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裁判年月日 令和 4年 1月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(ワ)31138号・令3(ワ)6132号
事件名 商標権侵害差止等請求、不正競争行為差止等請求事件
文献番号 2022WLJPCA01289003
出典
裁判所ウェブサイト
裁判年月日 令和 4年 1月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(ワ)31138号・令3(ワ)6132号
事件名 商標権侵害差止等請求、不正競争行為差止等請求事件
文献番号 2022WLJPCA01289003
原告(甲事件) 株式会社創研(以下「原告創研」という。)
原告(乙事件) 勇心酒造株式会社(以下「原告勇心酒造」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 小林幸夫
弓削田博
藤沼光太
同訴訟代理人弁理士 津国肇
山村大介
同補佐人弁理士 岡村百佳
被告(甲事件・乙事件) 株式会社天美
同訴訟代理人弁護士 舘野幸二
同補佐人弁理士 戸塚朋之
主文
1 被告は,別紙1被告標章目録記載の標章を,別紙2被告商品目録記載の商品又はその容器に付し,同標章を付した同目録記載の商品を販売し,販売のために展示し,又はそれらに関するチラシ若しくはインターネット上の広告に同標章を付してはならない。
2 被告は,別紙2被告商品目録記載の商品及び別紙1被告標章目録記載の標章が付されたチラシを廃棄せよ。
3 被告は,別紙3被告表示目録記載の表示を,別紙2被告商品目録記載の商品又は容器に付し,同表示を付した同目録記載の商品を販売し,販売のために展示し,又はそれらに関するチラシ若しくはインターネット上の広告に同表示を付してはならない。
4 被告は,別紙2被告商品目録記載の商品及び別紙3被告表示目録記載の表示が付されたチラシを廃棄せよ。
5 被告は,原告勇心酒造に対し,17万7882円及びこれに対する令和3年3月26日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
6 原告勇心酒造のその余の請求を棄却する。
7 訴訟費用は,甲事件及び乙事件を通じて,これを4分し,そのうち1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 甲事件について
⑴ 主文1項及び2項と同旨
⑵ 仮執行宣言
2 乙事件について
⑴ 主文3項及び4項と同旨
⑵ 被告は,原告勇心酒造に対し,459万0441円及びこれに対する令和3年3月26日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
甲事件は,別紙4原告商標目録記載1及び2の各商標(以下,それぞれ順に「原告商標1」及び「原告商標2」といい,併せて「原告各商標」という。)の商標権を有する原告創研が,被告が商品の販売等に当たり,別紙1被告標章目録記載1ないし8の各標章(以下,それぞれ順に「被告標章1」ないし「被告標章8」といい,これらを併せて「被告各標章」という。)を別紙2被告商品目録記載1ないし3の各商品(以下「被告各商品」という。)に使用することが上記商標権を侵害すると主張して,被告に対し,商標法36条1項に基づき被告各標章の使用の差止め及び同条2項に基づき被告各商品等の廃棄を求める事案である。
乙事件は,原告勇心酒造が,被告が原告勇心酒造の商品等表示として著名又は周知である別紙5原告表示目録記載1ないし3の各表示(以下,順に「原告表示1」ないし「原告表示3」といい,これらを併せて「原告各表示」という。)を使用して,被告各商品を販売等することにより,原告の商品と混同を生じさせており,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は同項2号の不正競争に該当すると主張して,被告に対して,不競法3条1項に基づき別紙3被告表示目録記載1ないし15の各表示(以下,順に「被告表示1」ないし「被告表示15」といい,これらを併せて「被告各表示」という。)の使用の差止め及び同条2項に基づき被告各表示を付した被告各商品等の廃棄を求めるとともに,不競法4条に基づき,損害賠償金459万0441円及びこれに対する令和3年3月26日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の範囲内又は民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠(特記ない限り枝番号含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実。なお,以下,弁論の併合前の甲事件で提出された証拠については「甲事件甲1」などといい,乙事件で提出された証拠については「甲1」などという。)
⑴ 当事者
ア 原告創研は,化粧品の研究・開発等を主たる事業とする株式会社であり,その代表取締役は原告勇心酒造の代表取締役であるAの妻である。
イ 原告勇心酒造は,日本酒の製造・販売に始まり,現在は,米由来の素材又はこれを利用した素材及びこれら素材を利用した化粧品等の製造,販売を主たる事業とする株式会社である。
ウ 被告は,化粧品の製造,販売を主たる事業とする株式会社である。
(以上について,争いのない事実)
⑵ 原告各商標
ア 原告創研は,原告各商標の商標権者であり,その内容は,別紙4原告商標目録記載のとおりである(争いのない事実)。
イ 原告創研は,原告勇心酒造,株式会社コーセー(以下「コーセー」という。),株式会社アイム(以下「アイム」という。),第一三共ヘルスケア株式会社(以下「第一三共ヘルスケア」という。),救心製薬株式会社(以下「救心製薬」という。),全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)及びアンファー株式会社(以下「アンファー」という。)などに対し,原告各商標の使用を許諾している(甲5の1ないし5の13)。
⑶ 原告商品の製造販売等
ア 原告勇心酒造は,米由来の素材又はこれを利用した素材(以下「原告素材」という。)を開発し,原告素材に「ライスパワー」(以下,原告素材の「エキス」を総称する場合には「ライスパワーエキス」ということがある。)との名称を付し,平成9年以降,原告素材を利用した化粧品等に原告各表示を付した商品(以下「原告商品」と総称する。)を販売している(甲23,弁論の全趣旨)。
イ 原告勇心酒造は,化粧品メーカー等の化粧品の素材を取り扱う企業に原告素材を提供・販売したり,原告素材を配合した化粧品等について,相手先の発注により相手先ブランドを付して製造するいわゆるOEM生産を行っており,原告勇心酒造がOEM生産をした商品(以下「OEM商品」と総称する。)にも「ライスパワー」との文言を含む表示が付されている(争いのない事実)。
⑷ 被告各商品の製造販売等
ア 被告は,令和元年5月24日,以下の商標の商標登録を受けた(甲事件乙1)。
(ア) 登録番号 6146418号
(イ) 商標 いいべさーホワイトライスパワー(標準文字)
(ウ) 指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分
第3類 化粧品,せっけん類
イ 被告は,遅くとも令和元年6月頃から,被告標章1(被告表示1)ないし被告標章4(被告表示4)を含む標章(表示)を被告各商品又はその容器に付し,被告各商品をインターネットを通じて販売し,販売のために展示し,また,被告各商品の販売のために,チラシやインターネット上の広告に被告標章5ないし8(被告表示5ないし8)及び被告表示9ないし15を含む標章又は表示を付して広告を行っていた(甲49,甲事件甲6ないし9)。
2 争点
(甲事件の争点)
⑴ 原告各商標と被告各標章の類否
⑵ 差止め及び廃棄の必要性
(乙事件の争点)
⑶ 原告各表示の「商品等表示」への該当性
⑷ 不競法2条1項2号の「不正競争」について
ア 原告各表示の著名性
イ 原告各表示と被告各表示の類似性
⑸ 不競法2条1項1号の「不正競争」について
ア 原告各表示の周知性
イ 原告各表示と被告各表示の類似性
ウ 混同の有無
⑹ 差止め及び廃棄の必要性
⑺ 損害額
3 争点に対する当事者の主張
⑴ 争点⑴(原告商標と被告各標章の類否)
【原告創研の主張】
ア 原告各商標
原告商標1は片仮名の「ライスパワー」からなる商標であり,原告商標2は,アルファベットの標準文字で「RICE POWER」からなる商標であるところ,これらから,「ライスパワー」との称呼及び「米の力」との観念が生じる。
イ 原告各商標と被告各標章の類否
(ア) 被告標章1,2及び4
被告標章1,2及び4の「ホワイト」との用語は,化粧品業界においてその商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効果を謳う品質や効能表示に用いられるものとして広く一般的に使用されているものであり,識別標識としての機能を発揮しないことからすれば,被告標章1,2及び4の要部は「ライスパワー」の部分であると認識することができ,そこから「ライスパワー」との称呼及び「米の力」との観念が生じるといえる。そうすると,原告商標1と被告標章1,2及び4の要部は,外観,称呼,観念において同一であり,また,原告商標2と被告標章1,2及び4の要部は,称呼,観念において同一であり,原告各商標と被告標章1は類似する。
(イ) 被告標章3
被告標章3のうち「Treatment Milk・Cleansing」の部分は化粧品の普通名称や品質・効能を示すものであり識別機能は認められず,また,「White」の部分に識別機能が認められないことは前記のとおりであるから,被告標章3の要部は,「RicePower」の部分であり,そこから「ライスパワー」との称呼及び「米の力」との観念が生じる。そうすると,原告商標1と被告標章3の要部は,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告標章3の要部は,外観,称呼,観念において同一であり,原告各商標と被告標章3は類似する。
(ウ) 被告標章5ないし8
被告標章5ないし8の「ホワイト」の部分に識別機能は認められないことは前記のとおりであり,また,「プレミア美容乳液」又は「プレミア化粧水」の部分は単に商品の品質等を表示したものと理解され,識別機能は認められない。したがって,被告標章5ないし8の要部は,「ライスパワー」であり,そこから「ライスパワー」との称呼及び「米の力」との観念が生じる。そうすると,原告商標1と被告標章5ないし8の要部は,外観,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告標章5ないし8の要部は,称呼,観念において同一であり,原告各商標と被告標章5ないし8は類似する。
ウ 小括
以上によれば,原告各商標と被告各標章は類似しているといえる。
【被告の主張】
ア 被告主張各標章について
被告各商品に付された被告の標章は,別紙6被告標章・表示目録(被告主張)記載1ないし4のとおりである(以下,順に「被告主張標章1」ないし「被告主張標章4」といい,これらを併せて「被告主張各標章」という。)。
イ 分離観察について
(ア) 被告主張各標章は,外観上一体性があり,また,「いいべさー」は「いいね」という程度の意味を有する方言であり,一般的にその後に続く言葉に掛かるものであり,「いいべさー」や「IIBESĀ」は,その下の段に記載されている「ホワイトライスパワー」や「White Rice Power」に掛かると考えるのが自然であり,全体として「いいねホワイトライスパワー」という意味を生じるものであり,言葉の意味合いという観点からも一体性がある。そして,その構成中の「ライスパワー」,「Rice Power」の部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべき事情は見出せず,これらが需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
したがって,被告主張各標章から,「ライスパワー」,「Rice Power」部分を分離,抽出することはできない。
(イ) 被告主張各標章が一体のものとして分離できないことを前提に類否の判断をすると,被告主張各標章は,「IIBESĀ」の欧文字,「いいべさー」の平仮名,「ホワイトライスパワー」,あるいは「IIBESA」の欧文字と「White Rice Power」の欧文字を結合したものであり,全てがまとまりよく表されており,当該文字から生じる「イイベサーホワイトライスパワー」の称呼もよどみなく一連に称呼でき,特定の観念を生じない。他方,原告各商標は,「ライスパワー」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。そうすると,原告各商標と被告主張各標章を全体的に観察すれば,両者は外観,称呼において異なることが明らかであり,非類似の商標というべきである。
(ウ) 原告は,被告主張各標章から被告標章1ないし8が分離可能であり,被告標章1ないし8が原告各商標と類似すると主張する。
しかしながら,「ホワイトライス」の部分からは,「玄米を搗いて,糠ぬかや胚芽を取り除いた米の飯」という特定の観念を生じ,「ホワイト」の語が商品の色彩や肌の美白効果を表示したものではなく,取引者,需要者としても「ホワイト」の部分だけを分離して判断し,肌の美肌効果であると理解するとは考えられない。そして,「ライスパワー」,「Rice Power」に周知性はなく,「ライスパワー」に「ホワイト」,「Rice Power」に「White」の文字を結合したものということはできない。したがって,「ホワイトライスパワー」,「White Rice Power」の要部が「ライスパワー」,「Rice Power」であるとはいえず,これらを分離,抽出することはできない。
そうすると,原告の主張を前提に被告標章1ないし8と原告各商標を比較したとしても,両者は,「ホワイト」,「White」の文字の有無により構成態様が明らかに異なり,また,称呼においても「ホワイト」,「White」の音の有無により,語調語感が明らかに異なり,観念は比較できないものであるから,全体的に考察して,外観,称呼において明らかに異なり,非類似というべきである。
⑵ 争点⑵(差止め及び廃棄の必要性)
【原告創研の主張】
被告は,原告創研の商標権を侵害する以上,差止め及び廃棄の必要性が認められる。
【被告の主張】
原告創研の主張は争う。被告は,原告創研からの警告を受けた後,被告各商品が掲載されたインターネット上のホームページ自体を削除しており,被告各商品の販売や注文はない。
⑶ 争点⑶(原告各表示の「商品等表示」への該当性)について
【原告勇心酒造の主張】
原告商品又はOEM商品において,原告各表示が化粧品の商品名又は化粧品の素材の商品名として付されている。そして,原告各表示である「ライスパワー」は造語であり,成分の普通名称でもなく,商標登録がされていることを示す「®」という記号とともに表示されており,原告各表示の使用は出所識別機能のない態様での使用ではない。また,「ライスパワーNO.11」や「ライスパワーエキス」も原告素材の名称を示すものとして使用されており,単に成分表示として使用されているものではない。
以上によれば,原告各表示は,「商品等表示」に当たる。
【被告の主張】
原告商品やOEM商品には,化粧品の商品名や商標が商品の中心部分に表示されているのに対し,原告各表示は,上記商品名や商標とは別に,その下方や商品の裏面に「ライスパワーNO.11」や「ライスパワーエキス」などと表示されている。このような原告各表示の位置,文字の大きさ,字体等に照らせば,原告各表示は,それら商品の成分を表示したものと認識される態様で表示されているといえる。需要者も商品名や商標をもって商品を識別しているのであり,これらに自他識別機能があるとしても,原告各表示については商品の成分として認識されているにすぎない。
また,原告創研のライセンス先企業のうち原告勇心酒造以外の企業は,営業上の密接な関係はなく,一体性もない。そして,これらのライセンス先企業は,原告各表示をそのまま使用せず,「ライスパワーNo.11」,「ライスパワーエキス」など原告素材を使用していることを示すために原告各表示を用いているだけであり,原告各表示の持つ優位的効能・効果についての出所識別機能,品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているとはいえず,グループとしての一体性もなく,グループとして信用を形成しているわけではないから,「他人」とはいえない。
以上によれば,原告各表示は,「他人の商品等表示」に当たらない。
⑷ 争点⑷ア(原告各表示の著名性の有無)
【原告勇心酒造の主張】
ア 原告勇心酒造は,原告素材としての「ライスパワー」を使用した自社商品として,化粧品を長年,三越やオンラインショップ,薬局等を通して販売した結果,累計600万本以上という大量の販売実績を誇っており,また,新聞・雑誌記事,需要者の口コミにより高い評価を得ており,原告商品に表示されている原告各表示は,広く全国的に化粧品に係る消費者に知られているといえる。
イ また,OEM商品には,商品等表示としての「ライスパワー」の表示や成分表示としての「ライスパワー」の表示があるが,原告素材の「ライスパワー」の効能・効果が高評価であることから,OEM商品の流通を通じて,消費者が「ライスパワー」の開発元が原告勇心酒造であることを認識することとなり,結果,原告各表示は,化粧品に係る消費者に広く全国的に知られていることとなっている。
ウ さらに,原告素材の一部は,医薬部外品の効能として「皮膚水分保持能の改善」や「皮脂分泌の抑制」効果が認められた唯一の素材であり注目を集めており,消費者からも高評価を得ているため,原告勇心酒造には常に化粧品メーカーを初めとする化粧品の素材を取り扱う企業からOEM生産についての打診があり,原告素材の「ライスパワー」は化粧品の素材を扱う企業に広く全国的に認識されている。
エ 以上によれば,「ライスパワー」や「RICE POWER」は,化粧品についての表示としても,化粧品の素材としての表示としても,化粧品に係る一般消費者及び化粧品の素材を扱う企業のいずれの需要者にとっても著名であるといえるものである。
【被告の主張】
ア 「著名」といえるためには,世間一般に広く認識されていることが必要であるが,「ライスパワー」及び「RICE POWOER」は,商品に独立,単独で表示されているのではなく,「ライスパワーNO.11」や「ライスパワーエキス」など単に原告素材を使用している態様で表示されており,原材料の意味として認識されるにとどまり,原告各表示には,著名性はない。
イ 原告勇心酒造は,原告商品と並行して他社のOEM商品を製造販売しており,名だたる複数の会社にOEM商品を提供しているが,各企業の商品には,当該商品の商品名,商標が表示されており,需要者もその商品名,商標をもってその商品であることを認識する。これらのOEM商品にも「ライスパワー」等の原告各表示があるとしても,上記商品名,商標とは別に,商品の表面の下又は裏面に表示され,しかもその表示も「ライスパワー®NO.11」を配合など原材料を示す態様の表示となっている。そして,この表示は,「米の力」,「米のエキス」などのコメを原材料としている意味に理解されるものであり,需要者は原材料として認識する程度であり,「ライスパワー®NO.11」などの表示にも,自他識別力や出所表示力はないかあっても弱いといえる。
ウ 原告勇心酒造は,ライセンス先企業による原告各表示の使用が周知,著名性を基礎付けると主張する。しかし,OEM商品の製造者(原告勇心酒造)が商品の品質等の管理,販売価格や販売数量を決定するとは考えられず,これらは発注元のライセンス先企業が決定していると考えられる。また,自らの判断と責任において主体的に,当該表示の付された商品を市場における流通に置き,あるいは営業行為を行うなどの活動を通じて,需要者の間において,当該表示に化体された信用の主体として認識されるのは,原告勇心酒造ではなくライセンス先企業である。したがって,原告勇心酒造は,不競法2条1項1号又は2号の「他人」に当たらず保護される主体とはなり得ず,ライセンス先企業による使用は周知,著名性を基礎付けない。
⑸ 争点⑷イ(原告各表示と被告各表示の類似性の有無)
【原告勇心酒造の主張】
ア 原告各表示について
原告表示1は,片仮名の「ライスパワー」からなる表示であり,原告表示2及び3は,それぞれアルファベットの「RicePower」及び「RICE POWER」からなる表示であり,これらからは,「ライスパワー」の称呼及び「米の力」という観念が生じる。
イ 原告各表示と被告各表示の対比
(ア) 被告表示1ないし9
被告表示1ないし9の要部が「ライスパワー」であることは,上記⑴ 【原告創研の主張】イと同様である。そうすると,原告表示1と被告表示1,2,4ないし9の各要部は外観,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告表示1,2,4ないし9の各要部は,称呼,観念において同一であり,また,原告表示1と被告表示3の要部は,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告表示3の要部は,外観,称呼,観念において同一である。そして,これらの表示が同一又は類似の商品に使用された場合,需要者において商品の出所につき誤認混同を生じることから,原告各表示と被告表示1ないし9は類似する。
(イ) 被告表示10ないし15
被告表示10ないし15は,著名表示である「ライスパワー」を含む一方で,「いいべさー」並びに,「ホワイト」及び「プレミア化粧水」,「美容乳液」又は「ミルク・クレンジング」の部分は識別力はないか,あるいは弱いものである一方で,「ライスパワー」の語が著名であることから,著名表示を含む被告表示10ないし15は,原告各表示と類似する。
(ウ) 以上によれば,原告各表示と被告各表示は類似するといえ,被告が被告各商品について被告各表示を使用する行為は,不競法2条1項2号に該当する。
【被告の主張】
ア 被告主張各表示
被告各商品の被告表示は,別紙被告標章・表示目録(被告主張)記載1ないし4のとおりであり(以下,「被告主張表示1」ないし「被告主張表示4」といい,これらを併せて「被告主張各表示」という。),全体としてまとまりよく表示されており,称呼も冗長ではなく,よどみなく一連に称呼できることから,全体を一体として理解すべきであり,その要部を抽出し比較することはできない。
そうすると,「いいべさーホワイトライスパワー」と「ライスパワー」は明らかに同一でも類似でもない。
イ 分離観察について
また,被告各商品の表示について,被告主張各表示の全体を一体として理解すべきでないとしても,被告各表示のうち「ホワイトライスパワー」は一体の表示であり,これを分離することはできず,その要部として「ライスパワー」を抽出して対比することはできず,また,「いいべさーホワイトライスパワー」としても一体不可分のものとなっていることは上記⑴【被告の主張】イのとおりである。
以上によれば,「いいべさーホワイトライスパワー」のうち「ホワイトライスパワー」を抽出できるとしても,「ホワイトライスパワー」と「ライスパワー」を対比すれば,外観,称呼,観念において同一又は類似するものではない。したがって,需要者において,原告各表示と被告主張各表示との出所につき誤認混同は生じず,これらは類似しない。
⑹ 争点⑸ア(原告各表示の周知性の有無)
【原告勇心酒造の主張】
上記⑷【原告勇心酒造の主張】アないしウや,原告商品は,三越のような高級百貨店の直営店又は三越伊勢丹のオンラインショップでも取り扱われていることに加えて,ライセンス先企業の商品や包装又はカタログ等の宣伝媒体又はインターネット広告等に照らせば,原告各表示が需要者の間に広く認識されており,周知性が認められるというべきである。
【被告の主張】
原告勇心酒造の主張は争う。上記⑷【被告の主張】で述べたのと同じ事情により,原告各表示には周知性は認められない。
⑺ 争点⑸イ(原告各表示と被告各表示の類似性の有無)
【原告勇心酒造の主張】
原告各表示と被告各表示が類似していることは,上記⑸【原告勇心酒造の主張】のとおりである。
【被告の主張】
原告勇心酒造の主張は争う。被告の主張は,上記⑸【被告の主張】のとおりである。
⑻ 争点⑶ウ(混同の有無)
【原告勇心酒造の主張】
原告各表示と被告各表示は類似しているといえるところ,原告各表示は,化粧品及び化粧品の素材についての表示として広く需要者に認識されており,原告各表示の「ライスパワー」は原告勇心酒造が創造した造語であり,その独創性は前記の周知性・著名性と相まって非常に強い。そして,原告勇心酒造は,原告各表示を化粧品及び化粧品に使用される素材に付して販売しているところ,被告各商品も「化粧品」に含まれる商品であり,いずれも皮膚のケアに役立つことを謳っており,原告勇心酒造と被告の商品における関連性は極めて密接である。さらに,原告商品と被告各商品の取引者及び需要者も共通しており,「ライスパワー」等の原告各表示又はそれらに類似する表示が化粧品等に表示された場合,一般消費者のみならず,化粧品メーカー等の化粧品の素材を扱う企業関係者にとっても,原告素材が利用されていると認識される状況といえる。
以上によれば,需要者が原告各表示に類似する被告各表示が付された被告各商品に接した場合,それらの者は,被告各商品を原告勇心酒造の化粧品又は原告勇心酒造の開発した化粧品の素材が含有された商品であると誤認し,ひいては,原告勇心酒造と被告とが何らかの提携関係にあると誤認・混同するおそれがある。
したがって,被告が被告各商品について被告各表示を使用する行為は,不競法2条1項1号に該当する。
【被告の主張】
原告勇心酒造の主張は争う。原告各表示は,需要者において原告勇心酒造の出所を示すものとして広く認識されているとはいえず,周知性もない上に,被告主張各表示から,「ライスパワー」,「Rice Power」を抽出し,対比することはできず,誤認混同のおそれはない。
⑼ 争点⑹(差止め及び廃棄の必要性)
【原告勇心酒造の主張】
被告各商品が市場に流通することは原告勇心酒造の著しい損害につながるものであり,差止めの必要性が認められる。
【被告の主張】
被告は,被告各商品のすべての販売,広告を止めており,差止め及び廃棄の必要性はない。
⑽ 争点⑺(損害額)
【原告勇心酒造の主張】
被告は,被告各商品を販売したことによって,17万7882円の利益を得たことからすれば,被告による不正競争行為によって原告勇心酒造に発生した損害額は,不競法5条2項に基づき17万7882円というべきである。
【被告の主張】
被告が被告各商品を販売したことによって得た利益が17万7882円であることは認めるが,その余は争う。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
証拠(後掲)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
⑴ ライスパワーについて
ア 原告勇心酒造は,昭和47年頃から,日本酒の醸造発酵技術を生かした米の総合利用研究に着手した。その後,原告勇心酒造は,米由来の成分の持つ効果等に着目し,米を発酵してできたエキスを「ライスパワーエキス」と名付け,研究開発を続けた。昭和62年には「ライスパワーエキス」の一つである米発酵エキスが,米を原料とする入浴剤成分として厚生省(当時)から医薬部外品として認可された(甲21の2)。
イ 原告勇心酒造は,各種のライスパワーエキスについて研究,開発をして,それに番号を付した名前を付けるなどしており,昭和63年にライスパワーNo.3(洗浄剤用表皮健全化剤),平成元年にライスパワーNo.1(表皮健全化剤),平成3年にライスパワーNo.101(抗潰瘍剤),平成4年にライスパワーNo.11(皮膚水分保持能改善),ライスパワーNo.6(皮脂分泌抑制剤)の研究開発を開始するなどした。ライスパワーNo.11は,平成13年,厚生労働省から,効能又は効果を「皮膚水分保持能改善」として医薬部外品として認可された。ライスパワーNo.11には,肌の内側からセラミドを増大させ,肌が水分を保つ力を改善する「水分保持能改善」効果が認められるとされている。平成27年には,ライスパワーNo.6が,厚生労働省から,医薬部外品の新規効能として「皮脂分泌の抑制」の効果を有するものとして認可された。ライスパワーエキスについて,現在,原告勇心酒造により,13種類の素材が実用化されている。(甲2の1,2の2,3の2,3の3,21の3,21の5)
また,原告勇心酒造は,平成2年,米の総合利用研究及びその普及に総合的に取り組むためにライスパワープロジェクトを立ち上げ,ライスパワー素材の研究,普及活動などを行うようになった。同プロジェクトは,大蔵省(当時)の経営革新支援法第1号として認定されたりした。(甲18の10,42の6)
全農は,平成15年3月7日,「ライスパワーシンポジウム 第1回コメの新時代を拓くライスパワー」と題するシンポジウムを主催し,「ライスパワー」の開発・研究に携わってきた研究者の成果の発表などが行われた(甲42の6)。
⑵ 原告商品について
ア 原告商品アトピスマイル
(ア) 原告勇心酒造は,徳島大学医学部教授と共同でアトピー性皮膚炎や乾燥性湿疹を予防する米エキス「ライスパワーNo.11」を共同開発し,平成14年1月30日,ライスパワーNo.11を使った新商品「アトピスマイル」を同年2月11日から販売を開始するとの記者会見を行った。この記者会見の様子は,ローカルテレビ局で報道されたほか,新聞各社(山陽新聞,四国新聞,愛媛新聞,徳島新聞,東京新聞,産経新聞,日刊工業新聞,朝日新聞)の同月31日から同年2月3日の新聞紙面でも取り上げられ,上記新商品に「ライスパワーNo.11」又は「ライスパワーエキス」が配合されており,厚生労働省が医薬部外品として初めて承認した「皮膚水分保持能の改善」の効能があることなどが紹介された。(甲16の1ないし16の6,21の5)
(イ) 「アトピスマイル」は,その後も各社の新聞紙面(平成14年5月8日付け神戸新聞,同年11月4日付け日本経済新聞,同月10日付け四国新聞,同月22日付け日本経済新聞,同年12月3日付け日経MJ,平成15年2月6日付け日本経済新聞)で取り上げられた(甲16の8ないし11,16の13,16の16)。
(ウ) 「アトピスマイル」は,販売開始から6か月で累計6万本が出荷され,令和元年9月11日時点において,累計200万7643本が販売されている(甲13)。
(エ) 「アトピスマイル」の容器や外箱の表側には,「ATPI」,「SMILE」との2段の表示のほかに,「RICE POWER」,「No7」との2段の表示が付され,容器の裏側には,青色の長方形の中に,白抜きで2つの十字が示された下に白抜き文字で「RICE」,「POWER」との2段の表示が付され,また,「ライスパワーNo.7配合」との表示が付されている。外箱には,「アトピスマイル,ライスパワーは勇心酒造株式会社の商標です。」などの表示が付されて,販売されている。(甲7の1ないし7の4)
イ 原告商品ライース
(ア) 原告勇心酒造は,平成9年7月から,水分保持能改善クリームである「ライース」の販売を開始し,平成23年には「ライースリペア」シリーズの販売を開始し,令和元年9月11日時点において,累計312万9064本が販売されている(甲13,19の97)。
(イ) 「ライース」の容器や外箱の表側には,「RAIZ」との表示のほかに,「RICE POWER」,「No1」との2段の表示や「Rice Power」との表示が付され,容器の裏側には,青色等の長方形の中に,白抜きで2つの十字が示された下に中に白抜き文字で「RICE」,「POWER」との2段の表示が付され,また,「ライスパワーNo.1配合」等の表示が付されている。外箱には「ライース,ライスパワーは勇心酒造株式会社の商標です。」などの表示が付されて,販売されている(甲7の8ないし7の26)。
ウ 原告商品バリアケア
(ア) 原告勇心酒造は,平成15年2月から,薬用スキンケア入浴液である「バリアケア」の販売を開始し,令和元年9月11日時点において,累計52万8895本が販売されている(甲13)。
(イ) 「バリアケア」の容器や外箱の表側には,「BARRIER CARE」又は「バリア ケア」との表示のほかに,「RICE POWER」,「No1」との2段の表示や「RicePower」との表示が付され,容器の裏側には,黒色等の長方形の中に白抜き等で,2つの十字が示された下に中に白抜き文字等で「RICE」,「POWER」との2段の表示が付され,また,「ライスパワー®No.1配合」等の表示が付されている。外箱には,「ライスパワー,バリアケアは勇心酒造株式会社の商標です。」などの表示が付されて,販売されている(甲7の27ないし7の37)。
エ 原告商品ミスアール
(ア) 原告勇心酒造は,平成10年12月から,コンディショニングシャンプーである「ミスアール」の販売を開始し,令和元年9月11日時点において,累計36万6603本が販売されている(甲13)。
(イ) 「ミスアール」の容器の表側には,「miss」と「R」を組み合わせた表示のほかに,「RicePower」との表示や「ライスパワーNo1-E」との表示が付され,容器の裏側には,「ライスパワー®No1-E配合」,「ミスアール,ライスパワーは勇心酒造株式会社の商標です。」などの表示が付されて,販売されている(甲7の5ないし7の7)。
オ 原告商品の販売場所
(ア) 原告勇心酒造は,平成14年から,自社ウェブサイトにおいて,「Rice Power-online shop-」又は「ライスパワーショップ」との名称のオンラインショップを開設し,アトピスマイル,ライース,バリアケア,ミスアールなどの原告商品の通信販売を行っている(甲8)。
(イ) 原告勇心酒造は,高松三越(平成9年~現在),日本橋三越本店(平成14年~現在),福岡三越(平成17年~令和2年),JR大阪伊勢丹(平成23年~平成26年)に直営店舗を開設し,店頭に「RicePower」などの表示を付して,原告商品を販売している。また,原告商品は,名古屋三越栄店(平成15年~現在),松山三越(平成18年~現在),新宿三越(平成13年~平成17年),千葉三越(平成15年~平成29年),池袋三越(平成15年~平成21年),仙台三越(平成15年~令和元年),大阪三越(平成17年~平成19年),倉敷三越(平成15年~平成17年)においても販売されている(甲9の1,9の2,9の5,弁論の全趣旨)。
原告商品は,三越伊勢丹のオンラインショップにおいても販売されており,原告商品が販売されている同ショップのウェブサイトの冒頭には「RicePower」との表示が付され,「肌本来の力を引き出すライスパワーの「改善型」スキンケア」と表示がされており,原告商品の写真の下には「Rice Power」との表示と各商品名や販売価格が表示されている。また,原告商品は,全国190店以上のドラッグストアでも販売されている。(甲11,12)
カ 広告や雑誌・新聞記事等
(ア) 原告勇心酒造は,原告素材又は原告商品について,各種新聞や雑誌に,記事広告を出稿しており,平成22年から令和元年までの宣伝広告費は,合計12億0535万6481円である。各年の宣伝広告費は以下のとおりである。(甲51,弁論の全趣旨)
38期(平成22年6月) 1107万3299円
39期(平成23年6月) 3566万0140円
40期(平成24年6月) 1784万1292円
41期(平成25年6月) 5333万5993円
42期(平成26年6月) 9080万7511円
43期(平成27年6月) 1億0468万1352円
44期(平成28年6月) 1億5284万2765円
45期(平成29年6月) 1億2097万2714円
46期(平成30年6月) 2億8665万0057円
47期(平成31年6月) 3億3149万1358円
(イ) 原告勇心酒造は,平成15年以降,四国新聞,日本農業新聞や朝日新聞に原告商品の広告を掲載しており,また,原告商品は,新聞(読売新聞,日本経済新聞,朝日新聞,毎日新聞,産経新聞,日経産業新聞,四国新聞)や雑誌(週刊宝島,週刊朝日,日経ベンチャー,日経ビジネス,クロワッサン,婦人画報,美ST,家庭画報,日経ヘルス,美的,婦人公論など),書籍に紹介され,原告勇心酒造が原告各表示を付した原告商品を製造ないし販売していることなどが掲載された(甲16ないし19,21)。
(ウ) 原告勇心酒造は,会員登録した消費者に対し,「ri・po・e(リポエ)」という会員誌(令和2年現在の発行部数は毎号1万2000部)を,特約店には「ライスパワーネット便り」という冊子を定期的に配布しており,ライスパワーないしライスパワーエキスや原告商品の紹介などをしている(甲15の1ないし15の29,弁論の全趣旨)。
(エ) 原告素材及び原告商品は,テレビ番組の「スーパーニュース」(フジテレビ。平成24年11月8日放送),「ルック 地域発・輝くカンパニー」(西日本放送。同年12月2日放送),「ジュピターの英雄」(BS11。同年8月26日放送),「報道ステーションサンデー」(テレビ朝日。同年2月26日放送),「シアワセ気分」(西日本放送。平成23年3月5日放送),「ドリーマーズ~地方時代のリーダー達~」(西日本放送。平成22年3月28日放送),「知るを楽しむ」(NHK。平成19年12月17日放送),「スーパーJ チャンネル「くるり!経済アンテナ」」(瀬戸内海放送。同年3月19日放送),「経済最前線」(NHK BS1。同年9月27日放送),「ゆる。」(岡山放送。平成25年2月16日放送),「地域の力で未来創生 ~お米の可能性を求めて~」(岡山放送,BSフジ。平成28年1月30日放送),「JAPAN BUSINESS EDGE 日本語版」(JIB(NHK子会社)の制作・放送(常時ネット配信)),「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京。平成17年3月28日放送)において,特集が組まれ,紹介されるなどした(甲22)。
⑶ OEM商品について
ア 原告勇心酒造は,平成9年以降,40社の企業に対して原告素材又は原告素材を配合したOEM商品を提供している(甲37)。
イ 累計50万本以上の販売数があるOEM商品として以下のものがある。
コーセーは,OEM商品として「インフィニティ」,「プレディア」,「ボーテドコーセー」,「肌極」,「ONE BY KOSE」,「米肌」,「モイスチャースキンリペア」という販売名の商品を販売しており,これらの商品の外箱又は容器には,「RICEPOWERTM」,「ライスパワーTM配合」,「ライスパワーTM〔米エキス〕No.11配合」,「Rice Power Extract」,「ライスパワー®No.11配合」,「RICE POWER No.11」などの表示が付されている(甲26の1ないし26の26,弁論の全趣旨)。
第一三共ヘルスケアは,OEM商品として「コスメディカ」という販売名の商品を販売しており,その外箱には「ライスパワー®No.11配合」との表示が付されている(甲26の28,弁論の全趣旨)。
アイムは,OEM商品として「ライスフォース」,「アクポレス」という販売名の商品を販売しており,その外箱又は容器には,「ライスパワー® No.1エキス」,「RICE POWER」,「ライスパワー®No.6」,「ライスパワー®No.11配合」などの表示が付されている(甲26の29ないし26の76)。
コーセーの研究者のウェブサイトにおいて,ライスパワーNo.11が原告勇心酒造が開発した成分であるとの紹介がされていたり,第一三共ヘルスケアのウェブサイトにおいては,商品紹介に際してライスパワーの効能効果についての資料の出典が原告勇心酒造であることが明示されており,また,アンファーは,新商品のプレスリリースやOEM商品のインターネット上の広告においてライスパワーの開発元が原告勇心酒造であることに言及している(甲27の7,38の1,40の1,40の2)。
⑷ 原告勇心酒造と原告創研は,営業上の密接な関係がある関連会社であり,原告創研がライセンス先企業に原告各商標の使用を許諾し,原告勇心酒造がOEM生産したOEM商品をライセンス先企業に提供するなどしており,また,原告創研は,「ライスパワー」等の標章を付した商品の販売先に警告書を送付して販売の停止を求めるなどしており,原告勇心酒造と原告創研は一体として「ライスパワー」の商標等のブランド管理に注力している(争いのない事実,甲37,46)。
2 争点⑶(原告各表示が「商品等表示」に当たるか否か)
⑴ 甲事件は,商標権侵害を理由とする差止め及び廃棄を求める請求であり,乙事件は,不競法2条1項1号又は同項2号(選択的)の「不正競争」に当たることを理由に差止め並びに廃棄及び損害賠償を求める請求であると解されるところ,本件事案の内容に鑑み,乙事件のうち不競法2条1項1号に関する請求から判断する。
前記前提事実⑶及び前記認定事実⑵によれば,原告勇心酒造は,原告商品(アトピスマイル,ライース,バリアケア,ミスアール)の容器や外箱に,「ライスパワー」,「RicePower」,「RICEPOWER」の表示(原告各表示)を付して原告商品を販売していることが認められる。また,青色の長方形の中に,白抜きで2つの十字が示された下に白抜き文字で「RICE」,「POWER」との2段の表示がされているものなどもある。
これらに照らせば,原告各表示は,「他人の商品等表示」(不競法2条1項1号)に当たるといえる。
⑵ 被告は,原告各表示は商品の成分を表示したものと認識される態様で表示されたものであり,「商品等表示」には当たらないなどと主張する。
確かに,原告商品には,各商品の商品名のほかに,「ライスパワー®No.7配合」(甲7の1),「有効成分:ライスパワー®エキスNo.1-D」(甲7の2)等の表示も付されており,「ライスパワー」等の表示が成分表示としても使用されていることは認められる。しかしながら,原告商品には,上記⑴のとおり,成分表示とは別に,「RicePower」,「RICEPOWER」などの表示や,青色の長方形の中に,白抜きで2つの十字が示された下に白抜き文字で「RICE」,「POWER」との2段の表示が付されるなどしていて,これらの表示は,その表示の態様等からも,商品の出所を示す表示と認められるものである。また,原告商品の外箱等には,「ライスパワーは勇心酒造株式会社の商標です。」などの表示も付されている(同⑵ア(エ),同イ(イ),同ウ(イ),同エ(イ))。その他,それらの表示が付された原告商品が,「Rice Power-online shop-」という名称のオンラインストアや「RicePower」との表示を付した三越店舗内の直営店で販売されたりしていること(同⑵オ(ア)(イ))にも照らせば,原告商品に付されるなどした原告各表示は,原告商品の出所を示す表示として用いられているものといえる。
したがって,被告の上記主張を採用することはできない。
3 争点⑸ア(原告各表示の周知性)について
⑴ 原告商品の容器や外箱には,商品名の他に「ライスパワー」,「RICEPOWER」,「RicePower」との表示や「ライスパワーは勇心酒造の商標です。」などの表示が付されて販売されている(前記認定事実⑵ア(エ),同イ(イ),同ウ(イ),同エ(イ))ところ,平成14年2月から販売された「アトピスマイル」の販売本数は累計200万本以上,平成9年7月から販売された「ライース」の販売本数は累計312万本以上,平成15年2月から販売された「バリアケア」の販売本数は累計52万本以上,平成10年12月から販売された「ミスアール」の販売本数は累計36万本以上であり,これらは現在も販売されており(同⑵アないしエ),原告各表示の付された原告商品が広く流通しているといえる。これに加えて,原告勇心酒造は,平成22年から令和元年まで合計12億円以上の宣伝広告費をかけて新聞や雑誌等に原告素材又は原告商品の広告を掲載しており(同⑵カ(ア)),また,原告商品は,各種新聞や雑誌,書籍に紹介されたり(同⑵カ(イ)),自社作成の会報誌等で紹介されたりしているほか(同⑵カ(ウ)),テレビ番組でも多数回紹介されていること(同⑵カ(エ)),高松三越及び日本橋三越本店には,原告勇心酒造の直営店が設けられており,その店頭には「RicePower」などの表示が付されて原告商品が販売されているほか,上記以外の三越の店舗や三越伊勢丹のオンラインショップ,全国190店以上のドラッグストアでも原告商品は販売されている(同⑵オ(イ))。
「ライスパワー」は,原告勇心酒造が米発酵エキスに付した独自の名称でもあった(前記認定事実⑴ア)ところ,原告商品に付された「ライスパワー」,「RICEPOWER」,「RicePower」との原告各表示は,その態様等から原告商品の出所を示す表示として用いられているといえるものである。そして,原告各表示が付されるなどした原告商品の販売状況,それへの宣伝広告,紹介の状況,店舗での販売状況等を考えれば,原告各表示は,原告商品の販売や広告等を通じて長期間にわたり原告勇心酒造の出所を示すものとして需要者が広く目にしているものであり,遅くとも被告各商品が販売された令和元年6月時点において,原告各表示は,需要者である化粧品に関心を有する一般消費者の間では,原告勇心酒造の出所を示すものとして広く認識されていた周知の表示と認めるのが相当である。そして,原告商品の販売は,その後も継続していたと認められるから,本件口頭弁論終結時(令和3年11月30日)においても,原告各表示は,原告勇心酒造の出所を示すものとして周知の表示であったと認めるのが相当である。
⑵ 原告は,OEM商品の販売状況も原告各表示の周知性の根拠として主張するのに対し,被告は,需要者は,OEM商品については,商品に付された各企業の商品名や商標をもって商品を認識しており,その表示が化体された信用の主体として認識されるのはライセンス先企業であることなどを主張する。
この点について,OEM商品はライセンス先企業の商品名等が付された上でライセンス先企業の商品として販売されているのであり,それらでは,「ライスパワー」などは多くは成分を表すものとして表示されている(前記認定事実⑶イ)。また,それらの企業と原告勇心酒造が,原告各表示の持つ出所識別機能等を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することができるグループであるとは認められず,OEM商品の販売等をもって,直ちに原告各表示が原告勇心酒造の表示として周知となることの根拠になるとは認められない。
もっとも,原告勇心酒造の出所を示す表示といえる原告各表示が付された原告商品の販売状況,それへの宣伝広告,紹介の状況,店舗での販売状況等に照らせば,前記⑴のとおり,原告各表示は,原告勇心酒造の出所を示すものとして周知の表示であったと認められる。
4 争点⑸イ(原告各表示と被告各表示の類似性)について
⑴ ある商品等表示が不競法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似のものに当たるか否かについては,取引の実情の下において,取引者,需要者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である。
⑵ 原告各表示について
ア 原告表示1は,「ライスパワー」の片仮名の文字列からなり,「らいすぱわー」との称呼を生じ,「米の力」との観念が生じる。
イ 原告表示2及び3は,「RicePower」又は「RICEPOWER」のアルファベットの文字列からなり,いずれも「らいすぱわー」との称呼を生じ,「米の力」との観念が生じる。
⑶ 被告各表示について
ア 被告表示の特定
被告の表示について,原告は,被告表示1ないし15のとおりであると主張し,被告は,被告主張表示1ないし4のとおりであると主張する。
前記前提事実⑷イ,証拠(甲49,甲事件甲6ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告各商品を販売しており,被告主張表示1ないし4を使用していたこと,また,被告は,被告各商品を販売するため,チラシやインターネット上の広告に被告表示5ないし15を使用していたことが認められる。したがって,被告は,被告主張表示1ないし4及び被告表示5ないし15の表示を使用していたといえ,以下,これを前提に原告各表示とこれらの被告の表示が類似するか否かを検討する。
イ 被告主張表示1について
(ア) 被告主張表示1は,「IIBESĀ」,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の3段の文字列からなり,「ホワイトライスパワー」の部分は,黒字の背景に白文字の表示となっており,「いいべさー」,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」との称呼が生じる。そして,「いいべさー」とは,東北地方の方言で「いいでしょう」という意味を持ち,「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」との観念が生じるものといえる。
このように,被告主張表示1の外観において,「IIBESĀ」,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は3段に分かれて表示されており,「ホワイトライスパワー」の部分は黒字の背景に白文字の表示になっており,他とは区別されている。そして,その観念については,「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」というものであり,「いいでしょう」は「白い米の力」(ホワイトライスパワーの文字部分)を修飾しており,「白い米の力」の部分が需要者の注意を引きつけるものといえる。また,その称呼についても「いいべさー」,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読するのは冗長であり,各部分について格別に称呼が生じるといえる。
(イ) 加えて,被告主張表示1の「ホワイトライスパワー」のうち「ライスパワー」部分は,需要者である化粧品に関心のある一般の消費者に原告勇心酒造の出所を示すものとして周知の表示であった(前記3⑴)。そして,原告商品及び被告各商品は,ともに化粧品の部類に属するものといえるところ,化粧品類の取引においては,一般に,「ホワイト」とは,その商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効果を謳う品質や効能表示に用いられるものとして,広く使用されているといえ,このような化粧品類の取引の実情に鑑みれば,「ホワイト」の部分は,その商品の品質,効能,色彩を表示するものと理解し得るものといえる。これらによれば,本件においては,「ホワイトライスパワー」のうち,「ライスパワー」の部分が周知の表示として需要者に強い印象を与え,このこととの関係において,「ホワイト」の部分は,その「ライスパワー」の品質,効能,色彩を示すものと理解し得て,その場合には識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるというべきであり,一般の消費者は,「ライスパワー」部分に着目するといえる。
(ウ) このように,被告主張表示1の外観や観念,称呼に加えて,「ライスパワー」部分が需要者に周知の表示といえることや化粧品類の取引の実情に照らせば,被告主張表示1において強く支配的な印象を与えるのは,「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分であるというべきである。
したがって,被告主張表示1については,原告各表示と被告主張表示1の「ライスパワー」部分の類似性を検討するのが相当である。
そうすると,原告表示1と,被告主張表示1の「ライスパワー」部分は,外観,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告主張表示1の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえるから,原告各表示と被告主張表示1は,両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるといえ,類似しているといえる。
ウ 被告主張表示2及び4について
(ア) 被告主張表示2及び4は,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の2段の文字列からなり,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」との称呼が生じる。そして,「いいべさー」とは,東北地方の方言で「いいでしょう」という意味を持つものであり,「いいでしょう」,「白い米の力」との観念が生じるものといえる。
このように,被告主張表示2及び4の外観において,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は2段に分かれて表示されており,また,その観念についても,「いいでしょう」の部分は,「白い米の力」を修飾しており,「白い米の力」の部分が需要者の注意を引きつけるものといえる。また,その称呼については「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読するのはやや冗長なところがある。
(イ) 加えて,「ホワイトライスパワー」のうち,「ライスパワー」の部分は周知の表示であり,需要者に対し商品の出所識別標識として強い印象を与え,このこととの関係において「ホワイト」の部分が識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるといえることは上記イ(イ)のとおりである。
(ウ) 以上に照らせば,被告主張表示2及び4で強く支配的な印象を与えるのは,「ホワイトライスパワー」の文字部分のうち「ライスパワー」部分であるというべきであり,原告各表示と被告主張表示2及び4の「ライスパワー」部分との類似性を検討するのが相当である。
そうすると,原告表示1と,被告主張表示2及び4の「ライスパワー」部分は,外観,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告主張表示2及び4の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえるから,原告各表示と被告主張表示2及び4は,両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるといえ,類似しているといえる。
エ 被告主張表示3について
(ア) 被告主張表示3は,「IIBESĀ」,「White Rice Power」の2段の文字列からなり,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」との称呼が生じる。そして,「いいべさー」とは,東北地方の方言で「いいでしょう」という意味を持つものであり,「いいでしょう」,「白い米の力」との観念が生じるものといえる。
このように,被告主張表示3の外観において,「IIBESĀ」,「White Rice Power」の部分は2段に分かれて表示されており,また,その観念についても,「IIBESĀ」の部分は,「White Rice Power」を修飾しており,「White Rice Power」の部分が需要者の注意を引くといえる。また,その称呼については「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読するのはやや冗長なところがある。
(イ) 加えて,「White Rice Power」のうち,「RicePower」の部分は周知の表示であり,需要者に対し商品の出所識別標識として強い印象を与え,このこととの関係において「White」の部分が識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるといえることは上記イ(イ)のとおりである。
(ウ) 以上に照らせば,被告主張表示3で強く支配的な印象を与えるのは,「White RicePower」の文字部分のうち「Rice Power」部分であるというべきであり,原告各表示と被告主張表示3の「Rice Power」部分との類似性を検討するのが相当である。
そうすると,原告表示1と,被告主張表示3の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告主張表示3の「ライスパワー」部分は,外観,称呼,観念において同一であるといえるから,原告各表示と被告主張表示3は,両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるといえ,類似しているといえる。
オ 被告表示5ないし9
被告表示5,6,8及び9は「ホワイトライスパワープレミア美容乳液」という文字列からなる表示であり,被告表示7は,「ホワイトライスパワープレミア化粧水」という文字列からなる表示である。これらの表示のうち,「ライスパワー」部分は,化粧品に関心のある一般の消費者に周知の表示であり,需要者の注意を強く引くものといえ,需要者に対し商品の出所識別標識として強い印象を与え,このこととの関係において「ホワイト」の部分が識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるといえることは,上記イ(イ)のとおりである。そして,「プレミア美容乳液」,「プレミア化粧水」の部分については,「プレミア」は「高級な」「上等な」という形容詞である「プレミアム」の略語として広く使用されており,普通名称である「美乳溶液」又は「化粧水」部分を修飾するものといえ,「プレミア美容乳液」又は「プレミア化粧水」の文字部分に識別力は認められない。
以上によれば,被告表示5ないし9で強く支配的な印象を与えるのは,「ライスパワー」部分であるというべきである。
そうすると,原告表示1と,被告表示5ないし9の「ライスパワー」部分は,外観,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告表示5ないし9の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえるから,原告各表示と被告表示5ないし9は,両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるといえ,類似しているといえる。
カ 被告表示10ないし15
被告表示10ないし12は,「いいべさーホワイトライスパワープレミア化粧水」,被告表示13は,「いいべさーホワイトライスパワープレミア美容乳液」,被告表示14は,「いいべさーホワイトライスパワーミルク・クレンジング」,被告表示15は,「いいべさーホワイトライスパワー トリートメント ミルク・クレンジング」の文字列からなる表示である。これらの表示のうち,「ライスパワー」部分は化粧品に関心のある一般の消費者に周知の表示であり,需要者の注意を強く引くものといえ,需要者に対し商品の出所識別標識として強い印象を与えるものといえることは上記イ(イ)のとおりである。また,「いいべさー」の部分は,東北地方の方言で「いいでしょう」という意味であり,それ以下の文言を修飾しており,それ自体識別力に乏しい。そして,「ホワイト」の部分が識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるといえることは上記イ(イ)のとおりである。加えて,「パワープレミア化粧水」,「プレミア美容乳液」の文字部分に識別力が認められないことは上記オ(ア)のとおりであり,また,「トリートメント ミルク・クレンジング」の部分も普通名称であり識別力は認められない。
以上によれば,被告表示10ないし15で強く支配的な印象を与えるのは,「ライスパワー」部分であるというべきである。
そうすると,原告表示1と,被告表示10ないし15の「ライスパワー」部分は,外観,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告表示10ないし15の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえるから,原告各表示と被告表示10ないし15は,両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるといえ,類似しているといえる。
キ 被告は,①被告主張表示1ないし4が全体としてまとまりよく表示されており,称呼も冗長ではなく,よどみなく一連に呼称できることから,全体を一体として理解すべきである,②「ホワイトライスパワー」のうち「ホワイトライス」とは白米を指すことから,「ホワイト」の部分だけを分離して判断することはできないなどと主張する。
しかしながら,上記①について,被告主張表示1は「IIBESĀ」,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の3段に分かれて記載され,被告主張表示2及び4は,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の2段に分かれて記載され,被告主張表示3は,「IIBESA」,「WhiteRice Power」の2段に分かれて記載されていること,その称呼についても一連に呼称するには長く,また,それぞれの部分が別々の観念を生じさせるものであること,被告もインターネット上において「ホワイトライスパワープレミア化粧水」,「ホワイトライスパワープレミア美容乳液」,「ホワイトライスパワー化粧水」,「ホワイトライスパワー美容乳液」などと「いいべさー」と切り離して使用していること(甲49の5,49の7)からすれば,被告主張表示1ないし4について全体を一体として理解すべきとはいえず,被告の上記①の主張は採用することはできない。
また,上記②について,確かに,一般的に「ホワイトライス」には「白米」の意味があるとはいえるものの,被告各商品は化粧品の部類に属する商品であり,また,「ライスパワー」が周知の表示といえることは前記3⑴のとおりである。これに加えて,前記のような化粧品類の取引の実情として「ホワイト」の用語が商品の品質,効能,色彩を表示するものとして広く用いられており,「ホワイトライスパワー」のうち「ホワイト」の部分が周知の表示である「ライスパワー」の品質,性能,色彩を示すものにすぎず,識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であることを併せて考えれば,「ホワイトライスパワー」等の表示に接した需要者は,「ライスパワー」部分から強く支配的な印象を受け,「ホワイト」と「ライスパワー」部分を分離して理解し得るものというべきであり,被告の上記②の主張を採用することはできない。
ク 以上のとおり,原告各表示と被告主張表示1ないし4及び被告表示5ないし15は,類似しているといえる。そして,被告主張表示1ないし4は,「ホワイトライスパワー」又は「White Rice Power」という被告表示1ないし4の文字列を含むことからすれば,原告各表示と被告表示1ないし4は類似しているといえる。したがって,原告各表示と被告各表示は類似しているといえる。
5 争点⑸ウ(混同の有無)
原告各表示と被告各表示が類似していることに加えて,原告商品及び被告各商品はいずれ化粧品の部類に属し,取引者及び需要者は共通のものといえることなどに照らせば,被告が原告各表示と類似する被告各表示を付して被告各商品の販売等することは,需要者に他人である原告の商品と混同を生じさせる行為といえる。
したがって,被告が被告各表示を使用した商品を販売等する行為は,不競法2条1項1号の不正競争に該当する行為といえる。
6 争点⑹(差止め及び廃棄の必要性)及び争点⑺(損害額)
⑴ 差止め及び廃棄請求について
被告は,被告各商品の全ての販売,広告をやめており,差止め及び廃棄の必要性はないなどと主張するが,被告は,原告各表示と被告各表示の類似性を否定するなど不競法2条1項1号の不正競争に該当する行為を否認していることなどに照らせば,被告が被告各表示を使用することの差止め及び被告各商品等の廃棄を命じる必要性があると認めることができる。
⑵ 損害賠償請求について
被告が被告各表示を使用して商品を販売等する行為は,不競法2条1項1号に該当するところ,原告各表示は周知のものといえ,被告が平成30年頃に原告勇心酒造を複数回訪問しており(争いのない事実),原告各表示が原告商品の商品等表示であると認識していたといえることなどから,被告は過失により不正競争行為を行ったということができる。
そして,原告勇心酒造は,不競法5条2項に基づいて損害賠償請求をするところ,被告が被告各商品を販売することにより得た同項の「利益」は,17万7882円であると認められること(争いのない事実)からすれば,原告勇心酒造の損害賠償額は同額と推定される。したがって,原告勇心酒造の損害賠償請求は,17万7882円の限度で理由がある。
⑶ 以上によれば,原告勇心酒造の被告各表示の使用の差止め及び被告各表示を付した被告各商品等の廃棄の請求はいずれも理由があり,損害賠償請求については17万7882円の限度で理由があるというべきである。なお,原告勇心酒造については,不競法2条1項1号に基づく請求が認められる以上,同項2号に基づく請求について判断する必要はない。
7 争点⑴(原告各商標と被告各標章の類否)
⑴ 被告標章の特定
原告創研は,被告の標章について,被告標章1ないし8のとおりであると主張し,被告は,被告主張標章1ないし4のとおりであると主張する。
前記前提事実⑷イ,証拠(甲49,甲事件甲6ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告主張標章1ないし4の標章を被告各商品又はその容器に付して販売し,販売のために展示し,また,被告各商品の販売のために,チラシやインターネット上の広告に被告標章5ないし8の標章を付して広告していたことが認められる。したがって,被告は,被告主張標章1ないし4及び被告標章5ないし8を使用していたといえ,以下,これを前提に原告各商標とこれらの被告の標章の類否を検討する。
⑵ 類否の検討
ア 商標の類否
商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察し,取引の実情を踏まえつつ,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるか否かにより決すべきである。そして,上記の被告の標章は,いずれも複数の構成部分を組み合わせた結合商標といえるところ,このような結合商標においては,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部のみを他人の商標と比較して,上記の基準により商標の類否が判断される場合があるということができる。これを前提に以下検討する。
イ 被告主張標章1について
(ア) 被告主張標章1は,被告主張表示1と同一の構成であり,「IBESĀ」,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の3段の文字列からなり,「ホワイトライスパワー」の部分は,黒字の背景に白文字の表示となっており,「いいべさー」,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」との称呼が生じる。そして,「いいべさー」とは,東北地方の方言で「いいでしょう」という意味を持ち,「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」との観念が生じるものといえる。
このように,被告主張標章1の外観において,「IIBESĀ」,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は3段に分かれて表示されており,「ホワイトライスパワー」の部分は黒字の背景に白文字の表示になっており,他とは区別されている。そして,その観念については,「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」というものであり,「いいでしょう」は「白い米の力」(ホワイトライスパワーの文字部分)を修飾しており,「ホワイトライスパワー」の文字部分が需要者の注意を引きつけるものといえる。また,その称呼についても「いいべさー」,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読するのは冗長であり,各部分について格別に称呼が生じるといえる。
(イ) 加えて,被告主張標章1の「ホワイトライスパワー」のうち「ライスパワー」部分は,化粧品に関心のある一般の消費者に,原告勇心酒造の出所を示す表示として周知の表示といえ,需要者に強い印象を与えるといえる(前記3⑴)。また,原告商品及び被告各商品は,ともに化粧品の部類に属するものといえるところ,化粧品類の取引においては,「ホワイト」とは,一般に,その商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効果を謳う品質や効能表示に用いられるものとして,広く使用されているといえ,このような化粧品類の取引の実情に鑑みれば,「ホワイト」の部分は,その商品の品質,効能,色彩を表示するものと理解し得るものといえる。これらによれば,本件においては,「ホワイトライスパワー」のうち,「ライスパワー」の部分が周知の表示として需要者に強い印象を与え,このこととの関係において,「ホワイト」の部分は,その「ライスパワー」の品質,効能,色彩を示すものと理解し得て,その場合には識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるというべきであり,一般の消費者は,「ライスパワー」部分に着目するといえる。
(ウ) このように,被告主張標章1の外観や観念,称呼に加えて,「ライスパワー」の部分が需要者に周知の表示といえることや化粧品類の取引の実情に照らせば,被告主張標章1で強く支配的な印象を与える部分は,「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分であるというべきである。
したがって,被告主張標章1については,原告各表示と,被告主張標章1の「ライスパワー」部分との類否を検討するのが相当である。そうすると,原告商標1と,被告主張標章1の「ライスパワー」部分は,外観,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告主張標章1の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえる。そして,原告勇心酒造と原告創研は,原告各商標の持つ出所識別機能等を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することができ(前記認定事実⑷),実質的には同一の表示による商品化事業を一体として営む関係にあるといえることに鑑みれば,上記「ライスパワー」部分が同一である場合,原告各商標と被告主張標章1は,類似しているということが相当である。
ウ 被告主張標章2及び4について
被告主張標章2及び4は,被告主張表示2及び4と同一の構成であるところ,その外観は,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の2段に分かれて表示されており,また,その観念についても,「いいでしょう」「白い米の力」との観念が生じるものであり,「いいでしょう」の部分は,「白い米の力」(「ホワイトライスパワー」の部分)を修飾しており,「ホワイトライスパワー」の部分が需要者の注意を引くものといえる。また,その称呼については「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読するのはやや冗長なところがある。
加えて,被告主張標章2の「ホワイトライスパワー」のうち,「ライスパワー」部分は,原告勇心酒造の出所を示す表示として周知の表示といえ,需要者に強い印象を与え,このこととの関係において「ホワイト」の部分が識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるといえることは,上記イ(イ)のとおりである。
以上に照らせば,被告主張標章2及び4で強く支配的な印象を与える部分は,「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分であるというべきであり,原告各商標と被告主張標章2及び4の「ライスパワー」部分との類否を検討するのが相当である。
そうすると,原告商標1と被告主張標章2及び4の「ライスパワー」の部分は,外観,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告主張標章2及び4の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえ,前記の事情の下において,原告各商標と被告主張標章2及び4は,類似しているということが相当である。
エ 被告主張標章3について
被告主張標章3は,被告主張表示3と同一の構成であるところ,その外観は,「IIBESĀ」,「White Rice Power」の部分は2段に分かれて表示されており,また,その観念についても,「いいでしょう」「白い米の力」との観念が生じるものであり,「IIBESĀ」の部分は,「White Rice Power」を修飾しており,「White Rice Power」の部分が需要者の注意を引くものといえる。また,その称呼については「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読するのはやや冗長なところがある。
加えて,被告主張標章3の「White Rice Power」のうち,「Rice Power」部分は,原告勇心酒造の出所を示す表示として周知の表示といえ,需要者に強い印象を与え,このこととの関係において「White」の部分が識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるといえることは,上記イ(イ)のとおりである。
以上に照らせば,被告主張標章3の強く支配的な印象を与える部分は,「White Rice Power」の文字部分のうち「Rice Power」の部分であるというべきであり,原告各商標と被告主張標章3の「Rice Power」の部分との類否を検討するのが相当である。
そうすると,原告商標1と被告主張標章3の「Rice Power」の部分は,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告主張標章3の「Rice Power」の部分は,外観,称呼,観念において同一であるといえ,前記の事情の下において,原告各商標と被告主張標章3は,類似しているということが相当である。
オ 被告標章5ないし8について
被告標章5ないし8は,被告表示5ないし8と同一の構成であるところ,被告標章5ないし8のうち「ライスパワー」部分は,原告勇心酒造の出所を示す表示として周知の表示といえ,需要者に強い印象を与え,このこととの関係において,「ホワイト」の部分が識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるといえることは,上記イ(イ)のとおりである。そして,「プレミア美容乳液」又は「プレミア化粧水」の部分について「プレミア」は「高級な」「上等な」という形容詞である「プレミアム」の略語として広く使用されており,普通名称である「美乳溶液」又は「化粧水」を修飾するものといえ,「プレミア美容乳液」又は「プレミア化粧水」の文字部分には識別力は認められない。
したがって,被告標章5ないし8の強く支配的な印象を与える部分は,「ライスパワー」部分であるというべきである。
そうすると,原告商標1と,被告標章5ないし8の「ライスパワー」の部分は,外観,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告標章5ないし8の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえ,前記の事情の下において,原告各商標と被告標章5ないし8は,類似しているということが相当である。
カ 被告は,①被告主張標章1ないし4が全体としてまとまりよく表示されており,称呼も冗長ではなく,よどみなく一連に称呼できることから,全体を一体として理解すべきである,②「ホワイトライスパワー」のうち「ホワイトライス」とは白米を指すことから,「ホワイト」の部分だけを分離して判断することはできないなどと主張するが,これらの被告の主張を採用することができないのは,前記4⑶キのとおりである。
キ 以上のとおり,原告各商標と被告主張標章1ないし4及び被告標章5ないし8は類似しているといえる。そして,被告主張標章1ないし4は,「ホワイトライスパワー」又は「White Rice Power」という被告標章1ないし4の文字列を含むことからすれば,原告各商標と被告標章1ないし4は類似しているといえる。したがって,原告各商標と被告各標章は類似しているといえる。
8 争点⑵(差止め及び廃棄の必要性)について
原告各商標と被告各標章はいずれも類似し,被告各商品は,美容乳液,化粧水,ミルククレンジングであり,原告各商標の指定商品である「せっけん類」又は「化粧品」に含まれるといえる。そして,被告は,遅くとも令和元年6月から,被告標章1ないし4を被告各商品及びその容器に付し,被告各商品をインターネットを通じて販売し,販売のために展示しており,また,チラシやインターネット上の広告に被告標章5ないし8を付して広告を行っていたこと(前記前提事実⑷イ)からすれば,被告は,原告創研の商標権を侵害したと認めることができる。
そして,被告が被告各商品の全ての販売,広告をやめていたとしても,被告各商品の販売等の差止め及び廃棄を命じる必要性があることは前記6⑴のとおりである。
以上によれば,原告創研の被告各標章を付した被告各商品の販売等の差止及び廃棄の請求はいずれも理由がある。
9 結論
よって,甲事件について,原告創研の請求はいずれも理由があるから認容(主文1項,2項)することとし,主文1項,2項に対する仮執行宣言は相当でないのでこれを付さないこととし,乙事件について,原告勇心酒造の請求は,主文3項ないし5項の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
(裁判長裁判官 柴田義明 裁判官 佐伯良子 裁判官 棚井啓)
別紙
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