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裁判年月日 令和 4年10月31日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令3(行ケ)10085号
事件名 審決取消請求事件
文献番号 2022WLJPCA10319003
要旨
◆本件審決が認した主引用発明の認定、主引用発明と本件特許に係る発明(本件発 明)との一致点及び相違点の認定に誤りはないが、本件発明の容易想到性の判断に誤り があるとされた事例。 ◆本件発明はサポート要件を満たさない旨の審決の判断に誤りがあるとされた事例。
出典
裁判所ウェブサイト
参照条文
特許法29条2項
特許法36条6項1号
裁判年月日 令和 4年10月31日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令3(行ケ)10085号
事件名 審決取消請求事件
文献番号 2022WLJPCA10319003
原告 日本カーバイド工業株式会社
同訴訟代理人弁護士 黒田健二
同 吉村誠
同訴訟代理人弁理士 松本孝
被告 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
被告 スリーエム ジャパン イノベーション株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士 設樂隆一
同 深沢正志
同訴訟代理人弁理士 今村玲英子
主文
1 特許庁が無効2020-800013号事件について令和3年6月16日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない)
(1) 原告は、平成12年4月10日にした特許出願(特願2000-108636号)の一部を分割して、平成19年10月31日、発明の名称を「印刷された再帰反射シート」とする発明について新たな出願(特願2007-283059号。以下「本件出願」という。)をし、平成22年3月5日、特許権の設定登録(特許第4466883号。請求項の数4。以下、この特許を「本件特許」という。)を受けた。
(2) 被告は、令和2年2月13日、本件特許について無効とすることを求める特許無効審判(無効2020-800013号事件)を請求した。
原告は、令和3年2月5日付けで、一群の請求項である請求項1ないし4について請求項1及び2を訂正するとともに請求項3及び4を削除し、本件出願の願書に添付した明細書(以下、図面を含めて「本件明細書」という。)の【0016】の記載を訂正(以下、これらを合わせて「本件訂正」という。)する訂正請求をした。
特許庁は、令和3年6月16日、本件訂正を認めた上で、「特許第4466883号の請求項1、2に記載された発明についての特許を無効とする」旨の審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月24日、原告に送達された。
(3) 原告は、令和3年7月21日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、次のとおりである(以下、本件訂正後の請求項1に係る発明を「本件発明1」、本件訂正後の請求項2に係る発明を「本件発明2」といい、本件発明1及び2を合わせて「本件発明」という。)。
【請求項1】
少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて、反射素子層にポリカーボネート樹脂を用い、表面保護層に(メタ)アクリル樹脂を用い、保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており、該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、該独立印刷領域の面積が0.15mm2~30mm2であり、該印刷層は、白色の無機顔料として酸化チタンを含有することを特徴とする印刷された再帰反射シート。
【請求項2】
少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなり、上記反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である再帰反射シートにおいて、反射素子層にポリカーボネート樹脂を用い、表面保護層に(メタ)アクリル樹脂を用い、保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており、該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、該独立印刷領域の面積が0.15mm2~30mm2であり、該印刷層の厚みは、0.5~10μmであり、該印刷層は、白色の酸化チタンを含有することを特徴とする印刷された再帰反射シート。
3 本件審決の要旨
(1) 本件審決が認定した英国特許出願公開第2171335号明細書(甲1。以下「甲1文献」という。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)、本件発明1及び2と甲1発明との一致点及び相違点(なお、以下、特に断りのない場合には、別紙を含め、下線は、本件審決において付されたもの。)。
ア 甲1発明
「 プラスチック製の裏材10を有し、裏材10の片面には、再帰反射材料の第1の層12が塗布され、第1の層12の上には、再帰反射材料の第2の層14が塗布され、複数のガラス微小球16が、第2の層14に取り付けられ、第2の層14は液体から形成され、この層がまだ液体であるうちに、ガラス微小球16がその中に部分的に埋め込まれ、第2の層14が乾燥すると、ガラス微小球16は第2の層14にしっかりと固定され、カバー層18が、第2の層14の上に設けられ、カバー層18は、材料片の端部に隣接する部分を除いて、組立体の残りの部分に取り付けられず、カバー層18の一部は白色に着色され、白色の着色は、カバー層18の片面又は両面に印刷された再帰反射材であって、
白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである、
再帰反射材。」
イ 本件発明1と甲1発明の一致点と相違点
(ア) 一致点
「 少なくとも反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて、印刷層が表面保護層に接して設置されており、該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、印刷された再帰反射シート。」
(イ) 相違点
(相違点1-1)
「再帰反射シート」が、本件発明1は、「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる」とともに、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」たものであるのに対し、甲1発明は、上記下線を付した位置関係ないし部材の組み合わせを具備しない点。
(相違点1-2)
「反射素子層」が、本件発明1は、「ポリカーボネート樹脂を用い」たものであるのに対して、甲1発明は、材料が特定されていない点。
(相違点1-3)
「表面保護層」が、本件発明1は、「(メタ)アクリル樹脂を用い」たものであるのに対して、甲1発明は、材料が特定されていない点。
(相違点1-4)
「再帰反射シート」が、本件発明1は、「該独立印刷領域の面積が0.15mm2~30mm2であり」と特定されたものであるのに対して、甲1発明は、「点」の面積が特定されていない点。
(相違点1-5)
「印刷層」の材料が、本件発明1は、「白色の無機顔料として酸化チタンを含有する」と特定されているのに対して、甲1発明は、材料が特定されていない点。
ウ 本件発明2と甲1発明の一致点と相違点
(ア) 一致点
前記イ(ア)に同じ。
(イ) 相違点
相違点1-2ないし1-4に加え、以下の点で相違する。
(相違点1-1’)
「再帰反射シート」が、本件発明2は、「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなり、上記反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である」とともに、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」たものであるのに対し、甲1発明は、上記下線を付した位置関係ないし部材の組み合わせを具備しない点。
(相違点1-5’)
「印刷層」の材料が、本件発明2は、「白色の酸化チタンを含有する」と特定され、また、厚みが「0.5~10μm」と特定されているのに対して、甲1発明は、材料及び厚みが特定されていない点。
(2) 本件審決が認定した西独国特許出願第2118822号明細書(甲2。以下「甲2文献」という。)に記載された発明(以下のとおり「甲2発明A」又は「甲2発明B」を含み、これらを総称して「甲2発明」という。)、本件発明1及び2と甲2発明A又は甲2発明Bとの一致点及び相違点
ア(ア) 甲2発明A
「 車両ナンバープレートとして使用される反射板であって、
反射板は、プラスチック板を備え、その視認面が滑らかであり、その裏面が三角プリズムを有し、かつ、反射コーティングが施された反射層で覆われ、さらに、反射板の視認面には文字及び/又は数字などの記号が刻印されるかエンボス加工されるか取り付けられ、三角プリズムは逆さにした三角錐の形状を有し、
記号は、記号を含まない反射面の色とは異なる色になり、
記号を含まない反射面を、日中、白く不透明に見せるため、反射板の視認面には、「Raster」の多数の白い点が印刷され、「Raster」は、反射光が所定の割合で透過するように作成される、
反射板。」
(イ) 甲2発明B
「 車両ナンバープレートとして使用される反射板であって、
反射板は、プラスチック板を備え、その視認面が滑らかであり、その裏面が三角プリズムを有し、三角プリズムは逆さにした三角錐の形状を有し、
反射板の視認面全体に、鋳造又は射出成形プロセス中、もしくはその後に、印刷された透明な箔である着色層をプラスチック板のプラスチック材料と結合させ、
反射板は、エンボス加工され、その後、着色層のエンボス加工された記号の前額面が回転ディスクによって研磨され、
このようにして、凸状の記号の着色層は削り取られ、一方、凸状でない面の着色層は保持される、
反射板。」
イ 本件発明1と甲2発明Aとの一致点及び相違点
(ア) 一致点
「 少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる再帰反射シートにおいて、印刷層が設置されている、印刷された再帰反射シート。」
(イ) 相違点
(相違点2A-1)
「再帰反射シート」が、本件発明1は、「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる」とともに、「表面保護層に(メタ)アクリル樹脂を用い、保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」たものであるのに対し、甲2発明Aは、「(メタ)アクリル樹脂を用い」た「表面保護層」を具備せず、上記下線を付した位置関係となっていない点。
(相違点2A-2)
「反射素子層」が、本件発明1は、「ポリカーボネート樹脂を用い」たものであるのに対して、甲2発明Aは、材料が特定されていない点。
(相違点2A-3)
「印刷層」が、本件発明1は、「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、該独立印刷領域の面積が0.15mm2~30mm2であ」るのに対して、甲2発明Aは、「記号を含まない反射面を、日中、白く不透明に見せるため、反射板の視認面には、「Raster」の多数の白い点が印刷され、「Raster」は、反射光が所定の割合で透過するように作成され」ている点。
(相違点2A-4)
「印刷層」の材料が、本件発明1は、「白色の無機顔料として酸化チタンを含有する」という構成を具備するのに対して、甲2発明Aは、材料が特定されていない点。
ウ 本件発明2と甲2発明Aとの相違点
相違点2A-1ないし2A-3に加え、次の点で相違する。
(相違点2A-4’)
「印刷層」の材料が、本件発明2は、「白色の酸化チタンを含有する」と特定され、また、厚みが「0.5~10μm」と特定されているのに対して、甲2発明Aは、材料及び厚みが特定されていない点。
エ 本件発明1と甲2発明Bとの相違点
(相違点2B-1)
「表面保護層」が、本件発明1は、「(メタ)アクリル樹脂を用い」たものであるのに対して、甲2発明Bは、材料が特定されていない点。
また、「再帰反射シート」が、本件発明1は、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」たものであるのに対し、甲2発明Bは、上記下線を付した位置関係が、一応、明らかではない点。
(相違点2B-2)
「反射素子層」が、本件発明1は、「ポリカーボネート樹脂を用い」たものであるのに対して、甲2発明Bは、材料が特定されていない点。
(相違点2B-3)
「印刷層の印刷領域」が、本件発明1は、「独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、該独立印刷領域の面積が0.15mm2~30mm2であ」るのに対して、甲2発明Bは、このような構成になっているか、明らかではない点。
(相違点2B-4)
「印刷層」の材料が、本件発明1は、「白色の無機顔料として酸化チタンを含有する」という構成を具備するのに対して、甲2発明Bは、材料が特定されていない点。
オ 本件発明2と甲2発明Bとの相違点
相違点2B-1ないし相違点2B-3に加え、次の点で相違する。
(相違点2B-4’)
「印刷層」の材料が、本件発明2は、「白色の酸化チタンを含有する」と特定され、また、厚みが「0.5~10μm」と特定されているのに対して、甲2発明Bは、材料及び厚みが特定されていない点。
(3) 無効理由1(進歩性欠如)
ア 本件発明1について
(ア) 相違点1-1及び1-2について
甲1文献は、1986年の刊行物であり、甲1発明は、当時の当業者の技術水準を前提としたものである。これに対して、本件出願前の当業者であれば、より優れた再帰反射性能を有する「再帰反射材」として、三角錐型反射素子等のキューブコーナー型再帰反射素子の再帰反射原理を利用した再帰反射シートを心得ている。また、甲1発明の特徴的部分は、「カバー層18の一部」が「白色に着色され」、「白色に着色された部分」が「複数の点による均一なパターンである」ことにあるところ、甲1発明は、交通危険標識や道路標識において、夜間の再帰反射性と日光の下での白色性の両立を図ることを希求するものである。
そうすると、当業者であれば、甲1発明の「再帰反射」においても、特開平11-305018号公報(甲3。以下「甲3文献」という。)に記載された構成を採用するものと考えられる。すなわち、甲3文献の【0137】、図13には、「光の入射方向(10)から順に、表面保護層(4)、観測者に情報を伝達したりシートの着色のための印刷層(5)、反射素子を保持する保持体層(2)、三角錐型反射素子(R1、R2)が最密充填状に配置された反射素子層(1)、反射素子の界面での再帰反射を保証するための空気層(3)、反射素子層の裏面に水分が侵入するのを防止するための封入密封構造を達成するための結合材層(6)、結合材層(6)を支持する支持体層(7)、再帰反射シートを他の構造体に貼付するために用いる接着剤層(8)及び剥離材層(9)を設けてなる、三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。」(以下「甲3記載技術」という。)が記載されているから、機能の観点から両者を見比べた当業者ならば、甲1発明の第1の層12、第2の層14及び空隙からなる再帰反射のための構成を、同じく再帰反射のための構成である甲3記載技術の保持体層(2)、反射素子層(1)、空気層(3)及び結合材層(6)からなる構成に層の順番を逆にして置き換えると考えられる。
したがって、甲1発明において、相違点1-1、相違点1-2に係る構成を採用することは、当業者の通常の創意工夫に止まるものである。
(イ) 相違点1-3について
甲1文献には、「カバー層18」の材質について具体的な記載がないが、(メタ)アクリル樹脂が耐候性、透明性、光沢等に優れていることは技術常識であるから、当業者であれば、甲1発明の「カバー層18」の材質においても、透明性や耐候性に優れた(メタ)アクリル樹脂の構成を採用するものと考えられる。
(ウ) 相違点1-4について
甲1発明の「複数の点」を印刷するに際しては、夜間における再帰反射性と日光の下における白色性を両立させる必要があるから、当業者は、光の再帰反射が妨げられない程度の隙間を設け、かつ、「再帰反射材」が全体として白く見えるような大きさの「複数の点による均一なパターン」をデザインし、印刷することとなるから、相違点1-4に係る本件発明1の「該独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡」の構成に想到するといえる。
(エ) 相違点1-5について
白色の酸化チタンが白色に着色するための色材として広く使用されていることを考慮すると、甲1発明において相違点1-5に係る構成とすることは、当業者における自然な選択肢であるにすぎない。
(オ) 発明の効果について
本件明細書には、発明の効果に関する記載はないが、「本発明は、これら従来技術の欠点に鑑み、非常に簡単、かつ安価な方法により、色相の改善された再帰反射シートを提供する」(【0014】)と記載されているところ、甲1発明は、「カバー層18の一部は白色に着色され、白色の着色は、カバー層18の片面又は両面に印刷され」という構成を具備するものであるから、非常に簡単、かつ安価な方法により、色相の改善された再帰反射シートであるといえ、また、甲1発明の「カバー層18」は、「材料片の端部に隣接する部分を除いて、組立体の残りの部分に取り付けられ」ない構成を備えているから、甲1発明は、耐候性、耐水性の効果や、本件発明1の実施例から理解される効果と同程度の効果を奏するものと考えられ、甲3記載技術を採用したとしても引き続き奏される効果である。
本件発明1の効果は、本件出願時において本件発明1の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったということができず、また、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるということもできない。
イ 本件発明2について
(ア) 相違点1-1’及び相違点1-2について
前記ア(ア)に同じ。
(イ) 相違点1-3及び1-4について
前記ア(イ)及び(ウ)に同じ。
(ウ) 相違点1-5’について
白色に着色するための色材として白色の酸化チタンが広く使用されていること、「0.5~10μm」という範囲には、着色のための通常の印刷層の厚さが含まれることを考慮すると、甲1発明において相違点1-5’の構成とすることは、当業者における自然な選択肢にすぎない。
(エ) 発明の効果について
前記ア(オ)に同じ。
ウ 小括
本件発明1及び2は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1文献に記載された甲1発明及び甲3記載技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(4) 無効理由2(進歩性欠如)
ア 本件発明1について(甲2発明Aを引用発明とした場合)
(ア) 相違点2A-1について
甲2発明Aは、車両ナンバープレートとして使用される反射板であるところ、その「視認面」に、「印刷され」た「多数の白い点」が保護されるべきことは自明であるから、耐候性、透明性や光沢性に優れた(メタ)アクリル樹脂を用いた保護層によって、その表面が保護されることが適当であり、当業者であれば、(メタ)アクリル樹脂を用いた透明フィルムや(メタ)アクリル樹脂を用いたハードコート層により、「多数の白い点が印刷」された「視認面」の上層にその表面を保護する保護層が設置された態様を採用することができるから、相違点2A―1の構成に想到する。
(イ) 相違点2A-2について
甲2発明Aの「プラスチック板」は、「逆さにした三角錐の形状」の「三角プリズム」を具備するものであるから、当業者であれば、形状安定性等に優れた樹脂である周知のポリカーボネート樹脂に着目するといえる。
(ウ) 相違点2A-3について
甲2発明Aの「多数の白い点」は、「記号を含まない反射面を、日中、白く不透明に見せ」、かつ、「反射光が所定の割合で透過するように」されたものであり、また、「多数の白い点」と表現されるものであるから、網の目形状に印刷されたものと理解することができるし、また、「記号を含まない反射面を、日中、白く不透明に見せ」、かつ、「反射光が所定の割合で透過するように」、「多数の白い点」を印刷する当業者の模様の選択肢には、多数の白い点からなる網の目形状が含まれるといえる。そうすると、相違点2A-3のうち、「印刷層の印刷領域が独立した領域をなしており繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず」という構成は相違点ではないか、仮に相違点であるとしても、当業者が任意に選択できる選択肢の1つであるにすぎない。
また、「多数の白い点」の各「点」(網の目)の大きさについての判断は、相違点1-4(前記(3)ア(ウ))と同様である。
(エ) 相違点2A-4について
相違点1-5(前記(3)ア(エ))と同様である。
(オ) 発明の効果について
甲2発明Aは、記号を含まない反射面を、日中、白く不透明に見せるための手段として、多数の白い点を印刷により設けたものであるから、「非常に簡単、かつ安価な方法により、色相の改善された再帰反射シートを提供するもの」(本件明細書の【0014】)といえ、また、耐候性、耐水性に優れたという効果(本件明細書の【0015】)は、保護層を設け得る当業者が予測する効果に止まる。
したがって、本件発明1の効果は、本件出願当時の本件発明1の構成が奏するものとして当業者が予測し得なかったものであるということはできないし、また、本件発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるということもできない。
イ 本件発明2について(甲2発明Aを引用発明とした場合)
(ア) 相違点2A-1ないし2A―3について
前記ア(ア)ないし(ウ)のとおりである。
(イ) 相違点2A-4’について
白色に着色するための色材として白色の酸化チタンが広く使用されていること、「0.5~10μm」という範囲は、通常の印刷層の厚さが含まれることを考慮すると、甲2発明Aにおいて相違点2A―4’の構成を採用することは当業者における自然な選択肢にすぎない。
(ウ) 発明の効果
前記アのとおりである。
ウ 本件発明1について(甲2発明Bを引用発明とした場合)
(ア) 相違点2B-1について
甲2発明Bの「反射板」は、「車両ナンバープレートとして使用される」ものであり、屋外の使用に耐え、透明性が保たれるべきものであるから、「透明な箔」の材料としては、耐候性、透明性や光沢等に優れた(メタ)アクリル樹脂を用いることが適当であり、また、甲2発明Bにおいて、印刷が汚染又は損傷等しないよう保護するために「印刷された透明な箔」の印刷面の側が「プラスチック板」と結合されていることは明らかであるし、印刷面の保護を考える当業者であれば自然に採用する構成である。
(イ) 相違点2B-2について
相違点2A-2と同様である。
(ウ) 相違点2B-3について
「印刷された透明な箔」を具体化する当業者であれば、甲2文献に記載された多数の白い点を参考とすると考えられるところ、「多数の白い点」の模様及び各「点」(網の目)の大きさについての判断は、相違点2A-3、相違点1-4についての判断と同様である。
(エ) 相違点2B-4について
相違点1-5についての判断と同様である。
(オ) 発明の効果について
前記ア(オ)のとおりである。
エ 本件発明2について(甲2発明Bを引用発明とした場合)
(ア) 相違点2B-1ないし2B-3について
前記ウ(ア)ないし(ウ)のとおりである。
(イ) 相違点2B-4’について
相違点2A-4と同様である。
(ウ) 発明の効果について
前記ア(オ)のとおりである。
オ 小括
本件発明1及び2は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲2文献に記載された甲2発明A及び甲2発明B並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(5) 無効理由3(サポート要件違反)
本件発明の課題は、「耐候性及び耐水性に優れ、かつ、色相の改善された再帰反射シート」を得ることにある(【0004】、【0008】、【0012】、【0014】、【0015】)。
ところが、本件発明の「特許請求の範囲」には、「保持体層」、「表面保護層」及び「印刷層」の積層構造について、「保持体層と表面保護層との間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており」とのみ記載され、「保持体層」と「表面保護層」とが接しているか否かを特定する記載はないから、本件発明は、「保持体層」と「表面保護層」が密着性が保たれている幅で接着している構成を欠くものであり、本件発明には、本件明細書の耐候性試験(【0054】)において「異常無し」と評価することができない態様が含まれている。
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるということはできないから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たさない。
4 取消事由
(1) 甲1発明を主引用例とする本件発明1及び2の進歩性欠如の判断の誤り
ア 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1-1-1)
イ 本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り(取消事由1-1-2)
ウ 本件発明2と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1-2-1)
エ 本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り(取消事由1-2-2)
(2) 甲2発明A又は甲2発明Bを主引用例とする本件発明1及び2の進歩性欠如の判断の誤り
ア 本件発明1と甲2発明Aの一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由2A-1-1)
イ 本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り(取消事由2A-1-2)
ウ 本件発明2と甲2発明Aの一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由2A-2-1)
エ 本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り(取消事由2A-2-2)
オ 本件発明1と甲2発明Bの一致点と相違点の認定の誤り(取消事由2B-1-1)
カ 本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り(取消事由2B-1-2)
キ 本件発明2と甲2発明Bの一致点と相違点の認定の誤り(取消事由2B-2-1)
ク 本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り(取消事由2B-2-2)
(3) サポート要件違反の判断の誤り(取消事由3)
第3 当事者の主張
1 取消事由1-1-1(本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 原告の主張
ア 甲1発明の認定の誤り
(ア) 甲1文献の記載事項について
甲1文献には、以下のとおりの記載がある(なお、下線部分は、本件審決の翻訳の誤りを指摘する箇所である。)。
a 「現在の必要条件に適合するためには、スリーブは、夜間には例えば自動車のヘッドライトからの入射光を反射しなければならず、日光の下ではスリーブが白く見えなければならない。これを実現するために、スリーブ材の通常の構造は、例えば、アルミニウム塗料のような反射材料でコーティングされたプラスチック裏材を有している。白色顔料を含む接着剤層は反射性コーティングの上に塗布され、ガラスの微小球又は球は、接着剤に部分的に埋め込まれている。最近では、そのようなスリーブの再帰反射性を増加させるべきことが提案されている。上記の組立体の接着剤中の白色顔料が、再帰反射性を低下させることは事実である。もし、接着剤中の白色顔料の量が減らされると、再帰反射性を向上させることができるが、その変更の結果、その材料は、日光の下で十分に白い外観を持たなくなる。」(1頁16~31行)
b 「本発明により、裏材、前記裏材上の再帰反射コーティング、前記再帰反射コーティングに取り付けられたガラス微小球を有する再帰反射材が提供され、ここで、前記コーティングは不完全であるか、又は不完全であるように見えてもよく、コーティングが欠けているか、又は欠けているように見える一部分あるいは複数の部分には白色が付与されている。したがって、本発明では、白色に着色された材料は、再帰反射コーティングの上全体に均一に塗布されるのではなく、コーティングの複数の部分の上にのみ付与される。これらの複数の部分は、複数の点、複数の線、あるいはその他の形状のような分離した複数の領域又は相互に連結した複数の領域であってよく、それらは、組立品の上に規則的に又は不規則に分布してよい。」(1頁34~47行)
c 「透明又は半透明のカバー層18が、第2の層14の上に設けられている。好ましくは、カバー層18は、材料片の端部に隣接する部分を除いて、組立体の残りの部分に取り付けられず、又は固定されていない。カバー層の一つの部分は白色に着色されている。白色の着色は、カバー層の片面又は両面に付与することができる。代わりに、微小球をそこに取り付ける前に、再帰反射コーティング14の上に白色が直接塗布されてもよく、又は、再帰反射コーティングが、裏材を露出するように、不連続とされてもよい。裏材自体が白色に着色されてもよく、又は、白色が裏材の露出した複数の部分に塗布されてもよい。白色に着色された部分は、例えば、複数の点、複数の線、又はその他の規則的又は不規則な形状による、ランダム又は均一なパターンであり得る。」(1頁99~114行)
d 「組立体に必要な反射性を持たせるためには、白色が再帰反射コーティングの再帰反射性を一定限度以上に不明瞭にしたり、減衰させたりしてはならない。」(1頁115~118行)
(イ) 本件審決が認定した甲1発明について
a 「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」の認定について
⒜ 前記(ア)cのとおり、甲1文献には、再帰反射コーティング14や裏材10について「白色に着色された部分は、例えば、複数の点、複数の線、又は他の規則的又は不規則な形状による、ランダム又は均一なパターン」とし得ることが記載されているとしても、「複数の点」、「複数の線」、又は「他の規則的」な形状又は「不規則な形状」を「ランダム」又は「均一」なパターンとする多数の組み合わせが考えられるため、再帰反射性コーティング14や裏材10の白色に着色された部分について、「複数の点」による「均一」なパターンという特定の構成とするものと理解できるものではない。
⒝ 仮に、甲1文献に「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」ことが開示されているとしても、「再帰反射コーティング」である「第1の層12」及び「第2の層14」並びに「裏材10」について「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」ことが開示されているにすぎず、「カバー層18」の片面又は両面に白色顔料を印刷する場合において、「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」という構成は開示されていない。
すなわち、前記(ア)bのとおり、甲1文献には、「これらの複数の部分は、複数の点、複数の線、あるいはその他の形状のような分離した複数の領域又は相互に連結した複数の領域であってよく、それらは、組立品の上に規則的に又は不規則に分布してよい。」との記載があるが、「これらの複数の部分」の直前に記載されているのは、「したがって、本発明では、白色に着色された材料は、再帰反射コーティング上全体に均一に塗布されるのではなく、コーティングの複数の部分の上にのみ付与される」と記載されているとおり、白色に着色された材料が、再帰反射コーティングの「全体に均一に塗布される」のではなく、「コーティングの複数の部分」の「上にのみ」塗布されていることが開示されており、「カバー層18」に白色顔料を塗布する場合に「複数の部分」について塗布されることは一切開示されていない。
次に、前記(ア)cのとおり、甲1文献には、「白色に着色された部分は、例えば、複数の点、複数の線、又はその他の規則的又は不規則的な形状による、ランダム又は均一なパターンであり得る」との記載があるものの、この直前には、「再帰反射コーティングが、裏材を露出するように、不連続とされてもよい。裏材自体が白色に着色されてもよく、又は白色が裏材の露出した複数の部分に塗布されてもよい。」との記載があることから、上記記載は、白色に着色された又は白色を塗布した裏材10の「複数の部分」について開示されているのであって、「カバー層18」に白色顔料を塗布する場合に、「複数の部分」について塗布されることは一切開示されていない。また、前記(ア)cのとおり、甲1文献には、「カバー層の1つの部分は白色に着色されている。白色の着色は、カバー層の片面又は両面に施すことができる」との記載があるものの、カバー層の着色の具体的な態様についての記載はなく、直後には「代わりに、微小球をそこに取り付ける前に、再帰反射コーティング14の上に白色が直接塗布されてもよく、又は、再帰反射コーティングが、裏材を露出するように、不連続とされてもよい。裏材自体が白色に着色されてもよく、又は、白色が裏材の露出した複数の部分に塗布されてもよい。」という記載があり、「代わりに」(原文は「Alternatively」)の文言から明らかなように、二者択一としての「代わりに」であって、「代わりに」以降の記載は、「再帰反射コーティング14」と「裏材」に関するものというべきであり、二者択一の「カバー層」については適用されない。
以上のとおり、甲1文献には、「再帰反射コーティング」である「第1の層12」及び「第2の層14」並びに「裏材10」について「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターン」であることが開示されているにすぎず、透明のカバーシート18の片面又は両面に白色顔料を印刷する場合において、「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」という構成は開示されていない。
⒞ 本件審決は、前記(ア)cの「白色に着色された部分は、例えば、複数の点、複数の線、又は他の規則的又は不規則な形状による、ランダム又は均一なパターンであり得る」との記載を根拠として、甲1文献には、カバー層18に白色顔料を塗布する場合に「複数の部分」について塗布することが開示されていると認定した。
しかし、甲1文献には、前記(ア)dのとおり、「組立体に必要な反射性を持たせるためには、白色が再帰反射コーティングの再帰反射性を一定限度以上に不明瞭にしたり、減衰させたりしてはならない。」と記載があり、前記(ア)aのとおり、「上記の組立体の接着剤中の白色顔料が、再帰反射性を低下させることは事実である。」との記載があることから、白色が再帰反射性を減衰させることが開示されており、また、本件出願時において、再帰反射シートに白色のような不透明な印刷をした場合に、当該印刷が再帰反射性を著しく妨げることは周知であったから、甲1発明において、カバー層18の片面又は両面に白色顔料が印刷された場合に、「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」と構成することは、再帰反射性を減少させるものであり、甲1発明の課題そのものが解決できないことになる。
そうすると、当業者は、カバー層18の1つの部分が白色に着色されたとしても、「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」態様と理解することはなく、本件審決の認定は誤りである。
b 「カバー層の一部は白色に着色され」の認定について
甲1文献におけるカバーシートに関する前記(ア)cの記載から理解できるのは、カバー層の1つ(単数)の部分(「Part of the cover layer is・・・」)が白色に着色されることであり、その記載の直前に「好ましくは、カバー層18は、材料片の端部に隣接する部分を除いて、組立体の残りの部分に取り付けられず、又は固定されていない。」との記載があるから、「カバー層の1つの部分」とは、材料片の「端部に隣接する部分」を指していると理解するほかない。材料片の端部に隣接する部分を白色に着色した場合であれば、再帰反射性が減少することはないのであり、かつ、白色の外観を得ることができ、甲1発明の課題を解決することができる。
したがって、白色に着色されるのが「カバー層18の一部」とする本件審決の認定は、カバー層の全体のうち複数の部分と誤解される可能性があるから、誤りである。
イ 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り
(ア) 本件発明1と甲1発明の対比について
a 反射素子層について
本件審決は、「甲1発明の『再帰反射材』のうち、『第1の層12』、『第2の層14』、『ガラス微小球16』及び空隙を併せたものは、光を再帰反射する素子の層と理解される(以下、この項では『光再帰反射素子層』と総称する。)」と認定した上で、甲1発明の「光再帰反射素子層」は、本件発明1の「反射素子層」に相当する旨認定した。
しかし、甲1発明には、「多数の反射素子」が存在しない以上、「反射素子層」(反射素子層という文言上、反射素子の存在が前提となっていることは明らかである。)も存在し得ない。これに対し、本件発明1は、「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」の構成を含むものである。
したがって、甲1発明の「光再帰反射素子層」は、本件発明1の「反射素子層」には相当しない。
b 再帰反射シートについて
本件審決は、甲1発明の「再帰反射材」は本件発明1の「再帰反射シート」に相当すると認定した。他方で、本件審決は、甲1発明の「再帰反射材」は屋外で使用されるものであるから、切断、破壊して使用することを前提としないものであるとも説示する。
しかし、「再帰反射シート」の使用形態からすれば、切断して使用することが前提となるものであり、「切断して使用することを前提としないもの」は「再帰反射シート」ではないから、甲1発明の「再帰反射材」は、本件発明1の「再反射シート」には相当しない。
c 印刷層について
本件審決は、「甲1発明の『白色に着色された部分』は、『複数の点』(dots)であるから、互いに独立した小さな円形の領域をなし、連続層を形成せず、そして『均一なパターン』であるから、一定間隔の繰り返しパターンで設置されたものである」旨認定する。
しかし、仮に、甲1発明について「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」という構成を具備するものとしても、甲1発明の「複数の点」が本件発明1の「印刷領域が独立した領域をなして」具備することにはならない。
したがって、甲1発明は、白色の複数の点を印刷された層を有するものではない。
(イ) 一致点及び相違点について
前記アのとおり、本件審決が認定した甲1発明は誤りがあり、誤った甲1発明と本件発明1との対比も誤っている。また、本件審決は、相違点を細かく分けて認定し、各相違点の容易想到性を判断するが、各相違点の容易想到性を判断するに当たっては、本件発明1の技術思想、すなわち、請求項1記載の構成を有することにより、連続した印刷層を設置した場合における印刷層の周辺の密着性が劣り、再帰反射シートに用いられる耐候性や耐水性が劣るという欠点を解決するという点を踏まえると、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており、該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、該独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡であり、」という構成をまとまりのある構成の単位として対比されるべきである。
ウ まとめ
以上のとおり、本件審決は、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定を誤っており、この誤りは本件発明1の容易想到性の判断の結論に影響するものである。
(2) 被告の主張
ア 甲1発明の認定の誤りについて
原告は、前記(1)ア(イ)aのとおり、本件審決が認定した甲1発明について、「カバー層18」の片面又は両面に印刷された「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」との部分は誤りである旨主張するが、甲1文献の関連部分の記載を正確に解釈すると、「カバー層18の片面又は両面に白色顔料材料が印刷され、白色顔料材料が印刷された部分は、複数の点などの独立した複数の領域であって、規則的に分布している均一なパターンである」ことが記載されている。
なお、原告は、前記(1)ア(イ)a⒞のとおり、カバー層18の片面又は両面に白色顔料が印刷された場合において、「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」という構成とすることは、再帰反射性を減少させることになってしまい、甲1発明の課題を解決できないから、当業者がそのような構成を理解することはない旨主張する。
しかし、甲1発明は、夜にはヘッドライト等からの入射光を反射しつつ、日中においては白く見えなければならないという、いわば相反する2つの性能を両立させるための発明で、「白色が、再帰反射コーティングの再帰反射性を一定限度以上に不明瞭にしたり減衰したりしてはならない」ものであるから、光の入射から出射までの過程に白色顔料が一部存在していたとしても、白色顔料材料を全体に均一に塗布した場合とは異なって、夜間に一定以上の再帰反射能を有し、かつ、白色顔料材料が全く塗布されない場合とは異なって、日中に十分に白色に見える態様であれば、甲1発明の課題は解決できると当業者は理解する。ガラス微小球の直径は数十~100μm程度と極めて小さいものであるから、白色着色部分同士の間には多数のガラス微小球が位置することになるから、斜めの入射光に対しても十分に再帰反射性が実現される。
したがって、甲1文献において、カバー層の片面又は両面に印刷された白色顔料が「複数の点などの独立した複数の領域で、規則的に分布している均一なパターン」であることは、甲1発明の技術的思想に反するものとはいえない。
また、原告は、前記(1)ア(イ)bのとおり、甲1文献の該当箇所(前記1(1)ア(ア)c)の記載から理解できるのは、カバー層の1つ(単数)の部分(「Part of the cover layer is」(1頁103行)が白色に着色されることであり、「カバー層の1つの部分」とは、直前の「材料片の端部に隣接する部分」を指す旨主張する。
しかし、この「Part」は、他の記載部分でも用いられているように複数のものを集合的に単数形で扱っているにすぎない。また、「カバー層の1つの部分」が「材料片の端部に隣接する部分」を指しているとすると、そのような部分を白色としたところで、甲1発明の「夜間の再帰反射機能が優れ、かつ、日中に白色に見える」という目的を達成できないことは明らかである。
イ 一致点及び相違点の認定の誤りについて
(ア) 本件発明1と甲1発明の対比について
a 反射素子層について
原告は、前記(1)イ(ア)aのとおり、甲1発明の「光再帰反射素子層」は本件発明1の「反射素子層」には相当しない旨主張する。
しかし、本件審決は、甲1発明の「第1の層12」、「第2の層14」、「ガラス微小球16」及び空隙を合わせたものを「光を再帰反射する素子の層」と認定し、これを「光再帰反射素子層」と称した上で、相違点1-1、1-2の判断において、甲1発明の「光再帰反射素子層」の層構成を甲3文献に記載された層構成に置き換えることを論じている。そうすると、本件審決がいうところの甲1発明の「光再帰反射素子層」が本件発明1の「反射素子層」に相当するかどうかにかかわらず、甲1発明の「光再帰反射素子層」の層構成が、多数の反射素子を備えた甲3文献に記載された層構成に容易に置き換えられるものであれば、相違点1-1についての容易想到性の判断は正しいことになる。
したがって、甲1発明の「光再帰反射素子層」が本件発明1の「反射素子層」に相当するか否かは、本件発明1の容易想到性の結論に影響するものではない。
b 再帰反射シートについて
原告は、前記(1)イ(ア)bのとおり、甲1発明の「再帰反射材」は、本件発明1の「再帰反射シート」に相当しない旨主張する。
しかし、本件明細書には、本件発明に係る「再帰反射シート」が切断して使用されるものに限定することを示す記載は存在せず、切断されるもののみが再帰反射シートであることを示す技術常識も存在しないから、原告の主張は誤りである。
c 印刷層について
原告は、前記(1)イ(ア)cのとおり、甲1発明の「複数の点」は「印刷領域が独立した領域をなして」を具備するものではない旨主張する。
しかし、甲1文献には、「これらの複数の部分は、複数の点、複数の線あるいはその他の形状のような独立した(discrete)複数の領域又は相互に連結した複数の領域であってもよく、それらは、組立体の上に規則的又は不規則に分布してよい。」(1頁34~37行)との記載があるとおり、「discrete」は、「独立した」の意味であるから、甲1発明の「複数の点」が独立した領域をなしていることは明らかである。
(イ) 一致点及び相違点について
本件審決には相違点の看過はない。原告の主張は誤りである。
ウ まとめ
以上のとおり、本件審決がした本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定に誤りはない。
2 取消事由1-1-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
ア 相違点1-1、1-2について
本件審決は、「甲1発明の『再帰反射材』は、『ガラス微小球16』を用いるタイプのものを前提としたものと考えられる」とした上で、「本件出願前の当業者ならば、甲1発明の『再帰反射材』においても、甲3文献に記載された『道路標識、工事標識等の標識類』『において有用な』(【0002】)、『三角錐型反射素子などのキューブコーナー型再帰反射素子の再帰反射原理を利用した再帰反射シート』(【0006】)の構成を採用すると考えられる」と判断したが、以下のとおり誤りである。
(ア) 甲1発明の出願がされた1985年当時、キューブコーナー型再帰反射素子を用いた再帰反射シートは周知技術であった。そうしたところ、甲1文献には、ガラス微小球が埋め込まれる反射コーティング上に塗布される白色顔料を含む接着剤層という、ガラス微小球を前提とする構成から生じる課題が記載されており(前記1(1)ア(ア)a)、甲1発明は、周知技術であるキューブコーナー型再帰反射素子を用いず、ガラス微小球から生じる構成特有の課題を解決しようとするものであるから、甲1発明においてガラス微小球を用いることは、課題解決のための前提となる必須の構成であるといえる。
(イ) 甲1発明は、①裏材に設けられた反射コーティングの上に白色顔料を含む接着層が全体に均一に塗布され、ガラスの微小球又は球はその接着剤に部分的に埋め込まれていたため、再帰反射性が減少してしまうこと、②接着剤中の白色顔料の量を減少させると、日光の下で十分な白い外観を備えていないことを課題とするものである。これに対して、甲3文献に記載された発明の解決しようとする課題は、発明の詳細な説明(【0006】ないし【0025】)に記載されているとおり、従来公知の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子から構成された再帰反射シートは、いずれも入射角特性が劣り、かつ、概して観測角特性も満足すべきものではなかったという点にある。このように、甲1発明と甲3記載技術では、解決すべき課題が異なっている。
また、①再帰反射の層である甲1発明の第1の層12の機能は反射であるが、甲3記載技術の保持体層(2)は反射素子を保持することであり、②ガラス微小球16が取り付けられる甲1発明の第2の層14の機能は反射と取付であるが、甲3記載技術の反射素子層(1)の機能は再帰反射であり、③甲1発明のガラス微小球16の機能はレンズ機能であるが、甲3記載技術の空気層(3)の機能は反射素子の界面での再帰反射を保証することであり、④甲1発明の空隙の機能は、本件審決によれば、「光の屈折のため」であるが、甲3記載技術の結合材層(6)の機能は反射素子層の裏面に水分が侵入するのを防止するための封入密封構造を達成することであり、いずれも機能が異なっており、甲1発明の構成と甲3記載技術とをその構成毎に各構成が有する機能を「層の順番を逆にして」対比してみても、それぞれの機能は異なっているから、当業者は、甲1発明の「第1の層12」、「第2の層14」、「ガラス微小球16」及び空隙からなる再帰反射のための構成を、同じく再帰反射のための構成である甲3記載技術の「保持体層(2)」、「反射素子層(1)」「空気層(3)」及び「結合材層(6)」からなる構成を層の順番を逆にして置き換えることは想到し得ない。
のみならず、甲1発明は、課題解決のために、再帰反射コーティング12及び14上の全体ではなく、コーティングが不完全又は欠けている(ように見える)複数の部分の上にのみ白色が付与され、又は、裏材自体が白色に着色され、若しくは裏材の露出した複数の部分に白色が塗布され、これらの白色に着色された複数の部分は、複数の点、複数の線又は独立した複数の領域であってよく、規則的又は不規則的に分布するというものである。他方で、甲3記載技術は、「三角錐型反射素子(R1、R2)が最密充填状に配置され」ており、最密充填状に配置されている三角錐型反射素子間の隙間は観念し得ないものであるから、再帰反射を阻害しないように白色顔料を塗布することができない。仮に、甲3記載技術の構成を前提として印刷層を設けようとしても、甲3文献には、「印刷層(5)は通常、表面保護層(4)と保持体層(2)の間、あるいは、表面保護層(4)の上や反射素子層(1)の反射面上に設置することが出来」(【0139】)るとあるように、表面保護層の上に設ける可能性があるだけでなく、むしろ、甲1発明の第2の層14に白色を着色するのと同様に、反射素子(1)の反射面上に設置することも考えられるから、甲1発明と甲3記載技術は、技術思想が異なるものであり、甲1発明の構成を甲3記載技術に置換することはできない。
(ウ) 前記(ア)のとおり、甲1発明の課題は、ガラス微小球の構成を前提とするものであり、こうした構成特有の課題を解決するものである以上、甲1発明の「再帰反射材」は、「ガラス微小球16」を前提としたものである。甲1発明の特徴的部分は、「カバー層18の一部」が「白色に着色され」、「白色に着色された部分」が「複数の点による均一なパターンである」ことではなく、甲1発明の請求項1にはこうした構成が構成要件となっていないことからも明らかである。
(エ) 以上のとおり、甲1発明においてガラス微小球を用いることは、課題解決のための必須の構成であり、甲1発明と甲3記載技術は、作用機能が異なり、甲1発明の構成を甲3記載技術に置換する動機付けはないことからすると、当業者は、甲1発明のガラス微小球を用いた構造を甲3記載技術に置換することは想到し得ないから、これと異なる本件審決の判断は誤りである。
イ 相違点1-4について
本件審決は、前記第2の3(3)ア(ウ)のとおり、相違点1-4に係る本件発明1の「該独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡」の構成に想到する旨判断したが、その具体的な理由として、①甲1発明の技術分野は交通標識や道路標識であるから、間近では白色の着色が欠けているように見えてよい(「カバー層18」に対し、0.15m㎡を下回るような点(直径0.5mを下回る円)からなる精細なパターンの印刷を施す必要のない)ものであり、他方、「カバー層18」の素材が印刷に技術を要するものであったとしても、30m㎡を上回るような点(直径6mmを超える円)にまでする必要はないし、そうすると、遠目からもパターンが見えてしまうとし、②光の再帰反射が妨げられない程度の隙間を設け、かつ、遠くからはパターンを見えなくするように面積を調整した複数の点による均一なパターンを設けることは、㋐「再帰反射」の用途として自明な交通標識の規格に係る甲第4号証(社団法人ドイツ工業規格の色規委員会ら作成。以下「甲4文献」という。)からも理解される事項であり、その図1からは六角形の模様の寸法が理解可能であり、そこには0.5mmの隙間と約1.95m㎡の「複数の点」が開示されているほか、㋑光が通る隙間を確保しつつ、離れた位置にいる観察者に所定の色を見せることができるパターンとして汎用されており(具体的な適用例としては、甲18の【0003】、【0004】、甲19の【0014】、【0015】、甲20の【0009】)、当業者ならば、こうした技術常識も参考とすることが考えられるとした。
しかし、前記1(1)イ(イ)のとおり、相違点1-4だけではなくまとまりのある単位として相違点の容易想到性が判断されるべきであり、その点を措くとしても、本件審決の上記判断は、以下のとおり誤りである。
(ア) 再帰反射シートに不透明な印刷をした場合に、当該印刷が再帰反射性を著しく妨げるということは周知であった以上、光の再帰反射が妨げられない隙間等を設けることはできず、また、仮に、当業者が、光の再帰反射が妨げられない隙間を設けることができ、かつ、再帰反射材が全体として白く見えるような大きさの「点」を設けることとなった場合に、「0.15m㎡~30m㎡」という構成に至るのかについては不明である。本件審決の挙げる上記①の理由は、具体的な根拠や証拠はない。
この点、被告は、後記(2)イのとおり、甲1発明に接した当業者は、夜間において要求される反射率を備え、かつ、日中白色に見えるために、白色に着色された面積の割合を材料の面積の10~20%の範囲にするに当たって、独立した印刷領域1つ当たりの面積及び独立した印刷領域の数を必ず検討する旨主張するが、カバー層18に白色の着色材料を印刷すると、再帰反射性能が低下してしまうので、カバー層18に白色の着色材料を印刷することはないし、面積割合(10~20%)は、再帰反射コーティングのガラス微小球の間隙に白色を印刷すれば達成するから、当業者が独立した印刷領域1つ当たりの面積を必ず検討するとはいえない。
(イ) 甲4文献においては、交通標識の表面色を灰色Aにするために、黒色の六角形を繰り返しのパターンで設置した印刷層を設けることが記載されているにすぎず、黒のスクリーンインキによって印刷された六角形の周囲に白色部分が存在し黒色部分の網羅率が60%であることにより遠くからは灰色Aに見えるようになっているのであり、黒のスクリーンインキに白色顔料等を含有させる動機付けはないから、甲1発明の「複数の点」を、面積約1.95m㎡の複数の六角形とした上で白色にする動機付けもない。
また、甲4文献には、黒色の六角形を印刷したとは記載されておらず、印刷層が形成されているか不明であり、仮に、印刷層が開示されているとしても、図1Aは、表面色灰色A(再帰反射性)を作製するための網羅率60%の六角形格子の図であり、遠くから見た場合、黒色の六角形と白色の格子の配列となっているため、灰色のように見えるという性質を利用するものであって、黒色の六角形が印刷層だとしても、これらの各六角形の間の白色の格子部分の間に印刷されていない領域が存在していること(六角形の印刷が独立していること)を示す記載はなく、むしろ、白色の格子部分についても、白色インクで印刷するなどして印刷層を形成している可能性もあり、そうであれば、黒色の六角形の印刷層と白色の格子の印刷層が連続して形成されていることになるから、「印刷層の印刷領域が独立した」とはいえないし、また、「連続層を形成せず」ともいえないことになる。
かえって、甲4文献においては、「灰色A」についてのみ黒色の六角形と白色の格子を用いることが指定されており、全体に対して60%の割合で黒色部分が存在し、黒みがかった灰色になるように定めたのが図1における六角形の面積である。甲1発明の再帰反射材においては、日光の下でも表面が白く見えるようにするために白色顔料を印刷するのであるから、甲4文献に記載された技術を甲1発明に適用することには阻害要因がある。
このように、当業者は、甲4文献に記載された技術を甲1発明に適用することができないし、適用する動機付けもないから、本件審決の挙げる上記②㋐の理由は、誤りである。
(ウ) 本件審決が技術常識を示すものとした甲第18ないし20号証に記載された技術は、いずれも再帰反射シートに関する技術ではないため、当業者は、同技術を甲1発明に適用する動機付けはなく、しかも、これらの文献には、「該独立印刷領域の面積が0.15m㎡以上であれば、成形性に優れ、且つ色相の調整が容易であるので好ましく、30m㎡以下であれば、印刷周囲における印刷層(2)を挟む2層の層間密着強度を低下させることがないので好ましい。」(本件明細書の【0030】)ことについて記載も示唆もない。
したがって、本件審決の挙げる上記②㋑の理由も誤りである。
(エ) 以上によれば、相違点1-4に関する本件審決の判断は誤りである。
ウ 相違点1-5について
本件審決は、前記第2の3(3)ア(エ)のとおり、白色の酸化チタンが「白色に着色」するための色材として広く使用されていることを考慮すると、甲1発明において相違点1-5に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者における自然な選択肢にすぎない旨判断した。
しかし、本件発明1では、「白色の無機顔料として酸化チタン」を印刷層に含有しているが、甲1発明において「白色の無機顔料として酸化チタン」を印刷層に含有することは、記載も示唆もされていない。また、一般的に白色を印刷するのに白色顔料を用い、かつ、白色の無機顔料として酸化チタンを用いるとしても、発泡させた透明樹脂インクや透明樹脂の中空ビーズを含むインク等を用いた白色顔料を含有しない白色インキも存在する(甲54、55)。
以上のとおり、甲1文献には、白色無機顔料として酸化チタンを用いることについての記載も示唆もなく、「白色の無機顔料として酸化チタン」を用いることについての動機付けはないから、本件審決の判断は誤りである。
エ 発明の効果について
本件審決は、前記第2の3(3)ア(オ)のとおり、本件発明は、非常に簡単、かつ安価な方法により、色相の改善された再帰反射シートを提供するものとされている(【0014】)ところ、甲1発明は、「耐候性、耐水性に優れ」(【0015】)という効果や本件発明1の実施例(【0050】ないし【0079】)から理解される効果と同程度の効果を奏するものと考えられるとして、本件発明1は、顕著な効果を奏するものではない旨判断した。
しかし、印刷層を有している再帰反射シートである本件発明においては、従来の「再帰反射シートの一部に連続した印刷層を設ける試み」(【0008】)において生じた「連続した印刷層を設置した場合」において生じる課題、すなわち、印刷層の周辺の密着性が劣り、耐候性や耐水性が劣るという欠点を解決することが本件発明の課題の1つであり(【0012】)、本件発明1の構成を備えることで、「耐候性が劣り耐候性試験においてフクレが生じたり、また、吸水しやすいという欠点」を解決したのである。これに対して、甲1文献には、こうした発明の効果については記載も示唆もなく、そのような技術常識も存在しない。
本件発明は、JIS規格の耐候性試験(照射時間を1000時間)よりも厳しい厳格な耐候性試験(照射時間を3000時間)を実施して「異常無し」との結果を得ており(【0054】、【0079】表1)、JIS規格が予定している耐候性を大きく超える効果を得ているから、格別の効果を有する。
したがって、本件審決の判断は誤りである。
オ 小括
以上によれば、本件発明1は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1文献に記載された甲1発明並びに甲3記載技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た旨の本件審決の判断は誤りである。
(2) 被告の主張
ア 相違点1-1、1-2について
(ア) 甲1文献においては、反射効率の向上が課題として認識されている(1頁23~31行)ところ、甲3文献の【0006】には、従来のマイクロ硝子球を用いた再帰反射シートに比べ、キューブコーナー型再帰反射素子の再帰反射原理を利用した再帰反射シートは、光の再帰反射効率が格段に優れており、その優れた再帰反射性能により年々用途が拡大しつつあることが記載されている。なお、これと同旨の記載は、関係各特許公報等(甲12の1(【0002】)、甲12の2(2頁11~17行)、甲12の3(【0002】)、甲12の4(【0004】、甲12の5(【0002】)にもある。
このように、再帰反射効率を高めるため、マイクロ硝子球を用いたものから再帰反射性能が優れたキューブコーナー型再帰反射素子を用いたものに技術が進歩してきたという経緯があり、しかも、甲1発明に係る再帰反射材も甲3文献に記載の再帰反射シートも、道路標識用等の同じ用途に用いられるものであるから、甲1発明における「再帰反射性を増加させ、日中において十分な白い外観を備える」という課題は、甲3文献に記載のキューブコーナー型再帰反射シートにおいても当然に求められる。
そして、甲3文献には、反射素子層及び保持体層を構成する材料としてポリカーボネートが最初に例示され(【0140】)、実施例においてもポリカーボネート樹脂を圧縮成型して反射素子層と保持体層とが一体成形された三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成することが記載されている(【0150】)のであるから、甲3文献の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートが多数の反射素子を有するものであることは明らかである。
そうすると、1986年公開の甲1文献に接した本件出願日当時(2000年4月)の当業者であれば、甲1発明の課題である「再帰反射効率の向上」と「再帰反射を増加させ、日中において十分な白い外観を備える」ことを目的として、甲1発明における、印刷層が施された透明カバー層(表面保護層)18と裏材10との間に存在する、再帰反射機能を果たす「再帰反射コーディングの第1の層12、その上に適用された再帰反射コーティングの第2の層14、第2の層に取り付けられたガラス微小球16及び空気層からなる」層構成を、甲3文献に記載された表面保護層(4)と支持体層(7)との間に存在する「反射素子層(1)と保持体層(2)とが一体成形されたポリカーボネート樹脂からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射材、空気層(3)及び結合材層(6)」からなる層構成に、光の入射方向を考慮した上で置換した再帰反射シートとすることは、技術進歩の経緯、甲1発明に係る再帰反射材と甲3文献記載の再帰反射シートの用途及び課題の共通性に鑑みれば、当然に想起することであって、この置換には強い動機付けがあるというべきである。また、甲3文献に記載された表面保護層(4)と支持体層(7)との間に存在する「反射素子層(1)と保持体層(2)とが一体成形されたポリカーボネート樹脂からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射材、空気層(3)及び結合材層(6)」からなる層構成は、関係各特許公報等(甲12の2の図8、甲12の4図8、甲12の5の図11)に同じ図が記載されているように、本件出願前に周知の構成であったから、上記の置換にはより一層の強い動機付けがある。
ここで、甲1発明の「白色顔料材料」は、もともと透明のカバー層18(表面保護層)の片面又は両面に印刷されているものであるから、光の入射方向を考慮した上で甲1発明の層構成を甲3記載技術の層構成に置換すれば、白色顔料材料の印刷層は、必然的に「カバー層18」と「保持体層(2)」の間に両者に接して設置されることになる(保持体層と表面保護層との間に印刷層を両者に接して設置する構成は、関係特許公報等(甲12の2(図8)、甲12の4(図8、【0099】)、甲12の5(図11)、甲16(図3))にも記載があるとおり周知の構成である。)。
したがって、相違点1-1、1-2は、甲1発明と甲3記載技術を適用することにより容易に想到し得たものであるから、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
(イ)a これに対して、原告は、前記(1)ア(ア)のとおり、甲1発明が出願された1985年当時、キューブコーナー型再帰反射素子を用いた再帰反射シートは周知技術であったところ、甲1発明は、敢えてキューブコーナー型再帰反射素子を用いずにガラス微小球を用いた構成特有の課題を解決しようとしたものであるから、甲1発明において微小球を用いることは課題解決の前提となる必須の構成である旨主張する。
しかし、甲1文献には、「白色顔料を含む接着剤層は反射コーティングの上に塗布され、ガラスの微小球又は球は接着剤に部分的に埋め込まれている。・・・上記の組立体の接着剤中の白色顔料が、再帰反射性を減少させることは事実である。もし、接着剤中の白色顔料が減らされると、再帰反射性を向上させることができるが、その変更の結果、その材料は、もう日中において十分な白い外観を持たなくなる。」(1頁19~31行。訳文は乙1による)との記載があるところ、酸化チタンのような白色顔料は隠蔽性が高いことが周知である(甲23)から、上記記載に接した当業者は、再帰反射シートの印刷層における白色顔料が再帰反射性を低下させるという課題があると理解するのであり、ガラス微小球を用いたものに限らず、キューブコーナー型再帰反射素子を用いた反射シートについても同様の課題が生じると理解する。
b 原告は、前記(1)ア(イ)のとおり、甲1発明と甲3記載技術では、①解決すべき課題、②作用及び機能が異なり、③甲1発明と甲3記載の発明は技術的思想が異なる旨主張する。
しかし、甲1発明の構成と置き換える甲3文献記載の構成は、甲3記載技術が解決しようとする課題の解決手段に係る構成(原告が引用する甲3の【0025】)ではなく、その課題解決の前提となる三角錐型キューブコーナー再帰反射材の基本的な層構成の部分であるから、甲3文献に記載された課題を論じても意味はなく、むしろ、前記(ア)のとおり、甲3記載技術の再帰反射シートの用途からして当然に求められる自明の課題(再帰反射を増加させ、日中において十分な白い外観を備えるべきという課題)が存在する以上、甲1発明の層構成を甲3記載の層構成に置き換えることは、当業者が当然に想起することであって、上記①については理由がない。
次に、原告は、甲1発明の各層の機能と甲3記載技術の各層の機能が共通ではないと論じるが、ガラス微小球を用いた再帰反射シートと三角錐型キューブコーナーを用いた再帰反射シートでは、再帰反射のための層構成がもともと異なるものである以上、それぞれの層構成における各層ごとの機能の非共通性を主張しても意味がなく、上記②についても理由がない。
また、上記③について、原告は、甲1発明は、白色顔料を、ガラス微小球とガラス微小球の間の再帰反射コーティング12及び14上の全体ではなく、複数の部分の上にのみ塗布することを前提としているが、前記1(2)アのとおり、甲1発明において、白色顔料は、再帰反射性コーティング上ではなくカバー層の片面又は両面に印刷されており、白色顔料がガラス微小球とガラス微小球の間にのみ塗布することは甲1文献には記載されていないから、原告の主張はその前提において誤りがある。
c 原告は、前記(1)ア(ウ)のとおり、甲1発明の課題は、ガラス微小球の構成を前提としたものであり、こうした構成特有の課題を解決するものである以上、甲1発明の再帰反射材は、ガラス微小球16を前提としたものである旨主張するが、前記aのとおり、当業者は、甲1発明がガラス微小球が埋め込まれる反射コーティング上に塗布される白色顔料を含む接着剤の構成に特有の課題を解決するものと認識することはあり得ない。
イ 相違点1-4について
(ア) 甲1文献の記載から、甲1発明は、道路に設置する標識等に再帰反射性を付与する場合に、夜にはヘッドライト等からの入射光を反射しつつ日中においては白く見えなければならないことを前提とするものであり、夜間において要求される反射率を備え、かつ、日中白く見えるためには、「白色に着色された面積」の割合を「材料の面積の10~20%」の範囲にすること(1頁115~123行)が必要とされている。そして、甲1発明における印刷層は、「複数の点などの独立した複数の領域であって、規則的に分布している均一なパターン」であることから、「白色に着色された面積」は、「独立した印刷領域1つ当たりの面積×独立した印刷領域の数」で算出されることになる。そうすると、甲1文献に接した当業者は、夜間において要求される反射率を備え、かつ、日中白く見えるために、「白色に着色された面積」の割合を「材料の面積の10~20%」の範囲にするに当たって、「独立した印刷領域の1つ当たりの面積」と「独立した印刷領域の数」を最適な数値範囲とすることを強く動機づけられる。
この場合、甲1発明は、「交通危険標識や道路標識」等に用いられる再帰反射材であり、遠目からは均一な白色に見えなければならないものの、間近では白色のパターンが見えてもかまわないことから、「カバー層18」に対し、0.15m㎡を下回るような点(直径0.5mmを下回る円)からなる精細なパターンを印刷する必要はないし、他方、30m㎡を上回るような点(直径6mmを超える円)にすると遠目からもパターンが見えてしまい、相当でない。加えて、甲4文献は、「交通標識の表面色 太陽光照射時の色及び色境界」に関するドイツ規格であり、危険標識、指示標識又は案内標識並びに車道及び飛行場のマーキングなどすべての交通手段における多色交通標識の表面色に適用されるものであって、甲1発明の交通危険標識と用途が共通する。また、甲第18号証の公開特許公報(特開平6-242305号公報。以下「甲18文献」という。)には、本件明細書の実施例3と同じ直径1mmのドッドを配置して形成されたパターンが一方から白に見えることが記載されている(【0004】)。上記両文献は、離れた位置にいる観察者に独立した複数の着色領域を所定の色に見せるという点で、本件発明の独立印刷領域と共通するところ、甲4文献の図1(下記参照)から計算すると、六角形の領域の面積は1.95m㎡であり、甲第18号証に従来技術として記載されている直径1mmのドットの面積を計算すると0.785m㎡である。そうすると、本件発明1の「独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡」という数値範囲は、離れた位置にいる観察者に独立した複数の印刷領域が施された面を所定の色に見せる場合に採用される普通の数値を含む範囲にすぎず、当業者がまず試みるごく普通の数値範囲であって、困難を要するものではない。
「図1 DIN67520 第2部タイプ1及びタイプ2に準拠した、表面色灰色A、再帰反射を生成するための被覆率 60%の六角形「raster」」
そして、本件明細書の【0030】には、「独立印刷領域の面積が0.15m㎡以上であれば、成形性に優れ、且つ色相の調整が容易であるので好ましく、30m㎡以下であれば、印刷周囲における印刷層(2)を挟む2層の層間密着強度を低下させることがないので好ましい。」とあるところ、その下限値である0.15m㎡は、点のような独立印刷領域の面積が小さすぎると印刷層の形成が困難で色相の調整も困難になることは自明であるし、独立印刷領域の面積について適宜設定された下限値以上のものが当該下限値を下回るものに比べれば、成形性が改善され(印刷層の形成が容易)、色調の調整も可能となることは容易に予想されることであるから、臨界的意義はない。
他方、独立印刷領域の面積が大きいと印刷層を挟む2層の層間密着強度が低下すること、印刷領域及び無印刷領域の面積を調整することで密着性が調節されることは、独立印刷領域が本件明細書の実施例である2mm(3.14m㎡)以下や1mm(0.785m㎡)のドット(点、丸)である場合を含め、本件出願前の様々な技術分野で周知である(甲5ないし8)。また、再帰反射シートにおいて耐候性、耐水性が要求されることは当然の技術常識であり、耐水性及び耐候性の向上は当業者が必ず検討する課題であるところ、独立印刷領域の面積について適宜設定された上限値以下のものが上限値を超えるものに比べれば印刷層を挟む2層の層間密着性を改善し、その結果、層間密着性に起因する耐候性、耐水性の問題が軽減されることは当業者であれば当然に予測することができるから、上限値としての30m㎡にも臨界的意義はない。
なお、本件明細書の実施例には、直径2mm(3.14m㎡)の円形状の印刷パターンでピッチが4mmのもの、直径1mm(0.785m㎡)の円形状の印刷パターンでピッチが3mmという限定された態様の印刷層を設けた実験結果が開示されているにすぎず、「0.15m㎡~30m㎡」という数値範囲の全体にわたっての効果は確認されていない。
したがって、本件発明1における独立印刷領域の面積は、任意の数値範囲を特定したものであるにすぎず、相違点1-4の構成にすることは当業者であれば容易に想到する。
(イ)a これに対して、原告は、前記(1)イ(ア)のとおり、本件審決の挙げる①の理由については具体的根拠はない旨主張するが、甲1発明は「交通危険標識や道路標識」等に用いられる再帰反射材であるから、遠目からは均一な白色に見えなければならないものの、間近では白色のパターンが見えてもかまわないから、白色顔料により印刷された点は、細かすぎる必要はないし、大きすぎると全体として白色に見えないことは明らかであって、本件審決の判断には十分な根拠はある。
b 原告は、前記(1)イ(イ)のとおり、甲4文献には、①印刷層が形成されているか不明であること、②「印刷層の印刷領域が独立した」、「連続層を形成せず」が開示されているか不明であり、むしろ、「連続層」を形成していると思われること、③図1の「黒色六角形」を甲1発明に適用することについては阻害要因があり、記載された数値を甲1発明に適用することはできない旨主張する。
しかし、前記(ア)のとおり、甲4文献には、黒色の六角形が独立し連続層を形成しないパターンが示されており、離れた位置にいる観察者に独立した複数の着色領域を所定の色に見せるという点で本件発明の独立印刷領域と共通しており、①ないし③の点は、甲1発明の独立印刷領域の面積を適当な範囲に設定する際に甲4文献の記載を参考することの阻害要因となるものではない。
c 原告は、前記(1)イ(ウ)のとおり、本件審決が技術常識を示すものとした甲第18ないし20号証に記載された技術は甲1文献が開示する再帰反射材と異なる技術分野である上、複数の点(ドット)を設ける目的も異なるから、上記技術を甲1発明に適用する動機付けはない旨主張する。
しかし、本件審決は、甲18文献を甲1発明に適用することが容易であると判断したものではなく、当業者ならば甲18文献に記載された技術常識も参考にすると判断したものである。そして、甲18文献には、描かれている点がパネルからある距離にいる観衆の見物人の目にはパターンのエレメントの各々を識別できないような点とされていることが記載されている(【0003】、【0004】)から、離れた位置にいる観察者に独立した複数の着色領域を所定の色に見せるという点で本件発明の独立印刷領域と共通しており、技術分野や目的が異なるものではなく、当業者は、甲1発明の独立印刷領域の面積を適当な範囲に設定する際に、甲18文献に記載されたドットの面積のような技術常識を参考にすることができる。
ウ 相違点1-5について
(ア) 前記1(2)アのとおり、甲1発明は、より正確には、「カバー層18の片面又は両面に白色顔料材料が印刷され、白色顔料材料が印刷された部分は、複数の点などの独立した複数の領域であって、規則的に分布している均一なパターンである」という構成を有するものであるところ、大きい隠ぺい力を持つ白色顔料として酸化チタンは周知の材料であり(甲23)、甲1文献には「材料が日中白色に見えるように十分な白色が存在しなければならない」と記載されているから、甲1発明における白色顔料材料として「日中白色に見えるように」透けない白色顔料、すなわち、大きい隠ぺい力を持つ白色顔料を選択するべく動機付けられるものであり、甲1発明の「白色顔料」として酸化チタンを用いることは、当業者であれば容易に想到する。
(イ) これに対し、原告は、前記(1)ウのとおり、白色顔料を含有しない白色インキも存在する旨主張するが、甲1発明は、白色顔料材料を用いたものであるから、白色顔料を含有しない白色インキが存在することによって、「白色の無機顔料として酸化チタン」を用いる動機付けを否定することはできない。
エ 発明の効果について
(ア) 本件明細書の【0015】には、再帰反射シートの反射素子層又は表面保護層に印刷層を設置することで、耐候性、耐水性に優れ、色相の改善された、再帰反射シートが得られることを見出したこと、【0030】及び【0036】には、色相の改善という効果は、本件発明1のうち、表面保護層に白色の無機顔料を含有する印刷層を設けることと、独立印刷領域の面積を一定の数値以上とすることによりもたらされること、【0026】には、耐候性に優れているという効果は、本件発明1の構成のうち、表面保護層に(メタ)アクリル樹脂を用いたことによりもたらされることが、それぞれ記載されている。また、【0030】には、独立印刷領域の面積を一定の数値以下としたことにより層間密着強度が低下しないことが記載されている。
しかし、酸化チタンは、大きい隠ぺい力を持つ白色の無機顔料であるから、これを用いて印刷層とすれば色相が明るくなることは、当業者が当然予測できることであり、また、独立印刷領域の面積が小さすぎると印刷層の形成が困難で色相の調整も困難になることは自明であるし、独立印刷領域の面積について適宜設定された下限値以上のものが、当該下限値を下回るものに比べれば、成形性が改善され、色相の調整も可能となることは簡単に予想できるものであり、下限値としての0.15m㎡に臨界的意義はないことは、前記イのとおりである。
また、(メタ)アクリル樹脂が耐候性に優れた材料であることは周知であり(甲24、25)、独立印刷領域の面積について適宜設定された上限値以下のものが、当該上限値を超えるものに比べれば、印刷層を挟む2層の層間密着性を改善し、その結果、層間密着性に起因する耐候性、耐水性の問題が軽減されることは、当業者であれば当然に予測できるものであり、上限値としての30m㎡にも臨界的意義がないことは前記イのとおりである。
したがって、本件発明1の奏する効果は、本件出願前の周知技術を踏まえれば、本件発明の構成から当業者が当然に予測できるものであるにすぎない。
(イ) これに対して、原告は、前記(1)エのとおり、本件発明1はJIS規格の耐候性試験よりも厳格な試験の下で行われたものであり、JIS規格が予定している「耐候性」を大きく超える効果を得ている旨主張する。
しかし、JISが定める照射時間の耐候性試験より厳しい耐候性試験をクリアしたということは、単に強制標準(工業標準)をクリアしたことを意味するにすぎないから、本件発明の効果が当業者が予測することができる範囲の効果を超える顕著なものであるか否かは、JISの耐候性試験と比較しても意味はなく、原告の上記主張は失当である。
オ 小括
以上によれば、本件発明1は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1文献に記載された甲1発明並びに甲3記載技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たから、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由1-2-1(本件発明2と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 原告の主張
前記1(1)アのとおり、本件審決が認定した甲1発明は誤りであるから、本件審決が認定した本件発明2と甲1発明の相違点の認定も誤りであり、こうした相違点の認定の誤りは、本件発明2の容易想到性の判断の結論に影響する。
(2) 被告の主張
前記1(2)のとおり、本件審決が認定した甲1発明に誤りはなく、本件審決には原告が主張する相違点の認定に誤りはない。
4 取消事由1-2-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
相違点1-1’、相違点1-2及び相違点1-4の容易想到性に関する本件審決の判断が誤りであることは、前記2(1)ア及びイのとおりである。
本件審決は、相違点1-5’について、前記第2の3(3)イ(ウ)のとおり、白色に着色するための色材として、白色の酸化チタンが広く使用されていること、「0.5~10μm」という範囲には、着色のための通常の印刷層の厚さが含まれることを考慮すると、甲1発明において相違点1-5’の構成とすることは当業者における自然な選択肢にすぎない旨判断したが、本件出願日前に再帰反射シートにおける白色印刷層の厚みが10μmを超える複数の文献(甲110、111)が存在していた以上、当業者における自然な選択肢とはいえず、本件審決の上記判断も誤りである。
(3) 被告の主張
ア 相違点1-1’、相違点1-2及び相違点1-4は、甲1発明及び甲3記載技術等により当業者が容易に想到するものであることは、前記2(2)ア及びイのとおりであり、相違点1-5’のうち「印刷層」の材料を「白色の酸化チタンを含有する」構成とすることについて当業者が容易に想到することは、前記2(2)ウのとおりである。
イ 相違点1-5’のうち、「印刷層」の厚みを「0.5~10μm」とすることについては、甲第26号証には、印刷により形成された表示層8a、8bを有する反射シート(図3、【0007】、【0060】)において、表示層8a、8bの厚さが小さすぎると視認性が悪くなり、表示層8a、8bの厚さが大きすぎると印刷層が接している接着剤層3の平面性、接着性が損なわれること(【0078】)が記載されているから、甲1発明における白色顔料材料の印刷層の目的である、夜間における再帰反射性及び日中における白色性を両立させることを前提とし、同号証に記載があるように隣接する層との接着性等も考慮して、甲1発明の印刷層の厚みを適当な範囲に設定することは、当業者の通常の創作能力であるにすぎない。
そして、甲第26号証には、接着剤層3の厚さの0.5~20%が表示層8a、8bの厚みとして好ましい(【0077】)ことが記載されており、接着剤層の好ましい厚さが5~50μmである(【0030】)から、表示層の好ましい厚さは0.025μm~10μmとなり、また、甲第16号証には、再帰反射性グラフィック製品の分野において、ベースシート12とカバーフィルム20の間のベースシート12の前面上に配置されたグラフィックパターン22を含み、その着色層はとても薄く、例えば、約2.5ミクロン未満の乾燥厚さであること(17頁14~15行)が記載されている。そうすると、甲1発明における印刷層の厚みを0.5μm~10μmとすることは、当業者がまず試みる数値範囲であるにすぎず、また、こうした数値範囲とすることについて、本件明細書には、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏すると認めるに足りる記載はない。
ウ 以上によれば、本件発明2は、甲1発明及び甲3記載技術等により当業者は容易に想到し得たから、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
5 取消事由2A-1-1(本件発明1と甲2発明Aの一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 原告の主張
ア 甲2発明Aの認定の誤り
(ア) 甲2文献の記載事項について
甲2文献には、以下のとおりの記載がある(なお、見え消し及び下線部分は、本件審決の翻訳の誤りを指摘する箇所である。)。
a 「本発明による再帰反射面及びプレートは、反射板からなり、該反射板は、プラスチック板を備え、その視認面は滑らかであり、その裏面が三角プリズム又は同等の、光学的精度によって形成された反射要素を備え、かつ、例えば銀、アルミニウム、銅、クロム、ニッケルなどからなり、反射コーティングが施された反射層で覆われ、さらに、反射板の視認面には文字及び/又は数字などの記号が、刻印されるか、エンボス加工されるか、あるいは取り付けられていることを特徴とする。
三角プリズムは逆さにした三角錐の形状である。しかしながら、他のプリズムシステムを光線反射に使用することができる。
本発明の概念を特に発展させた結果、本発明による反射板は車両ナンバープレートとして使用される。この場合、記号は、記号を含まない反射面の色とは異なる色になる。
本発明の本質的な特徴によれば、記号は、反射板の視認面にエンボス加工される。この方法で製造された反射ナンバープレートの場合、本発明の反射板は公知のアルミニウム板と同じようにエンボス加工され、エンボス加工された記号は反射板の表面から浮き出し、その後、通常は黒色のラッカーで塗装されることになるから、今まで公知されているナンバープレートの製造業者は、新しいエンボス加工装置を必要とせず、また、ナンバープレートのエンボス加工や後処理の方法を変更する必要もない。本発明による反射板の場合で、かつ、記号を例えばラッカー塗装または接着する必要がある場合は、プレート製造業者には新しい作業工程が必要となる。」(2頁15~3頁下から3行)
b 「車両ナンバープレートの例では、エンボス加工されていない視認面を、日中、白く見せるため、反射板の視認面には、「Raster」格子の多数の白い点を印刷することができる。「Raster」格子は、反射光が所定の割合で透過するように作成される。「Raster」格子が不透明で光不透過の色で作成される場合、反射光は「Raster」格子の間隙を透過するため、「Raster」格子の色を吸収しない。反射板の着色及び「Raster」格子の色は、日中は視認面の色が「Raster」格子と一致するように、すなわち一致しているように見えるようにし、これに対して、夜間は反射面の色がプラスチックの着色に一致するように見えるように選択することができる。例えば、反射面は、日中は黒色に、夜間は白色に見えるように製造することができる。
本発明の別の特徴によれば、記号と、これを含まない反射板の残りの視認面とを色的に区別するために、反射光が相応する色となる透明なラッカーでこれらの表面の一方一部分をコーティングすることができる。」(7頁1~22行)
c 「エンボス加工された反射面とそうでない反射面との間に色彩コントラストを作り上げるために、着色シート又は記号を、射出成形方法によって同じ又は類似のプラスチック(透明又は不透明)から製造するか、もしくは平板(箔など)に打ち抜いて射出成形型に挿入するか、さらには、その後に、反射体に接着することもできる。プラスチックが注入される着色記号の成形型に反射体を挿入するようにして製造することも可能である。記載されているすべての、反射体の視認面上の透明又は不透明な着色ラッカー塗装は、印刷された透明な箔に置き換えることもでき、該箔は、反射体の視認面に接着、又は、例えば反射体の射出成形の際に、成形型に挿入することによって、反射体表面のプラスチック材料と結合する。」(9頁12~27行)
d 「図11によれば、反射板34の視認面34の全面に、鋳造又は射出成形プロセス中、もしくはその後に、ラッカー、膜、プラスチックからなる着色層35が装着されている。このコーティング処理された板は、例えば図3及び4の反射板14のようにエンボス加工される。その後、層35をエンボス加工された記号36の前額面が回転ディスク37によって研磨され、これに合わせて、コーティング処理された反射板34を矢印38の方向に移動することができる。このようにして凸状の記号36の着色層は削り取られ、一方、凸状でない面の着色層は保持される。」(14頁16~15頁2行)
(イ) 本件審決が認定した甲2発明Aについて
a 「その視認面が滑らかであり」との認定について
本件審決は、前記(ア)aの「該反射板は、プラスチック板を有し、プラスチック板の視認面は平滑であり」という記載を根拠として、「反射板は『その視認面が滑らかであり』」と認定したが、「滑らか」の趣旨が「視認面が『平坦面』」であるという趣旨であれば、誤りである。
b 「反射板の視認面には『Raster』の多数の白い点が印刷され」との認定について
本件審決は、「Raster」の意味を訳さずに甲2発明Aを認定するが、「Raster」という用語だけでは技術内容は理解することはできない。前記(ア)bのとおり、「Raster」は「格子」と訳されるべきである。
次に、本件審決は、甲2発明Aに関し、「エンボス加工されていない視認面に多数の白い点を印刷すること」と認定するが、エンボス加工がされていない視認面とは、エンボス加工された記号がない部分である。ここで、甲2文献には、前記(ア)bのとおり、「本発明の別の特徴によれば、記号を反射板の残りの視認面から色的に区別できるようにするために、これらの領域の一部分が、反射光に対応する色を付与する透明なラッカーで被覆されてもよい」との趣旨の記載があり、「記号を反射板の残りの視認面から色的に区別できる」というのは、反射板の視認面には「記号が凸状にエンボス加工されている」ので、記号部分以外の「反射板の残りの部分」から記号を色的に区別するために反射板の残りの視認面に着色することであり、「これらの領域の一部分が・・・透明なラッカーで被覆されてもよい」というのは、記号部分以外の「残りの視認面」である「これらの領域」(つまり、記号部分以外)の一部分に反射光に色が付与されるように、色付きの透明なラッカー(塗料)で着色することである。
つまり、甲2文献には、凸状にエンボス加工されている記号部分以外の反射板の視認面(残りの視認面)の部分の一部分に、色付きの透明なラッカー(塗料)で着色されることが開示されており、格子の多数の白い点で刻印される箇所も、記号以外の視認面の一部分であるにすぎない。
以上からすると、甲2文献には、「反射板の視認面(全体)に多数の白い点がラスター状に印刷され」ることは開示されておらず、「反射面の視認面のうち、エンボス加工された記号部分以外の一部分に、格子の多数の白い点で印刷され」ることが開示されている。
イ 本件発明1と甲2発明Aの一致点と相違点の認定の誤り
(ア) 本件発明1と甲2発明Aの対比について
a 再帰反射シートについて
本件審決は、甲2発明Aは、その用途からみて、板としては薄いといえるから、「シート」であると認定したが、「板」と「シート」は明らかに異なる。すなわち、甲2文献においては、「金属シート」、「今まで公知とされている・・・非反射アルミニウムシート」、「従来のナンバープレートの場合、ラッカー塗装されたアルミニウムシート」との記載があるように、「シート」は従来の技術に関するものとして記載されており、「板」とは明確に区別して記載されている。
したがって、甲2発明Aの「反射板」は、その用途からみても板としては薄いといえるから、シートである旨の本件審決の判断は誤りである。
b 印刷層について
本件審決は、甲2発明Aについて、「甲2発明Aの「反射板」の「視認面には『Raster』の多数の白い点が印刷され」ている。上記の構成からみて、甲2発明Aの「反射板」と本件発明1の「再帰反射シート」は、「印刷層が」「設置されており」及び「印刷された」という構成を具備する点で共通する」と判断した。
しかし、甲2発明Aの「Raster」の構成が不明である以上、「視認面には『Raster』の多数の白い点が印刷され」ているという具体的構成を把握することができず、この構成が本件発明1の「印刷層が・・・設置されており」及び「印刷された」という構成を具備する点で共通するとはいえない。
また、本件発明1の技術的思想に基づく技術的課題からすれば、「保持体層と表面保護層との間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており、該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、該独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡であり、」という構成がまとまりのある構成として認定されるべきであり、こうした構成の単位でみたときに、甲2文献に「印刷」という記載があるとしても、それが「印刷層」であるとして一致すると認定されるべきではない。
(イ) 一致点及び相違点について
前記アのとおり、本件審決が認定した甲2発明Aは誤りがあり、誤った甲2発明Aと本件発明1との対比も誤っている。
ウ まとめ
以上のとおり、本件審決は、本件発明1と甲2発明Aの一致点及び相違点の認定を誤っており、この誤りは本件発明1の容易想到性の判断の結論に影響するものである。
(2) 被告の主張
ア 甲2発明Aの認定の誤りについて
(ア) 甲2文献の記載事項
原告は、前記(1)ア(ア)のとおり、本件審決が認定した甲2文献の訳文の一部を争うが、誤りである。
(イ) 本件審決が認定した甲2発明Aについて
a 「その視認面が滑らかであり」との点について
原告は、前記(1)ア(イ)aのとおり、甲2文献の2頁15行~3頁3行の記載は、プラスチック製の車両ナンバープレートを製造する前の原材料の状態を示しているにすぎず、記号が刻印やエンボス加工等された場合に反射面の視認面が平坦面ではないことは明らかである旨主張する。
原告が指摘する甲2文献の該当箇所には、「本発明による再帰反射面及びプレートは、反射板からなり、該反射板は、プラスチック板を備え、その視認面は滑らかであり、その裏面が三角プリズム又は同等の、光学的精度によって形成された反射要素を有し」と記載されているのであって、「本発明による再帰反射面及びプレート」が最終的な完成品であることは明らかであり、原告が主張するような原材料の状態ではない。記号がエンボス加工されれば、反射板の表面は凸状になるが、裏面では「記号の背後にある押し潰された三角プリズム」となるのであって、それにもかかわらず、「その視認面が滑らかであり、その裏面が三角プリズム又は同等の、光学的精度によって形成された反射要素を有し」と記載されているのは、「その視認面」とは記号がエンボス加工される以外の部分を指すものと理解される。
したがって、記号がエンボス加工される以外の部分の「その視認面」は平坦であるから、本件審決が「その視認面が滑らかであり」と認定したことに誤りはない。
b 「反射板の視認面には『Raster』の多数の白い点が印刷され」との点について
⒜ 「Raster」について
甲2文献に記載された「Raster」は、「反射板の視認面には、『Raster』の多数の白い点を印刷することができる。『Raster』は、反射光が所定の割合で透過するように作成される。」(7頁1~22行)の文脈に整合するように解釈されるべきである。そして、文脈上、「Raster」とは、多数の白い点の配置、パターンを意味していると理解できる。
他方、ドイツ語の「Raster」は、「網目スクリーン、走査パターン、ラスター;(設計用の)方眼、格子;[思考]パターン」と多義的であり、広範な意味を含み得るのであり、原告の主張する「格子」とすることはできない。文脈上、「Raster」=「格子」の「多数の白い点」では、「格子」と「多数の白い点」が整合しない。
甲2文献の記載に接した当業者は、甲2文献は反射交通標識に用いられるもの(1頁4~9行)であるから、「交通標識の表面色」について規定したドイツ語文献である甲4文献を参照するところ、その図1(前記2(2)イの図1)の「六角形 Raster」(Sechsechraster)は、同じ「Raster」の用語が用いられているから、当業者は、甲2発明の「Raster」を甲4文献の図1に記載した模様を含むものと理解する。そして、「六角形 Raster」は、黒色スクリーン印刷インクで印刷されるものであるから、黒色の複数の独立した点(六角形)の部分であり、白色の蜂の巣形状の格子ではなく、複数の独立した点状の集合の模様(網目模様)であり、このように解釈すれば、「『網目模様』の多数の白い点」として甲2文献の文脈に整合する。
したがって、「Raster」は、複数の独立した点からなる網目模様と解釈されるべきである。
⒝ 「反射板の視認面には、網目模様の白い点が印刷され」ることは開示されていること
原告は、前記(1)ア(イ)bのとおり、甲2文献には、視認面の部分の一部分に、色付きの透明ラッカーで着色することができるということが開示されている(7頁18~22行)から、格子の多数の白い点で印字される箇所も、記号以外の視認面の一部分にすぎない旨主張する。
原告が指摘する該当箇所の記載は、「透明なラッカーでこれらの表面の一方をコーティングすることができる」という文脈からしても、「視認面の部分の一部分」ではなく、「表面の一方」とするのが正しい訳である。仮に「視認面の部分の一部分」と訳されるとしても、これは、「本発明の別の特徴によれば」とされる記載であって、その前に記載された「反射板の視認面には、「Raster」の多数の白い点を印刷すること」とは「別の特徴」であるから、仮に、「視認面の一部分」に反射光が相応する色となる透明なラッカーでこれらの表面の一方をコーティングすることが開示されていたとしても、その前に記載された「Raster」の多数の白い点を印刷することが「視認面の一部分」になるわけではなく、原告の上記主張は誤りである。
(ウ) 小括
以上によれば、本件審決が認定した甲2発明Aは正しいものである。ただし、「Raster」は、「複数の独立した点からなる網目模様」と意訳されるべきである。
イ 一致点と相違点の認定について
(ア) 本件発明1と甲2発明Aの対比について
a 再帰反射シートについて
原告は、前記(1)イ(ア)aのとおり、「板」と「シート」は明らかに異なるものである旨主張する。
甲2文献には、「今まで公知とされているナンバープレートはラッカー塗装された非反射アルミニウムシートである」と記載されている(1頁13行~2頁7行)から、公知技術におけるナンバープレートはアルミニウムシートであって薄いものである。また、「本発明による反射板は公知のアルミニウム板と同じ方法でエンボス加工され、・・・今まで公知とされているナンバープレートの製造業者は新しいエンボス加工装置を必要とせず、また、ナンバープレートのエンボス加工や後処理の方法を変更する必要もない」(3頁8~21行)とも記載されているから、「本発明による反射板」は、「公知のアルミニウム板」と同程度に薄いものである。
したがって、甲2発明Aの「反射板」は、板として薄いものといえるから、シートであると認定した本件審決の判断に誤りはない。
b 印刷層について
原告は、前記(1)イ(ア)bのとおり、①甲2発明について「Raster」という構成が意味不明である以上、「視認面には Raster の多数の白い点が印刷され」ているという具体的構成を把握することができないから、本件発明の「印刷層が・・・設置されており」及び「印刷された」という構成を具備するとはいえない旨主張するが、「Raster」は網目模様のことであり、「反射板の視認面には、網目模様の多数の白い点が印刷され」と認定されるから、その「印刷」は「印刷層」になっており、上記主張は理由がない。
なお、原告は、本件発明1の技術的思想に基づく技術課題からすれば、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており、該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、該独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡であり」という構成をまとまりのある構成として認定すべきである旨主張するが、本件発明1の構成要件を都合よくひとまとまりの単位として認定すべきであると主張するものであるし、本件発明1と甲2発明Aは、「印刷層が」「設置されており」の点は共通しており、発明がその課題とは異なる動機付けにより引用発明から容易想到であれば進歩性が否定されることはこれまでの実務でも認められていることであり、本件発明において客観的にみて別々の構成を本件発明の課題に対応させてまとまりのある構成の単位を作出した上で相違点を認定する必要はない。
(イ) 一致点及び相違点について
本件審決の甲2発明Aの認定及び対比に誤りはないから、本件審決が認定した一致点及び相違点の認定に誤りはない。
6 取消事由2A-1-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
ア 相違点2A-1について
本件審決は、前記第2の3(4)ア(ア)のとおり、甲2発明Aは、「車両ナンバープレート」として使用される反射板であるところ、その視認面に印刷された多数の白い点が保護されることは自明であるから、耐候性、透明性や光沢等に優れた(メタ)アクリル樹脂を用いた保護層によって、その表面が保護されることが適当である旨判断した。
しかし、甲2文献には、視認面を損傷等しないように透明な保護層で覆うことについての記載も示唆もない。また、甲2発明Aは、ナンバープレート本体の発明であるから、再帰反射シートの保護層の材料としてメタアクリル樹脂を用いることは周知であるとしても、甲2発明Aに適用する動機付けにはならない。
さらに、甲2発明は、記号が反射板の視認面に凸状にエンボス加工されるのであるから、こうしたプラスチック製の車両用ナンバープレートにおいて透明な保護層を設けようとした場合、保護層が視認面の記号等に密着せずに浮きなどが生じる可能性が高いから、当業者であれば、むしろ保護層を設けない。
したがって、本件審決の判断は誤りである。
イ 相違点2A-2について
本件審決は、前記第2の3(4)ア(イ)のとおり、甲2発明Aのプラスチック板は、「逆さにした三角錐の形状」の「三角プリズム」を具備するものであるから、当業者であれば、形状安定性等に優れた樹脂である周知のポリカーボネート樹脂に着目するといえる旨判断した。
しかし、甲2文献には、甲2発明Aのプラスチック板が「形状安定性等に優れている」といった記載がなく、甲3文献にも、単にポリカーボネート樹脂を用いる例(【0150】)が記載されているだけで、「形状安定性等に優れている」との記載はない(甲17の【0110】も同じ。)。
そうすると、仮に、ポリカーボネート樹脂が周知であるとしても、甲2発明Aに当該周知技術を適用する動機付けはない。
また、甲2発明Aにおいては、記号がラッカーで着色又は塗装されることが明記されているが、ポリカーボネート樹脂がラッカーを含む溶剤により強度が落ちることは、少なくとも本件出願日当時知られていた(甲112・2頁右上欄下4行~左下欄1行)、甲113の【0006】、甲114・1欄30~32行、甲115・4頁)。甲2発明Aは、ナンバープレートに関する発明であるところ、ナンバープレートは車両に取り付けて長年にわたり使用されるため強度を要求されるから、ラッカーでの塗装を前提とする甲2発明Aにおいてポリカーボネート樹脂を適用することはあり得ない。
したがって、本件審決の判断は誤りである。
ウ 相違点2A-3について
(ア) 本件審決は、前記第2の3(4)ア(ウ)のとおり、甲2発明Aの「多数の白い点」は、「記号を含まない反射面を、日中、白く不透明に見せ」、かつ、「反射光が所定の割合で透過するように」されたものであり、「多数の白い点」と表現されるものであるから、網の目形状に印刷されたものであると理解することができ、また、「記号を含まない反射面を、日中、白く不透明に見せ」、かつ、「反射光が所定の割合で透過するように」、「多数の白い点」を印刷する当業者の選択肢には、多数の白い点からなる網の目形状が含まれるといえる旨判断した。
しかし、甲2発明Aとして「Raster」と訳されていたものが「網の目形状」と解釈できるのか不明である。「Raster」の字義が不明である以上、「網の目形状」が「Raster」の字義と矛盾するものかどうか判断し得ないし、「多数の白い点」が「網の目」と認定できる根拠も不明である。
この点、本件審決は、「Raster」について、当業者ならば「Raster」が六角形のものであることまでは「Sechseckraster 」という用語(「Sechseck」(六角形)と「raster」の複合語)であることから理解可能であり、印刷された部分が六角形の部分であり、蜂の巣形状の格子ではない旨説示するが、正方形の格子、長方形の格子、菱形の格子というとき、格子に組んでいる部分を指すことは明らかであり、網の目の部分を指すものではない。甲2発明Aは、「視認面には、『Raster』の多数の白い点が印刷され」ているとしても、「Raster」の意味が不明である以上、甲2発明Aの具体的構成を把握することができない。
(イ) また、本件審決は、「多数の白い点」の各「点」(網の目)の大きさについては、相違点1-4についての判断を援用するが、甲4文献は、ビーズ型再帰反射シートを用いた交通標識の規格であるため、プリズム型再帰反射材である甲2発明に適用することには阻害要因がある。
すなわち、甲4文献は、交通標識の表面色に関する規格であり、また、マイクロガラスビーズを有するビーズ型再帰反射シートに関する規格であり、ビーズ型再帰反射シートを用いて標識を灰色にする場合における具体的な方法として、「網羅率60%(図1を参照)の六角形格子において黒のスクリーンインキを用いて達成しなければならない。」と記載されている。プリズム型再帰反射シートは、ビーズ型再帰反射シートよりも再帰反射性能が高いため、夜間でも入射した光が多く再帰反射する結果、プリズム型再帰反射シートは、夜間においてはビーズ型再帰反射シートよりも明るく見えることになる。ビーズ型再帰反射シートを前提として定められている甲4文献をプリズム型再帰反射シートに適用すると、夜間の明るさが増大し、夜間に「灰色」よりは「白」に近い色に見えてしまい、交通標識として不適切なものとなってしまうし、甲4文献は交通標識の表面色に関する規格であるため、記載されている規定事項を変更することを当業者は想到しない。
したがって、ビーズ型再帰反射シートを用いた交通標識の規格である甲4文献をプリズム型再帰反射シートへ適用することには阻害要因があるため、甲2発明Aに甲4文献に記載された事項を適用することはできない。
エ 相違点2A-4、発明の効果について
前記2(1)ウ及びエと同じ。
オ 小括
以上によれば、本件発明1は、甲2発明A及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た旨の本件審決の判断は誤りである。
(2) 被告の主張
ア 相違点2A-1について
(ア) ナンバープレートとして使用される再帰反射素子の表面を保護層で覆うこと、保護層の材料として(メタ)アクリル樹脂が例示されることは周知であり(甲3(【0002】、【0137】~【0144】、図13)、甲12の5(【0001】、【0103】~【0110】、図11)、甲16(8頁4~6行、9頁4~13行、27頁下から1行~28頁7行、図1)、甲17(【0002】、【0097】~【0104】、図8))、これらの文献に記載された周知の保護層で覆われた再帰反射素子はナンバープレートとして使用されるものであるから、甲2発明Aと同一の技術分野に属する。保護層で覆われたナンバープレートとして使用される再帰反射素子は周知であるから、ナンバープレートして使用される再帰反射素子の視認面を保護すべき課題も当業者に周知である。
そうすると、甲2発明Aのナンバープレートとして使用される反射板を、周知の課題を解決するために保護層で覆うことは、動機付けられるというべきである。
(イ) これに対し、原告は、前記(1)アのとおり、①甲2文献には、視認面を損傷等しないように透明な保護層で覆うことについて記載も示唆もない、②甲2発明Aは、ナンバープレート本体の発明であるから、再帰反射シートの保護層の材料としてメタアクリル樹脂を用いることは周知であっても、甲2発明Aに適用する動機付けはない、③凸状の甲2発明における車両ナンバープレートにおいて、保護層を設けようとした場合、保護層が視認面の記号等に密着せずに浮きなどが生じる可能性が高いから、当業者であれば、むしろ保護層を設けない旨主張する。
しかし、甲2発明Aのナンバープレートとして使用される反射板を保護層で覆うことが動機付けられるのは上記(ア)のとおりであるから、①及び②については理由がない。
また、甲2文献には、反射板の視認面全体にプラスチックからなる着色層を装着し、エンボス加工することが記載されている(14頁16~21行)から、当業者は、凸状のナンバープレート反射板の視認面全体を保護膜で覆うことはできると認識する。また、甲2文献には、凸状の記号の着色層を回転ディスクで削り取ることが記載されているが、これは記号と記号を含まない反射面の色とは異なる色にするためであり(3頁4~7行)、保護の目的は不要であるし、たとえ回転ディスクで削り取っても凸状の記号の周囲の着色層は残るから、その凸状の記号における密着性は十分であることも当業者は認識できる。したがって、③についても理由がない。
イ 相違点2A-2について
(ア) 甲2発明Aの「プラスチック板」は、その裏面が「三角プリズム」を有し、この三角プリズムは「光学的精度によって形成された反射素子層」であるから、寸法安定性に優れた樹脂である周知のポリカーボネート樹脂を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
(イ) これに対し、原告は、前記(1)イのとおり、①甲2文献には、「形状安定性等に優れている」ことの記載はなく、甲3文献等にも「形状安定性に優れている」ことは記載されていないから、ポリカーボネート樹脂が周知であるとしても、甲2発明Aにこの周知技術を適用する動機付けはない、②甲2発明Aにおいて、記号がラッカーで着色、塗装されることが明記されていることからすると、ラッカーにより変性するポリカーボネート樹脂を用いることはあり得ない旨主張する。
しかし、①について、甲2文献には、「該反射板は、プラスチック板を備え、・・・その裏面が三角プリズム又は同等の、光学的精度によって形成された反射素子を有し」と記載されている(2頁15行~3頁3行)から、甲2発明Aのプラスチック板は、反射素子(三角プリズム)の光学的精度を保つために形状安定性に優れた材料を用いることが読み取れるのであり、甲2発明Aに周知技術を適用する動機付けはある。
また、ポリカーボネート樹脂は、アロイ化によって耐薬品性を改良することは周知である(乙8)から、当業者であれば、アロイ化したポリカーボネート樹脂を採用してラッカー塗装に対応することができるから、②についても理由がない。
ウ 相違点2A-3について
(ア) 甲2発明Aの「『Raster』(複数の独立した点からなる網目模様)の多数の白い点」は、記号を含まない反射面を日中、白く不透明に見せ、かつ、反射光が所定の割合で透過するという機能を奏するものであり、複数の独立した点からなる網目模様であるから、「印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず」という構成については、相違点ではないか、上記機能を奏するために当業者が取り得る選択肢にすぎない。
また、甲2発明Aの「多数の白い点」の各「点」の大きさについては、上記機能を実現するために、複数の独立した点からなる網目模様の白色の点の被覆率、そのための白い点1つ当たりの面積を最適な数値範囲とすることを当業者は強く動機付けられるというべきである。そうすると、前記2(2)イ(ア)のとおり、本件発明1が「独立印刷領域の面積」を特定の数値範囲にしたことによって本件発明1の進歩性が肯定されることはない。
(イ) これに対し、原告は、前記(1)ウのとおり、①本件審決において、甲2発明Aとして「Raster」として訳出されていたものが「網の目形状」と解釈できるのか不明であり、「多数の白い点」が「網の目」と認定できる根拠も不明である、「Raster」の意味が不明である以上、甲2発明Aの具体的構成を把握することができない、②甲4文献は、ビーズ型再帰反射シートを用いた交通標識の規格であるため、プリズム型再帰反射材である甲2発明に適用することには阻害要因がある旨主張する。
しかし、甲2文献(7頁1~22行)の文脈上、「Raster」は、多数の白い点の配置、パターンを意味していることは理解できるものであり、交通標識の表面色について規定したドイツ語文献である甲4文献を参照すれば、その図1に記載した網の目模様であると理解することができることは、前記5(2)ア(イ)b⒜のとおりであって、①は理由がない。
また、本件審決は、甲4文献(再帰反射の灰色A)を、「光が通る隙間を確保しつつ、離れた位置にいる観察者に所定の色を見せることができるパターン」の一例として、当業者が複数の点の大きさを設計するに当たって参考にすると言及したにすぎず、甲2発明Aに甲4文献を適用する論理付けをしたわけではないから、阻害要因があるとする原告の主張はその前提において誤りがあり、その点を措くとしても、甲4文献は、プリズム型再帰反射シートにも適用される旨がドイツ規格で定まっており、②についても理由がない。
エ 相違点2A-4、発明の効果について
前記2(2)ウ及びエに同じ。
オ 小括
以上によれば、本件発明1は、甲2発明A及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
7 取消事由2A-2-1(本件発明2と甲2発明Aの一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 原告の主張
前記5(1)アのとおり、本件審決が認定した甲2発明Aは誤りであるから、本件審決が認定した本件発明2と甲2発明Aの相違点の認定も誤りであり、こうした相違点の認定の誤りは、本件発明2の容易想到性の判断の結論に影響する。
(2) 被告の主張
本件審決が認定した甲2発明Aに誤りはなく、本件発明2と甲2発明Aの相違点は、本件審決が認定したとおりである。
8 取消事由2A-2-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
本件審決の相違点2A-1ないし2A-3の容易想到性の判断の誤りについては、前記6(1)アないしウのとおりであり、相違点2A-4’のうち「白色酸化チタン」に関する容易想到性の判断が誤りであることについては、前記2(1)ウと同じである。
(2) 被告の主張
相違点2A-1ないし2A-3については、前記6(2)アないしウのとおりであり、厚みが「0.5~10μm」と特定されている点については、前記4(2)イのとおりである。
9 取消事由2B-1-1(本件発明1と甲2発明Bの一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 原告の主張
ア 甲2発明Bの認定の誤り
本件審決は、甲2発明Bについて、「その視認面が滑らかであり、」と認定しているが、前記5(1)ア(イ)aの理由により、「鋳造又は射出成形プロセス中、もしくはその後」においても「視認面が滑らか」という趣旨であれば誤りである。
イ 本件発明1と甲2発明Bの一致点と相違点の認定の誤り
(ア) 本件発明1と甲2発明Bの対比について
a 表面保護層について
本件審決は、甲2文献の図11に基づいて甲2発明Bの「透明な箔」が本件発明1の「表面保護層」に相当すると認定したが、同図11は、ナンバープレートの加工途中の状態であって、同文献の図12のとおり、エンボス加工されて凸状に隆起した記号36部分が削られる工程により、エンボス加工された反射面34とエンボス加工されない反射面34との間の色のコントラストが得られて、エンボス加工された凸状に隆起した後に研磨され削り取られた記号部分が明確となる。
このように、着色層35(透明な箔である着色層)のエンボス加工部分は研磨されることにより削り取られ、反射板34(プラスチック板)が露出するのである。
そうすると、「透明な箔」である「着色層」は、研磨されて削り取られるのであるから、反射板34の表面を保護しておらず、「表面保護層」とはなり得ない。
b 印刷層について
本件審決は、甲2発明Bの「印刷」は、本件発明1の「印刷層」に相当すると認定した。
しかし、甲2文献には、前記5(1)ア(ア)dのとおり、「着色層35」を設けることしか記載されていないこと、同cのとおり、「反射板の視認面上の透明又は不透明な着色ラッカー塗装は、印刷された透明な箔に置き換えることもでき(る)」と記載されているにすぎないことからすると、甲2文献には、印刷された層を有することは記載されていないというべきである。
また、甲2文献には、当該印刷された透明な箔において多数の白い点が印刷されていることまで記載されていないことに加え、多数の白い点が独立しているかも不明であることは、前記5(1)イ(ア)bのとおりである。
(イ) 一致点及び相違点について
前記アのとおり、本件審決が認定した甲2発明Bは誤りがあり、誤った甲2発明Bと本件発明1との対比も誤っている。
ウ まとめ
以上のとおり、本件審決は、本件発明1と甲2発明Bの一致点及び相違点の認定を誤っており、この誤りは本件発明1の容易想到性の判断の結論に影響するものである。
(2) 被告の主張
ア 甲2発明Bの認定の誤りについて
原告は、甲2発明Bについて「その視認面が滑らかであり」とした本件審決の認定が誤っている旨主張するが、前記5(2)ア(イ)aのとおり、理由がない。
イ 本件発明1と甲2発明Bの一致点と相違点の認定の誤りについて
(ア) 本件発明1と甲2発明Bの対比について
a 表面保護層について
原告は、前記(1)イ(ア)aのとおり、甲2発明の着色層のエンボス加工部分は研磨されることにより削り取られ、反射板が露出するから、反射板の表面を保護しておらず、「表面保護層」とはなり得ない旨主張する。
しかし、甲2発明Bの「反射板」は、エンボス加工されて1枚1枚異なる記号(車両を特定するための番号や記号)が付されることを予定するものであるが、記号を付す前の反射板の状態(図11)の半製品を大量生産しておくことは十分に考えられるから、甲2発明Bは、エンボス加工される前の半製品であり、甲2発明Bの「透明な箔」は、「反射板の視認面全体」を覆うものである(甲2、14頁16行~15頁2行、図11)から、本件発明1の「表面保護層」に相当する。
なお、甲2発明Bが、エンボス加工後の完成品と解しても、その「着色層のエンボス加工された記号の前額面が回転ディスクによって研磨され」ても、記号の前額面以外の視認面は着色層に覆われたままであるので、依然として「表面保護」層といえる。
b 印刷層について
原告は、前記(1)イ(ア)bのとおり、甲2文献には、印刷された層を有することは記載されておらず、また、多数の白い点が独立しているかも不明である旨主張する。
しかし、甲2文献には、「記載されているすべての反射板の視認面上の透明又は不透明な着色ラッカー塗装は、印刷された透明な箔に置き換えることもでき」(9頁12~27行)と記載され、また、「図11によれば、反射板34の視認面全体に、鋳造又は成形プロセス中、もしくはその後に、ラッカー・・・からなる着色層35が装着された」と記載されている(14頁16行~15頁2行)から、図11の「反射板34の視認面全体のラッカーからなる着色層35」は、「記載されているすべての、反射板の視認面上透明又は不透明な着色ラッカー塗装」であるといえ、これを「印刷された透明な箔」に置き換えたものが記載されている。そうすると、「印刷された透明な箔である着色層」を備えた甲2発明Bが認定できるから、これと本件発明1が「印刷層」を備えるという限度で一致するとした本件審決の認定に誤りはない。
なお、本件審決は、「独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており」との点を相違点2B-3として抽出している。
(イ) 一致点及び相違点について
本件審決の甲2発明Bの認定及び対比に誤りはないから、本件審決が認定した一致点及び相違点の認定に誤りはない。
10 取消事由2B-1-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
ア 相違点2B-1について
前記6(1)アと同様の理由により、相違点2B-1は、当業者が容易になし得たものとはいえない。また、甲2発明Bでは、「透明な箔」は、エンボス加工部分が研磨されて削り取られることが前提となっており、「透明な箔」が表面保護層となることは、甲2文献の記載から矛盾することとなるのであり得ない。
イ 相違点2B-2について
前記6(1)イと同様の理由により、相違点2B-2は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
ウ 相違点2B-3、2B-4について
前記2(1)イ、ウ及び6(1)ウと同様の理由により、当業者が容易になし得たものとはいえない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1は、甲2発明B及び周知技術により当業者が容易になし得たものとはいえないから、これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(2) 被告の主張
ア 相違点2B-1について
再帰反射シートにおいて(メタ)アクリル樹脂からなる保護フィルムは古くから周知であり(甲12の3【0027】、甲16(9頁4~7行、10頁下から2~1行)、(メタ)アクリル樹脂は耐候性が優れていることも周知である(甲24、25)。甲2発明Bの「反射板」は車両ナンバープレートとして使用されるものであるから、耐候性に優れた(メタ)アクリル樹脂を用いることが適当である。また、印刷層と保持体層と透明な保護層との間に両者に接して設ける構成は周知であり(甲3(図13、【0139】)、甲12の4(図8、【0099】)、甲12の5(図11、【0105】)、甲16(図3、16頁6~7行))、当該周知技術からすれば、印刷が汚染、損傷等しないように保護するために、「印刷された透明な箔」の印刷面の側が「プラスチック板」と結合されるように配置するのは、印刷面の保護を考える当業者が採用する自然な設計である。
イ 相違点2B-2について
前記6(2)イと同様の理由により、相違点2B-2の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点2B-3について
「印刷された透明な箔」を具体化する当業者ならば、「視認面を、日中、白く不透明に見せ」、「反射光が所定の割合で透過するように」「Raster(複数の独立した点からなる網目模様)の多数の白い点」を参考にすると考えられる。また、「多数の白い点」の大きさについては、前記6(2)ウと同じである。
エ 相違点2B-4について
前記6(2)エと同様の理由により、当業者が容易になし得たものである。
オ 小括
以上によれば、本件発明1は、甲2発明B及び周知技術により当業者が容易になし得たものであり、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
11 取消事由2B-2-1(本件発明2と甲2発明Bの一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 原告の主張
前記9(1)アのとおり、本件審決が認定した甲2発明Bは誤りであるから、本件審決が認定した本件発明2と甲2発明Bの相違点の認定も誤りであり、こうした相違点の認定の誤りは、本件発明2の容易想到性の判断の結論に影響する。
(2) 被告の主張
前記9(2)アのとおり、本件審決が認定した甲2発明Bに誤りはなく、本件審決が認定した本件発明2と甲2発明Bの相違点の認定に誤りはない。
12 取消事由2B-2-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
相違点2B-1ないしB-4’については、前記10(1)アないしウと同様の理由により、当業者が容易になし得たものとはいえず、これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(2) 被告の主張
相違点2B-1ないしB-3については、前記10(2)アないしウのとおりであり、相違点2B-4’については、前記4(2)のとおりであるから、本件審決の判断に誤りはない。
13 取消事由3(サポート要件違反の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
前記第2の3(5)のとおり、本件審決は、「保持体層と表面保護層との間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して接着され」とのみ記載され、「保持体層」と「表面保護層」が接しているか否か特定する記載はないから、本件発明は、「保持体層」と「表面保護層」が密着性が保たれている幅で接着している構成を欠くものであり、本件発明1の「再帰反射シート」は、本件明細書の【0054】に記載された耐候性試験に合格することができない態様が含まれているとして、サポート要件を満たさない旨判断したが、以下のとおり誤りである。
ア 再帰反射シートについては、「JIS Z-9117」による耐候性試験が定められているとおり、耐候性が要求されることは当然の前提となっており、このため、再帰反射シートおいては、隣接している各層間は密着しなければならないことは当然の技術常識である。
本件発明1は、①「印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており」、②「該印刷層の印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず」、③「該独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡であり」という発明特定事項であり、当業者は、①により、印刷層の一方の面が保持体層に接しており、他方の面が表面保護層に接していると理解でき、②により、印刷層の印刷領域は独立した領域をなして設置されており、連続層を形成していないことから、印刷領域が途切れている箇所が存在すると理解でき、③により、独立印刷領域の面積が「0.15m㎡~30m㎡」という所定の範囲であると理解できる。また、「印刷層」は、その性質上、膜厚が薄いことも自明である(膜厚が10μmを超えるものがあるとしても、薄いことは明らかである。)から、再帰反射シートの独立印刷領域がない部分の「保持体層」と「表面保護層」とが隣接して配置されていることは当業者には明らかである。そして、再帰反射シートは、隣接している各層間が密着していなければならないことは技術常識であるから、隣接して配置されている表面保護層と保持体層について、当業者は、再帰反射シートの独立印刷領域がない部分の「保持体層」と「表面保護層」が密着していなければならないと当然に理解する。
本件明細書には、表面保護層(1)であるアクリル樹脂フィルム(70μm)に、印刷層(2)である印刷パターンを印刷し(【0062】)、印刷パターンが印刷されているアクリル樹脂フィルムの表面保護層に、保持体層と反射素子となるポリカーボネート樹脂を熱圧着して印刷積層シートを作成し(【0063】)、さらに、ポリカーボネート樹脂を圧縮成形してキューブ型再帰反射シートの中間製品を作製している(【0064】)ことが記載されており、表面保護層と保持体層とが密着されていることが理解できる。
イ 以上によれば、本件発明はサポート要件違反がある旨の本件審決の判断は誤りである。
(2) 被告の主張
ア 本件発明は、印刷層により色相(輝度)を改善することを前提に、耐候性及び耐水性の問題(耐候性と耐水性は一体不可分のものである)を解決することを課題とするものであることは、原告も概ね認めるところである。
そして、本件発明が解決しようとする耐候性及び耐水性は、本件明細書の【0054】に記載された耐候性試験後の外観が「異常無し」であることを意味するものと理解されるところ、本件明細書に記載された実施例(【0057】ないし【0074】、図4)においては、印刷パターンは直径2mmの円形状でピッチが4mm、又は直径1mmの円形状でピッチが3mmのものであり、さらに、その印刷用インキのバインダーとして特定の組成が使用され、熱圧着も特定の条件(温度、圧力等)で行われたものについて、「異常無し」であったことが記載されている。
しかし、印刷パターンが上記以外のもので円の直径に比してピッチが小さいものや、そもそも印刷パターンが円形状でないもの、さらには印刷インキのバインダーや熱圧着条件(温度、圧力等)が実施例と異なるものについても同様の試験結果が得られることは、本件明細書に記載されておらず、本件出願時の技術常識から明らかであるとはいえない。
したがって、本件発明は、耐候性及び耐水性の課題が解決できると当業者が認識できるとはいえないものを含んでいるから、本件発明は、サポート要件を充足しない。
イ これに対して、原告は、前記(1)アのとおり、再帰反射シートにおいては、「JIS Z-9117」による耐候性試験が定められており、耐候性が要求されることは当業者の当然の前提として、隣接している各層間は密着しなければならないことは当然の技術常識であるとして、本件発明1の発明特定事項、本件明細書の【0062】ないし【0064】及び上記技術常識から、当業者は、本件発明1において「独立印刷領域」がない部分の「保持体層」と「表面保護層」とが密着していなければならないと当然に理解する旨主張する。
しかし、本件明細書の【0012】には、再帰反射シートに連続した印刷層を設置した場合に印刷層周辺の密着性が劣るとの記載があり、隣接している各層間が密着していることが技術常識であるとしても、密着性が劣る再帰反射シートがあることは明らかである。例えば、本件発明は、円形状の独立印刷領域においてピッチが小さい態様も含まれており、保持体層と表面保護層の密着性が保たれる幅で接着されていないため、保持体層と表面保護層の密着性が劣り、耐候性試験で異常なしとの評価を得るに至らない態様が含まれることは明らかである。
本件審決は、「保持体層」と「表面保護層」とが接着していることが特定されていない点だけでなく、本件発明の「再帰反射シート」が「保持体層」と「表面保護層」が接着しており、かつ、接着の幅(1つ1つの印刷領域の間隔)が層間密着強度が低下しない程度であるという構成を欠いた点、「保持体層」と「表面保護層」が密着性が保たれる幅で接着しているという構成を欠く点を問題にしており、原告が主張する技術常識があるとしても、本件発明1の「独立印刷領域」がない部分の「保持体層」と「表面保護層」が密着性が保たれるような幅で接着しているとはいえず、上記構成を欠いた「再帰反射シート」が本件明細書の【0054】に記載された耐候性試験において「異常無し」との評価を得るに至らない態様が含まれる旨の本件審決の判断が覆ることにならない。
前記アのとおり、本件明細書の実施例は、保持体層と表面保護層とを特定の条件(温度、圧力等)で熱圧着して再帰反射シートを作成したものであるが、本件発明は、この方法で作成されたものに限定されないから、本件明細書の【0054】に記載された耐候性試験において異常なしとの評価されるに至らない態様が含まれる。
ウ したがって、本件発明は、サポート要件を充足するものではなく、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断
1 本件明細書(甲73)の記載について
本件明細書には、別紙1のとおりの記載があり、同記載事項によれば、本件発明に関し、次のような開示があることが認められる。
(1) 入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートは、道路標識、工事標識等の標識類、自動車やオートバイ等の車両ナンバープレート類等に広く利用されており、中でも三角錐型反射素子等のキューブコーナー型再帰反射素子の再帰反射原理を利用したキューブコーナー型再帰反射シートや反射素子の反射素子面に蒸着層が設置されている三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、従来のマイクロ硝子球を用いた再帰反射シートに比べて光の再帰反射効率が格段に優れているが、蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、その再帰反射素子の性質から金属の色の影響を受けて暗くなってしまうという欠点があるため、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや金属蒸着三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの色相を改善するために該再帰反射シートの一部に連続した印刷層を設ける試みもされている(【0002】ないし【0004】、【0008】)。
(2) しかし、印刷層は、反射素子とも表面保護層とも密着性がやや劣り、その層自体の耐候性が劣り耐候性試験においてフクレを生じたり、また、吸水しやすいという欠点を有しており、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに連続した印刷層を設置した場合、該印刷層の周辺の密着性が劣り、耐候性や耐水性が劣るという欠点を有していた(【0012】)。
本件発明は、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや金属蒸着三角錐型キューブコーナー再帰反射シート等で色相を改善するために印刷層を設けた場合における耐候性や耐水性に劣るという従来技術における欠点を非常に簡単で安価な方法で問題を解決し、色相の改善された再帰反射シートが得られることを見出して完成するに至った(【0014】、【0015】)。
(3) 本件発明は、少なくとも、多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる再帰反射シートにおいて、①反射素子層にポリカーボネート樹脂を用い、表面保護層に(メタ)アクリル樹脂を用い、②保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており、③この印刷層と印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡であり、④この印刷層は、白色の無機顔料として酸化チタンを含有することを特徴とする印刷された再帰反射シートを提供するものである(【0016】)。
2 取消事由1-1-1(本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 甲1文献の記載事項について
ア 甲1文献には、別紙2のとおりの記載(訳文は、「特許請求の範囲」2ないし4は乙1により、その他は本件審決による。以下同じ。)があり、同記載事項によれば、甲1発明に関し、次のような開示があることが認められる。
(ア) 「本発明」は、コーンや車止めポールのような交通危険標識、道路標識その他の再帰反射材に関する発明である(1頁3~8行)。
(イ) こうした交通危険標識は、道路コーンや車止めポールを覆う適切な形状の再帰反射スリーブを装着して再帰反射性が与えられているが、例えば、スリーブは、夜間には自動車のヘッドライトからの入射光を反射しなければならず、日光の下では、スリーブが白く見えなければならず、これを実現するために、白色顔料を含む接着剤層は、反射コーディングの上に塗布され、ガラス微小球は接着剤に埋め込まれているが、組立体の接着剤中の白色顔料は再帰反射性を低下させることから、白色顔料の量を減らすと再帰反射性が向上するが日光の下では十分に白い外観が保てなくなるという問題があった(1頁9~31行)。
(ウ) 「本発明」により、裏材、裏材上の再帰反射コーディング、再帰反射コーディングに取り付けられたガラス微小球を有する再帰反射材が提供され(1頁34~47行)、本発明の白色に着色された材料は、再帰反射コーディングを覆う透明又は半透明のカバーシートの片面又は両面に印刷され得るものであり(1頁48~53行)、再帰反射コーディングは、2層で形成され、第1の層が乾燥した後に第2の層が塗布され、ガラス微小球が第2の層に取り付けられ(1頁60~66行)、再帰反射材は、・・・プラスチック製の裏材10を有し、裏材の片面には、再帰反射材料の層12が塗布され、第1の層12の上には、再帰反射材料の第2の層14が塗布され(1頁74~83行)、複数のガラス微小球16が、第2の層14に取り付けられ、第2の層は液体から形成され、この層がまだ液体であるうちに、ガラス微小球がその中に部分的に埋め込まれ、第2の層が乾燥すると、ガラス微小球は第2の層にしっかりと固定され(1頁88行~94行)、透明又は半透明のカバー層18は、第2の層14の上に設けられており、好ましくは、材料片の端部に隣接する部分を除いて、組立体の残りの部分に取り付けられず、又は固定されておらず、カバー層の一部は白色に着色されており、白色の着色は、カバー層の片面又は両面に付与することができ、白色に着色された部分は、例えば、複数の点・・・による、・・・均一なパターンであり得る(1頁99~114行)。
イ これらの記載によれば、甲1発明は、本件審決が認定したとおりであると認められる。
(2) 原告主張の甲1発明の認定の誤りについて
ア 原告は、前記第3の1(1)ア(イ)aのとおり、①甲1文献に記載された「複数の点」、「複数の線」、「他の規則的」な形状又は「不規則な形状」を「ランダム」又は「均一」なパターンとし得ることが記載されているとしても、これらについては多数の組み合わせが考えられ、再帰反射コーティング14や裏材10の白色に着色された部分について、「複数の点」による「均一」なパターンという特定の構成とするものと理解できない、②仮に、甲1文献に「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」ことが開示されているとしても、「再帰反射コーティング」である「第1の層12」及び「第2の層14」並びに「裏材10」について上記構成が開示されているにすぎず、「カバー層18」の片面又は両面に白色顔料を印刷する場合において、上記構成が開示されているわけではない、③甲1発明において、カバー層18の片面又は両面に白色顔料が印刷された場合に、「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」と構成することは、再帰反射性を減少させるものであり、「白色が一定限度以上に不明瞭にしたり、減衰させたりしてはならない」という甲1発明の課題を解決できないから、甲1文献には、カバー層18の1つの部分が白色に着色されたとしても、当業者は、「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」態様と理解することはない旨主張する。
しかし、前記(1)のとおり、甲1文献には、「カバー層の一部は白色に着色されている。白色の着色は、カバー層の片面又は両面に付与することができる。・・・白色に着色された部分は、例えば、複数の点、複数の線、又はその他の規則的又は不規則な形状による、ランダム又は均一なパターンであり得る。」(1頁99~114行)との記載があり、「白色が再帰反射コーティングの再帰反射性を一定限度以上に不明瞭にしたり、減衰させたりしてはならない」(1頁115~118行)限度で、白色の着色のパターンを適宜選択できることが開示されており、甲1文献には、このうちの1つのパターンである「白色に着色された部分は複数の点を均一なパターン」であることが開示されているといえる。
そして、甲1文献には、「カバー層の一部は白色に着色されている。白色の着色は、カバー層の片面又は両そこに取り付ける前に、再帰反射コーティング14の上に白色が直接塗布されてもよく、又は、再帰反射コーティングが、裏材を露出するように、不連続とされてもよい。裏面に付与することができる。代わりに、微小球を材自体が白色に着色されてもよく、又は、白色が裏材の露出部分に塗布されてもよい。 。」(1頁99~114行)との記載があるところ、上記下線部は、「白色に着色する部分がカバー層である」ことの「代わりに」(Alternatively)、すなわち、白色に着色する部分の他の選択肢として、再帰反射コーティングの上や裏材を白色に着色する実施例を示すものと理解されるから、「白色に着色する部分がカバー層である」構成とその他の選択肢の構成を受けて、「白色に着色された部分」についてのパターンを二重下線部分で開示するものというべきである。
また、甲1文献には、「白色は、再帰反射コーティングを覆う透明又は半透明のカバーシートの片面又は両面に印刷され得る。」(1頁48~53行)、「カバー層の一部は白色に着色されている。白色の着色は、カバー層の片面又は両面に付与することができる。」(1頁99~114行)、「組立体に必要な反射性を持たせるためには、白色が再帰反射コーティングの再帰反射性を一定限度以上に不明瞭にしたり、減衰させたりしてはならない。しかしながら、材料が日光の下で白色に見えるように、十分な白色が存在しなければならない。一般に満足な組立体は、材料の面積の10~20%、好ましくは12~17%が白色に着色されたもので得られる。(1頁115~123行)との記載があることに加え、特許請求の範囲として、「裏材、前記裏材上の再帰反射コーティング、前記再帰反射コーティングに取り付けられたガラス微小球を含む再帰反射材であって、前記コーティングが不完全であるか、又は不完全であるように見え、前記コーティングが欠けているか、又は欠けているように見える、部分又は複数の部分に白色が付与されている、再帰反射材。」(請求項1)、「白色が再帰反射コーティングの上に付与されている、請求項1に記載の再帰反射材。」(請求項2)、「白色が再帰反射コーティングに直接塗布されている、請求項1又は2に記載の再帰反射材。」(請求項3)、「白色が再帰反射コーティング上に広がる(extends over)カバーシートに付与されている、請求項1又は2に記載の再帰反射材。」(請求項4)との記載がある。
そうすると、甲1発明は、日中に白く見えるように着色したカバー層の白色を材料面積の割合で調整しつつ、夜間の「再帰反射コーティングの再帰反射性を一定限度以上に不明瞭にしたり、減衰させたり」しない構成であれば、課題が解決するものであると理解することができるから、カバー層18の片面又は両面に複数の点による均一なパターンとする構成が甲1発明の技術的思想に反するものとはいえない。
したがって、上記の原告の主張はいずれも採用できない。
イ 原告は、前記第3の1(1)ア(イ)bのとおり、甲1文献の「Part of the cover layer is・・・」(1頁103~114行)は、「カバー層の1つ(単数)の部分」を指すものであるとの前提のもとに、「カバー層の1つの部分」とは、材料片の「端部に隣接する部分」であり、材料片の端部に隣接する部分を白色に着色した場合であれば、再帰反射性が減少することなく、白色の外観を得ることができるとして、「カバー層18の一部」は「カバー層の1つの部分」として認定されるべきである旨主張する。
しかし、甲1文献には、「カバー層18」の片面又は両面に印刷された白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンであることが開示されていることは前記(ア)のとおりであって、カバー層の「材料片の端部に隣接する部分」のみが白色に着色されていると解釈する必要はない。原告が指摘する甲1文献の「Part of the cover」は、特定の部分を示す「the part」といった用語が使用されているものではないため、この文の直前にある「Preferably the cover layer18 is・・・the edegs of the piece of material」の部分を指すものではなく、被告が指摘するように複数のものを集合的に単数形で扱っているものと理解するのが相当である。
したがって、上記の原告の主張は採用できない。なお、原告は、その他にも、本件審決の認定の誤りについて、用語に関する翻訳の当否等を含め、るる主張するが、いずれも当を得ないもの、あるいは前記結論を左右し得ないものというべきである。
(3) 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点について
ア 前記(2)のとおり、本件審決が認定した甲1発明に誤りはなく、これを前提として本件発明1と対比すると、本件発明1は、本件審決が認定した相違点1-1ないし1-5の点で甲1発明と相違する。
イ(ア) これに対して、原告は、前記第3の1(1)イ(ア)aのとおり、甲1発明には「多数の反射素子」は存在しない以上、甲1発明の「光再帰反射素子層」は本件発明1の反射素子層に相当しない旨主張する。
原告が指摘する本件審決が認定した「光再帰反射素子層」は、「第1の層12」、「第2の層14」、「ガラス微小球16」及び空隙を併せたものを総称したものであるが、相違点1-1は、「本件発明1の「再帰反射シート」が、「少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層」、「反射素子層の上層に設置された表面保護層」からなり、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」たものであるのに対し、甲1発明は、上記下線を付した位置関係ないし部材の組み合わせを具備しない点」というものであるから、甲1発明には「多数の反射素子」に該当するものがないとしても、相違点を看過しているものとはいえない。
(イ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ア)bのとおり、再帰反射シートは切断して使用することが前提であり、本件審決のように甲1発明が切断、破壊して使用することを前提としないのであれば、甲1発明の「再帰反射材」は本件発明1の再帰反射シートに該当しない旨主張するが、本件明細書には、本件発明に係る再帰反射シートは切断、破壊することに限定するといった記載はなく、甲1発明に関する本件審決の説示を取り上げて、本件発明1と甲1発明との相違点として殊更認定する必要はない。
(ウ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ア)cのとおり、甲1発明について、「白色に着色された部分は、複数の点による均一なパターンである」との構成を具備するものであるとしても、甲1発明の「複数の点」が本件発明1の「印刷領域が独立した領域をなして」を具備するものではない旨主張するが、甲1文献には、「・・・したがって、本発明では、白色に着色された材料は、再帰反射コーティングの上に均一に塗布されるのではなく、コーティングの複数の部分の上にのみ付与される。これらの複数の部分は、複数の点・・・の形状のような分離した(discrete)複数の領域・・・であってもよく、それらは、組立品の上に規則的に・・・分布しても良い」(1頁34~47行)との記載があり、「discrete」の語彙からして、カバー層の白色に着色された部分は、それぞれが個別の領域をなしているといえるから、甲1発明との対比において、複数の点が「印刷領域が独立してなして」いることは、本件発明1との相違点ではなく、一致点として認定されるべきである。
ウ したがって、原告の主張は、いずれも採用できない。
(4) 小括
以上によれば、本件審決の甲1発明の認定に誤りはなく、また、本件発明1と甲1発明の対比において相違点の看過はなく、本件審決の相違点の認定に誤りはない。
3 取消事由1-1-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 前記1の開示事項からすると、本件発明は、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シート等で色相を改善するために印刷層を設けた場合における耐候性や耐水性に劣るという従来技術の問題点を解決するために、①反射素子層にポリカーボネート樹脂を用い、表面保護層に(メタ)アクリル樹脂を用い、②保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており、③この印刷層と印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡であり、④この印刷層は、白色の無機顔料として酸化チタンを含有する、再帰反射シートとすることに技術的意義があり、本件明細書で開示されている実施例と比較例の構成の相違とその試験結果(【0079】)も踏まえると、②と③は、課題解決のための不可欠の構成であるといえる。
そうすると、②と③に関する相違点1-1と1-4のそれぞれについて容易想到性を検討するのではなく、一体の構成として検討されるべきである(なお、仮に、個別に検討したとしても、本件結論は左右されない。以下同じ。)。
(2) 被告は、前記第3の2(2)ア(ア)のとおり、当業者は、甲1発明の課題である「再帰反射効率の向上」と「再帰反射を増加させ、日中において十分な白い外観を備える」ことを目的として、甲1発明におけるカバー層18と裏材10の間に存在する、再帰反射機能を果たす「再帰反射コーティングの第1の層12、その上に適用された再帰反射コーティングの第2の層14、第2の層に取り付けられたガラス微小球16及び空気層からなる」層構成を、甲3文献に記載された表面保護層(4)と支持体層(7)との間に存在する「反射素子層(1)と保持体層(2)とが一体成形されたポリカーボネート樹脂からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射材、空気層(3)及び結合材層(6)」からなる層構成に、光の入射方向を考慮した上で置換する動機付けがある旨主張する。そこで、まず甲3文献の記載事項について検討する。
(3)ア 甲3文献には、別紙4のとおりの記載があり、同記載事項によれば、次のような開示があることが認められる。
(ア) 「本発明」は、新規な構造の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関するものであり、道路標識、工事標識等の標識類、自動車、オートバイ等の車両のナンバープレート等の反射板等において有用な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子によって構成される三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する(【0001】、【0002】)。
(イ) 従来、入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートはよく知られており、中でも三角錐型反射素子等のキューブコーナー型再帰反射素子の再帰反射原理を利用した再帰反射シートは、従来のマイクロ硝子球を用いた再帰反射シートに比べ光の再帰反射効率が格段に優れており、その優れた再帰反射性能により年々用途が拡大しつつあるが、従来の公知の三角錐型再帰反射素子は、その反射原理から素子の持つ光学軸と入射光線とがなす角度が小さい角度の範囲では良好な再帰反射効率を示すが、入射角が大きくなるにつれて再帰反射効率は急激に低下するといった問題があった(【0006】、【0007】)。
(ウ) 「本発明」の再帰反射シートは、一般に三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに望まれる基本的な光学特性である、高輝度性、すなわち、該シート正面から入射した光の反射輝度に代表される反射輝度の高さ(大きさ)のみならず、観測角特性、入射角特性、回転角特性等の広角性の改善を可能とする(【0160】)。
イ そして、甲3文献の【0137】の記載及び図13によると、甲3文献には、「光の入射方向(10)から順に、表面保護層(4)、観測者に情報を伝達したりシートの着色のための印刷層(5)、反射素子層の裏面に水分が侵入するのを防止するための密入密封構造を達成するための結合材層(6)、反射素子層(1)と結合材層(6)に囲まれて、反射素子の界面での再帰反射を保証するための空気層(3)、結合材層(6)を支持する支持体層(7)、該再帰反射シートを他の構造体に貼付するために用いる接着剤層(8)と剥離材層(9)を設けてなる、三角錐型キューブコーナー再帰反射シート」(本件審決が認定した「甲3記載技術」)が開示されているものと認められる。
(4)ア 以上を前提として検討するに、甲1発明の構成は、「プラスチック製の裏材10」と、「プラスチック裏材10の片面に再帰反射材料の第1の層12」、第1の層12の上に「再帰反射材料の第2の層14」、しっかりと固定された部分的に第2の層14に埋め込まれたガラス微小球16、カバー層18からなり、カバー層18の一部は白色に着色され、白色の着色は、カバー層18の片面又は両面に印刷されており、このカバー層18は、材料片の端部に隣接する部分を除いて組立体に取り付けられていない、すなわち、カバー層18とガラス微小球16の間に空隙が生じている。この印刷層とガラス微小球16の間の空隙は、空隙の空気とガラス微小球との界面で光を屈折させることにより再帰反射の光路を形成するもの(被告準備書面(3)3頁。本件審決も同旨)である。こうした再帰反射シートにおいては、再帰反射材料である第1の層、第2の層とその上に取り付けられた微小球、白色に一部が印刷されたカバー層が1つの技術的思想として、甲1発明の目的である、夜間に自動車のヘッドライトからの入射光を反射し、日光の下では白く見える再帰反射材となるものと理解することができる(以下の図を参照。なお、赤い部分は、白色に着色された印刷部分)。
このように、甲1発明は、カバー層18及びその片面又は両面に複数の点で均一なパターンで白色に着色された印刷層と、微小球16の間には空隙があり、カバー層18は材料片の端部に隣接する部分を除いて組立体に取り付けられていない構成であって、空隙部は再帰反射の光路を形成するために設けられたものであるから、甲1発明に接した当業者は、印刷部と第2の層14の間の空隙部に水等が侵入することで印刷層にふくれ等が生じ再帰反射性が低下することによる課題を認識することができず、こうした課題を前提として甲3記載技術を適用する動機付けはない。
イ また、再帰反射材において再帰反射効率を高めることは周知の課題であり、キューブコーナー型再帰反射素子がマイクロ硝子球を用いたものよりも再帰反射効率が高いことが知られていたとしても、甲1発明におけるカバー層18とカバー層18の片面又は両面に複数の均一なパターンで白色に着色された印刷層は、ガラス微小球を用いた構成を前提として、夜間の再帰反射性を一定限度以上に不明瞭にしたり減衰させることなく、日光の下では白色に見えるように十分な白色を存在するように構成されたもの(1頁115~123行)であるから、こうしたカバー層18と白色に着色された印刷層の構成をそのままとした上で、これと裏材10の間に存在する層構成のみを取り出し、甲3記載技術の三角錐型キューブコーナー再帰反射材、空気層及び結合材層からなる層構成に置き換える動機付けはない。
ウ 仮に、甲1発明の構成のうち「空隙部、ガラス微小球、第2の層14、第1の層12」を、甲3記載技術の構成のうち「結合材層(6)、空気層(3)、三角錐型反射素子層(1)、保持体層(2)」の構成を適用する動機付けがあるとしても、カバー層18が保持体層に接して構成することが可能な部材であるかにつき、それが可能であることを認めるに足りる証拠はない。
エ 以上のとおり、甲1発明に甲3記載技術を適用する動機付けはなく、仮に動機付けがあるとしても、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」た構成(相違点1-1)には想到しない。
そうすると、当業者が、保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されることで生じる印刷層のフクレ等の課題を認識して独立した印刷領域の面積割合について検討する動機付けはないから、相違点1-4の構成にも想到し得ない。
(5) 小括
以上によれば、本件審決には、少なくとも相違点1-1、1-4の容易想到性の判断に誤りがあり、本件発明1は、甲1発明及び甲3記載技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないから、その他の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由1-1-2は理由がある。
4 取消事由1-2-1(本件発明2と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について
原告は、前記第3の3(1)のとおり、本件審決の甲1発明の認定に誤りがあることを前提として、本件審決の相違点の認定に誤りがある旨主張するが、前記2(1)のとおり、本件審決の甲1発明の認定に誤りはない。
そして、本件発明2は、①「反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子」と、②印刷層の厚みを「0.5~10μm」とした点以外は、本件発明1の構成に同じである。
そうすると、本件発明2と甲1発明の相違点は、相違点1-2ないし1-4に加えて、相違点1-1は、①の構成を前提として本件審決が認定した相違点1-1’、相違点1-5は、②の構成を前提として本件審決が認定した相違点1-5’として認定されるべきである。
したがって、本件発明2と甲1発明の一致点及び相違点の認定に関して本件審決の判断に誤りはない。
5 取消事由1-2-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り)について
本件発明の技術的意義からすると、相違点1-1’と相違点1-4は一体の構成として検討されるべきことは、前記3(1)のとおりである。
そして、相違点1-1’は、相違点1-1の構成に、本件発明2の「反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子」とした点が相違点として加わったものであるところ、甲1発明に甲3記載技術を適用する動機付けはなく、仮に動機付けがあるとしても、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」た構成(相違点1-1)には想到しないから、相違点1-1’の構成も想到し得ないものであり、また、当業者が、保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されることで生じる印刷層のフクレ等の課題を認識して、独立した印刷領域の面積割合について検討する動機付けはないから、相違点1-4の構成にも想到し得ないことは、前記3(4)のとおりである。
したがって、本件審決には、少なくとも相違点1-1’、1-4の容易想到性の判断に誤りがあり、本件発明2は、甲1発明及び甲3記載技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないから、その他の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由1-2-2は理由がある。
6 取消事由2A-1-1(本件発明1と甲2発明Aの一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 甲2発明Aの認定の誤りについて
ア 甲2文献の記載事項について
(ア) 甲2文献には、別紙3のとおりの記載(本件審決の訳文による。)があり、同記載事項によれば、甲2発明Aに関し、次のような開示があることが認められる。
a 「本発明」は、再帰反射板及びその製造方法に関するものである。
夜間の交通の安全性を高めるために、反射膜でコーティングされた金属シートからなる反射交通標識が知られており、車両に反射プレートを備えることで、夜間に車両が照射されるとナンバープレートで夜間でも車両を識別することができる。公知のナンバープレートは、ラッカー塗装された非反射アルミニウムシートであり、記号、文字及び/又は数字が凸状にエンボス加工された後、この凸面が通常は黒色でラッカー塗装される。(以上、1頁4~9行、13行~2頁7行)
b 「本発明」の課題は、夜間交通における安全性を高め、交通路及び交通制御装置の視認性、さらには車両の視認性を向上させるための再帰反射面及びプレートを提供すること、そのような反射面及びプレートを製造する方法を提供することである(2頁8~14行)。
c 「本発明」による再帰反射面及びプレートは、反射板からなり、該反射板は、プラスチック板を備え、その視認面は滑らかであり、その裏面が三角プリズム・・・の光学的精度によって形成された反射要素を有し、反射コーディングが施された反射層で覆われ、さらに、反射板の視認面には、文字及び/又は数字などの記号が、刻印されるかエンボス加工されるか取り付けられていることを特徴とし、三角プリズムは逆さにした三角錐の形状を有し(2頁15行~3頁3行)、本発明による反射板をエンボス加工する場合、凸状の記号の背後に配置されている三角プリズムが押し潰されるため、凸状の記号はもはや反射せず(3頁22行~4頁5行)、車両ナンバープレートの例では、エンボス加工されていない視認面を、日中、白く不透明に見せるため、反射板の視認面には「Raster」の多数の白い点を印刷することができ、「Raster」は、反射光が所定の割合で透過されるように作成される(7頁1~22行)。
(イ) これらの記載を総合すると、甲2発明Aは、本件審決が認定したとおりの発明であると認められる。
イ これに対して、原告は、前記第3の5(1)ア(イ)のとおり、①甲2発明Aの「その視認面が滑らかであり」との点については、反射面の視認面にある文字や数字等の記号は、型押し(エンボス加工)され、凸状に刻み込まれるから、「視認面が『平坦面』」であるという趣旨であれば誤りである、②「反射板の視認面には『Raster』の多数の白い点が印刷され」との点については、「Raster」という用語だけでは技術内容を理解することはできず、「Raster」は「格子」と訳されるべきであり、また、甲2文献には「反射板の視認面のうち、記号部分以外の一部分に格子の多数の白い点が印され」ることが開示されている旨主張する。
しかし、前記ア(ア)cのとおり、甲2文献には、「本発明による再帰反射面及びプレートは、反射板からなり、該反射板は、プラスチック板を備え、その視認面は滑らかであり、・・・」との記載があるが、それに続けて、反射板の視認面には、文字等の記号がエンボス加工されることで凸状となることが記載されていることからすれば、そのエンボス加工された部分以外の視認面は「滑らかである」ものと理解することができるから、甲2発明Aの反射板について「その視認面が滑らかであり」と認定したことについて誤りはない。
次に、「Raster」は、独和辞典では「格子」、「網目版にする」(甲44)、「(網目スクリーンの)網目」(甲49、51)と訳され、独英辞典では「grid」と英訳され(甲45)、「grid」は「格子」(甲46)、「等間隔の水平と垂直の棒または線でできた網状組織」(甲48)などと訳されていることが証拠上認められるから、「Raster」は一義的に「格子」と訳するのが適当であるとはいえない。そして、ここで問題とされるのは多数の白い点が「Raster」のどの部分であるかであるところ、上記のとおり、「Raster」は「網の目状」のことを指す意味があり、「・・・日中、白く不透明に見せるため、反射板の視認面には、「Raster」の白い点を印刷することができる。「Raster」は、反射光が所定の割合で透過されるように作成される。「Raster」が不透明で光不透過の色で作成される場合、反射光は「Raster」の間隙を通過するため、「Raster」の色を吸収しない。反射板の着色及び「Raster」の色は、日中は視認面の色が「Raster」と一致するように、すなわち一致しているように見えるようにし・・・」(7頁1~22行)との全体的な記載を踏まえると、「『Raster』の多数の白い点」は、多数の白い点からなる構成が「網目状」に見えるようになっていることを指すもの、すなわち、独立した複数の白い点が網の目状に配置しているようにも理解することができ、そうとすれば、むしろ相違点2A-3は実質的相違点ではないといえるが、いずれにせよ、本件審決が「Raster」の技術的意義をひとまず措いて相違点を認定したことについて誤りがあるとはいえない。
また、甲2文献には、「「エンボス加工されていない視認面」を、日中、白く不透明に見せるため、反射板の視認面に「Raster」の多数の白い点を印刷することができる。・・・本発明の別の特徴によれば、記号とこれを含まない反射板の視認面とを色的に区別するために、反射光が相応する色となる透明なラッカーでこれらの表面の一方をコーティングすることができる。」(7頁1~22行)との記載があるのであるから、本件審決は、上記前段部分に基づき、「記号を含まない反射面」、すなわち、「エンボス加工されていない視認面」を、日中、白く見せるため、反射板の視認面には、「Raster」の多数の白い点が印刷されと認定したものであり、それ自体、相当な認定というべきである。原告の上記主張は、「本発明の別の特徴」とされる上記後段部分の記載を拠り所とするものであり、しかも、「表面の一方を」と理解すべきものを殊更「上面の一部分を」と曲解するものであって、採用し得ない。
ウ 以上によれば、本件審決の甲2発明Aの認定に誤りはない。なお、原告は、その他にも、本件審決の認定の誤りについて、用語に関する翻訳の当否等を含め、るる主張するが、いずれも当を得ないもの、あるいは前記結論を左右し得ないものというべきである。
(2) 本件発明1と甲2発明Aの一致点及び相違点について
ア 前記(1)のとおり、本件審決の甲2発明Aの認定に誤りはなく、これを前提として本件発明1と対比すると、本件発明1は、本件審決が認定した相違点2A-1ないし2A-4の点で甲2発明Aと相違する。
イ(ア) これに対して、原告は、前記第3の5(1)イ(ア)aのとおり、甲2発明Aの「反射板」と「シート」は明らかに異なるものであり、甲2文献においては「シート」は従来の技術に関するものであると記載されて、「板」とは明確に区別されているから、甲2発明Aの「反射板」を「再帰反射シート」と一致点と認定したことは誤りである旨主張する。
しかし、原告が指摘する甲2文献の該当箇所には、「・・・今まで公知とされているナンバープレートはラッカー塗装された非反射アルミニウムシートである。このプレートの場合、・・・」(1頁13行~2頁7行)と記載があるものの、続けて、「本発明の課題は、・・・車両の視認性を向上させるための再帰反射面及びプレートを提供することである。」(2頁8~12行)、「さらに、本発明の課題は、そのような反射面及びプレートを製造する方法を提供することである。」(2頁12~14行)、「本発明による再帰反射面及びプレートは、反射板からなり・・・」(2頁15行以下)との記載(下線は、当裁判所において付したもの。)があるのであるから、甲2文献では、「シート」と「反射板」は取り立てて別のものを指すものとして使用されているわけではないし、また、「本発明による反射板は公知のアルミニウム板と同じ方法でエンボス加工され・・・」(3頁8行以下)とあることから、甲2発明Aの「反射板」は、公知のアルミニウムと同じく薄いものを前提としたものといえるから、甲2発明Aの「反射板」を本件発明1の「再帰反射シート」との一致点と認定したことに誤りはない。
(イ) 原告は、前記第3の5(1)イ(ア)bのとおり、甲2発明Aの「Raster」の構成が不明である以上、「視認面には、『Raster』の多数の白い点が印刷され」ているという具体的な構成を把握することができず、本件発明1の「印刷層が・・・が設置されており」、「印刷された」という構成と一致するとはいえない旨主張する。
しかし、「Raster」の具体的技術的意義を明らかにしなくても、甲2発明Aは、記号を含まない反射面の「視認面には、『Raster』の多数の白い点が印刷され」という構成を備えているから、「印刷された層」を有することは明らかである。なお、「Raster」は必ずしも「格子」であると和訳されるに限らず、むしろ「白い点」が網の目模様に配置されているものと解する余地があることは、前記(1)イのとおりである。
(3) 小括
以上によれば、本件審決の甲2発明Aの認定に誤りはなく、また、本件発明1と甲2発明Aの対比において相違点の看過はなく、本件審決の相違点の認定に誤りはない。
7 取消事由2A-1-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 相違点2A-1及び2A-4の容易想到性について
ア 前記3(1)のとおり、本件発明1の技術的意義に照らすと、本件発明1の構成のうち、①保持体層と表面保護層との間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており、②この印刷層と印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されており、連続層を形成せず、独立印刷領域の面積が0.15m㎡~30m㎡であるとの部分と甲2発明Aとの相違点に対応する相違点2A-1と2A-4は1つの相違点として検討されるべきである。
イ 甲2発明Aは、屋外で利用することが想定される車両ナンバープレートであり、その構成は、逆さにした三角錐の形状を有した三角プリズム、反射板14、反射板14の視認面上の記号18、反射板14の視認面上に「Raster」の多数の白い点が印刷された構成から成るものであり、この「Raster」の白い点の上層に表面保護層を設けることについて記載も示唆もない。
そうすると、甲2発明Aの「Raster」は、表面保護層がない状態で屋外使用したとしても、耐候性を備えることがその前提となっているといえるから、甲2発明Aの「Raster」の白い点が印刷された部分にさらに表面保護層を備える構成とする動機付けがあるとはいえず、甲2発明Aに接した当業者は、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」た構成(相違点2A-1)に想到し得ない。
また、この場合、当業者が、保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されることで生じる印刷層のフクレ等の課題を認識して独立した印刷領域の面積割合について検討する動機付けもないから、相違点2-4の構成にも想到し得ない。
ウ これに対し、被告は、前記第3の6(2)アのとおり、甲2発明Aのナンバープレートとして使用される反射板を保護層で覆うことは周知の課題であり、この課題を解決するために反射板を保護層で覆うことは動機付けられる旨主張するが、そもそも甲2文献には、反射板を保護層で覆うことに関する記載や示唆は一切なく、前記イのとおり、甲2発明Aの「Raster」は、表面保護層がない状態で屋外に使用したとしても耐候性を備えることが前提となっているから、仮に、ナンバープレートの視認面を保護することが周知の課題であるとしても、「Raster」の白い点が印刷された部分に更に表面保護層を備える構成とすることは動機付けられず、被告の上記主張は理由がない。
(2) 小括
以上によれば、本件審決における本件発明1と甲2発明Aの相違点2A-1及び2A-4の容易想到性の判断に誤りがあり、本件発明1は、甲2発明A及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないから、その他の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由2A1-1-2は理由がある。
8 取消事由2A-2-1(本件発明2と甲2発明Aの一致点及び相違点の認定の誤り)について
原告は、前記第3の7(1)のとおり、本件審決の甲2発明Aの認定に誤りがあることを前提として、本件審決の相違点の認定に誤りがある旨主張するが、前記6(1)のとおり、本件審決の甲2発明Aの認定に誤りはない。
そして、本件発明2は、①「反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子」であるとし、②印刷層の厚みを「0.5~10μm」とした点以外は、本件発明1の構成に同じである。
そうすると、本件発明2と甲2発明Aの相違点は、相違点2A-1ないし2A-3に加えて、相違点2A-4は、②の構成を前提として本件審決が認定した相違点2A-4’として認定されるべきである。
したがって、本件発明2と甲1発明の一致点及び相違点の認定に関して本件審決の判断に誤りはない。
9 取消事由2A-2-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り)について
本件発明の技術的意義からすると、相違点2A-1と2A-4’は一体の構成として検討されるべきであることは、前記7(1)アのとおりである。
そして、甲2発明Aの「Raster」は、表面保護層がない状態で屋外使用したとしても、耐候性を備えることがその前提となっているといえるから、甲2発明Aの「Raster」の白い点が印刷された部分に更に表面保護層を備える構成とする動機付けがあるとはいえず、「保持体層と表面保護層の間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置され」た構成(相違点2-1)に想到し得ないことは、前記7(1)イのとおりであり、また、この場合、当業者が、保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されることで生じる印刷層のフクレ等の課題を認識して独立した印刷領域の面積割合について検討する動機付けもないから、相違点2A-4’の構成(相違点2A-4に、本件発明2が印刷層の厚みを「0.5~10μm」と特定した点が更に相違点として加わったもの)にも想到し得ない。
したがって、本件審決には、少なくとも相違点2A-1、2A-4’の容易想到性の判断に誤りがあり、本件発明2は、甲2発明A及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないから、その他の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由2A-2-2は理由がある。
10 取消事由2B-1-1(本件発明1と甲2発明Bの一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 甲2発明Bの認定の誤りについて
ア 甲2文献には、前記6(1)ア(ア)の記載に加え、「反射板の全表面は、着色ラッカー層を有することができる。・・・この着色層は、ラッカー、箔、プラスチックなどの様々な材料からなり、この層は射出成形方法で塗着されたり、プラスチック板として反射体の射出成形型に挿入することができる。」(9頁1~11行)、「記載されているすべての、反射板の視認面上の透明又は不透明な着色ラッカー塗装は、印刷された透明な箔に置き換えることもでき、該箔は、反射体の視認面に接着、又は、例えば、反射体の射出成形の際に、成形型に挿入することによって、反射体表面のプラスチック材料と結合する。」(9頁12~27行。下線部は当裁判所において付したもの。)、「図11によれば、反射板の視認面34全体に、鋳造又は射出成形プロセス中、もしくはその後に、ラッカー、膜、プラスチックからなる着色層35が装着された。このコーティング処理された板は、例えば図3及び4の反射板14のようにエンボス加工される。その後、層35のエンボス加工された記号36の前額面が回転ディスク37によって研磨され、これに合わせて、コーティング処理された反射板34を矢印38の方向に移動させることができる。このようにして、凸状の記号36の着色層は削り取られ、一方、凸状でない面の着色層は保持される。」(14頁16行~15頁2行)との記載があり、図11、図12は以下のとおりである。
これらの記載等を総合すると、甲2発明Bは、本件審決が認定したとおりであると認められる。
イ これに対し、原告は、前記第3の9(1)アのとおり、本件審決が認定した甲2発明Bのうち「視認面が滑らか」と認定した部分について、「鋳造又は射出成形プロセス中、もしくはその後」においても「視認面が滑らか」という趣旨であれば、誤りである旨主張するが、前記6(1)イのとおり、甲2文献の記載からすると、エンボス加工された部分以外の視認面は「滑らかである」ものと理解することができるから、甲2発明Aの反射板について「その視認面が滑らかであり」と認定したことについて誤りはなく、原告の上記主張は理由がない。
(2) 本件発明1と甲2発明Bの一致点及び相違点について
ア 前記(1)のとおり、本件審決の甲2発明Bの認定に誤りはなく、これを前提として本件発明1と対比すると、本件発明1は、本件審決が認定した相違点2B-1ないし2B-4の点で甲2発明Bと相違する。
イ(ア) これに対して、原告は、前記第3の9(1)イ(ア)aのとおり、甲2発明Bの「透明な箔」である「着色層」は、研磨されて削り取られるから、反射面34の表面を保護しておらず、「表面保護層」になり得ないから、本件審決はこの点の相違点を看過している旨主張する。
しかし、甲2発明Aにおける反射板の視認面上の透明又は不透明なラッカー塗装に代わる印刷された透明な箔は、「該箔は、反射体の視認面に接着、又は、例えば反射体の射出成形の際に、成形型に挿入することによって、反射体表面のプラスチック材料と結合する。」(9頁12~27行)とされており、この記載からすると、反射板の視認面を覆うものであると理解することができるし、エンボス加工後に前額面の凸状の記号が削り取られた後も「凸状でない面の着色層は保持される」(14頁16行~15頁2行)から、削り取られた記号以外の部分は、透明な箔によって視認面は保護されているといえるため、甲2発明Bの「透明な箔」は本件発明1の「表面保護層」に相当するといえる。
したがって、本件審決には原告が主張する相違点の看過はない。
(イ) また、原告は、前記第3の9(1)イ(ア)bのとおり、甲2文献には「着色層35」を設けることしか記載されていないこと、「反射板の視認面上の透明又は不透明な着色ラッカー塗装は、印刷された透明な膜に置き換えることもでき」ると記載されているにすぎないことからすると、甲2発明Bには印刷された層を有しないから、本件審決はこの点の相違点を看過している旨主張する。
しかし、甲2文献には、①「反射板の全表面は、着色ラッカー層を有することができる。・・・」(9頁1行以下)、②「・・・記載されているすべての、反射板の視認面上の透明又は不透明な着色ラッカー塗装は、印刷された透明な箔に置き換えることもでき・・・」る(9頁12~27行)、③「図11によれば、反射板の視認面34全体に、鋳造又は射出成形プロセス中、もしくはその後に、ラッカー・・・からなる着色層35が装着された。・・・」(14頁16行以下)との記載がある。これらの記載と図11を参照すると、反射板34の視認面全体のラッカーからなる着色層35は「印刷された透明な箔」に置き換え可能なものであり、「印刷された透明な箔」の着色層は印刷層に当たるといえるから、本件発明1と甲2発明Bとの対比において、この点を相違点と認定しなかった本件審決の判断に誤りはない。
(3) 小括
以上によれば、本件審決の甲2発明Bの認定に誤りはなく、また、本件発明1と甲2発明Bの対比において相違点の看過はなく、本件審決の相違点の認定に誤りはない。
11 取消事由2B-1-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 相違点2B-3の容易想到性について
ア 甲2発明Bの「印刷された透明な箔である着色層」は、反射板の視認面上の着色ラッカー塗装と置き換えられたものである(9頁12~27行。前記10(1)アの下線部参照)。そして、甲2発明Bの着色層35は、「・・・該箔は、反射体の視認面に接着、又は、例えば反射体の射出成形の際に、成形型に挿入することによって、反射体表面のプラスチック材料と結合する。」(9頁12~27行)が、こうした印刷された透明な箔について、甲2文献には、「Raster」の多数の白い点とすることは記載も示唆もなく、甲2文献に接した当業者は、甲2発明Bの「印刷された箔」を「Raster」の多数の白い点とすることを動機付けられるとはいえない。
また、この場合、当業者は、甲2発明Bを独立した印刷領域を有する構成にすることを想到し得ないから、更に独立した印刷領域の面積について検討することを動機付けられることもない。
イ これに対し、被告は、前記第3の10(2)ウのとおり、「印刷された透明な箔」を具体化する当業者ならば、「視認面を、日中、白く不透明に見せ」、「反射光が所定の割合で透過するように」、「Raster」の多数の白い点を参考にすると考える旨主張するが、甲2文献には、この点に関連する記載は何ら存在しておらず、それにもかかわらず、甲2文献に接した当業者は、当然のこととして甲2発明Bの「印刷された箔」を「Raster」の多数の白い点とすることを動機付けられるとはいえない。したがって、被告の上記主張は理由がない。
(2) 小括
以上によれば、本件審決における本件発明1と甲2発明Bの相違点2B-3の容易想到性の判断に誤りがあり、本件発明1は、甲2発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないから、その他の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由2B-1-2は理由がある。
12 取消事由2B-2-1(本件発明2と甲2発明Bの一致点及び相違点の認定の誤り)について
原告は、前記第3の11の(1)のとおり、本件審決の甲2発明Bの認定に誤りがあることを前提として、本件審決の相違点の認定に誤りがある旨主張するが、前記10(1)のとおり、本件審決の甲2発明Bの認定に誤りはない。
そして、本件発明2は、①「反射素子が三角錐型キューブコーナー再帰反射素子」であるとし、②印刷層の厚みを「0.5~10μm」とした点以外は、本件発明1の構成に同じである。
そうすると、本件発明2と甲2発明Bの相違点は、相違点2B-1ないし2B-3に加えて、相違点2B-4は、②の構成を前提として本件審決が認定した相違点2B-4’として認定されるべきである。
したがって、本件発明2と甲発明Bの一致点及び相違点の認定に関して本件審決の判断に誤りはない。
13 取消事由2B-2-2(本件審決が認定した相違点を前提とした本件発明2の容易想到性の判断の誤り)について
前記11(1)のとおり、本件審決の相違点2B-3の容易想到性の判断には誤りがある。
そうすると、本件発明2は、甲2発明B及び周知技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないから、原告主張の取消事由2B-2-2は理由がある。
14 取消事由3(サポート要件違反の判断の誤り)について
(1) 特許法36条6項1号は、特許請求の範囲の記載に際し、発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えて記載してはならない旨を規定したものであり、その趣旨は、発明の詳細な説明に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば、公開されていない発明について独占的、排他的な権利を請求することになって妥当でないため、これを防止することにあるものと解される。
そうすると、特許請求の範囲の記載が同号所定の要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであると解するのが相当である。
(2) 本件明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、道路標識、工事標識等の標識類、自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート類、衣類、救命具等の安全資材類、看板等のマーキング、可視光、レーザー光あるいは赤外光反射型センサー類の反射板等において有用な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(以下単に、三角錐型反射素子ともいう)によって構成されるキューブコーナー型再帰反射シートに関する。」(【0002】)、「従来より、入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートはよく知られており、その再帰反射性を利用した該シートは上記のごとき利用分野で広く利用されている。中でも三角錐型反射素子などのキューブコーナー型再帰反射素子の再帰反射原理を利用したキューブコーナー型再帰反射シートや上記反射素子の反射側面に蒸着層が設置されている三角錐型キューブコーナー再帰反射シート(以下、蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートという)は、従来のマイクロ硝子球を用いた再帰反射シートに比べ光の再帰反射効率が格段に優れており、その優れた再帰反射性能により年々用途が拡大しつつある。」(【0003】)、「しかしながら、蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、その再帰反射素子の性質から金属の色の影響を受けて外観が暗くなってしまうという欠点を有している。」(【0004】)、「これら三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや金属蒸着三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの色相を改善するために該再帰反射シートの一部に連続した印刷層を設ける試みもされている。」(【0008】)、「また、再帰反射シートの種類としては、上述の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの他に封入型再帰反射シートやカプセルレンズ型再帰反射シート等があり、これらでは、本願と同様の印刷層を設ける試みもされている。」(【0009】)、「しかしながら、印刷層は、反射素子とも表面保護層とも密着性がやや劣り、また、その層自体の耐候性が劣り耐候性試験においてフクレが生じたり、また、吸水しやすいという欠点を有しており、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに連続した印刷層を設置した場合、該印刷層の周辺の密着性が劣り、耐候性や耐水性が劣るという欠点を有していた。」(【0012】)、「また、該封入型再帰反射シートや該カプセルレンズ型再帰反射シートは、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに比べ元々の再帰反射性能が低く、該印刷層を設置した場合、再帰反射性能を満足できないという欠点を有していた。」(【0013】)、「本発明は、これら従来技術の欠点に鑑み、非常に簡単、かつ安価な方法により、色相の改善された再帰反射シートを提供するものである。」(【0014】)、「本発明者等は、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや金属蒸着三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの種々色相について検討した結果、該再帰反射シートの反射素子層または表面保護層に印刷層を設置することで、耐候性、耐水性に優れ、色相の改善された、再帰反射シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0015】)との記載がある。
これらの記載を総合すると、本件発明は、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シート等で色相を改善するために印刷層を設けた場合における耐候性や耐水性に劣るという従来技術における欠点を非常に簡単で安価な方法で解決し、色相の改善された再帰反射シートを提供するものであると認められる。
(3) そこで、本件発明が、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であり、上記詳細な説明の記載又は本件出願時の技術常識に照らして、当業者が前記のような本件発明の課題を解決するものと認識できる範囲のものであるといえるかについて、検討する。
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、「発明を実施するための最良の形態」として、「 本発明に用いられる再帰反射シートは、少なくとも多数の反射素子と保持体層からなる反射素子層、および、反射素子層の上層に設置された表面保護層からなる三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートが好ましい。」(【0018】)、「本発明に用いられる反射素子と保持体層からなる反射素子層は、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの反射素子層として公知のものを利用することができる。」(【0019】)、「(4)は本発明の三角錐型反射素子が最密充填状に配置された反射素子層であり、(3)は該反射素子を保持する保持体層であり、(11)は光の入射方向である。反射素子層(4)および保持体層(3)は一体(5)であるのが普通であるが、別々の層を積層しても良い。本発明における再帰反射シートの使用目的、使用環境に応じて表面保護層(1)、色相を調節する着色のための印刷層(2)、反射素子層(4)の裏面に水分が侵入するのを防止するための封入密封構造を達成するための結合剤層(7)、結合剤層(7)を支持するための支持体層(8)および、該再帰反射シートを他の構造体に貼りつけするために用いる接着剤層(9)と剥離基材層(10)を設けることができる。」(【0021】)、「 印刷層(2)は、通常、表面保護層(1)と保持体層(3)の間、あるいは、表面保護層(1)の上や反射素子層(4)の反射面上、または表面保護層上に設置することができ、表面保護層(1)が2層以上の場合には、表面保護層間に設置することもできる。」(【0022】)、「本発明において反射素子層(4)に使用しうる材料の例としては、ポリカーボネート樹脂・・・などを例示できる。」(【0025】)、「表面保護層(1)には反射素子層(4)に用いたのと同じ樹脂を用いることができるが、特に耐候性、耐溶剤性、印刷性等に優れた・・・(メタ)アクリル樹脂が好ましい。」(【0026】)、「 本発明の独立した印刷層(2)の印刷領域は、独立印刷領域の面積が0.15mm2~30mm2であり、好ましくは0.2mm2~25mm2であり、さらに好ましくは0.4mm2~15mm2である。」(【0029】)、「該独立印刷領域の面積が0.15mm2以上であれば、成形性に優れ、且つ色相の調整が容易であるので好ましく、30mm2以下であれば、印刷周囲における印刷層(2)を挟む2層の層間密着強度を低下させることがないので好ましい。」(【0030】)、「該印刷層(2)の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5~10μm、さらに好ましくは1~5μm、さらにより好ましくは、2~4μmである。」(【0031】)、「該印刷層(2)の厚みが0.5μm以上であれば、成形性に優れ、且つ色相の調整が容易であるので好ましく、10μm以下であれば、印刷周囲における印刷層(2)を挟む2層の層間密着強度を低下させることがないので好ましい。」(【0032】)、「本発明に用いられる着色剤は、特に限定されるものではないが、色相を明るくすることができ、且つ、隠蔽性が得られるものが良く、シートの色相に合わせた明色系の色が好ましく、例えば、白色の有機顔料や白色や黄色の無機顔料、並びに蛍光染料や蛍光増白剤を挙げることができ、中でも、隠蔽性がより優れる白色や黄色の無機顔料が好ましい。」(【0036】)との記載がある。
上記で摘示した本件明細書の発明の詳細な説明からすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
イ そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の実施例として、実施例1( 厚さ70μmのアクリル樹脂フィルム(三菱レーヨン株式会社製「サンデュレンLHB」)に印刷インキを用いて、直径2mmの円形状の印刷パターンでピッチが4mmの図4に示すような千鳥状にグラビア印刷を行った図1(後掲)で示される三角錐型キューブコーナー型再帰反射シート(印刷厚みは約2μm)。【0057】ないし【0067】)、実施例2(実施例1の条件の下で作成された蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。【0068】、【0069】)、実施例3( 実施例1で作成した印刷インキを用いて、直径1mmの円形状の印刷パターンでピッチが3mmの図4(後掲)に示されたような千鳥状にグラビア印刷をポリカーボネート面に行い、実施例1と同じ条件で圧縮成形し、密封封入構造と粘着剤層を設置した蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シート(印刷厚みは約2μm)。【0070】ないし【0074】)と、比較例1(印刷の図柄を図6(後掲)の模様とした以外は実施例1に同じ。)、比較例2(印刷の図柄を図6の模様とした以外は実施例2に同じ。)とを対比した実験結果が開示されている(表1(後掲))。
実施例1ないし3は、図1で示される積層構造も踏まえると、「反射素子と保持体層からなる反射素子層」と、「反射素子層の上層に設置された表面保護層から」なり、保持体層と表面保護層の間に印刷層が設置されており」、また、図4は(図6と異なり)千鳥状に印刷領域が配置されているから、「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しのパターンで設置されて」、「連続層は形成」しないものであり、独立印刷領域の面積が実施例1、2は1m㎡、実施例3は0.25m㎡であり、印刷層は、酸化チタン等の顔料で印刷(【0061】)された、厚さ2μmの再帰反射シートであるところ、これらは再帰反射性及び耐候性試験後の外観に異常はなかったのに対し、比較例(独立した印刷領域を設けない図6の模様)では印刷部のフクレが生じたことが開示されている。
前記アで摘示した本件明細書の各段落の記載と上記比較実験の結果を踏まえると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の発明特定事項を備える再帰反射シートは、前記(2)で認定した本件発明の課題を解決することができるものと認識できる範囲のものであるといえる。
ウ 本件審決は、本件発明の「特許請求の範囲」には、「保持体層」、「表面保護層」及び「印刷層」の積層構造について、「保持体層と表面保護層との間に印刷層が保持体層と表面保護層に接して設置されており」とのみ記載され、「保持体層」と「表面保護層」とが接しているか否かを特定する記載はないことを理由として、本件発明は、「保持体層」と「表面保護層」が密着性が保たれている幅で接着している構成を欠くものが含まれている旨判断する。
しかし、本件発明は、道路標識、工事標識等の標識類、自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート等に使用される再帰反射シートに関するものであり(【0002】)、屋外での使用が当然想定されているといえ、また、再帰反射シートにおいて一定の耐候性が要求されること自体は技術常識であるといえる。そして、本件明細書では、従来技術の再帰反射シートは、色相を改善するために再帰反射シートの一部に連続した印刷層を設ける試みもされているが、印刷層は、表面保護層と密着性がやや劣り、耐候性試験においてフクレが生じたり、吸水しやすいという欠点があった(【0008】、【0009】、【0012】)と記載されている。このような事情に照らせば、本件発明の「特許請求の範囲」につき、保持体層と表面保護層とが接しているか否かを特定する記載がないから、保持体層と表面保護層が密着性が保たれている幅で接着している構成を欠くものと解するのは不当であり、むしろ、密着性があることは当然の前提とされているものと解すべきである(「表面保護層」及び「保持体層」との用語自体及びその性質に照らしても、この両者を敢えて密着性が保たれない幅で接着することは想定し難い。)。
また、被告は、前記第3の13(2)のとおり、本件審決は、「保持体層」と「表面保護層」とが接着していることが特定されていない点だけでなく、本件発明1の「独立印刷領域」がない部分の「保持体層」と「表面保護層」とが密着性が保たれるような幅で接着しているとはいえない点を問題にしており、上記構成を欠いた「再帰反射シート」が本件明細書の【0054】に記載された耐候性試験において「異常無し」との評価を得るに至らない態様が含まれる以上は、サポート要件違反が認められる旨主張する。
しかし、本件発明においては、前述のとおり、「表面保護層」と「保持体層」とが密着性があることは当然の前提とされているものであるから、被告の主張は、その前提を誤るものというべきであり、採用し得ない。
したがって、本件発明がサポート要件を満たさない旨の本件審決の判断は、判断の前提を誤解するものであり、誤りである。
15 結論
以上によれば、原告主張の取消事由のうち、1-1-2、1-2-2、2A-1-2、2A-2-2、2B-1-2、2B-2-2及び3は理由があるから、本件審決は取り消されるべきである。
よって、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
(裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 中村恭 裁判官 岡山忠広)
別紙
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政治活動/選挙運動ポスター貼り 勝つ!選挙広報支援事前ポスター 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。
(9)選挙立札看板設置/証票申請代行 絶対ここに設置したい!選挙立札看板(選挙事務所/後援会連絡所)
選挙事務所/後援会連絡所届出代行 公職選挙法の上限/立て札看板設置 1台から可能な選挙立札看板設置
最強の立札看板設置代行/広報(公報)支援/選挙立候補者後援会立札看板/選挙立候補者連絡所立札看板/政治活動用事務所に掲示する立て札・看板/証票申請代行/ガンガン独占設置!













































































































