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裁判年月日 平成16年10月21日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平１５（ワ）２００６６号・平１３（ワ）２２８８６号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2004WLJPCA10210003
要旨
◆テレビショッピング番組で顔写真や名前を無断放送されたとして、デザイナーないしイベントプロデューサーである原告が、テレビショッピングの企画・運営会社と通信販売業者に対して損害賠償を請求した事案で、肖像権が侵害された限度で共同不法行為の成立を認めて、慰謝料請求が一部容認された事例
出典
新日本法規提供
参照条文
民法７０９条
民法７１０条
裁判年月日 平成16年10月21日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平１５（ワ）２００６６号・平１３（ワ）２２８８６号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2004WLJPCA10210003
平成１３年（ワ）第２２８８６号 損害賠償請求事件（以下「第１事件」という。）
平成１５年（ワ）第２００６６号 損害賠償請求事件（以下「第２事件」という。）
第１事件及び第２事件原告 山本寛齋
上記訴訟代理人弁護士 西内岳
上記訴訟復代理人弁護士 上原恭典
第１事件被告 日美株式会社
上記代表者清算人 Ａ
第２事件被告 株式会社ジェイシークリエイティヴ
上記代表者代表取締役 Ｂ
上記訴訟代理人弁護士 佐藤公輝
同 中西友見
主 文
１ 被告らは、原告に対し、それぞれ３０万円及びこれに対する平成１３年５月１日から支払済みまで年５分の割合による金員を支払え。
２ 原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
３ 訴訟費用は、これを６７分し、その１を被告らの、その余を原告の負担とする。
４ この判決は、第１項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第１ 請求
１ 第１事件
被告日美株式会社（以下「被告日美」という。）は、原告に対し、２０００万円及びこれに対する平成１３年５月１日から支払済みまで年５分の割合による金員を支払え。
２ 第２事件
被告株式会社ジェイシークリエイティヴ（以下「被告ジェイシークリエイティヴ」という。）は、原告に対し、２０００万円及びこれに対する平成１３年５月１日から支払済みまで年５分の割合による金員を支払え。
第２ 事案の概要
本件は、原告が、原告の氏名、顔写真がテレビショッピング番組において無断で使用されたとして、これに関係した被告日美（第１事件）及び被告ジェイシークリエイティヴ（第２事件）に対し、不法行為に基づき損害賠償を請求している事案である。
１ 前提となる事実（いずれも当事者間に争いがない。）
(1) 当事者
ア 原告は、国内外で活動する著名なファッション・デザイナーないしイベントプロデューサーである。
イ 被告日美は、テレビショッピングの企画、運営等を業としていた株式会社であるが、平成１４年６月１８日解散した。
ウ 被告ジェイシークリエイティヴは、通信販売を主たる業とする株式会社である。
(2) 本件番組の放映
平成１３年１月ころから同年４月末ころにかけて、被告日美が企画するテレビショッピング番組において、被告ジェイシークリエイティヴ販売のオーストリッチバッグ（以下「本件バッグ」という。）の通信販売の広告がされたが、その際、景品として本件バッグ購入者に無償で贈られる時計（「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」というブランド名の腕時計。以下「本件時計」という。）の説明として、デザイナーとして原告の氏名が音声ないしテロップで表示され、更に番組によっては原告の顔写真も表示された。これらの番組（以下、これらの番組を総称して「本件各番組」という。）は、日本テレビ放送網株式会社ほか６社の放送事業会社の各ネットワークを通じ、上記期間中、数十回にわたり全国に放映された。
２ 原告の主張
(1) 原告の氏名及び肖像の無断使用
原告が代表取締役を務める株式会社山本寛齋事務所（以下「原告事務所」という。）は、原告デザイン商品の管理等を行っているところ、内海産業株式会社（以下「内海産業」という。）との間で、「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」のブランド名を使用して、時計等の商品をセールスプロモーション市場（販売促進用商品市場）において製造販売する許諾を与え、内海産業はこれに対しロイヤリティを支払う旨のライセンス契約を締結している。そして、同ライセンス契約において、内海産業は、その販売先が行う「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」商品に関する広告及び告知について、その内容を事前に審査し、原告事務所の了承を得なければならないとされ、また、「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」商品の製造販売に際して、「ＤＥＳＩＧＮＥＤ ＢＹ ＫＡＮＳＡＩ ＹＡＭＡＭＯＴＯ」の付帯表記を用いることが許諾されているが、その場合にも、「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」のブランド名とともに使用しなければならないものとされている。
したがって、原告は、「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」商品の説明や広告について、業者に対し、原告の氏名及び肖像の使用を許諾していることはなく、もとより、被告らから、本件時計を販売促進用商品として使用するについて、原告の氏名及び肖像の使用許諾を求められたり、これを承諾したこともない。
(2) 被告らの不法行為責任
ア 被告ジェイシークリエイティヴは、本件バッグをテレビショッピング番組において通信販売することを企画し、原告の氏名及び肖像を無断使用して本件各番組を制作し、これを被告日美が企画・制作する複数のテレビショッピング番組の中で放映した。
被告日美は、テレビ放送枠を購入し、その電波料と番組制作費を協賛各社に割り振り徴収する方法で、テレビショッピング番組を制作、放送していたが、同様の方法で本件各番組を制作、放映した。
したがって、被告らは、共同して本件各番組を制作、放映したものであるから、原告の氏名及び肖像の無断使用につき、共同して不法行為責任を負う。
イ 仮に、被告日美が本件各番組の企画、制作、放映に関与せず、テレビショッピング番組の枠を提供し協賛金を受領していただけであったとしても、一般消費者は、被告日美のテレビショッピング番組で扱われた商品は被告日美の商品であると信じて購入するものであること、商品も被告日美のテレビショッピング番組で宣伝されることによって、一般消費者に対する信頼度を高められること、被告日美は、その実績、知名度を利用して、協賛各社を積極的に募集し、被告日美の受注機能、インフラを利用させていたことからすると、被告日美は、被告ジェイシークリエイティヴの上記不法行為を幇助したことになり、やはり不法行為責任を負う。
(3) 損害
原告は、著名なファッション・デザイナーないしイベントプロデューサーであり、その氏名及び肖像は、人格的価値とは別個の経済的価値、即ちパブリシティ権を有するところ、本件各番組によって原告の氏名、肖像が無断で商業的に使用されたことにより、原告のパブリシティ権が侵害され、その財産的損害は１５００万円を下らない。
また、原告は、自己の氏名及び肖像が無断で商品の宣伝に利用されたことで、肖像権等の人格的利益が侵害され、多大な精神的苦痛を被ったのであり、これを慰謝するための慰謝料は５００万円を下ることはない。
(4) よって、原告は、被告日美及び被告ジェイシークリエイティヴに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、それぞれ損害金２０００万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成１３年５月１日から支払済みまで民法所定の年５分の割合による遅延損害金の支払を求める。
３ 被告日美の主張
被告日美は、テレビショッピング番組の主催会社であるが、番組枠内の時間を協賛会社に切り売りし、協賛会社から協賛金を得ていただけである。したがって、本件各番組の企画、制作、放映は被告ジェイシークリエイティヴが行ったのであって、被告日美は関与しておらず、その内容を確認もしていない。
４ 被告ジェイシークリエイティヴの主張
(1) 本件各番組は、被告日美が企画し、株式会社大広が制作したものである。
被告ジェイシークリエイティヴは、本件バッグの販売業者として、被告日美に対し、番組制作費、放送料等を支払って本件バッグの広告宣伝を依頼したにすぎず、本件各番組の企画、制作、放映を行っていない。
(2) 本件時計は、商品販売促進のための景品として使用されることを目的に製造、販売されたものであるところ、原告は、本件時計をデザインし、その裏側にローマ字で「ＫＡＮＳＡＩ ＹＡＭＡＭＯＴＯ」と刻み込むことを許諾していた。また、原告は、本件時計の製造業者又は総販売元から氏名使用許諾料を取得していたので、本件時計の購入価格には、既に氏名使用料が含まれていた。したがって、本件時計の説明のため原告の氏名や写真を使用することは、本件時計の性質上当然に予定されていたものであって、原告はこのことを承諾していたものというべきである。そうすると、本件各番組において本件時計の説明のため原告の氏名や顔写真を表示したことが、原告の氏名、肖像の権利を侵害することにはならない。
第３ 当裁判所の判断
１ 本件紛争に至る経緯
前記前提事実に関係証拠（甲１ないし４、乙２、丙１、２、５、被告ジェイシークリエイティヴ代表者、株式会社大広に対する平成１５年２月１３日付申立及び同年３月３１日付申立に係る各調査嘱託の結果並びに関係箇所に掲記の各証拠）によれば、次のとおりの事実が認められる。
(1) 本件時計について
ア 原告が代表取締役を務める原告事務所は、原告デザイン商品の管理等を行っていたところ、平成１１年１２月１５日、内海産業との間で、次の内容のライセンス契約を締結した（甲１５）。
（ア） 原告事務所は、内海産業に対し、「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」のブランド名を使用して、国内のセールスプロモーション市場（販売促進用商品市場）において、時計、Ｔシャツ、タオル等の商品を製造、販売することを許諾し、内海産業は、これに対しロイヤルティを支払う。
内海産業は、これら商品をセールスプロモーション市場を目的とする者以外に販売してはならない。
（イ） 内海産業は、商品案を修正ができる段階において、原告事務所に対し報告し、原告事務所が承認したものについてのみ製造、販売をすることができる。
内海産業は、上記商品の製造、販売に際し、「ＤＥＳＩＧＮＥＤ ＢＹ ＫＡＮＳＡＩ ＹＡＭＡＭＯＴＯ」の付帯表記を用いることができるが、これは「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」というブランド名とともに使用しなければならない。
（ウ） 内海産業は、原告のイメージ尊重に留意するとともに、上記商品の広告計画内容及び広告原稿原案（カタログを含む）を事前に原告事務所に提出し、原告事務所の了承を得る。
内海産業は、その販売先が行う上記商品に関する広告及び告知について、その内容を事前に審査し、原告事務所の了承を得なければならない。
イ 内海産業は、上記ライセンス契約に基づき、「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」のブランド名を付した本件時計を製造し、これをセールスプロモーション市場において販売する目的で、自社作成の商品カタログに掲載した。
本件紛争発生後に作成された上記商品カタログ平成１３年春号（ご販売のお手伝い、甲１７）には、本件時計について、その単価が３９８円であるとともに、その写真や原告の顔写真が掲載された上、「「ボディマックス」ブランドの製品は原告事務所のデザイン指導に基づき製造されたものです。「ボディマックス」ブランド商品はＳＰ用ライセンス契約となっておりますので、店頭販売等は禁止されております。又、山本寛齋顔写真のご使用は禁止されております。オリジナル印刷物を作成される際は必ず事前にご連絡下さい。」と掲載されていた。また、内海産業から「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」商品を購入していた一次問屋の株式会社丸正が配布した内海産業作成の平成１３年春号の商品パンフレット（プレミアムマガジン ２００１年春号、丙４）にも、本件時計について、本件時計の写真のほか、原告の顔写真が掲載された上、同様の記載がされていた。なお、本件紛争発生前に内海産業が作成した平成１２年夏号の商品カタログ（プレミアムマガジン ２０００年夏号、丙３）には、本件時計と原告の顔写真は掲載されていたが、上記のような記載はなかった。また、本件時計を広告したり告知したりする方法については、上記パンフレットには何も記載されていなかった。
ウ 被告ジェイシークリエイティヴは、平成１２年夏ころ、被告日美の主催するテレビショッピング番組を利用して本件バッグを通信販売することを計画し、その販売促進のために購入者に無償で一定の商品（いわゆるおまけの景品）を交付しようと考え、本件時計を上記景品とすることを決めた。
そして、平成１２年１２月ころ、二次問屋の総和株式会社から、本件時計を１個５００円で１０００個ないし２０００個購入した。その際、総和株式会社から、本件時計の広告や告知方法について説明を受けたり、何らかの指示を受けたことはなかった。
(2) 本件各番組の制作について
ア 被告ジェイシークリエイティヴは、平成１２年夏ころ、被告日美に対して、本件バッグのアピール点や景品として本件時計を付ける旨を記載した商品企画書を送付して、本件バッグのテレビショッピング番組の制作を依頼した。
イ 被告日美主催のテレビショッピング番組は、広告代理店である株式会社大広がテレビ局から購入した番組枠を被告日美が一括購入し、協賛する顧客にこれを商品宣伝のため利用させて、顧客から番組の放映に要する放映料、番組制作費等を協賛金として徴収するというものであり、この協賛金の徴収を被告日美に代わって株式会社大広が行い、商品販売代金も被告日美側で一旦受領して顧客に支払う方式で行われていたところ、被告日美は、株式会社大広に本件各番組の制作業者の選定を依頼し、株式会社大広が選定した業者が本件各番組を制作することとなった。
ウ 本件各番組の収録には、被告ジェイシークリエイティヴの代表者であるＢ（以下「Ｂ社長」という。）、被告日美の担当者のＣ（以下「Ｃ」という。）が立ち会い、番組内容を検討して、その加筆、訂正等の意見を述べた上、平成１２年９月ころ、原告の顔写真を使用しないで本件各番組のうち一部の番組の収録が行われた。その後、Ｂ社長とＣが話し合った結果、景品である本件時計の説明方法として、原告の顔写真を付けた方が原告デザインであることが分かるということとなり、Ｂ社長が、総和株式会社の関係者に相談したところ、同関係者から、総和株式会社の仕入れ先である株式会社丸正がカタログに掲載されている写真なら使用してもよいと述べている旨の連絡を受けた。そこで、平成１２年１１月ころ、平成１２年夏号の商品カタログ中の原告の顔写真を借用し、これを番組の中に挿入して、本件各番組のうち一部の番組を収録した。
エ 本件各番組は少なくとも５種類（１８７－Ｓ、１８８－Ｓ、１８９－Ｓ、１９０、ＪＣ－１ＳＹ）制作されたが、そのうち原告の顔写真を使用した番組は３種類（１８８－Ｓ、１８９－Ｓ、ＪＣ－１ＳＹ）であった。
(3) 本件各番組の内容
放映された本件各番組のうち一部の番組の内容等は次のとおりであり、他の放映された番組もほぼ同様の内容であった。
ア テレビ局 テレビ東京
放送日時 平成１３年４月１０日
番組名 モーニングテレショップ
内容 Ｂ社長が、「で、もう一つ、山本寛齋さんデザインのこの時計なんですけれども、この時計も今回おつけしてお届けいたします。」と述べ、「「山本寛齋」デザイン オーストリッチ腕時計」とのテロップが数秒間表示された。また、番組の最後で、ナレーターが再度本件バッグを紹介した際、「山本寛齋デザイン時計付き」とのテロップが数秒間表示された。
（甲５の１、２）
イ テレビ局 広島ホーム
放送日時 平成１３年４月１１日
番組名 お買得品満載 テレビショッピング
内容 Ｂ社長が、「今回、山本寛齋さんデザインの時計、それに私どもの本オーストリッチの皮のベルトをつくりました。このオリジナル時計、これも今回はプレゼントいたします。」と述べ、「山本寛齋デザイン時計」とのテロップ及び本件時計の映像の脇に小さな原告の白黒顔写真が数秒間表示された。
（甲６の１、２）
ウ テレビ局 三重テレビ
放送日時 平成１３年４月１７日
番組名 お買得品満載！テレビショッピング
内容 Ｂ社長が、「もう１つだめ押しで、山本寛齋さんデザインの時計に私どもの本オーストリッチのベルトをつけました。この時計もおつけいたします。」と述べ、「山本寛齋デザイン時計」とのテロップが数秒間表示された。
（甲７の１、２）
エ テレビ局 千葉テレビ
放送日時 平成１３年４月２２日
番組名 うささの通販最前線！！
内容 Ｂ社長が、「しかも、こちらの時計。これ、山本寛齋さんデザインの時計にですね、私どものオーストリッチの、本オーストリッチです、ベルトをつけました。こちらの時計もプレゼントいたします。」と述べ、「「山本寛齋」デザイン オーストリッチ腕時計」というテロップが数秒間表示され、引き続き、出演者が、「山本寛齋さんデザインの時計までついて、それで８万８０００円。」と述べ、番組の最後で、再び本件バッグを紹介した際、「山本寛齋デザイン時計付き」とのテロップが数秒間表示された。
（甲８の１、２）
オ テレビ局 不詳
放送日時 不詳
番組名 日本橋・日美特選テレビショッピング！！
内容 Ｂ社長が、「しかも今回はですね、山本寛齋デザインのですね。本オーストリッチのベルト仕上げの、このデザインウォッチ。これもプレゼントしたいと思います。」と述べ、画面一杯に原告の白黒顔写真が数秒間表示された後、これが小さくなって、本件時計の映像の脇に表示され、「「山本寛齋」 オーストリッチ腕時計」とのテロップが数秒間表示された。また、番組の最後で、ナレーターが再度本件バッグを紹介した際、「山本寛齋デザイン時計」とのテロップが数秒間表示された。
（乙１、３）
(4) 本件紛争の発生
本件各番組は、平成１３年１月初めころから同年４月末ころにかけて、日本テレビ放送網株式会社ほか６社の放送事業会社の各ネットワークを通じ、数十回にわたり全国に放映された。
ところが、平成１３年３月１９日、内海産業から被告らに対し原告の写真を使用してはならない旨の抗議がされたため、被告ジェイシークリエイティヴ、被告日美、株式会社大広は、検討した結果、原告の写真を削除することを決め、被告日美がビデオテープを回収して、原告の写真を削除する編集作業を行ったが、この作業に約１か月を要し、原告の顔写真が入った番組が放送されなくなったのは、同年４月１７日以降のことであった。
なお、内海産業は、被告らに対し、原告の氏名の使用を禁止する旨の抗議をしたことはなかった。
２ 権利侵害の有無
(1) 原告氏名の使用について
ア 原告は、原告の氏名が本件各番組おいて無断で使用されたと主張する。
イ 確かに、前記１のとおり、本件各番組において、「山本寛齋さんデザインの時計」等と述べられたり、「山本寛齋デザイン時計」等のテロップが表示されたりする方法で、原告の氏名が表示されており、この使用について、被告らが原告ないし原告事務所に許諾を求めたり、原告ないし原告事務所がこの使用について明示の許諾をした形跡はない。
ウ しかし、前記１のとおり、本件時計は、原告事務所において「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」のブランド名が付され、「ＤＥＳＩＧＮＥＤ ＢＹ ＫＡＮＳＡＩ ＹＡＭＡＭＯＴＯ」の付帯表記を用いて国内のセールスプロモーション市場（販売促進用商品市場）で販売することを目的に製造されたものであり、原告事務所とのライセンス契約に基づき本件時計を製造した内海産業のパンフレットにも、原告の顔写真を掲載した上、ボディマックスブランドの製品は原告事務所のデザイン指導に基づき製造されたものと記載されていた。また、本件時計の内海産業の売買単価は３９８円であり、被告ジェイシークリエイティヴが中間業者を介して購入した本件時計の単価は５００円であったことからすると、本件時計は、時計としての価値には乏しい安価な物であると考える外ない。そうすると、本件時計のセールスプロモーション市場での価値は、これが著名なファッション・デザイナーである原告ないし原告事務所のデザインによるものであるという点にあるということができ、原告事務所も、この点をセールスポイントにしていたものと推認されるから、本件時計を購入した業者が原告ないし原告事務所のデザインである旨の説明ないし宣伝をすることは、本件時計の性質上、当然に予定されていたものといわざるを得ない。
また、内海産業は、本件時計に「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」のブランド名が付されたことについて、原告事務所に対してライセンス料を支払っており、このライセンス料を含んだ販売価格で被告ジェイシークリエイティヴが本件時計を購入したものと推認されるから、被告ジェイシークリエイティヴは実質的に原告事務所に対するライセンス料を負担していたものということができる。
そうすると、原告は、被告ジェイシークリエイティヴ等の本件時計の購入者がセールスプロモーション市場において本件時計を景品として使用する際に原告の氏名をそのデザイナーとして表示することを、黙示に承諾していたものと認めるのが相当である。現に、前記１のとおり、本件各番組の放送について平成１３年３月１９日に抗議が述べられ、これは原告ないし原告事務所の意向に沿ったものとうかがわれるが、原告の氏名使用を不可とするような抗議はされていなかったし、その後作成された内海産業作成のパンフレットにおいても、原告顔写真の使用禁止の文言が挿入されたが、氏名の使用を禁止する旨の文言は挿入されていない。
エ したがって、原告の上記主張は採用することができない。
オ なお、前記１によると、原告事務所と内海産業とのライセンス契約において、内海産業の販売先の商品の宣伝については、内海産業が事前に審査し、原告事務所の了承を得ることと規定されているが、上記契約はあくまで原告と内海産業との間の契約であって、被告ジェイシークリエイティヴを拘束するものではない上、「内海産業は、原告のイメージ尊重に留意するとともに、上記商品の広告計画内容及び広告原稿原案（カタログを含む）を事前に原告事務所に提出し、原告事務所の了承を得る。」とも規定されていることからすると、原告のイメージの維持に留意した規定であって、「原告のデザイン」等の単純な事実の表記を規制する趣旨は含まないものと考えられる。したがって、上記規定は、上記判断を左右するものではない。
(2) 原告顔写真の使用について
ア 原告は、原告の顔写真が本件各番組において無断で使用されたと主張するところ、前記１のとおり、被告らは、原告ないし原告事務所の明示の承諾なく本件各番組で原告の顔写真を使用したものと認められる。また、前記１の諸事情を考慮しても、原告氏名の場合とは異なり、本件時計の前記性質から、原告デザインであることを説明するため原告の顔写真を使用することが当然に予定されていたということもできないのであって、原告顔写真の使用について、原告ないし原告事務所の黙示の承諾がされていたと認めることもできない。
イ ところで、自然人は、その人格権に基づき、正当な理由なく、その肖像を第三者に使用されない権利、即ち肖像権を有するというべきであるが、著名人の肖像については、商品の宣伝、広告に使用したり、商品そのものに付したりすることにより、当該商品の宣伝、販売促進上の効果を有すること、即ち顧客吸引力を備えているものと考えられるので、この肖像の有する経済的利益ないし価値を支配する権利を特にパブリシティ権ということができる。
そこで、まず、原告のパブリシティ権侵害の有無を検討するに、原告顔写真は、本件時計が本件バッグの景品として贈られること及び本件時計が原告のデザインによるものであることを説明する音声や文字による表示並びに本件時計の映像と併せて、数秒間放映されたというものであり、また、この写真は、「ＢＯＤＹ ＭＡＸ」の商品カタログに掲載されていた原告の白黒顔写真を借用したものであり、加えて、上記態様の原告氏名の表示は原告ないし原告事務所の承諾を受けていたことは前示のとおりである。
そうすると、本件各番組における原告の顔写真の使用は、本件時計が原告のデザインである旨の説明を補完し、原告を特定するという以上の効用はなく、少なくとも、これが独立した経済的価値ないし利益を有するということは困難であるから、これによって原告の肖像の有する経済的利益の侵害、即ち、パブリシティ権の侵害があったということはできない。
次に、原告の肖像権侵害の有無を検討するに、原告の顔写真の使用について原告ないし原告事務所の同意が得られていないことは前示のとおりであり、他に特段の事情もうかがわれないので、原告の肖像権が侵害されたものと認めるのが相当である。
ウ 以上のとおり、原告のパブリシティ権侵害の事実は認められないが、原告の肖像権の侵害の事実は認められるので、この点について、不法行為が成立するというべきである。
なお、仮に原告の肖像が持つ顧客吸引力の存在が否定できないとしても、本件においては、これは肖像権侵害における慰謝料額算定の際に考慮すれば足りるというべきである。
３ 被告らの責任
前記１のとおり、本件各番組は、被告日美が主催するテレビショッピング番組を構成するものであり、被告日美がテレビ局から購入した番組枠を協賛する顧客である被告ジェイシークリエイティヴに利用させ、同被告から放映料、番組制作費等を徴収していたものである。また、被告ジェイシークリエイティヴは、被告日美に対し、商品企画書を送付して本件各番組の制作を依頼し、これに基づき本件各番組が制作されたものであり、本件各番組の収録には、被告ジェイシークリエイティヴの代表者であるＢ社長、被告日美の担当者のＣが立ち会い、番組内容を検討してその加筆、訂正等の意見を述べ、Ｂ社長は本件各番組に出演していた。そして、原告顔写真を使用しないで本件各番組のうち一部の番組の収録が行われた後、Ｂ社長とＣが話し合った結果、原告の顔写真を挿入することを決め、Ｂ社長が、本件時計の購入先である総和株式会社の関係者に相談した上、商品カタログに掲載されていた原告顔写真を借用し、これを番組の中に挿入して、本件各番組のうち一部の番組を収録したものである。
上記事実によれば、本件各番組は、被告ジェイシークリエイティヴと被告日美が共同して制作したものと認めるのが相当であり、また、原告顔写真の使用も、被告ジェイシークリエイティヴと被告日美が相談して決めたことであるから、原告の肖像権侵害について、被告らは共同して不法行為責任を負うべきである。
４ 損害
本件各番組における原告顔写真の放映の仕方、放映期間その他諸般の事情を総合すると、原告は、本件各番組において原告顔写真が放映され、原告の肖像権が侵害されたことにより、３０万円に相当する精神的損害を被ったと認めるのが相当である。
５ 結論
以上の次第であるから、原告の被告らに対する本訴各請求は、被告らに対し、それぞれ損害金３０万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成１３年５月１日から支払済みまで民法所定の年５分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がありこれを認容すべきであるが、その余の請求は理由がなく棄却を免れない。
よって、主文のとおり判決する。
（裁判長裁判官 宇田川基 裁判官 石原直弥 裁判官 室橋秀紀）
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Q&A【9】ポスター貼り替え期間の指定はできますか？貼りっぱなしではないですか？
Q&A【10】街頭ポスターの貼付交渉(新規掲示)の実績や事例はありますか？
■政治活動における広報支援について
Q&A【11】「ドブ板選挙プランナー」とはどのようなお仕事ですか？
Q&A【12】「ポスタリング」とはどのようなサービスですか？
Q&A【13】政治活動等の特殊な業界についてのポスター掲示交渉は難しいですか？
Q&A【14】政治活動用の街頭ポスター(二連|三連)貼りをお願いしたいのですが、特定政党の支援は可能ですか？
Q&A【15】政治活動におけるポスターについて公職選挙法や政治資金規正法等の知識はありますか？
Q&A【16】街頭で無料の「ウィン！ワッポン」をよく見かけますが、これで選挙の勝率が上がりますか？
Q&A【17】二連ポスターや三連ポスター製作前に「弁士の相手」のご提案もしてくれますか？
Q&A【18】ポスター「掲示責任者代行」とはどのようなものでしょうか？
Q&A【19】選挙妨害やその他クレーム対応等の代行も可能でしょうか？
Q&A【20】政治活動(選挙運動)における広報支援プランはどのようなものがありますか？
■営業専門会社による広報PR支援について
Q&A【21】飛び込み訪問、戸別訪問、挨拶回り代行等、ポスター貼り以外でもお願いできますか？
Q&A【22】飲食店や実店舗等の店内やトイレ等にポスターを貼ったり、ビジネスカード設置、チラシ配布等は可能ですか？
Q&A【23】全国どこでもポスター貼りが可能なのですか？
■ご検討中の方々に
Q&A【24】お問い合わせについて
Q&A【25】資料をダウンロード
Q&A【26】ノウハウ・テクニックを大公開！
■ご依頼(お申し込み)の前に
Q&A【27】お申し込みの流れ
Q&A【28】ご用意いただきたいもの
■ご依頼(ご契約)の後に
Q&A【29】進捗報告について
Q&A【30】お友達ご紹介キャンペーンについて
【ポスター【制作前の】候補予定者様】のメニューです。
「政治活動用ポスターのデザイン」は、こちらです。
公職選挙法規定の法的審査(レギュレーションチェック)対応済みの、個人ポスター、２連ポスター、３連ポスター等のデザインを制作！
「弁士相手探しマッチング」は、こちらです。
「探して、交渉して、お隣りへ！」理想の有名人や著名人の弁士相手を探して、地域有権者に対して認知度拡大の相乗効果を狙う！
「ポスターの掲示責任者代行」は、こちらです。
【全国対応】ポスターを掲示した選挙区からのクレーム対応・妨害等の「総合窓口」として、ポスター掲示責任者の代行をいたします。
【ポスター【制作後の】候補予定者様】のメニューです。
政治活動期間における「どぶ板専門！ポスター貼り(掲示交渉)代行」は、こちらです。
【稼働の流れ】
①新規ご挨拶回り|戸別訪問代行|握手代行
選挙区(指定エリア)の有権者(民家・飲食店・その他施設)に対して、候補予定者に代わって選挙ドットウィン！が直接ご訪問致します。
②名刺|ビラ|リーフレット等の手渡し配布
候補予定者と有権者を繋ぐため、名刺・ビラ・政策レポート・討議資料・リーフレットなど活動報告資料の直接手渡し配布を致します。
③留守宅|候補者PR資料ポスティング投函
ご訪問先がご不在の場合には、配布物を郵便受け等にポスティング投函致します。(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率！)
④政治活動ポスター貼り(新規掲示交渉！
【完全成果報酬】地獄のドブ板活動に必須となる、政治活動用ポスター貼り(新規掲示交渉代行！)(貼れた分だけの枚数課金となります)
⑤掲示(貼付)後のフォロー|クレーム対応
ポスター掲示(貼付)完了後における掲示許可承諾者へ、フォローやクレーム対応等のストレスな部分は選挙ドットウィン！が致します。
所属政党の「党員募集獲得代行」、政治団体および後援会等の「入会募集獲得代行」は、こちらです。
当該政党の「党員」「サポーター」募集等の規定に従って、選挙立候補(予定)者様に代わって政党への入党におけるご案内を促します。
どぶ板同行OJT(座学研修および実地特訓)で学ぶ「スパルタ個別訪問同行OJT」は、こちらです。
候補予定者様ご本人・選挙事務所スタッフ・ボランティア様が効率良く「どぶ板の政治活動」が行なえるようアドバイスいたします。
絶対的な地盤を構築する「立札看板設置交渉代行」は、こちらです。
選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立するためのご支援をさせていただきます。
あらゆる政治選挙におけるお困りごとを支援する「選挙の窓口」活動支援一覧は、こちらです。
「地上戦」「空中戦」「ネット戦略」などを駆使し、当選に向けたコンサルティングおよびプランニングのご支援をいたします。
■ポスターPRプラン一覧(枚数・サイズの選択)
選挙区エリアにおいて、ポスターの当該掲示許可承諾者に対して交渉し、同一箇所にどのように掲示するかをお選びいただきます。
【臨機応変型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率88％ ★こちらをご確認下さい。
【連続二枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率6％ ★こちらをご確認下さい。
【限定一枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率4％ ★こちらをご確認下さい。
【個別指定型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率2％ ★こちらをご確認下さい。
※ポスターのサイズは、A1サイズ、A2サイズをはじめ、ご希望に応じてご提案させていただきます。
■掲示場所・貼付箇所
「首都圏などの大都市」「田舎などの地方都市」「駅前や商店街」「幹線道路沿いや住宅街」等により、訪問アプローチ手段が異なりますので、ご指定エリアの地域事情等をお聞かせ下さい。
※貼付箇所につきましては、弊社掲示交渉スタッフが当該ターゲットにアプローチをした際の先方とのコミュニケーションにて、現場での判断とさせていただきます。
■訪問アプローチ手段
【徒歩圏内】
駅周辺の徒歩圏内における、商店街や通行人の多い目立つ場所でのPR
【車両移動】
広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン！の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
「全国統一地方選挙」・「衆議院議員選挙」・「参議院議員選挙」・「都道府県知事選挙」・「都道府県議会議員選挙」・「東京都議会議員選挙」・「市長選挙」・「市議会議員選挙」・「区長選挙」・「区議会議員選挙」・「町長選挙」・「町議会議員選挙」・「村長選挙」・「村議会議員選挙」など、いずれの選挙にもご対応させていただいておりますので、立候補をご検討されている選挙が以下の選挙区エリアに該当するかご確認の上、お問い合わせいただけますようお願いいたします。
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