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裁判年月日 令和 4年 9月28日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令4(ネ)10024号
事件名 映画上映禁止及び損害賠償請求控訴事件
裁判結果 棄却 文献番号 2022WLJPCA09286001
裁判経過
第一審 令和 4年 1月27日 東京地裁 判決 令元(ワ)16040号 映画上映禁止及び損害賠償請求事件
出典
裁判所ウェブサイト
裁判年月日 令和 4年 9月28日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令4(ネ)10024号
事件名 映画上映禁止及び損害賠償請求控訴事件
裁判結果 棄却 文献番号 2022WLJPCA09286001
控訴人 X₁
控訴人 X₂
控訴人 X₃
控訴人 X₄
控訴人 X₅
控訴人ら訴訟代理人弁護士別紙代理人 目録記載のとおり
被控訴人 Y
被控訴人 合同会社東風
被控訴人ら訴訟代理人弁護士別紙代理人 目録記載のとおり
主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは、被控訴人Y監督、B・プロダクションズ製作、被控訴人合同会社東風配給に係るドキュメンタリー映画「主戦場」を上映し、又は、第三者に売却、引渡し、賃貸、譲渡、頒布、配給その他一切の処分をしてはならない。
3 被控訴人らは、控訴人X₁及び控訴人X₂それぞれに対し、連帯して、各500万円及びこれに対する令和元年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被控訴人らは、控訴人X₃、控訴人X₄及び控訴人X₅それぞれに対し、連帯して、各100万円及びこれに対する令和元年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被控訴人Yは、アマゾンドットコム・インク(アメリカ合衆国(省略)所在)に対し、「Shusenjo: Comfort Women and Japan’s War on History」という表題の映画の上映、頒布(譲渡及び貸与)、複製、公衆送信及び送信可能化をしてはならない旨の意思表示をせよ。
第2 事案の概要等
(以下、控訴人X₁を「控訴人X₁」と、控訴人X₂を「控訴人X₂」と、控訴人X₃を「控訴人X₃」と、控訴人X₄を「控訴人X₄」と、控訴人X₅を「控訴人X₅」と、被控訴人Yを「被控訴人Y」と、被控訴人合同会社東風を「被控訴人会社」という。その他の略語は原判決の表記に従う。)
1 事案の要旨
⑴ 本件は、控訴人らが、
ア 被控訴人らは、控訴人らに対する取材映像等並びに控訴人X₂及び控訴人X₄が作成した映像等を利用して本件映画1(ドキュメンタリー映画「主戦場」)を製作し、これを上映することにより、控訴人らに対する取材映像等について控訴人らが有する著作権及び著作者人格権を侵害し、控訴人X₂及び控訴人X₄が作成した映像等について控訴人X₂及び控訴人X₄が有する著作権並びに控訴人X₂が有する著作者人格権を侵害したと主張して、それぞれ、各著作権及び各著作者人格権による差止請求権(著作権法112条1項)に基づき、被控訴人らに対し、本件映画1の上映等の差止めを求めるとともに(前記第1の2関係)、
イ(ア) 被控訴人らは、本件映画1の製作、上映により、控訴人らに対する取材映像等について控訴人らが有する著作権及び著作者人格権、控訴人X₂及び控訴人X₄が作成した映像等について控訴人X₂及び控訴人X₄が有する著作権並びに控訴人X₂が有する著作者人格権を侵害した(前記ア)ほか、控訴人らの肖像権、名誉権(声望)、控訴人X₁のパブリシティ権を侵害したと主張して、それぞれ、各不法行為による損害賠償請求権に基づき、被控訴人らに対し、損害の一部として、控訴人X₁及び控訴人X₂につき各450万円及びこれに対する不法行為後の令和元年8月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を、控訴人X₃、控訴人X₄及び控訴人X₅につき各50万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の連帯支払を求め、
(イ) 予備的に、控訴人X₃及び控訴人X₄は、被控訴人Yは、控訴人X₃及び控訴人X₄との間の各合意に反して本件映画1を製作、上映したと主張して、被控訴人らに対し、各債務不履行による損害賠償請求権に基づき、各50万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の3及び4関係)、
ウ 被控訴人Yは、本件映画1の製作に当たり控訴人らを欺罔して取材に応じるという役務の提供をさせたと主張して、被控訴人らに対し、各不法行為による損害賠償請求権に基づき、各50万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の3及び4関係)、
エ 被控訴人Yが著作権を有する本件映画2(「Shusenjo: Comfort Women and Japan’s War on History」という表題の映画)がアマゾン(アマゾンドットコム・インク、アメリカ合衆国(省略)所在)により譲渡、貸与等され、控訴人らの肖像権、名誉権(声望)が侵害されたと主張して、被控訴人Yに対し、各肖像権及び各名誉権に基づき、アマゾンに対して本件映画2の上映等をしてはならない旨の意思表示をすることを求める(前記第1の5関係)事案である。
⑵ 原判決が控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴した。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記する。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)
前提事実は、原判決4頁24行目の「従軍慰安婦」を「慰安婦」に改めるほか、原判決「事実及び理由」(以下、「事実及び理由」という記載を省略する。)第2の2(原判決4頁14行目から11頁7行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
3 争点
争点は、次のとおり付加するほかは原判決第2の3(原判決11頁10行目から12頁24行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
原判決12頁24行目末尾の後に行を改めて次のとおり加える。
「⑽ エンドロールが削除された本件映画1のお正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)による本件各利用映像等の利用が本件各利用映像等の著作権を侵害することにつき、被控訴人らは責任を負うか(争点⑩)。」
4 争点に関する当事者の主張
争点に関する当事者の主張は、後記5のとおり当審における補充主張を付加するほかは、原判決第2の4(原判決12頁26行目から25頁5行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、上記記載中、「従軍慰安婦」との記載を全て「慰安婦」に改める。)。
5 当審における補充主張
⑴ 本件映画1の製作、上映により、控訴人らの社会的評価が低下したか(争点②-1)、本件各表現が違法性を欠くものであるか(争点②-2)について
〔控訴人らの主張〕
いわゆる慰安婦問題の論点は、①日本軍による強制連行の有無、②性奴隷であったか否か、③20万人もいたのか、の3点であり、これに関する日本政府の公式見解は、①日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらない、②「性奴隷」という表現は、事実に反するので使用すべきではない、③「20万人」は、具体的な裏付けのない数字であり、発見された資料には慰安婦の総数を示すものはなく、また、これを推認させるに足りる資料もないので、慰安婦の総数を確定することは困難である、というものである。控訴人らの見解は、日本政府の公式見解と一致しているものである。
本件映画は、日本政府と同じ見解に立つ控訴人らを「歴史修正主義者」、「否定論者」と評価するものであり、本件映画1の製作、上映により、控訴人らの社会的評価が低下し(争点②-1)、本件各表現は違法性を有するものである(争点②-2)。
〔被控訴人らの主張〕
本件映画1は、慰安婦問題という、現状において歴史的、社会的、政治的に様々な言説が存在する問題を扱うものであることから、公共性、公益目的が認められる。本件映画1において「歴史修正主義者」、「否定論者」と論評することは、控訴人らに対する人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱するものとはいえない。
⑵ 本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であるか(争点①-3)、及び、被控訴人Yが、控訴人らを欺罔して取材に応じるという役務の提供をさせたか(争点⑦)について
〔控訴人らの主張〕
控訴人らが、承諾書又は合意書作成時に、承諾書又は合意書に基づく被控訴人Yとの合意の内容として認識していた本件映画1の公開の態様は、それぞれ後記アないしオのとおりであり、本件映画1を、映画館で観客から視聴料金を徴収して公開すること(以下「商用公開」という。)は、本件各許諾の内容となっていなかった。したがって、本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であり(争点①-3)、被控訴人Yは、控訴人らを欺罔して取材に応じるという役務の提供をさせた(争点⑦)。
ア 控訴人X₅の認識した公開は、修士の学位取得可否判断のために教授陣に見せることであり、大学内であったとしても、学園祭等の上映すら含まれず、商用公開は含まれなかった。
イ 控訴人X₃の認識した公開は、修士論文である卒業制作の範疇であり、教授団の審査のみならず、同じコースの院生の間で公開することも考えていが、映画祭やユーチューブでの利用、商用利用は含まれなかった。
ウ 控訴人X₄の認識した公開は、卒業制作の範疇にとどまらず、映画祭やユーチューブでの利用を含むが、商用公開は含まれなかった。
エ 控訴人X₁の認識した公開は、一般的な学生制作映画であればされるであろう映画祭やユーチューブでの利用を想定したものであり、商用公開は含まれなかった。
オ 控訴人X₂の認識した公開は、修士論文たる卒業制作の範疇であり、商用公開は含まれなかった。
〔被控訴人らの主張〕
承諾書には商用公開を前提とした記載があり、合意書にも公開を前提とするにもかかわらず商用を除く記載はないこと、被控訴人Yが映画祭や日本全国での公開、配給会社からの招待状の送付を告知したにもかかわらず、控訴人らは異議を述べなかったこと等からすると、商用公開をしないことは、本件各許諾の内容となっていなかった。そのため、詐欺、錯誤、債務不履行は成立しない。
⑶ 被控訴人Yに、控訴人X₃及び控訴人X₄との間の本件事前確認等条項に違反した債務不履行があるか(争点⑤)について
〔控訴人らの主張〕
ア 本件事前確認等条項③は、映画全体を確認する権利を留保した。すなわち、控訴人X₄は、平成28年9月21日、被控訴人Yに対し、「インタビューの前に、撮影する動画が貴殿の仰った目的以外に使用されないことと、私には公開前にそれを視聴する権利を有することを確認したく思います。
過去に、メディアの中には私が言ったことから特定の観点だけを切り取り、話全体の含意を歪めて大げさにするものがあったからです。」との電子メールを送信した。被控訴人Yは、同日、控訴人X₄に対し、「また、完成したドキュメンタリーは、公開前に貴殿にお見せできますので、もし私が貴殿について誤解を招いていたり、話の文脈から言葉を取り上げていると思ったなら、映画の最後に貴殿の不服を表明するメッセージを付けます」と返答した。上記のとおり、被控訴人Yが、公開前に、控訴人X₄に対し、見せることを約した対象は「完成したドキュメンタリー」なのであって、本件事前確認等条項③は、映画全体を確認する権利を留保したものである。
控訴人X₃は、控訴人X₄が作成した合意書であるからこそそれにサインしたのであり、控訴人X₄の合意書の作成経緯に関する主張を援用し、本件事前確認等条項③は、映画全体を確認する権利を留保したものであると主張する。
控訴人X₄が、平成30年10月2日の被控訴人Y宛のメールにおいて、「公開前に、確認のために私共が視聴することに合意を結んだのを覚えておられますか。私共はインタビューを誤用された経験があるため、これは重要なことであります。」と述べたのは、映画全体の確認を請求したものである。
イ ところが、控訴人X₃及び控訴人X₄は、いずれも本件映画1の全体を確認していないから、被控訴人Yには、控訴人X₃及び控訴人X₄との関係で、本件事前確認等条項③に違反する債務不履行がある。
〔被控訴人らの主張〕
被控訴人Yは、平成30年5月21日、控訴人X₃に対し、合意書に基づいて映画の中で使用するクリップを送付する旨記載し、本件映画1のうち控訴人X₃の取材に係る部分を蔵置したサーバーへのハイパーリンクを記載した電子メールを送信し、控訴人X₄に対しても同様に、本件映画1のうち控訴人X₄の取材に係る部分を蔵置したサーバーへのハイパーリンクを記載した電子メールを送信した。被控訴人Yは、同年10月2日に、控訴人X₄に対して、上記メールをスクリーンショットしたものを再度電子メールで送信した。
控訴人X₃及び控訴人X₄らは、被控訴人Yから上記メールを受信したにもかかわらず、被控訴人Yに対して、完成したドキュメンタリー全部を見せるように要求したり、本件事前確認等条項の義務が履行されていないなどの抗議をすることはなかったから、合意書について債務不履行はなかった。
被控訴人Yが平成28年9月21日の電子メール(乙25の1)で「完成したドキュメンタリーは、公開前に貴殿にお見せできます。」と伝えたのは、合意書を修正する前のことであり、これにより本件映画1の全部を公開前に見せることを約束したものではない。
したがって、被控訴人Yには、控訴人X₃及び控訴人X₄との関係で、本件事前確認等条項③に違反する債務不履行はない。
⑷ 被控訴人らが本件利用映像等5、6を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人X₂の著作者人格権を侵害するか(争点④)について
〔控訴人らの主張〕
同一性保持権侵害の被侵害利益は、著作者の名誉感情である。本件利用映像等5は、被控訴人Yにより、本件映画1において、その一部のみについて音声が削除され、「私が慰安婦問題を調べ始めたときテキサスの白人男性が日本の右派の主張を繰り返しているのが奇妙に映った」とのナレーションが加えられている。慰安婦問題というデリケートな問題を扱った本件利用映像等5の一部を切り出し、音声を削除し、上記のナレーションを加えることは、控訴人X₂が客観的証拠もなく偏った主張を述べているにすぎないかのような印象を与えかねないから、通常の著作者であれば名誉感情を害されて当然であり、控訴人X₂の同一性保持権を侵害する。
本件利用映像等6は、控訴人X₂が著作者である本件外部映像等6のうち、日本における人種差別についてことさらに騒ぎ立てる者がいることを述べた部分のみが利用されていて、控訴人X₂が、日本に人種差別が存在すると指摘すること自体を批判しているかのような印象を与えかねないから、通常の著作者であれば名誉感情を害されるものであり、控訴人X₂の同一性保持権を侵害する。
〔被控訴人らの主張〕
被控訴人らは、本件映画1を製作、上映するに当たり、控訴人X₂の名誉又は声望を害する方法によって本件外部映像等5、6を利用していないから、控訴人X₂の著作者人格権を侵害したものとは認められない。
本件利用映像等5、6の作成は、「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)であると認められるから、控訴人X₂の同一性保持権を侵害するものとは認められない。
⑸ 本件各利用映像等の利用が引用(著作権法32条1項)として適法か(争点③-2)について
〔控訴人らの主張〕
ア 被控訴人らが本件各利用映像等を本件映画1に利用した目的は、控訴人X₂の見解を紹介する目的というより、商用目的である。無料で視聴できるからといって、投稿した動画を、商用目的に無断利用することは、投稿者の推定的意思に反するから、公正な慣行に合致しない。実質的にも、仮に、ユーチューブ等に投稿されている動画を、商用映画に引用することが広く認められるならば、今後の商用映画製作において、インターネット上の投稿映像を引用し放題となりかねず、個人撮影映像の投稿を阻害し、社会的妥当性を欠くことになる。したがって、本件各利用映像等の利用は、公正な慣行に合致するものではない。
イ 本件利用映像等2について、著作者名の表示は「明示」であるとしても、著作物タイトル”Traveling (省略) A Japan bound to the Land of the Rising Sun April 2012″の先頭部分が切れて画面左下に小さく表示されているのみであり、本件利用映像等3について、著作者名及び著作物タイトル”Comfort Women statue vs. the Mayor of Osaka”が画面左側下に小さく表示されているのみであり、このような態様の表示は、たまたま映り込んでいるという程度のものであって、視聴者が注意して見なければ見逃すようなものであり、本件利用映像等2及び3の題名は、本件映画1の映像等から認識することが極めて困難であり、「明示」に足りない。ユーチューブに投稿した動画であることが分かりさえすれば出所の明示に足りるというのは、不当である。通常行われているエンドロールでのクレジット表示又は利用部分における表示のみをもって視聴者が容易に出所を認識できる場合に、出所の明示があるといえるところ、本件利用映像等2及び3にはそのような出所の明示がない。
〔被控訴人らの主張〕
ア 引用された著作物が商用利用されたことのみをもって、公正な慣行に合致しないとはいえない。他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などを総合考慮して、公正な慣行に合致するかを決めるべきである。本件各利用映像等の利用は、公正な慣行に合致する。
イ エンドロールでのクレジット表示だけが出所の明示であるという慣行は存在しない。ユーチューブ動画を利用する場合には、ユーチューブの検索機能を使い、キーワード検索をするのが一般的であるから、著作者名、動画の題号、ユーチューブからの出典であることの表示があれば、出所の明示として必要十分である。本件利用映像等2及び3は、引用の対象である本件外部映像等2及び3が、控訴人X₂がユーチューブに投稿した動画であることやその題名を認識することができるから、その複製や利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度による出所の明示がされているといえる。
⑹ エンドロールが削除された本件映画1のお正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)による本件各利用映像等の利用が本件各利用映像等の著作権を侵害することにつき、被控訴人らは責任を負うか(争点⑩)について
〔控訴人らの主張〕
ア 映画「主戦場」お正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)ではエンドロールが削除されている。被控訴人らは、お正月韓国SBS放送版は、韓国のテレビ局が独自にエンドロールのクレジット表示を削除して放送したものであり、この削除について被控訴人らは承諾も関与もしておらず、また、予告編(韓国版)も、韓国の配給会社が独自にエンドロールや出所表示なしに制作したものであり、上記SBS放送版と同様、被控訴人らは承諾も関与もしていないと主張する。
イ しかしながら、仮に被控訴人らの主張する上記事実が真実だとしても、被控訴人会社は、本件映画を韓国のテレビ局及び配給会社に配給することにより利益を上げており、被控訴人会社は、韓国のテレビ局及び配給会社に対して、本件映画を、被控訴人会社が編集することを可能とする契約により配給しているので、お正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)を管理しているといえる。したがって、お正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)からエンドロールのクレジット表示を削除した著作権法上の主体は、被控訴人会社であると評価されるべきであり、これは被控訴人会社による著作権侵害の不法行為に当たる。
〔被控訴人らの主張〕
被控訴人らが、控訴人らの主張アのような主張をしていることは認め、控訴人らの主張イは争う。
お正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)からエンドロールが削除されたのは、本件映画1ができ上がった後のことであるし、控訴人らの主張によっても、損害賠償の対象に含まれていなかったから、それは被控訴人会社の不法行為には当たらない。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
認定事実は、次のとおり補正するほかは、原判決第3の1、2(原判決25頁8行目から46頁21行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、上記記載中、「従軍慰安婦」との記載を全て「慰安婦」に改める。)。
原判決39頁20行目の後に行を改めて次のとおり付加する。
「控訴人X₁は平成31年(2019年)3月18日に(乙6の2、16〔4枚目〕、弁論の全趣旨)、控訴人X₄は同年4月4日に(甲21〔3頁〕)、控訴人X₃は令和元年5月1日に(控訴人X₃〔20頁〕)、本件映画1をそれぞれ観覧し、控訴人X₅及び控訴人X₂も、同月30日までに本件映画1をそれぞれ観覧した。」
2 争点に対する判断は、次のとおり補正し、後記3のとおり当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決第3の3ないし11(原判決46頁22行目から75頁18行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、上記記載中、「従軍慰安婦」との記載を全て「慰安婦」に改める。)。
⑴ 原判決55頁13行目から58頁1行目までを次のとおり改める。
「ア 名誉を棄損するとは人の社会的評価を傷つけることにほかならず、人の社会的評価を低下させるか否かについては、一般人の普通の注意と読み方(視聴の仕方)を基準として解釈した意味内容をもって判断すべきところ(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059号参照)、名誉毀損の不法行為は、問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、成立し得るものであるところ、事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、右行為には違法性がなく、仮に右事実が真実であることの証明がないときにも、行為者において右事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁参照)。一方、ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、右意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、右行為は違法性を欠くものというべきである(最高裁昭和55年(オ)第1188号同62年4月24日第二小法廷判決・民集41巻3号490頁、最高裁昭和60年(オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁参照)。
(ア) 歴史修正主義者という語は、①歴史の定説や通説を再検討し、新たな解釈を提示しようとする歴史研究者という意味(以下「肯定的意味」という。)で用いられることがあるとともに、②歴史上の事象について、学術的に検証され、一般的にも広く定着している理解や解釈を否定し、自分の思想や価値観に基づく歴史認識を強硬に主張する人を批判的に表現する場合(以下「否定的意味」という。)にも用いられる(乙34)(原判決第3の5⑵コ〔原判決55頁〕)。そして、控訴人X₃は、被控訴人Yによる取材の中で、歴史修正主義者について、「歴史上否定できない事実についてなかったかのように言うような歴史を改ざんする許しがたい者」というような意味においては自身は歴史修正主義者ではないが、歴史を「リヴァイズ」ないし「改訂」することは歴史の進歩であって必要なことであり、「リヴィジョニズム」というレッテル語に怯える必要はない、他方、レッテル語を貼って相手を批判して口を封じるということはすべきではなく、事実と論理で議論すべきである、等と述べており(乙26)(原判決第3の1⑶イ〔原判決28~29頁〕)、その趣旨は、控訴人X₃は否定的意味の歴史修正主義者ではないが、肯定的意味の歴史的修正主義者が行うような、歴史の言説を再検討し、新たな解釈を提示することは必要であり、その際に否定的意味の歴史修正主義という決めつけに怯える必要はなく、そのような決めつけをして相手を批判してその主張を封じるべきではないということであると認められる。
(イ) 本件映画1は、冒頭に近い部分において、慰安婦に関し、「20万人の女性」について、「拉致」、「誘拐」され、「性奴隷」にされたなど述べられる複数のテレビ番組の映像の後に、控訴人X₁、控訴人X₂、控訴人X₃及び控訴人X₄ほか一名について、黒色の背景に、順次、上記控訴人らについての本件映像などから切り取った各顔写真及びこれに修正主義者、否定論者という意味の英語の文字を重ねた映像と共に、「彼らは『歴史修正主義者』または『否定論者』と呼ばれる」などとの紹介がされる本件表現1が続く。また、被控訴人Yは、本件映画1の全体にわたって、自らの声によるナレーションにおいて、慰安婦問題に関し控訴人らと概ね立場を同じくすると考えられる者を「修正主義者」と概括的に呼称し、本件表現2では、控訴人X₅について否定論者の例として言及している。
しかし、本件表現1に続いて、慰安婦について、「20万人」存在し、「強制連行」され、「性奴隷」であったという言説はいずれも根拠なく流布されたものであるとして疑問を示す控訴人らについての本件各映像を映し、その後、上記の「20万人」、「強制連行」、「性奴隷」という各観点に関し、20万人という慰安婦の数には根拠がなく、慰安婦が強制連行された事実や性奴隷であったという事実はない旨の控訴人らの見解を含め、異なる立場の者の取材映像が対置してつなげられている。そして、「20万人」について、被控訴人Yは、「慰安婦の数についての実際のデータは存在しない」などとしていて、これは慰安婦の数が20万人であることに根拠がないとする控訴人らの見解も踏まえたものとなっている。また、「強制連行」、「性奴隷」について、被控訴人Yは、証拠がないことは強制連行を否定する理由にはならないこと、国際法において詐欺も強制連行に含まれること、全面支配下に置かれていれば奴隷といえることを挙げるなどして、慰安婦が合法であったとはいえないとする自己の見解を述べている。もっとも、これらは、朝鮮人女性の強制連行についての証拠はないとする控訴人らの言説を前提とするものであり、また、本件映画1では、「慰安婦たちは売春婦又はプロの非戦闘従軍者にすぎない」旨記載された米国戦争情報局作成の報告書等の史料等が存在することを、同史料等を映すことで示し、控訴人らがその見解を述べる際に挙げた、慰安婦が金員を得ていたことや外に出歩いていたことについても、銀行預金口座の明細書や上記報告書等の史料の当該部分を映して、その根拠を示している。
(ウ) そうすると、本件映画1のうち、控訴人らについて、「『歴史修正主義者』又は『否定論者』と呼ばれる」とする部分は、慰安婦について「20万人」、「強制連行」、「性奴隷」等の点に疑問を呈する立場の者を指して、否定的意味で「歴史修正主義者」と呼ばれること(原判決第3の5⑵イ、エないしク〔原判決52頁、53~54頁〕)があることを踏まえ、論争の対立軸を明快にするために採用されたものと認められる。そして、本件映画1においては、控訴人らとは異なる見解、解釈を有する者の映像も映され、被控訴人Yの見解も示されるものの、被控訴人Yは、本件映画1において、控訴人らについて、客観的な史料等もなくむやみに歴史的事実を否定する者とは表現しておらず、控訴人らがその立場の前提とする点の一部は前提とし、また、控訴人らの説明内容について根拠となる史料が存在することを示すなどしている。
以上によると、本件映画1全体を見れば、慰安婦について、「20万人」存在し、「強制連行」され、「性奴隷」であったことが、確固とした根拠を有する動かし難い歴史的事実とはいえないこと、それらの真否について相当程度の議論の余地があることが認識されるものと認められる。そして、控訴人らの主張を裏付ける客観的、具体的な証拠も示されていること、控訴人らが、否定的意味の「歴史修正主義者」という決めつけに怯えることなく、歴史の言説を再検討し、新たな解釈を提示することが必要であるという控訴人X₃の見解(前記(ア))に沿った主張をしていることが本件映画1から認識できることからすると、一般的な視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準とすれば、一般的な視聴者の中には、本件映画1が、控訴人らのことを、歴史の定説等を再検討し新たな解釈を提示しようとしている者(肯定的意味の「歴史修正主義者」)として表現されていると理解する者も相当数存在すると推認され、一般的な視聴者が、控訴人らのことを、客観的な史料等が全くないにもかかわらず、自分の思想や価値観に基づく認識を強硬に主張している者(否定的意味の「歴史修正主義者」)として否定的に表現されていると理解するものとは必ずしもいえないというべきである。
したがって、本件映画1における本件各表現は控訴人らの社会的評価を低下させるものとは認められない。」
⑵ 原判決58頁7行目から8行目にかけての「原告らが複数の番組において報道された内容とは異なる主張して(ママ)いることを印象付ける作りとなっている(前記1⑽、乙7)。」を「控訴人らが複数の番組において報道された内容とは異なる主張をしていることが示されている(前記1⑽、乙7)。また、本件映画1の後半部分には、本件表現2の部分がある(原判決第2の2⑵キ〔原判決9頁〕)。」と改める。
⑶ 原判決58頁18行目の「公共の利害に関する事実に係り」から58頁26行目末尾までを次のとおり改める。
「公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出たものであると認められる。そして、意見ないし論評の前提としている事実の重要な部分は、控訴人らが、20万人存在したという慰安婦の数には根拠がなく、慰安婦が強制連行された事実や性奴隷であったという事実はないという、従来存在した言説とは異なる見解を明らかにしていることであるところ、控訴人らがこのような見解を明らかにしていることは真実であり、本件各表現が、控訴人らに対する人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱するものともいえない。
したがって、本件映画1の製作、上映は、名誉権侵害としての違法性を欠くものであると認められる。」
⑷ 原判決60頁3行目「前記⑶で述べたところに加え、」の前に次のとおり付加する。
「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害したものとみなされるところ(令和2年法律第48号による改正前の著作権法113条7項)、ここにいう「名誉又は声望」とは、単なる主観的な名誉感情ではなく、客観的な名誉又は声望、すなわち、著作者がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を指すものと解すべきである。これを本件において検討するに、」
⑸ 原判決64頁13行目冒頭の⑴の後に次のとおり付加する。
「公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができると規定されているところ(著作権法32条1項)、他人の著作物を引用して利用することが許されるためには、引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内であること、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり、引用としての利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮すべきである。」
⑹ 原判決66頁7行目の「写真である。」を「写真であり、無料でいつでも閲覧できるものである。」と改める。
⑺ 原判決69頁4行目の「ウ」の後に、「前記5⑷のとおり、」を付加する。
⑻ 原判決74頁6行目の「その後」から8行目末尾までを「被控訴人Yに本件事前確認等条項③に違反する債務不履行があったとは認められない。」と改める。
⑼ 原判決74頁17行目の「原告X₃」から19行目末尾までを「被控訴人Yに本件事前確認等条項④に違反する債務不履行があったとは認められない。」と改める。
3 当審における補充主張に対する判断
⑴ 前記第2の5⑴(本件映画1の製作、上映により、控訴人らの社会的評価が低下したか(争点②-1)、本件各表現が違法性を欠くものであるか(争点②-2))について
控訴人らは、本件映画1は、日本政府と同じ見解に立つ控訴人らを「歴史修正主義者」、「否定論者」と評価するものであり、本件映画1の製作、上映により、控訴人らの社会的評価が低下し、本件各表現は違法性を有するものであると主張する。
しかし、原判決第3の5⑶(原判決55頁13行目から59頁26行目まで。ただし、本判決による補正後のもの。)のとおり、本件映画1の製作、上映により、控訴人らの社会的評価が低下したものとは認められず、仮に本件映画1中の表現によって控訴人らの社会的評価が低下することがあったとしても、本件映画1の製作、上映は、違法性を欠くものと認められる。
そして、本件映画1における本件各表現が、控訴人らの社会的評価を低下させるものかどうか、本件映画1の製作、上映が、名誉権侵害としての違法性を欠くものであるかどうかは、本件映画1の内容及び表現等に基づいて判断されるべきであり、控訴人らの見解が日本政府の見解と一致するかどうかにより決せられるものではない。
したがって、控訴人らの上記主張は採用することができない。
⑵ 前記第2の5⑵(本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であるか(争点①-3)、及び、被控訴人Yが、控訴人らを欺罔して取材に応じるという役務の提供をさせたか(争点⑦))について
ア 控訴人らは、本件映画1を、映画館で観客から視聴料金を徴収して公開すること(商用公開)は、本件各許諾の内容となっていなかった旨主張する。
イ 後掲各証拠によれば、次の事実が認められる。
(ア) 控訴人らと被控訴人らとの間の承諾書及び合意書の文言
a 控訴人X₅、控訴人X₂及び控訴人X₁作成の承諾書
本件X₅書面(控訴人X₅作成の承諾書)、本件X₂書面(控訴人X₂作成の承諾書)及び本件X₁書面(控訴人X₁作成の承諾書)には、控訴人らが承諾する事項として、「貴殿(判決注:被控訴人Y)またはその指定する者が、日本国内外において永久的に本映画を配給・上映または展示・公共に送信し、または、本映画の複製物(ビデオ、DVD、または既に知られているその他の媒体またはその後開発される媒体など)を販売・貸与すること。」が記載されていた(乙1~3)。「配給」とは、「映画作品のフィルムなどを興行者・系列の映画館にマージンを取って貸し出すこと。」(広辞苑第7版)を意味し、「配給会社」とは、「製作会社から映画の上映権などを買い付け、映画館への配給を行う会社。一般の商品流通の過程における卸売に相当する。広告・宣伝も配給会社が行う。」(大辞林第四版)を意味し、「配給収入」とは、「映画館への入場料による興行収入のうち、配給会社の取り分。」(大辞林第四版)を意味するものとされている。そうすると、上記の承諾書の「配給・上映」は、その通常の意味によれば、映画が商用公開(映画を視聴する者から料金を徴収すること)されることを含むものと認められ、これと異なる意味で用いられていることを認めるに足りる証拠はない。
b 控訴人X₄及び控訴人X₃作成の合意書
本件X₄書面(控訴人X₄作成の合意書)及び本件X₃書面(控訴人X₃作成の合意書)には、公開に関する条項として、「甲(判決注:被控訴人Y)は、本映画公開前に乙(判決注:控訴人X₃又は控訴人X₄)に確認を求め、乙は、速やかに確認する。」という条項が記載されていたが、公開から商用公開を除くような記載はなかった(乙4、5)。
(イ) 控訴人X₅に対する取材に先立つ承諾書の提示
被控訴人Yと控訴人X₅は、取材に先立ち、承諾書について、次のとおりメールを交換した。
被控訴人Yは、控訴人X₅に対し、平成28年(2016年)6月8日午後4時44分、承諾書の書式を添付して、次のような記載のあるメールを送信した。
「当日、承諾書に御署名・御捺印頂きたいので、印鑑をご持参くださいませ。(承諾書の原本は私が持参いたします。)
承諾書を添付致しますので、事前にご一読いただければ幸いです。
御不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。」
(「当日」とは、インタビューが行われる6月11日を指す。)
控訴人X₅は、被控訴人Yに対し、平成28年(2016年)6月8日午後7時01分、次のような記載のあるメールを送信した。
「メール有難うございます。
11日の場所、承諾書、了解いたしました。」(甲10)
(ウ) 控訴人らに対する本件映画1の公開に関する告知等
被控訴人Yは、控訴人らに対し、平成30年(2018年)9月30日、本件映画1が同年10月7日に釜山国際映画祭で世界初公開されることをメールで伝え、平成31年(2019年)2月28日には、本件映画1が同年4月20日に渋谷のシアター・イメージフォーラムで日本初公開され、その後、大阪、名古屋などで上映されることが決定したこと、同日午後に正式に発表するのでそれまでは友人や家族に伝えることは待ってほしいこと、配給会社から、同日までに、予定されている試写会の招待状を送ることなどを記載したメールを送信したが(原判決第3の1⑻〔原判決35~39頁〕、控訴人X₅につき甲10、控訴人X₃につき乙16、23、控訴人X₄につき甲11、乙11、16、控訴人X₂につき乙24、控訴人X₁につき乙13、16、22)、控訴人らからは、釜山国際映画祭や日本各地での公開に対して異議は述べられなかった。
ウ 上記イのとおり、控訴人X₅、控訴人X₂及び控訴人X₁が作成した承諾書には商用公開を前提とした記載があり(前記イ(ア)a)、控訴人X₄及び控訴人X₃が作成した合意書には、公開を前提とする記載があるが商用を除くような記載はなく(前記イ(ア)b)、控訴人X₅は、署名に先立って承諾書の書式の送付を受けていた(前記イ(イ))。そして、被控訴人Yは、控訴人らに対し、本件映画1が釜山国際映画祭や日本各地で公開されることを通知したが、控訴人らからは、異議は述べられなかった(前記イ(ウ))。控訴人らは、本件映画1を観覧した後、令和元年(2019年)5月30日、本件映画1の上映の中止を求める記者会見を開催し(原判決第3の1⑼〔原判決39頁〕。ただし本判決による補正後のもの)、被控訴人らに対し、本件各映画の公開の停止を求めるようになった。
以上の事実に鑑みると、控訴人らと被控訴人らとの間の承諾書又は合意書に基づく合意によりなされた本件各許諾は、本件映画1を商用公開することをも含むものであったと認められる。
したがって、争点①-3に関し、本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であると認めることはできず、争点⑦に関し、被控訴人Yが、控訴人らを欺罔して取材に応じるという役務の提供をさせたとも認めらないから、これらの点に関する控訴人らの主張は採用することができない。
⑶ 前記第2の5⑶(被控訴人Yに、控訴人X₃及び控訴人X₄との間の本件事前確認等条項に違反した債務不履行があるか(争点⑤))について
ア 控訴人X₃及び控訴人X₄は、映画全体を確認する権利を留保したにもかかわらず、いずれも本件映画1の全体を確認していないから、被控訴人Yには、控訴人X₃及び控訴人X₄との関係で、本件事前確認等条項③に違反する債務不履行がある旨主張する。
イ 被控訴人Yに、控訴人X₃との間の本件事前確認等条項③に違反する債務不履行があるかについて
(ア) 被控訴人Yと控訴人X₃との間の本件映画1の公開前の経緯は、次のとおり認められる。
被控訴人Yは、平成30年5月21日、控訴人X₃に対し、合意書に基づいて映画の中で使用するクリップを送付する旨記載し、本件映画1のうち控訴人X₃の取材に係る部分を蔵置したサーバーへのハイパーリンクを記載した電子メールを送信し、控訴人X₃は、「拝見して返事を差し上げます。」と記載した電子メールを返信した(原判決第3の1⑺〔原判決34頁3~11行目〕)。
被控訴人Yは、控訴人X₃に対し、平成30年9月30日、本件映画1が同年10月7日に釜山国際映画祭で初公開されることになり、将来的に日本と韓国での上映がされる可能性がある旨記載した電子メールを送信し、平成31年2月28日、本件映画1が同年4月20日に東京都内において日本公開となることが決まったこと等を連絡する電子メールを送信し、被控訴人会社は、控訴人X₃に対し、試写会の招待状を送付し、控訴人X₃は、令和元年5月1日、本件映画1を観覧した(原判決第3の1⑻イ〔原判決35頁20行目~36頁6行目〕)。
(イ) 控訴人X₃は、上記(ア)のとおり、被控訴人Yから、本件映画1のうち控訴人X₃の取材に係る部分を蔵置したサーバーへのハイパーリンクを記載した電子メールの送信を受け、更にその後本件映画1を観覧したが、その経過において、「本件映画1の全部を公開前に確認する合意であったにもかかわらず、その一部を確認したにすぎないので合意に反する」などの異議を述べることはなかった。
(ウ) 以上によると、本件事前確認等条項③は、映画全体を確認することを約したものとは認められず、被控訴人Yと控訴人X₃との間では、控訴人X₃の取材部分を確認することを約したものと認められる。
したがって、被控訴人Yに、控訴人X₃との間の本件事前確認等条項③に違反する債務不履行があったとは認められない。
ウ 被控訴人Yに、控訴人X₄との間の本件事前確認等条項③に違反する債務不履行があるかについて
(ア) 被控訴人Yと控訴人X₄との間の本件映画1の公開前の経緯は、次のとおり認められる。
a 被控訴人Yは、平成30年5月21日、控訴人X₄に対し、合意書に基づいて映画の中で使用するクリップを送付する旨記載し、本件映画1のうち控訴人X₄の取材に係る部分を蔵置したサーバーへのハイパーリンクを記載した電子メールを送信した(原判決第3の1⑺〔原判決34頁12~20行目〕)。
b 被控訴人Yは、控訴人X₄に対し、平成30年9月30日、本件映画1が同年10月7日に釜山国際映画祭で初公開されることになり、その後日本と韓国での上映がされる可能性がある旨記載した電子メールを送信した。
c 控訴人X₄は、平成30年10月2日、被控訴人Yに対し、「おめでとうございます!釜山へは行けそうにないですが、ご招待ありがとうございます。日本で観るのを楽しみにしております。公開前に、確認のために私どもが視聴することに合意を結んだのを覚えておられますか。私どもはインタビューを誤用された経験があるため、これは重要なことであります。」などと記載した電子メールを返信した。これに対し、被控訴人Yは、「5月21日に、映画の中の貴殿の箇所を見ていただくため、リンク先をメールしております。」などと返信した。控訴人X₄は、「たぶん、以前のメールはジャンクとして削除されました。もう一度お送りいただけますでしょうか。」などと送信した。被控訴人Yは、同年10月2日、「こちらが貴殿の動画箇所の新しいリンク先です。…再度、もしあなたが誤った場面があると感じるのであれば、映画のクレジットの前にメッセージを入れることは可能ですが、少し前に映画祭に作品を送ってしまっているため、それをするのは映画祭の後になります。メッセージをご希望なら、基本的に『X₄氏はこの映画は誤って紹介されていると感じている』となります。…リンクは10月5日にはずします。」などと記載し、本件映画1のうち控訴人X₄の取材に係る部分を蔵置したサーバーへのハイパーリンクを記載した電子メールを送信し、控訴人X₄は、ハイパーリンク先の映像を確認した。
d 控訴人X₄は、平成30年10月、被控訴人Yに対し、被控訴人Yが控訴人らについて「極右」という言葉を使用して言及した韓国の新聞記事を読み、レッテル貼りをされたと感じたなどとして、釈明を求める旨の電子メールを送信した。被控訴人Yは、これに対し、被控訴人Y自身は控訴人らなどについて「一部に歴史修正主義者と呼ばれる人々」、「いわゆるナショナリストの歴史修正主義者」等と述べたにすぎず、新聞記者が被控訴人Yが述べたとおりに記事を書くことは保証しかねるなどと返信した。
e 被控訴人Yは、平成31年2月28日、控訴人X₄に対し、本件映画1が同年4月20日に東京都内において日本初公開となることが決まったこと、配給会社から事前の試写会の招待状を送付することを連絡する電子メールを送信した。控訴人X₄は、これに対し、「映画完成おめでとうございます。招待をありがとうございます。…映画を楽しみにしています。」などと記載した電子メールを返信した。被控訴人会社は、控訴人X₄に対し、試写会の招待状を送付した。控訴人X₄は、同月4日の試写会に参加した。
f 控訴人X₄は、平成31年4月13日、被控訴人Yに対し、本件映画1を観たこと、控訴人らの側の取材内容を相手側に提示してこれに反論させている一方、控訴人らの側には反論の機会を与えられておらず、また、控訴人らの側には8人しか取材しておらず、相手側には18人も取材しており、公正とは程遠いこと、映画全体が、情報操作や一方的主張に満ちており、控訴人X₄が意図していたものと全く違っている等として、映画の配給を停止するよう求める旨の電子メールを送信した。
(前記bないしfにつき原判決第3の1⑻ウ〔原判決36頁8行目~38頁4行目〕)
(イ) 上記(ア)のとおり、控訴人X₄は、平成30年10月2日、自ら、被控訴人Yに対し、合意に基づいて映画を公開前に確認する必要がある旨のメールを送付し、被控訴人Yは、本件映画1のうち控訴人X₄の取材に係る部分を蔵置したサーバーへのハイパーリンクを記載した電子メールを再送信し、控訴人X₄は、ハイパーリンク先の映像を確認したが(前記(ア)c)、平成31年4月13日、被控訴人Yに対して本件映画1の配給を停止するよう求める旨の電子メールを送信する(前記(ア)f)まで、控訴人X₄は、「本件映画1の全部を公開前に確認する合意であったにもかかわらず、その一部を確認したにすぎないので合意に反する」などの異議を述べることはなく、むしろ本件映画1の公開に祝意を示していた(前記(ア)e)。控訴人X₄は、平成30年10月、被控訴人Yに対し、被控訴人Yが控訴人らについて「極右」という言葉を使用して言及した韓国の新聞記事について釈明を求める旨の電子メールを送信していたから(前記(ア)d)、自らの腑に落ちないことがあれば直ちに被控訴人Yに問い合わせる状況にあったものと認められるにもかかわらず、本件映画1の全部を公開前に確認していないことが合意に反するなどの異議を述べなかったことからすると、本件事前確認等条項③は、映画全体を確認することを約したものとは認められず、被控訴人Yと控訴人X₄との間では、控訴人X₄の取材部分を確認することを約したものと認められる。
したがって、被控訴人Yに、控訴人X₄との間の本件事前確認等条項③に違反した債務不履行があったとは認められない。
⑷ 前記第2の5⑷(被控訴人らが本件利用映像等5、6を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人X₂の著作者人格権を侵害するか(争点④))について
ア 控訴人らは、同一性保持権侵害の被侵害利益は、著作者の名誉感情であるとし、被控訴人Yが、慰安婦問題というデリケートな問題を扱った本件利用映像等5の一部を切り出し、音声を削除し、ナレーションを加えることは、控訴人X₂が客観的証拠もなく偏った主張を述べているにすぎないかのような印象を与えかねないし、また、本件利用映像等6は、控訴人X₂が著作者である本件外部映像等6のうち、日本における人種差別についてことさらに騒ぎ立てる者がいることを述べた部分のみが利用されていて、控訴人X₂が、日本に人種差別が存在すると指摘すること自体を批判しているかのような印象を与えかねないから、いずれも通常の著作者であれば名誉感情を害されるものであり、控訴人X₂の同一性保持権を侵害する旨主張する。
イ しかしながら、仮に同一性保持権侵害の被侵害利益に著作者の名誉感情が含まれるとしても、それによっておよそ一切の改変が著作者の名誉感情を侵害し、同一性保持権の侵害となると解すべき根拠はなく、著作物の性質や利用行為の態様等を考慮して、同一性保持権侵害の有無を考慮すべきである。
本件利用映像等5、6は、ユーチューブ上の映像である本件外部映像等5、6の一部である。ユーチューブ上の映像は、無料でいつでもだれでも閲覧することができ、どの映像を見るかはもとより、映像の全部を見るのか一部を見るのか、映像のどの部分を見るのかを、閲覧者が自由に選択して見ることができるという性質を有する。
本件利用映像等5、6は、本件利用映像等2、3の後、本件利用映像等4が3秒間表示された後に表示されるものであるところ、本件利用映像等2、3には、左上部に「YouTube」という表示があり、「X₂´」という著作者名が表示されており、被控訴人Yは、本件利用映像等5に先立って、インターネット上の投稿でビデオを見つけた旨のナレーションを入れており、本件映画1のエンドクレジットの「利用した映像及び写真の出所」に、控訴人X₂の氏名、本件外部映像等5、6の題名、ユーチューブに投稿された動画であることの記載があるから、本件映画1を見る者にとって、本件外部映像等5、6がユーチューブ上の映像の一部であることは明らかであり、著作者名や題名から本件外部映像等5、6を検索することは容易に可能である(乙38)。
本件利用映像等5、6は、被控訴人Yが慰安婦問題に関心を有するようになったきっかけとなった動画を作成した人物であり、本件映画1中のインタビューの対象ともなっている控訴人X₂がどのような人物であるかを紹介することを目的とするものであり、控訴人X₂の主張を誤って伝えるものであるとは認められない。
その他、原判決第3の9⑴イないしエ(原判決68頁19行目から70頁14行目まで)、同⑵イないしエ(原判決70頁23行目から72頁9行目まで)に記載された事情も考慮すると、被控訴人らが本件利用映像等5、6を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人X₂の名誉感情を害するとは認められず、本件利用映像等5、6の作成は、いずれも「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)であり、控訴人X₂の著作者人格権を侵害するものとは認められない。
⑸ 前記第2の5⑸(本件各利用映像等の利用が引用(著作権法32条1項)として適法か(争点③-2))について
ア 原判決第3の8(原判決64頁13行目から68頁10行目まで。ただし、本判決による補正後のもの。)に記載のとおり、本件各利用映像等の利用は、公正な慣行に合致し、引用(著作権法32条1項)として適法であると認められる。
イ この点に関して、控訴人X₂及び控訴人X₄は、被控訴人らが本件各利用映像等を本件映画1に利用した目的は、控訴人X₂の見解を紹介する目的というより、商用目的であるから、公正な慣行に合致しない旨主張する。
しかし、そもそも、投稿した動画を商用目的で利用することが許されないとの慣行の存在を認めることはできないし、本件に関していえば、本件映画1を映画館で上映することは、被控訴人Yと控訴人らとの間の合意に反するものとは認められないから、本件映画1が映画館で上映されたことをもって、本件各利用映像等の利用が直ちに公正な慣行に合致しないとはいえない。また、原判決第3の8(原判決64頁13行目から68頁10行目まで。ただし、本判決による補正後のもの。)に記載のとおり、被控訴人らが本件各利用映像等を本件映画1に利用した目的は、控訴人X₂がどのような人物であるかということやその行動を紹介、参照、批評する目的であると認められるのであって、本件映画1は、もともと営利を目的として制作されたものではないし、専ら営利を目的として上映されているものとは認められないものである。このような本件における利用態様をもって本件各利用映像等の引用を認めることが、直ちに、ユーチューブ等に投稿されている動画を営利目的の商用映画に利用することを広く許容することにつながることはないというべきである。
したがって、控訴人X₂及び控訴人X₄の上記主張は採用することができない。
ウ 控訴人らは、本件利用映像等2及び本件利用映像等3におけるような態様の表示は、たまたま映り込んでいるという程度のものであって、視聴者が注意して見なければ見逃すようなものであり、本件利用映像等2及び3の題名は、本件映画1の映像等から認識することが極めて困難であり、「明示」に足りないし、ユーチューブに投稿した動画であることが分かりさえすれば出所の明示に足りるというのは、不当であって、通常行われているエンドロールでのクレジット表示又は利用部分における表示のみをもって視聴者が容易に出所を認識できる場合に、出所の明示があるといえるところ、本件利用映像等2及び3にはそのような出所の明示がないと主張する。
著作物を引用するに際しては、著作物の出所は、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならないとされているところ(著作権法48条1項柱書、同項1号)、合理的と認められる方法及び程度により明示されているか否かは、実際に行われた出所表示の内容や態様、出所の表示から元の著作物にたどり着くことが可能な程度に出所を特定しているか否かを考慮して決められるべきである。
これを本件についてみるに、本件利用映像等2は、ユーチューブの映像である本件外部映像等2を利用するものであり(本件利用映像等2の左上部には、「YouTube」という表示があり、ユーチューブの映像を利用していることは明らかである。)、「Traveling (省略)A Japan bound to the Land of the Rising Sun April 2012」という表題の先頭の「Traveling」の部分が切れて見えないが、表題のその余の部分は表示されており、また、「X₂´」という著作者名は表示されており、さらに、「A」という控訴人X₂のユーチューブ上の名称も大きく表示されている。そして、「A」と表題の最後の部分の「April 2012」によりユーチューブの検索をする場合、及び「X₂´」と「April 2012」によりユーチューブの検索をする場合には、いずれも、本件外部映像等2がトップに表示され、本件外部映像等2にたどり着くことができる。さらに、「X₂´」によりユーチューブの検索をすると、控訴人X₂のチャンネルが表示され、そのリストの中から本件外部映像等2にたどり着くことができる(乙38)。
また、本件利用映像等3は、ユーチューブの映像である本件外部映像等3を利用するものであり(本件利用映像等3の左上部には、「YouTube」という表示があり、ユーチューブの映像を利用していることは明らかである。)、「Comfort Women statue vs. the Mayor of Osaka」という表題と「X₂´」という著作者名は表示されており、これらの表題の一部や著作者名を用いて本件外部映像等2にたどり着くことができる(乙38)。
そうすると、本件利用映像等2及び3は、いずれも利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、著作物の出所が明示されているものといえるから、著作権法48条1項に適合するものと認められ、引用として適法なものであるというべきである。
したがって、控訴人らの上記主張は採用することができない。
⑹ 前記第2の5⑹(エンドロールが削除された本件映画1のお正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)による本件各利用映像等の利用が本件各利用映像等の著作権を侵害することにつき、被控訴人らは責任を負うか(争点⑩))について
控訴人らは、映画「主戦場」お正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)ではエンドロールが削除されていたことに関し、仮にこの削除について被控訴人らは承諾も関与もしていないとしても、被控訴人会社は、本件映画を韓国のテレビ局及び配給会社に配給することにより利益を上げており、被控訴人会社は、韓国のテレビ局及び配給会社に対して、本件映画を、被控訴人会社が編集することを可能とする契約により配給しているので、お正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)を管理しているといえるから、エンドロールのクレジット表示を削除した著作権法上の主体は、被控訴人会社であると評価されるべきである旨主張する。
しかしながら、仮に、映画「主戦場」お正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)でエンドロールが削除されていたこと、被控訴人会社が本件映画を韓国SBSテレビ及び韓国の配給会社に有償で配給したことが事実であるとしても、そのことから直ちに被控訴人会社が映画「主戦場」お正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)の放送や編集の仕方まで管理しているとはいえず、また上記管理を認めるに足りる証拠はないから、被控訴人会社をエンドロールを削除した主体であると評価することはできない。
したがって、エンドロールが削除された本件映画1のお正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)による本件各利用映像等の利用が本件各利用映像等の著作権を侵害することにつき、被控訴人らは責任を負う理由はないというべきである。
4 請求の成否
⑴ 控訴人らは、その他縷々主張するが、それらの主張はいずれも理由がない。
⑵ 以上によれば、各争点に関する結論は、次のとおりである。
ア 被控訴人らが本件各映像を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人らの著作権、肖像権を侵害し、また、控訴人X₁のパブリシティ権を侵害するか(争点①)について
本件各映像の使用につき本件各許諾がされたところ、本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であるものとは認められず(争点①-3)、本件各許諾が本件規定に従い撤回されたとも認められないため(争点①-4)、本件各許諾がされたという被控訴人らの主張(抗弁)が認められる。
したがって、控訴人らが本件各映像の著作権者であるか(争点①-1)、本件予告動画が控訴人X₁の肖像の顧客吸引力を利用しているものか(争点①-2)にかかわらず、被控訴人らが本件各映像を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人らの著作権、肖像権を侵害するとは認められず、また、控訴人X₁のパブリシティ権を侵害するとは認められない。
イ 被控訴人らが本件各映像を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人らの名誉権(声望)を侵害し、また、著作者人格権(みなし著作者人格権)を侵害するか(争点②)について
本件各映像を利用した本件映画1の製作、上映により、控訴人らの社会的評価が低下したとは認められず(争点②-1)、本件各表現は違法性を欠くものであり(争点②-2)、著作者である控訴人らの名誉、声望を害する方法により本件各映像を利用するものとも認められない(争点②-4)。
したがって、控訴人らが本件各映像の著作者であるかどうか(争点②-3)にかかわらず、被控訴人らが本件各映像を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人らの名誉権(声望)を侵害するとは認められず、また、著作者人格権(みなし著作者人格権)を侵害するとは認められない。
ウ 被控訴人らが本件各利用映像等を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人X₂及び控訴人X₄の著作権を侵害するか(争点③)について
本件各利用映像等の利用は引用として適法であると認められる(争点③-2)ため、被控訴人らが本件各利用映像等を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人X₂及び控訴人X₄の著作権を侵害するとは認められない。
エ 被控訴人らが本件利用映像等5、6を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人X₂の著作者人格権(同一性保持権、みなし著作者人格権)を侵害するか(争点④)について
被控訴人らが本件利用映像等5、6を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人X₂の名誉又は声望を害する方法による利用であるとは認められず、「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)に該当すると認められるから、控訴人X₂の著作者人格権(同一性保持権、みなし著作者人格権)を侵害するとは認められない。
オ 被控訴人Yに、控訴人X₃及び控訴人X₄との間の本件事前確認等条項に違反した債務不履行があるか(争点⑤)について
被控訴人Yにそのような債務不履行があるとは認められない。
カ 被控訴人Yが、控訴人らを欺罔して取材に応じるという役務の提供をさせたか(争点⑦)について
被控訴人Yが、控訴人らを欺罔して取材に応じるという役務の提供をさせたとは認められない。
キ 本件映画2の譲渡、貸与等により控訴人らの肖像権、名誉権(声望)が侵害され、控訴人らはこれにより被控訴人Yにアマゾンに対する意思表示をすることを請求できるか(争点⑨)について
本件映画2の譲渡、貸与等により控訴人らの肖像権、名誉権(声望)が侵害されたとは認められないから、控訴人らは、被控訴人Yに対し、アマゾンに対する意思表示をすることを請求することはできない。
ク エンドロールが削除された本件映画1のお正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)による本件各利用映像等の利用が本件各利用映像等の著作権を侵害することにつき、被控訴人らは責任を負うか(争点⑩)について
被控訴人らがそのような責任を負うとは認められない。
⑶ 以上のとおり、控訴人らの請求はいずれも理由がない。
5 結論
よって、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
(裁判長裁判官 東海林保 裁判官 中平健 裁判官 都野道紀)
別紙
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