裁判年月日 令和 5年 1月31日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令4(ワ)21198号
事件名 発信者情報開示請求事件
文献番号 2023WLJPCA01319002
出典
裁判所ウェブサイト
裁判年月日 令和 5年 1月31日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令4(ワ)21198号
事件名 発信者情報開示請求事件
文献番号 2023WLJPCA01319002
原告 カバー株式会社
同訴訟代理人弁護士 田中圭祐
吉永雅洋
遠藤大介
蓮池純
神田竜輔
鈴木勇輝
被告 ソフトバンク株式会社
同訴訟代理人弁護士 金子和弘
主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報(ただし、別紙ログイン情報目録記載5のログインに係るものに限る。)を開示せよ。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを8分し、その7を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
本件は、原告が、氏名不詳者がツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報サービス)において、別紙著作物目録記載1のイラスト(以下「原告イラスト」という。)及び同目録記載2の動画(以下「原告動画」という。)に基づいて作成された別紙投稿画像目録の使用画像欄記載の画像(以下「本件画像」という。)の掲載を含むツイートを投稿し、これにより、原告イラスト及び原告動画に係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害したことが明らかであり、上記氏名不詳者に対する損害賠償請求等のために必要であると主張して、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条2項に基づき、別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
⑴ 当事者
ア 原告は、動画配信サイトYouTubeにおいて、いわゆるVTuber(特定の2D又は3Dキャラクターを使用して、芸能活動に従事する者の総称)が出演する動画の配信を業とする株式会社である(甲13及び弁論の全趣旨)。
イ 被告は、電気通信事業を営む株式会社である。
⑵ 原告イラスト及び原告動画の著作物性及び著作権の帰属
ア 原告イラスト
原告イラストは、「A」との名称のキャラクターのイラストであって、キャラクター本体である女の子の頭頂部からうさぎの耳が生え、左側頭部の三つ編みの上部と右側頭部の三つ編みの下部にそれぞれニンジンが1本ずつ挟まっているなどの容姿が描かれており、これにより、うさぎを擬人化したキャラクター設定を反映した描写がされているといえるから、思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物であると認められる(甲17及び弁論の全趣旨)。
イ 原告動画
原告動画は、原告イラストのイラストを、モーションキャプチャ技術によって映像化したものであり、思想又は感情を創作的に表現した映画の著作物であると認められる(甲18及び弁論の全趣旨)。
ウ 著作権の帰属
原告は、原告イラスト及び原告動画の著作権を有している(甲12及び弁論の全趣旨)。
⑶ 二次的創作ライセンス規約の存在
原告は、二次的創作ライセンス規約(以下「本件規約」という。)に基づいて、第三者に対し、原告が著作権を有するキャラクターのイラスト等の利用許諾をしているところ、同利用許諾の条件として、「本キャラクターの名誉・品位」を「傷つける行為をしないこと」(本件規約第4条2項⑵)及び「暴力的な表現」「のため利用しないこと」を掲げている(同項⑶)。
⑷ 氏名不詳者による本件画像の投稿
氏名不詳者は、別紙投稿画像目録記載の投稿日時に、原告動画の一コマを切り抜いて作成した静止画像(別紙著作物目録記載2の「抜粋画像」欄の画像をいう。以下同じ。)に、涙や首つり縄の絵柄と「死ぬA」というテキストを付加して画像を作成し、これをYouTubeの動画のサムネイルに見立て、同画像の下部に「【首吊り】Vtuber初!自殺配信するAよ-!【ホロライブ/A】」とのテキストを付加して本件画像を作成し、これを添付したツイートを投稿した(甲1及び18。以下、同ツイートを「本件ツイート」と、本件ツイートが投稿されたアカウントを「本件アカウント」と、本件ツイートを投稿した氏名不詳者を「本件投稿者」という。)。
⑸ ツイッター・インク(以下「ツイッター社」という。)による発信者情報の開示
原告は、ツイッター社を相手方として、本件アカウントにログインした際のIPアドレス及びタイムスタンプについて仮の開示を求める仮処分を申し立て(東京地方裁判所令和4年(ヨ)第22040号事件)、令和4年4月20日、ツイッター社に対し、同申立てに係る情報について仮の開示を命じる旨の仮処分決定がされた。ツイッター社は、同仮処分決定に基づいて、IPアドレス及びタイムスタンプのうち、同年2月10日(日本時間。特記しない限り以下同じ。)以降のもので、ツイッター社が保有するもの全てを開示した。(甲3ないし5)
⑹ 本件アカウントへのログイン経過
本件アカウントには、令和4年2月13日から同月16日までの間において、別紙ログイン経過一覧表のログイン日時(日本時間)欄記載の日時に、IPアドレス欄記載のIPアドレスを接続元としたログインがされた(甲5、29)。
⑺ 被告による発信者情報の保有
被告は、別紙ログイン情報目録記載の各ログイン(以下、同目録の番号順に「本件ログイン1」、「本件ログイン2」などといい、これらを併せて「本件各ログイン」という。)に係る発信者情報(氏名又は名称、住所及び電話番号)を保有している(弁論の全趣旨)。
3 争点
⑴ 本件ツイートにより原告の権利が侵害されたことが明らかであるか(争点1)
⑵ 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか(争点2)
⑶ 本件各ログインに係る送信が「侵害関連通信」(プロバイダ責任制限法5条2項柱書)に該当するか(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件ツイートにより原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について
(原告の主張)
⑴ 本件投稿者による原告の著作権侵害について
ア 原告イラストについて
原告イラストと本件画像は、キャラクターの頭頂部からうさぎの耳が生えているデザインとなっている点、左側頭部の三つ編みの上部と右側頭部の三つ編みの下部にそれぞれニンジンが1本ずつ挟まっているデザインとなっている点、首元にウサギを模したマフラー又はショールを身に着けたデザインとなっている点、目の色が飴色とワインレッドのグラデーションである点、眉毛が円形に近い形状となっている点、髪色はトップから毛先にかけて白色からややくすんだ水色へのグラデーションとなっており、頭部のサイドが白色と水色の三つ編みとなっている点などで共通しており、本件画像から、原告イラストの表現上の本質的特徴を直接感得できるものである。
イ 原告動画について
本件画像は、原告動画の静止画像に涙や首つり縄の絵柄と「死ぬA」というテキストを付加したものにすぎず、本件画像から、原告動画の表現上の本質的特徴を直接感得できるものである。
ウ 複製権及び公衆送信権の侵害について
本件ツイートの投稿は、本件画像を掲載することによって、インターネット上のサーバーに原告イラスト及び原告動画を有形的に再製するとともに、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に本件画像に係る情報を記録することによって、原告イラスト及び原告動画を送信可能化したものであるから、原告イラスト及び原告動画の複製権(著作権法21条)及び公衆送信権(同法23条1項)を侵害するものといえる。
⑵ 本件投稿者による原告イラスト及び原告動画の利用に原告の許諾があるとの主張について
本件画像は、「A」という名称のキャラクターが自殺しようとしており、かつ自殺の様子をYouTubeで配信しているかのような印象を抱かせる動画である。自殺の予告や、自殺の様子を配信することは痛ましく凄惨な行為であるから、本件画像のような原告イラスト及び原告動画の使用態様は本件規約で禁止された「本キャラクターの名誉・品位」を「傷つける行為」(本件規約第4条2項⑵)及び「暴力的な表現」のための利用(同項⑶)に該当するといえ、本件規約によって許諾された範囲を逸脱するものであることは明らかである。
よって、本件規約により、原告イラスト及び原告動画を二次的創作に利用することは許諾されているとの被告の主張は理由がない。
(被告の主張)
⑴ 本件投稿者による原告の著作権侵害について
争う。
⑵ 本件投稿者による原告イラスト及び原告動画の利用に原告の許諾があること
本件規約には、キャラクターの自殺に関する表現がキャラクターの名誉・品位を傷つける行為に該当することを明示した規定は存在しない。
また、自殺対策基本法9条は、自殺対策の実施に当たっては、自殺者及び自殺未遂者並びにそれらの者の親族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、いやしくもこれらを不当に侵害することのないようにしなければならないと規定している。さらに、WHO(世界保健機関)は、2013年の世界自殺予防デーのテーマとして「スティグマ:不名誉のそしりこそが自殺予防の大きな妨げ」を掲げているし、自殺を題材にした芸術作品も存在している。このように、自殺は不名誉なものであると解されてはならないのであるから、本件投稿者による原告イラスト及び原告動画の利用は、「キャラクターの名誉・品位」を「傷つける行為」(本件規約第4条2項⑵)には当たらないと解すべきである。
よって、本件投稿者による原告イラスト及び原告動画の利用は、本件規約によって許諾されているといえ、原告の原告イラスト及び原告動画に係る複製権侵害及び公衆送信権侵害の主張は理由がない。
2 争点2(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか)について
(原告の主張)
原告は、本件投稿者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求する予定であるが、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があり、原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。
(被告の主張)
争う。損害賠償請求を行うためには、氏名又は名称及び住所のみによって発信者を特定することが可能であるから、さらに電話番号を開示する必要はないのであり、その開示を受けるべき正当な理由は認められない。
3 争点3(本件各ログインに係る送信が「侵害関連通信」(プロバイダ責任制限法5条2項柱書)に該当するか)について
(原告の主張)
本件各ログインに係る送信は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則(以下「省令」という。)5条2号に掲げる「侵害情報の発信者が前号の契約に係る特定電気通信役務を利用し得る状態にするために…行った識別符号その他の符号の電気通信による送信」に該当する。
そして、次のとおり、本件各ログインに係る送信は、「侵害情報の送信と相当の関連性を有するもの」(省令5条柱書)に該当し、「侵害関連通信」(プロバイダ責任制限法5条3項)に該当する。
⑴ 相当の関連性が認められること
ア 省令5条は、侵害関連通信を「侵害情報の送信と相当の関連性を有するもの」と定めており、あえて幅をもった文言を用いている。省令5条の制定に先立ち、総務省は、投稿の前提となったログインに係る発信者情報に限って開示が認められるとする趣旨の総務省規則案(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則案)を公表していたが、これに対する意見募集結果を踏まえ、上記規則案を修正し、省令5条の制定に至った。
このような省令5条の制定経緯に照らせば、侵害情報の送信との結びつきがあり、権利侵害者の特定に資するログインに係る送信であれば、侵害情報の送信とログインに係る送信との間に「相当の関連性」が認められると解すべきであり、侵害情報の送信前のログインのみならず、侵害情報の送信後のログインであっても、それが当該侵害情報の発信者のものと認められるのであれば、侵害情報の送信との結びつきがあるといえ、権利侵害者の特定に資するといえるから、侵害情報の送信との「相当の関連性」があるというべきである。
イ これに対し、被告は、本件各ログインのうち、侵害情報送信後のログインについては、ログインを行ってからログアウトをするまでの間に侵害情報が送信されることはなく、侵害情報送信前のログインについては、本件ツイートと最も近接する本件ログイン6との間ですら、別紙ログイン経過一覧表の番号欄9記載のログイン(以下「本件直前ログイン」という。)のほか、被告以外の会社が管理する通信網を経由したログインが複数介在しているから、本件各ログインに係る送信と本件ツイートとの間に相当の関連性があるとはいい難いと主張する。
しかし、ツイッターの利用に際しては、厳重なアカウント管理や保護が図られていること、個人のアカウントについてパスワードを第三者に教えたり共有したりすることは通常あり得ないこと、本件アカウントの誕生日の設定や本件アカウントからされた投稿内容に照らし、本件アカウントは一人の者により管理されていることがうかがわれること、本件発信者情報に係るIPアドレスは、固定回線に割り当てられたIPアドレスであることからすると、本件投稿者と本件各ログインをした者は同一人物であると認められる。
また、本件ツイートの直前にされたログインは、本件直前ログインであるところ、本件直前ログインに係る発信者情報は、被告における保存期間満了により消去されているから、他のログイン情報により発信者を特定するしかない。
さらに、本件直前ログインも、本件各ログインも、いずれも被告が提供するインターネットサービスを利用してされているのにもかかわらず、本件直前ログインの記録が残っていないという偶然の事情をもって本件投稿者の特定の途を閉ざすことは、被害者の救済を図ったプロバイダ責任制限法5条2項の趣旨を没却するといえる。
加えて、別紙ログイン経過一覧表の番号欄2、3、6、11、12、16及び18記載のログインは、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、さくらインターネット株式会社又はAmazon Web Services,LLCが管理する通信網を経由したログインであり、いわゆるソーシャルログインであることがうかがわれ、投稿とは無関係にされたものであるから、それらのログインの存在が本件各ログインに係る送信と本件ツイートとの間の相当の関連性を否定する事情とはならない。
よって、被告の上記主張は理由がない。
⑵ その他の被告の主張について
被告は、本件ツイートに「Twitter for iPhone」の表示がされていることをもって、本件ツイートが携帯電話回線向け電気通信役務を利用してされたものであると主張する。
しかし、上記の表示は、iPhone向けアプリケーションを利用してツイートを行った場合に表示されるものであり、携帯電話回線向け電気通信役務を利用してされた投稿に限定してされるものではない。
したがって、本件ツイートが携帯電話回線向け電気通信役務を利用してされたとはいえず、被告の上記主張は理由がない。
(被告の主張)
⑴ 相当の関連性が認められないこと
ア 本件ログイン1ないし5について
一般に、侵害情報送信後のログインは、侵害情報の送信の直前に行われたログインとは異なり、ログインを行ってからログアウトをするまでの間に侵害情報が送信されることはないため、侵害情報送信後のログインに係る送信と侵害情報の送信との間に相当の関連性があるとはいい難い。
本件ログイン1ないし5は、本件ツイートの後にされたログインであり、かつ、本件ツイートから相当時間が経過した後のログインであることからすると、本件ログイン1ないし5に係る送信と本件ツイートとの間に相当の関連性はないといわざるを得ない。
イ 本件ログイン6ないし8について
本件ログイン6ないし8は、本件ツイートの前にされたログインではあるが、本件ツイートと本件ログイン6との間には、本件直前ログインのほか、さくらインターネット株式会社が管理する通信網を経由したログイン(別紙ログイン経過一覧表の番号欄12記載のログイン)及びAmazon Web Services,LLCの管理する通信網を経由したログイン(同一覧表の番号欄11記載のログイン)が存在しているのであり、本件ログイン6ないし8に係る送信と本件ツイートの間に相当の関連性があるとはいい難い。
ウ 小括
したがって、本件各ログインに係る送信と本件ツイートとの間に相当の関連性があるとは認められない。
⑵ 本件各ログインに係る送信が固定回線向け電気通信役務によるものであること
プロバイダ責任制限法5条3項は、「侵害関連通信」について、侵害情報の発信者が当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用するために行った当該特定電気通信役務に係る識別符号その他の符号の電気通信による送信である旨規定している。
本件直前ログインは、被告の携帯電話回線向け電気通信役務を利用してされていること、本件ツイートには「Twitter for iPhone」の表示があることからすると、本件ツイートの際に利用された特定電気通信役務は携帯電話回線向け電気通信役務であるといえる。
そして、「侵害関連通信」に該当するのは、本件発信者が本件ツイートに係る特定電気通信役務(すなわち、携帯電話回線向け電気通信役務)を利用するために行った、「当該」特定電気通信役務に係る識別符号その他の符号の電気通信による送信でなければならないから、本件における「侵害関連通信」は、携帯電話回線向け電気通信役務を利用してされたログインに係る送信に限定される。
しかし、本件各ログインに係る送信は、いずれも固定回線向け電気通信役務によるものであり、携帯電話回線向け電気通信役務によるものではないから、侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用したとはいえず、「侵害関連通信」に該当しない。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件ツイートにより原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について
⑴ 本件投稿者による原告の著作権侵害について
著作権法が、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいい(著作権法2条1項1号)、複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいう(同項15号)旨規定していることからすると、同法21条の著作物の複製とは、当該著作物に依拠して、その創作的表現を有形的に再製する行為をいうものと解される。
前記前提事実⑷のとおり、本件画像は、原告動画の静止画像(甲18)に、涙や首つり縄の絵柄と「死ぬA」というテキスト等を付加して画像を作成してはいるものの、本件画像と原告動画の静止画像(甲18)は、イラストの①頭頂部からうさぎの耳が生えているデザインとなっている点、②左側頭部の三つ編みの上部と右側頭部の三つ編みの下部にそれぞれニンジンが1本ずつ挟まっているデザインとなっている点、③首元にウサギを模したマフラー又はショールを身に着けたデザインとなっている点、④目の色が飴色とワインレッドのグラデーションである点、⑤眉毛が円形に近い形状となっている点、⑥髪色はトップから毛先にかけて白色からややくすんだ水色へのグラデーションとなっており、頭部のサイドが白色と水色の三つ編みとなっている点などで共通しており、本件画像から、原告動画の表現上の本質的特徴を直接感得することができる。
そして、本件画像の掲載を含む本件ツイートの投稿は、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に本件画像に係る情報を記録することによって、公衆の求めに応じて自動的に本件動画の送信を可能にする行為であると評価できる。
したがって、本件ツイートの投稿は、少なくとも原告動画に係る原告の公衆送信権を侵害するものというべきである。
⑵ 本件投稿者による原告動画の利用に原告の許諾があるといえるか
前記前提事実⑶のとおり、原告は、インターネット上において、本件規約を公表し、原告が著作権を有する著作物を使用して二次的創作をすることを一般に許諾するとともに、その利用許諾の条件として、「公序良俗に反する行為や目的、暴力的な表現、反社会的な行為や目的、特定の信条や宗教、政治的発言のために利用しないこと」(本件規約4条2項⑶)を定めている。
本件画像は、「A」のキャラクターが自殺をしようとしているところをYouTubeで配信することを予告するかのような表現を内容とするものといえるところ(前記前提事実⑷)、このような表現は、原告イラストに係るキャラクターの死を引き起こす表現であるから、「暴力的な表現」に該当するといえ、本件投稿者による原告動画の利用は、本件規約の利用許諾条件を満たしているとはいえない。
したがって、本件投稿者による原告動画の利用に原告の利用許諾があったとは認められない。
⑶ 小括
以上によれば、本件ツイートは、少なくとも原告の原告動画に係る公衆送信権を侵害するものであって、違法性を阻却する事由があることもうかがわれないから、本件ツイートにより原告の権利が侵害されたことが明らかであると認められる。
2 争点2(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか)について
原告は、本件投稿者に対して損害賠償を求める訴えを提起するため、本件発信者情報の開示を求めているものと認められ(弁論の全趣旨)、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するといえる。
これに対して、被告は、発信者を特定するためには、氏名又は名称及び住所に関する情報があれば必要かつ十分であり、電話番号に関する情報は不要であるから、電話番号の開示を受けるべき正当な理由があるとはいえないと主張する。
しかし、プロバイダ責任制限法5条2項により開示される「当該侵害関連通信に係る発信者情報」には、「侵害情報の発信者の特定に資する情報」(同法2条6号)として、「侵害関連通信に係る者の氏名又は名称」(省令2条1号)及び「侵害関連通信に係る者の住所」(同条2号)のみならず、「侵害関連通信に係る者の電話番号」(同条3号)が挙げられている。そして、被告が把握する「侵害関連通信に係る者」の氏名又は住所が虚偽であった場合や同人が転居していた場合等、「氏名又は名称」及び「住所」だけでは「侵害関連通信に係る者」を十分に特定することができず、「電話番号」が特定に資する場合も想定され得る。これらの点に鑑みると,本件において,原告には、電話番号の開示を受けるべき正当な理由があるというべきである。
3 争点3(本件各ログインに係る送信が「侵害関連通信」(プロバイダ責任制限法5条2項柱書)に該当するか)について
⑴ 相当の関連性について
ア プロバイダ責任制限法5条3項が、発信者情報開示の対象となる侵害関連通信について、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものであることを明示して求めるとともに、省令5条柱書及び同2号が、侵害情報の送信と相当の関連性を有するログインに係る送信に限って上記侵害関連通信と定めているのは、権利侵害を伴う投稿をした時の通信とは異なるログイン時の通信から把握される発信者情報を開示の対象とすることにより、権利侵害を伴う投稿とは関連性の薄い他の通信の秘密やプライバシーを侵害するおそれが高くなる上、関連電気通信役務提供者に過度な負担を強いるおそれがあることから、開示の対象とするログイン時の通信を、侵害情報の発信者の特定のために必要最小限度のものに限定する趣旨と解される。この趣旨に照らせば、ログインに係る送信と侵害情報の送信とが相当の関連性を有するか否かは、当該ログインに係る送信と当該侵害情報の送信との時間的近接性、当該ログインに伴って行われた投稿内容と当該侵害情報の内容の一連性ないし一体性の有無のほか、当該侵害情報の発信者を特定する他の手段、方法等の有無を総合考慮して判断すべきと解するのが相当である。
これを前提として、本件各ログインに係る送信が本件ツイートとの間で相当の関連性を有するかを検討すると、前記前提事実⑹の別紙ログイン経過一覧表記載のとおり、本件ツイートに、時間的に最も近接するログインは本件ログイン5であるところ、同ログインは、本件ツイートからわずか30分後にされたものであることが認められ、時間的に極めて近接しているといえる。また、本件においては、他に本件発信者を特定する適切な手段があるとは認められない。これらの事情に鑑みれば、本件ログイン5に伴って行われた投稿の有無及びその内容が明らかではないことを考慮しても、本件ログイン5に係る送信と本件ツイートとの間に相当の関連性を有すると認めるのが相当である。
他方で、本件ログイン1ないし4及び6ないし8については、本件ログイン5ほどの時間的近接性がないこと、本件ログイン5に係る発信者情報の開示を認めることにより、本件投稿者を特定することは可能であることからすると、これらのログインに係る送信と本件ツイートの間に相当の関連性があるとは認められない。
イ これに対し、被告は、侵害情報が送信された後になされたログインに係る発信者情報の開示については、当該侵害情報の送信の直前に行われたログインに係る発信者情報とは異なり、ログインを行ってからログアウトをするまでの間に侵害情報が送信されることはないため、侵害情報の送信との相当の関連性があるとはいい難いと主張する。
しかし、省令5条2号は、同条1号及び4号の規定とは異なり、「相当の関連性」が認められる限り、侵害情報の送信の前後を問わず、ログイン等通信が「侵害関連通信」に該当し得ることを前提としているから、プロバイダ責任制限法が開示の対象を侵害情報の送信をするためにされたログイン等の通信から把握される情報に限定していると解することは相当ではなく、侵害情報送信の後になされたログイン等の通信から把握される情報も、開示の対象となり得ることを前提としていると解するのが相当である。
したがって、本件ログイン5に係る送信が侵害情報の送信後にされたことのみを理由として、本件ツイートとの相当の関連性が否定されるものではなく、本件において認められる個別具体的事情のもとにおいては、被告の主張を採用することはできないというべきである。
⑵ 被告のその他の主張について
被告は、本件ツイートが携帯電話向け電気通信役務を利用してされているのに対し、本件各ログインに係る送信は固定回線向け電気通信役務を利用してされているから、侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用してされたとはいえず、プロバイダ責任制限法5条3項所定の「侵害関連通信」に該当しないと主張する。
しかし、プロバイダ責任制限法5条2項の趣旨が、電気通信設備を用いて侵害関連通信を媒介等したとは認められるものの侵害情報を流通させた特定電気通信を媒介等したかどうかは不明である電気通信役務提供者に対しても開示請求を可能にする点にあることに鑑みると、同項に規定する「侵害関連通信」について定義する同条3項が、侵害情報を流通させた電気通信役務提供者が誰であるかを特定することを要求するものではないことはもちろんのこと、ましてや、携帯電話向け通信役務であるか、固定電話向け通信役務であるかなど、侵害情報を流通させた電気通信役務の種類を特定することを侵害関連通信該当性の判断の前提として要求していると解することはできないというべきである。
また、被告の主張するとおり、本件ツイートが、被告の携帯電話通信役務を利用してされたものであれば、本件ログイン5に係る送信と本件ツイートとは、いずれも被告という同一の特定電気通信役務提供者の電気通信役務を利用してされたものであるといえ、前記⑴のとおり本件ログイン5に係る送信と本件ツイートとに時間的近接性が認められることも考慮すると、両者には密接な関連性があるといえ、このような場合であっても電気通信役務の種類が違うことを理由に侵害関連通信該当性を否定して発信者情報の開示を認めないことは、法の趣旨に反するものといわざるを得ない。
したがって、被告が主張するとおり、本件ツイートが携帯電話向け電気通信役務を利用してされているのに対し、本件各ログインに係る送信は固定回線向け電気通信役務を利用してされているとしても、本件ツイート及び本件ログイン5に係る送信が、いずれも、被告の提供する電気通信役務及びツイッター社の提供するツイッターサービスを利用してされている本件においては、侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用するために行った、「当該」電気通信役務に係るログインに係る送信(プロバイダ責任制限法5条3項)であるといえ、侵害関連通信に当たる。
よって、この点に関する被告の主張は採用することができない。
4 結論
以上の次第で、原告の請求は主文の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
(裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 バヒスバラン薫)
別紙