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裁判年月日 令和 3年 5月14日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平31(ワ)11049号
事件名 共通義務確認請求事件
裁判結果 却下 上訴等 控訴 文献番号 2021WLJPCA05149003
裁判経過
控訴審 令和 3年12月22日 東京高裁 判決 令3(ネ)2677号
出典
裁判所ウェブサイト
判時 2526号20頁<参考収録・原審>
評釈
瀬戸和宏・消費者法ニュース 129号150頁
浅井弘章・銀行法務21 872号64頁
浅井弘章・銀行法務21 882号37頁
裁判年月日 令和 3年 5月14日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平31(ワ)11049号
事件名 共通義務確認請求事件
裁判結果 却下 上訴等 控訴 文献番号 2021WLJPCA05149003
東京都千代田区〈以下省略〉
原告 特定非営利活動法人消費者機構日本
同代表者代表理事 A
同訴訟代理人弁護士 仲居康雄
瀬戸和宏
北後政彦
安藤博規
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 株式会社ONE MESSAGE
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 寺島哲
フィリピン共和国メトロマニラ モンテンルパ市〈以下省略〉
被告 Y1
同訴訟代理人弁護士 鈴木勝博
主文
1 本件訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告株式会社ONE MESSAGE及び被告Y1が,別紙対象消費者目録記載(1)の対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の金銭支払義務を連帯して負うことを確認する。
(1) 被告株式会社ONE MESSAGEと別紙対象消費者目録記載(1)の対象消費者との間で締結された別紙商品等目録記載(1)の商品等に係る売買契約に基づき支払われた売買代金相当額並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の不法行為に基づく損害賠償の支払義務
(2) 別紙商品等目録記載(1)の商品等の売買代金の各支払日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合(平成29年法律第44号による改正前の民法404条所定の利率。以下同じ。)による遅延損害金の支払義務
2 被告株式会社ONE MESSAGE及び被告Y1が,別紙対象消費者目録記載(2)の対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の金銭支払義務を連帯して負うことを確認する。
(1) 被告株式会社ONE MESSAGEと別紙対象消費者目録記載(2)の対象消費者との間で締結された別紙商品等目録記載(2)の商品等に係る売買契約に基づき支払われた売買代金相当額並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の不法行為に基づく損害賠償の支払義務
(2) 別紙商品等目録記載(2)の商品等の売買代金の各支払日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務
3 被告株式会社ONE MESSAGE及び被告Y1が,別紙対象消費者目録記載(3)の対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の金銭支払義務を連帯して負うことを確認する。
(1) 被告株式会社ONE MESSAGEと別紙対象消費者目録記載(3)の対象消費者との間で締結された別紙商品等目録記載(3)の商品等に係る売買契約に基づき支払われた売買代金相当額並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の不法行為に基づく損害賠償の支払義務
(2) 別紙商品等目録記載(3)の商品等の売買代金の各支払日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務
第2 事案の概要
本件は,消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(以下「法」という。)65条に基づき内閣総理大臣から認定を受けた特定適格消費者団体である原告が,別紙商品等目録記載(1)ないし(3)の商品等(以下「本件各商品等」という。)に係る消費者契約の相手方である事業者である被告株式会社ONE MESSAGE(以下「被告会社」という。)及び上記消費者契約の債務の履行をする事業者であり,上記消費者契約の締結について勧誘を助長する事業者である被告Y1(以下「被告Y1」という。)に対し,被告らが別紙対象消費者目録記載(1)ないし(3)の対象消費者(以下「本件各対象消費者」という。)に対し本件各商品等につき虚偽又は実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をして本件各商品等を販売するなどしたことが不法行為に該当すると主張して,法3条1項4号に基づき,不法行為に基づく被告らの損害賠償債務として,上記消費者契約に基づき支払われた売買代金相当額並びに本件各対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額の金銭の支払義務を負うことの確認を求めるとともに,上記消費者契約に基づき売買代金が支払われた各日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うことの確認を求める事案である。
1 前提事実(争いのない事実のほかは,各項に掲記の証拠又は弁論の全趣旨により認める。)
(1) 原告は,平成28年12月27日,内閣総理大臣から法65条に基づき認定を受けた特定適格消費者団体である(甲1)。
(2)ア 被告会社は,本件各商品等の売主である。
イ 被告Y1は,本件各商品等の購入を勧誘するウェブサイトにおいて本件各商品等の説明をし,また,別紙商品等目録記載(1)及び(2)の○○DVD5巻セット(以下「○○」という。)に出演するなどした者である(甲3ないし6の2,乙B1の1ないし5,乙B5の1ないし5,乙B6の1ないし3,乙B7の1ないし3)。
(3) 被告会社は,平成28年10月1日以降,○○の販売価格を4万9800円(税込み)又は5万9800円(税込み)とし,別紙商品等目録記載(2)の商品等(以下「VIPクラスセット」という。)の販売価格を9万8000円(税込み。販売価格の内訳は,○○が4万9800円(税込み)又は5万9800円(税込み)であり,別紙商品等目録記載(2)のVIPクラス(以下「VIPクラス」という。)が4万8200円(税込み。○○の販売価格が4万9800円(税込み)である場合の販売価格である。)又は3万8200円(税込み。○○の販売価格が3万9800円(税込み)である場合の販売価格である。)である。)とし,別紙商品等目録記載(3)の商品等(以下「パルテノンコース」という。)の販売価格49万8000円(税込み)として,それぞれ販売した(甲5の1・2,甲8,9)。
2 争点
(1) 本案前の争点
ア 多数性について
(原告の主張)
多数性は,一般的な事案では数十名程度であれば足りると考えられるところ,本件各商品等の各購入者ともいずれも数十名以上いる。
(被告会社の主張)
本件各商品等の各購入者がいずれも数十名以上いることは認める。なお,○○の購入者は約4000人,VIPクラスセットの購入者は約1500人,パルテノンコースの購入者は約1200人であった。
(被告Y1の主張)
多数性の要件を判断するに当たっては,既に訴訟提起を行っている者を含めること,既に被害回復が図られた者を含めること,何ら苦情もなくむしろ購入商品に満足している旨を回答し,権利行使する意思のない者を含めることは妥当でないところ,本件では,苦情を申し立てている者が相当多数いるとは認められず,本件各商品等を購入した者の一部については被告会社及び被告Y1を被告とした訴訟を通じて被害回復がされていることから,「消費者契約に関して相当多数の消費者」がいるとはいえない。
イ 支配性について
(原告の主張)
(ア) 損害等
損害は,本件各商品等の代金相当額及び特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用相当額であるから,その認定,判断は簡易確定手続における書面審理で迅速になし得る。
本件各商品等の購入者が仮想通貨への投資を行ったことで何らかの利益を得ていたとしても,本件各商品等を購入したことにより生じた損害と購入者が自らの才覚あるいは何らかの偶然で得た利益との間には相当因果関係はなく,損益相殺の対象とはならない。パルテノンコースの購入者に対して合宿の開催等の一部の履行の提供があったとしても,パルテノンコースの主な内容はハイスピード自動AIシステムであり,その他の内容は当該システムに付加されたサービスにすぎず,そのような付加されたサービスが履行されたとしても損益相殺すべき価値のある利益はない。
仮に本件各対象消費者が損益相殺の対象となる利益を得ていたとしても,○○の勧誘は,その内容が実際の○○の内容と著しくかい離し,虚偽,少なくとも実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調したものであり,特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)に違反し刑事罰の対象になり得るもので,その違法性は重大である。本件で損益相殺を認めることは,このような違法性の極めて高い悪質な行為を行った者に利益を残す結果となるに等しく,損益相殺をすべきでない。
仮に損益相殺をするとしても,簡易確定手続の中で被告らが本件各対象消費者の得た利益を主張立証するだけであり,支配性の要件に影響はない。
(イ) 因果関係
本件各対象消費者は,本件各商品等の購入者であり,ウェブサイトを通じて提供された虚偽又は著しく誇大な効果を強調した説明を真実だと誤信したことで,本件各商品等を購入したのであるから,個別性はほとんどなく,簡易確定手続において,書面審理で迅速になし得ない事態は想定できない。
(ウ) 過失相殺
○○の勧誘内容から○○の実際の内容を推測するのは困難である。また,パルテノンコースの目玉となるハイスピード自動AIシステムと○○の内容とは全く異質であるから,○○から当該システムの虚偽性を推測することはできない。さらに,○○は日本初公開の最新テクノロジーという内容であるから,投資経験の有無は問題とならない。パルテノンコースでは,AI(人工知能)があなたの代わりに24時間365日,あなたのお金を増やし続けてくれる日本初公開のシステムというものであるから,投資経験の有無は問題とならない。そのため,本件各対象消費者に過失はない。
上記(ア)のとおり,○○の勧誘は,その内容が実際の○○の内容と著しくかい離し,虚偽,少なくとも実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調したものであり,特商法に違反し刑事罰の対象になり得るもので,その違法性は重大である。本件で過失相殺を認めることは,このような違法性の極めて高い悪質な行為を行った者に利益を残す結果となるに等しく,過失相殺をすべきでない。
仮に過失を認定するとしてもその過失は,本件各対象消費者に共通であるから,本件訴訟において一律に判断されれば済むことである。
そのため,支配性の要件を欠くことはない。
(被告会社の主張)
消費者が多数いる場合,購入した際の事情,勧誘に関する認識等は各人それぞれ異なるはずである。
(被告Y1の主張)
(ア) 損害等
本件各対象消費者の中は,実際に仮想通貨を購入し,その値上がり益を取得した者が多数いる。また,本件各対象消費者には特典としてノアコインとエイダコインという仮想通貨のプレセールの説明をし,かつ,ノアコインに関しては代理店の権利を与えているため,本件各対象消費者は,ノアコインとエイダコインを購入しその値上がり益を取得し,かつ,代理店の権利によりノアコインを紹介して成果報酬を得ている。そして,当該値上がり益等を得たのは,○○及びパルテノンコースの購入を原因とするのであり,その値上がり益等の利益は損害から控除されるべきであり,その控除額は個々の対象消費者ごとに判断する必要がある。その判断のためには,個々の対象消費者ごとに投資に用いた銀行口座,仮想通貨のウォレット等の提出を受けてその利益を確認した上,尋問を行って投資の収支等を明らかにする必要がある。
また,パルテノンコースについては,合宿の開催及びその後のLINEでの相談というサービスの提供をしているのであり,パルテノンコースの価格全額が損害とはならない。
したがって,仮に共通義務に対応する本件各対象消費者の損害発生原因が認められたとしても,個々の対象消費者ごとに損害の有無や損害額についての認定,判断は複雑であり,簡易確定手続において個々の消費者の対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であり,支配性の要件を満たさない。
(イ) 因果関係
ハイスピード自動AIシステムを中心としたパルテノンコースの購入者の大多数は,簡単な初期設定だけでAIが自動的にお金を増やし続けることから購入したものではなく,当該システムを用いれば,単に運用者が経験により判断するシステムと比較してより大きな投資の成果が見込めると考えたことから購入したのであり,その証左として,パルテノンコースの購入者の大多数はパルテノンコース自体に満足している。そのため,原告が主張する不法行為と損害との間に因果関係が認められない対象消費者が多く,個々の消費者ごとに認定しなければならず,支配性の要件を満たさない。
そして,パルテノンコースの購入者は○○を購入した者であるところ,パルテノンコースの購入者が○○やVIPクラスについて苦情を訴えることなくパルテノンコースに満足していたというのであるから,○○についても満足していたといえる。そのため,原告が主張する不法行為と損害との間に因果関係が認められない対象消費者が多く,個々の消費者ごとに認定しなければならず,支配性の要件を満たさない。
(ウ) 過失相殺
○○の勧誘内容は実際の○○の骨子と整合している。仮に当該勧誘内容の中に誰でも簡単・確実に多額の利益が確保できるようなものがあったとしても,その勧誘内容全体をみれば,容易に実際の○○の内容の骨子は推測できるものであり,簡単・確実に多額の利益が確保できるという勧誘をもって○○を購入した者には一定の過失がある。また,パルテノンコースは○○の購入者に限定して案内したもので,パルテノンコースの購入者は,○○発売前の○○に関する全4回の説明動画を視聴し,仮想通貨の特徴や投資についての十分な知見を得た後にパルテノンコースを購入しているのであって,このような顧客の属性は過失相殺の事情として斟酌されるべきである。さらに,○○を購入する前に実際に仮想通貨に係る投資の経験があるかどうか,FX等の投資経験があるかどうかという顧客の属性は,過失相殺の事情として斟酌されるべきである。
したがって,仮に共通義務に対応する本件各対象消費者の損害発生原因が認められたとしても,個々の消費者ごとに過失相殺についての認定,判断は複雑であり,簡易確定手続において個々の消費者の対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であり,支配性の要件を満たさない。
ウ 被告Y1の被告適格について
(原告の主張)
被告Y1は,本件各商品等を開発し,その販売を被告会社に提案したものである。また,○○で提供される情報の提供者である。さらに,本件各商品等の一部とされる各セミナー,合宿,サポートなどのサービスの提供者である。これらの事情からすれば,被告Y1は,「債務の履行をする事業者」又は「勧誘を助長する事業者」に該当する。
○○の勧誘は,消費者が事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような方法により不特定多数の消費者に向けて働き掛けを行ったものである。そうすると,被告Y1は,○○及びVIPクラスセットの消費者契約の締結について「勧誘」した事業者である。また,被告Y1は,○○及びVIPクラスセットの申込者に対して,パルテノンコースの勧誘をしており,これは不特定多数人に向けた宣伝ではなく,「勧誘」をした事業者に当たる。
(被告Y1の主張)
被告Y1は,○○に関し,○○を不特定多数人に向けて宣伝した者にすぎないので「勧誘する事業者」に当たらず,○○を自ら作成して被告会社に譲渡した者ではないので「勧誘を助長する事業者」に当たらず,○○の販売を履行する者でもないので「債務の履行をする事業者」にも当たらない。
また,被告Y1は,パルテノンコースに関し,ハイスピード自動AIシステムを不特定多数人に向けて宣伝した者にすぎないので「勧誘する事業者」に当たらず,当該システムを自ら作成して被告会社に譲渡した者ではないので「勧誘を助長する事業者」に当たらず,当該システムの販売を履行する者でもないので「債務の履行をする事業者」にも当たらない。
そのため,被告Y1には共通義務確認訴訟の被告適格がない。
(2) 本案の争点
ア 被告らの勧誘の違法性の有無
(原告の主張)
(ア) ○○の勧誘は,○○を購入しさえすれば,誰でも簡単・確実に多額の利益が確保できるような期待を抱かせる内容であった。このような勧誘内容にもかかわらず,○○の内容は,仮想通貨の仕組み,必要性,日本で普及しない理由といった制度の概要の説明,仮想通貨の稼ぎ方として購入時と売却時の差額で利益を確保する,取引所によってレートが異なるのでその差額で利益を得る,未公開の段階で購入し市場公開時との差額で稼ぐといった抽象的説明,投資の王道としてパルテノン式に20本程度の投資・収益の柱を立てリスクを分散し利益を確保するという具体性のない説明であり,誰でも簡単・確実に多額の利益が確保できるような内容ではなかった。そのため,上記勧誘は,虚偽又は著しく誇大な効果を強調して説明したもので違法であり,不法行為となる。
また,その価格について,「100万円でも安すぎる」などと説明しつつ,7万円とした上で,先行販売期間中は特別割引価格4万9800円(税込み)などと説明していたが,実際には,5万9800円(税込み)で販売することもあり,7万円で販売した実績もなく,有利誤認を招くものであった。そのため,販売実績のない価格との比較をしてその価値を誤らせたもので違法であり,不法行為となる。
(イ) VIPクラスの勧誘は,○○と同じく,誰でも簡単・確実に多額の利益が確保できるような期待を抱かせる内容であった。このような勧誘内容にもかかわらず,VIPクラスの基となる○○の内容は勧誘内容に反した内容であり,VIPクラスによっても,誰でも簡単・確実に多額の利益が確保できるような情報は得られない。そのため,上記勧誘は,虚偽又は著しく誇大な効果を強調して説明したもので違法であり,不法行為となる。
また,その価格について,特典だけでも合計60万円相当と説明していながら,実際には,同額で販売された実績はなく,4万8200円(税込み)又は3万8200円(税込み)で販売していたもので,有利誤認を招くものであった。そのため,販売実績のない価格との比較をしてその価値を誤らせたもので違法であり,不法行為となる。
(ウ) パルテノンコースの勧誘は,パルテノンコースは被告Y1がイスラエルの企業と組んで開発したもので,最先端の人工知能と金融工学の技術を使い開発されたハイスピード自動AIシステムであり,簡単な初期設定さえ済ませれば,あとはAIが24時間365日,お金を増やし続け,誰でも仮想通貨で稼ぐことができ,実証結果も15名の5万円の資金が10日で平均40万円になったという内容であった。つまりは,最新のAI技術により誰でも簡単・確実に多額の利益が得られるという内容であった。このような勧誘内容にもかかわらず,当該システムは,パルテノンコースを使用している他のトレーダーの行っている取引をなぞって取引をするだけのシステムであり,イスラエルの企業と組んで開発したり,最先端の人工知能と金融工学の技術を使い開発したりするようなものではない上,当該システムを利用するに当たっては投資する通貨及びトレーダーを選び,そのトレーダーをフォローする期間,1回のトレードで投資する金額及び限度額を設定する必要があり,投資判断に重要な要素を考慮して初期設定をしなければならず,簡単な初期設定とはいえない上,AIが24時間365日,お金を増やし続けるというものとはいえない。また,当該システムを利用した取引内容は,仮想通貨を対象としたものではなく,法定通貨を指標としたバイナリーオプション取引であり,マイナス取引が出る可能性のあるものであった。
さらに,その価格について,ハイスピード自動AIシステムは1000万円相当の価値があるが,本来の価値の20分の1の49万8000円(税込み)で販売する,1日7万円稼げるので7日で元が取れると説明して販売していた。しかしながら,当該システムが極めてずさんなものであり,到底1000万円もの価値があるはずもなく,値引きなど安価と誤信させるものであった。
したがって,上記勧誘は,重要な事項につき,虚偽又は著しく誇大な効果を強調して説明したもので違法であり,不法行為となる。
(エ) 被告会社は,本件各商品等を販売するに当たって,上記のとおり虚偽又は著しく誇大な効果を強調した勧誘をし,購入者をして本件各商品等の効果や価値を誤信させて販売したものであり,購入者に対し,不法行為責任を負う。
(オ) 被告Y1は,被告会社が本件各商品等を販売するに際し,販売契約上の債務の内容の一部とされるセミナー,合宿,サポートなどの履行をする事業者であり,被告会社と協力して,本件各商品等の販売の勧誘に際し,虚偽又は著しく誇大な効果を強調した説明をして,勧誘の動画に出演し,作成を指導し又は作成に協力するなどしたもので,被告会社と共同不法行為責任を負う。
(被告会社の主張)
被告らは,本件各商品等につき,事実に基づいた効果を説明したのであって,虚偽又は著しく誇大な効果を強調して説明した上で販売・勧誘をしたものではない。
○○及びVIPクラスの勧誘内容は,誰でも簡単・確実に多額の利益が確保できるような期待を抱かせるものではない。いち早く仮想通貨の取引に参入することで大きな利益を得る可能性が高まる手法やノウハウの販売・勧誘をしたにすぎないのであって,誰でも確実に利益が得られるなどと保証したことはない。
ハイスピード自動AIシステムは,AI学習機能が付いたシステムを使って専従的に取引を行っている者と同一の取引を自動で行うことができるシステムであり,説明内容は虚偽又は著しく誇大な効果を強調して説明したものではない。当該システムを利用した取引の勝率は64%や70から80%台のときもあり,当該システムを利用した取引は,短期的には負け続けることもあるが,長期的にみれば確実に利益が出るものである。当該システムを利用した取引の対象には,法定通貨のみならず,仮想通貨を対象としたバイナリーオプション取引も含まれていた。
また,○○につき,100万円するものを割引して販売しているなどとは説明していない。VIPクラスにつき,限定特典とされている内容は仮にセミナー等の少数者を対象とした形で単体で売り出すとしたらその程度の金額をもらってもおかしくないといったにすぎず,インターネットでより多くの対象者宛てに販売するために金額を抑えることができたと説明している。パルテノンコースにつき,ハイスピード自動AIシステムが1000万円相当の価値があるとはいっていない。そのため,有利誤認を招くものではない。
(被告Y1の主張)
(ア) ○○の勧誘の説明内容の要は,○○は,その発売当時仮想通貨による稼ぎ方を解説する書籍等が皆無であった状況の中で,○○により被告Y1から仮想通貨と詐欺コインの見分け方といった情報を含む仮想通貨関連の質の高い情報を得て,被告Y1が教授する仮想通貨による稼ぎ方を実践すれば仮想通貨のバブルに乗って利益が得られるということにあり,単に誰でも簡単・確実に多額の利益が得られることを要とした説明はしていない。また,仮に○○の勧誘の説明内容が誰でも簡単・確実に多額の利益が得られるというものであると解釈されたとしても,○○の内容は仮想通貨の革新性及び今後の将来性を非常に詳細に説明し,それを前提として法定通貨と異なる仮想通貨特有の稼ぎ方を明瞭な形で提示し,詐欺的な仮想通貨と本物の仮想通貨の見分け方を詳細に示すものであり,かつ,その具体的内容を裏付けるその後の仮想通貨の価格の推移からすれば,○○の内容に沿って仮想通貨への投資等を行えば,誰でも簡単に多額の利益を確保できたのであって,説明内容と○○の内容に齟齬はない。
被告Y1は,○○の勧誘の説明内容の中で,○○の価格の設定過程を詳細に述べたにすぎず,同種の仮想通貨投資関連教材等の値段を引用して比較しているものでもなく,○○の内容からしても価格が高額とはいえない。そのため,○○の価格の説明は購入者の価値判断を誤らせるものではない。
(イ) VIPクラスの勧誘の説明内容は,被告Y1から,LINEにより仮想通貨であるノアコイン等に関する新しい情報を受け取ることができ,バースデーセミナーにVIP席で参加することで仮想通貨関連の要人から情報を得たり人脈を作ったりすることができるというものであり,○○の内容と直接関連するものではない。そして,VIPクラスの購入者には,ノアコインやエイダコインのプレセールの情報等の仮想通貨に関する最新情報を付与し,かつ,バースデーセミナーに招待しており,説明内容とVIPクラスの内容に齟齬はない。
被告Y1は,VIPクラスの勧誘の説明内容の中で,VIPクラスの価格の設定過程を詳細に述べたにすぎず,著名人のセミナー代等を引用しているものではなく,一般の投資関連のセミナー代等と比べてその額も高額とはいえない。そのため,VIPクラスの価格の説明は購入者の価値判断を誤らせるものではない。
(ウ) パルテノンコースの勧誘の説明内容の要は,パルテノンコースは,ハイスピード自動AIシステムを提供し,被告Y1が2日間の合宿により仮想通貨投資関連事項について直接指導し,被告Y1が合宿後3か月間はLINEを利用して購入者の仮想通貨関連の質問に答えるというものであり,大きな仮想通貨への投資効果を図るものであるというものであった。そして,パルテノンコースの購入者には,被告Y1が2日間の合宿を行い,仮想通貨投資を中心に直接指導をし,合宿後3か月間に購入者の投資に関する質問に応答していた。また,パルテノンコースの購入者には,当該システムを提供した。当該システムは,全自動トレードの場合に起こり得る予期せぬリスクに対応するために4名のプロトレーダーが監視し,そのAI学習機能に基づいて仮想通貨に関するトレードを行い,購入者はそのトレーダーを選択して資金を投入すれば,そのトレーダーの取引と同じ取引を自動的に行うというものである。その取引の中にはマイナスとなるものもあるが,継続して行えばプラスとなり大きな利益をもたらす性能を持つシステムである。そのため,説明内容とパルテノンコースの内容に齟齬はない。
被告Y1は,パルテノンコースの勧誘の説明内容の中で,パルテノンコースの価格の設定過程を詳細に述べたにすぎず,同種の仮想通貨投資関連の投資教材やセミナー代等の値段を引用して比較しているものではなく,実際のパルテノンコースの内容からしても価格が高額なものとはいえない。そのため,パルテノンコースの価格の説明は購入者の価値判断を誤らせるものではない。
イ 因果関係の有無
(原告の主張)
(ア) ○○及びVIPクラスセットを販売するに際して行われた勧誘の内容は,契約締結の意思を決定付ける重要な事実・要素であり,購入者は,違法な勧誘により誰でも簡単・確実に多額の利益が得られると誤信して,○○及びVIPクラスセットを購入し,その代金相当額の損害を被ったのであり,違法な勧誘と○○及びVIPクラスセットの代金相当額の損害は相当因果関係がある。
特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用は,対象消費者と特定適格消費者団体との授権契約によって決まるところ,特定認定に際し特定適格消費者団体は費用報酬規程を定める必要があり,それが消費者の利益の擁護の見地から不当なものでないことが特定認定の要件となっている。そのため,制度上,対象消費者は法に基づく制度の下で被害回復する場合には,特定適格消費者団体の報酬及び費用を支払うべきこととされている。したがって,違法な勧誘と特定適格消費者団体に対し支払うべき報酬及び費用相当額の損害は相当因果関係がある。
(イ) パルテノンコースを販売するに際して行われた勧誘の内容は,契約締結の意思を決定付ける重要な事実・要素であり,購入者は,違法な勧誘により,最新のAI技術により誰でも簡単・確実に多額の利益が得られると誤信して,パルテノンコースを購入し,その代金相当額の損害を被ったのであり,違法な勧誘とパルテノンコースの代金相当額の損害は相当因果関係がある。
また,上記(ア)と同様に,違法な勧誘と特定適格消費者団体に対し支払うべき報酬及び費用相当額の損害は相当因果関係がある。
(被告会社の主張)
否認する。
(被告Y1の主張)
否認する。
パルテノンコースの購入者は,簡単な初期設定だけでAIが自動的にお金を増やし続けることから購入したのではなく,ハイスピード自動AIシステムを用いれば,単に運用者が経験により判断するシステムと比較してより大きな投資の成果が見込めると考えたことから購入したのである。そのため,原告が主張する不法行為と損害との間に因果関係はない。
ウ 故意又は過失の有無
(原告の主張)
被告Y1は,○○の勧誘を内容とする動画に出演して,○○の購入の勧誘をした上,○○にも出演していたのであり,○○の内容及び性質を認識している。そして,○○の内容及び性質につき,虚偽又は著しく誇大な効果を強調して説明した場合には,その相手方において,その勧誘内容を真実であると誤信し,その者が○○を購入して,○○の代金相当額の損害を生じさせることを被告Y1は認識していた。そのため,被告Y1には,過失はもとより故意に欠けるところはない。
また,パルテノンコースの勧誘における説明内容は,パルテノンコースは,簡単な初期設定さえすれば,24時間365日,購入者のお金を増やし続けてくれるというものであるが,実際にはそのようなシステムは存在せず,被告Y1には,虚偽又は著しく誇大な効果を強調して説明して勧誘したことについての認識がある。そのため,被告Y1には,過失はもとより故意に欠けるところはない。
(被告会社の主張)
否認する。
(被告Y1の主張)
被告Y1は,その多彩な人脈から仮想通貨に関する最新の情報をつかむことができる立場にあることなどから,極めて合理的な根拠を基に○○及びパルテノンコースの説明をしていることから,故意又は過失がない。
エ 過失相殺
(被告Y1の主張)
上記争点(1)イにおける被告Y1の主張のとおり過失相殺の事情として斟酌されるべきものがあることから,少なくとも5割の過失相殺がなされるべきである。
(原告の主張)
上記争点(1)イにおける原告の主張のとおり本件各対象消費者に過失はない上,勧誘行為は違法性の極めて高い悪質なものであることから,過失相殺を認めるべきではない。
第3 裁判所の判断
1 認定事実
前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) ○○の購入者は約4000人,VIPクラスセットの購入者は約1500人,パルテノンコースの購入者は約1200人であった。
(2) 被告会社は,平成28年10月頃,○○及びVIPクラスセットの勧誘用のウェブサイトを設け,○○及びVIPクラスセットの勧誘及び販売を開始した。当該ウェブサイトには,次のとおりの勧誘文言が記載されていた。(甲3,4)
ア ハイパーミリオネア・Y1が参加者にわずか3ヶ月で16億円稼がせた“秘密の手続き”で日本人全員を億万長者にする歴史的プロジェクトが遂に始動!
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(3) ○○は,被告Y1が仮想通貨について講演する内容が収められている。○○の中で,仮想通貨の稼ぎ方については,①安いときに買って高いときに売る方法,②アービトラージ,すなわち,仮想通貨のレートは取引所によって異なることからそのレートの差を利用して稼ぐ方法,③マイニングに参加して稼ぐ方法,④市場未公開の仮想通貨をプレセールの段階で購入して数年保持して稼ぐ方法,⑤市場未公開の仮想通貨の代理店となって報酬を得る方法,⑥仮想通貨の使用や取引をする上で必要となる商品をアフィリエイトにより紹介して広告報酬を得る方法,⑦仮想通貨に関するニュースメディアを作成して広告収入を得る方法,⑧セミナーを開催するなどしてその対価を稼ぐ方法などが紹介されている。市場未公開の仮想通貨につき,詐欺の手段となっている仮想通貨と本物の仮想通貨の見分け方として,本物の仮想通貨はプレセールの第1期から市場公開されるまで価格が2倍以上にならず,仮想通貨として必要性が明確になっていることが説明されている。その他に,仮想通貨と法定通貨の違い,仮想通貨の必要性は送金の手段という点にあること,仮想通貨の代表格であるビットコインの成立ちや普及状況等について説明されている。(乙B1の1ないし5,乙B5の1ないし5)
(4) 被告らは,平成28年12月4日,○○の購入者向けに,○○特別セミナーを開催した。また,平成29年○月○日,被告Y1のバースデーセミナーを開催し,VIPクラスセットの購入者を招待した。(甲3,4,乙B14,15)
(5) 被告会社は,○○及びVIPクラスセットの購入者に対して,パルテノンコースの内容を説明する動画を公開した。被告Y1は,当該動画の中で,パルテノンコースについて,「あなたをより確実に,より早く億万長者にするための一度限りの特別な提案です。」,「金融系のシステムが世界で最も進歩している国であるイスラエルのある企業との業務提携が実現し,日本初公開となるシステムを特別に提供することができるようになったのです。その名も「ハイスピード自動AIシステム」です。AI,つまり人工知能,その名のとおり人工知能があなたの代わりにものすごいスピードで資金を増殖させてくれる驚愕のシステムです。」,「このシステムを使うことによりあなたが暗号通貨で稼ぐスピードが2倍,3倍,さらには5倍,10倍とアップしてくのです。」,「あなたがハイスピード自動AIシステムを使ってお金を稼ぐためにやることは簡単な初期設定だけです。初期設定さえ済ませてしまえばあとはAI,つまり人工知能にお任せで大丈夫です。AIがあなたの代わりに24時間365日,あなたのお金を増やし続けてくれるのです。」,「僕があなたに直接指導する2日間の実戦形式の合宿を開催することにしたのです。」,「合宿後3カ月間,メールとLINEで徹底的にサポートさせていただきます。」と説明している。(甲5の1・2)
(6) パルテノンコースの購入者は,平成29年5月頃から,被告会社からハイスピード自動AIシステムの登録ページのURLを送付され,当該登録ページ内でメールアドレスとパスワードを設定することで,当該システムにログインできるようになった。当該システムにおける取引の運用資金の入金は,クレジットカードによって行う。当該システムによる取引の開始に当たっては,フォローするトレーダーと期間及び金額を設定する。その設定が終わると,フォローしたトレーダーと同様の取引がされる仕様となっている。フォローするトレーダーには,プロから素人まで存在するが,その中には学習型AIを使用して取引を行う「ZZ」というトレーダーがいた。(乙A7,8の1ないし3,乙A11)
ハイスピード自動AIシステムによる取引は,法定通貨や仮想通貨であるビットコインを指標としたバイナリーオプション取引を内容とするものである。バイナリーオプション取引とは,為替相場や株価指数などを対象に,予め決められた時点,期間の騰落を予測し,ある値よりも高いか低いか,一定の範囲に収まっているかなど,二者択一で選ぶ取引である。当該システムによる取引は,その勝率が常に100%であるということはなく,損失が出る可能性のある取引である。(甲11,乙A7,11)
(7) 被告らは,平成29年1月頃から同年2月頃,東京都,大阪府及び福岡県において,パルテノンコースの購入者に向けた合宿セミナーを開催した。(乙B8ないし13)
2 争点(1)ア(多数性)について
(1) 前記認定事実(1)及び(2)のとおり,○○の購入者は約4000人,VIPクラスセットの購入者は約1500人,パルテノンコースの購入者は約1200人であり,○○及びVIPクラスセットの販売開始時期が平成28年10月頃であることも併せみれば,別紙対象消費者目録記載(1)ないし(3)の対象消費者は,それぞれ約4000人,約1500人,約1200人存在していると認められる。そして,本件各対象消費者は,対象消費者による個別の訴訟によるよりも法の定める訴訟手続等を活用した方が審理の効率化が図られる程度に多数存在しているといえ,「相当多数の消費者」(法2条4号)であると認めるのが相当である。
(2) これに対し,被告Y1は,多数性の要件を判断するに当たって,既に訴訟提起を行っている者を含めること,既に被害回復が図られた者を含めること,何ら苦情もなくむしろ購入商品に満足している旨を回答し,権利行使する意思のない者を含めることは妥当でないなどと主張する。
確かに,証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば,本件各商品等を購入した者のうち44名が,平成29年,被告会社及び被告Y1らを被告として,本件各商品等の購入をするに当たって被告らのした勧誘行為が誇大広告等に該当する違法なものであり,本件各商品等の購入金額が損害であるなどと主張して,共同不法行為に基づく損害賠償請求権等を訴訟物とする訴えを提起し,その後,当該44名と被告らとの間で訴訟外における和解又は裁判上の和解をしたことを通じて既に被害回復が図られたことが認められる。そして,被害回復が既に図られた者を多数性の要件を判断するに当たって含めることは妥当でない。
しかしながら,当該44名を除いても,いまだ本件各対象消費者は多数存在しているといえる。また,証拠(乙A12の1・2,乙A13)によっても,本件各対象消費者のうちほとんどの者が対象債権である不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する意思がないとは認めることはできず,その他本件全証拠を検討しても,本件各対象消費者のうちほとんどの者が対象債権である不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する意思がないとは認めることはできない。そもそも本件各対象消費者の有する対象債権が既に被害回復が図られたことなどにより消滅したというのであればまだしも,対象債権を行使する意思がないというのみでは,多数性の要件を判断するに当たって含めることができないとはいえない。
よって,被告Y1の上記主張は採用できない。
3 争点(1)イ(支配性)について
(1) 過失相殺について
ア 原告は,本件各対象消費者に過失はなく,過失相殺すべき事情はないため,支配性の要件を欠くことはない旨主張する。
しかしながら,仮に原告が主張するように本件各商品等の勧誘が不法行為となり,当該不法行為により本件各対象消費者が投資により確実に稼ぐ方法があると誤信したと認められたとしても,そもそも投資により確実に稼ぐことができる方法があるとは容易に想定し難い上,対象消費者ごとに仮想通貨への投資を含む投資の知識,経験の有無及び程度,職務経歴,本件各商品等の購入に至る経緯等の事情は様々であることからすれば,本件各対象消費者において確実に稼ぐことができる方法があるといった勧誘内容を信じたことにつき過失相殺すべき事情がおよそないとはいえない。
そして,本件各対象消費者の過失の有無や過失相殺割合については,対象消費者ごとに上記の諸般の事情を考慮して認定,判断することが必要であり,個々の対象消費者ごとに相当程度の審理を要するものであるから,「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」(法3条4項)に当たるといわざるを得ない。
イ また,原告は,○○の勧誘は虚偽又は著しく誇大な効果を強調して説明したものであり,その違法性は重大であるため過失相殺をすべきでない旨主張する。
しかしながら,仮に原告が主張するように本件各商品等の勧誘が不法行為となると認められたとしても,前記認定事実(3),(4),(6)及び(7)並びに弁論の全趣旨によれば,○○の内容は,具体的状況に応じた仮想通貨を利用した利益を得る方法まで説明するものとはいえず,誰でも簡単・確実に多額の利益が確保できるような内容ではないものの,アービトラージやマイニングといった仮想通貨特有の利益を得る方法等の仮想通貨を利用した利益を得る一般的な方法は説明されており,また,○○の特典,VIPクラスセットの内容とされるセミナー及びパルテノンコースの内容とされるセミナーがそれぞれ開催されたことがうかがわれ,さらに,パルテノンコースの購入者に対し,その内容とされるハイスピード自動AIシステムにつき,学習型AIを使用して取引を行うトレーダーと同様の取引を行うことができるシステムが提供されていることが認められる。そうすると,被告らにおいておよそ架空の取引を勧誘したというものではなく,本件各商品等の提供が一定程度認められることからすれば,本件各対象消費者に過失があると認められる場合であっても過失相殺をすべきではないというほどまで被告らの不法行為の違法性が重大であるとはいえない。
ウ さらに,原告は,仮に本件各対象消費者の過失を認定するとしても,その過失は本件各対象消費者に共通であるから,本件訴訟において一律に判断されれば済むものであり,支配性の要件を欠くことはない旨主張する。
しかしながら,上記アのとおり本件各対象消費者の過失の有無や過失相殺割合については,対象消費者ごとに仮想通貨への投資を含む投資の知識,経験の有無及び程度,職務経歴,本件各商品等の購入に至る経緯等の諸般の事情を考慮して認定,判断することが必要であり,個々の対象消費者ごとに相当程度の審理を要するものであるから,本件訴訟において一律に判断ができるものではない上,「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」(法3条4項)に当たるといわざるを得ない。
(2) 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えはいずれも支配性の要件が認められない。
4 結論
よって,本件訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第4部
(裁判長裁判官 伊藤繁 裁判官 飯塚謙 裁判官 河合美月)
〈以下省略〉
別紙
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