設置されていた電気堀ごたつが、スイッチは切られていたものの、そのコード先端のプラグがコンセントに差し込まれたままの状態であったために、右接触部分から出火したものとされている(甲第一四号証、原告太郎の供述)。
本件火災の結果、原告一郎居住部分の二階部分が全焼し、一階部分が全損した上、外壁が一部損傷した(書証番号略)。
二 争点
1 被告による煙感知器設置についての欠陥の有無
(原告らの主張)
被告は、ホームセキュリティの専門家として、本件契約上、原告一郎居住部分の防犯及び防火と異常事態発生時の緊急対策等について万全の設備を施し、これが正常に機能するように万全の措置を講ずるべき債務を負っていたところ、右債務の履行に当たり、煙感知器については、前記のとおり一階の厨房部分にしか設置しなかったため、この欠陥(不完全履行)のため、二階南側和室からの出火を早期に感知することができず、そのため早期発見と初期消火を遅れさせ、本件火災により、原告らに対し別紙のとおり重大な損害を被らせた。本件において原告一郎居住部分の二階にも煙感知器が設置されていれば、その作動により、早期のボヤ段階で出火が発見され、そのため初期消火が成功し、原告らの損害のほぼ全部が発生せずに済んだはずである。
なお、原告太郎は、被告との間で本件契約を締結するに当たり、被告主張のように煙感知器を一階の厨房部分の一箇所に設置するだけで良い旨を了承したことは全くない。住居における火災の発生は、厨房部分に限られるわけではなく、電気系統のトラブルや煙草、ストーブの火の不始末等によって他の部屋や廊下等においても生ずるのであるから、煙感知器を厨房部分にさえ設置すれば足りるというものでは決してない。
現に、被告の同業他社である他の警備保障会社では、すべての部屋について火災感知器を設置するとした上での見積書を提出し、機器の性能や設置位置等について十分に説明した上で、顧客が不要と判断したものに限って設置しないこととし、その反面、不設置となった場所から出火したとしても、責任を負わないというような取扱いがされているのである。
(被告の主張)
被告がホームセキュリティに関する契約上の債務として万全の設備を設置すべき義務等を負担するとする原告らの主張は争う。
被告は、ホームセキュリティに関する機器の設置については、原告らに対し事前に機器の種類、設置個数を明示した見積明細書と設置位置をシンボルマークや写真で明示した図面等を提出してその内容を説明し、その了解を得た上で行っており、煙感知器についても、通常の設置例に従い、日常的に火気を取り扱う場所として、一階の厨房部分にだけ設置するということで了解を得ていたものである。
このことは、被告が右機器を設置してから本件火災が発生するまでの三年余の間、原告らから煙感知器の設置位置について何らのクレームがなかったことからも明白であり、被告には煙感知器の設置について何ら落度はない。
2 被告の告知・説明義務違反の有無
(原告らの主張)
被告は、一般消費者との間でホームセキュリティに関する契約を締結するに当たっては、その専門家としての立場から、消費者から特別な申出がなくとも、その真のニーズを見極めた上、これに応え得るよう十分な情報を提供し、分かりやすい説明を行うべき付随的義務を負っているものというべきところ、原告太郎との間で本件契約を締結し、煙感知器を含む防火関係の機器を設置するに際しては、どこにどのような機器をいくつ設置するかなどの具体的内容や防火関係の機器の設置上の重要なポイントについては全く説明しておらず、原告らの要望を正確に聞き出すための質問や、専門家としての提案、助言をしたりすることは一度もなかったのであり、その結果、煙感知器が一階の厨房部分の一箇所にしか設置されないことになったのであるから、被告には右告知・説明義務違反があったといわなければならない。
(被告の主張)
被告は、前記のとおり、原告らに対し、事前に機器の種類、設置個数及び設置位置等を明示した見積明細書及び図面を提出してその内容を説明したほか、取扱説明書を交付し、右見積明細書等の作成については、これに先立って、原告太郎居住部分については同原告の、原告一郎居住部分についての同原告の各立会いを得た上で、機器の設置位置について相談しながら行っており、また、原告太郎からは、防犯センサー及び非常ボタンの各追加設置について具体的な要望が出され、これに基づいてそのとおりの設置を行ったことからすれば、被告としては煙感知器を含む防火関係の機器の設置について必要な説明を尽くしており、原告らにおいてもその説明内容を十分理解していたものである。
したがって、被告には原告らの主張する告知・説明義務の違反はない。
3 原告一郎及び同春子に関する第三者のためにする契約の成否又は不法行為責任の成否
4 原告らの損害額の算定
第三 当裁判所の判断
一 煙感知器設置についての欠陥の有無
1 原告らは、まず、被告が煙感知器を原告一郎居住部分の一階厨房部分にしか設置しなかったことをもって本件契約の履行に当たっての欠陥(不完全履行)であった旨主張するので、この点について検討する。
2 前記「争いのない事実など」の項で判示した各事実と証拠(省略)を総合すると、以下の事実が認められる。
(一) 原告太郎は、平成三年五月下旬頃、原告らの居住する二世帯住宅について防犯、防火及び非常時の通報等についてセキュリティ設備を設置しようと考え、被告に対し右設置方を発注することにした。
(二) その後、被告の担当者である山口忠弘(以下「山口」という)は、原告ら宅を訪問し、原告太郎から、原告ら宅の平面図(甲八号証の一ないし三)のコピーの交付を得た上、原告らの案内に基づき、建物内部を見て回るとともに、窓、ドアや各部屋等について設置予定の機器(センサー)の種類、設置位置、取付後の外観や使用方法等の概要について説明した。
(三) その際、山口は、原告一郎居住部分について、原告一郎から、以前同宅の北側便所部分から泥棒に入られたことがあるので、この点の防犯をしっかりして欲しいこと及び同宅東側の窓については隣宅との間には人の入る隙間がないので、防犯関係の機器の設置は不要であるとの説明を受けた。
(四) 山口は、同年六月中旬頃、原告太郎に対し、第一回目の見積書を提出したが、原告太郎から、三階の窓について防犯センサーを追加設置するよう求められ、その旨の手直しをした同月一七日付け見積書(原告一郎居住部分に関するものが甲一号証である。)を提出し、その内容について原告太郎の了承を得た。
(五) これら見積書には、機器の名称と個数、単価等を記載して見積額を書いた「御見積明細書」と設置予定位置に機器のシンボルマークが書かれ、小さなシール写真を貼り付けた前記平面図のコピーが添付されており、これらによれば、原告一郎居住部分に設置される機器の種類、個数及び設置位置等が明らかにされており、煙感知器については一階の厨房部分の一箇所にのみ設置されることになっていた。
(六) その後、被告の工事担当者が原告ら宅において設置工事を実施したが、その直前において原告太郎からの申出により非常ボタンが一組追加されることになったほかは、前記見積どおりの設置がされた。そして、山口は、原告太郎に対し、各機器の取扱説明書等を交付した。
(七) 本件契約の代金額については、原告太郎は、山口に対し、自ら及びその経営する会社の両者が被告の株式を保有する株主であることなどを理由として株主割引による減額を求め、その結果、機器の購入代金について約八・数パーセントの減額を得た。
(八) 原告一郎居住部分に設置された煙感知器は、厨房部分の天井に取り付けられており、前記見積書添付の図面及び取扱説明書の記載内容からはもちろん、その露出型の形状からみても煙感知器と分かるものであり、これと同種の機器が他の部屋や廊下等に設置されているかどうかは容易に判別し得るようなものであった。
右設置時から本件火災発生時までの約三年余の間、原告らから被告に対して右設置にかかる機器の種類、個数及び設置位置等について何らかの意見が述べられたことは一度もなかった。
(九) なお、被告においては、家庭用セキュリティシステムに関しては詳細な営業マニュアルは必ずしも作成されてはいないものの、防火関係の機器としての煙感知器は、通常のプランニング例としては台所・厨房のように日常的に火気を使用する場所に設置する程度であり、顧客の具体的な要望や予算額との兼ね合いに応じ、さらに増加して他の部屋等にも設置する場合があるというような取扱いがなされている。
3 以上の認定事実に基づいて考えると、被告担当者山口は、本件契約の履行に当たり、原告ら宅の実地見分を行った上で、防犯、防火に関する機器の設置等について必要な説明を一通り行い、原告らの意見と要望を適宜取り入れながら、前記のような内容の見積明細書、図面及び取扱説明書を交付し、原告太郎及び原告一郎から、機器の種類、設置個数及び設置位置等の全般について了承を得た後、機器等の設置工事を行ったものであり、また、原告一郎居住部分について煙感知器を一階の厨房部分の一箇所にしか設置しなかったのは、日常的に火気を使用する場所に設置すれば足りるという被告の標準的取扱例に従ったものであり、この点について原告らから異議が出たことはなかったことが認められる。
右事実と一般の家庭において一年間を通じて日常的な火気の使用によって出火の可能性の最も高い場所が台所・厨房であると考えられること、防犯、防火及び非常時の通報等のセキュリティシステムを設置する場合、様々な機器を多数設置すればするだけその効果が高いといえるものの、一方で、家屋の美観を害し、機器の購入や設置工事に要する代金等がかさむことになるため、右設置には自ずと限度が生ずるものと考えられることなどに照らすと、被告が本件契約の履行に当たり原告一郎居住部分について煙感知器を一階の厨房部分の一箇所にのみ設置し、本件火災の出火場所となった二階の部屋にはこれを設置しなかったとしても、原告らから煙感知器の設置に関して特別の要望が出されなかった以上、被告としては防火関係の設備として通常備えるべき程度の機器等の設置を行ったものというべきである。
したがって、被告の右煙感知器設置の点について欠陥があり、不完全なものであったとすることはできないといわなければならない。
4(一) この点について、原告らは、被告はホームセキュリティの専門家として原告らに対しても万全の措置を講ずるべき債務を負っていたと主張し、その関係で被告のテレビ広告の内容等を指摘している。
しかしながら、被告が本件契約において本件火災の早期感知を可能ならしめるようにするために煙感知器の複数設置を含め万全の設備を施すべき債務を負っていたとすることは、被告のような総合警備保障会社においても、一般の取引と同様、個々の顧客との間の交渉により、具体的な見積書に基づいて双方の納得する代金と設備仕様の範囲内で機器等の販売・設置を行うという取引態様を採るものであることからすれば、原告らの右主張は、右取引当事者の採算性や経済的な判断を度外視したものであって、被告に対してのみ一方的に過重な債務を負わせるものというほかなく、そのままでは採用できないものである。
原告らは、さらに、煙感知器一個の単価がさほど高額でないことを取り上げて、原告らとしては煙感知器を複数設置してもらって良かった旨主張し、原告太郎も同旨の供述をしている。
しかしながら、原告らにおいても、被告から提出を受けた前記見積明細書及び図面によれば、煙感知器の機器の単価が一個当たり金一万八〇〇〇円であり、それが一階の厨房部分にのみ設置される予定になっていたことは容易に分かっていたはずのものであるから、右煙感知器の機器の価格が廉価なものであるとして複数設置を望んだというのであれば、前記認定のような代金額の値引きに拘泥せずに、山口に対し右追加設置の申出をすべきであったといわなければならず、原告らの右主張を採用することはできない。
(二) また、原告らは、住居内における火災の発生は厨房部分に限られるものではなく、電気系統のトラブルや煙草、ストーブの火の不始末等によっても生ずるから他の部屋や廊下等にも煙感知器を設置すべきであり、特に、原告らは前記実地見分の際に山口に対し本件火災の出火場所となった電気堀ごたつの存在を指示していたのであるから、二階の部屋にも煙感知器を設置すべきであったと主張し、原告太郎もこれに沿う供述をする。
しかしながら、住居内における出火原因についての原告らの一般的な主張はなるほどそのとおりではあるけれども、本件での問題は、ホームセキュリティに関する個々の具体的な契約において、防火関係の機器をどのような場所にいくつ設置するかについていかなる合意がなされたかということであるところ、本件における右の具体的事情はこれまでに判示したとおりであり、原告らにおいても前記見積明細書及び図面に示されたとおりの機器の設置内容をもって了承したものというべきであるから、被告が二階の部屋にも煙感知器を設置すべきであったとすることはできない。
また、電気堀ごたつの存在についても、山口が原告らの指示説明や前記平面図のコピーの記載内容からこれを認識していたとしても、一般に、家庭用電気器具又は暖房用器具自体は住居内の多数の部屋等に設置されるものであって、電気堀ごたつの存在だけから、右器具類のある部屋等には必ず防火関係の機器を設置すべきであったとすることは相当でない。
したがって、原告らの前記主張は採用できない。
(三) さらに、原告らは、被告の同業他社においては、すべての部屋に火災感知器を設置するとした上での見積書を提出し、顧客の判断で不要なものを削るというような取扱いがされていると主張し、これに沿う証拠として、甲一七ないし二二号証等を提出し、原告太郎も同旨の供述をする。
しかしながら、一方で、乙七号証によると、訴外綜合警備保障株式会社におけるホームセキュリティの一つのタイプでは、火災関係のセンサーの標準的な設置個数は一つとされており、顧客の要望に応じて右機器を追加設置することにしていることが認められ、被告の同業他社において原告ら主張のような取扱いが果して一般的なものとして行われているかどうかは疑問の余地があり、原告らが本訴提起後に見積を依頼したケースだけを取り上げて、前記認定にかかる被告による機器の設置に関する見積方法及びこれに基づく設置内容を不当とすることはできないから、原告らの右主張は採用できない。
5 以上によると、被告には原告一郎居住部分における煙感知器の設置について原告ら主張のような欠陥があったとは認められない。
二 被告の告知・説明義務違反について
1 次に、原告らは、被告は本件契約の締結に当たり原告らに対し煙感知器が一階の厨房部分にしか設置しないことについて十分な告知・説明を行わなかった旨主張する。
2 そこで、検討するに、前記一2で認定した事実関係によると、山口は、原告ら宅での実地見分の際に、原告らに対し、窓、ドアや各部屋等について設置予定の機器の種類、設置位置、取付後の外観や使用方法等の概要についての説明を行い、原告らから聞いた要望をふまえて、前記のような内容の見積明細書及び図面を作成して交付し、また、その手直しもしたこと、そして、右図面は、設置予定位置に機器のシンボルマークと小さなシール写真を張り付けたものであり、これを見れば、どこにどのような機器がいくつ設置されるのかは明らかであったこと、一方、原告らにおいても、実際の設置工事までの間に、被告の山口ら担当者に対し右見積に対していくつか機器の追加設置を要望するなどしていたが、防火関係の機器については特に申し出なかったことが認められ、さらに、原告太郎自身も、その尋問において、山口から右見積明細書及び図面の交付を受けた際、その記載内容に目を通していたことを自認しているのである(尋問調書三七、三八項)。
以上のような事実に基づいて考えると、被告が本件契約の締結に当たり原告らに対して行った機器の設置等に関する説明に不十分なところがあったとは認められず、原告らにおいても、煙感知器を含む防火関係の機器の設置内容については十分理解していたものということができる。
3 したがって、被告に右告知・説明義務違反があったとする原告らの前記主張は採用できない。
三 以上によると、被告による煙感知器の設置について欠陥(不完全履行)があり、又は、告知・説明義務違反があったとする原告らの主張はすべて採用できないことに帰着する。
そして、これまでに判示したところからすると、被告には右煙感知器の設置について過失があったものとも、また、告知・説明義務を怠ったものとも認められないから、原告一郎及び同春子の不法行為責任に関する主張もまた、理由がないというべきである。
四 よって、原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも棄却を免れないものであり、主文のとおり判決する。
(裁判官安浪亮介)
別紙
原告ら主張の損害
(原告らの被った総損害額)
一 原告甲野太郎分
1 内部造作工事、外壁・諸設備改修工事費 金九一六七万円
2 セコムホームセキュリティ設置工事費 金九五万七五五〇円
3 焼跡解体処理工事費
金二七一万九二〇〇円
(合計金九五三四万六七五〇円)
二 原告甲野一郎分
1 動産(家財)損害額
金二〇九五万八〇〇〇円
2 慰謝料 金一〇〇〇万円
(合計金三〇九五万八〇〇〇円)
三 原告甲野春子分
1 動産(家財)損害額
金二七九四万円
2 慰謝料 金一〇〇〇万円
(合計金三七九四万円)
(原告らの本訴請求額[一部請求])
一 原告甲野太郎分
金四〇〇〇万円
ただし、前記一1の内金三六三二万三二五〇円、同2の九五万七五五〇円及び同3の金二七一万二〇〇〇円の合計額。
二 原告甲野一郎分
金一四〇〇万円
ただし、前記二1の内金一四〇〇万円
三 原告甲野春子分
金一四〇〇万円
ただし、前記三1の内金一四〇〇万円
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