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裁判年月日 令和 2年 3月25日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平３０（ワ）２０８６１号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2020WLJPCA03258043
要旨
◆訴外ＩＣＭ社が募集し訴外ＩＣＸ社が営業者として運用する匿名組合契約（本件ファンド）に出資した原告が、同ファンドにおいては出資金を運用せず、先行するファンドの顧客への解約返戻金等に充てており、当該出資の勧誘（本件勧誘）は不法行為に当たるとして、訴外ＩＣＭ社の監査役であり訴外ＩＣＸ社の取締役でもある被告に対し、会社法４２９条１項に基づき、出資金合計１５００万円の損害賠償を求めた事案において、本件勧誘は、訴外ＩＣＭ社の代表取締役であった分離前被告Ａによる違法な勧誘であったと認定した上で、被告は、本件勧誘の当時あるいは原告が出資金を支払った当時、訴外ＩＣＭ社の監査役あるいは監査役としての権利義務を有する者であったところ、監査役に就任していたことを認識していたといえるものの、監査役としての職務にまったく従事していなかったのであるから、訴外ＩＣＭ社が原告に対して本件勧誘をして同人を欺罔し、出資金を詐取することを予見し又は予見することができたということはできないが、被告には任務懈怠について悪意又は重大な過失があるといわざるを得ないとした上、過失相殺による原告を認める事情は見当たらないとして、請求を認容した事例
出典
参照条文
民法７０９条
民法７２２条２項
会社法３４６条
会社法３８１条
会社法３８２条
会社法３８３条
会社法３８４条
会社法３８５条
会社法３８９条１項
会社法４２９条１項
会社法４３５条２項
会社法４３６条１項
裁判年月日 令和 2年 3月25日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平３０（ワ）２０８６１号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2020WLJPCA03258043
東京都三鷹市〈以下省略〉
原告 Ｘ
同訴訟代理人弁護士 磯田直道
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Ｙ
同訴訟代理人弁護士 遠藤直哉
村谷晃司
川村覚
渡邉潤也
同訴訟復代理人弁護士 小林秀之
主文
１ 被告は，原告に対し，１５００万円及びこれに対する平成３０年９月１３日から支払済みまで年５％の割合による金員を支払え。
２ 訴訟費用は被告の負担とする。
３ この判決は，仮に執行することができる。
事実及び理由
第１ 請求
主文と同旨
第２ 事案の概要
本件は，原告が，株式会社インテレス・キャピタル・マネージメントが募集し株式会社インテレスＣＸが営業者として運用する匿名組合契約（ファンド）に出資したところ，当該ファンドにおいて出資金を契約に基づいて運用せず先行するファンドの顧客への解約返戻金等に充てていたとし，当該出資の勧誘が不法行為に当たるとして，株式会社インテレス・キャピタル・マネージメントの監査役であり株式会社インテレスＣＸの取締役でもあるとする被告に対し，会社法４２９条１項所定の損害賠償請求として，出資金合計１５００万円及びこれに対する催告の日の翌日（訴状送達の日の翌日）から支払済みまで民法所定の年５分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
１ 前提事実
(1) 株式会社インテレス・キャピタル・マネージメント（以下「インテレス・キャピタル」という。）は，金融商品取引法に規定する金融商品取引業，匿名組合財産の持分の募集及び私募等を業とする株式会社である。（乙第１号証）
(2) 株式会社インテレスＣＸ（以下「インテレスＣＸ」という。）は，匿名組合財産の運用及び管理等を業とする株式会社である。（甲第１０号証）
(3) 平成２５年１０月頃，インテレス・キャピタルの代表取締役であった分離前被告Ａ（以下「Ａ」という。）は，原告に対し，インテレスＣＸを営業者とする次の匿名組合契約（以下「本件ファンド」という。）について，出資金をインテレス・キャピタルが募集した他のファンド等の解約返戻金や配当に充てることを隠して，出資金を株式や公社債等で運用するとだまして出資を勧誘し（以下この勧誘を「本件勧誘」という。），これにより欺罔された原告は，本件ファンドに出資することとした。（甲第１号証，第５号証，第２３，第２４号証，第３２号証，原告本人尋問の結果，弁論の全趣旨）（なお，被告は，本件勧誘において，インテレス・キャピタルあるいはインテレスＣＸが，原告に対し，元本が保証されないリスクの高い金融商品であることを説明し，また，出資金を他の出資者への配当に回したことがないと主張して，本件勧誘が原告に対する不法行為に当たることを争うが，甲第５号証（関東財務局のプレスリリース）及び弁論の全趣旨によれば，本件ファンドを含め，インテレスＣＸが運用していたファンドは，出資金について匿名組合契約の約定による運用をせずに他の出資者への配当等に回していたことが認められ，これによりインテレス・キャピタルが金融商品取引業の登録を取り消されるなどしたというのであって，このような認定を覆すに足りる証拠はない。）
ア 証券の名称
第５回インテレスＣＸ事業債Ⅱ
イ 発行体
インテレスＣＸ
ウ 発行総額
４９００万円
エ 額面
１００万円
オ 発効日（借入れの期日）
平成２５年１１月１日
カ 償還日（返済の期日）
平成２６年１０月３１日
キ 利率（税引き後）
９．６０％（毎月その３０／３６０を支払う）
ク 利払日
平成２５年１１月から翌年１０月までの毎月末日（休日の場合翌営業日）
ケ 受渡価格
１００．００（額面１００円につき）
コ 償還価格
１００．００（額面１００円につき）
サ 募集期間
平成２５年１０月２１日から同年１０月３１日まで
（期間満了後に追加募集あり）
シ 払込指定口座
株式会社みずほ銀行小舟町支店普通預金口座番号〈省略〉
口座名義インテレスＣＸ
(4) 平成２５年１０月２８日から同２６年５月２８日までの間，原告は，次のとおり，本件ファンドに出資した。（甲第２号証の１から４まで，第３２号証，原告本人尋問の結果）
ア 平成２５年１０月２８日
５００万円（甲第２号証の１）
イ 同月３０日
５００万円（甲第２号証の２）
ウ 同年１２月１１日
３００万円（甲第２号証の３）
エ 平成２６年５月２８日
２００万円（甲第２号証の４）
(5) 平成２５年１２月から同２６年１０月３日までの間，Ａは，原告に対し，本件ファンドの配当として，次のとおり合計１１７万９５９５円を支払ったが，これ以降，本件ファンドの配当が原告に支払われることはなかった。（甲第３２号証及び弁論の全趣旨）
ア 平成２５年１２月２日
８万円
イ 平成２６年１月６日
１０万３２６７円
ウ 同月３１日から同年７月３１日まで７回
毎回１０万３５９１円ずつ
エ 同年８月４日
３万２０００円
オ 同年９月１日
１０万３５９１円
カ 同月２日
１万６０００円
キ 同年１０月１日
１０万３５９１円
ク 同月３日
１万６０００円
(6) その後，本件ファンドの償還日が経過したが，Ａから原告に対し何の支払もされなかった。（甲第３２号証）
(7) 平成１８年１１月８日，被告が同年４月２１日にインテレスＣＸの取締役に退任及び就任（重任）した旨の登記手続がされた（以下この登記を「本件取締役重任登記」という。）。（甲第１０号証）
(8) 平成１９年４月１７日，被告が同年４月６日にインテレス・キャピタルの監査役に就任した旨の登記手続がされた（以下この登記を「本件監査役就任登記」という。）。（甲第１２号証，乙第１号証）
(9) 平成３０年９月１２日，本件訴状が被告に送達された。（記録上明らかである。）
２ 争点
(1) 本件勧誘がされた平成２５年１０月当時，被告はインテレス・キャピタルの監査役あるいは監査役としての権利義務を有する者（会社法３４６条１項）であったか（被告は，本件監査役就任登記に係るインテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾したか）
ア 原告の主張
本件勧誘がされた平成２５年１０月当時，被告はインテレス・キャピタルの監査役あるいは監査役としての権利義務を有する者であった。
（ア） 本件監査役就任登記手続がされた当時，被告は，インテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾した。
（イ） 平成２０年２月１日に被告が監査役を退任したこと（後記イの被告の主張（イ））は否認する。
平成３０年５月７日付けで，インテレス・キャピタルについて平成２０年２月１日の取締役会設置会社の定款の定めの廃止，監査役設置会社の定款の定めの廃止及び同日の被告の監査役退任の登記手続がされたが，登記原因と実際の登記の時期が奇異なほど離れているところ，その申請書と添付されていた株主総会議事録はその押印等の状況から同時期に作成されたものと考えられること，当該登記原因の日よりも後の平成２６年１２月に被告がインテレス・キャピタルに対する監査役就任登記抹消登記手続請求訴訟を提起していたこと，平成２０年２月１日より後にも被告がインテレス・キャピタルから監査役の報酬を受け取っていたことや，平成２４年３月から被告の住居をインテレス・キャピタルが賃借しその賃料を負担していたことから考えて，平成２０年２月１日にインテレス・キャピタルの株主総会において取締役会設置会社の定款の定めの廃止及び監査役設置会社の定款の定めの廃止が決議され被告が監査役を退任したことを認めることはできない。被告は，監査役としての責任を免れる意図から，インテレス・キャピタルに上記の登記手続をさせた。
イ 被告の主張
原告の主張は否認する。
（ア） 被告がインテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾したことはない。
被告は，インテレス・キャピタルから被告への金員の支払について，これを子らの養育費の支払であると認識していたのであって，監査役の報酬の支払であると認識していなかった。
インテレス・キャピタルで賃借した住居は，もともとは離婚した元の夫が子との面会交流のために準備したものであって，これに被告が住んでいたからといって，被告がその監査役であったということにはならない。
被告は，インテレス・キャピタルの運営にまったく関与していなかった。
（イ） 仮に被告がインテレス・キャピタルの監査役に就任していたとしても，平成２０年２月１日，インテレス・キャピタルの定款の取締役会設置会社及び監査役設置会社の定めが廃止され，これに伴い被告は監査役を退任したから，本件勧誘の当時，被告はインテレス・キャピタルの監査役の地位になかった。
(2) （本件勧誘がされた当時被告がインテレス・キャピタルの監査役あるいは監査役としての権利義務を有する者であった場合に）被告には，監査役の任務懈怠について悪意又は重大な過失があったか，当該任務懈怠と本件勧誘との間に相当因果関係があるか
ア 原告の主張
被告には，インテレス・キャピタルの監査役の任務懈怠について悪意又は重大な過失があり，当該任務懈怠と本件勧誘との間に相当因果関係がある。
被告は，インテレス・キャピタルの監査役として，業務全般の監査をその任務とし，取締役会において違法不当な決議がされないようにこれに出席して意見を述べ，取締役の不正行為等を取締役会に報告し，取締役会を招集し，さらに，取締役の違法行為を差し止めるなどして，取締役の違法行為を予防し是正する義務を負っていたにもかかわらず，被告〈原文ママ〉Ａによる本件勧誘における断定的判断の提供やファンドの資金の流出を知りつつしていた私募の取扱いについて，何らの監査もせずにこれを放置していた。
イ 被告の主張
原告の主張は否認し又は争う。
原告が主張するインテレス・キャピタルの監査役としての本件勧誘に関する監視義務の具体的な内容が明らかでない。
被告は，Ａによる本件勧誘を知り又は知り得たということができないから，被告の監査役としての任務懈怠はない。被告がこのような違法なファンド運営を初めて知ったのは，自分に対する損害賠償請求訴訟が提起された平成２６年４月であった。
仮に被告が本件勧誘を知り得たとしても，Ａらは，被告をインテレス・キャピタルの実質的な監査役として認識していなかったし，被告に業務内容を知らせたこともなく，インテレス・キャピタルの株主総会や取締役会に被告を招いたこともなかったから，任務懈怠と本件勧誘との間には因果関係がない。
(3) 本件勧誘がされた平成２５年１０月当時，被告はインテレスＣＸの取締役あるいは取締役としての権利義務を有する者（会社法３４６条１項）であったか（被告は，本件取締役重任登記に係るインテレスＣＸの取締役に就任することを承諾したか）
ア 原告の主張
本件勧誘がされた平成２５年１０月当時，被告はインテレスＣＸの取締役あるいは取締役としての権利義務を有する者であった。
イ 被告の主張
原告の主張は否認する。
平成２１年以降，被告のインテレスＣＸの取締役の任期満了後もその重任手続はされず，平成２８年，東京地方裁判所は，被告がインテレスＣＸの取締役の地位にないことを確認する判決を言い渡した。
被告は，インテレスＣＸの運営にまったく関与していなかった。
(4) （本件勧誘がされた当時被告がインテレスＣＸの取締役あるいは取締役としての権利義務を有する者であった場合に）被告には，取締役の任務懈怠について悪意又は重大な過失があったか，当該任務懈怠と本件勧誘との間に相当因果関係があるか
ア 原告の主張
被告には，インテレスＣＸの取締役の任務懈怠について悪意又は重大な過失があり，当該任務懈怠と本件勧誘との間に相当因果関係がある。
被告は，インテレスＣＸの取締役として，代表取締役の業務執行全般を監視し，必要があれば，取締役会の招集を請求し又は自らこれを招集して，取締役会を通じて代表取締役の業務の執行の適正を確保する義務を負っていたにもかかわらず，本件ファンドの違法な運用について，何らの監視もせずにこれを放置していた。
イ 被告の主張
原告の主張は否認し又は争う。
原告が主張するインテレスＣＸの取締役としての本件勧誘に関する監視義務の具体的な内容が明らかでない。
被告は，Ａによる本件勧誘を知り又は知り得たということができないから，被告の取締役としての任務懈怠はない。被告がこのような違法なファンド運営を初めて知ったのは，自分に対する損害賠償請求訴訟が提起された平成２６年４月であった。
仮に被告が本件勧誘を知り得たとしても，Ａらは，被告をインテレスＣＸの実質的な取締役として認識していなかったし，被告に業務内容を知らせたこともなく，インテレスＣＸの株主総会や取締役会に被告を招いたこともなかったから，任務懈怠と本件勧誘との間には因果関係がない。
(5) 過失相殺
ア 被告の主張
被告は，監査役あるいは取締役の地位にあったとしても，職務遂行の実態がない名目的な監査役，名目的な取締役であったのであり，一方で，原告は，十分な投資経験がありながら，本件勧誘を受けて，元本が保証されず自己責任が求められる取引をしながら，損害を防止する言動をせず，原告の主張によれば出資金を現金で交付したというのであるから，これを原告の重大な過失として被告の賠償額を減額すべきである（民法７２２条２項）。
イ 原告の主張
被告の主張は争う。
第３ 当裁判所の判断
１ 前記第２の１の事実に証拠（甲第１号証，第２号証の１から４まで，第３ないし第１２号証，第１３号証の１から４まで，第１４ないし第１８号証，第１９号証の１，２，第２０ないし第２７号証，第２８号証の１から３まで，第２９ないし第３３号証，乙第１ないし第７号証，第９ないし第１３号証，第１４号証の１，２，第１５ないし第２１号証，第２４号証，原告及び被告各本人尋問の結果）及び弁論の全趣旨を併せると，次の事実が認められる。
(1) 平成２年６月１９日，被告とＢ（以下「Ｂ」という。）は婚姻の届出をし，同２年○月○日に長女が，同５年○月○日に長男が，同１０年○月○日に二男がそれぞれ生まれた（甲第１８号証）。
(2) 平成７年２月２８日，Ｂ及び被告らの家族の資産を管理運用等するため，有限会社ａ（以下「ａ社」という。）が設立された（甲第２８号証の３）。
(3) 平成１０年９月３０日，被告は，ａ社の代表取締役に就任した（甲第２８号証の３）。
(4) 平成１６年１２月２５日，ａ社は，足柄下郡箱根町仙石原に建物（木・鉄筋コンクリート造瓦葺地下１階付２階建，床面積１階５５７・０７m2，２階４９．９２m2，地下１階８８．４２m2の別荘）（以下「本件建物」という。）を新築した（甲第２７号証，乙第１８号証）。
(5) 平成１７年２月２日，被告が同１６年１１月９日に株式会社ジー・クエスト（以下「ジー・クエスト」という。）の取締役に退任及び就任（重任）した旨の登記手続がされ，当該登記手続の申請書には，被告が取締役として出席した旨の記載及び被告の実印（印鑑証明書に係る印章）の印影があるジー・クエストの取締役会議事録が添付されていた。
(6) 平成１８年１月１７日，Ｂは，株式会社大江戸不動産（以下「大江戸不動産」という。）の取締役に就任した（甲第３３号証）。
(7) 平成１８年６月２０日，被告及びＢは，次の記載を含む公正証書（執行証書）の作成を嘱託し，Ｂは，執行認諾の意思表示をした。
ア Ｂと被告は，子３人の親権者をいずれも被告と定めて協議離婚することを合意し，速やかに離婚の届出をする。
イ Ｂは，被告に対し，平成１８年６月２６日までに，子らの養育費として３億円，Ｂの不貞行為により離婚に至ったことに対する慰謝料１０億円及び離婚に伴う財産分与として３７億円の合計５０億円を支払う。しかし，Ｂは，被告に対し，上記の５０億円を支払わなかった。
(8) 前記(7)の執行証書が作成された後，被告は，当該執行証書に基づいてＢの預金債権等を差し押さえ，配当を受けようとしたところ，Ｂの他の債権者は，当該執行証書の給付額が離婚給付として異常に高額でありＢの債権者からの強制執行を免れるためにした通謀虚偽表示であるとして配当異議訴訟を提起し，当該訴訟において，被告は，当該債権者の６５００万円の請求を認めた。
(9) 平成１８年１０月２日，被告とＢは離婚の届出をした（甲第１８号証）。
(10) 平成１８年１０月３０日，Ａは，インテレスＣＸの取締役に就任した（甲第１０号証）。
(11) 平成１８年１１月８日，被告が同年４月２１日にインテレスＣＸの取締役に退任及び就任（重任）した旨の登記手続がされ（甲第１０号証）（この登記が本件取締役重任登記に当たる。），当該登記手続の申請書には，被告が取締役の就任に承諾する旨の記載及び被告の実印の印影があるインテレスＣＸの定時株主総会議事録が添付されていた。
(12) 平成１８年１１月２０日，被告は，大江戸不動産の取締役に就任した（甲第３３号証）。
(13) 平成１９年３月２７日，株式会社小林洋行は，その保有するインテレス・キャピタルの株式（発行済株式総数の６３％）全部を，Ｂが当時の代表取締役であった大江戸不動産に譲渡し（甲第３０号証），その代金をＢと被告の弟であるＣ（以下「Ｃ」という。）がねん出し，被告は，自分の弟であるＣが資金を出したことを知っていた。
これにより，Ｂは，インテレス・キャピタルにおいて，アルファ・メディア株式会社（以下「アルファ・メディア」という。），インテレスＣＸ及びジー・クエストを適格機関投資家等特例業務届出者（金融商品取引法６３条５項）として，その組成するファンドによる投資事業を展開することとした。
(14) 平成１９年４月６日，Ｂは，インテレス・キャピタルの取締役に就任し，Ａは，Ｂの依頼を受けて，インテレス・キャピタルの取締役及び代表取締役に就任した（甲第１１号証，第２５号証，乙第１号証）。
(15) 平成１９年４月１７日，被告が同年４月６日にインテレス・キャピタルの監査役に就任した旨の登記手続がされ（甲第１１号証，乙第１号証）（この登記が本件監査役就任登記に当たる。），当該登記手続の申請書には，被告を監査役に選任する旨及び被告がこれを承諾した旨の記載がある臨時株主総会の議事録及び被告が監査役として出席した旨の記載があり被告名義の押印（Ｂが用いていたもの）がされた取締役会議事録が添付されていた。
(16) 平成１９年５月２１日，被告は，Ｂから大江戸不動産の経営権を譲り受け，その代表取締役に就任したが（甲第３３号証），当時の大江戸不動産は，ビル１棟を所有しているだけであって，被告がその経営に従事することはなかった。
(17) 平成１９年から同２６年までのインテレス・キャピタルの給与台帳及び賃金台帳（甲第８号証）には，同１９年９月から同２６年１２月までの間，インテレス・キャピタルが被告に対して給与（基本給）から健康保険料等を控除した額として，同２１年３月分までは毎月４０万円強（ただし同年２月は０円），同年４月分から７月分までは毎月２０万円強，それ以降は毎月０円の支給をし，この間の基本給が毎月５０万円から３０万円更に４万円弱，１万円強に急に減額された旨の記載があり，実際に，インテレス・キャピタルあるいはＢは，被告に対し，これらの記載に相当する金員を支払っていた。
(18) 平成２０年６月，関東財務局長は，インテレス・キャピタルの申請（金融商品取引法２９条，２９条の２）に基づいて，金融商品取引業者登録簿にインテレス・キャピタルの商号や業種の種別（第二種金融商品取引業（同法２８条２項））等を登録した（同法２９条の３第１項，１９４条の７第１項，同条６項，金融商品取引法施行令（昭和４０年９月３０日政令第３２１号）４２条１項１号２号）（関東財務局長（金商）第５６５号）。
(19) 平成２０年１０月２８日，被告は，ａ社の代表取締役を辞任し，後任の代表取締役が選任された（甲第２８号証の３）。
(20) 平成２１年，被告は，Ｂと不貞行為をしたとして，Ｄに対する損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した（東京地方裁判所平成２１年（ワ）第１３３５７号）（以下「訴訟〈０〉」という。）
(21) 平成２１年６月２９日，Ａ及びＢは，インテレス・キャピタルの取締役に退任及び就任（重任）し，Ａは，インテレス・キャピタルの代表取締役に退任及び就任（重任）した（甲第１１号証，乙第１号証）。
(22) 平成２１年１１月１６日，Ｂは，インテレスＣＸの取締役及び代表取締役に就任した（甲第１０号証）。
(23) 平成２２年６月３日，被告は，訴訟〈０〉の本人尋問において，自分がインテレス・キャピタルの監査役であることを知っている，養育費等をもらうために自分の意思で監査役に入れてほしいと頼んだ，などと供述した（乙第１６号証）。
(24) 平成２３年７月１２日，インテレス・キャピタルは，インテレスＣＸを営業者とする匿名組合に対する出資の募集を始めた。
(25) 平成２３年７月１２日，インテレス・キャピタルは，アルファ・メディアを営業者とする匿名組合に対する出資の募集を始めた。
(26) 平成２４年３月３０日，インテレス・キャピタルは，東京都渋谷区上原のマンション１室を家賃１か月１７万９０００円で賃借し（甲第９号証），被告は，当該マンションに入居した。
(27) 平成２５年１月２１日，インテレス・キャピタルは，ジー・クエストを営業者とする匿名組合に対する出資の募集を始めた。
(28) 平成２５年４月１日，Ｂは，ａ社の代表取締役に就任した（甲第２８号証の１，乙第１７号証）。
(29) 平成２５年１０月２１日，インテレス・キャピタルは，前記(24)のインテレスＣＸを営業者とする匿名組合の第５回の出資の募集を始めた（甲第１号証）（これが「本件ファンド」に当たる。）。
(30) 平成２５年１０月頃，Ａは，原告に対し，本件勧誘をし，これを受けて，平成２５年１０月２８日から同２６年５月２８日までの間，原告は，本件ファンドに合計１５００万円を出資した（前記第２の１(3)(4)）。
(31) 平成２６年１月８日，前記(24)のインテレスＣＸを営業者とするファンド及び前記(25)のアルファ・メディアを営業者とするファンドに出資したＥは，インテレス・キャピタルによる当該出資に係る勧誘が不法行為であり役員等の任務懈怠に当たるとして，インテレス・キャピタルの監査役でありインテレスＣＸ及びアルファ・メディアの取締役とされる被告らに対して１６４９万４８３１円等の支払を求める損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した（東京地方裁判所平成２６年（ワ）第１６９号）（乙第２号証）（以下この訴訟を「訴訟①」という。）
(32) 平成２６年，前記(24)のインテレスＣＸを営業者とするファンド及び前記(25)のアルファ・メディアを営業者とするファンドに出資したＦは，インテレス・キャピタルによる当該出資に係る勧誘が不法行為であり役員等の任務懈怠に当たるとして，インテレス・キャピタルの監査役でありインテレスＣＸ及びアルファ・メディアの取締役とされる被告らに対して１７７０万５０００円等の支払を求める損害賠償請求訴訟をさいたま地方裁判所に提起した（さいたま地方裁判所平成２６年（ワ）第１２９５号）（以下この訴訟を「訴訟②」という。）
(33) 平成２６年１月３０日，Ｂは，ａ社の代表取締役を退任し，被告は，ａ社の代表取締役に就任した（甲第２８号証の１，乙第１７号証）。
(34) 平成２６年１月３１日，被告は，Ｂが本件建物を処分して顧客等への支払に充てようとしていることを知って，ａ社の代表者として，ａ社の所有する本件建物をトヨタ自動車株式会社に売り，同日，その旨の所有権移転登記手続がされ（甲第２７号証，乙第１８号証），被告は，当該売買代金４億２０００万円を取得した。
(35) 平成２６年４月２２日，関東財務局長は，インテレス・キャピタルが，アルファ・メディア，インテレスＣＸ及びジー・クエストをそれぞれ営業者とする匿名組合（前記(24)(25)(27)）についてこれらの営業者の業務において投資者保護上重大な問題がある行為（出資金の流用，虚偽の運用報告書の交付，分配基準未達での配当）がされている状況を認識していたにも関わらず本件３ファンドの私募の取扱いを継続していたとして，金融商品取引法５２条１項の規定に基づき，インテレス・キャピタルの金融商品取引業者の登録（前記(18)）を取り消すとともに，同法５１条の規定に基づき，インテレス・キャピタルに対し，財産の顧客への返還に関する方針等についての検討を命ずる業務改善命令を出し（同法１９４条の７第１項，金融商品取引法施行令（昭和４０年９月３０日政令３２１号）４２条２項１０号），同日，関東財務局は，これを公表した（甲第５号証，第２４号証）。
(36) 被告は，自己名義のインテレス・キャピタルの監査役の登記及びインテレスＣＸの取締役の登記が残されたままではインテレス・キャピタルが募集したファンドの出資者から更に損害賠償請求訴訟を提起されることを危惧して，これらの辞任の登記手続等をするようにＢに要望したところ，平成２６年６月４日，Ｂは，自分の代理人であったＧ弁護士（以下「Ｇ弁護士」という。）に対し，平成２０年１月３１日付け（平成２６年５月２７日付けという記載を手書きで修正したもの）のインテレス・キャピタルの臨時株主総会議事録（被告の監査役辞任に伴いＨを後任の監査役に選任する旨）及び平成２１年１１月１６日付け（平成２０年２月１日付けという記載を手書きで修正したもの）のインテレスＣＸの臨時株主総会議事録（取締役会設置会社の定款の定めの廃止等）を送付し，実際の辞任の日ではなく被告の要求によりさかのぼった日付けにより辞任登記手続をするから，被告が引き出した４億２０００万円を本件３ファンドの顧客や会社の債権者に弁償するために，被告が同額をインテレスＣＸ名義の預金口座に振り込めば，その日のうちに被告のインテレス・キャピタルの監査役辞任の登記手続及び被告のインテレスＣＸの取締役辞任の登記手続の申請をする旨を伝えた（甲第２０ないし第２２号証）。しかし，被告は，４億２０００万円をインテレスＣＸ名義の預金口座に振り込んでこれをＢに渡すことを拒んだ。
(37) 平成２６年８月１８日，ａ社（代表者である被告）は，商号を，Ｂの姓を含むａ社から，被告の旧姓であるＩにちなんだ有限会社ａ１に変更した（甲第２８号証の２）。
(38) 平成２６年，Ｂは，Ｇ弁護士を訴訟代理人として，Ｂがａ社の株主であるとして，ａ社及び被告らに対する株主権確認請求等に係る訴訟を東京地方裁判所に提起した（東京地方裁判所平成２６年（ワ）第３１５６５号）（以下この訴訟を「訴訟③」という。）。
(39) 平成２６年１２月１０日，Ｅは，訴訟①のうち被告に対する請求に係る訴えを取り下げ，被告はこれに同意した（乙第４号証）。
(40)ア 平成２６年１２月２９日，被告は，インテレス・キャピタルに対する次の請求に係る訴訟を東京地方裁判所に提起した（東京地方裁判所平成２６年（ワ）第３４７８５号）（以下この訴訟を「訴訟④」という。）（甲第１３号証の１）。
（ア） 被告がインテレス・キャピタルの監査役の地位にないことを確認する。
（イ） インテレス・キャピタルは，平成１９年４月６日付けで被告がインテレス・キャピタルの監査役に就任した旨の登記の抹消登記手続をせよ。
イ 同日，被告は，アルファ・メディアに対する次の請求に係る訴訟を東京地方裁判所に提起した（以下この訴訟を「訴訟⑤」という。）（甲第１３号証の４）。
（ア） 被告がアルファ・メディアの取締役の地位にないことを確認する。
（イ） アルファ・メディアは，平成１８年１０月３１日付けで被告がアルファ・メディアの取締役に就任した旨の登記の抹消登記手続をせよ。
ウ 同日，被告は，インテレスＣＸに対する次の請求に係る訴訟を東京地方裁判所に提起した（平成２６年（ワ）第３４７５３号）（以下この訴訟を「訴訟⑥」という。）（甲第１３号証の２）。
（ア） 被告がインテレスＣＸの取締役の地位にないことを確認する。
（イ） インテレスＣＸは，平成１９年４月２１日付けで被告がインテレスＣＸの取締役に就任した旨の登記の抹消登記手続をせよ。
エ 同日，被告は，ジー・クエスト（代表取締役Ｂ）に対する次の請求に係る訴訟を東京地方裁判所に提起した（東京地方裁判所平成２６年（ワ）第３４７７９号）（以下この訴訟を「訴訟⑦」という。）。（甲第１３号証の３）
（ア） 被告がジー・クエストの取締役の地位にないことを確認する。
（イ） ジー・クエストは，次の各登記の抹消登記手続をせよ。
ａ 平成１２年６月１日付けで被告がジー・クエストの取締役に就任した旨の登記
ｂ 同日付けで被告がジー・クエストの代表取締役に就任した旨の登記
ｃ 平成１３年１１月３０日付けで被告がジー・クエストの代表取締役を退任した旨の登記
ｄ 同日付けで被告がジー・クエストの取締役を退任した旨の登記
ｅ 平成１４年１１月１日付けで被告がジー・クエストの取締役に就任した旨の登記
ｆ 同日付けで被告がジー・クエストの代表取締役に就任した旨の登記
ｇ 平成１５年８月２２日付けで被告がジー・クエストの代表取締役を辞任した旨の登記
ｈ 平成１６年１１月９日付けで被告がジー・クエストの取締役に重任した旨の登記
ｉ 平成１８年１１月１７日付けで被告がジー・クエストの取締役に重任した旨の登記
(41) 平成２７年１１月９日，被告は，訴訟④の本人尋問において，自分がインテレス・キャピタルの監査役に選任されていたことを知らなかった，訴訟①及び訴訟②を提起されて初めて自分は監査役として登記されていることを知った，前記(17)の支給は振込先の金融機関の口座について通帳に記帳せずにＡＴＭで出金していたのでインテレス・キャピタルの名義で振り込まれていたことを知らなかったと供述した（甲第２６号証，乙第１５号証）。
(42) 平成２８年１月２９日，訴訟④の和解期日（東京地方裁判所民事第８部）において，被告は，インテレス・キャピタルに対する請求をいずれも放棄した（甲第７号証）。
(43) 平成２８年５月２４日，東京地方裁判所（民事第８部）は，訴訟⑦について，取締役会議事録に被告が取締役として出席した旨の記載があり被告の実印が押されていたことから，平成１８年１１月１７日に被告がジー・クエストの取締役に就任することを承諾し，これに就任したことを認めた上で，会社法所定の任期が満了したとして，被告がジー・クエストの取締役の地位にないことの確認の請求を認容し，併せて，平成１８年１１月１７日取締役重任登記は不実ではなく，当該登記が維持される以上，これに先立つ平成１４年１１月１日取締役就任登記及び平成１６年１１月９日取締役重任登記はその存否により被告の現在の法的地位の公示内容を左右するものではなく，その余の請求に係る各登記はいずれも取締役等に就任しその後退任した旨を公示するものであり被告の現在の法的地位の公示するものではないとして，これらの就任登記等の抹消登記手続請求をいずれも棄却する旨の判決（甲第６号証）を言い渡した。
(44) 平成２８年７月２９日，東京地方裁判所（民事第８部）は，訴訟⑥について，被告の取締役就任登記手続の申請書に添付されたインテレスＣＸの定時株主総会議事録に被告が取締役の就任に承諾する旨の記載があり被告の実印が押されていたことから，平成１８年４月２１日に被告がインテレスＣＸの取締役に就任することを承諾し，これに就任したことを認めた上で，会社法所定の任期が満了したとして，被告がインテレスＣＸの取締役の地位にないことの確認の請求を認容し，併せて，平成１８年４月２１日に被告が取締役に就任したからその就任登記は不実ではないとして，取締役就任登記の抹消登記手続請求を棄却する旨の判決（乙第７号証）をした。
(45) 平成２９年４月２６日，さいたま地方裁判所（第１民事部）は，訴訟②について，ファンドへの出資の勧誘が不法行為にならないとして，Ｆの不法行為及び役員等の任務懈怠による損害賠償請求（主位的請求）を棄却する等の判決（乙第９号証）を言い渡した。
(46) 平成２９年５月２５日，東京地方裁判所（民事第８部）は，訴訟③において，Ｂにおいて被告らがａ社の株主であることを認める旨の合意書が真正に成立したものであるなどとして，Ｂの株主権確認請求を棄却する等の判決（乙第１０号証）を言い渡した。
(47) 平成２９年６月９日，Ｂ（訴訟代理人Ｇ弁護士）は，前記(46)の判決を不服として東京高等裁判所に控訴をしたが（東京高等裁判所平成２９年（ネ）第３０９１号）（乙第１１号証），同年１０月１１日，控訴審の第１回弁論準備手続期日において，Ｂは，当該控訴を取り下げた（乙第１２号証）。
(48) 平成２９年１０月２７日，Ｂは死亡した（甲第１８号証）。
(49) 平成３０年５月７日，インテレス・キャピタルについて定款の取締役会設置会社の定め及び監査役設置会社の定めを同２０年２月１日で廃止した旨（甲第１６号証）及び被告が同日にインテレス・キャピタルの監査役を退任した旨の登記手続がされ（甲第１２号証，第１５号証，乙第１号証），当該登記手続の申請書（甲第１５号証）には，当該定款の変更等に係る平成２０年２月１日付けのインテレス・キャピタルの臨時株主総会議事録（甲第１６号証）が添付されていたが，当該議事録の日付けにおいてそのような決議がされたという事実はなかった。
(50) 本件監査役就任登記において被告がインテレス・キャピタルの監査役に就任したとされる平成１９年４月６日から現在に至るまで，被告がインテレス・キャピタルの監査役としてその職務に従事したことはまったくなかった。
(51) 本件取締役重任登記において被告がインテレスＣＸの取締役に就任（重任）したとされる平成１８年４月２１日から現在に至るまで，被告がインテレスＣＸの取締役としてその職務に従事したことはまったくなかった。
２ 争点(1)について
(1) 前記１(15)でみたところによると，本件監査役就任登記の申請書には，被告の実印その他被告が所有していた印章が押された議事録等が添付されていたことを認めることはできないから（本件監査役就任登記に係る当該登記手続がされた平成１９年４月１７日当時の商業登記規則（平成２７年２月３日法務省令第５号による改正前のもの）においては，取締役設置会社の取締役，監査役等の就任登記の申請書に，就任承諾書に係る印鑑証明書等の本人確認証明書（改正後の商業登記規則６１条６項参照）を添付することが求められていなかった。），本件監査役就任登記がされているということ及びその添付書類（取締役会議事録）に被告名義の押印があるということのみによっては，被告がインテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾したことを推認するに足りないといわなければならない。しかし，前記１でみたところによると，平成１９年９月から同２１年７月までの間，被告は，インテレス・キャピタルから給与の名目で金員を受け取っていたというのであって，これによれば，被告は，その当時，少なくともインテレス・キャピタルから金員を受け取る名目的な立場を有していたことを認識していたと推認され，これを考え合わせると，被告は，本件監査役就任登記手続がされた当時，インテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾していたことが推認されるといわざるを得ない。なお，乙第１９号証（被告の陳述書）及び被告本人尋問の結果中には，被告は，上記の金員の受け取りは，Ｂが養育費を支払っていたものと認識していた，金員が振り込まれた金融機関の口座の通帳を記帳せず，ＡＴＭで出金していたため，振込みの名義がインテレス・キャピタルかどうかは知らなかった旨の供述等部分があり，前記１(7)で認定した執行証書における被告とＢの離婚に伴う給付の合意は，このような供述等部分と整合するといえる。しかし，前記１(17)でみたところによると，インテレス・キャピタルから被告に対する給与の名目での金員の支給は，健康保険料等を控除したことになっていたことからみて，被告及びその子らは，インテレス・キャピタルが属する健康保険組合に加入していたと推認され，被告は，日常生活の中でそのことを認識していたはずであって，このようなことからみて，被告は，当該支給が養育費の支払に代えてされたものであると認識していたとしても，これがインテレス・キャピタルからの金員の支給であったことを知っていたというほかはないから，被告の上記の供述等部分によっては，被告がインテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾していたことの推認を覆すことはできない。
(2) 以上でみたとおり，本件監査役就任登記手続がされたことに，上記のインテレス・キャピタルから被告への金員の支給を併せると，被告は，本件監査役就任登記手続がされた当時，インテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾していたことが推認され，これを覆すに足りる証拠はない。乙第１９号証（被告の陳述書）及び被告本人尋問の結果中には，被告はインテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾したことがない旨の供述等部分があるが，前記１(23)(41)でみたように，被告は，平成２２年の訴訟〈０〉の本人尋問において，自分がインテレス・キャピタルの監査役であることを知っている，養育費等をもらうために自分の意思で監査役に入れてほしいと頼んだと証言していたが，その後，被告を役員とする会社法４２９条による損害賠償請求訴訟が提起されるようになった後で，監査役の就任の承諾を否定する旨の証言をするようなったことが認められるのであって（この点について，被告本人尋問の結果中に，当該証言について，インテレス・キャピタル名義で養育費等が支払われるかもしれないことは認識していたので尋問で監査役と言われ知っていると証言したにすぎない，監査役といった役職について深く考えて供述したわけではないとの供述部分があるが，被告は「あなたが監査役なんだね。」と聞かれ「知ってます。」と証言していたこと（乙第１６号証）から考えて，当該供述部分を採用することはできない。），このような供述の変遷からみて，本件訴訟における上記の供述等部分から，被告がインテレス・キャピタルの監査役に就任することを承諾していたことの上記の推認を覆すことはできない。
(3) そうすると，被告は，平成１９年４月にインテレス・キャピタルの監査役に就任したと認められる。そして，前記１でみたところによれば，平成３０年５月７日にインテレス・キャピタルについて定款の取締役会設置会社の定め及び監査役設置会社の定めを同２０年２月１日で廃止した旨の登記手続がされたが，これは，前記１でみた事実経過から考えると，被告の監査役退任登記手続をするための便法としてされたものであることが認められるのであって，併せて，前記１でみたところによれば，被告は，平成２６年にファンドの出資者らから会社法４２９条による損害賠償請求訴訟を提起されるようになった後で，Ｂに対しインテレス・キャピタルの監査役の退任登記手続その他関連する株式会社の被告名義の役員等の退任等の登記手続を求めるようになったことが認められ，これらの事実関係からみて，本件勧誘がされた平成２５年１０月頃あるいは原告が本件ファンドの出資金を支払った平成２５年１０月２８日から同２６年５月２８日までの頃においては，およそ上記のような定款変更の手続は執られていなかったと認められる。そうすると，本件勧誘の当時あるいは原告が出資金を支払った当時（以下これらを併せて「本件勧誘等の当時」という。）は，インテレス・キャピタルは取締役会設置会社であり，従って当然に監査役設置会社であったから（会社法３２７条２項本文），これよりも前の時点で会社法３３６条所定の被告の監査役の任期が満了していたとしても，後任の監査役が選任されなかった以上，被告は監査役の権利義務を有することになるのであって（会社法３４６条１項），結局のところ，本件勧誘等の当時，被告は，インテレス・キャピタルの監査役あるいは監査役としての権利義務を有する者であったといわなければならず，前記１(50)でみた被告が監査役としての職務に従事した実態がなかったことは，このような被告の地位を左右するものではない（いわゆる名目的監査役）。
３ 争点(2)について
(1) 前記２でみたとおり，被告は，本件勧誘等の当時，インテレス・キャピタルの監査役あるいは監査役としての権利義務を有する者であったというところ，前記１でみたところによれば，被告は，インテレス・キャピタルの監査役に就任していたことを認識していたといえるが，監査役としての職務にまったく従事していなかったのであるから，インテレス・キャピタルが本件ファンドの募集をしていたことを知り又は知り得たということはできず，したがって，被告において，インテレス・キャピタル（Ａ）が原告に対し本件勧誘をして原告を欺罔し出資金を詐取することを予見し又は予見することができたということはできない。
しかし，会社法４２９条の規定によれば，監査役あるいは監査役としての権利義務を有する者（最高裁昭和３３年（オ）第３７０号同３７年８月２８日第三小法廷判決・裁判集民事６２号２７３頁参照）である被告が悪意又は重大な過失によってインテレス・キャピタルに対する義務に違反し，これにより原告に損害を被らせたときは，被告の任務懈怠の行為と原告の損害との間に相当因果関係がある限り，被告は原告に対し損害賠償責任を負うと解される（最高裁昭和３９年（オ）１１７５号同４４年１１月２６日大法廷判決・民集２３巻１１号２１５０頁参照）。
そして，前記１(50)でみたとおり，被告は，インテレス・キャピタルの監査役の職務（会社法３８１条所定の取締役の職務執行の監査，同法３８２条所定の取締役の不正行為等の取締役会への報告，同法３８３条所定の取締役会の出席や招集請求等，同法３８４条所定の株主総会に対する報告，同法３８５条所定の取締役の行為の差止請求等）をまったくしていなかったというのであるから，インテレス・キャピタルの会社としての実態いかんにかかわらず，被告には任務懈怠について悪意又は重大な過失があるといわざるを得ない。そして，前記第２の１でみたように，本件勧誘は，インテレス・キャピタルの代表取締役であったＡによる違法な勧誘であったというのであり，また，前記１でみたところによれば，本件勧誘がされた平成２５年１０月の時点においては，インテレス・キャピタルがファンドへの出資の募集を始めた平成２３年７月から２年３か月ほど経過していたのであるから，被告が上記の監査役の職務をその趣旨に従って遂行していれば，少なくとも本件勧誘等の当時においては，既にインテレス・キャピタルが募集しているファンドが匿名組合契約に基づく出資金の運用をせずに出資者への配当や解約返戻金に充てていたことが，各事業年度に係る計算書類等（会社法４３５条２項）の監査役による監査（同法４３６条１項）あるいは金融商品取引法第２章所定の開示に係る財務計算に関する書類の監査などの過程において判明するなどして，これを契機として本件勧誘に至らなかった可能性を否定することはできないというべきであるから，被告の任務懈怠と本件勧誘により原告が被った出資金相当の損害との間には，相当因果関係があるといわなければならない（証拠（甲第１１号証）によれば，会社法が施行された平成１８年５月１日（平成１８年政令第７７号）の時点におけるインテレス・キャピタルの資本金の額は１億円であり，インテレス・キャピタルは旧商法特例法（会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律１条８号による廃止前の株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律）１条の２第２項に規定する小会社（旧小会社）であったことが認められるが，一方で，平成２０年３月５日の本店移転登記に伴い閉鎖されたインテレス・キャピタルの商業登記記録（甲第１１号証）には，その発行する株式の譲渡による取得についてインテレス・キャピタルの取締役会の承認を要する旨の記録（会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律６４条による改正前の商法（旧商法）１８８条２項３号，１７５条２項４号ノ２）がないことからみて，会社法が施行された際インテレス・キャピタルは公開会社（会社法２条５号）であったと認められるのであって，これによれば，インテレス・キャピタルは，会社法施行の際，会社法において監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることはできなかったのであり（会社法３８９条１項），会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律５３条の規定によりインテレス・キャピタルの定款に会社法３８９条１項の規定による監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあるとみなされる余地はないから，遅くとも被告が監査役に就任した平成１９年４月から本件勧誘等がされた頃の平成２５年，２６年までの間においては，インテレス・キャピタルの監査役の監査の範囲は会計に関するものに限定されず，被告は監査役として業務監査をする権限を有していたと考えられる。なお，証拠（甲第１２号証，乙第１号証）によれば，平成３０年５月７日，インテレス・キャピタルについて定款の取締役会設置会社の定め及び監査役設置会社の定めを同２０年２月１日で廃止した旨並びに被告が同日にインテレス・キャピタルの監査役を退任した旨の登記手続がされた際に（前記１(49)），併せて平成２０年２月１日に株式譲渡に取締役会の承認を受けなければならない旨を株主総会の承認を受けなければならない旨に変更した旨の変更登記手続がされたことが認められるが，これも，前記２(3)で説示したとおり，被告の監査役退任登記手続をするための便法としてされたものであって，平成２０年２月１日にインテレス・キャピタルにおいてこのような株主総会の承認を必要とする旨の定款変更の手続が執られ，あるいはこれに先立ち取締役会の承認を必要とする旨の定款の定めが設けられたわけではないというべきであるから，これにより上記でみたインテレス・キャピタルが会社法施行の時点から被告の監査役就任更には本件勧誘等の当時までの間において公開会社であったという認定判断が覆ることにはならない。）。
(2) そうすると，被告は，インテレス・キャピタルの監査役あるいは監査役としての権利義務を有するものとして，任務懈怠について悪意又は重大な過失があり，原告に対し，本件勧誘により被った出資金相当損害を賠償する責めを負うといわなければならない。
４ 争点(5)について
前記第２の１(3)でみたとおり，本件勧誘は，出資金の運用等について原告を欺罔したものであって，原告はこれにより出資金相当額の損害を被ったというのであって，このような本件勧誘の態様を考えると，被告がいわゆる名目的な役員であったことを考慮するとしても，原告が投資経験があるにもかかわらず元本保証のない本件ファンドに出資したということが，被告が賠償すべき額を定める際に考慮すべき過失であるということはできず，その他，本件において当該額を過失相殺により減額すべき事情は見当たらない。
なお，前記第２の１(5)でみたとおり，原告は，本件ファンドの配当として合計１１７万９５９５円を受け取ったが，これは，前記第２の１(3)でみたところによれば，欺罔による勧誘であることが発覚することを防ぐために，他の出資者からの出資金を回して支払われたことが推認され，不法原因給付となるから，本件損害賠償請求において損益相殺あるいは損益相殺的な調整の対象として出資金の額から当該配当額を控除することは許されない（最高裁平成１９年（受）第１１４６号同２０年６月２４日第三小法廷判決・裁判集民事２２８号３８５頁参照）。
５ 以上によれば，その余の点（争点(3)及び争点(4)）について判断するまでもなく，被告がインテレス・キャピタルの監査役あるいは監査役としての権利義務を有する者であることによる会社法４２９条に基づく本件請求は，附帯請求を含め，理由がある（当該請求と，被告がインテレスＣＸの取締役あるいは取締役としての権利義務を有する者であることによる会社法４２９条に基づく請求は，選択的併合の関係にあると解されるところ，前者の請求が認容されることにより，後者の請求の解除条件が成就するから，後者の請求については判断しない。）。
東京地方裁判所民事第４８部
（裁判官 氏本厚司）
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Q&A【18】ポスター「掲示責任者代行」とはどのようなものでしょうか？
Q&A【19】選挙妨害やその他クレーム対応等の代行も可能でしょうか？
Q&A【20】政治活動(選挙運動)における広報支援プランはどのようなものがありますか？
■営業専門会社による広報PR支援について
Q&A【21】飛び込み訪問、戸別訪問、挨拶回り代行等、ポスター貼り以外でもお願いできますか？
Q&A【22】飲食店や実店舗等の店内やトイレ等にポスターを貼ったり、ビジネスカード設置、チラシ配布等は可能ですか？
Q&A【23】全国どこでもポスター貼りが可能なのですか？
■ご検討中の方々に
Q&A【24】お問い合わせについて
Q&A【25】資料をダウンロード
Q&A【26】ノウハウ・テクニックを大公開！
■ご依頼(お申し込み)の前に
Q&A【27】お申し込みの流れ
Q&A【28】ご用意いただきたいもの
■ご依頼(ご契約)の後に
Q&A【29】進捗報告について
Q&A【30】お友達ご紹介キャンペーンについて
【ポスター【制作前の】候補予定者様】のメニューです。
「政治活動用ポスターのデザイン」は、こちらです。
公職選挙法規定の法的審査(レギュレーションチェック)対応済みの、個人ポスター、２連ポスター、３連ポスター等のデザインを制作！
「弁士相手探しマッチング」は、こちらです。
「探して、交渉して、お隣りへ！」理想の有名人や著名人の弁士相手を探して、地域有権者に対して認知度拡大の相乗効果を狙う！
「ポスターの掲示責任者代行」は、こちらです。
【全国対応】ポスターを掲示した選挙区からのクレーム対応・妨害等の「総合窓口」として、ポスター掲示責任者の代行をいたします。
【ポスター【制作後の】候補予定者様】のメニューです。
政治活動期間における「どぶ板専門！ポスター貼り(掲示交渉)代行」は、こちらです。
【稼働の流れ】
①新規ご挨拶回り|戸別訪問代行|握手代行
選挙区(指定エリア)の有権者(民家・飲食店・その他施設)に対して、候補予定者に代わって選挙ドットウィン！が直接ご訪問致します。
②名刺|ビラ|リーフレット等の手渡し配布
候補予定者と有権者を繋ぐため、名刺・ビラ・政策レポート・討議資料・リーフレットなど活動報告資料の直接手渡し配布を致します。
③留守宅|候補者PR資料ポスティング投函
ご訪問先がご不在の場合には、配布物を郵便受け等にポスティング投函致します。(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率！)
④政治活動ポスター貼り(新規掲示交渉！
【完全成果報酬】地獄のドブ板活動に必須となる、政治活動用ポスター貼り(新規掲示交渉代行！)(貼れた分だけの枚数課金となります)
⑤掲示(貼付)後のフォロー|クレーム対応
ポスター掲示(貼付)完了後における掲示許可承諾者へ、フォローやクレーム対応等のストレスな部分は選挙ドットウィン！が致します。
所属政党の「党員募集獲得代行」、政治団体および後援会等の「入会募集獲得代行」は、こちらです。
当該政党の「党員」「サポーター」募集等の規定に従って、選挙立候補(予定)者様に代わって政党への入党におけるご案内を促します。
どぶ板同行OJT(座学研修および実地特訓)で学ぶ「スパルタ個別訪問同行OJT」は、こちらです。
候補予定者様ご本人・選挙事務所スタッフ・ボランティア様が効率良く「どぶ板の政治活動」が行なえるようアドバイスいたします。
絶対的な地盤を構築する「立札看板設置交渉代行」は、こちらです。
選挙立て札看板(後援会連絡事務所)の設置交渉代行で、半永久的に絶対的な知名度を確立するためのご支援をさせていただきます。
あらゆる政治選挙におけるお困りごとを支援する「選挙の窓口」活動支援一覧は、こちらです。
「地上戦」「空中戦」「ネット戦略」などを駆使し、当選に向けたコンサルティングおよびプランニングのご支援をいたします。
■ポスターPRプラン一覧(枚数・サイズの選択)
選挙区エリアにおいて、ポスターの当該掲示許可承諾者に対して交渉し、同一箇所にどのように掲示するかをお選びいただきます。
【臨機応変型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率88％ ★こちらをご確認下さい。
【連続二枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率6％ ★こちらをご確認下さい。
【限定一枚型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率4％ ★こちらをご確認下さい。
【個別指定型PR】ポスター掲示許可貼付交渉代行プラン ※ご発注選択率2％ ★こちらをご確認下さい。
※ポスターのサイズは、A1サイズ、A2サイズをはじめ、ご希望に応じてご提案させていただきます。
■掲示場所・貼付箇所
「首都圏などの大都市」「田舎などの地方都市」「駅前や商店街」「幹線道路沿いや住宅街」等により、訪問アプローチ手段が異なりますので、ご指定エリアの地域事情等をお聞かせ下さい。
※貼付箇所につきましては、弊社掲示交渉スタッフが当該ターゲットにアプローチをした際の先方とのコミュニケーションにて、現場での判断とさせていただきます。
■訪問アプローチ手段
【徒歩圏内】
駅周辺の徒歩圏内における、商店街や通行人の多い目立つ場所でのPR
【車両移動】
広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン！の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
「全国統一地方選挙」・「衆議院議員選挙」・「参議院議員選挙」・「都道府県知事選挙」・「都道府県議会議員選挙」・「東京都議会議員選挙」・「市長選挙」・「市議会議員選挙」・「区長選挙」・「区議会議員選挙」・「町長選挙」・「町議会議員選挙」・「村長選挙」・「村議会議員選挙」など、いずれの選挙にもご対応させていただいておりますので、立候補をご検討されている選挙が以下の選挙区エリアに該当するかご確認の上、お問い合わせいただけますようお願いいたします。
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