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裁判年月日 平成13年 3月19日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平12(ワ)12555号
事件名 謝罪広告請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2001WLJPCA03190001
要旨
◆月刊誌『噂の真相』が、作家で財団法人日本船舶振興会の会長について、編集者や友人を誘ってポストを利用して競艇場通いをし特別待遇を受けて遊んでいるほか、財団を私物化している旨の記事を掲載したところ、このうち見学に特別待遇を受け、作家の息子を財団が作る美術館長に就任させようとしている部分は、作家の名誉を毀損するものであるとして、謝罪広告掲載が認められた事例
◆雑誌記事による名誉毀損の救済として全国紙に謝罪広告掲載を求める請求に対し、当該雑誌に謝罪広告を掲載することを一部認容として認めた事例
出典
新日本法規提供
評釈
Westlaw Japan・新判例解説 156号(2001WLJCC127)
参照条文
民事訴訟法246条
民法709条
民法723条
裁判年月日 平成13年 3月19日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平12(ワ)12555号
事件名 謝罪広告請求事件
裁判結果 一部認容 文献番号 2001WLJPCA03190001
原告 A
同訴訟代理人弁護士 早川治子
被告 岡留安則
被告 株式会社噂の真相
同代表者代表取締役 岡留安則
被告両名訴訟代理人弁護士 芳永克彦
同 内田雅敏
同 内藤隆
主 文
1 被告らは、原告に対し、被告株式会社噂の真相が発行する月刊誌「噂の真相」誌上に、別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の形式で1回掲載せよ。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告らは、原告に対し、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞及びサンケイ新聞の各朝刊の全国版社会面に、横6センチメートル、縦6.6センチメートルの枠で別紙3記載の謝罪広告を掲載日補充の上掲載せよ。
2 被告らは、原告に対し、連帯して200万円及びこれに対する平成12年8月30日から支払済みまで年5分の割合における金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、作家であり、日本財団(日本財団は通称であり、正式名称は財団法人日本船舶振興会である。以下「日本財団」という。)の会長の職にもある原告が、被告株式会社噂の真相(以下「被告会社」という。)発行の月刊誌「噂の真相」(以下「本件雑誌」という。)に掲載された記事によって名誉を毀損されたとして、被告会社及び本件雑誌の編集者兼発行人である被告岡留安則(以下「被告岡留」という。)に対し、不法行為に基づき、名誉を回復するのに適当な処分として謝罪広告の掲載を請求し、損害賠償として慰謝料の一部を請求している事案である。
1 前提事実(証拠を掲げない事実は争いがない。)
(1) 当事者等
ア 原告(甲6、8の1から3まで、甲10)
原告は、作家であるが、平成7年12月11日から日本財団の会長の職を務めている。なお、日本財団の会長の報酬については、寄附行為で無給と定められている。
イ 日本財団(甲5の1及び2、甲6、10)
日本財団は、正式名称を財団法人日本船舶振興会といい、モーターボートその他の船舶、船舶用機関及び船舶用品の製造に関する事業並びに海難防止に関する事業の振興に寄与し、あわせて海事思想の普及及び観光に関する事業並びに体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に資することを目的として、民法34条(公益法人の設立)の規定により設立された財団法人であり、モーターボート競走法には、その目的、業務内容、モーターボート競走(以下「競艇」という。)の施行者(地方自治体)から日本財団への勝舟投票券の売上金の一部交付義務が定められているほか、国土交通大臣がこれを監督し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができると定められている。
寄附行為によれば、日本財団の会長は理事の中から互選で選出され、財団を代表し、その業務を総理するものとされている。原告の前任者は笹川良一であった。
ウ 被告ら
被告会社は、本件雑誌の発行販売を行っている株式会社であり、被告岡留は本件雑誌の編集者兼発行人である。
(2) 被告らによる本件記事の編集、掲載及び発行
被告会社は、「日本財団会長も務める作家Aのお仕事ぶり 北杜夫や三好京三といった作家たちと競艇場見学」との見出しを付した記事(以下「本件記事」という。)を、被告岡留が編集した本件雑誌2000年6月号「Photo Scandal」5枚目に掲載・発行した。
(3) 本件記事の前提となる客観的事実(甲2、4の1及び2、甲10、乙21、原告本人)
平成12年3月、原告は、知人の作家、編集者、新聞・雑誌記者らに「平和島競艇場・視察」の案内状を出欠を連絡するための返信用葉書とともに送付した。そして、同年4月5日、平和島競艇場(以下「本件競艇場」という。)において、原告の案内で前記案内状に応じて参加した作家ら70余名(以下「本件参加者」という。)の競艇場見学会(以下「本件競艇場見学会」という。)が開かれた。
本件競艇場見学会は、原告が私的な行事として催したものであるが、数名の日本財団職員が受付・案内等の手伝いを行い、参加者は、本件競艇場の職員の案内で、一般席ではなく記者席で競艇観戦を行った。
(4) 本件記事の内容
本件記事には順に次の各記載がある(甲1)。
ア 本件記事上段の第2段落4行目から7行目にかけて、「一行は、・・・(中略)・・・係員に誘導されて一般客は立ち入れない特別席に入っていった。」との記載(以下「本件特別席記載」という。)がある。
イ 本件記事上段の第3段落6行目から8行目にかけて、「実はAセンセイ、このところなぜか文壇関係者を引き連れて、せっせと競艇場通いをしているというのだ。」との記載(以下「本件競艇場通い記載」という。)がある。
ウ 本件記事上段の第3段落8行目から19行目にかけて、「ある文芸誌の編集者がこう明かす。「Aは財団の会長に就任して以来、競艇関連のイベントがあるたびに、『面白いからぜひ一度見に行きましょうよ』って、知り合いの作家や自分の担当編集者を誘ってるんだ。懇親会だ、記念式典だと名目を付けて、だいたい月イチのペースで何らかの誘いがありますね。こっちもそんなヒマじゃないんだけど、わざわざ直筆の手紙を送られたら、誘いを無視するわけにはいかないでしょう」」との記載があり、本件記事下段の2行目から7行目にかけて「『周囲から注目されるのが大好きなAの性格は有名ですからね。取り巻きの編集者にチヤホヤされながら、自分の庭ともいえる競艇場で文壇の先輩を接待するのが楽しくてしょうがないんでしょう』(文壇関係者)」との記載がある(以下合わせて「本件勧誘記載」という。)。
エ 本件記事下段の第2段落には、「ところがこのツアーの趣旨を日本財団の広報課に問い合わせてみたところ、『A会長の個人的な観戦』とのこと。つまり、これはAのごく私的な『競艇見学ピクニック』御一行様というわけだ。」との記載(以下「本件個人観戦記載」という。)がある。
オ 本件記事下段の第3段落1行目から5行目にかけて、「だがこの日の様子は誰がどう見ても『特別扱い』がありあり。特別席はもちろん、Aや北の周囲には常に日本財団や競艇場の職員が寄り添い、一行の集合から解散まで世話をする気の遣いようである。」との記載(以下「本件特別待遇記載」という。)がある。
カ 本件記事下段の第3段落5行目から9行目にかけて、「たかが数百円分の入場料や、財団職員の人件費程度に目くじら立てるつもりはないが、それでも会長という立場を利用した財団の私物化といわざるを得ないだろう。」との記載(以下「本件私物化記載」という。)がある。
キ 本件記事下段の第4段落1行目から4行目にかけて、「なにしろAは、あの石井苗子を脅迫したストーカー男とも個人的な関係があり、財団の仕事まで与えていたという人を見る目のない『前科』があり」との記載(以下「本件ストーカー男記載」という。)がある。
ク 本件記事下段の第4段落4行目から7行目にかけて、「日本財団内部では、関西に建設する美術館の館長に息子を就任させようとしている、とまで言われているのだ。」との記載(以下「本件美術館館長記載」という。)がある。
2 争点
(1) 本件記事が原告の名誉を毀損するか否か。
(原告の主張)
本件記事は、次の諸点において、原告の名誉を毀損するものである。
ア 本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載について
本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載は、根拠がなく事実と異なる内容であり、読者に対し、原告が日本財団会長の職を利用して競艇場通いをして遊んでいるかのような印象を抱かせ、原告の名誉を毀損した。
イ 本件特別席記載、本件個人観戦記載、本件特別待遇記載及び本件私物化記載(以下合わせて「本件特別待遇等記載」という。)について
本件特別待遇等記載は、読者をして、原告が日本財団を私物化し、日本財団の費用により本件競艇場見学会を行っているかのように誤信させ、原告の人格に疑念を抱かせる結果を招き、原告の名誉を著しく毀損した。
ウ 本件ストーカー男記載について
本件ストーカー男記載は、原告があたかもこのストーカー男といかがわしい関係があるかのような印象を抱かせることで、原告の名誉を毀損した。
なお、本件ストーカー男記載からでは、被告らが原告の「前科」と記載する内容が理解できないから、名誉毀損とまで評価できないのではないかとも思われるが、本件雑誌1999年4月号に掲載された記事(以下「前回記事」という。)がその前提となっている点が重要である。同記事は、原告と本件記事におけるストーカー男(前回記事においては、副島賢治(以下「副島」という。)と明示されている。)との間にいかがわしい関係があるかのような含みのあるものであり、同記事を読んだことのある読者に対して、原告と副島との関係について疑惑が助長することが必定であり、原告の人格を著しく毀損するものである。
エ 本件美術館館長記載について
本件美術館館長記載は、原告が権力を利用しての私的利益を欲しいままにし、公私混同の生活をしているような印象を読者に抱かせ、著しく原告の名誉を毀損した。
(被告らの主張)
原告の主張は争う。
本件ストーカー男記載については、いかがわしい関係があるということは記載していないし、読者に対し、あたかもいかがわしい関係があるかのような印象を抱かせる余地もない。同記載は、原告が副島を個人的に知っていたことから日本財団の仕事を委ねた事実を指摘し、それに基づく論評を加えたものであり、原告が主張するような、前回記事についての言及もほのめかしも存在しない。前回記事が、事実に反するならば同記事を問題にすべきであって、それに全くふれていない本件記事を問題にするのは筋違いである。
(2) 本件記事内容が真実か、又は被告らが真実であると信じたことにつき、相当の理由があるか否か。
なお、本件記事について、公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図るものであったか否かについては争点となっていない。
(被告らの主張)
ア 本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載について
原告が、その都度文壇関係者を誘い同行しているということはないとしても、視察名目で各地の競艇場を訪れるとともに、機会あるごとに文壇関係者らに「面白いから、ぜひ見に行きましょう。」と競艇場に誘ったり、広報のため定期的に懇親会の案内を報道機関向けに発送するなど、積極的に競艇を宣伝する活動にいそしんでいることは事実である。
原告からの手紙の宛名書きが手書きで記載されていたことは間違いないし、それが月1度の割合であったか否かは、本件勧誘記載の主要な部分ではない。
イ 本件特別待遇等記載について
原告は、費用をすべて原告が負担しているから、原告による日本財団の私物化という批判はあたらないと主張するが、最終的な支払者が誰であれ、一旦日本財団が立て替えていたり、請求書が日本財団宛に送られていること、出欠の回答も日本財団秘書室宛になっていて、日本財団職員によって処理されていること、日本財団職員が付き添って案内・説明等の便宜を図っていること等の事実は、私物化ないし公私混同の批判を受けても仕方がないものである。また、特別席ではなく、記者席を使用したとしても、一般観客は記者席に入れないのであるから、特別扱いであることは間違いない。
ウ 本件ストーカー男記載について
本件ストーカー男記載は、原告が副島を個人的に知っていたことから日本財団の仕事を委ねたという争いのない事実を指摘し、その事実について人を見る目がないという論評を加えたものである。
エ 本件美術館館長記載について
日本財団内部においては、かねてから日本海事科学振興財団が運営する「船の科学館」にある「笹川館長所蔵品室」を発展させた記念館を建設する計画があり、その候補地として、笹川良一の生誕の地である大阪府箕面市や同府八尾市の名が上がっていた。原告の息子三浦太郎は、兵庫県尼崎市にある英知大学文学部国際文化学科教授で、文化人類学・宗教民族学を専攻していることから、日本財団内部でその館長候補として取り沙汰されたこともあり、本件美術館館長記載は、原告が息子の館長就任を望んでいるのではないかとの見方があることを指摘したものである。
(原告の反論)
被告らの主張は争う。
ア 本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載について
(ア) 原告は、日本財団会長に就任して以降、全国の競艇場24か所にそれぞれ1回会長就任の挨拶に行き、さらに3回の公式行事で競艇場に行ったが、それらはいずれも日本財団会長の職務執行行為として行ったものである。原告は、本件競艇場見学会以外に個人的に競艇場に行ったことはない。
(イ) 原告は、文芸誌編集者に対し、月1回のペースで直筆の手紙を送っていた事実はなく、本件競艇場見学会の案内状は、印刷した文書の宛名書きを原告やその秘書がしたものであって、直筆の手紙ではない。
イ 本件特別待遇等記載について
(ア) 原告は、日本財団の私物化を嫌うものであり、本件競艇場見学会は個人的な友人が中心であったため、案内状送付のための切手代、返信用葉書代、競艇場入場料、送迎バス貸切費用を原告が負担し、参加者の昼食も各自負担とした。
(イ) 本件特別待遇等記載では、本件競艇場見学会の参加者は特別席で見学したとされているが、このとき利用した席は記者席である。たまたま、当日記者席は記者が1人もおらず使われていなかったところ、出席者の中に報道関係者が相当数参加していたこともあり、競艇場関係者が記者席の利用を勧めたので、これを利用したのであり、特別扱いしたわけではない。
なお、記者席や特別席における勝舟投票券の購入単位は1口5枚、500円であるが、一般席での購入は1口1枚、100円である。したがって、競艇場の立場からみると、一般席で見学されるよりも、記者席や特別席で見学される方が売り上げに寄与するということもあり、競艇場関係者はたまたま記者席が使われていなかったために当日の利用を勧めたものと思われる。
(ウ) 日本財団では、原告が参加や企画をするか否かを問わず、広報担当者は、機会を捉えて、日本財団の具体的事業や活動を紹介するための広報活動を行っている。すなわち、日本財団広報担当者は、日本財団の事業内容の周知のために報道関係者やその他の関係者らを招待した競艇場見学会や記者会見を行っており、また、新聞紙上などに広告を掲載するなどとして広報に努めている。したがって、本件競艇場見学会にも、日本財団広報担当者が参加し、本件参加者に対し日本財団の活動を紹介するなどの広報活動を行ったのであって、原告の企画した私的な競艇場見学会で参加者を特別扱いするために広報担当者が参加したわけではない。
ウ 本件ストーカー男記載について
たまたま原告の知人であった副島が、スリランカの調査という日本財団に必要な活動の協力者として適当な条件を備えていたから、日本財団は正規の手続きと条件で仕事を依頼し、その依頼に応じた十分な業務の提供を受けたのであって、その後副島がストーカーをしたかどうかについては原告とは関係がない。
エ 本件美術館館長記載について
原告は、日本財団会長就任まもなく、見学者第一と考え、「船の科学館」にある故笹川良一の所蔵品展示室を整理縮小させた。したがって、原告が、被告らが主張するような、「笹川館長所蔵品室」を発展させた記念館を建築する計画を、それが資金的に日本財団に関わるならば容認するはずがない。美術館の建設については、原告のみならず日本財団の内部の人間が誰も知らないのであり、ましてや、原告の息子が館長になるという話が出るはずはない。
(3) 名誉毀損が成立する場合、謝罪広告掲載請求や慰謝料請求が認められるか。
(原告の主張)
ア 謝罪広告
原告は、本件記事の前記名誉毀損部分により著しく名誉を毀損されたので、その名誉を回復するためには、請求1記載のような謝罪広告の掲載が必要である。
イ 慰謝料
原告は、本件記事により、日本財団を私物化し、日本財団の金銭を使って私的競艇場見学を行ったなどという事実に基づかない誹謗中傷をされた結果、著しく精神的打撃を受けたが、これを金銭的に見積もれば500万円以上に相当するので、そのうち200万円を謝罪広告に加えて請求する。
(被告らの主張)
原告の主張は争う。
第3 争点に対する判断
1 争点(1) (本件記事が原告の名誉を毀損するか否か。)について
前記前提事実及び証拠(各認定事実の後に掲げる。)に基づいて、本件記事が一般読者の普通の注意と読み方を基準として原告の社会的評価を低下させ、名誉を毀損するか否かを検討する。
(1) 本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載について
ア 原告は、本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載は、あたかも原告が日本財団会長の職を利用して、友人を誘って競艇場通いをして遊んでいるかのような印象を与えると主張する。
本件記事においては、原告が競艇事業と密接な関連のある日本財団会長であることが明示されており(甲1)、本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載を併せ読むと、一部は文芸誌編集者の証言という形をとっているが、一般読者としては、原告が、日本財団会長就任後、積極的に知人を誘って競艇場に頻繁に通っているとの印象を持つものと認められる。
イ しかし、日本財団が競艇の施行者(地方自治体)から勝舟投票券の売上金の一部の交付を受けることは、モーターボート競走法に定められ、日本財団も新聞紙上で広報していることであるから(甲8の1から3まで)、社会的に広く知れ渡っている事実というべきである。したがって、本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載を読んだ一般読者が、日本財団会長である原告が積極的に知人を誘って頻繁に競艇場に通っていると受け取ったとしても、原告が、積極的に日本財団会長として社会的に否定的な評価をされるような行動をしているとの印象を持つことはないといえ、本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載が原告の社会的評価を低下させるものであるとは認められない。
もっとも、原告は、日本財団会長就任後、就任の挨拶のために全国の競艇場24か所をそれぞれ1回ずつ訪れたほかは、本件競艇場見学会を含めて4回しか競艇場を訪れておらず、本件競艇場見学会以外には私的に競艇場を訪れたことはなかったことが認められ(甲10、原告本人、弁論の全趣旨)、原告が文芸誌の編集者に直筆の手紙を送った事実も認められない(直筆の手紙であるかワープロ書きの手紙であるかはその持っている意味合いが大きく異なっているので重要な事実であるが、通常は封書の宛名のみを手書きした手紙を直筆の手紙とは言わない。甲4の1、甲10、乙1、証人川端、原告本人)。したがって、本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載については事実と相違する点があることは確かであり、原告は日本財団会長の職務として義務的に競艇場を訪れていたにすぎない(甲10、原告本人)のであれば、原告が積極的に競艇場に通っている印象を与える本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載は、原告の名誉感情を傷つけるものである可能性は否定できない。
しかし、前記のように、原告に対する社会的評価という観点からは、謝罪広告による名誉回復の措置をとったり、慰謝料でもって償ったりする必要があるほどの社会的評価の低下があるとは認められない。
ウ したがって、本件競艇場通い記載及び本件勧誘記載については、不法行為を構成するほど違法なものと認めることはできない。
(2) 本件ストーカー男記載について
ア 原告は、本件ストーカー男記載は、原告があたかもこのストーカー男といかがわしい関係があるかのような印象を与えると主張する。
本件ストーカー男記載は、原告とストーカー男が個人的な関係があり、日本財団の仕事をそのストーカー男に与えていたという事実を指摘した上で、その事実に対し、人を見る目がないという論評を加えているものであるが、ストーカー男なるものの氏名の記載や「個人的な関係」の具体的な内容の記載もなく、前後の文脈を考慮しても、それ自体で、一般読者に対し、原告がストーカー男といかがわしい関係があるような印象を与えるものとはいえない。
また、原告が、後に石井苗子を脅迫したとして逮捕された副島なる人物をスリランカの事情について詳しい人物として個人的に知っていたことから、日本財団が同人にスリランカでの仕事のための業務を委託したことがあることは原告も認めるところであり(甲9の1から8まで、甲10、乙24、原告本人)、その事実に対して「人を見る目がない」という論評を加えることについては、スリランカの事情に詳しいということとストーカー行為には特別な関連はなく、適切な論評とは言い難いが、論評としての域を逸脱したものとまでは認められない。
イ ただし、前回記事(甲11の1及び2)には、原告がストーカー男こと副島という年上好きの若い男と親密な関係にあった、原告の方からナンパしてきた、副島が原告の「若いツバメ」であっても不思議はないなどと記載されており、前回記事を読んだ一般読者は、あたかも原告が副島と男女関係に類する関係があったかのような印象を受けることは否定できない。
そして、前回記事を読み、かつその内容を記憶している一般読者ならば、本件ストーカー男記載を読んで、原告とストーカー男との個人的関係とは、前回記事に記載されていたような男女関係に類する関係を指しているものとの印象を受ける可能性があることも否定できない。
しかし、本件記事は、前回記事の1年2か月後に掲載されたものであり、時間の経過により、仮に前回記事を読んだ読者が本件記事を読んだとしても、本件記事掲載当時には既に前回記事の印象は相当程度薄れていたものと考えられるし、前回記事以外の出版物等において、原告とストーカー男との関係について記事が掲載されたことを窺わせる証拠は存しない。
したがって、本件ストーカー男記載と前回記事とを直接関連付けて、本件ストーカー男記載が原告の名誉を毀損するか否かを判断するのは相当でなく、本件ストーカー男記載は本件ストーカー男記載として、独立して原告の名誉を毀損するか否かを判断すべきものというべきである。原告が、前回記事によって名誉を毀損されたと考えるのであれば、前回記事自体を問題とすべきである。
以上によれば、本件ストーカー男記載は、原告の社会的評価に全く影響を与えないとまではいえないが、謝罪広告による名誉回復の措置をとったり、慰謝料でもって償ったりする必要があるほどの社会的評価の低下をもたらすものとは認められない。
ウ したがって、本件ストーカー男記載については、不法行為を構成するほど違法なものと認めることはできない。
(3) 本件特別待遇等記載及び本件美術館館長記載について
ア 本件特別待遇等記載のうち、本件特別席記載、本件特別待遇記載及び本件私物化記載のうちの「たかが数百円分の入場料や財団職員の人件費程度に目くじら立てるつもりはないが」という事実記載部分は、原告が日本財団会長であるからこそ、原告から招待された本件参加者が、本件競艇場を訪れた一般客では受けられない、特別席での観戦、日本財団職員や競艇場職員による応接、入場料の免除といった特別待遇を本件競艇場において受けたとの印象を読者に与えるものである。そして、本件特別席記載と本件特別待遇記載及び本件私物化記載の前記事実記載部分をつなぐ形で本件個人観戦記載がなされることにより、読者は、原告が日本財団会長としての職務上ではなく、日本財団会長という立場を利用して私的にそのような特別待遇を受けているとの印象を受けると考えられる。
本件私物化記載のうち、「会長という立場を利用した財団の私物化といわざるを得ないであろう」という部分は、本件特別席記載、本件個人観戦記載、本件特別待遇記載及び本件私物化記載のうちの前記事実記載部分(以下、これらの記載を合わせて「本件事実記載部分」という。)を基礎とした意見ないし論評の表明であると認められる(以下この部分を「本件論評部分」という。)が、本件論評部分は、本件事実記載部分によって読者に与えられた「原告は日本財団の会長という立場を利用して私的に特別待遇を受けている」という印象を明確なものにするとともに、それが「私物化」という否定的な評価に値するものであると論評することによって、それほど重大なこととは解されない、それゆえに「目くじら立てるつもりはない」と記載されている本件事実記載部分に記載された事実が、見逃されてはならない、非難されるべきものであるとの印象を改めて読者に植え付ける働きをしているものというべきである。
イ そして、本件美術館館長記載は、本件事実記載部分及び本件論評部分によって読者に与えられた「原告は日本財団を私物化している」という原告に対する否定的な印象を決定的なものにする働きをしているものと認められる。被告らは、本件美術館館長記載は、原告が息子の美術館館長就任を望んでいるのではないかとの見方があることを指摘したにすぎないと主張するが、本件美術館館長記載は、本件論評部分を受ける形で記載されており、原告による日本財団の私物化の表れとして、原告が日本財団会長の立場を利用して息子を美術館館長に就任させようとしているとの印象を読者に与えるものであることは明らかである。しかも、本件美術館館長記載は、「原告は日本財団を私物化している」という論評を加えるうえで、「目くじら立てるつもりはない」と記載されている本件事実記載部分と比べて格段に重要な内容を有し、原告に対する強い否定的印象を与えるものと認められる。
ウ したがって、本件特別待遇等記載及び本件美術館館長記載は、本件論評部分も含めて、全体として、本件記事の読者に対し、原告が日本財団を私物化しているとの印象を与えるものと認められる。そして、前記のとおり、日本財団は、目的、業務内容、競艇の施行者(地方自治体)の日本財団への売上金の交付義務等が法律で定められ、その業務に関して行政庁の監督に服する公益法人であり、強い公共性・中立性が求められるものであるから、これを私物化することは社会的に強い非難を受けるべき事柄であり、本件記事の本件特別待遇等記載及び本件美術館館長記載は、原告の社会的評価を看過しがたいほど低下させるもの、すなわち、原告の名誉を毀損するものというべきである(以下「本件特別待遇等記載及び本件美術館館長記載を合わせて「本件名誉毀損部分」という。)。
2 争点(2) (本件記事内容が真実か、又は被告らが真実であると信じたことにつき、相当の理由があるか否か。)について
(1) 前記のとおり、日本財団は強い公共性・中立性が求められる公益法人であるから、その会長が日本財団を私物化しているかどうかという事柄は、公共の利害に関するものであることは明らかであり、本件名誉毀損部分の掲載は専ら公益を図る目的に出たものと認められる(乙1、証人川端)。
(2) そこで、本件名誉毀損部分(ただし、本件論評部分を除く。)について、真実性の証明あるいは被告らが真実と信じたことについての相当性の証明があるか否かを検討する。
ア 被告らの取材活動及び本件記事掲載に至る経緯(乙1、13、21、証人川端、弁論の全趣旨)
(ア) 平成12年3月中旬ころ、被告会社に匿名の封書による投書(乙13)があり、その内容は、原告の名前で、4月5日の10時発で、日本財団からバスに乗って平和島の競艇を見に行かないかと各方面に手紙が出され、当惑している人も多いという趣旨のものであった。
被告岡留から、上記投書を見せられた被告会社の副編集長川端幹人(以下「川端」という。)は、競艇の施行者(地方自治体)から受け取った売上金の一部を補助金として公益法人に分配する権限を持つ日本財団につき笹川良一の一族によって不正に支配されてきたとみて問題視し、一族以外から会長に就任した原告の日本財団に対する関わり方に注目するとともに、競艇をギャンブルとして非難する立場から、原告の競艇に関する発言についても、これを「擁護発言」と理解して批判的な見方をしていた。そこで、川端は、原告の競艇場見学についても事実ならば会長として適当な行動であるのかを調べる必要を感じ、記者の常松裕明(以下「常松」という。)とともに取材を開始した。
川端と常松は、文芸誌の原告担当編集者、競艇に詳しいスポーツ紙記者、原告と親しい評論家及び元日本財団職員に取材をし、本件競艇場見学会開催の事実及び原告による勧誘の手紙の実物を確認した上で、常松及びカメラマンが本件競艇場見学会の現場を実際に取材した。さらに、川端らは、日本財団広報課に問い合わせた結果、本件競艇場見学会は原告の個人的な観戦である旨の回答を得た。
(イ) 上記現場取材においては、常松らは、本件競艇場見学会の集合場所として日本財団ビルが使用され、同ビル内で数名の財団職員が本件参加者の受付・案内を行っていたこと、本件競艇場では、一般客の入れない本件競艇場の建物の入り口まで本件参加者を乗せたバスが入り、本件競艇場の職員がバスの到着を出迎えていたこと、バス以外で本件競艇場に来た本件参加者に対しては、日本財団のポスターを貼った受付が用意され、日本財団職員が本件参加者を案内していたこと、本件参加者は本件競艇場の記者席に案内されて入っていったが、カメラマンは警備員に止められたこと、日本財団職員と思われる者が帰途につく本件参加者を見送っていることなどを確認し、その写真(乙21)も撮影した。
上記現場取材の結果を踏まえて、被告会社は、本件記事中に本件特別待遇等記載を掲載した。
(ウ) 他方、本件美術館館長記載に関しては、平成10年ころ、川端は、大手出版社発行の週刊誌記者から、笹川陽平(笹川良一の子で日本財団理事長)の側近である笹川系財団職員からの情報として、笹川陽平が新しい財団を作って美術館を建設し、その館長に原告の息子を就任させる計画を進めているとの情報を入手した。
そして、川端は情報源である同職員に電話取材をした結果、平成8年に美術館建設計画が持ち上がり、笹川系財団の職員によってプロジェクトチームが結成されたこと、笹川良一の内縁の妻を会長にして新たに財団を設立し、笹川良一が蒐集していた美術品の公開をするために「笹川記念美術館(笹川メモリアルミュージアム)」との命名が予定されている美術館の建設が検討されていたこと、プロジェクトチーム発足後1年くらい経ったころ、美術館の建設予定地が検討され始め、プロジェクトチームの名称も「美術館設立検討委員会」というような名前になっていたこと、美術館の建設候補地も関西が有力であり、もうすぐ本格的に始動すること、美術館建設計画については原告も知っており、笹川陽平から直接、原告から頼まれて、美術館館長に原告の息子を据えると聞いたことなどの情報を得た(以下「本件第1取材」という。)。
しばらくして、本件競艇場見学会の情報を得たことから、川端は常松に指示して前記の元日本財団職員に取材したところ、日本財団の現役職員に確認した結果の伝聞として、平成9年、10年ころから日本財団内部で美術館の検討をしていたことは間違いないが、検討していたのは日本財団の特定の部署ではなく、日本財団等で笹川陽平の側近的な仕事をしている幹部職員で構成された正式名称のない集団であったこと、英知大学の助教授である原告の息子は美術にも精通していて、館長に適任であることなどを理由として、検討資料の中には、原告の息子の館長就任が半ば決定事項のように書き加えられていたらしいこと、美術館建設計画自体は現在棚上げされており、計画は存続しているがプロジェクトチームも休眠状態で計画は進んでいないらしいことなどの情報を入手した(以下「本件第2取材」という。)。
上記の2つの取材によって、相互に独立した情報源からの情報がほぼ一致したと考え、被告らは、少なくとも日本財団内部に美術館館長に原告の息子を就任させようとしているという見方があることは事実であると判断し、本件美術館館長記載を本件記事中に掲載した。
イ 真実性の証明について
前記前提事実、本件第1・第2取材及び本件記事掲載の経緯、証拠(甲2、3、10、乙1、21、証人川端、原告本人)に基づき、本件名誉毀損部分の真実性の証明があるかについて検討する。
(ア) 本件特別席記載について
本件競艇場には、無料の自由席以外に記者席及び入場料金1000円の特別席が設置されており、記者席・特別席には専用の舟券購入窓口が設置されている。本件参加者は記者席で観戦しているが、記者席利用についての使用料等は支払われておらず、また、記者席には一般客は原則として立ち入ることはできない。
本件特別席記載は、本件参加者は「一般客は立ち入れない特別席に入っていった」としており、特別席と記者席の相違という点で必ずしも正確であるとはいえないが、一般客が立ち入れず、専用の窓口が設置されているという意味において、記者席を特別席と表現することが許されないとまではいえない。本件参加者が一般客が立ち入れない席に入って行ったことが事実である以上、本件特別席記載は、重要部分において真実であるというべきである。
(イ) 本件個人観戦記載及び本件特別待遇記載について
本件競艇場見学会は原告が個人的に催したものであること、本件参加者の案内等を日本財団や本件競艇場の職員が行ったことは、原告も認めるところである(甲10、原告本人)から、本件個人観戦記載及び本件特別待遇記載については真実であると認められる。
(ウ) 本件私物化記載の前記事実記載部分について
本件私物化記載の前記事実記載部分においては、前記認定のように、本件参加者について数百円分の入場料が免除されていたかのような印象を与える記載(以下「本件入場料記載」という。)があるが、本件参加者分の入場料は最終的に原告が支払っていることが認められ(甲2、原告本人)、当該記載が真実に反することは明らかである。日本財団職員の人件費については、原告あるいは本件参加者が負担していないことは明らかである(原告本人)から、その点については真実であると認められる。
(エ) 本件美術館館長記載について
本件美術館館長記載について、被告らは日本財団内部での見方を示したのみであると主張するが、前記のとおり、本件美術館館長記載は、本件論評部分を受けて、原告による日本財団の私物化の表れとして、原告が日本財団会長の立場を利用して息子を美術館長に就任させようとしているとの印象を読者に与えるものであり、読者としては、日本財団内部で原告が息子を美術館館長に就任させようとしているといわれている以上、そのような事実があるものと受け取るのが自然であるから、本件美術館館長記載の違法性は、原告が息子を美術館館長に就任させようとしているという事実の真実性が証明されてはじめて阻却されるものと解すべきである。
そこで、上記真実性について検討すると、本件第1及び第2取材の過程を見ると、日本財団の内部において、原告の息子を美術館館長にしようとする動きがあったという事実が存在することについては、本件第1、第2取材で得た情報で共通している。しかし、本件美術館館長記載において、最も重要な要素であるところの、原告が息子を美術館館長に就任させようとしているという事実については、本件第1取材において、笹川陽平の側近である笹川系財団職員から「笹川陽平から聞いた話」という再伝聞の情報があるというにとどまり、このような不確実な情報の存在によって、本件美術館館長記載についての真実性の証明がなされたということはできない。
(オ) まとめ
以上によれば、本件名誉毀損部分(本件論評部分を除く。)のうち、本件入場料記載及び本件美術館館長記載を除く部分については、真実性の証明がなされたというべきであるが、本件入場料記載及び本件美術館館長記載について真実性の証明がなく、特に後者は、本件論評部分を受けて、原告に対する強い否定的印象を支えるものであるから、本件名誉毀損部分(本件論評部分を除く。)は、その重要部分について真実性の証明があったと認めることはできない。
ウ 相当性の証明について
そこで、本件名誉毀損部分(本件論評部分を除く。)のうち、真実性の証明のない本件入場料記載及び本件美術館館長記載について、被告らが真実であると信じたことについて相当の理由があるか否か(相当性の証明の有無)を検討すると、本件参加者の入場料を最終的に誰が負担したかということについては、被告らは、原告本人に対してはもちろんのこと、日本財団にも問い合わせをしておらず、また、本件美術館館長記載についても、原告や原告の息子に真偽を確認していないのみならず、笹川系財団職員に「原告から頼まれて美術館館長に原告の息子を据える」という発言をしたとされる笹川陽平にそのような発言をしたことがあるかどうかの確認もしていないことは明らかである(証人川端)から、相当性の証明がなされたということはできない。
(3) 本件名誉毀損部分のうち、本件論評部分の違法性について
本件論評部分について、被告らは、本件競艇場見学会の案内状の返信先が日本財団であり、その発送手続も日本財団職員が行っていること、日本財団の職員が本件競艇場見学会の受付・案内、本件参加者が乗車したバスの手配を行ったことなどの事実をもって、原告が日本財団を私物化しているとの批判を受けても仕方がないと主張しており、そのような事実が存在したことはこれまで認定した事実や証拠(甲4の1及び2、原告本人)から明らかであるが、前記認定のとおり、本件競艇場見学会は、原告の知人である作家、編集者、新聞・雑誌記者等70余名の参加を得て行われたものであるが、日本財団が競艇の施行者(地方自治体)から勝舟投票券の売上金の一部の交付を受けてその事業を行っている以上、その会長である原告が、競艇の実情について、友人、知人にも理解を深めてもらいたいと考えることは自然なことであり、前記のような本件参加者の職業、人数からすれば、日本財団にとっても効果的な広報活動になることは明らかであるから、日本財団の広報担当の職員が本件競艇場見学会を手伝ったとしても、非難されるべきこととは考えられない。
しかも、本件論評部分は、本件事実記載部分を基礎として「会長という立場を利用した財団の私物化といわざるを得ないであろう」という論評を加えたような形式はとっているものの、その前後の文脈から判断すると、本件論評部分の後に記載されている本件美術館館長記載が前記論評を正当化する働きをするように構成されており、その意味では、本件論評部分は、本件事実記載部分だけでなく、本件美術館館長記載をも基礎として論評を加えたものというべきである。そして、本件事実記載部分のうち、本件入場料記載については、真実性、相当性の証明がなく、本件美術館館長記載についても、真実性、相当性の証明がないことは前記のとおりである。
被告らは、競艇の売上金の一部の交付を受ける日本財団が笹川良一の一族によって不正に支配されてきていると考えるとともに、競艇自体にもギャンブルとしての問題性があると考えており、日本財団会長就任後の原告の発言は、笹川良一の一族や、競艇を擁護するものとして問題視していたため、本件記事の掲載に至ったものと認められ(乙1、証人川端)、本件論評部分は、そのような被告らの原告に対する見方を背景にしたものであることが認められる。しかし、原告による財団の私物化という問題は、被告らが問題としていることとは別の問題であり、原告に対する強い個人攻撃となるものであるから、十分な根拠があってはじめてそのような論評ができる性質のもので、原告のこれまでの発言に問題を感じていたからといって、安易にそのような論評を加えることは許されないものというべきである。
以上によれば、本件論評部分は、その基礎とする事実の重要部分について、真実性、相当性の証明がなく、また、日本財団職員が本件競艇場見学会を手伝ったことをもって「会長という立場を利用した財団の私物化」と論評することは、論評の域を逸脱したものというべきであるから、本件論評部分も、原告の名誉を毀損するものとして違法性を有するものと認められる。
(4) 被告らの不法行為責任
よって、本件論評部分を含む本件名誉毀損部分による原告の名誉毀損については、その違法性が失われることはないものというべきであるから、被告らは、原告に対し、共同して不法行為責任を負うものというべきである。
3 争点(3) (名誉毀損の不法行為が成立する場合、謝罪広告掲載請求や慰謝料請求が認められるか。)について
そこで、原告の損害回復のために、どのような方法が相当であるか検討するため、今一度本件記事全体を見直し、その趣旨やその中での本件名誉毀損部分の位置付け等について検討する。
本件記事は、川端らによるかねてからの日本財団や原告に対する問題意識が根底にあって、「日本財団会長も務める作家Aのお仕事ぶり」、「北杜夫や三好京三といった作家たちと競艇場見学」と掲げられた見出しの下で、「せっせと競艇場通いをしているというのだ。」とか、「『競艇見学ピクニック』御一行様というわけだ。」などと、原告が主催した本件競艇場見学会を誇張ないし揶揄などしながら、写真掲載を伴って本件競艇場見学会を取り上げること自体に最大の意義を持たせたものであり(証人川端)、最後の部分では、「権力を持った『権力好き』の暴走が、いよいよ加速し始めているということなのか、単なるオバチャンのハシャぎすぎなのか、読者の判断はいかに。」というように、最終的には本件競艇場見学についての評価を読者に委ねる形を取ったものであって、その中に本件名誉毀損部分が含まれているものである。
原告は、本件名誉毀損部分以外に、本件勧誘記載や本件ストーカー男記載が名誉毀損による不法行為を構成する旨主張するが、この主張が認められないことは先に判示したとおりである。
強い公共性・中立性が求められる公益法人である日本財団の会長という職にある原告の仕事ぶりについて、批判的な見方に立って取り上げ、その評価を読者に問おうとした被告らの執筆目的や本件記事の趣旨に関しては、言論の自由として保護されるべきであるし、原告としても、日本財団会長の職にある以上、ある程度の批判的な見方についても甘受せざるを得ない立場にあるものというべきである。このような本件記事全体の趣旨やその構成、表現の具体的態様(本件私物化記載には、「目くじら立てるつもりはないが」という表現が加わっており、「私物化」の印象が和らげられているし、本件美術館館長記載も、断定的な表現ではなく、「とまで言われているのだ」として、あくまで伝聞であるような表現におさめられている。)等から考えると、本件記事全体がもたらす原告の社会的評価の低下の程度はそれほど大きなものであるとは認められない。
しかしながら、原告は、無給であることを条件に日本財団会長に就任し、就任後は公私の区別をはっきりさせることに格別配慮してきたものであり、本件競艇場見学会についても、郵便代・入場料・バス代等を原告自身で負担していたことが認められ(甲2、3の1及び2、甲10、原告本人)、読者に原告による日本財団の私物化を印象付ける本件名誉毀損部分は、原告のこれらの努力をまったく無にするものであるから、原告に対して適切な損害回復の手段が講じられる必要があるものというべきである。
そして、原告自身、本件裁判を金銭目的に行っているわけではないことを明言していること(甲10、原告本人)、本件訴訟における和解交渉においても、原告自らが被告らから金銭を受領するのではなく、原告が指定する非営利団体に被告らが寄付をすることを求めていること(甲10、乙25の1から5まで)、原告は、本件訴訟を提起した目的について、前回記事については私事でもあり無視したが、引き続いて本件記事が掲載され、本件記事においては私事に加えて日本財団という公的団体の私物化という内容も含まれており、今後さらなる記事掲載を防ぐためにも提訴を決めたと供述していること(甲10、原告本人)等の事情及び本件記事全体によってもたらされる原告の社会的評価低下の程度等一切の事情を斟酌すると、原告の名誉を回復し、原告の損害を回復するためには、被告らに対し、本件雑誌の誌上に、別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の形式で1回掲載することを命じることが必要であるとともに、それで十分である(それ以上の謝罪広告の掲載請求や損害賠償請求は理由がない。)というべきである。
謝罪広告について、原告は、別紙3の謝罪広告を全国紙5紙の全国版朝刊社会面に掲載することを求めている。しかし、本件雑誌は全国紙5紙よりも読者数がはるかに少ないことは明らかであるから、原告が求めるように全国紙5紙にまで謝罪広告を掲載することを命じるのは過大な措置というべきであり、本件名誉毀損部分が掲載された本件雑誌に謝罪広告の掲載を命じるのが相当である。原告は、本件雑誌への謝罪広告の掲載を求めていないが、本件訴訟における和解交渉においては、本件雑誌への謝罪広告の掲載と原告の指定する非営利団体への寄付を求めており(甲10、乙25の1から5まで)、本件雑誌への謝罪広告の掲載を命じることも原告の請求の範囲に属するものと解されるし、本件雑誌に謝罪広告を掲載することは、全国紙に掲載することに比べ、その広告機能及び広告経費が下回るものであることは明らかであるから、その点からも、本件雑誌に謝罪広告を掲載することを命じることは、請求の一部認容として許されるものと解される。
4 結論
よって、原告の請求は、被告らに対し、本件雑誌の誌上に、別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の形式で1回掲載することを求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福田剛久 裁判官 徳岡由美子 裁判官 馬場俊宏)
別紙1
謝罪広告
「噂の真相」2000年6月号において、貴下が日本財団を私物化しているとの誤解を生ぜしめるような記事を掲載し、貴下の名誉を毀損したことを謝罪します。
平成 年 月 日
噂の真相編集兼発行人 岡留安則
株式会社 噂の真相
代表者代表取締役 岡留安則
A殿
別紙2
1 広告の大きさ 横6センチメートル 縦6.6センチメートル
2 広告内容の活字の大きさ 10ポイント
別紙3
謝罪広告
「噂の真相」2000年6月号において事実を確認しないまま、事実と相違する記事や事実を故意に歪曲し誤解を生ぜしめるような記事を掲載し、貴下の名誉を毀損し多大の迷惑を及ぼしたことを謝罪する。
平成 年 月 日
噂の真相編集兼発行人 岡留安則
株式会社 噂の真相
代表者代表取締役 岡留安則
A殿
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