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裁判年月日 令和 4年 1月27日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令3(ネ)10018号
事件名 不正競争行為差止等請求控訴事件
文献番号 2022WLJPCA01279002
要旨
◆不正競争防止法上の品質誤認表示及び信用毀損行為の成立が認められた事案。 ◯ 品質誤認表示及び信用毀損行為に係る不正競争について,不正競争防止法5条2 項の損害額が算定された事案。
裁判経過
第一審 令和 3年 2月 9日 東京地裁 判決 平30(ワ)3789号 不正競争行為差止等請求事件
出典
裁判所ウェブサイト
参照条文
不正競争防止法2条1項20号
不正競争防止法2条1項21号
不正競争防止法5条2項
裁判年月日 令和 4年 1月27日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令3(ネ)10018号
事件名 不正競争行為差止等請求控訴事件
文献番号 2022WLJPCA01279002
控訴人 株式会社北の達人コーポレーション
同訴訟代理人弁護士 鮫島正洋
同 高橋正憲
被控訴人 株式会社はぐくみプラス
同訴訟代理人弁護士 杉田昌平
同訴訟代理人弁理士 佐藤英昭
主文
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は,控訴人に対し,6890万0853円並びにうち6148万9064円に対する平成30年3月23日から,うち113万5474円に対する同月31日から,うち97万7076円に対する同年4月30日から,うち84万0022円に対する同年5月31日から,うち84万4013円に対する同年6月30日から,うち79万1905円に対する同年7月31日から,うち80万0580円に対する同年8月31日から,うち58万7597円に対する同年9月30日から,うち77万9577円に対する同年10月31日から及びうち65万5545円に対する同年11月30日から各支払済みまで,それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
3 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,第一,二審を通じてこれを100分し,その94を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は,被控訴人の取引先その他の第三者に対し,別紙物件目録記載の商品について,別紙信用毀損行為目録記載の虚偽の事実を告知又は流布してはならない。
3 被控訴人は,控訴人に対し,11億1844万3444円及びこれに対する平成30年3月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
(1) 本件は,控訴人が被控訴人に対し,被控訴人が①別紙物件目録記載の商品(以下「被告商品」という。)の品質について誤認させるような表示をし(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項20号),また,②競争関係にある控訴人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知するなどして(不競法2条1項21号),控訴人の営業上の利益を侵害したと主張して,次の各請求をする事案である。
ア 不競法3条1項に基づき,被告商品の広告又は取引に用いる書類等に別紙誤認表示目録記載の表示(以下「本件表示」という。)をする行為の差止めを求める請求
イ 不競法3条2項に基づき,被告商品の広告又は取引に用いる書類等における本件表示の抹消を求める請求
ウ 不競法3条1項に基づき,被告商品について,別紙信用毀損行為目録記載の虚偽事実(以下「本件虚偽事実」という。)を被控訴人の取引先その他の第三者に対して告知又は流布する行為の差止めを求める請求
エ 不競法3条2項に基づき,被控訴人が既に配布した別紙文書目録記載1及び2の各文書(以下,同目録の番号に従い「本件文書1」及び「本件文書2」といい,併せて「本件各文書」と総称する。)のうち本件表示部分及び本件虚偽事実部分の回収を求める請求
オ 不競法4条及び民法709条に基づき,被控訴人による品質誤認表示行為及び信用毀損行為によって被った控訴人の損害合計11億1844万3444円及びこれに対する平成30年3月23日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求
(2) 原審は,控訴人が主張する品質誤認表示について,その一部につき被控訴人による品質誤認表示行為があったと認め,上記⑴オの請求のうち1835万7803円及び遅延損害金の支払の限度で控訴人の請求を認容したが,上記⑴アないしエの請求については,将来において被控訴人が同様の品質誤認表示行為をする蓋然性があるとは認められないとして,ア及びイの各請求並びにエの請求のうち本件表示部分に係る請求を棄却するとともに,控訴人が主張する信用毀損行為については,被控訴人による信用毀損行為があったとは認められないとして,上記⑴の請求のうち,ウの請求,エの請求のうち本件虚偽事実部分に係る請求及びオの請求のうち信用毀損行為を理由とする請求を棄却した。
(3) 控訴人は,原判決の上記(1)ウ及びオの各請求に係る判断に不服があるとして,本件控訴を提起した。当審における実質的な争点は,被控訴人による信用毀損行為の有無及び控訴人の損害額である。
2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張
前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正し,後記3のとおり当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の1及び2(原判決3頁14行目ないし14頁7行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決4頁15行目の「記載した」を「記載させた」に改める。
(2) 原判決5頁25行目の「書面」の後に「(以下「本件通知書」という。)」を加える。
(3) 原判決7頁17行目の「被告が現に行った表示」の後に「(「100%高純度のオリゴ糖」及び「100%高純度」以外の本件表示)」を加える。
(4) 原判決8頁7行目冒頭から8行目末尾までを削除する。
(5) 原判決10頁23行目の「被告の本件表示行為」を「被告表示をしたこと」に改める。
(6) 原判決11頁13行目の「前記第2の1(4)」を「前記第2の1(3)」に改める。
(7) 原判決14頁5行目末尾に「また,被控訴人は,将来,現にしている表示のほか「100%高純度のオリゴ糖」,「100%高純度」という表示をする蓋然性があるから,本件表示の差止めを求める必要性がある。」を加える。
3 当審における補充主張
(1) 争点②(被控訴人が信用毀損行為を行ったか。)について
〔控訴人の主張〕
ア 本件イベントにおける被控訴人従業員の発言について
(ア) 控訴人の従業員であるA(以下「A」という。)の証人尋問における供述は,当時の状況等を詳細に述べるものであり,次の(イ)ないし(エ)の客観的資料とも一致し,信用することができるから,平成28年10月8日に渋谷で開催されたイベント「A8Festival」(以下「本件イベント」という。)において,20歳代くらいの被控訴人の女性従業員(以下「被控訴人従業員」という。)が,Aの陳述書(甲54)に記載された内容の発言をし,控訴人の信用を毀損する行為をしたものと認められる。
(イ) Aが作成した他社レポート(甲57。以下「本件レポート」という。)は,本件イベントの直後に作成されたものであること,控訴人においては正確な出張報告を義務付けていたこと,Aが本件イベントに参加した目的は他社製品の調査であったことなどからすれば,事実を正確に表したものといえる。
(ウ) 控訴人は,事実関係を慎重に調査した上で,被控訴人に対して本件通知書を送付した。そして,被控訴人の当時の代理人弁護士が作成した本件回答書面は,本件通知書において具体的に指摘された被控訴人従業員の発言を認める内容であった。被控訴人は,本件回答書面の内容は真実ではなく,何でもよいから穏便に解決したいという被控訴人の意向に沿って作成されたものにすぎない旨主張するが,そのような対応は弁護士の実務慣行に反する。
(エ) 被控訴人は,新聞社のインタビューに対しても,被控訴人従業員が「オリゴ糖100%」等の発言をしたことを認めた。被控訴人は,紛争を避けることを優先し,とりあえず謝るという対応をしたものである旨主張するが,上記インタビューは,本件訴訟提起後に行われたものである。
イ 本件各文書の配布について
本件各文書が配布されたイベントに出展した広告主のうち,被告商品と競合する高純度オリゴ糖食品を販売していたのは控訴人のみであること,被控訴人は,原告商品と被告商品とが競合していることを認めていること,イベントに参加するアフィリエーターを基準とすれば,本件各文書において被控訴人が「競合他社商品」又は「他社商品」と指摘するのは,原告商品以外には考えられないことからすれば,本件各文書は,原告商品がオリゴ糖100%ではなく,オリゴ糖純度の点で被告商品に劣っていることを指摘するものといえる。
したがって,本件各文書の配布は,控訴人の信用を毀損する行為といえる。
〔被控訴人の主張〕
ア 本件イベントにおける被控訴人従業員の発言について
(ア) 当時,控訴人が競合企業である被控訴人に対して法的権利主張を行うことを考えていたことからすれば,競合製品について調査する意図で本件イベントに参加したAが作成した陳述書及び本件レポートは,客観性・公平性に欠けるものであり,信用することはできない。
(イ) 被控訴人は,事実関係よりも紛争を回避することを優先し,とりあえず謝るという対応をすることとして,本件回答書面を作成したものである。被控訴人代表者は30代であり,企業での業務経験もなく,実務慣行に捉われずに自らの独創性に基づき会社を興した者であるから,実務慣行に反するという控訴人の主張は当てはまらない。
また,控訴人が指摘する新聞記事は,その記載内容から信用毀損行為を認定することはできないし,仮に記載されているような事実関係があったとしても,本件回答書面と同様に,とりあえず謝るという対応をしたにすぎない。
(ウ) 証人尋問におけるAの供述によっても,Aは,控訴人の業務として本件イベントに参加したものである上,アフィリエーターであると身分を偽って競合他社の情報を収集していたことからすれば,控訴人に有利な情報を恣意的に収集する可能性が極めて高いから,その供述は信用性に欠ける。また,証人尋問におけるAの供述内容は,被控訴人ブース周辺にいたアフィリエーターの人数に関する供述が陳述書とは異なる上,被控訴人従業員が原告商品について言及したことに関する供述に不自然な点があることなどからすれば,信用することができない。
イ 本件各文書の配布について
アフィリエーターにとっては,インターネット又はそれと代替し得る店舗での販売も含め,競合製品の販売経路に存在する製品が全て「競合他社製品」であるから,アフィリエーターが本件イベントに出展している事業者のみを「競合他社」と想定することはあり得ない。したがって,本件各文書における「競合他社」との用語が,直ちに控訴人を意味することにはならない。
(2) 争点④(損害の発生及び額)について
〔控訴人の主張〕
ア 売上高について
(ア) 未収金の控除について
未収金は,会計上,売上げに算入すべきものである上,被控訴人の債権回収能力の稚拙さを控訴人に付け回すのは相当でないから,売上金額から控除すべきではない。
(イ) 消費税相当額の加算について
消費税法に係る国税庁の基本通達(甲65。以下「消費税法基本通達」という。)によれば,知的財産権侵害に係る損害賠償金は消費税の課税対象となるところ,侵害者利益額から消費税分を控除すると権利者の得べかりし利益に二重に課税されることとなるから,売上金額は,消費税込みの金額とすべきである。また,売上高から控除する原価や送料等の費目を消費税込みで認定するのであれば,売上金額についても消費税込みの金額を認定すべきである。
イ 控除すべき経費について
(ア) 被控訴人が売上高から控除すべきと主張する送料,支払手数料及び広告費の裏付資料として原審で提出された乙36ないし乙38に記載された金額は,他の客観的資料によって確認できるものではない。また,被控訴人は,被告商品の他に少なくとも13商品を販売しているところ,被控訴人が提出する証拠に記載された費用が,被告商品に係る費用であるか不明である。したがって,上記各費目については,売上高から控除すべきではない。
(イ) 被控訴人が当審において新たに提出した証拠は,被控訴人自身が作成した書面であったり,いずれが被告商品の販売に要した費用なのかが不明であったりするから,これらの証拠をもって,被控訴人が主張する費用が,被告商品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものとはいえない。
ウ 覆滅事由について
(ア) 被控訴人の表示態様について
被控訴人の広告は,アフィリエーターに違法表示を含むインパクトのある広告をさせて顧客を誘引する点に特徴を有する。そして,消費者が商品を検索して最初に目にするのは,アフィリエーターの広告サイトでの表示であることからすれば,同表示は消費者に重大な影響を与えるものといえる。そして,被告商品に係るアフィリエーターの広告サイトにおいては,オリゴ糖の純度が重要である点が強調され,被告商品を紹介する部分においても製品の特徴としてオリゴ糖100%である点が最も強調されている上,対比する原告商品についてもオリゴ糖100%ではない点が強調して表示されている。
以上の事情を考慮すると,被控訴人がオリゴ糖100%以外の点についても被告商品の特徴であると宣伝広告していた点を,覆滅の根拠とすべきではない。
(イ) 競合品について
乙59は,抽象的にオリゴ糖を含有する広範なオリゴ糖類食品市場における企業別シェアを示す資料にすぎないから,これを根拠として製品別のシェアを認定することはできない。また,覆滅事由として考慮すべき競合品に該当するか否かは,需要者が着目する特徴において代替可能性のある商品であるか否かをメルクマールとして判断すべきであるところ,乙59に記載された13商品は,そのほとんどが甘味料として販売されていること,価格帯が低価格帯であること,甘味料としての性質上,オリゴ糖を高純度にしたり,複数のオリゴ糖を含有したりする必要がないことなど,甘味料ではなく便通改善目的の商品である原告商品及び被告商品が有する特徴を有しておらず,代替性がない。
仮に,上記13商品に原告商品と競合するものがあるとしても,それは3商品に限られるから,原告商品の市場占有率は81.5%となる。
(ウ) アンケート結果について
被控訴人が実施したアンケートは,被告商品の購入動機を問うものではないこと,回収率が低く購入者全体の傾向を表すものではないこと,実施主体及び回収・集計者が利害関係人であり公正さを欠くことなどからすれば,その結果を信用することはできない。
〔被控訴人の主張〕
ア 売上高について
(ア) 未収金の控除について
未収金は,後払方式を併用する通信販売において必然的に発生するものであり,被控訴人に落ち度があるものではないから,売上金額から控除すべきである。
(イ) 消費税相当額の加算について
本件は,被控訴人の誤認惹起行為に対する損害賠償であり,消費税法基本通達にいう「その実質からみて資産の譲渡又は貸付けの対価」に該当するものではないから,原則どおり,消費税の対象となるものではない。また,不正競争行為による損害は,最終的に消費税を含まない金額となるものである上,不競法5条2項にいう「その者がその侵害の行為により利益を受けているとき」とは,侵害者が実際上利益を受けていることをいうから,売上げには消費税相当額を加算せず,控除すべき費目には消費税相当額を加算することとしても,誤りではない。
イ 控除すべき経費について
送料,手数料及び広告費については,原審において提出した証拠(乙36ないし38)の原資料を当審において新たに証拠として提出した(乙85ないし93,95ないし98)。これらの証拠により,各費目の金額が裏付けられる。
ウ 覆滅事由について
(ア) 被控訴人の表示態様について
アフィリエーターが作成しているのは,被控訴人のウェブサイトへのリンクでしかなく,消費者は,詳細な情報が掲載された被控訴人のウェブサイトを閲覧して被告商品を購入するか否かを決めている。したがって,アフィリエーターによる表示は,消費者に対して重大な影響を与えるものではない。
(イ) 競合品について
インターネット上において,原告商品及び被告商品は多数の競合製品と比較されながら販売されている上,競合関係にある多様なオリゴ糖製品がオリゴ糖類食品市場を構成している状況にある。
(ウ) アンケート結果について
被控訴人が実施したアンケートは,本件訴訟とは無関係に実施されたものであるから,購入の傾向を理解するには十分な証明力があるものといえる。
第3 当裁判所の判断
1 争点①(被控訴人が品質誤認表示行為を行ったか。)について
当裁判所も,原審と同様に,被控訴人は,平成26年7月から平成30年11月までの間,故意により,被告商品の品質について誤認させるような表示をして被告商品を販売していたと認められるものと判断する。
その理由は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」の第3の1及び2(原判決14頁9行目ないし22頁12行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決14頁22行目の「それぞれに」を「それぞれが」に改める。
(2) 原判決15頁23行目の「その説明等の後に,」を「上記サイトには,」に改める。
(3) 原判決16頁3行目の「通り」を「巡り」に改める。
(4) 原判決16頁8行目の「甲10,13」の後に「,30」を加える。
(5) 原判決19頁13行目ないし14行目の「『オリゴ糖 100パーセント』」の後に「,『オリゴ糖 100』」を加える。
(6) 原判決20頁15行目の末尾に次のとおり加える。
「そして,前記第2の1(2)によれば,本件行為1ないし7には,いずれも上記(1)において検討した被告商品の品質について誤認させるような表示が含まれるものと認められる(以下,これらの表示を「本件品質誤認表示」という。)。」
(7) 原判決20頁19行目ないし20行目の「被告表示」を「本件品質誤認表示」に改める。
(8) 原判決21頁1行目の「被告商品の」ないし3行目の「ということがある。)」を「本件品質誤認表示」に改める。
(9) 原判決21頁14行目,17行目及び20行目の「被告表示」並びに21頁21行目の「上記の行為」をいずれも「本件品質誤認表示」に改める。
(10) 原判決21頁25行目の「他方,」から22頁12行目末尾までを削る。
2 争点②(被控訴人が信用毀損行為を行ったか。)について
当裁判所は,原審とは異なり,本件イベントにおける被控訴人従業員の発言は,控訴人の信用を毀損する行為に当たるものと判断する。その理由は以下のとおりである(原判決22頁14行目ないし25頁11行目を以下のとおり改める。)。
(1) 本件イベントにおける被控訴人従業員の発言について
ア 認定事実
Aの陳述書(甲54,85)及び当審におけるAの証人尋問の結果に加え,各文末に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 本件イベントは,平成28年10月8日,ファンコミュニケーションズが運営するアフィリエイトプログラム代行サービス「A8.net」が主催して開催されたイベントであり,広告主である企業が,それぞれのブースにおいて,アフィリエーターに対して商品の説明等をするというものであった。本件イベントには,控訴人及び被控訴人も含めて合計76のブースが出展し,当日のアフィリエーターの合計入場者数は,2087人であった。(甲20,21の1,乙47)
(イ) 当時,他社の動向等を調査することなどを主な業務とするセールスマーケティング部に所属していたAは,他の従業員と共に本件イベントに参加した。Aは,他社がアフィリエーターに対してしか説明しないような内容も調査するために,アフィリエーターとして本件イベントに参加した。(甲56,57,59)
(ウ) Aが,原告商品と競合する被告商品に関する説明を聞くために,被控訴人ブースを訪れたところ,被控訴人従業員がアフィリエーターに対して被告商品の説明をしていた。この説明の中で,被控訴人従業員は,「カイテキオリゴ」という原告商品の名称を挙げながら,原告商品はオリゴ糖100%ではないが,被告商品はオリゴ糖100%なので良い商品である,原告商品は少し糖度が低い,被告商品は妊婦や乳児向けの商品であるなどと説明していた。(被控訴人ブースにつき,乙94)そこで,Aは,詳しく話を聞くために,被控訴人従業員に近づき,原告商品と被告商品との違いをより詳しく説明してほしいと依頼した。これに対し,被控訴人従業員は,原告商品はオリゴ糖100%ではないが,被告商品はオリゴ糖100%なので,被告商品の方が良い商品である,原告商品はカテゴリーを絞ったことによって売上げが1位となっているが,カテゴリーを絞ればどの商品でも売上げ1位と言えるのではないかなどと説明した。
上記のやり取りがされている間,被控訴人ブースの周辺には,5名ないし10名のアフィリエーターがいた。
(エ) 本件イベントへの参加報告として,Aは,控訴人に対し,平成28年10月17日,本件レポートを提出した。本件レポートの「所感」欄には,次のとおり記載されていた。(甲56,57)
「かなり当社にライバル意識があるらしく,名前を出しただけで顔が変わりました。『カイテキオリゴ』との違いを聞いてみると,『向こうは100%じゃないので(笑)こちらは純度が非常に高いです。』『オリゴ糖100%なので,特に赤ちゃんや妊婦さんに効果が高いのが売りです。』『『カイテキオリゴ』は売上1位と言ってますが,そんなのカテゴリを絞ればいくらでも言えるじゃないですか。』『向こうは客層の幅が広い分,効果はどうなんでしょうねえ。。。』と敵意むき出しでした。」
(オ) その後,Aが本件レポートに記載した内容について報告を受けた控訴人代表者は,被控訴人に対し,平成28年11月2日付けで本件通知書を送付した。本件通知書には,次のとおり記載されていた。(甲3)「貴社が,平成28年10月8日,渋谷ヒカリエにおけるA8フェスティバル2016において,『カイテキオリゴはオリゴ糖100%じゃない,はぐくみオリゴはその点良品で100%』などと当社の商品に関し虚偽の事実を申し述べたとの情報に接しております。」
(カ) 本件通知書の送付を受けた被控訴人は,控訴人に対し,平成28年11月16日付けで本件回答書面を送付した。本件回答書面には,次のとおり記載されていた。(甲4の1)「まず,平成28年10月8日の渋谷ヒカリエにおける当社社員の発言を問題にされている件ですが,確かに一部社員にてご指摘のような発言があったようです。はぐくみオリゴはオリゴ糖100%というのは正確ではなく,この前提での比較は不適切でした。本書にてお詫び申し上げるとともに,再発防止を誓います。」
(キ) 平成30年3月1日付けの日本流通産業新聞には,控訴人が本件訴えを提起したことに関する記事(以下「本件記事」という。)が掲載されたた。本件記事においては,「アフィリエーター向けのイベントで新人社員が『オリゴ糖100%』などの発言をしてしまったのは事実。」等の被控訴人の担当者のコメント(以下「本件コメント」という。)が紹介された。(甲45)
イ 検討
(ア) 上記アの認定事実(ウ)によれば,本件イベントにおいて,被控訴人従業員は,被告商品の競合品である原告商品の名称を挙げつつ,原告商品はオリゴ糖100%ではないが,被告商品はオリゴ糖100%であり,被告商品の方が良い商品である旨の説明(以下「本件説明」という。)をしたものと認められる。前記1(争点①)において検討したとおり,本件イベント当時の原告商品のオリゴ糖の配合割合は約70%であり,被告商品のオリゴ糖の配合割合は約53%であったことからすれば,本件説明は,原告商品のオリゴ糖の配合割合が100%ではないとした部分それ自体は虚偽でないとしても,被告商品のオリゴ糖の配合割合が100%であることを前提に原告商品と被告商品とを比較し,原告商品よりも被告商品の方がオリゴ糖の配合割合が高いなどと説明したものであり,全体としてみれば虚偽の事実であることは明らかである。
そして,原告商品及び被告商品は,いずれもオリゴ糖含有食品であり,オリゴ糖の配合割合が高いことを主なセールスポイントとする商品であることからすれば,本件説明は,原告商品は被告商品よりもオリゴ糖の配合割合が低く,オリゴ糖含有食品としての品質が劣る商品であるとの印象を与えるものであったといえる。
以上によれば,本件説明の内容は,競争関係にある控訴人の営業上の信用を害する虚偽の事実というべきである。
(イ) そして,上記アの認定事実(ア)及び(ウ)のとおり,本件イベントは多数のアフィリエーターが訪れるイベントであったこと,本件説明がされている間,被控訴人ブースの周辺には5名ないし10名のアフィリエーターがいたことからすれば,本件説明は,A以外のアフィリエーターも聞くことができる状況においてされたものといえる。
(ウ) 以上によれば,本件説明は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」(不競法2条1項21号)に該当するものと認めるのが相当である(以下「本件信用毀損行為」という。)。
ウ Aの供述の信用性について
被控訴人は,Aの供述は信用することができない旨主張するが,以下のとおり,本件説明に係るAの供述は,客観的資料によって裏付けられるものであり((ア)ないし(ウ)),供述内容に不自然,不合理な点は見当たらないというべきである((エ))から,全体として信用することができる。
(ア) 本件レポートによる裏付け
a 上記アの認定事実(エ)のとおり,本件レポートには,被控訴人従業員が本件説明をした旨が記載されていることからすれば,Aの供述は,本件レポートによって客観的に裏付けられるものといえる。
b 被控訴人は,本件レポートにつき,Aが本件イベントに参加した目的等からすれば,客観性・公平性に欠けるものである旨主張する。
しかしながら,上記アの認定事実(イ)によれば,Aは,他社の動向を調査するために,他社のブースにおいてどのような説明等がされているかを調査する目的で本件イベントに参加したものであって,虚偽の内容を含むなど問題のある説明等がされていないかを調査することを目的としていたものではないというべきである。また,本件レポートを提出した際のメールの文面(甲56)や本件レポートの内容をみても,Aは,被控訴人の控訴人に対するライバル意識の有無等について受けた印象を報告しようとしたものにすぎず,本件説明に虚偽の内容が含まれている旨を報告しようとしたものとはうかがわれない。これらの事情を考慮すると,本件レポートは,「顔が変わりました。」,「敵意むき出しでした。」などのAの主観的な感想部分についてはともかく,被控訴人従業員の発言内容それ自体に関する部分については,客観的に記録されているものとみるのが相当である。
以上によれば,本件レポートは,本件説明に係るAの供述を裏付ける資料としての客観性・公平性を欠くものではないというべきである。
したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
(イ) 本件通知書及び本件回答書面による裏付け
a 上記アの認定事実(オ)及び(カ)のとおりの本件通知書及び本件回答書面の記載内容によれば,本件回答書面の「確かに一部社員にてご指摘のような発言があったようです。」との記載における「ご指摘のような発言」とは,本件通知書の「『カイテキオリゴはオリゴ糖100%じゃない,はぐくみオリゴはその点良品で100%』」との記載を受けたものであることは明らかであり,また,このことは,本件回答書面に,「この前提での比較は不適切でした。」などと,被控訴人従業員によって,被告商品のオリゴ糖の配合割合が100%であることを前提に原告商品と被告商品とを比較した説明がされたことが不適切であったことを認める文言があることからも裏付けられる。そうすると,本件通知書に対する回答である本件回答書面は,本件説明があったことを認める内容であったと認めるのが相当である。したがって,本件通知書及び本件回答書面はAの供述を客観的に裏付けるものといえる。
b この点に関して被控訴人は,本件回答書面につき,事実を認めたものではなく,紛争を回避することを優先してとりあえず謝るという対応をしたものにすぎない旨主張する。
しかしながら,上記認定のとおり,本件回答書面は本件通知書に記載された事実関係につき,これを否定したり何らかの留保を付したりすることもせずに認めた上で,謝意を表しかつ再発防止を誓う内容である。このような回答書を相手方に送付すれば,後日この紛争が訴訟等の法的紛争に発展した場合に被控訴人が事実関係を認めていたことの有力な証拠として利用されることが容易に想定されるから,本件回答書面の作成者が弁護士であることに鑑みると,被控訴人の上記主張は不自然であるといわざるを得ない。そうすると,仮に,被控訴人が紛争を回避することを優先して本件回答書面を作成したものであったとしても,それは,本件説明の内容等を認めた上で早期に何らかの紛争解決を図ろうとしたものと評価するほかないというべきである。
したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
(ウ) 本件コメントによる裏付け
a 上記アの認定事実(キ)のとおり,本件コメントは,被控訴人従業員が「オリゴ糖100%」等の発言をしたことを認めるものであるところ,本件記事が掲載される前々年の11月に本件通知書及び本件回答書面のやり取りがされたことからすれば,被控訴人は,本件説明があったとする控訴人の主張を承知した上で本件コメントをしたものであり,本件回答書面と同様に,本件説明があったことを認める趣旨のコメントをしたものとみるのが相当である。そうすると,本件コメントはAの供述を客観的に裏付けるものといえる。
b 被控訴人は,本件コメントにつき,本件コメントの内容から信用毀損行為を認定することはできない,本件回答書面と同様に紛争を回避することを優先した対応をしたものにすぎない旨主張するが,これらの主張は,これまで検討したところに照らせば,いずれも採用することができない。
(エ) 供述内容の合理性等
a 証人尋問におけるAの供述は,本件イベント全体の状況,被控訴人ブース周辺の状況,被控訴人従業員とのやり取り等について,具体的に説明しているものといえ,その内容に不自然,不合理な点は見当たらないというべきである。
b 被控訴人は,Aは控訴人の業務として本件イベントに参加したものであり,控訴人に有利な情報を恣意的に収集する可能性が高い旨主張する。
しかしながら,上記(ア)で検討したとおりのAの参加目的からすれば,被控訴人が指摘するような恣意的な情報収集をAが敢えてすることは考え難いというべきである。
したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
c また,被控訴人は,被控訴人ブース周辺にいたアフィリエーターの人数等につき,証人尋問におけるAの供述内容には陳述書と異なる点があり,供述内容にも不自然な点がある旨主張する。
しかしながら,Aは,被控訴人ブース周辺にいたアフィリエーターの人数について,証人尋問においては5名ないし10名程度であった旨供述し(証人A〔4,6,7頁〕),陳述書においては数人から10名程度としていたものであり(甲85),陳述書と異なる内容の供述をしたとはいえない。また,上記アフィリエーターの人数に係るAの供述内容は,当日の入場者数やブース及び通路の位置関係等に照らして,不自然,不合理な点があるとはいえない。さらに,本件説明に係るAの供述内容についても,被控訴人従業員が本件説明をした状況やAと被控訴人従業員との間のやり取りの内容等を具体的に述べており,その内容に不自然,不合理な点は見当たらないというべきである。
したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
エ 小括
以上によれば,平成28年10月8日に開催された本件イベントにおける被控訴人従業員の発言(本件説明)は,控訴人の信用を毀損する行為に当たるものといえる(本件信用毀損行為)。
(2) 平成29年6月3日及び同年9月23日の本件各文書の配布(本件行為5)について
ア 当裁判所も,原審と同様に,被控訴人が本件各文書を配布したことをもって,控訴人の信用を毀損する行為に当たるとはいえないと判断する。
その理由は,原判決25頁4行目ないし5行目の「原告商品の品質が劣っていることを述べるものとはいえず,」を「原告商品を名指しして被告商品と対比し,原告商品の品質が劣っているなどと述べるものではないことを考慮すると,」に改めるほかは,原判決「事実及び理由」の第3の3(2)(原判決24頁21行目ないし25頁7行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
イ この点に関して控訴人は,本件各文書が配布されたイベントに出展した広告主のうち,被告商品と競合する高純度オリゴ糖食品を販売していたのは控訴人のみであり,アフィリエーターを基準とすれば,本件各文書における「競合他社商品」等は原告商品以外には考えられない旨主張する。
しかしながら,前記のとおり補正して引用する原判決が説示するとおり(原判決24頁21行目ないし25頁7行目),本件各文書には,原告商品を名指しして被告商品と対比する記載はされていない。また,アフィリエーターがそのウェブサイト等において紹介する商品は,イベントに出展した商品に限定されるものではなく,類似の商品が広く紹介されるのが通常であるといえる。これらの事情を考慮すると,イベントにおいて本件各文書を配布されたアフィリエーターは,当該イベントにおいて被告商品の競合品となるのが原告商品のみであったとしても,本件各文書における「競合他社商品」が原告商品を意味すると認識するものとは必ずしもいえないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
3 争点③(控訴人の主張が信義則違反か。)について
当裁判所も,原審と同様に,控訴人の主張は信義則に反するものではないと判断する。
その理由は,原判決「事実及び理由」の第3の4(原判決25頁12行目ないし26頁3行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
4 争点④(損害の発生及び額)について
原判決「事実及び理由」の第3の5(原判決26頁5行目ないし33頁2行目)を次のとおり改める。
(1) 本件品質誤認表示による損害
ア 算定方法
(ア) これまで検討したとおり,被控訴人は,平成26年7月から平成30年11月までの間(以下「本件対象期間①」という。),本件品質誤認表示をしたものであるところ,原告商品及び被告商品は,いずれもオリゴ糖含有食品であり,市場における原告商品の占有率が一定程度あることからすれば,被控訴人の本件品質誤認表示によって,控訴人の営業上の利益が侵害されたものと認められる。
(イ) そして,不競法5条2項により,本件対象期間①において被控訴人が本件品質誤認表示によって受けた利益の額が控訴人の受けた損害の額と推定されるところ,同条項所定の侵害者が侵害行為により受けた利益の額は,侵害行為を組成した物の販売に係る売上高から,その販売等に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した利益の額をいい,その利益の額の全額が損害と推定されるものと解される。
(ウ) 以上を前提に,以下,本件品質誤認表示による控訴人の損害額について検討する。
イ 被告商品の売上高について
(ア) 証拠(乙34)及び弁論の全趣旨によれば,本件対象期間①において販売された被告商品の売上金額(消費税相当額を含まないもの)は,別紙損害額計算表①の「売上金額(税抜き)」欄記載のとおり,合計11億0573万1572円であったと認められる。
(イ) 控訴人は,上記(ア)の売上金額に消費税相当額を加算すべきである旨主張する。
しかしながら,控訴人が指摘する消費税法基本通達(甲65)には,「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」については,「その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるもの」として,例外的に消費税が課される旨が記載されているものの,不正競争行為があったことを理由とする損害賠償金が直ちにこれに該当するものとはいえないというべきである。また,本件において,控訴人が被控訴人から損害賠償を受けた場合に消費税が課されることがあり得るとうかがわれるような資料等は存しない。そうすると,控訴人の損害額を算定するに当たって,上記(ア)の売上金額に消費税相当額を加算するのは相当でないというべきである(別紙損害額計算表①の「消費税相当額」欄記載のとおり)。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(ウ) 被控訴人は,上記(ア)の売上金額から未収金である2251万6179円を控除すべきである旨主張する。
しかしながら,上記未収金に係る被告商品はいずれも返品されていないことが認められるから(被控訴人の当審における陳述),被控訴人は購入者に対してなお売買代金請求権を有しているところ,被控訴人における上記未収金の処理に係る事情が判然としないことからすれば,被控訴人が顧客に対して上記未収金を請求し得る可能性をなお否定することはできないというべきである。そうすると,控訴人の損害額を算定するに当たって,上記(ア)の売上金額から上記未収金を控除するのは相当でないというべきである(別紙損害額計算表①の「未収金額」欄記載のとおり)。
したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
(エ) 以上によれば,本件対象期間①において販売された被告商品の売上高は,別紙損害額計算表①の「売上高」欄記載のとおり,合計11億0573万1572円とするのが相当である。
ウ 原価の控除について
本件対象期間①において販売された被告商品の原価(原材料であるオリゴ糖粉末のほか,包装,同梱スプーン,梱包用段ボール等の取得費用を含む。)が,別紙損害額計算表①の「原価」欄記載のとおり,合計1億6670万1728円であることについては当事者間に争いがなく,この原価は上記イの売上高から控除すべきである(各月の金額は,乙39によって認定した。)。
エ 送料,支払手数料及び広告費の控除について
(ア) 総論
a 証拠(乙99)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,インターネットを通じた通信販売によって商品を販売しており,被告商品は被控訴人内において一定の販売実績を挙げているものと認められることからすれば,被控訴人が被告商品を販売するに当たっては,一定の送料,支払手数料及び広告費の支出が必要となるものといえる。そうすると,これらの費用は,被告商品の販売に係るものであると認められれば,上記イの売上高から控除すべき費用に当たるというべきである。
b また,証拠(甲67)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,本件対象期間①において,被告商品以外にも複数の商品を販売していたものと認められるところ,被控訴人が当審において提出した上記の各費用に係る請求書等(乙86,88,89,91ないし93,97,98)には,被告商品に係る費用と被告商品以外の商品に係る費用とが混在して記載されているものが存在する。そして,これらについては,被告商品に係る費用であることが不明であるから,上記イの売上高からは控除することができないのが原則である。
しかしながら,上記aのとおりの被控訴人における商品の販売形態や被告商品の販売実績等を考慮すると,上記の各費用の支出につき一定の客観的資料が存在するにもかかわらず,被告商品に係るものであるか否かが特定できないからといって一切の控除を認めないこととするのは,被控訴人における被告商品の販売に係る実情に合致せず,相当でないというべきである。
そこで,控訴人の損害額の算定において,被控訴人における商品の販売形態や被告商品の販売実績等の実情を可能な限り反映するために,被控訴人が提出した客観的資料において被告商品に係る費用と被告商品以外の商品に係る費用とが混在して記載されている場合には,当該客観的資料又はこれを被控訴人においてまとめた計算書(乙85,87,90)に記載された金額に,本件対象期間①における被控訴人内の被告商品の売上割合13.9%(乙99の1の「構成比」欄記載の割合)を乗じた額を,上記イの売上高から控除すべき費用として計上するのが相当である(なお,後記(エ)dのとおり,ロジカドについては,これとは異なる売上割合の数値を用いることとする。)。
c なお,被控訴人が原審において上記の各費用の裏付資料として提出した乙36ないし38は,いずれも被控訴人が表計算ソフトを用いて作成した計算書にすぎず,控訴人がその信用性を争っていることからすれば,これらをもって直ちに被控訴人の主張の裏付けとすることはできない。
d 以上を前提に,以下,各費用について検討する。
(イ) 送料について
a 証拠(乙85,86)及び弁論の全趣旨によれば,乙86は,ティー・エム・ロジスティクス株式会社が作成した本件対象期間①における配送料等に係る請求書であること,乙85は,被控訴人が乙86に記載された費目から発送に関する費目(伝票発行手数料,出荷作業料及びメール便料金等)を抽出してまとめた計算書であることが認められる。もっとも,乙86の記載内容からすれば,乙86には,被告商品に係る送料が含まれるものと推認されるものの,被告商品以外の商品に係る送料も混在しているものとみるのが相当である。
したがって,送料については,乙85の「月額合計(円・税込)」欄に記載された金額に13.9%を乗じた額を,上記イの売上高から控除すべき費用として計上するのが相当である。
b 以上によれば,上記イの売上高から控除すべき送料の額は,別紙損害額計算表①の「送料」欄記載のとおり,合計3659万3900円(各損害発生期間の計算において,1円未満は切り捨てた。以下同じ。)とするのが相当である。
(ウ) 支払手数料について
a 証拠(乙87ないし89)及び弁論の全趣旨によれば,乙88は,株式会社電算システムが作成した本件対象期間①におけるコンビニ決済及び郵便振替の取扱手数料等に係る請求書であること,乙89は,株式会社ゼウスが作成した本件対象期間①におけるクレジットカード決済の取引手数料等に係る明細書であること,乙87の1及び2は,それぞれ乙88及び89の記載を基に被控訴人が作成した計算書であることが認められる。もっとも,乙88及び89の記載内容からすれば,乙88及び89には,被告商品に係る支払手数料が含まれるものと推認されるものの,被告商品以外の商品に係る支払手数料も混在しているものとみるのが相当である。
したがって,支払手数料については,乙87の1の「月額手数料合計(円・税込)」欄に記載された金額及び乙87の2の「月額仕入合計(円・税込)」欄に記載された金額に13.9%を乗じた額を,上記イの売上高から控除すべき費用として計上するのが相当である。
b 以上によれば,上記イの売上高から控除すべき支払手数料の額は,別紙損害額計算表①の「支払手数料(電算システム)」及び「支払手数料(ゼウス)」欄記載のとおり,それぞれ合計1717万1600円,合計1866万4724円とするのが相当である。
(エ) 広告費について
a A8.net
(a) 証拠(乙90の1,乙91)及び弁論の全趣旨によれば,乙91は,ファンコミュニケーションズが作成した本件対象期間①における広告費に係る請求書であること,乙90の1は,被控訴人が乙91に記載された費目から「成果報酬」のうち備考欄に「PGID:001」とされているもの及び「成果報酬コミッション」を,被控訴人が抽出してまとめた計算書であることが認められる。また,証拠(乙91,96)及び弁論の全趣旨によれば,乙91には被告商品以外に係る広告費も混在しているものの,乙91の「成果報酬」のうち備考欄に「PGID:001」と記載されているものは,被告商品に係る広告費であると認められる。他方で,上記「成果報酬コミッション」については,いかなる内容の費目であるかや被告商品との関連性の有無が明らかではない。
したがって,A8.netの広告費については,乙90の1の「広告費合計(円・税込)」欄に記載されている金額のうち「詳細」欄に「PGID001」と記載されているものの合計額を,上記イの売上高から控除すべき費用として計上するのが相当である。
(b) 以上によれば,上記イの売上高から控除すべきA8.netの広告費の額は,別紙損害額計算表①の「広告費(A8.net)」欄記載のとおり,合計4672万1936円とするのが相当である。
b Yahoo!
(a) 証拠(乙93)及び弁論の全趣旨によれば,乙93は,被控訴人の決算書の広告宣伝費部分であり,広告宣伝費の支出先企業名及び各月に宣伝広告費として支出した金額が記載されていること,支出先企業名にはYahoo!が含まれることが認められる。しかしながら,このような決算書の記載のみでは,いかなる内容の広告宣伝費であるかすら不明であり,上記イの売上高から控除すべき費用を直接に裏付ける客観的資料とはいい難いから,乙93を基に控除すべき金額を算定することはできない。
(b) 証拠(乙98)及び弁論の全趣旨によれば,乙98は,本件対象期間①において被控訴人が利用していた四つのYahooアカウントの利用履歴であること,それぞれのアカウント名は「【H】はぐくみ商品/はぐくみプラス【公式】:544497」(乙98の1),「【HO-01】はぐくみオリゴ記事:1075906」(乙98の2),「【HO-02】オリゴ糖:544883」(乙98の3),「【HO-03】オリゴ糖/代理店【運用】:544701」(乙98の4)であること,キャンペーン名として「【HO】オリゴ糖」,「【HO】ブランド名」,「【HO】便系」と記載されていること,「合計コスト」欄に被控訴人が負担した広告費が記載されていることが認められる。これらのアカウント名及びキャンペーン名からすれば,乙98の「合計コスト」欄に記載されている金額は,いずれも被告商品に係る広告費であるとみるのが相当である。
したがって,Yahoo!の広告費については,乙98に記載されているものの合計額を,上記イの売上高から控除すべき費用として計上するのが相当である。
なお,乙98においては,被控訴人がYahoo!の広告費を負担した時期及び金額が明らかではなく,他の資料(乙38,90の4,乙93等)によってもこれを特定することは困難であるが,広告費は事業活動に伴って継続的に発生する費用であることを考慮して,毎月33万4141円(乙98の合計額1770万9490円を本件対象期間①の53か月で除した額)が支出されたものとして計上することとする。
(c) 以上によれば,上記イの売上高から控除すべきYahoo!の広告費の額は,別紙損害額計算表①の「広告費(Yahoo!)」欄記載のとおり,合計1770万9473円とするのが相当である。
c Google
(a) 乙93を基に控除すべき金額を算定することはできないことは,上記bで検討したとおりである。
(b) 証拠(乙97)及び弁論の全趣旨によれば,乙97は,本件対象期間①において被控訴人が利用していたGoogleアカウントのうち,アカウント名が「00_はぐくみプラス/公式」,又は「01_はぐくみオリゴ/記事」であるものを抽出したものであることが認められる。これらのアカウント名に加え,乙97に記載されているキャンペーン名からすると被告商品以外の商品が含まれるものとはうかがわれないことからすれば,乙97の「費用」欄に記載された金額は,いずれも被告商品に係る広告費であるとみるのが相当である。
したがって,Googleの広告費については,乙97に記載された各金額の合計6243万1004円を,上記イの売上高から控除すべき費用として計上するのが相当である。
そして,この金額は,被控訴人が作成した計算書である乙90の5に記載された金額の合計と1円異なるのみであることからすれば,広告費を負担した時期及び金額は,乙90の5に記載されたとおり認定するのが相当である(ただし,上記1円については,平成26年7月分の支出額から控除して計上することとする。)。
(c) 以上によれば,上記イの売上高から控除すべきGoogleの広告費の額は,別紙損害額計算表①の「広告費(Google)」欄記載のとおり,合計6243万1004円とするのが相当である。
d ロジカド
(a) 証拠(乙90の2,乙92)及び弁論の全趣旨によれば,乙92は,ソウルドアウト株式会社が作成した本件対象期間①における広告費に係る請求書であること,乙92には,商品名として「Logicad/CPM課金」,備考として「オリゴ糖用アカウント」と記載されていること,乙90の2は,平成26年10月分及び同年11月分を除き,乙92の記載を基に被控訴人が作成した計算書であることが認められる。もっとも,乙92の記載内容からすれば,乙92には,被告商品に係る広告費が含まれるものと推認されるものの,被告商品以外の商品に係る広告費も混在しているものとみるのが相当である。
そうすると,ロジカドの広告費については,乙92による客観的裏付けのある平成27年1月分から平成28年7月分までの合計に,被控訴人内における被告商品の売上割合を乗じた額を算定すべきところ,他の広告費とは異なり,被控訴人がロジカドの広告費を負担した期間が上記期間に限られることからすれば,乗ずべき上記売上割合は,上記期間における売上割合の平均値34.93%(乙99の2の「構成比」欄記載の割合の平均値)とするのが相当である。
したがって,ロジカドの広告費については,乙90の2の「広告費合計(円・税込)」欄に記載された金額(ただし,平成26年10月及び同年11月分を除く。)に34.93%を乗じた額を,上記イの売上高から控除すべき費用として計上するのが相当である。
(b) 以上によれば,上記イの売上高から控除すべきロジカドの広告費の額は,別紙損害額計算表①の「広告費(ロジカド)」欄記載のとおり,合計667万5227円とするのが相当である。
e ラルーン
(a) 証拠(乙90の3,乙92)及び弁論の全趣旨によれば,乙92は,ソウルドアウト株式会社が作成した本件対象期間①における広告費に係る請求書であること,乙92には,商品名として「ラルーン/LaluneAds」と記載されていること,乙90の3は,乙92の記載を基に被控訴人が作成した計算書であることが認められる。
(b) しかしながら,上記のとおりの乙92の記載のみでは,「ラルーン」として記載されている金額について,いかなる内容の費目であるかや被告商品との関連性の有無が明らかではない。そうすると,被控訴人が主張するラルーンの広告費については,客観的資料による裏付けを欠くというべきである。
(c) 以上によれば,上記イの売上高からラルーンの広告費を控除することはできないというべきである(別紙損害額計算表①の「広告費(ラルーン)」欄記載のとおり)。
オ コールセンターの外注費の控除について
(ア) 証拠(乙50)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,コールセンターを通じた販売を株式会社KIZUNAに委託し,電話応対時間等に応じて業務委託料を支払っているものと認められるが,コールセンターの業務内容や本件対象期間①において要した費用の額は必ずしも明らかではない。
(イ) そうすると,上記業務委託料を上記イの売上高から控除するのは相当でないというべきである(別紙損害額計算表①の「外注費」欄記載のとおり)。
カ システム利用料の控除について
(ア) 証拠(乙49)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,被告商品を自社の電子商取引サイトにおいて販売するに当たり,商品代金の支払について決済システムを利用し,決済件数に応じてシステム利用料を支払っているものと認められるが,本件対象期間①において要したシステム利用料の額については立証されていない。
(イ) そうすると,上記システム利用料を上記イの売上高から控除するのは相当でないというべきである(別紙損害額計算表①の「システム利用料」欄記載のとおり)。
キ その他
被控訴人は,上記のほかにも,上記イの売上高から控除すべき費用に関する主張をするが,いずれも採用することができない。
ク 被控訴人が受けた利益の額
以上検討したところによれば,被控訴人が本件対象期間①において被告商品の販売により受けた利益の額は,別紙損害額計算表①の「限界利益」欄に記載されたとおり,合計7億3306万1980円となる。
ケ 推定覆滅事由及び覆滅割合について
(ア) 判断枠組み
不競法5条2項による損害額の推定は,侵害者による侵害行為がなかったとしても侵害者が受けた利益を被侵害者が受けたとはいえない事情が認められる場合には,覆滅されるものと解される。
(イ) 検討
a 本件品質誤認表示に関する覆滅事由については,原判決29頁13行目冒頭ないし32頁9行目末尾のとおりであるから,これを引用する。
b 上記aの事情によれば,被控訴人の本件品質誤認表示による被告商品の販売数量の増加と,他のオリゴ糖含有食品の販売数量の低下,更には原告商品の販売数量の低下との間には,それほど強い相関関係が成り立つとはいえない。
しかしながら,他方で,本件品質誤認表示は約4年4か月にわたって継続的に行われたものであることに加え,原告商品及び被告商品のいずれもが,他の競合品の多くとは異なり,オリゴ糖の配合割合が高いことを主なセールスポイントとする商品であり,より直接的な競合関係にあったといえることを考慮すると,本件品質誤認表示が原告商品及び被告商品の販売数量に一定の影響を及ぼしたことは否定し難いというべきである。
c 以上の各事情を総合すると,本件品質誤認表示による損害額の算定における推定覆滅の割合は,91%とするのが相当である。
コ 本件品質誤認表示による損害の額
以上によれば,本件品質誤認表示による損害の額は,別紙損害額計算表①の「推定覆滅後の金額(9%)」欄に記載したとおり,合計6597万5573円となる。
(2) 本件信用毀損行為による損害
ア 算定方法
(ア) これまで検討したとおり,被控訴人は,平成28年10月8日,本件信用毀損行為をしたものであるところ,本件信用毀損行為が,アフィリエーターが参加した本件イベントにおいてされた行為であることを考慮すると,その後のアフィリエーターによるブログ等の記事により,同月から被控訴人が本件品質誤認表示をしていたものと認められる平成30年11月までの間(以下「本件対象期間②」という。),本件信用毀損行為が上記品質誤認表示と相まって原告商品の売上げに影響を及ぼしたことは否定できないから,被控訴人の本件信用毀損行為によって,控訴人の営業上の利益が侵害されたものと認められる。
(イ) そして,不競法5条2項により,本件対象期間②において被控訴人が本件信用毀損行為によって受けた利益の額が控訴人の受けた損害の額と推定される。
イ 被控訴人が受けた利益の額
本件対象期間②における被控訴人の売上高及び控除すべき費用については,上記(1)で検討したところと同様に算定すべきであり,その金額は,別紙損害額計算表②の各費目欄に記載されたとおりである。なお,ロジカドの広告費は,本件対象期間②においては支出されていない(乙90の2,乙92)。
したがって,被控訴人が本件対象期間②において被告商品の販売により受けた利益の額は,別紙損害額計算表②の「限界利益」欄に記載されたとおり,合計2億9252万8485円となる。
ウ 推定覆滅事由及び覆滅割合について
(ア) 上記アのとおり,本件信用毀損行為が,アフィリエーターが参加した本件イベントにおいてされた行為であることを考慮すれば,その後にアフィリエーターが本件信用毀損行為の内容を基にした記事をブログ等に掲載するなどしたことによって,原告商品及び被告商品の販売数量に一定の影響が及んだ可能性を否定することはできない。
しかしながら,他方で,本件信用毀損行為がされたのは本件イベント当日に限られること,前記認定によっても,被控訴人従業員による本件説明を聞いたのは,本件イベントに参加した2000人超のアフィリエーターのうち多くとも数十人程度にとどまること,本件信用毀損行為の内容がアフィリエーターのブログ等の記事にどの程度反映されたかは不明であることなどを考慮すると,本件信用毀損行為がされたことによって直ちに上記の影響が生じるものとは考え難い。
(イ) 以上の各事情を総合すると,本件信用毀損行為による損害額の算定における推定覆滅の割合は,99%とするのが相当である。
エ 本件信用毀損行為による損害の額
以上によれば,本件信用毀損行為による損害の額は,別紙損害額計算表②の「推定覆滅後の金額(1%)」欄に記載したとおり,合計292万5280円となる。
(3) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,アフィリエーターの広告サイトにおける表示が消費者に重大な影響を与えることを考慮すべきであり,被控訴人がオリゴ糖100%以外の点についても被告商品の特徴であると宣伝広告している点を覆滅の根拠とすべきではない旨主張する。
しかしながら,オリゴ糖含有食品市場における需要者は,商品を選択するに当たって,オリゴ糖の配合割合のみならず,他にどのような成分が配合され,商品全体としてどのような効果を期待することができるのかを重要な判断材料とするものと考えられることからすれば,被控訴人がオリゴ糖100%以外の点についても被告商品の特徴であると宣伝広告している点は,覆滅事由として考慮すべきである。
また,アフィリエーターの広告サイトにおける表示が,需要者に相当程度の影響を与えることは否定することができないものの,他方で,同サイトを訪れた需要者は,必ず被控訴人のサイトを経由して被告商品を購入する仕組みとなっているのであるから,アフィリエーターの広告サイトにおける表示の影響力を過度に重視するのは相当でないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 控訴人は,乙59に記載された13商品は,需要者が着目する特徴において代替可能性のある商品ではないから,原告商品の競合品には当たらない旨主張する。
しかしながら,オリゴ糖含有食品市場においては,商品の形態を問わず,整腸作用をその主な効能の一つとして掲げている商品がほとんどであるといえる(甲72)。そして,上記市場においては,体に良いとされるオリゴ糖を含むことそれ自体が,健康に良い商品を求める需要者のニーズに合致する商品の特徴であるといえるのであるから,上記の各商品は,原告商品と共通する特徴を有する競合品であるというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 控訴人は,被控訴人が実施したアンケート結果を信用することはできない旨主張する。
しかしながら,当該アンケートは,被告商品についての感想を広く求める趣旨のものであり,対象者や質問内容等に不当な偏りがあるとはいえないことからすれば,被告商品の購入者の購入動機を知るための一定の資料になることは明らかであるといえる。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(4) 小括
以上検討したところによれば,本件における控訴人の損害額は,別紙損害額計算表③記載のとおり,合計6890万0853円であると認められる。
なお,不競法上の品質誤認表示及び信用毀損行為については,事後的にも権利者による権利の設定又は利用許諾と類似の状況が生ずることは考えられないから,この金額に消費税相当額を加えるのは相当でないというべきである。
5 争点⑤(表示の抹消等の必要性)について
(1) 本件品質誤認表示について
本件品質誤認表示に係る差止請求等が認められないことは,原判決21頁25行目の「他方,」から22頁12行目末尾までのとおりであるから,これを引用する。
(2) 本件信用毀損行為について
ア 前記2で検討したとおり,本件イベントにおける被控訴人従業員の説明(本件説明)は,控訴人の信用を毀損するものといえる。
しかしながら,本件説明は,一度のみされたことが認定されるにとどまり,このほか,本件において,その後も同様の説明が繰り返しされているなど,将来において再び控訴人の信用を毀損する説明がされる蓋然性があるというべき事情は存しない。
イ したがって,本件虚偽事実の告知又は流布の差止めを求める控訴人の請求は,理由がない。
6 結論
以上によれば,控訴人の請求は,被控訴人に対し,6890万0853円及びこれに対する遅延損害金(平成30年2月分までは本件訴状の送達の日の翌日である平成30年3月23日,それ以降の各月分については毎月末日を起算日とする年5分の割合による遅延損害金)の各支払を求める限度で認容すべきであるところ,これと異なる原判決は相当でない。
よって,原判決を変更することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
(裁判長裁判官 東海林保 裁判官 中平健 裁判官 都野道紀)
別紙
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