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裁判年月日 平成27年 6月 1日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 決定
事件番号 平27(ヨ)290号
事件名 投稿動画削除等仮処分命令申立事件
裁判結果 一部認容、一部却下 上訴等 確定 文献番号 2015WLJPCA06016001
新判例体系
民事法編 > 民事訴訟法 > 民事保全法〔平成元年… > 第二章 保全命令に関… > 第二節 保全命令 > 第三款 仮処分命令 > 第二三条 > ○仮処分命令の必要性… > (二)仮の地位を定め… > (6)各種の仮処分の… > (ス)ノ六 インターネット上における情報の削除を求める仮処分
◆インターネット上の動画の削除を命ずる仮処分
出典
判時 2283号75頁
参照条文
民事保全法24条
民法723条
裁判年月日 平成27年 6月 1日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 決定
事件番号 平27(ヨ)290号
事件名 投稿動画削除等仮処分命令申立事件
裁判結果 一部認容、一部却下 上訴等 確定 文献番号 2015WLJPCA06016001
大阪市〈以下省略〉
債権者 X
同代理人弁護士 崎岡良一
同代理人弁護士 早川拓郎
大阪府豊中市〈以下省略〉
債務者 Y1(以下「債務者Y1」という。)
大阪市〈以下省略〉
債務者 Y2会(以下「債務者Y2会」という。)
同代表者 Y1
債務者ら代理人弁護士 溝上宏司
主文
1 債権者が債務者らに対し,本決定送達の日から7日以内にそれぞれ金40万円の損保を立てることを条件として,
(1) 債務者らは,YouTubeのインターネットサイト上にある別紙投稿動画目録その1及び同その2記載の各動画を削除せよ。
(2) 債務者らは,債務者Y2会のホームページ(トップページのアドレス:http://〈省略〉)上から,別紙投稿動画目録その1及び同その2記載の各動画を閲覧できるようにしてはならない。
(3) 債務者らは,別紙投稿動画目録その1及び同その2記載の各動画につき,YouTube,ニコニコ動画等の動画サイトに投稿するなどの方法によりインターネット上で公衆配信する等,不特定多数の第三者に閲覧させてはならず,また,前記各動画を収録したDVD等の収録物を第三者に頒布してはならない。
2 債権者のその余の申立てをいずれも却下する。
3 申立費用はこれを2分し,その1を債権者の負担とし,その余を債務者らの負担とする。
理由
第1 申立ての趣旨
1 主文第1項(1)に同旨。
2 債務者らは,TwitCasting上で生配信した後,TwitCasting上で録画し保存した上で,TwitCastingにおいて公開した別紙投稿動画目録その3記載の動画を削除せよ。
3 債務者らは,債務者Y2会のホームページ(トップページのアドレス:http://〈省略〉)上から,YouTubeに投稿した別紙投稿動画目録その1及び同その2記載の各動画及びTwitCasting上で生配信した後,TwitCasting上で録画し保存した上で,TwitCastingにおいて公開した別紙投稿動画目録その3記載の動画を閲覧できるような措置を取ってはならない。
4 債務者Y1は,公衆に対する演説,ホームページの記載,twitter等を通じてのインターネット上における公衆配信,テレビ等マスメディアにおける発言その他の方法により,平成23年における大阪市長選挙において,債権者に票を集める目的で,大阪市から大阪市内の町内会に金100万円が配られたという発言を不特定多数人に対してしてはならない。
5 債務者らは,別紙投稿動画目録その1ないしその3の各動画につき,YouTube,ニコニコ動画等の動画サイトに投稿するなどの方法によりインターネット上で公衆配信する等,不特定多数の第三者に閲覧させ,また,前記各動画を収録したDVD等の収録物を第三者に頒布してはならない。
6 債務者Y1は,別紙謝罪広告目録その1記載の謝罪広告を,twitter上の債務者Y1名義のアカウント(○○)に30日間掲載せよ。
7 債務者らは,別紙謝罪広告目録その2記載の謝罪広告を,債務者Y2会のホームページ(アドレス:http://〈省略〉)のトップページにおいて,30日間掲載せよ。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は,大阪市の現市長である債務者Y1が,公衆の面前において,平成23年に実施された大阪市長選挙の際,債権者が集票目的のために大阪市内の町内会に100万円を配布した旨の公職選挙法に違反する行為をしたかのような発言を複数回行い,債務者らが,当該各発言の様子が録画された複数の動画を動画投稿サイト等において公開し,債務者Y2会のホームページから前記動画の一部を閲覧できるように設定したことにより,債権者の名誉が毀損されたとして,大阪市の前市長である債権者が,債務者らに対し,人格権に基づき,前記各動画の動画サイトからの削除,前記各動画の閲覧措置及び頒布の禁止を,債務者Y1に対し,人格権に基づき,公衆の面前等での前記発言の禁止を,債務者らに対し,民法723条の名誉回復措置請求権に基づき,謝罪広告の掲載を求める事案である。
2 前提事実
以下の各事実は,当事者間に争いがないか,後掲各疎明資料及び審尋の全趣旨により容易に認められる(疎明資料が掲示されていない事実は当事者間に争いがない。)。
(1) 当事者等
ア 債権者は,平成19年11月から平成23年12月18日までの間,大阪市の市長の地位にあった者である。
イ 債務者Y1は,大阪市の現職の市長であり,平成23年11月27日,債権者の大阪市長の任期満了に伴う大阪市長選挙において当選した者であり,債務者Y2会は,債務者Y1が代表を務める地方政党である。
ウ 大阪市選挙管理委員会は,現在の大阪市を廃止して5つの特別区を設けるいわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票を平成27年5月17日に実施した(甲7,審尋の全趣旨)。
(2) 債務者Y1のタウンミーティングにおける発言内容
ア 平成27年3月7日に開催されたタウンミーティング
債務者Y2会及びa党は,平成27年3月7日,大阪市西淀川区所在の新佃公園において,大阪都構想の実現の必要性を訴えるタウンミーティング(以下「本件TM①」という。)を開催した。債務者Y1は,本件TM①において,不特定多数の聴衆に対する演説の中で,別紙債務者Y1発言目録記載1の発言(以下「本件発言①」という。)を行った(甲1,甲8の1,甲16の1)。
イ 平成27年3月9日に開催されたタウンミーティング
債務者Y2会及びa党は,平成27年3月9日,大阪市浪速区所在のホテル「ザ・グランドティアラ大阪」の一室において,大阪都構想の実現の必要性を訴えるタウンミーティング(以下「本件TM②」という。)を開催した。債務者Y1は,本件TM②において,不特定多数の聴衆に対する演説の中で,別紙債務者Y1発言目録記載2の発言(以下「本件発言②」という。)を行った(甲1,甲8の2,甲16の2)。
ウ 平成26年7月13日に開催されたタウンミーティング
債務者Y2会は,平成26年7月13日,大阪市東住吉区所在の長居公園においてタウンミーティング(以下「本件TM③」という。)を開催した。債務者Y1は,本件TM③において,不特定多数の聴衆に対する演説の中で,別紙債務者Y1発言目録記載3の発言(以下「本件発言③」といい,本件発言①ないし③を併せて,以下「本件各発言」という。)を行った(甲15,甲16の3)。
(3) 動画の投稿等
ア 債務者らは,平成26年7月13日,本件TM③の様子を,インターネット上で動画をライブ配信するサービスを提供するTwitCasting上で配信し,配信された別紙投稿動画目録その3記載の動画(以下「本件動画③」という。)を,TwitCastingの債務者Y2会のアカウントページにおいて,誰でも視聴することができる状態に設定した。本件動画③は「長居公園南西角街頭TM」と題された1時間59分33秒の動画である(甲1,甲15,審尋の全趣旨)。
イ 債務者らは,平成27年3月10日,本件TM①の様子が撮影された別紙投稿動画目録その1記載の動画(以下「本件動画①」という。)及び本件TM②の様子が撮影された同目録その2記載の動画(以下「本件動画②」といい,本件動画①ないし③を併せて「本件各動画」という。)を,動画投稿サイトであるYouTubeに投稿して公開した(債務者らが本件動画①及び②をYouTubeに投稿し,本件動画③をTwitCasting上で視聴できる状態にした行為を併せて,以下「本件投稿等行為」という。甲1,甲8の1,甲8の2)。
また,債務者らは,本件申立てまでに,債務者Y2会のホームページ上で本件動画①及び②を視聴できるように設定した(以下「本件設定行為」という。)。債務者Y2会のホームページにおいて,本件動画①及び②を視聴できるページの冒頭には,「維新の志士(弁士)たちが,大阪の未来についての理念や政策などを有権者の皆様に街頭演説や演説会を通じて発信。その模様を随時更新していくサイトです。」と記載されている(甲9の1,甲9の2,審尋の全趣旨)。
ウ 本件動画①は,「Y1:Y2会:H27.03.07:新佃公園」と題された1時間45分43秒の動画であり,本件動画②は,「Y1:Y2会:H27.03.09:ザ・グランドティアラ大阪」と題された2時間30分46秒の動画である。本件動画①及び②の平成27年3月23日午後6時57分時点における視聴回数は,本件動画①が872回であり,本件動画②は2233回である(甲1,甲8の1,甲8の2,甲9の1,甲9の2)。
本件動画①及び②は,現在,YouTubeにおいて誰でも視聴することができる。なお,審尋の経過において,債務者Y2会のホームページ上から本件動画①及び②が一時的に視聴することができない状態が生じたが,現在は視聴できる状態となっている(審尋の全趣旨)。
エ 本件各動画は,本件TM①ないし③における演説者の様子をそのまま録画したものであり,テロップ等による文字情報,ナレーション,効果音の挿入,場面転換等の編集は施されていない(甲1,審尋の全趣旨)。
オ 本件各動画は,YouTube又はTwitCastingのサイト上で繰り返し視聴することが可能である(審尋の全趣旨)。
(4) 大阪市における制度変更
大阪市は,債権者が大阪市長として在任していた平成23年中に,地域振興活動補助金及び大阪市青色防犯パトロール活動補助金の性質を,領収書などを付した活動報告書の提出が必要となる補助金から,提出が不要となる交付金へと変更した(乙22ないし26,審尋の全趣旨)。
3 争点
(1) 本件各発言,本件投稿等行為及び本件設定行為において摘示された事実の内容並びに債権者の社会的評価の低下の有無(争点1)
(債権者の主張)
ア 大阪都構想の実現の必要性を訴える各タウンミーティングにおける債務者Y1の本件各発言は,債権者の社会的評価を低下させ,名誉を毀損するものである。
本件発言①のうち,「町内会にXさんの選挙の時に現金100万円配られたのご存じですか。領収書なく配っています。どのように使われたのか全く分かりません。全町内会に100万ずつ配っているんです。」との表現,本件発言②のうち,「3年前の大阪市長選挙。僕とXさんが戦った大阪市長選挙。町内会に現金100万円,領収書抜きで配られています。皆さんの税金で。使い道何かわかりません。領収書求めずに役員の方に全部配っています。」,「Xさんのときはよかった。領収書もなく100万円配られて」との表現,本件発言③のうち,「選挙で,選挙が近づいてくると,町内会にね現金配るんです。」,「Xさんはもう町内会にびゃーんと現金まいて,はい領収書使わなくていいですよ,その代わり選挙で」との表現は,一般人の注意を基準にすれば,いずれも,債権者が,平成23年の大阪市長選挙の際,集票目的で,大阪市内の町内会に100万円を配ったという事実を摘示するものであり,債権者が公職選挙法に違反する行為を行ったかのような印象を与えるものである。
債務者Y1の前記各発言は,金員の交付時期を選挙と関連させ,金員の交付主体を債権者とするものであり,債務者Y1は,平成23年の大阪市長選挙の際に,債権者が集票目的のために全町内会に100万円ずつ領収書なく配ったと聴衆が受けとるように巧みに発言しており,本件TM①ないし③における演説において,聴衆は,新聞記事等と異なり,債務者Y1の動作や表情,音声などの情報を瞬時に理解することを余儀なくされること,実際に,その場の聴衆が嘲笑にも似たどよめきをしていることからすれば,債務者Y1の前記各発言は,一般人の注意を基準にした場合,前記の事実を摘示したものといえる。
イ 債務者らは,本件各発言において,領収書の提出を必要としない交付金として100万円が交付された事実しか摘示されていないと主張するが,本件各発言において現金を配ったとの表現が用いられていることや,本件各発言の前後を含めて,領収書の必要な補助金制度及び領収書の不要な交付金制度の説明がなされていないことから,一般人の注意を基準にした場合,本件各発言が,債権者が大阪市長に在任していた当時の大阪市において,領収書の提出を不要とする制度を用いて金員を交付していたことを単に批判するものとして理解することは困難である。
実際に,債務者Y1は,本件各発言が,選挙運動の際に債権者が金員を配っているという趣旨で受け止められたことを認識し,自身のtwitterや新聞社の取材において,本件各発言の内容を訂正している。
(債務者らの主張)
ア 債務者Y1の本件各発言は,一般人の注意を基準にすれば,債権者が大阪市長に在任していた平成23年度に,大阪市役所から各町内会に向けて,領収書の提出を必要とする「補助金」ではなく,これを必要としない「交付金」として100万円が交付されたという事実を摘示するものであり,債権者が公職選挙法に違反する不正行為を行ったかのような事実を摘示するものではない。
債務者Y1は,大阪市役所が,各町内会に交付する金員について,領収書の提出が不要となる制度を用いていたことを批判し,そのような市政を解体して大阪都構想を実現する必要があることを訴えたのである。
実際に,本件各発言に接したマスメディア等は,本件各発言を大阪市政と地域団体の問題についての言及であると捉えており,債権者以外に債権者が主張する事実の摘示として受け止めた者はいない。
イ 債権者は,債務者Y1の本件各発言の一部分だけを切り取り,本件各発言が,債権者が集票を目的として大阪市内の町内会に金員を交付したという事実を摘示するものであると主張するが,本件各発言に至った経緯,状況,文脈,その後の補足説明等を総合的に考慮するならば,債務者Y1の本件各発言は,平成23年度における大阪市の交付金制度への変更を批判するものであることは明らかであり,債権者の主張する事実が摘示され,債権者の社会的評価が低下したと評価される余地はない。
(2) 本件各発言,本件投稿等行為及び本件設定行為の違法性阻却事由の有無(争点2)
(債務者らの主張)
債権者は,かつては民放の人気アナウンサーであり,平成23年の大阪市長選挙で債務者Y1に敗れた後も,債務者Y1に批判的な政治活動を行い,大阪都構想の実現に反対する政治活動を展開し,マスメディアにも多数登場しているのであって,極めて高い知名度,発信力及び影響力を保持しているところ,債権者は,債務者Y1の本件各発言に対して反論する動画をYouTubeに公開し,平成27年4月30日時点において当該動画の視聴回数は8200回を超えており,十分に反論の機会を得ている。
以上からすると,本件は,対抗言論の法理ないしそれに類似する判断基準を用いるべき事案であり,本件各発言,本件投稿等行為及び本件設定行為には違法性が認められない。
(債権者の主張)
債務者Y1は,twitterにおいて129万人ものフォロワーがいる一方で,債権者は,平成23年の大阪市長選挙後,マスメディアに露出せず,目立った活動をしていないのであり,両者には言論の影響力において圧倒的な差があるから,本件は,被害者が加害者と同等のマスメディアにアクセスすることが可能であることを前提とする対抗言論の法理が妥当する事例ではなく,債権者が対抗言論によって自らの名誉を回復できないことは明らかであって,本件各発言,本件投稿等行為及び本件設定行為には違法性が認められる。
(3) 保全の必要性の有無(争点3)
(債権者の主張)
ア 選挙の際に公金で有権者を買収したという風評は,政治家である債権者にとって致命的な打撃を与えるものであるところ,本件動画①及び②は,平成27年3月23日の時点で合計3000回以上閲覧されており,同年5月17日に実施される大阪都構想の是非を問う住民投票が近づくにつれて,本件各動画の閲覧数は飛躍的に増加すると考えられ,事後的な金銭賠償によっては債権者の損害が回復し得ないことは明白であり,本件各動画を削除し,債務者Y2会のホームページ上から本件各動画を閲覧できないようにし,債務者Y1の同種の発言や本件各動画の頒布等を差し止める必要がある。
イ 前記住民投票後に債務者らが本件各発言の訂正及び謝罪を行ったとしても,その時点での債務者らの発言に対する注目度が低下していることが予想され,債権者の名誉は,前記住民投票前に債務者らが公の場で謝罪する方法によってしか回復し得ないから,仮に謝罪広告を掲載する必要がある。
ウ 前記(2)(債権者の主張)のとおり,債務者Y1と債権者との間には言論の影響力において圧倒的な差があるから,本件は対抗言論の法理が妥当する事例ではなく,債権者が対抗言論によって自らの名誉を回復できないことは明らかである。
エ 以上からすると,本件申立てには保全の必要性が認められる。
(債務者らの主張)
前記(2)(債務者らの主張)のとおり,債権者は,極めて高い知名度,発信力及び影響力を保持しているのであり,債務者Y1の本件各発言に対して債権者が反論する様子を撮影した動画を公開し,十分に反論の機会を得ている。
また,本件申立ては,統一地方選挙や前記住民投票において債務者らに有利な影響が出ることを回避し,大阪都構想への反対票を増加させることを目的としており,不当である。
以上からすると,本件申立てには保全の必要性が認められない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件各発言,本件投稿等行為及び本件設定行為において摘示された事実の内容並びに債権者の社会的評価の低下の有無)について
(1) 判断基準
ア 総論
本件各発言により摘示された事実がどのようなものであるか,また,摘示された事実が債権者の社会的評価を低下させるか否かは,タウンミーティングの会場において本件各発言を聴取等する場面においては,一般の聴取者の普通の注意と聴取等の仕方を,本件投稿等行為及び本件設定行為によってインターネット上で視聴可能となった本件各動画において本件各発言を視聴する場面においては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として判断するのが相当である(聴取者及び視聴者を併せて,以下「視聴者等」という。)。
イ 本件各発言をタウンミーティングの会場において聴取等する場面
本件TM①ないし③の各会場における債務者Y1の本件各発言は,聴衆の面前での演説においてなされたものであるところ,当該場面において,聴衆は,主に演説者の声及び姿形により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされるのであって,提供された情報の意味内容を十分に検討したり,再確認したりすることができないものであることからすると,本件TM①ないし③の各会場における債務者Y1の演説内の本件各発言により摘示された事実がどのようなものであるか,また摘示された事実が債権者の社会的評価を低下させるものであるか否かは,本件各発言そのものの意味内容を重視した上で,本件各発言に至る構成及び論題,債務者Y1の口調及び声量,本件各発言及びその前後の発言から受ける全体の印象等を総合的に考慮して判断するのが相当である。
ウ 本件各発言を本件各動画において視聴する場面
前記前提事実(3)エ及び疎明資料(甲1)によれば,本件各動画は,本件TM①ないし③における演説者の様子をそのまま録画したものであり,テロップ等による文字情報,ナレーション,効果音の挿入,場面転換等の編集は施されておらず,本件各発言部分においても,演説する債務者Y1の姿を中心とした演説風景が映し出されているに過ぎず,本件各発言の内容について視聴者に視認できる文字情報を与えていないものと認められる。また,前記前提事実(3)アないしウのとおり,本件各動画のタイトルは各タウンミーティングの日時や場所を示すものにとどまり,本件各動画の視聴ページにおいて,本件各発言の意味内容に関する説明等の記載は存在しない。そうすると,本件各動画に録画された本件各発言を視聴する場面と,本件TM①ないし③の各会場において本件各発言を聴取等する場合とでは,視聴者等における表現内容の受け止め方に大きな差異はないというべきである。
前記前提事実(3)オのとおり,本件各動画は,テレビジョン放送の場合に比べて,YouTube又はTwitCastingのサイト上で繰り返し視聴することが可能であるという違いがあるものの,動画の視聴という面でテレビジョン放送と本質的に共通するものであるし,繰り返し視聴すれば本件各発言について別個の意味に解されないことはないにしても,提供された情報の意味内容を再生によって十分に検討したり再確認したりすることが,通常であるとも一般的に期待されているともいうことはできないから,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方においては,本件各発言及びその前後の発言から受ける全体の印象等によって異なる見方,受け取り方がされることが通常であり,本件各動画における本件各発言により摘示された事実がどのようなものであるかは,このような印象等を総合考慮して判断すべきである(最高裁判所平成15年10月16日第一小法廷判決民集57巻9号1075頁参照)。
以上の各事情を踏まえれば,本件各動画に録画された本件各発言においてどのような事実が摘示されたか,また摘示された事実が債権者の社会的評価を低下させるものであるか否かの判断基準は,債務者Y1が演説する様子をタウンミーティングの各会場において聴取等する場面と異にするものではないというべきであり,前記イ記載の基準と同様に解するのが相当である。
以下,本件各発言をタウンミーティングの会場において聴取等する場面と本件各動画において視聴する場面とを区別せずに,本件各発言において摘示された事実がどのようなものであるか,また,摘示された事実が債権者の社会的評価を低下させるか否かを検討する。
(2) 本件発言①
ア 債務者Y1は,本件発言①において「町内会にXさんの選挙の時に,現金100万円配られたのご存じですか。領収書なく配っています。どのように使われたのか全く分かりません。ええ,もう全町内会に100万ずつ配っているんです。」との内容を断定的な表現を用いて発言している。
前記発言部分においては,100万円の交付時期が「選挙の時」に限定されているところ,一般に,これは選挙運動時又は投票日に直近する時期と理解するのが自然である。このように,100万円の交付時期を選挙と関連させていることに加え,当該時期に全町内会に正規の現金として100万円が一律に交付されることは通常考えられないこと,前記発言部分の直前に「告げ口しますけどもね」と述べて,公にされていない問題や不正を公表するという印象を与える予告をしていること,本件発言①が大阪都構想に反対する政治家や関係者の既得権益の保持に対する批判の中で言及されていること,債務者Y1は,後日,債権者から本件各動画の削除等を求められる前に,前記発言部分が一部のマスメディアに選挙運動の時に債権者が現金を配っているという趣旨で受け止められたことを認識し,自身の発言について補足説明したこと(甲10の1,甲10の2,乙19,審尋の全趣旨),以上の各事情を考慮すれば,債務者Y1は,大阪市長選挙における集票を目的としたものであると明言はしていないものの,一般の視聴者等の普通の注意と視聴又は聴取等の仕方を基準とした場合,前記発言部分は,債権者が主体となって,大阪市長選挙における集票を目的として,選挙運動時又は投票日に直近する時期に,全町内会に現金100万円を交付したとの事実を摘示するものと認められる。
イ これに対し,債務者らは,債務者Y1の本件発言①は,債権者が大阪市長に在任していた平成23年度に,大阪市役所から各町内会に向けて,領収書の提出を必要とする「補助金」ではなく,これを必要としない「交付金」として100万円が交付されたという事実を摘示するものに過ぎないと主張する。
確かに,前記ア記載の債務者Y1の発言後の内容を十分に注意して聞けば,本件発言①が,金員の交付につき領収書を不要とした大阪市政に対する批判であると理解し得なくもない。
しかしながら,まず,「選挙の時」という表現から,大阪市長選挙が実施された平成23年度を意味するものとして理解することは,用語の通常の意味と乖離するものであって,この点の債務者らの主張は認められない。
前記前提事実(4)及び審尋の全趣旨によれば,債権者が大阪市長に在任していた平成23年中に,大阪市が,地域振興活動補助金及び大阪市青色防犯パトロール活動補助金の性質を,領収書などを付した活動報告書の提出が必要となる補助金から,同報告書の提出が不要となる交付金へと変更した事実は,一般人が常識として有する知識とは認められない。そのような状況の中,債務者Y1は,前記ア記載の発言に至るまでに,大阪市が領収書を不要とする交付金制度に変更したことの是非について明示的に問題提起することなく,前記ア記載の発言の直前に「告げ口しますけどもね」と述べて,公にされていない問題や不正が公表されるのではないかとの聴衆の好奇心を煽った上で,不意に,選挙運動時又は投票日に直近する時期に,領収書もなく現金が交付されたとの内容を発言したのであって,これは,大阪市の前記制度変更に関する知識を欠く聴衆に対して,債権者が集票目的で,正規でない現金で有権者を買収したかのような印象を強烈に与えるものである。そして,当該発言の直後に,債務者Y1が領収書を求めるようにした旨の発言をしたことをもってしても,債務者Y1から,補助金及び交付金に関する制度変更について十分な説明が加えられていない以上,制度変更に関する前提知識を欠く聴衆において,前記印象を払拭することは困難であるというべきである。
以上からすると,一般の視聴者等の普通の注意と視聴又は聴取等の仕方を基準とした場合,前記ア記載の債務者Y1の発言が,大阪市において平成23年度に行われた領収書を不要とする制度変更の是非を問題にしていることを即時に理解することは困難であるといわざるを得ない。したがって,債務者らの主張は認められない。
ウ 債権者が主体となって,大阪市長選挙における集票を目的として,選挙運動時又は投票日に直近する時期に,全町内会に100万円を交付したとの事実は,一般の視聴者等の普通の注意と視聴又は聴取等の仕方を基準とすれば,公職選挙法で罰則をもって禁止されている買収行為を債権者が行ったかのような印象を抱かせるから,前記ア記載の発言部分は,債権者の社会的評価を低下させるものと認められる。
(3) 本件発言②
ア 債務者Y1は,本件発言②において,「3年前の大阪市長選挙,僕とXさんが戦った大阪市長選挙。町内会に現金100万円,領収書抜きで配られています。皆さんの税金で。使い道何かわかりません。領収書求めずに役員の方に全部配っています。」との内容を断定的な表現を用いて発言している。
前記発言部分は,前記(2)アと同様の理由により,一般の視聴者等の普通の注意と視聴又は聴取等の仕方を基準とした場合,債権者が主体となって,大阪市長選挙における集票を目的として,選挙運動時又は投票日に直近する時期に,全町内会又はその役員に100万円を交付したとの事実を摘示するものと認められる。
イ これに対し,債務者らは,本件発言②は,債務者Y1の就任以前の大阪市役所において,領収書の提出がないままに町内会に100万円の金員が交付されており,市民全体の利益に反するシステムになっていたという制度上の問題点を取り上げたものに過ぎないと主張する。
しかしながら,本件発言②において,前記ア記載の発言までに,大阪市が領収書を不要とする交付金制度へ変更したことについて明示的に問題提起していないこと,前記ア記載の発言の直前に「僕はもうこれ言います。僕はもうね,こういう状況になったからはっきりもう言います。町内会の人はそれだけは言うのは勘弁してくれといわれますけどね」と述べて聴衆の好奇心を煽っていること,前記ア記載の発言は,大阪市の前記制度変更に関する知識を欠く聴衆に対して,債権者が集票目的で,正規でない現金で有権者を買収したかのような印象を強烈に与えるものであること,当該発言の後に債務者Y1が領収書を求めるように改めた旨の発言をしても聴衆が前記印象を払拭することは困難であることは本件発言①と同様であって,一般の視聴者等の普通の注意と視聴又は聴取等の仕方を基準とした場合,前記ア記載の債務者Y1の発言が,債務者Y1の就任以前の大阪市における領収書に関する制度の是非を単に問題にしていることを即時に理解することは困難であるといわざるを得ない。したがって,債務者らの主張は認められない。
ウ 前記(2)ウと同様の理由により,前記ア記載の発言部分は,債権者の社会的評価を低下させるものと認められる。
(4) 本件発言③
ア 債務者Y1は,本件発言③において,「選挙で,選挙が近づいてくると,町内会にね,現金配るんです」(当該発言部分を以下「本件発言③A」という。),「Xさんはもう町内会にびゃーんと現金まいて,はい領収書使わなくていいですよ,その代わり選挙で,といったかどうかは分かりませんけれどもね。」(当該発言部分を以下「本件発言③B」という。)と発言している。
イ 本件発言③A及びBの内容は,100万円の配布時期が選挙時又は選挙が接近した時期に限定されていること,一見すると100万円の交付の主体が債権者とされていること,現金の交付の態様を「配る」,「びゃーんとまく」と表現し,現金を分け与えたかのような印象を視聴者等に植え付けるものであることからすると,本件発言③は,全体として,債権者が主体となって,大阪市長選挙における集票を目的として,選挙時又は選挙が接近した時期に,町内会に100万円を交付したとの事実を示唆する側面があることは否定できない。
しかしながら,債務者Y1は,本件発言③Aの直前に,「大阪市役所はでたらめな補助金を配っていたんです。」と述べて,大阪市における補助金制度(正確には交付金制度)に問題があることを冒頭で指摘し,本件発言③Aの発言後,本件発言③Bの発言に至るまでに,領収書を要しない現金の交付が無駄遣いを生むと主張し,領収書を不要とする制度が県議会議員により悪用されたとされる実例を具体的に紹介した上で,「領収書つけるのは当然なんですよ,税金使うんですから,僕はだからね,Xさんがやったことこれ改めました。」と発言し,その直後に本件発言③Bの発言をしているのである。このような発言の構成からすれば,本件発言③は,債務者Y1において,補助金制度の在り方を問題視する,すなわち,現金の交付それ自体ではなく,現金の交付につき領収書を不要とする制度がかつての大阪市で用いられていたことを問題視する発言であることが,それほど困難なく理解することができる。そして,債務者Y1が,本件発言③Bにおける「その代わり選挙で,と言ったかどうかは分かりませんけれどもね。」との発言により,領収書を要しない現金が町内会に交付された際に,債権者が,大阪市長選挙の際に債権者に票を入れるように買収したとの事実の存在を黙示に主張するものとまでは認められないというべきである。
以上の事情を総合的に考慮し,本件発言③の全体の印象を踏まえれば,本件発言③は,一般の視聴者等の普通の注意と視聴又は聴取等の仕方を基準とした場合,債権者が市長を務めていた時期の大阪市が,選挙時又はこれが近づいてきた際に,領収書を要しない補助金を町内会に交付していたという事実を摘示するにとどまり,前記交付が債権者の集票目的の下で行われたという事実までを摘示するものではないと認めるのが相当である。
ウ 債権者が市長を務めていた時期の大阪市が,選挙時又はこれが近づいてきた際に,領収書を要しない補助金を町内会に交付していたという事実は,一般の視聴者等の普通の注意と視聴又は聴取等の仕方を基準とした場合,債権者が市長であった当時の大阪市の市政に問題があったことを指摘するにとどまるものである。そうすると,本件発言③は,債権者の社会的評価を低下させるものとは認められない。
(5) まとめ
以上のとおりであるから,債務者Y1の本件TM①における本件発言①,本件TM②における本件発言②,債務者らの本件動画①及び本件動画②のYouTubeへの投稿並びに本件設定行為は,債権者の社会的評価を低下させるものと認められ,一方,債務者Y1の本件TM③における本件発言③及び債務者らが本件動画③をTwitCastingにおいて視聴できる状態にしたことは,債権者の社会的評価を低下させるものとは認められない。
本件発言①及び②と本件発言③とで結論を異にするのは,主に,債権者が名誉毀損表現であると主張する各発言に至るまでに,補助金という具体的な言葉を用いて大阪市の交付金制度に関する問題を提起しているか否か,公にされていない問題や不正が公表されるのではないかとの聴衆の好奇心を煽るような発言による印象付けの有無,領収書を不要とすることによる弊害の具体例の紹介の有無による発言全体の印象の違いに由来するものである。
2 争点2(本件各発言,本件投稿等行為及び本件設定行為の違法性阻却事由の有無)について
債務者らは,債権者が現時点においても極めて高い知名度,発信力及び影響力を保持しており,また,債権者は,債務者Y1の本件各発言に対して反論する動画をYouTube上に公開し,当該動画は多数視聴されており,十分に反論の機会を得ているから,本件は対抗言論の法理ないしそれに類似する判断基準を用いるべき事案であり,本件各発言,本件投稿等行為及び本件設定行為には違法性がない旨主張する。
疎明資料(甲21,乙6ないし17,乙28ないし31,乙33,乙35)及び審尋の全趣旨によれば,債権者は,大阪市の前市長やテレビ局の元アナウンサーの肩書きを掲げ,政治団体を設立して主に大阪都構想に反対する政治活動を展開し,書籍,講演,街頭演説,ブログ,twitter,動画サイトへの投稿及びマスメディアに対する取材等を通じて,自身の政治理念や主張を発信していること,債権者が本件各発言について解説した上で反論する動画(以下「本件反論動画」という。)をYouTube上に投稿し,当該動画は前記のとおり相応数の視聴がされていることがそれぞれ認められ,債権者には,現時点においても,相応の知名度や情報発信力があるというべきである。
しかしながら,前記前提事実,疎明資料(甲21,乙21)及び審尋の全趣旨によれば,債務者Y1は,現職の大阪市長であり,かつ,地方政党の債務者Y2会の代表及び国政政党であるa党の最高顧問であって,その地位や経歴,マスメディアへの露出,130万人を超えるフォロワーを有するtwitterにおける情報発信等により,極めて高い知名度や情報発信力を保持しているものと認められるのであり,債務者Y1の知名度や情報発信力は,債権者のそれを大きく上回るものといわざるを得ず,債権者と債務者Y1が言論市場において対等な地位にあるとは認められない。加えて,本件発言①及び②を本件TM①及び②の各会場で聴取等した者並びに本件動画①及び②をYouTube上で視聴した者が,引き続き,債権者が作成した本件反論動画を視聴するとは限らず,債権者の反論に接する保証はない。
以上の各事情を総合的に考慮すれば,本件発言①及び②,本件動画①及び②の投稿並びに本件設定行為による債権者の名誉毀損について,債権者の対抗言論の存在によって違法性が阻却されるとは認められないというべきであり,債務者らの主張は認められない。
3 争点3(保全の必要性の有無)について
以下,債務者Y1の本件TM①における本件発言①,本件TM②における本件発言②,債務者らの本件動画①及び本件動画②のYouTubeへの投稿並びに本件設定行為による名誉毀損に関する以下の各申立てについて,保全の必要性を検討する。
(1) 債務者らに本件動画①及び②の削除並びに本件動画①及び②の閲覧措置及び頒布の禁止を求める申立てについて
ア 本件動画①及び②はインターネットを通じて世界中に公開されており,今なお債権者の名誉の侵害は継続しており,政治活動を行う債権者にとって,公職選挙法違反の疑いがもたれることは大きな打撃というべきである。前記のとおり,極めて高い知名度や情報発信力を有する債務者らによる債権者の名誉の侵害の程度は重大であって,本件動画①及び②による債権者の被害は,損害賠償のみによって回復することは困難というべきであり,債権者に生ずる著しい損害を避けるため,既に公開されている本件動画①及び②の削除並びに本件動画①及び②の閲覧措置及び頒布の禁止の必要があるといえる。
したがって,標記各申立てには保全の必要性が認められる。
イ これに対し,債務者らは,債権者は,極めて高い知名度,発信力及び影響力を保持しているのであり,本件反論動画を公開し,十分に反論の機会を得ているから,前記申立てには保全の必要性がないと主張するが,前記2のとおり,債権者と債務者Y1の知名度及び情報発信力には大きな差があること,債務者Y1の本件発言①及び②に接した者が債権者の反論に接する保証はないことから,債務者らの主張は認められない。
また,債務者らは,債権者による本件申立てが,統一地方選挙や前記住民投票において債務者らに有利な影響が出ることを回避し,大阪都構想への反対票を増加させることを目的とするものであると主張するが,審尋の全趣旨によれば,本件申立てには債権者の名誉の回復を図る目的が存在すると認められ,専ら政治利用の目的であると疎明するに足りる証拠はないから,保全の必要性はなお否定されないというべきである。よって,債務者らの主張は認められない。
(2) 債務者Y1に特定の発言の禁止を求める申立てについて
債権者は,債務者Y1に対し,公衆に対する演説,ホームページの記載,twitter等を通じてのインターネット上における公衆配信,テレビ等マスメディアにおける発言その他の方法により,平成23年における大阪市長選挙において,債権者に票を集める目的で,大阪市から大阪市内の町内会に金100万円が配られたという発言を不特定多数人に対して行わないことを求める。
疎明資料(乙19ないし乙21)によれば,債務者Y1は,本件TM①及び②の十数日後,記者会見及びtwitterにおいて,本件発言①及び②の内容について,それまで地域団体への補助金が領収書を求めるものであったところ,債権者と債務者Y1が対決した大阪市長選挙が行われた平成23年に,債権者が領収書を求めない交付金に切り替えたのであって,自身の選挙のある年に領収書抜きで税金を配るのはおかしいという趣旨であるとの釈明ないし補充説明をしていることが認められ,そのような債務者Y1の言動及び主張内容からすれば,今後,債務者Y1が,平成23年における大阪市長選挙時に,債権者に票を集める目的で,大阪市から大阪市内の町内会に金100万円が配られたという公職選挙法に違反するかのような発言を不特定多数人に対して行う蓋然性は乏しいというべきである。
したがって,債務者Y1に対し前記発言の禁止を求める申立てには保全の必要性が認められない。
(3) 債務者らに謝罪広告の掲載を求める申立てについて
債権者は,債務者らに対し,twitter及びホームページ上での謝罪広告の掲載を求めるが,本案判決を待っていては債権者の名誉の回復が遅きに失する程の差し迫った緊急性は認められないというべきである。
債権者は,債権者の名誉は,大阪都構想の是非を決する住民投票の前に債務者らに謝罪される方法によってしか回復し得ないと主張するが,債権者の名誉回復と前記住民投票とは直接的に関連するものではなく,住民投票後における謝罪によっては債権者の名誉の回復が遅きに失するとはいえないから,債権者の主張は認められない。
したがって,債務者らに対し謝罪広告の掲載を求める申立てについては保全の必要性が認められない。
第4 結論
以上のとおりであるから,債権者の本件申立ては,債務者らに対して,YouTubeから本件動画①及び②の削除(主文第1項(1)),本件動画①及び②の閲覧措置及び頒布の禁止(主文第1項(2)及び(3))を求める限度で理由があり,その余は理由がない。
したがって,債権者が債務者らに対して本決定送達の日から7日以内にそれぞれ40万円の担保を立てることを条件に,上記の限度で発令することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 古財英明 裁判官 向井敬二 裁判官 望月一輝)
〈以下省略〉
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