裁判年月日 令和 4年 4月21日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令3(ネ)10022号
事件名 特許権侵害に基づく不当利得返還等請求控訴事件
文献番号 2022WLJPCA04219004
要旨
◆特許権侵害訴訟の控訴事件において、被告方法等の構成は本件特許発明の技術的範 囲に属さないから本件特許権を侵害しないと判断して、原判決のうち一審原告の請求 を一部認容した部分を取り消し、一審原告の請求を棄却した事例。
裁判経過
第一審 令和 3年 1月20日 東京地裁 判決 平29(ワ)24942号 特許権侵害に基づく不当利得返還等請求事件
出典
裁判所ウェブサイト
参照条文
特許法29条2項
特許法70条
裁判年月日 令和 4年 4月21日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令3(ネ)10022号
事件名 特許権侵害に基づく不当利得返還等請求控訴事件
文献番号 2022WLJPCA04219004
控訴人兼被控訴人 株式会社ジェイ・キャスト
(以下「一審原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 椙山敬士
同 片山史英
同訴訟代理人弁理士 牛久健司
被控訴人兼控訴人 Zホールディングス株式会社
(以下「一審被告」という。)
同訴訟代理人弁護士 大野聖二
同 木村広行
同訴訟復代理人弁護士 井深大
主文
1 一審被告の控訴に基づき,原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。
2 前項の部分に係る一審原告の請求をいずれも棄却する。
3 一審原告の控訴を棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じて一審原告の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
(一審原告)
1 原判決を次のとおり変更する。
2 一審被告は,一審原告に対し,13億3109万2361円及びこれに対する平成29年8月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(一審被告)
主文第1,2,4項と同旨
第2 事案の概要等(略称は原判決のそれに従う。)
1 事案の概要
⑴ 本件は,一審原告が,一審被告に対し,一審被告の運営するウェブサイト等において提供されている地域ターゲティング広告等のサービスが一審原告の有する特許権を侵害すると主張して,民法709条及び特許法102条3項に基づく損害賠償請求又は民法703条及び704条に基づく不当利得返還請求の各一部請求として,30億円及びこれに対する平成29年8月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息の支払いを求めた事案である。
⑵ 原判決は,一審被告のサービスが一審原告の特許権を侵害すると判断し,損害及び損失に関し,平成26年7月24日(訴訟提起の3年前の日の前日)までについては不当利得返還債務として,同月25日以降については損害賠償債務として認容すべきものとした上で,10億3109万2361円及びうち8億8282万3450円に対する平成29年8月2日から,うち1億2648万5217円に対する平成30年4月1日から,うち2178万3694円に対する平成31年4月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払の限度で一審原告の請求を認容した。
⑶ 一審原告は,原判決の損害及び損失の認容額を不服として控訴し,元本については3億円を増額した13億3109万2361円に変更すべきこと,遅延損害金の起算日はその全額につき平成29年8月2日とすべきことを求めて控訴し,他方,一審被告は,原判決の敗訴部分を不服とし,その取消しを求めて控訴した。
2 前提事実
原判決「事実及び理由」の第2の2(原判決2頁16行目から9頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
3 争点
原判決「事実及び理由」の第2の3(原判決9頁18行目から10頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
4 争点に対する当事者の主張
争点に対する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正し,当審における補充主張を後記第3のとおり付加するほかは,原判決「事実及び主張」の第3(原判決10頁17行目から98頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
⑴ 原判決20頁17行目から18行目までを次のとおり改める。
「NTT東日本及びNTT西日本(以下「NTT東西」という。)が一般家庭等向けに整備した光ファイバ回線(通称FTTH)を用いた接続(以下「フレッツ光接続」という。)では,接続用ルータ(回線終端装置内蔵)がNTT東西のIP網を経由して,」
⑵ 原判決28頁22行目から23行目にかけての●●●●●●●●●●●●●●●●●を●●●●●●●●●●●に改める。
⑶ 原判決33頁3行目の「物理網」を「物理的回線網」に改める。
⑷ 原判決58頁23行目の「NTTフレッツ(光フレッツ)」を「フレッツ光接続」に改める。
⑸ 原判決59頁25行目の「NTTフレッツ等の物理的回線網」を「地域IP網を通じたフレッツ光接続」に改める。
⑹ 原判決61頁5行目の「ウェブ情報を選択してウェブ情報を選択して」を「ウェブ情報を選択して」に改める。
⑺ 原判決62頁3行目,4行目及び6行目の各「物理網」をいずれも「物理的回線網」に改める。
⑻ 原判決80頁13行目の●●●●●●●●の後に●●●●●を付加する。
第3 当審における補充主張
1 争点1(被告方法等が「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」を用いて,「IPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別」しているか否か)について
〔一審原告の主張〕
⑴ 「アクセスポイントに対応する地域」等の解釈
ア 第一義的には,「ユーザ端末に割り当てたIPアドレスを所持しているアクセスポイントに通常アクセスするユーザの地域」である。
原判決は,「IPアドレスを割り当てるアクセスポイントが利用している物理的回線網等の敷設範囲に相当する地域」と解釈した。これは,インターネットへの各種接続形態(公衆電話回線を利用したダイヤルアップ接続,光ファイバ回線を利用したフレッツ光接続等)を踏まえて上記を言い換えたもので,上記と同義のものとして正当である。
イ 本件各発明の本質から導かれる解釈
ユーザ端末がインターネット上の所望のウェブサイトにアクセスするためには,回線事業者の回線を経て,ISPがインターネットの入口に設置したアクセスポイント(装置)から,インターネット上の識別符号であるIPアドレスの割り当てを受けなければならない。アクセスポイントは多数のIPアドレスを所持しており,そのうちの一つを接続要求してきたユーザ端末に割り当てる。ユーザ端末はインターネットに接続されている間,その割り当てられたIPアドレスを自己のアドレスとして使う。
本件各発明は上記のような社会インフラとしてのインターネットの仕組みを利用している。IPアドレスの数が限られているので,アクセスポイントが所持するIPアドレス(IPアドレス群)は特定のユーザ端末に固定的に割り当てられるのではなく,多くのユーザの間で使い回しされる(動的IPアドレス)。したがって,アクセスポイントが所持する一群のIPアドレスはそのアクセスポイントに接続要求をしてきた一群のユーザ端末で使用される。ここにアクセスポイントの所持する一群のIPアドレスとそれを利用する一群のユーザ端末との間に対応関係が生じる。ユーザ端末の所在地が分かれば一群のIPアドレスと一群のユーザ端末の所在地(地域)との対応関係が明確になる。この対応関係を記憶したのが「IPアドレス対地域データベース」である。
本件各発明の本質はアクセスポイントが付与する一群のIPアドレスとその付与を受けるユーザ端末との地域的関係性を利用するところにある。したがって,本件各発明の本質の観点からみれば,本件特許請求の範囲に記載の「ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが該ユーザ端末に割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス」が本件各発明の本質の一側面を表現し,「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」が本件各発明の本質の他の側面を表現しているのである。
本件特許請求の範囲の上記の表現を正しく把握すれば「アクセスポイントに対応する地域」等とはアクセスポイントからIPアドレスの付与を受けるユーザ端末の存在する地域範囲という解釈が何の操作もせず自然に導かれる。ユーザ端末とアクセスポイントは回線業者の通信回線により接続されるから,通信回線の観点から言えば,「アクセスポイントに対応する地域」等とはアクセスポイントがユーザ端末とを接続するための通信回線が設定されている地域範囲とも表現することができる。
ここで重要なことは,アクセスポイントがIPアドレスを付与するユーザ端末の存在する地域範囲(アクセスポイントとユーザ端末との接続関係)であって,アクセスポイントの存在地点は全く問題とならないことである(アクセスポイントがどこにあろうと,地域範囲は変わらない)。本件特許請求の範囲にも,アクセスポイントの所在地点(設置されている地点)については全く言及がない。本件特許請求の範囲に記載されているのは「ユーザ端末に接続されたアクセスポイント」という接続関係だけである。
⑵ 被告方法等との対比
ア 被告方法等が原判決認定のとおりのものであることの証拠は十分とはいえないが,原判決の認定を前提に論ずる。
イ IPアドレスと地域との結びつきの観点からみた充足
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
IPアドレスは,もともとは地域と関連性(結びつき)を持たない。IPアドレスが地域と結びつきを有することになるのは,アクセスポイントがIPアドレスを保有し,アクセスしてくるユーザ端末に付与するので,このIPアドレスを使い回す地域が対応付けられる,というインターネットの仕組みに基づく(このような結びつきを以下「当該結びつき」という。)。IPアドレスと地域とが結びつく技術的根拠はこの点にしかなく,IPアドレスから地域を正しく判別できるのは「当該結びつき」によるものである。本件各発明も被告方法等も「当該結びつき」を利用するものである以上,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●本件各発明のデータベースにおける「アクセスポイントに対応する地域」等にほかならない。
ウ ●●●●●●●の観点からみた充足
(ア) ●●●●●●●●●●●●●●●●には意味がないこと
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●動的IPアドレスはアクセスポイントに対応する地域内で使い回されるから,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
このように,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●技術的な基盤がなく,●●●●●●●●●●●●●●●●●用をなさない。したがって,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●本件各発明の「アクセスポイントに対応する地域」等でないことの理由とはならない。
(イ) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は本件各発明と一致すること
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は上記(ア)のとおり技術的裏付けを欠くのに対し,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
したがって,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●このことも,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が本件各発明のデータベースにおける「アクセスポイントに対応する地域」等にほかならないことを示している。
エ 尼崎市の事例等について
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●,一審被告が広告サービスの顧客に対して提示していた「エリア対応表」もこれを反映したものとなっている(甲28,29)。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(このように,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を,総称して「尼崎問題」という。)。
尼崎問題が生じるのは,NTT西日本の単位料金区域及び地域IP網エリアにおいて,aがbと同一のエリアとして扱われているからである。そしてNTT東西の単位料金区域及び地域IP網は本件特許の「アクセスポイントに対応する地域」等にほかならないから,尼崎問題は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が本件特許の「アクセスポイントに対応する地域」等に当たることの証左である。
〔一審被告の主張〕
⑴ 「アクセスポイントに対応する地域」等の解釈
「アクセスポイントに対応する地域」等とは,「アクセスポイントの属する地域」の「属する」という文言の語義を踏まえると,ユーザ端末に付与したIPアドレスを所持しているアクセスポイントが設置されている地点とその近傍の一定の地域をいう。
さらに具体的には,ダイヤルアップ接続(本件明細書等に唯一開示された接続形態)を踏まえて,当該(ユーザ端末に付与したIPアドレスを所持している)アクセスポイントの設置地点が属する単位料金区域をいう。
⑵ 被告方法等の充足性
被告方法等は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●原判決が認定したとおりのものである。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
そのため,例えば,下記太枠の地域のユーザは必ず●印のアクセスポイントに接続しているという仮想事例で考えてみると,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
したがって,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は,本件各発明の「アクセスポイントに対応する地域」等すなわち「アクセスポイントが設置されている地点とその近傍の一定の地域」には該当しない。
⑶ 本件各発明の技術的思想との関係
本件各発明は,「アクセスポイントが設置されている地点」を核として,これを出発点としてその近傍にユーザが存在する蓋然性が高いという技術的思想を利用して,ユーザの発信地域を判別しようとする発明であると理解され,「アクセスポイントに対応する地域」等とは,このような技術的思想に基づいた「アクセスポイントが設置されている地点とその近傍の一定の地域」をいうものと解され,アクセスポイントの設置場所が分かることが前提となっている。
これに対して,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●「アクセスポイントが設置されている地点とその近傍の一定の地域」を判別するものではない。
したがって,被告方法等の地域は,「アクセスポイントに対応する地域」等を充足しない。
2 争点2(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について
〔一審被告の主張〕
⑴ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●本件特許は無効である。無効理由としては,原審における主張に加えて,次のとおり補充する。
⑵ 甲20発明及び乙63発明に基づく進歩性欠如
本件各発明と特開平9-305518号公報(甲20)に記載された発明とを対比すると,本件各発明では,IPアドレスと「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」を用いて,前記ユーザ端末に割り当てられた「IPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域」を判別するのに対し,甲20に記載された発明では,IPアドレスに基づき,「IPアドレスとドメイン名の対応関係を保持するドメインネームサーバ2100」に問い合わせて取得した,情報検索クライアント端末1100に割り当てられた「IPアドレスに対応するドメイン名が示す地域」を判別する点で相違するが,当該相違点に係る本件各発明の構成は,特開平10-13471号公報(乙63)の記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得たというべきである。
〔一審原告の主張〕
上記一審被告の追加主張⑵は否認ないし争う。
3 争点3(一審原告の損害額(損失額))について
〔一審原告の主張〕
⑴ YDN及びプレミアム広告について広告売上高の全額を基礎とすべきこと
ア 一審原告が定めていたライセンス料率(エリアターゲティング広告の売上額の3%又は1.5%)は,どの顧客においてもスマートフォンからの接続や●●●●●●●●●●●●●●の事情が存在することを前提とした上で,これらの情報を考慮に入れないで設定されている。したがって,一審被告の本件特許権侵害によって一審原告が得るべき相当実施料も,一審被告が顧客から得ていたエリアターゲティング広告にかかる売上額全額に基づいて算定すべきであり,そうでなければ,一審被告は,正規にライセンスを受けた他社よりも安価な金額でライセンスを受けられることになるという極めて不当な結果をもたらす。
イ 一審被告は,スマートフォンからの接続に対する表示や●●●●●●●●●●●●においても,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●から,その地域判別は本件特許権を侵害しているということができ,この点からしても,広告売上高の全額を基礎とすべきである。
⑵ スポンサードサーチの広告売上高も基礎とすべきこと
一審被告は,YDNやプレミアム広告と同様,スポンサードサーチにおいても●●●●●●●●●●●地域判別を行うと思われるが,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
したがって,スポンサードサーチにおいても,一審被告はIPアドレス対地域データベースを用いて地域判別を行っているから,その広告売上高も損害額の計算の基礎とすべきである。
〔一審被告の主張〕
⑴ 相当実施料率算定の基礎となる売上高について
ア ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●について
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●「アクセスポイントに対応する地域」等を判別するものではないから,相当実施料率算定の基礎となる売上高に含まれない。
イ 他のターゲティング機能に対応する部分について
YDN及びプレミアム広告において●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●このことを考慮すべきである。
⑵ ライセンス料率について
ア 一審原告が公表しているライセンス料率を前提とするとしても,「アドネットワーク事業社様および広告代理店様用」の1.5%とされるべきであるし,実際の契約実績では更に低い0.75%の例もあることを考慮すべきである。
イ 被告方法等は,一審被告が長年の開発努力,運営努力,営業努力を継続し,多様なコンテンツやサービスを提供し,またその知名度を高めた結果として,アクセス者数等が膨大な数に上り,これにより売り上げを得ていること,一審被告は多様なターゲティング方法等を合わせて提供していること,一審被告が多数の特許発明等の登録を得て自己実施もしていること,データベースは自ら開発していること,本件各発明の技術的意義は大きいとはいえないこと,以上の状況において一審原告と一審被告が仮にライセンス契約交渉をしたとすれば一審原告が相当程度譲歩するものと考えられることなどの事情も考慮すべきである。
第4 当裁判所の判断
原判決「事実及び理由」第4(原判決98頁17行目以下)を次のとおり改める。
1 認定事実
当事者間に争いのない事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
⑴ IPアドレスの割当ての仕組み
ア ユーザ端末からインターネットへの接続は,一般的には,回線事業者のアクセス回線とISPの回線を通して行われる。すなわち,回線事業者は,ユーザ端末からPOI(Point of Interface。相互接続点)までの回線接続を提供し,ISPは,ISPのバックボーンネットワークを経て,POIからインターネット・エクスチェンジ(IX)までの接続を提供する(甲10,乙41)。
イ ユーザ端末がインターネットに接続するためには,IPアドレスを有する必要がある。
IPアドレスは,ネットワーク上の機器を識別するための番号であり,我が国では,JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)から,各ISPに対し,原則的には,連続した数値のまとまりとして割り振られる。各ISPは,自社に割り振られた範囲のIPアドレスをユーザに付与することとなる。ISPがIPアドレスを付与する方法には,特定のIPアドレスを固定的に付与する静的(static)な方法と,一時的にIPアドレスを付与し,接続終了後はそのIPアドレスを返還させる動的(dynamic)な方法があるが,一般ユーザのインターネット接続では,後者の動的な方法が用いられる(甲1,4)。
ウ 各ISPは,POIにサーバを接続している。同サーバは,ユーザIDやパスワードのチェック機能,IPアドレスの発行機能及びルータ機能を有している。各ISPは,JPNICから割振りを受けたIPアドレスの一部(一般には連続した数値の塊)を,それぞれのPOIに接続された自社のサーバに割り当てる。
ユーザ端末から送出された接続要求が,回線事業者のアクセス回線を経由して,当該ユーザが契約しているISPのサーバに受信されると,当該サーバは,ユーザID,パスワード等をチェックし,接続要求の正当性を判断した上で,これが正当なものであれば,当該ISPが当該サーバに割り当てているIPアドレスのうち空いている一つを当該ユーザ端末に通知し,IPアドレスを付与する。これによりIPアドレスを獲得したユーザ端末は,インターネット上の目的とするURLのサイトにアクセスできることとなる(甲1,4)。
⑵ 接続形態の種類とアクセスポイントの配置
上記のとおり,ユーザ端末がインターネットに接続するためには,回線事業者が提供するアクセス回線を利用するが,その接続形態の種類によって,ISPによるアクセスポイントの配置の仕方は異なってくる。
ア ダイヤルアップ接続の場合(甲68~72,119)
本件特許の出願日(平成10年6月26日)当時,インターネットを利用する一般ユーザの大多数は,公衆電話回線経由のダイヤルアップ接続を利用していた。
NTT東西の公衆電話回線網においては,市内通話料金(かつては3分間10円)で通信ができる区域として,「単位料金区域」(「メッセージエリア」ともいい,以下「MA」ということがある。)が定められている。
「東京MA」(本判決においては以下「東京03MA」という。)は,市外局番を「03」とする地域をいい,行政区画としては,東京23区のほかに狛江市等を含む。
「浦和MA」は,行政区画としては,大宮市,浦和市,与野市等を含む(いずれも平成13年の合併以前の市名)。
「川口MA」は,行政区画としては,川口市,蕨市,和光市等を含む。
なお,浦和MAと川口MAとは,市外局番は同じ「048」であるが,単位料金区域を異にするため,相互間の通話は市外通話料金となる。
「大阪MA」(本判決においては以下「大阪06MA」という。)は,市外局番を「06」とする地域をいい,行政区画としては,大阪市全域のほかに,大阪府豊中市等を含み,更に,兵庫県尼崎市等を含む。
「京都MA」は,市外局番を「075」とする地域をいい,行政区画としては,京都市全域のほかに,京都府向日市等を含み,更に,大阪府三島郡島本町を含む。このため,同町は,隣接する大阪府内の「茨木MA」には含まれていない。
このように,単位料金区域と行政区画との間にはずれが生じることがある。これは,地理的,歴史的及び経済的などさまざまな事情による。
全国的に業務を展開するISPは,顧客ユーザの利便性のため,単位料金区域ごとにアクセスポイントを設けることが多かった(甲69)。
イ 地域IP網の場合(甲6,甲9)
「地域IP網」とは,NTT東西がおおむね都道府県単位で構築したネットワークの俗称であり,「地域IP網」という仕組みが出現したのは,NTT東西が再編された平成11年以降のことである。「地域IP網」においては,ダイヤルアップ接続とは異なり,アクセスポイントは各都道府県単位で固定されていて,ユーザがアクセスポイントを選択することができない。
ウ NTT東西の光ファイバ回線の場合(甲107,乙39~48)
フレッツ光接続は,平成12年に試験サービス提供が開始された(甲107,乙39)。NTT東西のFTTHを含む光ファイバ回線は,平成15年以前は,機能上はおおむね都道府県ごとに独立した地域IP網を形成しており(上記イ),「県間接続」はされていなかった。そして,このおおむね都道府県ごとの地域IP網の地理的広がり(以下「地域IP網エリア」という。)は,原則として単位料金区域を束ねたものとして形成されるため,上記アの単位料金区域と行政区画との間のずれが反映されている。
このため,例えば,おおむね大阪府に対応する地域IP網エリア(以下「大阪地域IP網エリア」という。)は,兵庫県尼崎市等を含み,大阪府三島郡島本町を含まない。
全国的に業務を展開するISPは,フレッツ光接続に対応する場合には,地域IP網エリアごとに1箇所のアクセスポイントを設けることで足りる。
エ ADSL接続の場合(甲107,110,114,乙37,38)
ADSL接続は,平成11年に試験サービスの提供が開始された。
ADSL接続においては,ユーザの自宅等とNTT東西の電話局(以下「収容局」という。)との間の接続は公衆電話回線を利用しているが,技術的な理由により,サービス提供範囲は収容局の周囲数kmに限られるので,収容局の数は単位料金区域の中でも複数となるのが通常である。もっとも,収容局よりも上流の接続には地域IP網を利用しているため,ADSL接続に対応するISPは,アクセスポイントを収容局ごとに設置する必要はなく,技術的には,地域IP網ごとに1箇所のアクセスポイントを設けることで足りる。
2 本件各発明の内容
原判決「事実及び理由」第4の1(原判決98頁18行目から114頁12行目まで)の認定のとおりであるから,これを引用する。
3 争点1(被告方法等が「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」を用いて,「IPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別」しているか否か)について
⑴ 構成要件1B1等及び1B2等の「アクセスポイントに対応する地域」及び「アクセスポイントが属する地域」の意義
ア 本件各発明の構成要件1B1及び2B1は「ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが該ユーザ端末に割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス,およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて,」であり,構成要件1B2及び2B2は「前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する第1の判別ステップと,」(ただし,構成要件2B2は「第1の判別ステップ」が「第1の判別手段」となっている。)である。
ここで,構成要件1B1等の「アクセスポイントに対応する地域」と1B2等の「アクセスポイントが属する地域」が同義であることは当事者間に争いはない。
そこで,以下,上記「アクセスポイントに対応する地域」等の技術的意義について検討する。
イ 構成要件1B2の「第1の判別ステップ」及び構成要件2B2の「第1の判別手段」において,「判別」の対象となっているのは「アクセスポイントが属する地域」である。ここで「アクセスポイント」はインターネットやパソコン通信のホストにアクセスするために各地に設けられるモデム等の接続点を意味し(甲16の2),「属する」とは「範囲内にある」という意味であるから(乙57),文言上,「アクセスポイントが属する地域」とは,「アクセスポイントという接続点が設置された各地点がその範囲内にある一定の地域」と解釈される。
ウ 本件特許請求の範囲の請求項1及び6の記載並びに前記1の認定事実によれば,アクセスポイントとは,そこに接続されたユーザ端末に,所有するIPアドレスを割り当てるものと解されるところ(構成要件1B1等及び1B2等),本件明細書等には,ユーザがISPのアクセスポイントにダイヤルアップ接続を行うことを前提に,まず,従来の技術として,「Webページ閲覧システム100を利用しようとする一般のユーザ,例えば東京のユーザは,ユーザ端末101aから・・・プロバイダの東京にあるアクセスポイント109aにダイヤルする。ユーザ端末101aが・・・アクセスポイント109aに接続されると,アクセスポイント109aはユーザのログイン名,パスワード等の送信要求をユーザ端末101aに対して行い,ユーザ端末101aはこれに応じてログイン名,パスワード等の情報をアクセスポイント109aに送信する。」(段落【0004】),「ユーザ端末101aからアクセスポイント109aに送信されたログイン名,パスワードが正しく,かつユーザ端末101aの通信環境設定がこのアクセスポイント109aにおいて利用可能なものであれば,ユーザ端末は101aはアクセスポイント109aのサーバ111aに接続され,アクセスポイント109aのサーバ111aは所持する複数のIPアドレスの中から一つのIPアドレスを選択してユーザ端末101aに割り当てる。・・・」(段落【0005】)と記載され,次に,本件各発明の実施例に関する段落【0027】及び【0028】にも同様の記載があることからすると,本件各発明における「アクセスポイント」は,ダイヤルアップ接続を前提として,複数のIPアドレスを所持し,そのうちの一つを,接続され認証されたユーザ端末に対して割り当てる装置(サーバ)の所在場所であると認められる。その上で,本件明細書等の【図1】には,「アクセスポイント」が東京,大宮,福岡といった地域ごとに存在し,各アクセスポイントにはそれが存在する地域と同じ地域に所在するユーザ端末が接続されることが示されているが,ユーザ端末101aの「東京」はユーザの発信地域を意味し,アクセスポイント109aの「東京」は「アクセスポイントの属する地域」を意味していると解され,また,「IPアドレスと地域とが一対一に対応した例としてのデータベース」(段落【0034】)の例として示されている【図5】には,個別のIPアドレスに北海道札幌市,埼玉県大宮市,同県川口市,福岡県福岡市のうちの一つの地域がそれぞれ対応し, このうち, 「202.224.36.35」ないし「202.224.36.37」までの連続した三つのIPアドレスはいずれも対応する地域が同一の県(埼玉県)内にあることが示されている。
エ 以上によれば,本件各発明は,①当該アクセスポイントは一定の範囲の連続するIPアドレスを所持していること,②アクセスポイントに接続するユーザ端末は,同端末が存在する地域と同じ地域に所在するアクセスポイントに接続することが一般的であること,③アクセスポイントは,接続されたユーザ端末に,所持するIPアドレスを一つ割り当てること,というインターネット接続の基本的な仕組みに関する技術的事項を前提とした上で,本件特許出願当時には,一般ユーザのインターネット接続方式はダイヤルアップ接続がほとんどであり,ダイヤルアップ接続においては,ユーザの発信地域以外の地域にあるアクセスポイントに接続することが可能であるものの(本件明細書等の段落【0038】),同方式によるユーザは,電話料金を抑えるため,自分のいる場所から市内通話料金(単位料金区域)内の最寄りのアクセスポイントにアクセスして接続を行うことが通常であり(甲3,甲68,甲69,甲70,甲71),各アクセスポイントはそのアクセスポイントの近傍からアクセスしてきたユーザにそのアクセスポイントが所持するIPアドレスを付与していたことを踏まえ,ダイヤルアップ接続を前提として,出願当時,ダイヤルアップ接続においては,ISPは日本全国に多数のアクセスポイントを設置していたため(甲68,甲69,甲72),アクセスポイントは一定の地域性を有していること,ユーザは単位料金区域内の最寄りのアクセスポイントに接続するのが通常であることから,ユーザ端末はアクセスポイントの設置された地点の近傍に所在する蓋然性が高いという経験則があることを利用して,そのアクセスポイントの設置場所の近傍をユーザが所在する地域と想定することによって,ユーザの所在する地域に対応した地域情報をある程度の確率で提供することができるという技術的思想に基づくものと認められる。
オ そうすると,「アクセスポイントに対応する地域」等とは,「アクセスポイントの設置されている地点とその近傍の一定の地域」と解釈するのが相当であり,また,「近傍の一定の地域」とは,原則として,ダイヤルアップ接続を前提として,同一の市内通話料金で通信することができる地域,すなわち単位料金区域を指すものと解するのが相当である。
⑵ 被告方法等の内容
証拠(乙2,5,66)及び弁論の全趣旨によれば,被告方法等の内容は,次のとおりと認められる。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
以上によれば,被告方法等の構成は,原判決別紙「被告方法等説明書(被告)」に記載のとおりと認めるのが相当である。
⑶ 被告方法等の構成要件1B1等及び1B2等充足性
上記⑵によれば,被告方法等においては,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●「アクセスポイントの設置場所及びその近傍の地域」を判別するものではないから,「IPアドレス」と「アクセスポイントに対応する地域」(アクセスポイントの設置場所及びその近傍の地域)とが1対1で対応するデータベースなど用いておらず,また,「アクセスポイントが属する地域」(アクセスポイントの設置場所及びその近傍の地域)を判別してもいないと認められ,被告方法等の構成1b1’及び2b1’並びに1b2’及び2b2’は,本件各発明の構成要件1B1等及び1B2等を充足しないというべきである。
⑷ 一審原告の主張に対する判断
ア 一審原告は,本件各発明は「ユーザの発信地域ごとに異なるWebデータの送信が可能なWebページ閲覧システムを提供することを目的とする」(本件明細書等の段落【0013】)ことから,この目的を達成するための地域判別の原理は,回線網の敷設地域とISPのサーバが保有する一群のIPアドレスとの一定の対応関係の存在を利用したものであるとして(原判決「事実及び理由」第3の1(原告の主張)⑵〔原判決12頁〕),「アクセスポイントに対応する地域」等の解釈として,第一義的には,「ユーザ端末に割り当てたIPアドレスを所持しているアクセスポイントに通常アクセスするユーザの地域」と解釈すべきであり,「IPアドレスを割り当てるアクセスポイントが利用している物理的回線網等の敷設範囲に相当する地域」も同義であると主張し,また,本件各発明は,設置場所に対応する地域がユーザ端末の存在する地域と対応することに基づいて,その地域に関連する情報を提供するというエリアターゲティングを目的とする発明であるから,そもそも,アクセスポイントの「設置場所」といった地点を判別する意味はなく,「アクセスポイントの設置場所」(アクセスポイントが属する地域)を判別するステップを介するかどうかを問題とすること自体が誤りであると主張する(原判決「事実及び理由」第3の1(原告の主張)⑸ア(ア)〔原判決16頁〕)。
しかしながら,特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならず,特許請求の範囲に記載された用語の意義は,明細書及び図面を考慮して解釈すべきであるところ(特許法70条1項・2項),構成要件1B2等において「判別」の対象となっているのは文言上あくまで「アクセスポイントが属する地域」であるから,本件特許請求の範囲の用語の意義としてアクセスポイントの設置場所を無視することはできない。また,本件明細書等の記載を考慮すると,本件各発明は,ダイヤルアップ接続を前提として,ユーザ端末がアクセスポイントの設置された地点の近傍に所在する蓋然性が高いという経験則を利用して,そのアクセスポイントの設置場所の近傍をユーザが所在する地域と想定することによって,ユーザの所在する地域に対応した地域情報をある程度の確率で提供することができるという技術的思想に基づくものであること,したがって,「アクセスポイントに対応する地域」等は「アクセスポイントの設置されている地点とその近傍の一定の地域」と解釈されるべきことは前記⑴のとおりであるから,まさにアクセスポイントの設置場所を判別することに意味があるのであって,一審原告の上記主張は採用することができない。
そして,このことは,本件特許の出願経過からも明らかである。すなわち,本件特許の出願経過は原判決「事実及び理由」第2の2⑵イ記載のとおりであるが,一審原告は,出願経過中の本件補正により,「IPアドレスと地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」を「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」とし,さらに「IPアドレスが属する地域」を「IPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域」(甲12の13)として,自ら「アクセスポイントが対応する」及び「アクセスポイントが属する」をあえて付加している。そして,一審原告は,意見書(甲12の14)において,「アクセスポイントが属する地域を判別することについては,・・・ユーザの発信地域は,ユーザ端末101aがアクセスポイント109aに接続しているため,正確にはアクセスポイント109aに対応する地域である」と説明し,さらに,本件拒絶査定不服審判における審判請求書(甲12の16)において,「・・・,IPアドレス対地域データベースにおいてはIPアドレス毎にアクセスポイントが設置された地域,例えば県や市,さらには市よりも狭い地域を対応付けておくことによって,ユーザ端末が接続しているアクセスポイントの属する地域から,ユーザ端末の地域を県単位,市単位または市よりも狭い地域単位で判別することができるという顕著な効果を奏します」と述べている。このように,一審原告自らが「アクセスポイントに対応する地域」等の解釈につき,IPアドレス毎にアクセスポイントが設置された地域を対応付けることを意味するものと主張していたものである。
さらに,一審原告が主張するところの「アクセスポイントに通常アクセスするユーザの地域」とか「アクセスポイントが利用している物理的回線網等の敷設範囲に相当する地域」は,そもそもどのような範囲を意味するのか必ずしも明らかではないが(特に「物理的回線網の敷設範囲」という用語は本件明細書等にはない用語であり,ダイヤルアップ接続を前提とすると,ダイヤルアップ接続においてユーザは世界中のどのアクセスポイントへも接続が可能であるから,「物理的回線網の敷設範囲」という限定の仕方はアクセスポイントの地域を限定する意味を持たないと解される。),一審原告の主張から推測するに,NTT東西が構築した地域IP網を念頭に置いて,地域IP網を経由する接続においては,ダイヤルアップ接続とは異なり,アクセスポイントは各地域IP網エリア単位で固定されていて,ユーザがアクセスポイントを選択することができないことから,アクセスポイントが設置されている場所がどこであるかにかかわらず,「アクセスポイントの属する地域」を「アクセスポイントに通常アクセスするユーザの地域」又は「アクセスポイントが利用している物理的回線網等の敷設範囲に相当する地域」と解釈しているものと推認される。しかしながら,前記1⑵イのとおり,そもそも「地域IP網」が現れたのは,平成11年以降のことであり,本件特許出願時(平成10年6月26日)には存在しない仕組みであって,出願当時に存在した技術常識ともいえず,当然,本件明細書等には記載も示唆もされていない。したがって,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たり,上記事実を参酌することはできないというべきである。
この点に関して一審原告は,本件各発明は,実施例にあるダイヤルアップ接続に限定されるものではなく,地域IP網経由の接続も含むものである旨主張する。
しかしながら,本件明細書等には,「・・・もちろん,ユーザの発信地域以外の地域の情報を閲覧したい場合には,ユーザが発信地域以外の地域のアクセスポイントに接続するか,従来と同じ方法を用いて従来と同じ方法を用いて選択すればよいことはいうまでもない。」(段落【0038】)と記載されているところ,この記載は,ユーザが任意の地域のアクセスポイントを選択して接続することを意味するものであって,このようなアクセスポイントのユーザによる選択はダイヤルアップ接続では可能であるもの,地域IP網経由の接続では通常は想定されていないものである。そうすると,本件特許の技術的範囲を,地域IP網経由の接続を前提とする事項まで拡大することは,本件明細書等に開示された技術的範囲を逸脱することになるというべきである。本件各発明がダイヤルアップ接続を前提としているという解釈は実施例に限定した解釈ではない。
いずれにしても,上記「アクセスポイントに通常アクセスするユーザの地域」とか「アクセスポイントが利用している物理的回線網等の敷設範囲に相当する地域」との解釈は,本件特許請求の範囲の記載からかけ離れた解釈であり,採用することはできない。
イ 一審原告は,IPアドレスが各ISPに割り振られ,各ISPがアクセスポイントに適宜まとまったIPアドレスを割り当てるからこそ,そのアクセスポイントに対応した地域とIPアドレスとの対応が生まれるのであり,IPアドレスは,アクセスポイントを介して地域と対応するとし,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●実際には,IPアドレスと「アクセスポイントに対応した地域」等との対応を求めているのであり,そうでなければ,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●生まれようがないと主張する(原判決「事実及び理由」第3の1(原告の主張)⑸エ(ア)〔原判決21頁〕)。
しかしながら,IPアドレスはユーザに動的に割り当てられるものであって(動的IPアドレス),一つのIPアドレスは多数のユーザによって使い回されるため,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●一方,IPアドレスはもともとアクセスポイントのサーバ内に所持されているものであるから,一つのIPアドレスに対応するアクセスポイントはその設置場所に固定されているため,本件各発明の「アクセスポイントが対応する地域」等(アクセスポイントが設置されている地点及びその近傍の地域)を●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ということは,すなわち,本件各発明の「アクセスポイントが属する地域」を判別しているものでないことを裏付けるものである。
したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
ウ 一審原告は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●のは明らかである旨主張する(原判決「事実及び理由」第3の1(原告の主張)⑸エ(エ)a〔原判決23頁〕)。
しかしながら,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●上記イのとおりであって,本件各発明の技術的事項を採用するためとは認められない。IPアドレスとアクセスポイントとの対応関係はISPの有する情報であって,ISPでもない一審被告はこれを知ることはできないのであるから●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との一審被告の主張が不合理であるという理由はない。
したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
エ 一審原告は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と主張する(原判決「事実及び理由」第3の1(原告の主張)⑸エ(エ)c〔原判決24頁から25頁〕)。
しかしながら,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●被告方法等が本件各発明の技術的範囲に属する徴表になるということはできない。
したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
オ 一審原告は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●旨主張する(原判決「事実及び理由」第3の1(原告の主張)⑸ エ(カ)〔原判決28頁〕)。
しかしながら,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●被告方法等が「アクセスポイントに対応する地域」等を判別していることを示すとはいえない。
したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
⑸ 一審原告の当審における補充主張(上記第3の1)について
ア 「IPアドレスと地域との結びつきの観点からみた充足」の主張について
一審原告は,IPアドレスから地域を正しく判別できるのは「当該結びつき」によるものであり,本件各発明も被告方法等も「当該結びつき」を利用するものである以上,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は,本件各発明のデータベースにおける「アクセスポイントに対応する地域」等にほかならない旨主張する。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
しかしながら,「当該結びつき」に示されるようなIPアドレスとユーザの発信地との関係は,回線事業者による回線網の構築とその接続料金の設定,ISPによるアクセスポイントの設置とそのIPアドレスの割り当てというインターネット接続における基礎となる仕組みそのものであって,それはいわば物理的,人為的な取り決めや行動によって必然的に生じたものにすぎないのであるから,本件各発明に特有の技術的思想を構成する特徴的部分ではない。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
イ ●●●●●●●●の観点からみた充足」の主張について
(ア) ●●●●●●●●●につき
一審原告は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が本件各発明の「アクセスポイントに対応する地域」等でないことの理由とはならない旨主張する。
しかしながら,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
なお,被告方法等は●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●から,例えば東京03地域からのダイヤルアップ接続の場合,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
さらに,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●そして,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
したがって,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●意味がないことを前提とする一審原告の上記主張は,前提に誤りがあり,採用することができない。
(イ) ●●●●●●●●●●につき
一審原告は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が本件各発明のデータベースにおける「アクセスポイントに対応する地域」等といえることの証左である旨主張する。
しかしながら,前記⑷のエ及びオのとおり,被告方法等及び本件各発明という●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ということから,直ちに,被告方法等が本件各発明の技術的範囲に属することにならないのは当然である。
また,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●その技術的意味合いは異なる。本件各発明で判別する「アクセスポイントに対応する地域」等は,本件各発明が前提とするダイヤルアップ接続においては単位料金区域であるところ,例えば,アクセスポイントが大阪市に所在する場合,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●も単位料金区域である「大阪06MA」であって,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
よって,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●旨の一審原告の主張は,「アクセスポイントに対応する地域」等という発明特定事項を無視するものであって採用することができない。
ウ 「尼崎問題」について
一審原告は,被告方法等では,兵庫県尼崎市から接続されたIPアドレスについても●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●となるはずであるが,実際には,同市からのアクセスにおいて判別される地域は,大阪府又は同府内の市区町村となっており(甲56,57),その原因は,兵庫県尼崎市からのインターネット通信は,公衆電話回線経由の場合は大阪06MA内の,地域IP網経由の場合は大阪地域IP網エリア内の網終端装置に集約されており,同市からインターネットに接続した場合,当該ユーザ端末には大阪府にISPが設置したサーバからIPアドレスが割り振られるためであるから,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●などと主張し(原判決「事実及び理由」第3の1(原告の主張)⑸エ(ウ)〔原判決22頁〕),結局,この尼崎問題は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●単位料金区域や地域IP網エリアを判別することを示しており,甲28のエリア対応表はそのことを如実に示している旨主張する。
しかしながら,「尼崎問題」は,被告方法等が本件特許の技術的範囲に属することを示すものではない。その理由は次のとおりである。
まず,兵庫県尼崎市からのアクセスが大阪府又は同府内の市区町村からのものと判定されることは,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●にとどまり,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●依然として異なる。
すなわち,尼崎市を含む大阪06MAに設置されたアクセスポイントのIPアドレスについて,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●さらに,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●のであるから,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●確かに,一審被告も,NTT東西の回線を利用したダイヤルアップ接続が主流であるということ,ダイヤルアップ接続を前提に大手ISPが単位料金区域ごとにアクセスポイントを設置していること等を技術常識として知っていると推認されるから,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を前提として,エリア対応表(甲28,29)においては上記3市を同一の「エリア」に入れていたものと思われるが,それは,同表の作成当時における社会の現実(ダイヤルアップ接続が主流であること,尼崎市は大阪06MAに属していること)を踏まえた一審被告の推測であるにとどまる。
一方,本件各発明のデータベースは,IPアドレスごとに,当該IPアドレスと「アクセスポイントの対応する地域」等(本件明細書の段落【0001】にいう「ユーザの発信地域」)との対応関係を明らかにするものであり,これを用いた地域判別に推測の入り込む余地はない。本件各発明が前提としたダイヤルアップ接続において本件各発明を実施した場合は,単位料金区域が画一的に判定されることになる。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
このことは,仮に一審原告が主張する地域IP網経由の接続が本件各発明の技術的範囲に属すると仮定した場合でも同様である。すなわち,おおむね都道府県レベルの地域IP網エリアに本件各発明の技術的事項を適用した場合,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が,被告方法等が本件各特許の技術的範囲に属していないことの証左であるというべきである。
このように,「尼崎問題」は,NTT東西の回線網を前提として生じ得る現象であるにとどまり,被告方法等と本件各発明が技術的観点からは異なっている旨の判断を覆すものではない。
したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
4 結論
以上によれば,被告方法等が本件各発明の技術的範囲に属するとは認めらないから,その余の争点について判断するまでもなく,一審原告の請求は理由がない。
よって,一審原告の請求は理由がないから全部棄却すべきところ,これを一部認容した原判決は相当でなく,一審被告の控訴は理由があるから,原判決中一審被告の敗訴部分を取り消した上,一審原告の請求を棄却し,一審原告の控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
(裁判長裁判官 東海林保 裁判官 上田卓哉 裁判官 都野道紀)