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裁判年月日 令和 2年 3月23日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(ワ)38208号
事件名 社員代表訴訟事件
文献番号 2020WLJPCA03238010
出典
裁判年月日 令和 2年 3月23日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(ワ)38208号
事件名 社員代表訴訟事件
文献番号 2020WLJPCA03238010
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用及び補助参加費用は,原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告らは,連帯して,補助参加人に対し,8768万6868円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Y1,被告Y2,被告Y4,被告Y5,被告Y6及び被告Y9は平成29年11月23日,被告Y7は同月24日,被告Y8及び被告Y10は同月27日,被告Y3は同月29日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
補助参加人は,平成26年5月から平成28年2月にかけて,別紙弁護士報酬支出一覧表の「支払日(又は請求を受けた日)」欄記載の日に,「支出額」欄記載の弁護士報酬(合計9282万7978円)を支出した(以下,「番号」欄記載の各番号に従い,「本件支出1」,「本件支出2」などといい,本件支出1ないし18を併せて「本件各支出」という。)。
本件は,公益社団法人である補助参加人の代議員であり,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法人法」という。)上の社員である原告らが,①補助参加人の理事である被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7及び被告Y8並びに理事であった被告Y1及び被告Y2(以下,併せて「被告理事ら」という。)は,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,補助参加人に本件各支出を余儀なくさせ,本件各支出のために違法又は瑕疵のある手続により退職給付引当預金の取崩し(以下「本件取崩し1」という。)及び減価償却引当預金の取崩し(以下「本件取崩し2」といい,本件取崩し1と併せて「本件各取崩し」という。)を行い,②補助参加人の監事である被告Y10及び監事であった被告Y9(以下,併せて「被告監事ら」という。)は,被告理事らによる本件各支出及び本件各取崩しを監視又は監督すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠って放置し,上記①及び②の任務懈怠によって,補助参加人が本件各取崩しの合計額に相当する8768万6868円の損害を被ったなどと主張して,被告らに対し,法人法111条1項に基づき,上記8768万6868円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Y1,被告Y2,被告Y4,被告Y5,被告Y6及び被告Y9については平成29年11月23日,被告Y7については同月24日,被告Y8及び被告Y10については同月27日,被告Y3については同月29日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める代表訴訟である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1) 当事者等
ア 補助参加人は,昭和33年4月10日,社団法人として認可された団体であり,平成24年4月1日,公益社団法人に移行するとともに,別紙「定款の定め(抄)」記載の内容を含む定款を作成した。
補助参加人は,日本古来の武道である空手道の研究及び指導によって,その技量の向上と自己鍛錬の普及を図り,もって国民の体位の向上と健全なスポーツ精神の涵養に寄与するとともに,礼節を重んじる日本武道の精神を国際的に広めることにより世界平和に貢献することを目的としている。(甲2,3の1,丙61)
イ 原告らは,補助参加人の代議員であり,補助参加人の定款上,法人法上の社員の地位にある者である(第5条)。
補助参加人の会員の一部で構成される「a会」(以下「a会」という。)と称するグループがあり,原告らは,a会に所属している。
ウ 被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7及び被告Y8は,補助参加人の理事であり,被告Y1及び被告Y2は,補助参加人の理事であった者である(被告理事ら)。
平成27年10月21日までは被告Y1が,同日以降は被告Y6が補助参加人の代表理事を務めている。また,被告理事らの在任期間は別紙在任期間一覧表のとおりである。
エ 被告Y10は補助参加人の監事であり,被告Y9は補助参加人の監事であった者である(被告監事ら)。
被告監事らの在任期間は別紙在任期間一覧表のとおりである。
(2) 補助参加人による弁護士報酬の支出等
補助参加人は,平成26年5月から平成28年2月にかけて,次のアないしキの経緯により,別紙弁護士報酬支出一覧表の「支払日(又は請求を受けた日)」欄記載の日に,「支出額」欄記載の弁護士報酬(合計9282万7978円)を支出した(本件各支出)。
ア 本件支出1,2,5及び6について
(ア) 被告Y1は,宮内庁に対し,補助参加人が主催する○○選手権大会につき天皇杯の下賜を請願する旨の「「天皇杯」ご下賜請願書」と題する平成25年12月22日付け書面を提出した(以下「本件請願」という。)。
補助参加人が協力団体として加入していた公益財団法人b連盟(以下「b連盟」という。)は,本件請願がb連盟による天皇杯及び皇后杯の下賜申請を妨害するものであるとして,補助参加人を協力団体から除名する処分をした。(丙66)
(イ) 補助参加人は,前記(ア)の除名処分を争うために弁護士であるA(以下「A弁護士」という。)に法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出1,2,5及び6を行った。
イ 本件支出3及び17について
(ア) 補助参加人の内部規則である「公益社団法人Z協会代議員選挙規則」(以下「本件選挙規則」という。)には,別紙「本件選挙規則(抄)」記載のとおりの定めが含まれている。(甲24)
(イ) 補助参加人の正会員であったB(以下「B」という。)は,平成26年3月に実施された補助参加人の代議員選挙(以下「本件選挙」という。)において東京都選挙区の代議員として当選した。
(ウ) 前記(イ)のBの当選を知った被告Y1は,理事会において,Bを代議員として取り扱わない旨の提案(以下「本件提案」という。)をし,その賛同を得た。その上で,被告Y1は,平成26年6月21日に開催された補助参加人の社員総会において,Bに代議員としての権限の行使を認めなかった。
Bは,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として,代議員の地位にあることの確認訴訟を提起した(同裁判所平成26年(ワ)第23904号地位確認等請求事件)。(甲17)
(エ) 補助参加人は,前記(ウ)の訴訟に対応するためにA弁護士及びc法律事務所(以下「c法律事務所」という。)に法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出3及び本件支出17を行った。
ウ 本件支出4について
(ア) a会に所属する原告らを含む補助参加人の社員らは,平成26年10月15日,法人法37条1項及び補助参加人の定款18条2項に基づき,被告Y1に対し,被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的とする社員総会の招集を請求した(以下「本件招集請求」という。)。(丙63)
(イ) 原告らを含む補助参加人の社員は,平成26年12月9日,東京地方裁判所に対し,被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的とする社員総会の招集許可の申立てをした。
同裁判所は,平成27年1月21日,上記申立てを許可し,同月31日,上記社員総会が開催された。(丙5)
(ウ) 補助参加人は,前記(イ)の申立てに対応するためにA弁護士に法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出4を行った。
エ 本件支出7ないし14について
補助参加人は,d法律事務所(以下「d法律事務所」という。)に対し,法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出7ないし14を行った。
オ 本件支出15について
補助参加人は,e法律事務所(以下「e法律事務所」という。)に対し,告訴人を補助参加人とし,被告訴人を補助参加人の正会員であるCとする名誉毀損に係る告訴状(以下「本件告訴状」という。)の作成を含む法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出15を行った。(丙25)
カ 本件支出16について
補助参加人は,平成27年11月21日,臨時社員総会を開催したところ,その総会対応を含む法律事務をc法律事務所に委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出16を行った。
キ 本件支出18について
(ア) 補助参加人の総本部指導員として勤務し,「f会」と称する会に所属していたD(以下「D」という。)は,他の総本部指導員と共にg労働組合(以下「本件組合」という。)を結成し,平成26年6月20日,補助参加人に対して本件組合の結成を通知した。(甲38,47)
(イ) 補助参加人は,Dが補助参加人に対する誹謗中傷行為を行った等として,Dに対し,平成27年2月16日付けで,懲戒解雇の意思表示をした(以下「本件懲戒解雇」という。)。(丙64)
(ウ) Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として,本件懲戒解雇の無効確認等を求める訴訟を提起した(同裁判所平成27年(ワ)第22149号解雇無効確認等請求事件)。(甲30)
(エ) 本件組合は,平成27年2月18日,補助参加人に対し,本件懲戒解雇を議題とする団体交渉を申し入れたが,補助参加人はこれに応じなかった(以下「本件団交拒否」という。)。
そこで,本件組合は,東京都労働委員会に対し,本件団交拒否には正当な理由がない等と主張して,救済命令の申立てを行った。
(オ) 補助参加人は,h法律事務所(以下「h法律事務所」という。)に対し,前記(ウ)の訴訟及び前記(エ)申立ての対応に係る法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出18を行った。
(3) 本件各取崩し
ア 平成27年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産の部の「基本財産」欄に減価償却引当預金として4794万1394円が,「特定資産」欄に退職給付引当預金(資産)として1億0509万2594円がそれぞれ計上されていた。(甲41の1,丙4,72,73)
イ 平成28年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産の部の「基本財産」欄に減価償却引当預金として294万7900円(前年度と比較して4499万3494円の減少。本件取崩し2)が,「特定資産」欄に退職給付引当預金(資産)として6239万9220円(前年度と比較して4269万3374円の減少。本件取崩し1)がそれぞれ計上されていた。(甲8,41の2,丙72,73)
(4) 提訴請求
原告らは,平成29年1月23日付け書面(以下「本件提訴請求書」という。)により,補助参加人の代表理事である被告Y6並びに監事である被告Y10及び被告Y9に対し,法人法278条1項本文に基づき,本件各支出及び本件各取崩しについて被告らの責任を追及する訴えの提起を請求した(以下「本件提訴請求」という。)。
原告らは,補助参加人が本件提訴請求の日から60日を経過しても本件提訴請求に係る訴えを提起しなかったため,同年11月10日,法人法278条2項に基づき,本件訴えを提起した。(甲4の1・2)
2 争点
(1) 本件訴えの適法性
(2) 被告理事らの任務懈怠の有無
ア 本件支出1,2,5及び6に係る任務懈怠の有無
イ 本件支出3及び17に係る任務懈怠の有無
ウ 本件支出4に係る任務懈怠の有無
エ 本件支出7ないし14に係る任務懈怠の有無
オ 本件支出15に係る任務懈怠の有無
カ 本件支出16に係る任務懈怠の有無
キ 本件支出18に係る任務懈怠の有無
ク 本件各取崩しの手続に係る任務懈怠の有無
(3) 被告監事らの任務懈怠の有無
(4) 補助参加人の損害の有無及び額
3 争点に関する当事者の主張
(1) 本件訴えの適法性
(原告らの主張)
本件提訴請求書には,請求を特定するのに必要な事実(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則(以下「法人法施行規則」という。)85条2号)が記載されており,有効な提訴請求があるといえ,本件訴えは不適法ではない。
(被告ら及び補助参加人の主張)
本件提訴請求書には,請求を特定するのに必要な事実が記載されておらず,有効な提訴請求がないから,本件訴えは不適法であり,却下されるべきである。
(2) 被告理事らの任務懈怠の有無
ア 本件支出1,2,5及び6に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 補助参加人には天皇杯及び皇后杯の下賜申請ないし請願資格がないところ,被告Y1は,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,b連盟が天皇杯及び皇后杯の下賜申請を進めていたことを認識しながら,本件請願を強行した結果,b連盟から除名処分を受ける事態を招き,補助参加人に本件支出1,2,5及び6を余儀なくさせた。
補助参加人に天皇杯及び皇后杯の下賜申請ないし請願資格がないことは,被告Y1が理事会の事前承認を得ずに本件請願を行ったこと,天皇杯及び皇后杯は,日本国内において,1競技につき,その競技を統括している団体に対して1つのみ下賜されるものであるが,補助参加人は上記団体ではないこと,補助参加人は,b連盟に対し,本件請願がb連盟の上記下賜申請と競合し,混乱を招いたことにつき遺憾の意を表明したことからも明らかである。
したがって,被告Y1の本件請願は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y1を除く被告理事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y7及び被告Y8を除く。)が,補助参加人の理事として,被告Y1の本件請願を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件請願を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人は,本件請願に先立つ平成25年12月22日,臨時理事会を開催して,本件請願につき承認する旨の決議を行っており,被告Y1は,本件請願につき理事会の事前承認を得ている。また,本件請願を制限する法令ないしb連盟における規約は存在しない。そして,東京地方裁判所が,平成26年10月24日,補助参加人がb連盟の協力団体の地位にあることを仮に定める仮処分決定をしていることからすると,b連盟の除名処分には理由がない。
したがって,A弁護士に委任した本件支出1,2,5及び6に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。なお,
イ 本件支出3及び17に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 本件支出3について
a Bは,本件選挙において適正に代議員として選出されたところ,被告Y1は,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,理事会において何らの根拠なく本件提案をし,その賛成を得た上で,平成26年6月21日に開催された社員総会においてBに代議員としての権限の行使を認めなかった。
これが契機となって,Bが代議員の地位にあることを確認するために前記前提事実(2)イ(ウ)の訴訟の提起をし,補助参加人がこれに対応するために本件支出3を余儀なくされたことから,被告Y1の本件提案は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
被告Y1の本件提案に何ら根拠がないことは,(a)本件選挙規則8条によれば,代議員選挙において選出された代議員の資格を争うために,地方選挙管理委員会に対して異議を申し立てることができるとされているところ,補助参加人は,本件選挙におけるBの当選につき上記異議を申し立てていないこと,(b)内閣府公益認定等委員会が作成した「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」と題する平成20年10月10日付け書面には,社員を選出するための選挙が理事及び理事会から独立して行われるべきである旨の記載があること,(c)補助参加人の定款には,「理事又は理事会は,代議員を選出することはできない。」(12条3項後段)との規定があること,(d)補助参加人の中央選挙管理委員会が作成した「公益社団法人Z協会代議員選挙について」と題する平成28年2月18日付け書面には,「各選挙区においては,選挙管理委員会に対する他からの関与又は介入等については,これを徹底して排除していただきたいということです。」及び「都道府県等本部長又は当該地区の理事等は,当該地方選挙管理委員会が管理執行する代議員選挙については一切関与できません。」との記載があること,(e)補助参加人は,上記訴訟において,訴え提起から7箇月を経過して初めて,本件選挙の立候補の締切日又は当選決定までに城北支部への移籍登録が完了していなかったことをBの代議員の地位を否定する理由として主張したことから明らかである。
b 被告Y1を除く被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y1の職務の執行を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,Bの代議員資格を否定する根拠やその妥当性について何ら検討することなく,理事会において漫然と被告Y1の本件提案に賛成したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 本件支出17について
a 前記(ア)aのとおり,本件選挙において,Bが東京都選挙区の代議員として適正に当選したことは明らかであるところ,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5が,補助参加人の(代表)理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,Bが代議員の地位にあることを早期に認めて前記(ア)aの訴訟を収束させることなく,漫然と理事会において本件支出17の支払承認をしたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
b 前記aの理事会を欠席した被告Y7及び被告Y8が,補助参加人の理事として,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5の職務の執行を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件支出17を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
c 被告Y1及び被告Y2は,本件支出17が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1は本件支出17に係る法律事務をc法律事務所に委任した者として,被告Y2はその委任を監視すべき立場にあった者として,それぞれ補助参加人に対する任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。本件選挙規則等の内部規則によれば,Bが本件選挙において被選挙権を有していなかった可能性があった。そこで,被告Y1を除く被告理事らは,代議員資格のない者に社員総会における議決権行使を認めて社員総会決議の取消事由が発生することを避けるために,被告Y1の本件提案に賛成したにすぎない。
したがって,A弁護士及びc法律事務所に委任した本件支出3及び17に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。
ウ 本件支出4に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
ア 被告理事らは,補助参加人の理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,自らの立場を守るという不当な動機に基づき,正当な理由なく補助参加人の社員らの本件招集請求を拒絶した。
これが契機となって,上記社員らは,東京地方裁判所に対し,上記社員総会の招集許可の申立てを行い,補助参加人は,これに対応するために本件支出4を余儀なくされたことから,被告理事らの上記行為は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
本件招集請求の拒絶に正当な理由がないことは,上記申立てについて平成27年1月14日に第1回審尋期日が開催されたところ,同裁判所は,同月21日の第2回審尋期日には上記申立てを許可するとの判断を示し,同月31日に上記社員総会が開催されたこと,上記社員総会における議案は,被告Y1及び被告Y2の理事解任であり,被告Y1及び被告Y2は上記議案に利害関係を有していたこと,上記議案は補助参加人の最高意思決定機関である社員総会において代議員各人が判断すべき事項であること,本件招集請求が権利濫用に当たるような事情もなかったことから明らかである。
イ したがって,被告理事らによる本件招集請求の拒絶は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。社員による社員総会の招集請求は,請求を受けた理事に社員総会の招集義務を課すものではない。また,前記(2)ウ(原告らの主張)アの議案はb連盟から除名処分を受けたことを理事解任の理由とするものであるが,前記(2)ア(被告ら及び補助参加人の主張)のとおり,b連盟の除名処分には根拠がなかったから,上記議案は不適切であったこと,社員総会の招集に必要な費用は本件支出3(32万4000円)を容易に上回ることからすれば,本件招集請求に応じる必要性がないとした被告理事らの判断には合理性がある。
したがって,A弁護士に委任した本件支出4に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。
エ 本件支出7ないし14に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) d法律事務所に対する最初の弁護士報酬の支払である本件支出7(597万3483円)は,補助参加人の平成27年度の弁護士報酬を含む支払手数料の予算額(1500万円)の約4割を占めていた。また,d法律事務所の本件支出7ないし14に係る請求書には,弁護士が行った具体的な作業内容,作業日時及び作業時間等が記載されていなかった。さらに,d法律事務所は,本件支出7ないし14に係る法律事務を処理するに当たり,補助参加人に対し,上記法律事務に係る成果としての書類等の交付をしなかった。
被告Y1及び被告Y6が,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,d法律事務所の上記請求を精査して,支払を留保するなどの対応をすることなく,漫然と本件支出7ないし14を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y1及び被告Y6を除く被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y1及び被告Y6の前記(ア)の行為を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,被告Y1及び被告Y6に対して前記(ア)の請求につき精査を促すことも,d法律事務所に対して作業時間や作業内容の根拠を明らかにするように要請したりすることもなく,漫然と本件支出7ないし14の承認をしたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(ウ) なお,被告Y1及び被告Y2は,本件支出13及び本件支出14が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1はd法律事務所に対して上記各支出に係る法律事務を委任した者として,被告Y2はその委任を監視すべき立場であった者として,それぞれ補助参加人に対する任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人がd法律事務所に対して委託した本件支出7ないし14に係る法律事務は必要かつ有益であり,d法律事務所から対価役務の提供も受けていた。また,被告理事らは,法律事務の委任先を決定するにつき広範な裁量を有している。
そして,補助参加人において,d法律事務所に対する弁護士報酬の負担は十分に可能であった上,補助参加人は,その支払に伴って予算の修正が必要になる場合には,内部規則に基づき,理事会において支払承認をしていた。
オ 本件支出15に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) e法律事務所による本件告訴状の作成等に係る弁護士報酬の請求は,タイムチャージ方式で金額が算定されていたにもかかわらず,その請求書には具体的な作業時間や作業内容の記載がなかった。また,その請求金額(97万4771円)は,一般的な弁護士報酬の相場(30万円ないし50万円)と比較して高額であった。
被告Y2が,補助参加人の理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,本件告訴状を作成する必要性や上記請求金額の妥当性を検討することも,報酬相場につき他の法律事務所との比較検討をすることもなく,漫然と本件支出15を決裁したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y2を除く被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y2の前記(ア)の行為を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,被告Y2に対して前記(ア)の請求内容の精査を促すことも,自らe法律事務所に対して上記請求の作業時間の確認を行うこともなく,漫然と本件支出15を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(ウ) なお,被告Y1は,本件支出15が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,e法律事務所に対して法律事務を委任した者として,補助参加人に対する任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人がe法律事務所に対して委託した本件支出15に係る法律事務は必要かつ有益であり,e法律事務所から対価役務の提供も受けていた。また,被告理事らは,法律事務の委任先を決定するにつき広範な裁量を有している。
カ 本件支出16に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 補助参加人から法律事務の委任を受けたc法律事務所に所属する弁護士であるE(以下「E弁護士」という。)は,平成27年11月21日に開催された補助参加人の臨時社員総会において,新たな理事を選任する議案の決議方法につき「最大14人の候補者に○をつける」との提案をしたところ,その決議方法は補助参加人の定款に明白に違反するものであり(定款第21条3項),後に東京地方裁判所は,決議方法が定款に違反するものとして上記臨時社員総会における理事の選任決議を取り消した(同裁判所平成27年(ワ)第35505号社員総会決議無効確認等請求事件)。
上記のとおり,E弁護士の業務遂行の内容には重大な瑕疵があったところ,被告Y6が,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,c法律事務所による弁護士報酬の請求につき減額等を求めることなく,漫然と本件支出16を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y6を除く他の被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y6の前記(ア)の行為を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,減額を検討することなく,漫然と本件支出16を承認したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(ウ) なお,被告Y1及び被告Y2は,本件支出16が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1は本件支出16に係る法律事務をc法律事務所に対して委任した者として,被告Y2はその委任につき監視すべき立場にあった者として,補助参加人に対する任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。E弁護士は,総会検査役の面前で,a会に所属する理事が委任した弁護士であるF(以下「F弁護士」という。)との間で決議方法の事前協議を行っており,法律専門家ではない被告理事らにとって,その決議方法が補助参加人の定款に違反することが明白であったということはできない。
したがって,c法律事務所に委任した本件支出16に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。
キ 本件支出18に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 本件懲戒解雇及び本件団交拒否は不当であることが明白であったところ,被告Y6が,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,速やかに本件懲戒解雇を撤回してD及び本件組合との紛争を収束させることなく,漫然と本件支出18を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
本件懲戒解雇及び本件団交拒否が不当であったことは,(a)Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を債務者として,本件懲戒解雇の無効を理由に賃金仮払い等を求める仮処分命令を申し立てたところ(同裁判所平成27年(ヨ)第21029号地位保全等仮処分命令申立事件),同裁判所は,同年11月30日,Dの申立てを一部認容し,補助参加人に対し,賃金の仮払いを命じたこと,(b)東京都労働委員会は,平成29年2月21日,本件団交拒否につき不当労働行為の成立を認め,本件組合の申立ての一部を認容する命令を発したところ,その命令書には,「当委員会は,Dの懲戒解雇から既に2年ほどが経過し,分離した不当労働行為事件(解雇部分)及び訴訟もいまだ係属中という状況をみるに,紛争のこれ以上の長期化を避けるためにも,団体交渉において,労使双方が,紛争の全面解決に向け,真摯に協議し速やかに合意形成を図ることを強く望むものである」との記載があることから明らかである。
(イ) 被告Y6を除く被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y6の前記(ア)の行為を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件支出18を承認したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(ウ) なお,被告Y1及び被告Y2は,本件支出18が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1は本件支出18に係る法律事務をh法律事務所に委任した者として,被告Y2はその委任を監視すべき立場にあった者として,補助参加人に対して任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人は,d法律事務所に所属する弁護士の助言を受け,Dに対して弁明の機会を与えた上で,本件懲戒解雇を行ったものであり,その手続や内容は適正であった。
したがって,h法律事務所に委任した本件支出18に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。
ク 本件各取崩しの手続に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
被告理事らが,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,次の(ア)ないし(オ)のとおり違法又は瑕疵のある手続により本件各取崩しを行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
なお,被告Y1及び被告Y2は,本件各取崩しが行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1及び被告Y2が本件各支出につき任務懈怠責任を負うことは前記アないしキのとおりであることからすると,本件各支出が原因となった本件各取崩しについても任務懈怠責任を免れない。
(ア) 補助参加人が公益認定を受けたのは平成24年3月21日であるところ,同月31日時点における補助参加人の貸借対照表の資産の部には,「特定資産」欄に減価償却引当預金として4791万5162円及び退職給付引当預金(資産)として9828万7439円が他の勘定科目と区分して計上されており,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)は,公益法人において公益目的事業を行うために使用し,又は処分しなければならないものとされている「公益目的事業財産」(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律18条,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則25条1項)に当たる。
そうであるにもかかわらず,公益目的事業ではなく,弁護士報酬の支出という補助参加人の運営のために本件各取崩しが行われたのであり,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律18条に違反する。
(イ) 内閣府が作成した「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)」と題する書面には,前記(ア)の公益目的事業財産のうち,貸借対照表等において基本財産又は特定資産として表示された金融資産は,法人自らが公益目的に使用すると定めた財産として公益目的保有財産に該当する旨,公益目的保有財産を取り崩す場合には,定款等の内部規程を定めるとともに,その規程に従い,理事会,社員総会,評議員会等の機関決定を経る必要がある旨の記載がある。
補助参加人の貸借対照表上,減価償却引当預金は基本財産として,退職給付引当預金(資産)は特定資産としてそれぞれ計上されており,これらは公益目的保有財産に該当する。そうであるにもかかわらず,取崩しに係る内部規程が制定されることも,理事会等の機関決定を経ることもなく本件各取崩しが行われた。
(ウ) 補助参加人における平成27年度予算によれば,経常収益が3億5480万円であるのに対し,経常費用が3億7730万円を計上し,2250万円の赤字が見込まれていた。また,上記予算によれば,弁護士報酬を含む支払手数料の予算は1500万円であったところ,補助参加人は,平成27年5月29日時点において,既に弁護士報酬として1654万2397円を支出した。
したがって,本件各取崩しをしなければ本件各支出を行うことができなかったということができ,違法な支出である。
(エ) 退職給付引当預金(資産)を取り崩すに当たっては,「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」(法人法119条)として日本公認会計士協会が策定した「公益法人会計基準に関する実務指針」に基づき,目的,積立の方法,目的内取崩しの要件,目的外取崩しの要件,運用方法等を定めた取扱要領を制定した上で,その取扱要領の手続に従う必要があった。
そうであるにもかかわらず,取扱要領が制定されることなく,本件取崩し1が行われた。
(オ) 補助参加人は,平成27年6月18日から同年12月17日にかけて合計約8600万円の退職給付引当預金(資産)を取り崩しているところ,これは,同年3月31日時点における補助参加人の資産(5億9804万3868円)の14.4パーセントに相当すること,退職給付引当預金(資産)は,団体としての財産的基盤の強化に資する重要な資産であり,前記(エ)のとおり取扱要領の制定が要請されていること,補助参加人は,内閣府立入検査において,退職給付引当預金(資産)を補填すべきである旨の指摘を受けたことからすれば,退職給付引当預金(資産)は補助参加人にとって重要な財産であった。
そうであるにもかかわらず,理事会の承認なく本件取崩し1が行われており,法人法90条4項1号に違反する。
(カ) 減価償却引当預金は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則22条3項3号に掲げる資金(以下「資産取得資金」という。)として計上されているところ,「公益法人・一般法人の運営と立入検査対応Q&A110」と題する書面によれば,資産取得資金の目的外取崩しを行う場合には,あらかじめ定められている特別の手続を経る必要があり,かつ,目的外取崩しであっても,公益目的の資産取得資金は原則として公益目的事業に関する支出にしか使用することができないとされている。
そうであるにもかかわらず,上記特別の手続を経ることも,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律18条にいう「正当な理由」もなく本件取崩し2が行われた。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)は,公益目的事業財産に当たらない。また,指定正味財産を財源としない任意で積み立てた特定資産を減少させる場合には,法人自らが内部規程等で取崩しの手続を定めた場合を除き,法令上の制限はない。
(3) 被告監事らの任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 被告監事らは,被告理事らが適切に補助参加人の財産を管理しているかを監視・監督し,必要に応じて是正すべき職務上の注意義務を負う(法人法99条1項)。
被告監事らは,本件各支出の額が補助参加人の財産基盤に重大な影響を与え,その運営に支障を来すおそれがあったにもかかわらず,本件各支出の必要性や相当性について被告理事らに質問することなく,漫然とこれを放置した。
したがって,被告監事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y9を除く。)の上記行為は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y9は,本件支出3について,Bの代議員資格を否定する理事会に参加していないものの,補助参加人の監事に就任した後,Bの補助参加人に対する訴訟への応訴や本件支出3について何ら異議を述べていないことから,監視義務違反を免れない。
(被告監事らの主張)
争う。
(4) 補助参加人の損害の有無及び額
(原告らの主張)
本件各取崩しに伴い振り替えた預金が本件各支出の原資となっており,補助参加人は,本件各支出により,本件各取崩しを余儀なくされたことから,被告らの前記任務懈怠と相当因果関係のある補助参加人の損害は,本件各取崩しの合計額に相当する8768万6868円である。
本件各取崩しにより補助参加人に損害が発生していることは,補助参加人は,内閣府立入検査において,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)を補填すべきである旨の指摘を受けたことから,合計8600万円の補填計画を作成し,改めて減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)の積立てを開始しているところ,本件各取崩しがなければ上記各資金を別の用途に使用することができたことから明らかである。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人は,本件各取崩しの時点で,本件各支出に係る弁護士報酬支払債務を負っていたのであり,本件各取崩しにより預金が減少するとしても,これに対応する負債も減少するのであるから,本件各取崩しにより補助参加人に損害が発生したとも,本件各取崩しと原告らの主張する上記損害との間に相当因果関係があるともいえない。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(本件訴えの適法性)について
(1) 本件提訴請求は,補助参加人に対して具体的な訴訟の提起を求めるものであるから,本件提訴請求書には,①「被告となるべき者」及び②「請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実」の記載が必要であり(法人法施行規則第85条),これらの事項が記載されていない場合には有効な提訴請求があったとはいえない。そして,被告ら及び補助参加人は,本件提訴請求書には,上記②の事実が記載されておらず,有効な提訴請求がないから,本件訴えは不適法であり,却下されるべきである旨を主張する。
(2) しかしながら,前記(1)②の記載は,事案の内容や補助参加人が認識している事実を考慮し,補助参加人が,いかなる事実及び事項について責任の追及を求められているのかを判断し得る程度に特定されていれば足りると解するのが相当である。そして,証拠(甲4の1・2)によれば,本件提訴請求書には,被告らは,補助参加人の理事又は監事として,信義誠実をもってその職務を遂行すべき職務上の義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,本件各支出を含む不要かつ過大な弁護士報酬の支払のため,適正な手続を経ずに本件各取崩しを行ったことから,被告らの責任追及を求める旨の記載があることが認められる。
そうすると,本件提訴請求は,本件各支出を原因とする本件各取崩しにつき被告らの責任追及を求める趣旨であることが明らかであるところ,補助参加人においてもこのことを容易に判断することができたということができ,本件提訴請求書には,前記(1)②の事実が記載されているものと認められ,これを覆すに足りる資料はない。
したがって,本件訴えは不適法であるとはいえず,前記(1)の被告ら及び補助参加人の主張は採用することができない。
2 認定事実
前記前提事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 当事者等
ア 補助参加人は,昭和33年4月10日,社団法人として認可された団体であり,平成24年4月1日,公益社団法人に移行するとともに,別紙「定款の定め(抄)」記載の内容を含む定款を作成した。
補助参加人は,日本古来の武道である空手道の研究及び指導によって,その技量の向上と自己鍛錬の普及を図り,もって国民の体位の向上と健全なスポーツ精神の涵養に寄与するとともに,礼節を重んじる日本武道の精神を国際的に広めることにより世界平和に貢献することを目的としている。また,補助参加人は,平成25年12月時点で,3万6659名の会員と904の支部を有しており,△△選手権大会,□□選手権大会,◇◇選手権大会及び◎◎リーグ戦等の大会を開催していた。(丙66)
イ 原告らは,補助参加人の代議員であり,補助参加人の定款上,法人法上の社員の地位にある者である(第5条)。また,補助参加人の会員の一部で構成されるa会と称するグループがあり,原告らは,a会に所属している。
ウ 被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7及び被告Y8は補助参加人の理事であり,被告Y1及び被告Y2は補助参加人の理事であった者である。平成27年10月21日までは被告Y1が,同日以降は被告Y6が補助参加人の代表理事を務めている。また,被告理事らの在任期間は別紙在任期間一覧表のとおりである。
エ 被告Y10は補助参加人の監事であり,被告Y9は補助参加人の監事であった者である。また,被告監事らの在任期間は,別紙在任期間一覧表のとおりである。
(2) 補助参加人における経費の支払手続等
ア 補助参加人において平成26年9月25日に策定及び施行された「経費支出決裁基準」によれば,10万円超の支出に係る決裁の起案,審査及び決裁は,稟議申請書をもって行うが,稟議書の代用として請求書のコピーを使用することも可能とされている。また,同基準によれば,10万円から50万円までの経費は事務局担当専務理事補佐が審査し,常勤理事が決裁を行い,50万円から100万円までの経費は常勤理事が審査し,専務理事が決裁を行い,100万円を超える経費は常勤理事及び専務理事が合議により審査し,会長が決裁を行うとされている。(丙29)
イ 補助参加人において平成27年6月11日に策定及び施行された「経費管理規定」(同年4月1日以降の経費の支出について適用される。)には,次の規定がある。(丙30)
(目的)
第1条 経費管理規定は,経費管理に関する運営基準を定めたものである。
(運営の原則)
第2条 経費は理事会の承認を受けた予算書(当該年度の事業計画書,収支予算書,資金調達及び設備投資の見込み)に則り運営する。
(予算の修正)
第4条 予算書各項目について一定以上の金額の差異が見込まれる場合並びに新規事態に対応する場合は新たに起案し,常勤理事の審査を経た上で決裁を得る。会長による決裁を受ける事態は直近開催の理事会の承認を得ることとする。
2 予算書各項目について一定以上の金額の差異とは,予算額の20%または10万円の少ない額を言う。
3 新規事態とは予算項目にない事態を言う。
(決裁権限)
第5条 決裁の権限は次の通りとする。
100万円超 会長
100万円以下 専務理事
50万円以下 常勤理事
但し10万円以下の経費及び10万円を超える場合でも経常的な一般管理費(水道光熱費,通信費,印刷費,その他の雑費)は起案を省略し決裁を事務局長に委ねることができる。
2 決裁は稟議申請書を持って行う。但し訴訟費用等事前に金額を特定しえない場合は請求書のコピーの稟議書代用も可とする。
ウ 補助参加人の平成27年度予算(同年4月1日から平成28年3月31日まで)によれば,経常収益が3億5480万円であるのに対し,経常費用が3億7730万円と見込まれていた。また,弁護士報酬に係る予算は1500万円とされていた。(甲5,丙48)
(3) 本件支出1,2,5及び6に関する事実
ア b連盟は,昭和44年頃に財団法人の認可を受けた団体である。補助参加人は,協力団体としてb連盟に加入している。(丙25,66)
イ 天皇杯・皇后杯とは,天皇・皇后から賜った記念杯を意味し,これが下賜されると,その主催する大会等は格式高いものとして評価される。天皇杯・皇后杯の下賜を受けるためには,文部科学省を通じて宮内庁に下賜申請を行う方法と,宮内庁に対して直接請願を行う方法がある。(甲45,丙25)
ウ b連盟は,平成22年頃,天皇杯・皇后杯の下賜申請を検討していたが,補助参加人がこれに対して反対の意見を表明したことから,上記下賜申請を見送った。(甲16,丙60)
エ 宮内庁は,平成25年11月頃,文部科学省を通じて,b連盟に対し,空手界の主要な団体間で協議・調整の上で天皇杯・皇后杯の下賜申請を行うように教示した。(甲16,丙60)
オ b連盟は,平成25年12月6日,理事会を開催し,同理事会において,天皇杯・皇后杯の下賜申請をする旨の決議をした。
b連盟は,同月頃,文部科学省に対し,上記下賜申請を行った。(甲16,丙25,60)
カ 被告Y1は,宮内庁に対し,補助参加人が主催する○○選手権大会につき天皇杯の下賜を希望する旨の平成25年12月22日付け「「天皇杯」ご下賜請願書」と題する書面を提出した(本件請願)。
上記書面には,補助参加人は,多数の会員,支部及び海外加盟国を有していること,内閣総理大臣杯を授与されている大会を含む全国規模の空手大会を多数開催していること,b連盟にはない研修生制度により育成した専任空手指導員が所属していること,b連盟よりも古い歴史があること,空手の指導・普及活動を推進していること等から,天皇杯の下賜を受ける資格がある旨の記載がある。
被告Y1は,本件請願に先立ち,理事会の承認を得ていなかったが,事後的には理事会の承認を得た。(甲38,丙66)
キ b連盟は,平成26年1月頃,本件請願がb連盟による前記オの下賜申請を妨害したとして,補助参加人に対し,本件請願の取下げを勧告するとともに,その勧告に従わない場合には,補助参加人をb連盟の協力団体から除名する旨の通知をした。(丙60)
ク b連盟は,補助参加人が前記キの勧告に従わないことから,補助参加人に対し,b連盟の協力団体から除名する旨の平成26年3月10日付け処分通知書を送付した。
上記処分通知書には,「処分事由」欄に「公益社団法人Z協会は,平成25年12月22日天皇杯・皇后杯下賜の請願書を宮内庁に送付し,(公財)b連盟の天皇杯・皇后杯申請,下賜に至る過程において重大なる障碍を招いた。このことは,本連盟の諸規程,統制に違反するもので,協力団体として認められない行為である。この件は,憲法上保障されている請願の権利とは何ら関係のないもので,当連盟のガバナンス構築に必要な処置である。」との記載があり,「根拠規程」欄に「公益財団法人b連盟規約第14条第4項」との記載がある。(丙69)
ケ 補助参加人は,b連盟による前記クの除名処分により,所属会員の段位の移行等に支障が生ずるとともに,国民体育大会等の大会への参加が制限されることになった。
コ 補助参加人は,A弁護士に対し,b連盟による前記(3)クの除名処分の法的対応に係る法律事務を委任した。
被告Y1は,補助参加人の代表理事として,A弁護士に対し,上記委任に係る弁護士報酬として,平成26年5月23日には86万4000円を(本件支出1),同年8月19日には216万円を(本件支出2)それぞれ支払った。
なお,前記(2)アの「経費支出決裁基準」の策定及び施行前であったことから,本件支出1及び本件支出2に当たり稟議書は作成されなかった。(丙9,10)
サ 補助参加人は,平成26年9月10日,b連盟を債務者として,東京地方裁判所に対し,b連盟の協力団体たる仮の地位の確認等を求める仮処分命令の申立てをし(同裁判所平成26年(ヨ)第3055号仮処分命令申立事件),同裁判所は,同年10月24日,補助参加人がb連盟の協力団体の地位にあることを仮に定める旨の仮処分決定をした。(丙11,25,60)
シ 補助参加人は,前記サの仮処分決定に係る起訴命令を受け,b連盟を相手方とする地位確認訴訟(東京地方裁判所平成26年(ワ)第34246号地位確認等請求事件)を提起することとなり,A弁護士に対し,同訴訟に係る法律事務を委任した。
決裁権者である被告Y2は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成26年4月30日,A弁護士に対し,預り金として30万円が支払われた(本件支出5)。また,決裁権者である被告Y1は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,同日,A弁護士に対し,着手金として183万6000円が支払われた(本件支出6)(丙12,13,25,34の1・2,丙60)
ス 補助参加人は,平成27年6月11日に臨時理事会を開催し,同理事会において,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として本件支出5及び6の支払承認をした。(丙49)
セ 補助参加人は,平成28年3月頃,b連盟との間で,補助参加人において,本件請願がb連盟の下賜申請と競合し,混乱を招いたことにつき遺憾の意を表明し,本件請願及び前記シの訴訟を取り下げる旨,b連盟において,補助参加人がb連盟の協力団体として加入することを認める旨の合意を締結した。
b連盟は,その管理するウェブサイト上に,上記合意の経緯等を説明する内容の「天皇杯・皇后杯の下賜申請について」と題する記事の掲載をした。(甲16)
(4) 本件支出3及び17に関する事実
ア 内閣府公益認定等委員会が作成した「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」と題する平成20年10月10日付け書面には,公益社団法人への移行認定又は移行認可を受ける社団法人においては,代議員を選出するための選挙が理事及び理事会から独立して行われるべきである旨の記載がある。(甲25)
イ 補助参加人において施行された「公益社団法人Z協会 代議員選挙規則」(本件選挙規則)には,別紙「本件選挙規則(抄)」記載のとおりの定めが含まれている。
ウ 補助参加人において平成17年5月21日に施行された「社団法人Z協会支部規則」第5条には,「会員は,支部に入会し,総本部に登録をもって支部会員となる。支部を退会したとき総本部並びに都道府県本部も退会となる。」との定めがある。(丙62)
エ 平成26年3月18日,本件選挙の公示がされ,立候補の締切りが同月22日正午とされた。
Bは,上記当時,補助参加人の総本部の正会員として登録されていた。
オ 補助参加人の城北支部の支部長であったDは,平成26年3月22日午前8時6分,総本部の会員管理部に対し,件名を「会員登録移籍」とし,本文に「移籍会員登録お願いします。」との記載があるメールを送信した。
同メールには,Bの支部移籍に係る会員登録申請のデータが添付されていた。(丙67)
カ 総本部の会員管理部門の担当者は,平成26年3月24日,前記オのメールを確認したが,Dが添付した会員登録申請書のデータに所定の手続によるパスワードが設定されておらず,そのデータを復号することができなかった。
そこで,同担当者は,Dに対し,そのデータの再送を依頼した。
キ Dは,平成26年3月25日,総本部の会員管理部門に対し,別のファイル名の会員登録申請書のデータを添付した上で,件名を「移籍」とし,本文に「再度添付いたしますのでよろしくお願いいたします。」との記載があるメールを送信した。(丙68の1・2)
ク 総本部の会員管理部門担当者は,平成26年3月27日,Bの支部移籍について仮登録をした上,同月28日,本登録を行った。
ケ Bは,本件選挙において,東京都選挙区の代議員として当選した。
補助参加人は,本件選挙規則8条1項に基づき,東京都選挙区の地方選挙管理委員会に対し,Bの当選について文書による異議を申し立てなかった。
コ その後,前記ケのBの当選結果を知った被告Y1は,理事会において,本件提案をし,その賛同を得た。
そこで,被告Y1は,平成26年6月21日に開催された社員総会において,Bに代議員としての権限の行使を認めなかった。
サ Bは,平成26年9月,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方としてBが補助参加人の代議員の地位にあることの確認訴訟を提起した(同裁判所平成26年(ワ)第23904号地位確認等請求事件)。(甲17)
シ 補助参加人は,A弁護士に対し,前記サの訴訟対応に係る法律事務を委任した。
決裁権者である被告Y2は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成26年11月7日,A弁護士に対し,弁護士報酬として32万4000円が支払われた(本件支出3)。(丙14,32)
ス 補助参加人は,平成27年2月20日,A弁護士に代えて,d法律事務所に対し,前記サの訴訟対応に係る法律事務を委任した(後記(6)イ)。さらに,補助参加人は,担当弁護士であるE弁護士がd法律事務所からc法律事務所に移籍したことから,d法律事務所に代えて,c法律事務所に対し,上記法律事務を委任した。
セ 補助参加人は,前記サの訴訟において,平成26年9月の訴え提起から7箇月を経過して初めて,立候補の締切日又は当選決定までにBの補助参加人の城北支部への移籍登録が完了していなかったことをBの代議員の地位を否定する根拠として主張した。(甲17)
ソ 決裁権者である被告Y6は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成28年1月5日,c法律事務所に対し,弁護士報酬として59万6345円が支払われた(本件支出17)。(丙27,46)
タ 補助参加人は,平成28年2月6日に臨時理事会を開催し,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として本件支出17の支払承認をした。
なお,F弁護士は,上記臨時理事会において,補助参加人の顧問弁護士に就任した旨を紹介され,上記臨時理事会を傍聴していた。また,被告Y7,被告Y8及び被告Y9は,上記臨時理事会を欠席した。(丙43)
チ 東京地方裁判所は,平成28年3月17日,前記サの訴訟につきBの請求を認容する旨の判決を言い渡した。(甲17)
ツ 補助参加人の中央選挙管理委員会が作成した「公益社団法人Z協会代議員選挙について」と題する平成28年2月18日付け書面には「各選挙区においては,選挙管理委員会に対する他からの関与又は介入等については,これを徹底して排除していただきたいということです。」及び「都道府県等本部長又は当該地区の理事等は,当該地方選挙管理委員会が管理執行する代議員選挙については一切関与できません。」との記載がある。(甲26)
(5) 本件支出4に関する事実
ア a会に所属する原告らを含む補助参加人の社員らは,平成26年10月15日,法人法37条1項及び補助参加人の定款第18条2項に基づき,被告Y1に対し,被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的とする社員総会の招集を請求した(本件招集請求)。
本件招集請求においては,本件支出1,2,5及び6の原因となった本件請願を補助参加人の会員の意思に反して行ったことが理事解任事由とされていた。(丙5,63)
イ 前記アの社員らは,被告理事らが本件招集請求に応じなかったことから,平成26年12月9日,東京地方裁判所に対し,前記アの社員総会の招集許可の申立てをした。
補助参加人は,A弁護士に対し,上記申立ての法的対応に係る法律事務を委任した。(丙5)
ウ 東京地方裁判所は,平成27年1月14日に第1回審尋期日を,同月21日に第2回審尋期日をそれぞれ開いた上で,前記イの申立てを許可する旨の決定をした。
エ 平成27年1月31日,前記アの議案の決議を目的とする社員総会が開催されたが,同議案はいずれも否決された。
オ 決裁権者である被告Y2は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成27年1月27日,A弁護士に対し,弁護士報酬として21万6000円が支払われた(本件支出4)。(丙15,33)
(6) 本件支出7ないし14に関する事実
ア 補助参加人は,平成27年1月27日,d法律事務所との間で,次の内容の委任契約を締結した。(丙50)
(ア) 補助参加人は,d法律事務所に対し,補助参加人が平成27年1月31日に開催予定の臨時社員総会に関連する事前,当日及び事後の各種対応等及びこれに関連する一切の件に関し,補助参加人とd法律事務所とが随時合意する法律事務の処理を委任し,d法律事務所はこれを受任する(第1条)。
(イ) 上記(ア)の委任事務を処理するd法律事務所の担当弁護士は,G(以下「G弁護士」という。),H及びE弁護士とするが,d法律事務所は,必要に応じてd法律事務所の他の弁護士を関与させることができる(第2条)。
(ウ) 補助参加人は,前記(ア)の委任事務の報酬として,d法律事務所の弁護士報酬基準に定めるところに従い,時間制報酬,日当及び実費並びに消費税をd法律事務所に対して支払う。d法律事務所は,補助参加人の要請があるときは,速やかにその弁護士報酬基準の内容を説明する。なお,平成27年の時間単位の報酬(消費税別)は,G弁護士は3万8000円,Hは3万1000円及びE弁護士は2万3000円である。(第3条)
(エ) 委任契約の期間は,平成27年1月22日から同年7月末日までとするが,同日時点で前記(ア)の委任事務の処理が完了していない場合には,補助参加人とd法律事務所は,協議の上,書面による合意をもって契約期間を延長することができる。(第7条)
イ 補助参加人は,平成27年2月20日,d法律事務所との間で,次の内容の委任契約を締結した。(丙51)
(ア) 補助参加人は,d法律事務所に対し,Bが原告となり,補助参加人が被告である前記(4)サの訴訟及びこれに関連する反訴提起,控訴,上告その他一切の件に関し,補助参加人とd法律事務所とが随時合意する法律事務の処理を委任し,d法律事務所はこれを受任する。(第1条)。
(イ) 前記(ア)の委任事務を処理するd法律事務所の担当弁護士は,I,G弁護士及びJとするが,d法律事務所は,必要に応じてd法律事務所の他の弁護士を関与させることができる。(第2条)。
(ウ) 補助参加人は,前記(ア)の委任事務の報酬として,d法律事務所の弁護士報酬基準に定めるところに従い,時間制報酬,日当及び実費並びに消費税をd法律事務所に対して支払う。d法律事務所は,補助参加人の要請があるときは,速やかにその弁護士報酬基準の内容を説明する。なお,平成27年の時間単位の報酬(消費税別)は,Iは7万円,G弁護士は3万8000円及びJは3万2000円である。(第3条)
(エ) 委任契約の期間は,平成27年1月26日から平成30年1月末日までとするが,同日時点で前記(ア)の委任事務の処理が完了していない場合には,補助参加人とd法律事務所は,協議の上,書面による合意をもって契約期間を延長することができる。(第7条)
ウ d法律事務所は,前記アの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,前記ア(ア)の臨時社員総会の法的対応に係る弁護士報酬として,平成27年4月14日付け請求書,同年5月11日付け請求書及び同月27日付け請求書を送付した。
上記各請求書の「案件の内容」欄には,「臨時社員総会の招集許可決定を受けての種々の対応及びこれに関連する作業(委任状関連作業,検査役選任申立・仮処分申立準備等の裁判所対応,検査役・相手方代理人との交渉・調整,関連する法律問題の判例・理論・実例調査,受付名簿・投票用紙・議事進行スクリプト作成等の総会準備,総会対応,これらに関連しての会議・電話会議への参加を含む),並びにその後の各種相談への対応等(訴訟対応関係を除きます)」との記載がある。(甲10の1・2・4,丙16,17,19)
エ 決裁権者である被告Y1は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,d法律事務所に対し,弁護士報酬として,平成27年4月30日に597万3483円が(本件支出7),同年5月29日に599万3075円が(本件支出8),同年7月15日に234万0320円が(本件支出10)それぞれ支払われた。(丙35,36,38)
オ 補助参加人は,平成27年6月11日に臨時理事会を開催し,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として本件支出7,8,10及び11の支払承認をした。(丙49)
カ d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,平成27年6月29日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「旧千葉県本部への名称使用許諾取消処分に関連して一部会員から申し立てられた仮地位仮処分への対応及び関連作業に関する弁護士報酬の着手金」との記載がある。(甲10の3,丙18)
キ 決裁権者である被告Y1は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成27年6月30日,d法律事務所に対し,弁護士報酬として850万6202円が支払われた(本件支出9)。(丙37)
ク d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,平成27年5月27日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「B氏の地位確認等請求事件に関する一切の対応,理事解任請求事件に関する一切の対応,並びに本年4月1日以降の各種相談への対応等(すべて本年5月25日までの期間に対応する分のご請求として)」との記載がある。(甲10の5,丙20)
ケ d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,平成27年7月22日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「B氏の地位確認等請求事件及び理事解任請求事件に関する一切の対応,並びに帳簿閲覧請求,臨時総会招集請求,b連盟関連,千葉県旧本部関連(仮処分関係を除く),規定整備関連その他各種ご相談への対応等(すべて本年5月26日から7月16日までの期間に対応する分のご請求として)」との記載がある。(甲10の6,丙21)
コ d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,同年10月23日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「B氏の地位確認等請求事件,理事解任請求事件,社員総会招集許可申立事件及び総会検査役選任申立事件に関する一切の対応,並びに帳簿閲覧請求関連,臨時社員総会招集関連,b連盟関連,千葉県旧本部関連(仮処分関係を除く),選挙制度関連,規定整備関連,公益認定等委員会対応,a会協議関連その他各種ご相談への対応等(すべて本年7月17日から9月30日までの期間に対応する分のご請求として)」との記載がある。(甲10の7,丙22)
サ d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,平成27年12月29日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「訴訟等に関する一切の対応,帳簿閲覧請求関連,臨時社員総会関連,b連盟関連,千葉県旧本部関連,選挙制度関連,規定整備関連,公益認定等委員会対応,a会協議関連その他各種ご相談への対応等(すべて本年10月1日から12月28日までの期間に対応する分のご請求として)」との記載がある。(甲10の8,丙23)
シ 決裁権者である被告Y1は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,d法律事務所に対し,弁護士報酬として,平成27年7月15日に970万7211円が(本件支出11),同年9月11日に1182万9464円が(本件支出12),同年11月20日に2635万3749円が(本件支出13),同年12月29日に1215万3358円が(本件支出14)それぞれ支払われた。(丙39ないし42の1・2)
ス 補助参加人は,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として,平成27年9月7日に開催された臨時理事会においては本件支出9及び12,同年10月21日に開催された臨時理事会においては本件支出13,平成28年2月6日に開催された臨時理事会においては本件支出14の各支払承認をした。
G弁護士は,平成27年9月7日及び同年10月21日に開催された上記臨時理事会に出席し,訴訟対応の進捗状況等の報告をした。(丙31,43,53,55)
セ G弁護士は,平成28年1月18日,本件支出14の内訳が記載されたメールを送信した。
同メールには,「貴協会からのご要請により,実際に生じた作業時間の全てをご請求することはしておりません。上記に記載の各「作業時間」は,実際に生じた作業時間を基礎に,ご請求金額が減額されるように時間調整を加えております点にご留意ください」との記載がある。(甲18の3,甲36,丙71)
ソ a会に所属し,平成27年11月21日に開催された臨時社員総会において補助参加人の理事として選任されたKは,平成28年1月19日頃,補助参加人の事務局に所属するL氏を通じて,G弁護士に対し,前記サの請求書の根拠となる作業時間の明確化を要求する内容のメールを送信した。(甲18の1・2)
(7) 本件支出15に関する事実
ア 補助参加人の正会員であるCは,平成27年5月16日頃,補助参加人の約800箇所の支部,都道府県本部及び地区本部に対し,「Z協会は創立65周年を迎え,過去にない危機に見舞われております。それは,現会長Y1氏を取り巻く執行部の言動,行動による不始末であります。」,「会長は理事会,総会に諮ることなく,独断で天皇杯御下賜の請願をして,b連盟の呼びかけ(略)を無視し(略)協会関係役職者は追放となりました。」及び「Z協会段位の三段まではb連盟に申請認可という約束も,すべて解約されてしまいました。」との記載がある書面を送付した。(丙25)
イ 補助参加人は,e法律事務所に対し,Cの前記アの行為が補助参加人の名誉を毀損するものであるとして,告訴人を補助参加人とし,被告訴人をCとする名誉毀損に係る本件告訴状の作成を含む法律事務を委任した。
ウ e法律事務所は,平成27年6月頃,前記イの委任契約に基づき,本件告訴状を作成した。(丙25)
エ 補助参加人は,e法律事務所との間で,次の内容を含む平成27年10月1日付け業務委託契約書を取り交わした。(丙52)
(ア) 補助参加人は,e法律事務所に対し,補助参加人の名誉が毀損されたことに係る名誉毀損被疑事件についての法的助言,刑事告訴,当局対応及びこれに関連する法津事務を行うこと並びに補助参加人及びe法律事務所が別途合意した事項に関する法律業務を委任し,e法律事務所はこれを受諾した。(第1条,第2条1項)
(イ) 前記(ア)の法律事務を処理するe法律事務所所属の弁護士はM,N及びOとするが,e法律事務所は,必要に応じて他の弁護士を関与させることができる。また,e法律事務所は,上記法律事務の処理に当たり,e法律事務所所属のパラリーガル(外国語翻訳者を含む。)にその補助をさせることができる。(第2条2項及び3項)
(ウ) 補助参加人は,e法律事務所に対し,前記(ア)の法律事務の処理の対価として,処理を行ったe法律事務所に所属する弁護士及びパラリーガルの1時間当たりの単価に,その処理に要した時間(移動に要した時間を含む。)を乗じた金額を支払う。(第3条1項)
(エ) 前記(ウ)の1時間当たりの単価は,各弁護士及びパラリーガルの能力等を考慮して適正妥当にe法律事務所が定めた額とするが,e法律事務所は,その単価を随時変更することができ,その後に前記(ア)の法律事務の処理に要した時間には,変更後の単価を適用する。
なお,現時点における前記(イ)の各弁護士の1時間当たりの単価(税別)は,Mが4万2000円,Nが4万円及びOが2万7000円である。(第3条2項)
オ e法律事務所は,前記エの業務委託契約書の計算方法により,その弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,88万2733円(源泉徴収税9万2038円を除く。)の支払を求める内容の平成27年10月29日付け請求書を送付した。
上記請求書には,作業内容や作業時間についての記載がなかった。(丙24)
カ 決裁権者である被告Y2は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成27年11月30日,e法律事務所に対し,弁護士報酬として97万4771円が支払われた(本件支出15)。
なお,本件支出15は,同年6月11日に開催された臨時理事会において,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として支払承認がされていた。(丙44,49)
キ その後,補助参加人が本件告訴状を提出することはなかった。
(8) 本件支出16に関する事実
ア 補助参加人は,平成27年11月頃,c法律事務所に所属するE弁護士に対し,同月21日に開催予定の臨時社員総会の法的対応に係る法律事務を委任した。
イ E弁護士は,被告Y6に対し,前記アの法律事務に係る弁護士報酬として185万3700円(源泉徴収税30万6300円を除く。)の支払を求める内容の平成27年11月20日付け請求書を送付した。(丙26)
ウ 補助参加人は,平成27年11月21日,臨時社員総会を開催した。
上記臨時社員総会においては,補助参加人の理事の選任が議案の一つであったところ,E弁護士は,総会検査役の面前で,a会に所属する理事から委任されたF弁護士との間で上記議案の議決権行使方法について事前協議を行い,その協議に基づき,最大14名の候補者に「○」をつけて選任する旨の方法を議場で説明した。
その後,上記決議方法により理事が選任された。
エ 決裁権者である被告Y6は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成27年11月30日,c法律事務所に対し,弁護士報酬として216万円が支払われた(本件支出16)。(丙45)
オ 補助参加人は,平成27年12月16日に臨時理事会を開催し,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として本件支出16の支払承認をした。(丙56)
カ a会に所属する補助参加人の会員は,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として前記ウの臨時社員総会の無効確認等を求める訴訟を提起したところ(同裁判所平成27年(ワ)第35505号社員総会決議無効確認等請求事件),同裁判所は,平成28年9月5日,上記臨時社員総会の決議方法が補助参加人の定款に違反するとして,これを取り消す旨の判決を言い渡した。(丙8)
(9) 本件支出18に関する事実
ア 補助参加人の総本部指導員として勤務し,「f会」と称する会に所属していたDは,他の総本部指導員と共に本件組合を結成し,平成26年6月20日,補助参加人に対して本件組合の結成を通知した。(甲38,47)
イ Dを含む補助参加人の正会員は,補助参加人の代議員に対し,「公益社団法人Z協会の現状について(代議員の皆様へのお願い)」と題する平成26年8月20日付け書面を送付した。
上記書面には,被告Y1が理事会の承認なく本件請願を強行した結果,b連盟は補助参加人に対して除名処分を行った等の記載がある。(甲38)
ウ 補助参加人は,前記イの書面が補助参加人に対する誹謗中傷行為であるとして,d法律事務所に対し,Dの事情聴取に係る法律事務を委任した。
d法律事務所に所属する弁護士であるP及びQは,平成27年2月16日,Dに対して事情聴取を行った。(丙64)
エ 補助参加人は,前記ウの事情聴取後,前記ウの各弁護士の意見を踏まえ,平成27年2月16日付けで,本件懲戒解雇を行った。
オ Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を債務者として,本件懲戒解雇の無効を理由に賃金仮払い等を求める仮処分命令を申し立てた(同裁判所平成27年(ヨ)第21029号地位保全等仮処分命令申立事件)。
同裁判所は,同年11月30日,Dの申立てを一部認容し,補助参加人に対し,賃金の仮払いを命じた。(甲20)
カ Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として,本件懲戒解雇の無効確認等を求める訴訟を提起した(同裁判所平成27年(ワ)第22149号解雇無効確認等請求事件)。
補助参加人は,h法律事務所に対し,上記訴訟対応に係る法律事務を委任した。(甲30)
キ 本件組合は,平成27年2月18日,補助参加人に対し,本件懲戒解雇を議題とする団体交渉を申し入れたが,補助参加人はこれに応じなかった(本件団交拒否)。
そこで,本件組合は,東京都労働委員会に対し,補助参加人による本件団交拒否には正当な理由がない旨を主張して,救済命令の申立てを行った。
補助参加人は,h法律事務所に対し,上記申立ての法的対応に係る法律事務を委任した。
ク h法律事務所は,補助参加人に対し,弁護士報酬として48万8950円(源泉徴収税5万1050円を除く。)の支払を求める内容の平成28年2月12日付け請求書を送付した。(丙28)
ケ 決裁権者である被告Y6は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成28年2月12日,h法律事務所に対し,弁護士報酬として54万円が支払われた(本件支出18)。(丙47)
コ 東京都労働委員会は,平成29年2月21日,前記キの申立てにつき,本件組合の主張する不当労働行為の成立を認め,その申立ての一部を認容する命令を発した。
上記命令に係る命令書には,「当委員会は,Dの懲戒解雇から既に2年ほどが経過し,分離した不当労働行為事件(解雇部分)及び訴訟もいまだ係属中という状況をみるに,紛争のこれ以上の長期化を避けるためにも,団体交渉において,労使双方が,紛争の全面解決に向け,真摯に協議し速やかに合意形成を図ることを強く望むものである」との記載がある。(甲19)
サ 東京地方裁判所は,平成29年9月25日,前記カの訴訟につき,本件懲戒解雇の無効確認を含む一部認容判決を言い渡した。(甲30)
(10) 本件各取崩しの手続に関する事実
ア 平成24年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産の部の「特定資産」欄に,退職給付引当預金(資産)として9828万7439円が,減価償却引当預金として4791万5162円がそれぞれ計上されていた。(甲11)
イ 平成27年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産として5億9804万3868円が,資産の部の「現金預金」欄に7175万6264円が,「基本財産」欄に減価償却引当預金として4794万1394円が,「特定資産」欄に退職給付引当預金(資産)として1億0509万2594円が,負債として1億5556万1931円が,「正味財産合計」欄に4億4248万1937円がそれぞれ計上されていた。(甲41の1,丙4,72,73)
ウ 補助参加人は,次の各日に,退職給付引当預金(資産)を管理する三井住友銀行飯田橋支店の預金口座(口座番号〈省略〉)から一般預金を管理する同支店の預金口座(口座番号〈省略〉)に次の金額の預金を移動させた(いずれも平成27年)。(丙73,74)
①6月18日 1500万円
②9月11日 2700万円
③9月25日 900万円
④11月20日 1800万円
⑤11月30日 500万円
⑥12月17日 1200万円
合計 8600万円
エ 補助参加人は,平成27年12月17日,減価償却引当預金を管理する三菱UFJ銀行神楽坂支店の預金口座(口座番号〈省略〉)から,退職給付引当預金(資産)を管理する前記ウの預金口座に4500万円を振込送金し,その振込手数料864円を支払った。(丙72,73)
オ 補助参加人は,平成27年4月30日から平成28年2月12日にかけて,一般預金を管理する前記ウの預金口座から,本件支出5ないし17に係る弁護士報酬を支出した。(甲14,丙74)
カ 平成28年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産として4億9993万9121円が,資産の部の「現金預金」欄に6567万9972円が,「基本財産」欄に減価償却引当預金として294万7900円(前年度と比較して4499万3494円の減少)が,「特定資産」欄に退職給付引当預金(資産)として6239万9220円(前年度と比較して4269万3374円の減少)が,負債として1億5142万4543円が,「正味財産合計」欄に3億4851万4578円がそれぞれ計上されていた。(甲8,41の2,丙72,73)
キ 平成28年10月1日に開催された臨時理事会及び同年12月18日に開催された臨時社員総会において,前記カの貸借対照表が承認された。(丙58,59)
ク 内閣府公益認定等委員会は,平成29年2月15日,補助参加人の立入検査を実施し,補助参加人に対し,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)につき補填計画の作成を指示したが,他に補助参加人の財産に関する指摘をしなかった。
補助参加人は,上記指示を受け,同年3月7日,内閣府公益認定等委員会に対し,退職給付引当預金(資産)につき平成29年に2000万円,平成30年に2100万円の補填を行う旨,減価償却引当預金につき平成31年から平成33年にかけて毎年1500万円の補填を行う旨の補填計画を作成し,その旨の報告をした。(丙70)
ケ 補助参加人は,前記クの補填計画の一部を実行し,令和元年8月19日時点で,前記エの減価償却引当預金を管理する預金口座に1794万4277円を,前記ウの退職給付引当預金(資産)を管理する預金口座に6506万7736円をそれぞれ保有している。(丙72,73)
(11) 事実認定の補足説明
ア 被告ら及び補助参加人は,前記認定事実(3)カに関し,補助参加人が本件請願に先立つ平成25年12月22日に臨時理事会を開催して本件請願につき承認する旨の決議を行った旨を主張し,同日付けの臨時理事会議事録(丙65)を提出する。
イ しかしながら,証拠(甲34,37,38)及び弁論の全趣旨によれば,①補助参加人における平成25年度(平成25年4月1日から平成26年3月31日)の事業報告書には,平成25年6月22日及び同年10月6日に臨時理事会が開催された旨の記載があるが,前記アの臨時理事会が開催された旨の記載がないこと,②被告Y2が作成した「代議員有志による書面についてのご説明並びに今後の進め方についてご協力のお願い」と題する平成26年9月18日付け書面には,本件請願は緊急を要するものであったため,被告Y1の判断により行われており,臨時理事会により事後承認をした旨の記載があることが認められる。
以上に照らすと,前記アの証拠によっても,前記アの臨時理事会が開催されたことを認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
3 争点(2)(被告理事らの任務懈怠の有無)について
(1) 争点(2)ア(本件支出1,2,5及び6に係る任務懈怠の有無)
ア 一般社団法人の理事は,法人に対して職務執行を委任された受任者の地位にあるため(法人法64条),委任の本旨に従い,善管注意義務を負うところ(民法644条),補助参加人の理事は,善管注意義務の内容として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っているというべきである。
また,補助参加人の理事の判断が著しく不合理であった場合には,上記義務を怠ったということができ,同判断に基づく当該理事の行為は,補助参加人に対する任務懈怠を構成すると解される。
さらに,補助参加人の理事は,善管注意義務の内容として,他の理事の職務の執行を監視又は監督すべき義務(法人法90条2項2号)を負っており,これを怠った場合には,当該理事の不作為は,補助参加人に対する任務懈怠を構成すると解される。
イ(ア) 前記認定事実(3)によれば,①被告Y1が平成25年12月に理事会の承認なく本件請願を行ったこと,②補助参加人が平成28年3月頃にb連盟との間で,本件請願がb連盟による天皇杯・皇后杯の下賜申請と競合して混乱を招いたことにつき遺憾の意を表明するとともに,本件請願を取り下げる旨の合意を締結したことが認められる。
原告らは,これらの事実に加え,③天皇杯及び皇后杯は,日本国内において,1競技につき,その競技を統括している団体に対して1つのみ下賜されるものであるところ,補助参加人には天皇杯及び皇后杯の下賜申請ないし請願資格がない旨を指摘した上で,被告Y1においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,本件請願を強行し,b連盟から除名処分を受ける事態を招いた結果,補助参加人に本件支出1,2,5及び6を余儀なくさせたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y1を除く被告理事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y7及び被告Y8を除く。)においては,補助参加人の理事として,被告Y1による本件請願を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と被告Y1による本件請願を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
(イ) しかしながら,被告Y1が本件請願をすることについて事後的に補助参加人の理事会の承認を得ていることは,前記認定事実(3)カのとおりである。
そして,前記認定事実(3)及び弁論の全趣旨によれば,b連盟において,その協力団体による天皇杯の下賜申請ないし請願を禁止する規約があることはうかがわれない。補助参加人がb連盟との間で,本件請願がb連盟の天皇杯・皇后杯の下賜申請と競合して混乱を招いたことにつき遺憾の意を表明し,本件請願を取り下げる旨の合意を締結した(前記イ(ア)②)が,上記合意において,「遺憾の意」という中立的な表現が用いられていることやb連盟が補助参加人についてb連盟の協力団体として加入することを認める旨がその内容として含まれていることに照らすと,補助参加人及びb連盟が,両団体間の関係性やその他の利害得失を総合的に考慮して上記合意に至ったものと解する余地があり,上記合意の締結をもって,直ちに補助参加人が本件請願をすることが,b連盟において補助参加人を協力団体から除名することができる程度に違法ないしb連盟の規約に違反したものと認めることはできない。
また,前記認定事実(1)及び(3)によれば,補助参加人が社団法人として認可されたのは昭和33年4月10日であるのに対し,b連盟が財団法人として認可されたのは昭和44年頃であること,補助参加人は,本件請願時点で3万6659名の会員と904の支部を有し,△△選手権大会,□□選手権大会,◇◇選手権大会及び◎◎リーグ戦等の多数の大会を開催していたことが認められることからすると,補助参加人がb連盟の協力団体であるとしても,補助参加人の歴史,規模や空手界における影響力に鑑み,補助参加人が主催する○○選手権大会につき天皇杯の下賜を受けるために本件請願を行った被告Y1の判断が不合理であったとはいえない。そして,天皇杯及び皇后杯が,日本国内において競技を統括している団体に対して,1競技に対して1つのみ下賜されるものであること(前記イ(ア)③)を認めるに足りる的確な証拠がない上,このことを認める余地があると仮定したとしても,上記事実関係を踏まえると,このことから直ちに補助参加人に本件請願の資格がなかったとまでは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
以上に加え,被告Y1が法律専門家ではないことをも総合すると,前記イ(ア)の事実によっても,本件請願を行った被告Y1に善管注意義務違反があったものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y1を除く被告理事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y7及び被告Y8を除く。)の被告Y1に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(2) 争点(2)イ(本件支出3及び17に係る任務懈怠の有無)
ア 本件支出3について
(ア) 前記認定事実(1)及び(4)によれば,①補助参加人は,本件選挙規則8条1項に基づき,東京都選挙区の地方選挙管理委員会に対し,本件選挙におけるBの代議員の当選につき異議を申し立てていないこと,②内閣府公益認定等委員会が作成した「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」と題する平成20年10月10日付け書面には,公益社団法人への移行認定又は移行認可を受ける社団法人においては,代議員を選出するための選挙が理事及び理事会から独立して行われるべきである旨の記載があること,③補助参加人の定款上,理事又は理事会が代議員を選出することができないとされていること(第12条3項後段),④補助参加人の中央選挙管理委員会が作成した「公益社団法人Z協会代議員選挙について」と題する平成28年2月18日付け書面には,「各選挙区においては,選挙管理委員会に対する他からの関与又は介入等については,これを徹底して排除していただきたいということです。」及び「都道府県等本部長又は当該地区の理事等は,当該地方選挙管理委員会が管理執行する代議員選挙については一切関与できません。」との記載があること,⑤Bが東京地方裁判所に対して補助参加人を相手方としてBが補助参加人の代議員の地位にあることの確認訴訟を提起したところ,補助参加人は,上記訴訟において,訴え提起から7箇月を経過して初めて,立候補の締切日又は当選決定までにBの城北支部への移籍登録が完了していなかったことをBの代議員の地位を否定する根拠として主張したことが認められる。
原告らは,これらの事実から,Bが本件選挙において適正に東京都選挙区の代議員として選出されたことが明らかであると指摘した上で,被告Y1においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,何らの根拠なく本件提案をし,これが契機となって上記⑤の訴訟が提起され,補助参加人に本件支出3を余儀なくさせたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y1を除く他の被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y1の職務の執行を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,Bの代議員資格を否定する根拠やその妥当性について何ら検討することなく,漫然と被告Y1の本件提案に賛成したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
(イ) しかしながら,前記認定事実(1)及び(4)によれば,①補助参加人の定款及びこれを受けて施行された本件選挙規則においては,補助参加人における代議員選挙の選挙区分は,主たる事務所及び都道府県の区域とされ(定款第11条,本件選挙規則第2条),補助参加人の正会員が選挙権及び被選挙権を有すること(本件選挙規則第5条1項),②補助参加人において平成17年5月21日に施行された「社団法人Z協会支部規則」第5条には,「会員は,支部に入会し,総本部に登録をもって支部会員となる。」との定めがあること,③平成26年3月18日に本件選挙の公示がされ,立候補の締切りが同月22日正午とされたところ,Bは,上記当時,補助参加人の総本部の正会員として登録されていたこと,④Bは,本件選挙において東京都選挙区に立候補するために,補助参加人の城北支部の支部長であったDを通じて,総本部から城北支部への移籍登録の申請をしたが,Dが総本部に送信したメールに添付されたファイルに不備があり,本登録が完了したのは同月28日であったことが認められる。一方,補助参加人の定款及び本件選挙規則によっても,補助参加人における代議員選挙の立候補者が当該選挙区の正会員として被選挙権を有するか否かが,当該選挙区に所属する支部において当該立候補者が当該支部の正会員と認められるか否かによって判断されるべきであることが一義的に明らかとは認められない。
以上によれば,本件選挙における立候補の締切日又は当選決定時までにBの城北支部への移籍登録が完了していなかったことから,補助参加人の内部規則に照らし,Bの代議員資格に疑義があるとして,代議員資格のない者に議決権行使を認めて社員総会決議の取消事由が発生する事態を避けるために,本件提案をした被告Y1の判断が著しく不合理であったということはできない。
前記認定事実(4)イによれば,本件選挙規則8条1項は,選挙が不正に行われたことを理由として当選者の資格を争う場合に適用されることが予定されている規定であることが認められ,当選者が被選挙権を有していなかったという選挙資格に係る事由にも適用されるものと解するのが相当であるとしても,このことが法律専門家ではない被告Y1にとって明らかであったとはいえない(前記(ア)①)。また,上記事実関係に照らすと,前記(ア)②ないし④の事実によっても,被告Y1が本件選挙に容喙したものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。さらに,上記事実関係に照らすと,補助参加人が,前記(ア)⑤の訴訟において,訴え提起から7箇月を経過して初めて,立候補の締切日又は当選決定までにBの城北支部への移籍登録が完了していなかったことをBの代議員の地位を否定する根拠として主張したことをもって,直ちにBが本件選挙において適正に東京都選挙区の代議員として選出されたことが被告Y1にとって明らかであったとは認められない。
以上に加え,被告Y1が法律専門家ではないことをも総合すると,前記(ア)の事実によっても,理事会において本件提案をした被告Y1に善管注意義務違反があったものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y1を除く被告理事らの被告Y1に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
イ 本件支出17について
(ア) 原告らは,前記ア(ア)の事実から,本件選挙において,Bが東京都選挙区の代議員として適法に当選したことが明らかであると指摘した上で,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5においては,補助参加人の(代表)理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,Bが代議員の地位にあることを早期に認めて前記ア(ア)⑤の訴訟を収束させることなく,漫然と理事会において本件支出17の支払承認をしたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,上記理事会を欠席した被告Y7及び被告Y8においては,補助参加人の理事として,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5の職務の執行を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件支出17の支払承認を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
(イ) しかしながら,本件提案をした被告Y1の判断が不合理であったということはできないことは,前記ア(イ)のとおりである。そして,前記ア(ア)⑤の訴訟を担当していたA弁護士,d法律事務所所属の弁護士及びc法律事務所所属の弁護士が被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5に対し,Bが補助参加人の代議員の地位にあることを早期に認めて同訴訟を収束させるべきである旨の法的助言をしたことはうかがわれない。また,補助参加人の顧問弁護士に就任したF弁護士が,本件支出17の支払承認がされた臨時理事会を傍聴していたことは,前記認定事実(4)タのとおりであるところ,F弁護士が上記支払承認に対して異議を述べたこともうかがわれない。
以上に加え,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5がいずれも法律専門家ではないことをも総合すると,前記ア(ア)の事実によっても,前記ア(ア)⑤の訴訟においてBが代議員の地位にある旨の主張を争い,本件支出17の支払承認をした被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5に善管注意義務違反があったものと認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y7及び被告Y8の被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(3) 争点(2)ウ(本件支出4に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(5)によれば,①a会に所属する原告らを含む補助参加人の社員らは,平成26年10月15日,被告Y1に対し,被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的として,本件招集請求を行ったこと,②上記社員らは,臨時社員総会の招集通知が発せられなかったことから,同年12月9日,東京地方裁判所に対し,臨時社員総会の招集許可の申立てをし,同裁判所は,平成27年1月14日に第1回審尋期日を,同月21日に第2回審尋期日をそれぞれ開いた上で,上記申立てを許可したこと,③補助参加人の定款上,上記議案は,補助参加人の社員総会の判断事項であること(第16条(2))が認められる。
原告らは,これらの事実から,被告理事らは,補助参加人の理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,自らの立場を守るという不当な動機に基づき,正当な理由なく本件招集請求を拒絶し,これが契機となって補助参加人に本件支出4を余儀なくさせたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,補助参加人の定款第18条2項に基づき代議員から社員総会の招集請求を受けた会長に対してその招集を義務付ける規定が補助参加人の定款にはなく,そのような規定が法人法にもないことに照らすと,上記会長が社員総会を開催するか否かについて何らの裁量も有していないことが一義的に定められているとは認められない。
前記認定事実(1)及び(5)並びに弁論の全趣旨によれば,本件招集請求が被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的としていたこと,補助参加人の定款上,理事の解任は総代議員の議決権の過半数を有する代議員が出席し,出席した当該代議員の議決権の過半数をもって行うとされていること(第21条,第29条),本件招集請求当時,a会に所属する者が補助参加人の代議員の多数を占めていなかったこと,本件招集請求をした者により,東京地方裁判所の前記ア②の許可に基づいて平成27年1月31日に開催された補助参加人の社員総会において上記議案が否決されていることが認められることに照らすと,客観的に見れば上記議案の決議のために臨時社員総会を開催する実益がなかったものと認められ,上記議案における解任の対象が被告Y1及び被告Y2であるからといって,直ちに被告理事らに自らの立場を守るという不当な動機があったとまでは認められない。
以上に加え,臨時社員総会の開催をすることにより,補助参加人において一定の負担ないし費用を要すること及び被告理事らが法律専門家ではないことをも総合すると,東京地方裁判所が早期の段階で臨時社員総会の開催を認めたことを踏まえても(前記ア②),本件招集請求に応じなかった被告理事らの判断が著しく不合理であったということはできない。
ウ したがって,前記アの事実によっても,本件招集請求に応じなかった被告理事らに善管注意義務違反があったものと認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(4) 争点(2)エ(本件支出7ないし14に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(6)によれば,①d法律事務所に対する最初の弁護士報酬の支払である本件支出7(597万3483円)は,補助参加人の平成27年度の弁護士報酬を含む支払手数料の予算額(1500万円)の約4割を占めていたこと,②d法律事務所の本件支出7ないし14に係る請求書には,弁護士が行った具体的な作業内容,作業日時及び作業時間等が記載されていなかったこと,③d法律事務所は,本件支出7ないし14に係る法律事務を処理するに当たり,補助参加人に対し,上記法律事務に係る成果としての書類等の交付をしなかったことが認められる。
原告らは,これらの事実から,被告Y1及び被告Y6においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,d法律事務所の弁護士報酬の請求が妥当であるかを精査した上で,その支払を留保するなどの対応をすることなく,漫然と本件支出7ないし14を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y1及び被告Y6を除く被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y1及び被告Y6による本件支出7ないし14の決裁を監視すべき義務を怠り,被告Y1及び被告Y6に対して請求内容の確認を促すことも,d法律事務所に対して作業内容や作業時間の根拠を明らかにするように要請することもなく,漫然とこれを放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,前記認定事実(6)並びに前記(2)及び(3)の認定判断を踏まえると,補助参加人がd法律事務所に対して委任した法律事務は,いずれも法律専門家の法的技能が必要であったものと認められ,補助参加人が弁護士に対して上記法律事務を委任すべきである旨の判断が不合理であったということはできない。また,前記認定事実(6)及び弁論の全趣旨によれば,本件支出7ないし14に係る法律事務は,いずれも専ら補助参加人とa会ないしその所属する者との間の紛争を原因とするものであることが認められるところ,一貫した方針で上記紛争に対応する必要性があることを否定することができないこと,受任弁護士が交代しなければ,それまでの上記紛争の経緯説明を改めて行う必要がないことに加え,仮に受任弁護士が交代するとなれば,それに伴う事務の引継ぎ等の問題により,補助参加人の対応に支障が生ずるおそれがあることをも総合すると,補助参加人が最初に委任したd法律事務所に所属する弁護士を交代させることはしない旨の判断が不合理であったということはできず,この判断を前提にすると,被告Y1及び被告Y6において,その弁護士報酬の支払を留保するなどの対応をする義務を負うとは認められない。
前記認定事実(2)及び(6)によれば,補助参加人は,平成27年6月11日に策定及び施行した「経費管理規定」第4条に基づき,弁護士報酬の支出につき予算の修正が必要になる場合には,理事会において支払承認をしていたことが認められ,補助参加人が,状況の変化に伴って年度の途中に予算の修正がされることを予定していたことは明らかである。一方,前記認定事実(10)イによれば,同年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産として5億9804万3868円が,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)として合計1億5303万3988円が,負債として1億5556万1931円が,正味財産期末残高として4億4248万1937円がそれぞれ計上されていたことが認められ,同時点において,補助参加人が資本欠損又は債務超過の状態になっていたものとは認められない。これらに照らすと,補助参加人において本件支出7を行うことに支障があったものとは認められず,d法律事務所に対する最初の弁護士報酬の支払である本件支出7(597万3483円)が補助参加人の平成27年度の弁護士報酬を含む支払手数料の予算額(1500万円)の約4割を占めていたとしても(前記ア①),このことから直ちに補助参加人がd法律事務所に所属する弁護士を交代させることはしない旨の判断が不合理であったということはできない。
そして,前記認定事実(6)によれば,d法律事務所に所属するG弁護士は,補助参加人の臨時理事会に出席し,委任された訴訟対応について進捗状況の報告をしたこと,補助参加人は,G弁護士に対し,本件支出14に係る法律事務につき弁護士報酬の減額を要求して,その結果,タイムチャージによる弁護士報酬の算定の基礎となる作業時間の調整が行われたことが認められることからすると,請求書に具体的な作業内容,作業日時及び作業時間等が記載されておらず(前記ア②),d法律事務所が補助参加人に対してその法律事務に係る成果としての書類等の交付をしなかったとしても(前記ア③),これらのことから直ちにd法律事務所に所属する弁護士を交代させることはしない旨の判断が不合理であったということはできない。
以上に加え,被告Y1及び被告Y6が法律専門家でないことをも総合すると,前記アの事実によっても,本件支出7ないし14を承認した被告Y1及び被告Y6に善管注意義務違反があったものと認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y1及び被告Y6を除く被告理事らの被告Y1及び被告Y6に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(5) 争点(2)オ(本件支出15に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(7)によれば,①補助参加人は,e法律事務所との間で,本件告訴状の作成等に係る法律事務を委任し,その対価としてタイムチャージによる弁護士報酬を支払うことを内容とする委任契約を締結したこと,②e法律事務所が補助参加人に対して送付した弁護士報酬に係る請求書には,具体的な作業時間や作業内容についての記載がなかったことが認められる。
原告らは,これらの事実に加え,③e法律事務所の請求金額(97万4771円)は,同種の事件処理に係る一般的な弁護士報酬の相場(30万円ないし50万円)と比較して高額である旨を指摘して,被告Y2においては,補助参加人の理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,本件告訴状を作成する必要性やe法律事務所の請求内容の妥当性を検討することなく,漫然と本件支出15を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y2を除く被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y2による本件支出15の決裁を監視すべき義務を怠り,被告Y2に対してe法律事務所に対する委任の再検討を促すことも,自らe法律事務所に対して作業時間の確認を行うこともなく,漫然と本件支出15を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,前記認定事実(1)及び(3)によれば,補助参加人の定款上,本件請願を行うに際して社員総会の決議が必要であるとは認められないこと(定款第16条,33条参照),補助参加人は,平成26年9月10日,b連盟を債務者として,東京地方裁判所に対し,b連盟の協力団体たる仮の地位の確認等を求める仮処分命令の申立てをし,同裁判所は,同年10月24日,補助参加人がb連盟の協力団体の地位にあることを仮に定める仮処分決定をしたことが認められる。そうであるにもかかわらず,前記認定事実(7)によれば,補助参加人の会員であるCは,平成27年5月16日頃,補助参加人の約800箇所の支部,都道府県本部及び地区本部に対し,「会長は理事会,総会に諮ることなく,独断で天皇杯御下賜の請願をして,b連盟の呼びかけ(略)を無視し(略)協会関係役職者は追放となりました。」及び「Z協会段位の三段まではb連盟に申請認可という約束も,すべて解約されてしまいました。」との記載がある書面を送付したことが認められる。以上に加え,このような信用棄損行為に対する法的対応には,法律専門家の法的技能が必要であることを総合すると,補助参加人が,上記記載には根拠がないとして,本件告訴状の作成等を弁護士に委任すべきである旨の判断をしたことが不合理であったということはできない。
そして,前記認定事実(7)によれば,前記ア①の委任契約においては,各弁護士の1時間当たりの報酬単価が明記されていたことが認められることからすると,請求書に具体的な作業内容や作業時間の記載がなかったとしても(前記ア①及び②),その請求に係る弁護士報酬が上記委任契約で定められた計算方法により計算されたものである以上,補助参加人において,当該弁護士報酬の支払を免れることができない。
さらに,告訴状の作成に係る一般的な弁護士報酬の相場が形成されていることを認めるに足りる証拠がない上,そのような相場が形成されていると認める余地があると仮定しても,その請求に係る弁護士報酬が同種の事件処理に係る一般的な弁護士報酬の相場と比較して著しく高額であることを認めるに足りる的確な証拠はない(前記ア③)。そして,その請求に係る弁護士報酬が,上記委任契約で定められた計算方法により計算されたものである以上,同種の事件処理に係る一般的な弁護士報酬の相場と比較して著しく高額であると認める余地があると仮定しても,そのことだけを理由として,補助参加人において,当該弁護士報酬の支払を免れることができない。
これらによれば,本件支出15を行った被告Y2の判断が不合理であったということはできない。なお,補助参加人が実際に本件告訴状を提出するか否かは,刻々と変化する状況に応じて柔軟に判断されるべきものであるから,その後に補助参加人が本件告訴状を提出することがなかったとしても,上記認定判断を左右するに足りない。
以上に加え,被告Y2が法律専門家でないことをも総合すると,前記アの事実及び主張事実によっても,本件支出15を行った被告Y2に善管注意義務違反があったものと認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y2を除く被告理事らの被告Y2に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(6) 争点(2)カ(本件支出16に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(8)によれば,①補助参加人は,平成27年11月頃,c法律事務所に所属するE弁護士に対し,同月21日に開催予定の補助参加人の臨時社員総会に係る法律事務を委任したところ,E弁護士は,上記臨時社員総会において,新たな理事を選任する議案につき,最大14名の候補者に「○」をつけて選任する決議方法を議場で説明したこと,②補助参加人の定款上,理事の選任に係る議案を決議するには,候補者ごとに,総代議員の議決権の過半数を有する代議員が出席し,出席した当該代議員の議決権の過半数をもって行わなければならないとされていたこと(第21条1項及び3項),③a会に所属する補助参加人の会員は,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として上記臨時社員総会の無効確認等を求める訴訟を提起したところ,同裁判所は,平成28年9月5日,上記臨時社員総会の決議方法が補助参加人の定款に違反するとして,これを取り消す旨の判決を言い渡したことが認められる。
原告らは,これらの事実から,E弁護士が行った業務の内容には重大な瑕疵があったところ,被告Y6においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,c法律事務所による弁護士報酬の請求につき減額等の交渉を行うことなく,漫然と本件支出16を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y6を除く他の被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y6による本件支出16の決裁を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,減額を検討することもなく,漫然と本件支出16を承認したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,前記(1)ないし(5)の検討に照らすと,補助参加人は,平成27年11月当時においてa会との間の紛争を含む種々の法的紛争を経ており,同月21日に開催予定の臨時社員総会の法的対応において,法律専門家の法的技能が必要であったことが認められる。そうすると,補助参加人が平成27年11月頃にE弁護士に対して同月21日に開催予定の臨時社員総会の法的対応に係る法律事務を委任すべきである旨の判断に不合理があったということはできない。そして,前記認定事実(8)によれば,前記ア①の臨時社員総会には総会検査役が選任されており,a会に所属する理事から委任されたF弁護士も出席していたこと,E弁護士は,総会検査役の面前で,F弁護士との間で前記ア①の決議方法の事前協議を行ったことが認められる。これらに照らすと,被告Y6が,同月30日の本件支出16に先立ち,上記決議方法が補助参加人の定款に違反することを認識していたことはうかがわれない。
以上に加え,被告Y6が法律専門家でないことをも総合すると,本件支出16が行われた後に提起された訴訟において,上記決議方法が補助参加人の定款に違反するとして上記臨時社員総会が取り消されたとしても(前記ア①ないし③),法律専門家の判断を信頼し,上記臨時社員総会に瑕疵がないことを前提として,c法律事務所の請求のとおりに本件支出16を行った被告Y6の判断が不合理であったということはできない。
のみならず,c法律事務所に対する弁護士報酬支払債務が発生している以上,E弁護士が行った業務の内容に重大な瑕疵があったために,上記臨時社員総会の決議に瑕疵が生じていたとしても,必ずしもそのことだけを理由として,補助参加人が上記債務の弁済を拒絶し得るものではないから,本件支出16を行った被告Y6の判断が不合理であったということができず,被告Y6において,c法律事務所による弁護士報酬の請求につき減額等の交渉を行う義務を負うとは認められない。
ウ したがって,前記アの事実によっても,本件支出16を行った被告Y6に善管注意義務違反があったものと認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y6を除く被告理事らの被告Y6に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(7) 争点(2)キ(本件支出18に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(9)によれば,①Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を債務者として,本件懲戒解雇の無効を理由に賃金仮払い等を求める仮処分命令を申し立てたところ,同裁判所は,同年11月30日,申立てを一部認容し,補助参加人に対し,賃金の仮払いを命じたこと,②Dは,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として,本件懲戒解雇の無効確認等を求める訴訟を提起したこと,③本件組合は,同年頃,東京都労働委員会に対し,本件団交拒否には正当な理由がない旨を主張して,救済命令の申立てを行ったこと,④東京都労働委員会は,平成29年2月21日,本件団交拒否につき不当労働行為の成立を認め,上記③の申立ての一部を認容する救済命令を発したところ,上記救済命令に係る命令書には,「当委員会は,Dの懲戒解雇から既に2年ほどが経過し,分離した不当労働行為事件(解雇部分)及び訴訟もいまだ係属中という状況をみるに,紛争のこれ以上の長期化を避けるためにも,団体交渉において,労使双方が,紛争の全面解決に向け,真摯に協議し速やかに合意形成を図ることを強く望むものである」との記載があることが認められる。
原告らは,これらの事実から,本件懲戒解雇及び本件団交拒否が不当であることは明白であったところ,被告Y6においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,速やかに本件懲戒解雇を撤回してD及び本件組合との紛争を収束させることなく,漫然と本件支出18を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y6を除く被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y6による本件支出18の決裁を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件支出18を承認したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,前記認定事実(9)によれば,①補助参加人は,d法律事務所に所属する弁護士に対してDの事情聴取を委任し,その事情聴取後に,上記弁護士の意見を参考にして本件懲戒解雇を行ったこと,②補助参加人は,前記ア②の訴訟及び同③の申立ての法的対応をh法律事務所に委任し,被告Y6は,平成28年2月12日,その弁護士報酬の支払として,本件支出18を行ったこと,③東京地方裁判所は,平成29年9月25日,前記ア②の訴訟につきDの請求を一部認容してその余を棄却する旨の判決を言い渡したことが認められ,前記ア②の訴訟及び同③の申立てにおけるDの主張が全て正当なものであることが一見して明白であったとは認められない。そして,上記の経過に照らすと,上記①の弁護士の意見は,本件懲戒解雇を行うことが可能であるというものであったと推認することができ,その推認を覆すに足りる証拠はない。
以上に加え,被告Y6が法律専門家でないことをも総合すると,東京地方裁判所が本件懲戒解雇の無効を理由とする賃金仮払い等の仮処分命令を求めるDの申立てを一部認容したとしても(前記ア①),法律専門家の意見に基づき,本件懲戒解雇に理由があるとして,前記ア②の訴訟及び同③の申立ての法的対応をh法律事務所に委任し,その弁護士報酬の支払として本件支出18を行った被告Y6の判断が著しく不合理であったということはできない。
東京都労働委員会が本件団交拒否につき不当労働行為の成立を認め,本件組合の申立てを一部認容する救済命令を発したとしても(前記ア④),本件支出18が行われた後の事情にすぎず,上記認定判断を左右するに足りない。
ウ したがって,前記アの事実によっても,本件支出18を行った被告Y6に善管注意義務違反があったものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,被告Y6を除く被告理事らの被告Y6に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
4 争点(3)(被告監事らの任務懈怠の有無)
被告理事らに本件各支出につき善管注意義務違反が認められないことは前記3(1)ないし(7)のとおりであり,これが認められることを前提として被告監事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y9を除く。)の監視監督義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
5 争点(4)(補助参加人の損害の有無及び額)
事案に鑑み,争点(2)ク及びこれに係る争点(3)の判断を保留して,先に争点(4)を検討する。
(1) 原告らは,本件各取崩しがなければその後の補填計画により減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)に補填されるべき8600万円を別の用途に使用することができたことを指摘した上で,本件各取崩しに伴い振り替えた預金が本件各支出の原資となっており,補助参加人が本件各支出により本件各取崩しを余儀なくされたことから,原告らの主張する被告らの任務懈怠と相当因果関係のある補助参加人の損害は,本件各取崩しの合計額に相当する8768万6868円である旨を主張する。前記認定事実(10)によれば,補助参加人が平成27年12月17日に減価償却引当預金を管理する預金口座から退職給付引当預金(資産)を管理する預金口座に4500万円を移動したこと,同年6月18日から同年12月17日までの間に上記退職給付引当預金(資産)を管理する預金口座から本件支出5ないし17が行われた預金口座に合計8600万円を移動したことが認められる。
(2) しかしながら,本件各取崩しは,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)から他の預金口座に金員を移動するものにすぎず,振込手数料の負担を除き,直ちに補助参加人の全体財産を減少させるものではないから,それだけでは補助参加人に損害を生じさせるものではなく,本件各取崩しによって原資を調達しなければ行うことができない支出と相まって初めて,補助参加人に損害を生じさせ得るものと認められる(なお,原告らは,上記振込手数料の負担を補助参加人の損害として主張していない。)。そして,平成27年3月末時点において,補助参加人が資本欠損又は債務超過の状態になっていたものとは認められないことは,前記3(4)イのとおりである。また,前記認定事実(10)カによれば,平成28年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産として4億9993万9121円が,現金及び預金合計として6567万9972円が,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)として合計6534万7120円が,負債として1億5142万4543円が,正味財産期末残高として3億4851万4578円がそれぞれ計上されていたことが認められ,同時点において,補助参加人が,資本欠損又は債務超過の状態になっていたものとは認められず,かえって,6000万円を超える現金及び預金を有する上,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)の合計6534万7120円及び前記(1)の補填計画により補填されるべき8600万円を資産として計上しなくても,1億9000万円以上の資産超過の状態にあったものと認められるから,相当額の借入れをすることが可能であったことがうかがわれる。これらに加えて,前記認定事実(10)クによれば,内閣府公益認定等委員会は,平成29年2月15日,補助参加人の立入検査を実施し,補助参加人に対し,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)につき補填計画の作成を指示したものの,他に補助参加人の財産に関する指摘をしなかったことが認められることをも総合すると,前記(1)の事実によっても,補助参加人において,本件各支出は本件各取崩しによって原資を調達しなければ行うことができなかったものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。そうすると,補助参加人は,本件各支出により本件各取崩しを余儀なくされたものとまでは認められない。
一方,本件各支出に係る法律事務の委任は補助参加人にとって必要であり,本件各支出につき被告理事らに任務懈怠があったと認められないことは,前記3(1)ないし(7)のとおりであり,その他に補助参加人とA弁護士,d法律事務所,e法律事務所,c法律事務所及びh法律事務所との間の各委任契約に瑕疵があることの主張,立証はないから,補助参加人は,上記各委任契約に基づき本件各支出を行う義務を負っていたものと認められる。そうすると,補助参加人が本件各支出をすることにより,補助参加人の弁護士報酬支払債務が同額減少していることは明らかである。そして,補助参加人が債務超過ではなく,本件各支出を行う義務を履行しなければならないことからすると,本件各取崩しがされなかったものと仮定しても,その後の補填計画により減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)に補填されるべき8600万円は,これを本件各支出の一部に充てざるを得ないから,別の用途に使用することができたものとは認められない。
以上に照らすと,前記(1)の事実によっても,本件各取崩しにより補助参加人に原告らの主張する損害が発生しているとも,本件各取崩しと原告らの主張する補助参加人の損害との間に相当因果関係があるとも認められず,他にこれらを認めるに足りる証拠はない。
したがって,前記5(1)の原告らの主張は採用することができない。
第4 結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第17部
(裁判長裁判官 田中寛明 裁判官 早田久子 裁判官 吉原裕貴)
別紙
当事者目録
茨城県常総市〈以下省略〉
原告 X1
埼玉県行田市〈以下省略〉
原告 X2
上記両名訴訟代理人弁護士 櫻町直樹
東京都世田谷区〈以下省略〉
被告 Y1(以下「被告Y1」という。)
宮城県亘理郡〈以下省略〉
被告 Y2(以下「被告Y2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 金村正比古
東京都中野区〈以下省略〉
被告 Y3(以下「被告Y3」という。)
東京都目黒区〈以下省略〉
被告 Y4(以下「被告Y4」という。)
東京都板橋区〈以下省略〉
被告 Y5(以下「被告Y5」という。)
東京都文京区〈以下省略〉
被告 Y6(以下「被告Y6」という。)
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y7(以下「被告Y7」という。)
埼玉県川口市〈以下省略〉
被告 Y8(以下「被告Y8」という。)
上記6名訴訟代理人弁護士 初澤寛成
東京都北区〈以下省略〉
被告 Y9(以下「被告Y9」という。)
埼玉県川口市〈以下省略〉
被告 Y10(以下「被告Y10」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 伊藤敬洋
東京都文京区〈以下省略〉
被告ら補助参加人 公益社団法人Z協会(以下「補助参加人」という。)
同代表者代表理事 Y6
同訴訟代理人弁護士 小出一郎
同 我妻崇明
〈以下省略〉
*******
裁判年月日 令和 2年 3月23日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(ワ)38208号
事件名 社員代表訴訟事件
文献番号 2020WLJPCA03238010
出典
裁判年月日 令和 2年 3月23日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(ワ)38208号
事件名 社員代表訴訟事件
文献番号 2020WLJPCA03238010
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用及び補助参加費用は,原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告らは,連帯して,補助参加人に対し,8768万6868円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Y1,被告Y2,被告Y4,被告Y5,被告Y6及び被告Y9は平成29年11月23日,被告Y7は同月24日,被告Y8及び被告Y10は同月27日,被告Y3は同月29日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
補助参加人は,平成26年5月から平成28年2月にかけて,別紙弁護士報酬支出一覧表の「支払日(又は請求を受けた日)」欄記載の日に,「支出額」欄記載の弁護士報酬(合計9282万7978円)を支出した(以下,「番号」欄記載の各番号に従い,「本件支出1」,「本件支出2」などといい,本件支出1ないし18を併せて「本件各支出」という。)。
本件は,公益社団法人である補助参加人の代議員であり,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法人法」という。)上の社員である原告らが,①補助参加人の理事である被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7及び被告Y8並びに理事であった被告Y1及び被告Y2(以下,併せて「被告理事ら」という。)は,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,補助参加人に本件各支出を余儀なくさせ,本件各支出のために違法又は瑕疵のある手続により退職給付引当預金の取崩し(以下「本件取崩し1」という。)及び減価償却引当預金の取崩し(以下「本件取崩し2」といい,本件取崩し1と併せて「本件各取崩し」という。)を行い,②補助参加人の監事である被告Y10及び監事であった被告Y9(以下,併せて「被告監事ら」という。)は,被告理事らによる本件各支出及び本件各取崩しを監視又は監督すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠って放置し,上記①及び②の任務懈怠によって,補助参加人が本件各取崩しの合計額に相当する8768万6868円の損害を被ったなどと主張して,被告らに対し,法人法111条1項に基づき,上記8768万6868円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Y1,被告Y2,被告Y4,被告Y5,被告Y6及び被告Y9については平成29年11月23日,被告Y7については同月24日,被告Y8及び被告Y10については同月27日,被告Y3については同月29日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める代表訴訟である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1) 当事者等
ア 補助参加人は,昭和33年4月10日,社団法人として認可された団体であり,平成24年4月1日,公益社団法人に移行するとともに,別紙「定款の定め(抄)」記載の内容を含む定款を作成した。
補助参加人は,日本古来の武道である空手道の研究及び指導によって,その技量の向上と自己鍛錬の普及を図り,もって国民の体位の向上と健全なスポーツ精神の涵養に寄与するとともに,礼節を重んじる日本武道の精神を国際的に広めることにより世界平和に貢献することを目的としている。(甲2,3の1,丙61)
イ 原告らは,補助参加人の代議員であり,補助参加人の定款上,法人法上の社員の地位にある者である(第5条)。
補助参加人の会員の一部で構成される「a会」(以下「a会」という。)と称するグループがあり,原告らは,a会に所属している。
ウ 被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7及び被告Y8は,補助参加人の理事であり,被告Y1及び被告Y2は,補助参加人の理事であった者である(被告理事ら)。
平成27年10月21日までは被告Y1が,同日以降は被告Y6が補助参加人の代表理事を務めている。また,被告理事らの在任期間は別紙在任期間一覧表のとおりである。
エ 被告Y10は補助参加人の監事であり,被告Y9は補助参加人の監事であった者である(被告監事ら)。
被告監事らの在任期間は別紙在任期間一覧表のとおりである。
(2) 補助参加人による弁護士報酬の支出等
補助参加人は,平成26年5月から平成28年2月にかけて,次のアないしキの経緯により,別紙弁護士報酬支出一覧表の「支払日(又は請求を受けた日)」欄記載の日に,「支出額」欄記載の弁護士報酬(合計9282万7978円)を支出した(本件各支出)。
ア 本件支出1,2,5及び6について
(ア) 被告Y1は,宮内庁に対し,補助参加人が主催する○○選手権大会につき天皇杯の下賜を請願する旨の「「天皇杯」ご下賜請願書」と題する平成25年12月22日付け書面を提出した(以下「本件請願」という。)。
補助参加人が協力団体として加入していた公益財団法人b連盟(以下「b連盟」という。)は,本件請願がb連盟による天皇杯及び皇后杯の下賜申請を妨害するものであるとして,補助参加人を協力団体から除名する処分をした。(丙66)
(イ) 補助参加人は,前記(ア)の除名処分を争うために弁護士であるA(以下「A弁護士」という。)に法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出1,2,5及び6を行った。
イ 本件支出3及び17について
(ア) 補助参加人の内部規則である「公益社団法人Z協会代議員選挙規則」(以下「本件選挙規則」という。)には,別紙「本件選挙規則(抄)」記載のとおりの定めが含まれている。(甲24)
(イ) 補助参加人の正会員であったB(以下「B」という。)は,平成26年3月に実施された補助参加人の代議員選挙(以下「本件選挙」という。)において東京都選挙区の代議員として当選した。
(ウ) 前記(イ)のBの当選を知った被告Y1は,理事会において,Bを代議員として取り扱わない旨の提案(以下「本件提案」という。)をし,その賛同を得た。その上で,被告Y1は,平成26年6月21日に開催された補助参加人の社員総会において,Bに代議員としての権限の行使を認めなかった。
Bは,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として,代議員の地位にあることの確認訴訟を提起した(同裁判所平成26年(ワ)第23904号地位確認等請求事件)。(甲17)
(エ) 補助参加人は,前記(ウ)の訴訟に対応するためにA弁護士及びc法律事務所(以下「c法律事務所」という。)に法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出3及び本件支出17を行った。
ウ 本件支出4について
(ア) a会に所属する原告らを含む補助参加人の社員らは,平成26年10月15日,法人法37条1項及び補助参加人の定款18条2項に基づき,被告Y1に対し,被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的とする社員総会の招集を請求した(以下「本件招集請求」という。)。(丙63)
(イ) 原告らを含む補助参加人の社員は,平成26年12月9日,東京地方裁判所に対し,被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的とする社員総会の招集許可の申立てをした。
同裁判所は,平成27年1月21日,上記申立てを許可し,同月31日,上記社員総会が開催された。(丙5)
(ウ) 補助参加人は,前記(イ)の申立てに対応するためにA弁護士に法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出4を行った。
エ 本件支出7ないし14について
補助参加人は,d法律事務所(以下「d法律事務所」という。)に対し,法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出7ないし14を行った。
オ 本件支出15について
補助参加人は,e法律事務所(以下「e法律事務所」という。)に対し,告訴人を補助参加人とし,被告訴人を補助参加人の正会員であるCとする名誉毀損に係る告訴状(以下「本件告訴状」という。)の作成を含む法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出15を行った。(丙25)
カ 本件支出16について
補助参加人は,平成27年11月21日,臨時社員総会を開催したところ,その総会対応を含む法律事務をc法律事務所に委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出16を行った。
キ 本件支出18について
(ア) 補助参加人の総本部指導員として勤務し,「f会」と称する会に所属していたD(以下「D」という。)は,他の総本部指導員と共にg労働組合(以下「本件組合」という。)を結成し,平成26年6月20日,補助参加人に対して本件組合の結成を通知した。(甲38,47)
(イ) 補助参加人は,Dが補助参加人に対する誹謗中傷行為を行った等として,Dに対し,平成27年2月16日付けで,懲戒解雇の意思表示をした(以下「本件懲戒解雇」という。)。(丙64)
(ウ) Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として,本件懲戒解雇の無効確認等を求める訴訟を提起した(同裁判所平成27年(ワ)第22149号解雇無効確認等請求事件)。(甲30)
(エ) 本件組合は,平成27年2月18日,補助参加人に対し,本件懲戒解雇を議題とする団体交渉を申し入れたが,補助参加人はこれに応じなかった(以下「本件団交拒否」という。)。
そこで,本件組合は,東京都労働委員会に対し,本件団交拒否には正当な理由がない等と主張して,救済命令の申立てを行った。
(オ) 補助参加人は,h法律事務所(以下「h法律事務所」という。)に対し,前記(ウ)の訴訟及び前記(エ)申立ての対応に係る法律事務を委任し,その弁護士報酬の支払として,本件支出18を行った。
(3) 本件各取崩し
ア 平成27年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産の部の「基本財産」欄に減価償却引当預金として4794万1394円が,「特定資産」欄に退職給付引当預金(資産)として1億0509万2594円がそれぞれ計上されていた。(甲41の1,丙4,72,73)
イ 平成28年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産の部の「基本財産」欄に減価償却引当預金として294万7900円(前年度と比較して4499万3494円の減少。本件取崩し2)が,「特定資産」欄に退職給付引当預金(資産)として6239万9220円(前年度と比較して4269万3374円の減少。本件取崩し1)がそれぞれ計上されていた。(甲8,41の2,丙72,73)
(4) 提訴請求
原告らは,平成29年1月23日付け書面(以下「本件提訴請求書」という。)により,補助参加人の代表理事である被告Y6並びに監事である被告Y10及び被告Y9に対し,法人法278条1項本文に基づき,本件各支出及び本件各取崩しについて被告らの責任を追及する訴えの提起を請求した(以下「本件提訴請求」という。)。
原告らは,補助参加人が本件提訴請求の日から60日を経過しても本件提訴請求に係る訴えを提起しなかったため,同年11月10日,法人法278条2項に基づき,本件訴えを提起した。(甲4の1・2)
2 争点
(1) 本件訴えの適法性
(2) 被告理事らの任務懈怠の有無
ア 本件支出1,2,5及び6に係る任務懈怠の有無
イ 本件支出3及び17に係る任務懈怠の有無
ウ 本件支出4に係る任務懈怠の有無
エ 本件支出7ないし14に係る任務懈怠の有無
オ 本件支出15に係る任務懈怠の有無
カ 本件支出16に係る任務懈怠の有無
キ 本件支出18に係る任務懈怠の有無
ク 本件各取崩しの手続に係る任務懈怠の有無
(3) 被告監事らの任務懈怠の有無
(4) 補助参加人の損害の有無及び額
3 争点に関する当事者の主張
(1) 本件訴えの適法性
(原告らの主張)
本件提訴請求書には,請求を特定するのに必要な事実(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則(以下「法人法施行規則」という。)85条2号)が記載されており,有効な提訴請求があるといえ,本件訴えは不適法ではない。
(被告ら及び補助参加人の主張)
本件提訴請求書には,請求を特定するのに必要な事実が記載されておらず,有効な提訴請求がないから,本件訴えは不適法であり,却下されるべきである。
(2) 被告理事らの任務懈怠の有無
ア 本件支出1,2,5及び6に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 補助参加人には天皇杯及び皇后杯の下賜申請ないし請願資格がないところ,被告Y1は,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,b連盟が天皇杯及び皇后杯の下賜申請を進めていたことを認識しながら,本件請願を強行した結果,b連盟から除名処分を受ける事態を招き,補助参加人に本件支出1,2,5及び6を余儀なくさせた。
補助参加人に天皇杯及び皇后杯の下賜申請ないし請願資格がないことは,被告Y1が理事会の事前承認を得ずに本件請願を行ったこと,天皇杯及び皇后杯は,日本国内において,1競技につき,その競技を統括している団体に対して1つのみ下賜されるものであるが,補助参加人は上記団体ではないこと,補助参加人は,b連盟に対し,本件請願がb連盟の上記下賜申請と競合し,混乱を招いたことにつき遺憾の意を表明したことからも明らかである。
したがって,被告Y1の本件請願は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y1を除く被告理事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y7及び被告Y8を除く。)が,補助参加人の理事として,被告Y1の本件請願を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件請願を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人は,本件請願に先立つ平成25年12月22日,臨時理事会を開催して,本件請願につき承認する旨の決議を行っており,被告Y1は,本件請願につき理事会の事前承認を得ている。また,本件請願を制限する法令ないしb連盟における規約は存在しない。そして,東京地方裁判所が,平成26年10月24日,補助参加人がb連盟の協力団体の地位にあることを仮に定める仮処分決定をしていることからすると,b連盟の除名処分には理由がない。
したがって,A弁護士に委任した本件支出1,2,5及び6に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。なお,
イ 本件支出3及び17に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 本件支出3について
a Bは,本件選挙において適正に代議員として選出されたところ,被告Y1は,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,理事会において何らの根拠なく本件提案をし,その賛成を得た上で,平成26年6月21日に開催された社員総会においてBに代議員としての権限の行使を認めなかった。
これが契機となって,Bが代議員の地位にあることを確認するために前記前提事実(2)イ(ウ)の訴訟の提起をし,補助参加人がこれに対応するために本件支出3を余儀なくされたことから,被告Y1の本件提案は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
被告Y1の本件提案に何ら根拠がないことは,(a)本件選挙規則8条によれば,代議員選挙において選出された代議員の資格を争うために,地方選挙管理委員会に対して異議を申し立てることができるとされているところ,補助参加人は,本件選挙におけるBの当選につき上記異議を申し立てていないこと,(b)内閣府公益認定等委員会が作成した「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」と題する平成20年10月10日付け書面には,社員を選出するための選挙が理事及び理事会から独立して行われるべきである旨の記載があること,(c)補助参加人の定款には,「理事又は理事会は,代議員を選出することはできない。」(12条3項後段)との規定があること,(d)補助参加人の中央選挙管理委員会が作成した「公益社団法人Z協会代議員選挙について」と題する平成28年2月18日付け書面には,「各選挙区においては,選挙管理委員会に対する他からの関与又は介入等については,これを徹底して排除していただきたいということです。」及び「都道府県等本部長又は当該地区の理事等は,当該地方選挙管理委員会が管理執行する代議員選挙については一切関与できません。」との記載があること,(e)補助参加人は,上記訴訟において,訴え提起から7箇月を経過して初めて,本件選挙の立候補の締切日又は当選決定までに城北支部への移籍登録が完了していなかったことをBの代議員の地位を否定する理由として主張したことから明らかである。
b 被告Y1を除く被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y1の職務の執行を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,Bの代議員資格を否定する根拠やその妥当性について何ら検討することなく,理事会において漫然と被告Y1の本件提案に賛成したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 本件支出17について
a 前記(ア)aのとおり,本件選挙において,Bが東京都選挙区の代議員として適正に当選したことは明らかであるところ,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5が,補助参加人の(代表)理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,Bが代議員の地位にあることを早期に認めて前記(ア)aの訴訟を収束させることなく,漫然と理事会において本件支出17の支払承認をしたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
b 前記aの理事会を欠席した被告Y7及び被告Y8が,補助参加人の理事として,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5の職務の執行を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件支出17を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
c 被告Y1及び被告Y2は,本件支出17が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1は本件支出17に係る法律事務をc法律事務所に委任した者として,被告Y2はその委任を監視すべき立場にあった者として,それぞれ補助参加人に対する任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。本件選挙規則等の内部規則によれば,Bが本件選挙において被選挙権を有していなかった可能性があった。そこで,被告Y1を除く被告理事らは,代議員資格のない者に社員総会における議決権行使を認めて社員総会決議の取消事由が発生することを避けるために,被告Y1の本件提案に賛成したにすぎない。
したがって,A弁護士及びc法律事務所に委任した本件支出3及び17に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。
ウ 本件支出4に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
ア 被告理事らは,補助参加人の理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,自らの立場を守るという不当な動機に基づき,正当な理由なく補助参加人の社員らの本件招集請求を拒絶した。
これが契機となって,上記社員らは,東京地方裁判所に対し,上記社員総会の招集許可の申立てを行い,補助参加人は,これに対応するために本件支出4を余儀なくされたことから,被告理事らの上記行為は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
本件招集請求の拒絶に正当な理由がないことは,上記申立てについて平成27年1月14日に第1回審尋期日が開催されたところ,同裁判所は,同月21日の第2回審尋期日には上記申立てを許可するとの判断を示し,同月31日に上記社員総会が開催されたこと,上記社員総会における議案は,被告Y1及び被告Y2の理事解任であり,被告Y1及び被告Y2は上記議案に利害関係を有していたこと,上記議案は補助参加人の最高意思決定機関である社員総会において代議員各人が判断すべき事項であること,本件招集請求が権利濫用に当たるような事情もなかったことから明らかである。
イ したがって,被告理事らによる本件招集請求の拒絶は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。社員による社員総会の招集請求は,請求を受けた理事に社員総会の招集義務を課すものではない。また,前記(2)ウ(原告らの主張)アの議案はb連盟から除名処分を受けたことを理事解任の理由とするものであるが,前記(2)ア(被告ら及び補助参加人の主張)のとおり,b連盟の除名処分には根拠がなかったから,上記議案は不適切であったこと,社員総会の招集に必要な費用は本件支出3(32万4000円)を容易に上回ることからすれば,本件招集請求に応じる必要性がないとした被告理事らの判断には合理性がある。
したがって,A弁護士に委任した本件支出4に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。
エ 本件支出7ないし14に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) d法律事務所に対する最初の弁護士報酬の支払である本件支出7(597万3483円)は,補助参加人の平成27年度の弁護士報酬を含む支払手数料の予算額(1500万円)の約4割を占めていた。また,d法律事務所の本件支出7ないし14に係る請求書には,弁護士が行った具体的な作業内容,作業日時及び作業時間等が記載されていなかった。さらに,d法律事務所は,本件支出7ないし14に係る法律事務を処理するに当たり,補助参加人に対し,上記法律事務に係る成果としての書類等の交付をしなかった。
被告Y1及び被告Y6が,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,d法律事務所の上記請求を精査して,支払を留保するなどの対応をすることなく,漫然と本件支出7ないし14を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y1及び被告Y6を除く被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y1及び被告Y6の前記(ア)の行為を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,被告Y1及び被告Y6に対して前記(ア)の請求につき精査を促すことも,d法律事務所に対して作業時間や作業内容の根拠を明らかにするように要請したりすることもなく,漫然と本件支出7ないし14の承認をしたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(ウ) なお,被告Y1及び被告Y2は,本件支出13及び本件支出14が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1はd法律事務所に対して上記各支出に係る法律事務を委任した者として,被告Y2はその委任を監視すべき立場であった者として,それぞれ補助参加人に対する任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人がd法律事務所に対して委託した本件支出7ないし14に係る法律事務は必要かつ有益であり,d法律事務所から対価役務の提供も受けていた。また,被告理事らは,法律事務の委任先を決定するにつき広範な裁量を有している。
そして,補助参加人において,d法律事務所に対する弁護士報酬の負担は十分に可能であった上,補助参加人は,その支払に伴って予算の修正が必要になる場合には,内部規則に基づき,理事会において支払承認をしていた。
オ 本件支出15に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) e法律事務所による本件告訴状の作成等に係る弁護士報酬の請求は,タイムチャージ方式で金額が算定されていたにもかかわらず,その請求書には具体的な作業時間や作業内容の記載がなかった。また,その請求金額(97万4771円)は,一般的な弁護士報酬の相場(30万円ないし50万円)と比較して高額であった。
被告Y2が,補助参加人の理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,本件告訴状を作成する必要性や上記請求金額の妥当性を検討することも,報酬相場につき他の法律事務所との比較検討をすることもなく,漫然と本件支出15を決裁したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y2を除く被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y2の前記(ア)の行為を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,被告Y2に対して前記(ア)の請求内容の精査を促すことも,自らe法律事務所に対して上記請求の作業時間の確認を行うこともなく,漫然と本件支出15を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(ウ) なお,被告Y1は,本件支出15が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,e法律事務所に対して法律事務を委任した者として,補助参加人に対する任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人がe法律事務所に対して委託した本件支出15に係る法律事務は必要かつ有益であり,e法律事務所から対価役務の提供も受けていた。また,被告理事らは,法律事務の委任先を決定するにつき広範な裁量を有している。
カ 本件支出16に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 補助参加人から法律事務の委任を受けたc法律事務所に所属する弁護士であるE(以下「E弁護士」という。)は,平成27年11月21日に開催された補助参加人の臨時社員総会において,新たな理事を選任する議案の決議方法につき「最大14人の候補者に○をつける」との提案をしたところ,その決議方法は補助参加人の定款に明白に違反するものであり(定款第21条3項),後に東京地方裁判所は,決議方法が定款に違反するものとして上記臨時社員総会における理事の選任決議を取り消した(同裁判所平成27年(ワ)第35505号社員総会決議無効確認等請求事件)。
上記のとおり,E弁護士の業務遂行の内容には重大な瑕疵があったところ,被告Y6が,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,c法律事務所による弁護士報酬の請求につき減額等を求めることなく,漫然と本件支出16を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y6を除く他の被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y6の前記(ア)の行為を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,減額を検討することなく,漫然と本件支出16を承認したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(ウ) なお,被告Y1及び被告Y2は,本件支出16が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1は本件支出16に係る法律事務をc法律事務所に対して委任した者として,被告Y2はその委任につき監視すべき立場にあった者として,補助参加人に対する任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。E弁護士は,総会検査役の面前で,a会に所属する理事が委任した弁護士であるF(以下「F弁護士」という。)との間で決議方法の事前協議を行っており,法律専門家ではない被告理事らにとって,その決議方法が補助参加人の定款に違反することが明白であったということはできない。
したがって,c法律事務所に委任した本件支出16に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。
キ 本件支出18に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 本件懲戒解雇及び本件団交拒否は不当であることが明白であったところ,被告Y6が,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,速やかに本件懲戒解雇を撤回してD及び本件組合との紛争を収束させることなく,漫然と本件支出18を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
本件懲戒解雇及び本件団交拒否が不当であったことは,(a)Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を債務者として,本件懲戒解雇の無効を理由に賃金仮払い等を求める仮処分命令を申し立てたところ(同裁判所平成27年(ヨ)第21029号地位保全等仮処分命令申立事件),同裁判所は,同年11月30日,Dの申立てを一部認容し,補助参加人に対し,賃金の仮払いを命じたこと,(b)東京都労働委員会は,平成29年2月21日,本件団交拒否につき不当労働行為の成立を認め,本件組合の申立ての一部を認容する命令を発したところ,その命令書には,「当委員会は,Dの懲戒解雇から既に2年ほどが経過し,分離した不当労働行為事件(解雇部分)及び訴訟もいまだ係属中という状況をみるに,紛争のこれ以上の長期化を避けるためにも,団体交渉において,労使双方が,紛争の全面解決に向け,真摯に協議し速やかに合意形成を図ることを強く望むものである」との記載があることから明らかである。
(イ) 被告Y6を除く被告理事らが,補助参加人の理事として,被告Y6の前記(ア)の行為を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件支出18を承認したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(ウ) なお,被告Y1及び被告Y2は,本件支出18が行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1は本件支出18に係る法律事務をh法律事務所に委任した者として,被告Y2はその委任を監視すべき立場にあった者として,補助参加人に対して任務懈怠責任を負う。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人は,d法律事務所に所属する弁護士の助言を受け,Dに対して弁明の機会を与えた上で,本件懲戒解雇を行ったものであり,その手続や内容は適正であった。
したがって,h法律事務所に委任した本件支出18に係る法律事務は,補助参加人にとって必要かつ有益であった。
ク 本件各取崩しの手続に係る任務懈怠の有無
(原告らの主張)
被告理事らが,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,次の(ア)ないし(オ)のとおり違法又は瑕疵のある手続により本件各取崩しを行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
なお,被告Y1及び被告Y2は,本件各取崩しが行われた当時,補助参加人の理事ではなかったが,被告Y1及び被告Y2が本件各支出につき任務懈怠責任を負うことは前記アないしキのとおりであることからすると,本件各支出が原因となった本件各取崩しについても任務懈怠責任を免れない。
(ア) 補助参加人が公益認定を受けたのは平成24年3月21日であるところ,同月31日時点における補助参加人の貸借対照表の資産の部には,「特定資産」欄に減価償却引当預金として4791万5162円及び退職給付引当預金(資産)として9828万7439円が他の勘定科目と区分して計上されており,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)は,公益法人において公益目的事業を行うために使用し,又は処分しなければならないものとされている「公益目的事業財産」(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律18条,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則25条1項)に当たる。
そうであるにもかかわらず,公益目的事業ではなく,弁護士報酬の支出という補助参加人の運営のために本件各取崩しが行われたのであり,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律18条に違反する。
(イ) 内閣府が作成した「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)」と題する書面には,前記(ア)の公益目的事業財産のうち,貸借対照表等において基本財産又は特定資産として表示された金融資産は,法人自らが公益目的に使用すると定めた財産として公益目的保有財産に該当する旨,公益目的保有財産を取り崩す場合には,定款等の内部規程を定めるとともに,その規程に従い,理事会,社員総会,評議員会等の機関決定を経る必要がある旨の記載がある。
補助参加人の貸借対照表上,減価償却引当預金は基本財産として,退職給付引当預金(資産)は特定資産としてそれぞれ計上されており,これらは公益目的保有財産に該当する。そうであるにもかかわらず,取崩しに係る内部規程が制定されることも,理事会等の機関決定を経ることもなく本件各取崩しが行われた。
(ウ) 補助参加人における平成27年度予算によれば,経常収益が3億5480万円であるのに対し,経常費用が3億7730万円を計上し,2250万円の赤字が見込まれていた。また,上記予算によれば,弁護士報酬を含む支払手数料の予算は1500万円であったところ,補助参加人は,平成27年5月29日時点において,既に弁護士報酬として1654万2397円を支出した。
したがって,本件各取崩しをしなければ本件各支出を行うことができなかったということができ,違法な支出である。
(エ) 退職給付引当預金(資産)を取り崩すに当たっては,「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」(法人法119条)として日本公認会計士協会が策定した「公益法人会計基準に関する実務指針」に基づき,目的,積立の方法,目的内取崩しの要件,目的外取崩しの要件,運用方法等を定めた取扱要領を制定した上で,その取扱要領の手続に従う必要があった。
そうであるにもかかわらず,取扱要領が制定されることなく,本件取崩し1が行われた。
(オ) 補助参加人は,平成27年6月18日から同年12月17日にかけて合計約8600万円の退職給付引当預金(資産)を取り崩しているところ,これは,同年3月31日時点における補助参加人の資産(5億9804万3868円)の14.4パーセントに相当すること,退職給付引当預金(資産)は,団体としての財産的基盤の強化に資する重要な資産であり,前記(エ)のとおり取扱要領の制定が要請されていること,補助参加人は,内閣府立入検査において,退職給付引当預金(資産)を補填すべきである旨の指摘を受けたことからすれば,退職給付引当預金(資産)は補助参加人にとって重要な財産であった。
そうであるにもかかわらず,理事会の承認なく本件取崩し1が行われており,法人法90条4項1号に違反する。
(カ) 減価償却引当預金は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則22条3項3号に掲げる資金(以下「資産取得資金」という。)として計上されているところ,「公益法人・一般法人の運営と立入検査対応Q&A110」と題する書面によれば,資産取得資金の目的外取崩しを行う場合には,あらかじめ定められている特別の手続を経る必要があり,かつ,目的外取崩しであっても,公益目的の資産取得資金は原則として公益目的事業に関する支出にしか使用することができないとされている。
そうであるにもかかわらず,上記特別の手続を経ることも,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律18条にいう「正当な理由」もなく本件取崩し2が行われた。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)は,公益目的事業財産に当たらない。また,指定正味財産を財源としない任意で積み立てた特定資産を減少させる場合には,法人自らが内部規程等で取崩しの手続を定めた場合を除き,法令上の制限はない。
(3) 被告監事らの任務懈怠の有無
(原告らの主張)
(ア) 被告監事らは,被告理事らが適切に補助参加人の財産を管理しているかを監視・監督し,必要に応じて是正すべき職務上の注意義務を負う(法人法99条1項)。
被告監事らは,本件各支出の額が補助参加人の財産基盤に重大な影響を与え,その運営に支障を来すおそれがあったにもかかわらず,本件各支出の必要性や相当性について被告理事らに質問することなく,漫然とこれを放置した。
したがって,被告監事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y9を除く。)の上記行為は,補助参加人に対する任務懈怠を構成する。
(イ) 被告Y9は,本件支出3について,Bの代議員資格を否定する理事会に参加していないものの,補助参加人の監事に就任した後,Bの補助参加人に対する訴訟への応訴や本件支出3について何ら異議を述べていないことから,監視義務違反を免れない。
(被告監事らの主張)
争う。
(4) 補助参加人の損害の有無及び額
(原告らの主張)
本件各取崩しに伴い振り替えた預金が本件各支出の原資となっており,補助参加人は,本件各支出により,本件各取崩しを余儀なくされたことから,被告らの前記任務懈怠と相当因果関係のある補助参加人の損害は,本件各取崩しの合計額に相当する8768万6868円である。
本件各取崩しにより補助参加人に損害が発生していることは,補助参加人は,内閣府立入検査において,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)を補填すべきである旨の指摘を受けたことから,合計8600万円の補填計画を作成し,改めて減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)の積立てを開始しているところ,本件各取崩しがなければ上記各資金を別の用途に使用することができたことから明らかである。
(被告ら及び補助参加人の主張)
争う。補助参加人は,本件各取崩しの時点で,本件各支出に係る弁護士報酬支払債務を負っていたのであり,本件各取崩しにより預金が減少するとしても,これに対応する負債も減少するのであるから,本件各取崩しにより補助参加人に損害が発生したとも,本件各取崩しと原告らの主張する上記損害との間に相当因果関係があるともいえない。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(本件訴えの適法性)について
(1) 本件提訴請求は,補助参加人に対して具体的な訴訟の提起を求めるものであるから,本件提訴請求書には,①「被告となるべき者」及び②「請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実」の記載が必要であり(法人法施行規則第85条),これらの事項が記載されていない場合には有効な提訴請求があったとはいえない。そして,被告ら及び補助参加人は,本件提訴請求書には,上記②の事実が記載されておらず,有効な提訴請求がないから,本件訴えは不適法であり,却下されるべきである旨を主張する。
(2) しかしながら,前記(1)②の記載は,事案の内容や補助参加人が認識している事実を考慮し,補助参加人が,いかなる事実及び事項について責任の追及を求められているのかを判断し得る程度に特定されていれば足りると解するのが相当である。そして,証拠(甲4の1・2)によれば,本件提訴請求書には,被告らは,補助参加人の理事又は監事として,信義誠実をもってその職務を遂行すべき職務上の義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,本件各支出を含む不要かつ過大な弁護士報酬の支払のため,適正な手続を経ずに本件各取崩しを行ったことから,被告らの責任追及を求める旨の記載があることが認められる。
そうすると,本件提訴請求は,本件各支出を原因とする本件各取崩しにつき被告らの責任追及を求める趣旨であることが明らかであるところ,補助参加人においてもこのことを容易に判断することができたということができ,本件提訴請求書には,前記(1)②の事実が記載されているものと認められ,これを覆すに足りる資料はない。
したがって,本件訴えは不適法であるとはいえず,前記(1)の被告ら及び補助参加人の主張は採用することができない。
2 認定事実
前記前提事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 当事者等
ア 補助参加人は,昭和33年4月10日,社団法人として認可された団体であり,平成24年4月1日,公益社団法人に移行するとともに,別紙「定款の定め(抄)」記載の内容を含む定款を作成した。
補助参加人は,日本古来の武道である空手道の研究及び指導によって,その技量の向上と自己鍛錬の普及を図り,もって国民の体位の向上と健全なスポーツ精神の涵養に寄与するとともに,礼節を重んじる日本武道の精神を国際的に広めることにより世界平和に貢献することを目的としている。また,補助参加人は,平成25年12月時点で,3万6659名の会員と904の支部を有しており,△△選手権大会,□□選手権大会,◇◇選手権大会及び◎◎リーグ戦等の大会を開催していた。(丙66)
イ 原告らは,補助参加人の代議員であり,補助参加人の定款上,法人法上の社員の地位にある者である(第5条)。また,補助参加人の会員の一部で構成されるa会と称するグループがあり,原告らは,a会に所属している。
ウ 被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7及び被告Y8は補助参加人の理事であり,被告Y1及び被告Y2は補助参加人の理事であった者である。平成27年10月21日までは被告Y1が,同日以降は被告Y6が補助参加人の代表理事を務めている。また,被告理事らの在任期間は別紙在任期間一覧表のとおりである。
エ 被告Y10は補助参加人の監事であり,被告Y9は補助参加人の監事であった者である。また,被告監事らの在任期間は,別紙在任期間一覧表のとおりである。
(2) 補助参加人における経費の支払手続等
ア 補助参加人において平成26年9月25日に策定及び施行された「経費支出決裁基準」によれば,10万円超の支出に係る決裁の起案,審査及び決裁は,稟議申請書をもって行うが,稟議書の代用として請求書のコピーを使用することも可能とされている。また,同基準によれば,10万円から50万円までの経費は事務局担当専務理事補佐が審査し,常勤理事が決裁を行い,50万円から100万円までの経費は常勤理事が審査し,専務理事が決裁を行い,100万円を超える経費は常勤理事及び専務理事が合議により審査し,会長が決裁を行うとされている。(丙29)
イ 補助参加人において平成27年6月11日に策定及び施行された「経費管理規定」(同年4月1日以降の経費の支出について適用される。)には,次の規定がある。(丙30)
(目的)
第1条 経費管理規定は,経費管理に関する運営基準を定めたものである。
(運営の原則)
第2条 経費は理事会の承認を受けた予算書(当該年度の事業計画書,収支予算書,資金調達及び設備投資の見込み)に則り運営する。
(予算の修正)
第4条 予算書各項目について一定以上の金額の差異が見込まれる場合並びに新規事態に対応する場合は新たに起案し,常勤理事の審査を経た上で決裁を得る。会長による決裁を受ける事態は直近開催の理事会の承認を得ることとする。
2 予算書各項目について一定以上の金額の差異とは,予算額の20%または10万円の少ない額を言う。
3 新規事態とは予算項目にない事態を言う。
(決裁権限)
第5条 決裁の権限は次の通りとする。
100万円超 会長
100万円以下 専務理事
50万円以下 常勤理事
但し10万円以下の経費及び10万円を超える場合でも経常的な一般管理費(水道光熱費,通信費,印刷費,その他の雑費)は起案を省略し決裁を事務局長に委ねることができる。
2 決裁は稟議申請書を持って行う。但し訴訟費用等事前に金額を特定しえない場合は請求書のコピーの稟議書代用も可とする。
ウ 補助参加人の平成27年度予算(同年4月1日から平成28年3月31日まで)によれば,経常収益が3億5480万円であるのに対し,経常費用が3億7730万円と見込まれていた。また,弁護士報酬に係る予算は1500万円とされていた。(甲5,丙48)
(3) 本件支出1,2,5及び6に関する事実
ア b連盟は,昭和44年頃に財団法人の認可を受けた団体である。補助参加人は,協力団体としてb連盟に加入している。(丙25,66)
イ 天皇杯・皇后杯とは,天皇・皇后から賜った記念杯を意味し,これが下賜されると,その主催する大会等は格式高いものとして評価される。天皇杯・皇后杯の下賜を受けるためには,文部科学省を通じて宮内庁に下賜申請を行う方法と,宮内庁に対して直接請願を行う方法がある。(甲45,丙25)
ウ b連盟は,平成22年頃,天皇杯・皇后杯の下賜申請を検討していたが,補助参加人がこれに対して反対の意見を表明したことから,上記下賜申請を見送った。(甲16,丙60)
エ 宮内庁は,平成25年11月頃,文部科学省を通じて,b連盟に対し,空手界の主要な団体間で協議・調整の上で天皇杯・皇后杯の下賜申請を行うように教示した。(甲16,丙60)
オ b連盟は,平成25年12月6日,理事会を開催し,同理事会において,天皇杯・皇后杯の下賜申請をする旨の決議をした。
b連盟は,同月頃,文部科学省に対し,上記下賜申請を行った。(甲16,丙25,60)
カ 被告Y1は,宮内庁に対し,補助参加人が主催する○○選手権大会につき天皇杯の下賜を希望する旨の平成25年12月22日付け「「天皇杯」ご下賜請願書」と題する書面を提出した(本件請願)。
上記書面には,補助参加人は,多数の会員,支部及び海外加盟国を有していること,内閣総理大臣杯を授与されている大会を含む全国規模の空手大会を多数開催していること,b連盟にはない研修生制度により育成した専任空手指導員が所属していること,b連盟よりも古い歴史があること,空手の指導・普及活動を推進していること等から,天皇杯の下賜を受ける資格がある旨の記載がある。
被告Y1は,本件請願に先立ち,理事会の承認を得ていなかったが,事後的には理事会の承認を得た。(甲38,丙66)
キ b連盟は,平成26年1月頃,本件請願がb連盟による前記オの下賜申請を妨害したとして,補助参加人に対し,本件請願の取下げを勧告するとともに,その勧告に従わない場合には,補助参加人をb連盟の協力団体から除名する旨の通知をした。(丙60)
ク b連盟は,補助参加人が前記キの勧告に従わないことから,補助参加人に対し,b連盟の協力団体から除名する旨の平成26年3月10日付け処分通知書を送付した。
上記処分通知書には,「処分事由」欄に「公益社団法人Z協会は,平成25年12月22日天皇杯・皇后杯下賜の請願書を宮内庁に送付し,(公財)b連盟の天皇杯・皇后杯申請,下賜に至る過程において重大なる障碍を招いた。このことは,本連盟の諸規程,統制に違反するもので,協力団体として認められない行為である。この件は,憲法上保障されている請願の権利とは何ら関係のないもので,当連盟のガバナンス構築に必要な処置である。」との記載があり,「根拠規程」欄に「公益財団法人b連盟規約第14条第4項」との記載がある。(丙69)
ケ 補助参加人は,b連盟による前記クの除名処分により,所属会員の段位の移行等に支障が生ずるとともに,国民体育大会等の大会への参加が制限されることになった。
コ 補助参加人は,A弁護士に対し,b連盟による前記(3)クの除名処分の法的対応に係る法律事務を委任した。
被告Y1は,補助参加人の代表理事として,A弁護士に対し,上記委任に係る弁護士報酬として,平成26年5月23日には86万4000円を(本件支出1),同年8月19日には216万円を(本件支出2)それぞれ支払った。
なお,前記(2)アの「経費支出決裁基準」の策定及び施行前であったことから,本件支出1及び本件支出2に当たり稟議書は作成されなかった。(丙9,10)
サ 補助参加人は,平成26年9月10日,b連盟を債務者として,東京地方裁判所に対し,b連盟の協力団体たる仮の地位の確認等を求める仮処分命令の申立てをし(同裁判所平成26年(ヨ)第3055号仮処分命令申立事件),同裁判所は,同年10月24日,補助参加人がb連盟の協力団体の地位にあることを仮に定める旨の仮処分決定をした。(丙11,25,60)
シ 補助参加人は,前記サの仮処分決定に係る起訴命令を受け,b連盟を相手方とする地位確認訴訟(東京地方裁判所平成26年(ワ)第34246号地位確認等請求事件)を提起することとなり,A弁護士に対し,同訴訟に係る法律事務を委任した。
決裁権者である被告Y2は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成26年4月30日,A弁護士に対し,預り金として30万円が支払われた(本件支出5)。また,決裁権者である被告Y1は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,同日,A弁護士に対し,着手金として183万6000円が支払われた(本件支出6)(丙12,13,25,34の1・2,丙60)
ス 補助参加人は,平成27年6月11日に臨時理事会を開催し,同理事会において,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として本件支出5及び6の支払承認をした。(丙49)
セ 補助参加人は,平成28年3月頃,b連盟との間で,補助参加人において,本件請願がb連盟の下賜申請と競合し,混乱を招いたことにつき遺憾の意を表明し,本件請願及び前記シの訴訟を取り下げる旨,b連盟において,補助参加人がb連盟の協力団体として加入することを認める旨の合意を締結した。
b連盟は,その管理するウェブサイト上に,上記合意の経緯等を説明する内容の「天皇杯・皇后杯の下賜申請について」と題する記事の掲載をした。(甲16)
(4) 本件支出3及び17に関する事実
ア 内閣府公益認定等委員会が作成した「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」と題する平成20年10月10日付け書面には,公益社団法人への移行認定又は移行認可を受ける社団法人においては,代議員を選出するための選挙が理事及び理事会から独立して行われるべきである旨の記載がある。(甲25)
イ 補助参加人において施行された「公益社団法人Z協会 代議員選挙規則」(本件選挙規則)には,別紙「本件選挙規則(抄)」記載のとおりの定めが含まれている。
ウ 補助参加人において平成17年5月21日に施行された「社団法人Z協会支部規則」第5条には,「会員は,支部に入会し,総本部に登録をもって支部会員となる。支部を退会したとき総本部並びに都道府県本部も退会となる。」との定めがある。(丙62)
エ 平成26年3月18日,本件選挙の公示がされ,立候補の締切りが同月22日正午とされた。
Bは,上記当時,補助参加人の総本部の正会員として登録されていた。
オ 補助参加人の城北支部の支部長であったDは,平成26年3月22日午前8時6分,総本部の会員管理部に対し,件名を「会員登録移籍」とし,本文に「移籍会員登録お願いします。」との記載があるメールを送信した。
同メールには,Bの支部移籍に係る会員登録申請のデータが添付されていた。(丙67)
カ 総本部の会員管理部門の担当者は,平成26年3月24日,前記オのメールを確認したが,Dが添付した会員登録申請書のデータに所定の手続によるパスワードが設定されておらず,そのデータを復号することができなかった。
そこで,同担当者は,Dに対し,そのデータの再送を依頼した。
キ Dは,平成26年3月25日,総本部の会員管理部門に対し,別のファイル名の会員登録申請書のデータを添付した上で,件名を「移籍」とし,本文に「再度添付いたしますのでよろしくお願いいたします。」との記載があるメールを送信した。(丙68の1・2)
ク 総本部の会員管理部門担当者は,平成26年3月27日,Bの支部移籍について仮登録をした上,同月28日,本登録を行った。
ケ Bは,本件選挙において,東京都選挙区の代議員として当選した。
補助参加人は,本件選挙規則8条1項に基づき,東京都選挙区の地方選挙管理委員会に対し,Bの当選について文書による異議を申し立てなかった。
コ その後,前記ケのBの当選結果を知った被告Y1は,理事会において,本件提案をし,その賛同を得た。
そこで,被告Y1は,平成26年6月21日に開催された社員総会において,Bに代議員としての権限の行使を認めなかった。
サ Bは,平成26年9月,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方としてBが補助参加人の代議員の地位にあることの確認訴訟を提起した(同裁判所平成26年(ワ)第23904号地位確認等請求事件)。(甲17)
シ 補助参加人は,A弁護士に対し,前記サの訴訟対応に係る法律事務を委任した。
決裁権者である被告Y2は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成26年11月7日,A弁護士に対し,弁護士報酬として32万4000円が支払われた(本件支出3)。(丙14,32)
ス 補助参加人は,平成27年2月20日,A弁護士に代えて,d法律事務所に対し,前記サの訴訟対応に係る法律事務を委任した(後記(6)イ)。さらに,補助参加人は,担当弁護士であるE弁護士がd法律事務所からc法律事務所に移籍したことから,d法律事務所に代えて,c法律事務所に対し,上記法律事務を委任した。
セ 補助参加人は,前記サの訴訟において,平成26年9月の訴え提起から7箇月を経過して初めて,立候補の締切日又は当選決定までにBの補助参加人の城北支部への移籍登録が完了していなかったことをBの代議員の地位を否定する根拠として主張した。(甲17)
ソ 決裁権者である被告Y6は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成28年1月5日,c法律事務所に対し,弁護士報酬として59万6345円が支払われた(本件支出17)。(丙27,46)
タ 補助参加人は,平成28年2月6日に臨時理事会を開催し,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として本件支出17の支払承認をした。
なお,F弁護士は,上記臨時理事会において,補助参加人の顧問弁護士に就任した旨を紹介され,上記臨時理事会を傍聴していた。また,被告Y7,被告Y8及び被告Y9は,上記臨時理事会を欠席した。(丙43)
チ 東京地方裁判所は,平成28年3月17日,前記サの訴訟につきBの請求を認容する旨の判決を言い渡した。(甲17)
ツ 補助参加人の中央選挙管理委員会が作成した「公益社団法人Z協会代議員選挙について」と題する平成28年2月18日付け書面には「各選挙区においては,選挙管理委員会に対する他からの関与又は介入等については,これを徹底して排除していただきたいということです。」及び「都道府県等本部長又は当該地区の理事等は,当該地方選挙管理委員会が管理執行する代議員選挙については一切関与できません。」との記載がある。(甲26)
(5) 本件支出4に関する事実
ア a会に所属する原告らを含む補助参加人の社員らは,平成26年10月15日,法人法37条1項及び補助参加人の定款第18条2項に基づき,被告Y1に対し,被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的とする社員総会の招集を請求した(本件招集請求)。
本件招集請求においては,本件支出1,2,5及び6の原因となった本件請願を補助参加人の会員の意思に反して行ったことが理事解任事由とされていた。(丙5,63)
イ 前記アの社員らは,被告理事らが本件招集請求に応じなかったことから,平成26年12月9日,東京地方裁判所に対し,前記アの社員総会の招集許可の申立てをした。
補助参加人は,A弁護士に対し,上記申立ての法的対応に係る法律事務を委任した。(丙5)
ウ 東京地方裁判所は,平成27年1月14日に第1回審尋期日を,同月21日に第2回審尋期日をそれぞれ開いた上で,前記イの申立てを許可する旨の決定をした。
エ 平成27年1月31日,前記アの議案の決議を目的とする社員総会が開催されたが,同議案はいずれも否決された。
オ 決裁権者である被告Y2は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成27年1月27日,A弁護士に対し,弁護士報酬として21万6000円が支払われた(本件支出4)。(丙15,33)
(6) 本件支出7ないし14に関する事実
ア 補助参加人は,平成27年1月27日,d法律事務所との間で,次の内容の委任契約を締結した。(丙50)
(ア) 補助参加人は,d法律事務所に対し,補助参加人が平成27年1月31日に開催予定の臨時社員総会に関連する事前,当日及び事後の各種対応等及びこれに関連する一切の件に関し,補助参加人とd法律事務所とが随時合意する法律事務の処理を委任し,d法律事務所はこれを受任する(第1条)。
(イ) 上記(ア)の委任事務を処理するd法律事務所の担当弁護士は,G(以下「G弁護士」という。),H及びE弁護士とするが,d法律事務所は,必要に応じてd法律事務所の他の弁護士を関与させることができる(第2条)。
(ウ) 補助参加人は,前記(ア)の委任事務の報酬として,d法律事務所の弁護士報酬基準に定めるところに従い,時間制報酬,日当及び実費並びに消費税をd法律事務所に対して支払う。d法律事務所は,補助参加人の要請があるときは,速やかにその弁護士報酬基準の内容を説明する。なお,平成27年の時間単位の報酬(消費税別)は,G弁護士は3万8000円,Hは3万1000円及びE弁護士は2万3000円である。(第3条)
(エ) 委任契約の期間は,平成27年1月22日から同年7月末日までとするが,同日時点で前記(ア)の委任事務の処理が完了していない場合には,補助参加人とd法律事務所は,協議の上,書面による合意をもって契約期間を延長することができる。(第7条)
イ 補助参加人は,平成27年2月20日,d法律事務所との間で,次の内容の委任契約を締結した。(丙51)
(ア) 補助参加人は,d法律事務所に対し,Bが原告となり,補助参加人が被告である前記(4)サの訴訟及びこれに関連する反訴提起,控訴,上告その他一切の件に関し,補助参加人とd法律事務所とが随時合意する法律事務の処理を委任し,d法律事務所はこれを受任する。(第1条)。
(イ) 前記(ア)の委任事務を処理するd法律事務所の担当弁護士は,I,G弁護士及びJとするが,d法律事務所は,必要に応じてd法律事務所の他の弁護士を関与させることができる。(第2条)。
(ウ) 補助参加人は,前記(ア)の委任事務の報酬として,d法律事務所の弁護士報酬基準に定めるところに従い,時間制報酬,日当及び実費並びに消費税をd法律事務所に対して支払う。d法律事務所は,補助参加人の要請があるときは,速やかにその弁護士報酬基準の内容を説明する。なお,平成27年の時間単位の報酬(消費税別)は,Iは7万円,G弁護士は3万8000円及びJは3万2000円である。(第3条)
(エ) 委任契約の期間は,平成27年1月26日から平成30年1月末日までとするが,同日時点で前記(ア)の委任事務の処理が完了していない場合には,補助参加人とd法律事務所は,協議の上,書面による合意をもって契約期間を延長することができる。(第7条)
ウ d法律事務所は,前記アの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,前記ア(ア)の臨時社員総会の法的対応に係る弁護士報酬として,平成27年4月14日付け請求書,同年5月11日付け請求書及び同月27日付け請求書を送付した。
上記各請求書の「案件の内容」欄には,「臨時社員総会の招集許可決定を受けての種々の対応及びこれに関連する作業(委任状関連作業,検査役選任申立・仮処分申立準備等の裁判所対応,検査役・相手方代理人との交渉・調整,関連する法律問題の判例・理論・実例調査,受付名簿・投票用紙・議事進行スクリプト作成等の総会準備,総会対応,これらに関連しての会議・電話会議への参加を含む),並びにその後の各種相談への対応等(訴訟対応関係を除きます)」との記載がある。(甲10の1・2・4,丙16,17,19)
エ 決裁権者である被告Y1は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,d法律事務所に対し,弁護士報酬として,平成27年4月30日に597万3483円が(本件支出7),同年5月29日に599万3075円が(本件支出8),同年7月15日に234万0320円が(本件支出10)それぞれ支払われた。(丙35,36,38)
オ 補助参加人は,平成27年6月11日に臨時理事会を開催し,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として本件支出7,8,10及び11の支払承認をした。(丙49)
カ d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,平成27年6月29日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「旧千葉県本部への名称使用許諾取消処分に関連して一部会員から申し立てられた仮地位仮処分への対応及び関連作業に関する弁護士報酬の着手金」との記載がある。(甲10の3,丙18)
キ 決裁権者である被告Y1は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成27年6月30日,d法律事務所に対し,弁護士報酬として850万6202円が支払われた(本件支出9)。(丙37)
ク d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,平成27年5月27日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「B氏の地位確認等請求事件に関する一切の対応,理事解任請求事件に関する一切の対応,並びに本年4月1日以降の各種相談への対応等(すべて本年5月25日までの期間に対応する分のご請求として)」との記載がある。(甲10の5,丙20)
ケ d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,平成27年7月22日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「B氏の地位確認等請求事件及び理事解任請求事件に関する一切の対応,並びに帳簿閲覧請求,臨時総会招集請求,b連盟関連,千葉県旧本部関連(仮処分関係を除く),規定整備関連その他各種ご相談への対応等(すべて本年5月26日から7月16日までの期間に対応する分のご請求として)」との記載がある。(甲10の6,丙21)
コ d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,同年10月23日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「B氏の地位確認等請求事件,理事解任請求事件,社員総会招集許可申立事件及び総会検査役選任申立事件に関する一切の対応,並びに帳簿閲覧請求関連,臨時社員総会招集関連,b連盟関連,千葉県旧本部関連(仮処分関係を除く),選挙制度関連,規定整備関連,公益認定等委員会対応,a会協議関連その他各種ご相談への対応等(すべて本年7月17日から9月30日までの期間に対応する分のご請求として)」との記載がある。(甲10の7,丙22)
サ d法律事務所は,前記ア及びイの委任契約の計算方法により,弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,平成27年12月29日付け請求書を送付した。
上記請求書の「案件の内容」欄には,「訴訟等に関する一切の対応,帳簿閲覧請求関連,臨時社員総会関連,b連盟関連,千葉県旧本部関連,選挙制度関連,規定整備関連,公益認定等委員会対応,a会協議関連その他各種ご相談への対応等(すべて本年10月1日から12月28日までの期間に対応する分のご請求として)」との記載がある。(甲10の8,丙23)
シ 決裁権者である被告Y1は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,d法律事務所に対し,弁護士報酬として,平成27年7月15日に970万7211円が(本件支出11),同年9月11日に1182万9464円が(本件支出12),同年11月20日に2635万3749円が(本件支出13),同年12月29日に1215万3358円が(本件支出14)それぞれ支払われた。(丙39ないし42の1・2)
ス 補助参加人は,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として,平成27年9月7日に開催された臨時理事会においては本件支出9及び12,同年10月21日に開催された臨時理事会においては本件支出13,平成28年2月6日に開催された臨時理事会においては本件支出14の各支払承認をした。
G弁護士は,平成27年9月7日及び同年10月21日に開催された上記臨時理事会に出席し,訴訟対応の進捗状況等の報告をした。(丙31,43,53,55)
セ G弁護士は,平成28年1月18日,本件支出14の内訳が記載されたメールを送信した。
同メールには,「貴協会からのご要請により,実際に生じた作業時間の全てをご請求することはしておりません。上記に記載の各「作業時間」は,実際に生じた作業時間を基礎に,ご請求金額が減額されるように時間調整を加えております点にご留意ください」との記載がある。(甲18の3,甲36,丙71)
ソ a会に所属し,平成27年11月21日に開催された臨時社員総会において補助参加人の理事として選任されたKは,平成28年1月19日頃,補助参加人の事務局に所属するL氏を通じて,G弁護士に対し,前記サの請求書の根拠となる作業時間の明確化を要求する内容のメールを送信した。(甲18の1・2)
(7) 本件支出15に関する事実
ア 補助参加人の正会員であるCは,平成27年5月16日頃,補助参加人の約800箇所の支部,都道府県本部及び地区本部に対し,「Z協会は創立65周年を迎え,過去にない危機に見舞われております。それは,現会長Y1氏を取り巻く執行部の言動,行動による不始末であります。」,「会長は理事会,総会に諮ることなく,独断で天皇杯御下賜の請願をして,b連盟の呼びかけ(略)を無視し(略)協会関係役職者は追放となりました。」及び「Z協会段位の三段まではb連盟に申請認可という約束も,すべて解約されてしまいました。」との記載がある書面を送付した。(丙25)
イ 補助参加人は,e法律事務所に対し,Cの前記アの行為が補助参加人の名誉を毀損するものであるとして,告訴人を補助参加人とし,被告訴人をCとする名誉毀損に係る本件告訴状の作成を含む法律事務を委任した。
ウ e法律事務所は,平成27年6月頃,前記イの委任契約に基づき,本件告訴状を作成した。(丙25)
エ 補助参加人は,e法律事務所との間で,次の内容を含む平成27年10月1日付け業務委託契約書を取り交わした。(丙52)
(ア) 補助参加人は,e法律事務所に対し,補助参加人の名誉が毀損されたことに係る名誉毀損被疑事件についての法的助言,刑事告訴,当局対応及びこれに関連する法津事務を行うこと並びに補助参加人及びe法律事務所が別途合意した事項に関する法律業務を委任し,e法律事務所はこれを受諾した。(第1条,第2条1項)
(イ) 前記(ア)の法律事務を処理するe法律事務所所属の弁護士はM,N及びOとするが,e法律事務所は,必要に応じて他の弁護士を関与させることができる。また,e法律事務所は,上記法律事務の処理に当たり,e法律事務所所属のパラリーガル(外国語翻訳者を含む。)にその補助をさせることができる。(第2条2項及び3項)
(ウ) 補助参加人は,e法律事務所に対し,前記(ア)の法律事務の処理の対価として,処理を行ったe法律事務所に所属する弁護士及びパラリーガルの1時間当たりの単価に,その処理に要した時間(移動に要した時間を含む。)を乗じた金額を支払う。(第3条1項)
(エ) 前記(ウ)の1時間当たりの単価は,各弁護士及びパラリーガルの能力等を考慮して適正妥当にe法律事務所が定めた額とするが,e法律事務所は,その単価を随時変更することができ,その後に前記(ア)の法律事務の処理に要した時間には,変更後の単価を適用する。
なお,現時点における前記(イ)の各弁護士の1時間当たりの単価(税別)は,Mが4万2000円,Nが4万円及びOが2万7000円である。(第3条2項)
オ e法律事務所は,前記エの業務委託契約書の計算方法により,その弁護士報酬の額を計算した上で,補助参加人に対し,88万2733円(源泉徴収税9万2038円を除く。)の支払を求める内容の平成27年10月29日付け請求書を送付した。
上記請求書には,作業内容や作業時間についての記載がなかった。(丙24)
カ 決裁権者である被告Y2は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成27年11月30日,e法律事務所に対し,弁護士報酬として97万4771円が支払われた(本件支出15)。
なお,本件支出15は,同年6月11日に開催された臨時理事会において,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として支払承認がされていた。(丙44,49)
キ その後,補助参加人が本件告訴状を提出することはなかった。
(8) 本件支出16に関する事実
ア 補助参加人は,平成27年11月頃,c法律事務所に所属するE弁護士に対し,同月21日に開催予定の臨時社員総会の法的対応に係る法律事務を委任した。
イ E弁護士は,被告Y6に対し,前記アの法律事務に係る弁護士報酬として185万3700円(源泉徴収税30万6300円を除く。)の支払を求める内容の平成27年11月20日付け請求書を送付した。(丙26)
ウ 補助参加人は,平成27年11月21日,臨時社員総会を開催した。
上記臨時社員総会においては,補助参加人の理事の選任が議案の一つであったところ,E弁護士は,総会検査役の面前で,a会に所属する理事から委任されたF弁護士との間で上記議案の議決権行使方法について事前協議を行い,その協議に基づき,最大14名の候補者に「○」をつけて選任する旨の方法を議場で説明した。
その後,上記決議方法により理事が選任された。
エ 決裁権者である被告Y6は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成27年11月30日,c法律事務所に対し,弁護士報酬として216万円が支払われた(本件支出16)。(丙45)
オ 補助参加人は,平成27年12月16日に臨時理事会を開催し,「経費管理規定」第4条に基づき,予算の修正として本件支出16の支払承認をした。(丙56)
カ a会に所属する補助参加人の会員は,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として前記ウの臨時社員総会の無効確認等を求める訴訟を提起したところ(同裁判所平成27年(ワ)第35505号社員総会決議無効確認等請求事件),同裁判所は,平成28年9月5日,上記臨時社員総会の決議方法が補助参加人の定款に違反するとして,これを取り消す旨の判決を言い渡した。(丙8)
(9) 本件支出18に関する事実
ア 補助参加人の総本部指導員として勤務し,「f会」と称する会に所属していたDは,他の総本部指導員と共に本件組合を結成し,平成26年6月20日,補助参加人に対して本件組合の結成を通知した。(甲38,47)
イ Dを含む補助参加人の正会員は,補助参加人の代議員に対し,「公益社団法人Z協会の現状について(代議員の皆様へのお願い)」と題する平成26年8月20日付け書面を送付した。
上記書面には,被告Y1が理事会の承認なく本件請願を強行した結果,b連盟は補助参加人に対して除名処分を行った等の記載がある。(甲38)
ウ 補助参加人は,前記イの書面が補助参加人に対する誹謗中傷行為であるとして,d法律事務所に対し,Dの事情聴取に係る法律事務を委任した。
d法律事務所に所属する弁護士であるP及びQは,平成27年2月16日,Dに対して事情聴取を行った。(丙64)
エ 補助参加人は,前記ウの事情聴取後,前記ウの各弁護士の意見を踏まえ,平成27年2月16日付けで,本件懲戒解雇を行った。
オ Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を債務者として,本件懲戒解雇の無効を理由に賃金仮払い等を求める仮処分命令を申し立てた(同裁判所平成27年(ヨ)第21029号地位保全等仮処分命令申立事件)。
同裁判所は,同年11月30日,Dの申立てを一部認容し,補助参加人に対し,賃金の仮払いを命じた。(甲20)
カ Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として,本件懲戒解雇の無効確認等を求める訴訟を提起した(同裁判所平成27年(ワ)第22149号解雇無効確認等請求事件)。
補助参加人は,h法律事務所に対し,上記訴訟対応に係る法律事務を委任した。(甲30)
キ 本件組合は,平成27年2月18日,補助参加人に対し,本件懲戒解雇を議題とする団体交渉を申し入れたが,補助参加人はこれに応じなかった(本件団交拒否)。
そこで,本件組合は,東京都労働委員会に対し,補助参加人による本件団交拒否には正当な理由がない旨を主張して,救済命令の申立てを行った。
補助参加人は,h法律事務所に対し,上記申立ての法的対応に係る法律事務を委任した。
ク h法律事務所は,補助参加人に対し,弁護士報酬として48万8950円(源泉徴収税5万1050円を除く。)の支払を求める内容の平成28年2月12日付け請求書を送付した。(丙28)
ケ 決裁権者である被告Y6は,稟議書を請求書のコピーで代用して決裁を行い,平成28年2月12日,h法律事務所に対し,弁護士報酬として54万円が支払われた(本件支出18)。(丙47)
コ 東京都労働委員会は,平成29年2月21日,前記キの申立てにつき,本件組合の主張する不当労働行為の成立を認め,その申立ての一部を認容する命令を発した。
上記命令に係る命令書には,「当委員会は,Dの懲戒解雇から既に2年ほどが経過し,分離した不当労働行為事件(解雇部分)及び訴訟もいまだ係属中という状況をみるに,紛争のこれ以上の長期化を避けるためにも,団体交渉において,労使双方が,紛争の全面解決に向け,真摯に協議し速やかに合意形成を図ることを強く望むものである」との記載がある。(甲19)
サ 東京地方裁判所は,平成29年9月25日,前記カの訴訟につき,本件懲戒解雇の無効確認を含む一部認容判決を言い渡した。(甲30)
(10) 本件各取崩しの手続に関する事実
ア 平成24年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産の部の「特定資産」欄に,退職給付引当預金(資産)として9828万7439円が,減価償却引当預金として4791万5162円がそれぞれ計上されていた。(甲11)
イ 平成27年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産として5億9804万3868円が,資産の部の「現金預金」欄に7175万6264円が,「基本財産」欄に減価償却引当預金として4794万1394円が,「特定資産」欄に退職給付引当預金(資産)として1億0509万2594円が,負債として1億5556万1931円が,「正味財産合計」欄に4億4248万1937円がそれぞれ計上されていた。(甲41の1,丙4,72,73)
ウ 補助参加人は,次の各日に,退職給付引当預金(資産)を管理する三井住友銀行飯田橋支店の預金口座(口座番号〈省略〉)から一般預金を管理する同支店の預金口座(口座番号〈省略〉)に次の金額の預金を移動させた(いずれも平成27年)。(丙73,74)
①6月18日 1500万円
②9月11日 2700万円
③9月25日 900万円
④11月20日 1800万円
⑤11月30日 500万円
⑥12月17日 1200万円
合計 8600万円
エ 補助参加人は,平成27年12月17日,減価償却引当預金を管理する三菱UFJ銀行神楽坂支店の預金口座(口座番号〈省略〉)から,退職給付引当預金(資産)を管理する前記ウの預金口座に4500万円を振込送金し,その振込手数料864円を支払った。(丙72,73)
オ 補助参加人は,平成27年4月30日から平成28年2月12日にかけて,一般預金を管理する前記ウの預金口座から,本件支出5ないし17に係る弁護士報酬を支出した。(甲14,丙74)
カ 平成28年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産として4億9993万9121円が,資産の部の「現金預金」欄に6567万9972円が,「基本財産」欄に減価償却引当預金として294万7900円(前年度と比較して4499万3494円の減少)が,「特定資産」欄に退職給付引当預金(資産)として6239万9220円(前年度と比較して4269万3374円の減少)が,負債として1億5142万4543円が,「正味財産合計」欄に3億4851万4578円がそれぞれ計上されていた。(甲8,41の2,丙72,73)
キ 平成28年10月1日に開催された臨時理事会及び同年12月18日に開催された臨時社員総会において,前記カの貸借対照表が承認された。(丙58,59)
ク 内閣府公益認定等委員会は,平成29年2月15日,補助参加人の立入検査を実施し,補助参加人に対し,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)につき補填計画の作成を指示したが,他に補助参加人の財産に関する指摘をしなかった。
補助参加人は,上記指示を受け,同年3月7日,内閣府公益認定等委員会に対し,退職給付引当預金(資産)につき平成29年に2000万円,平成30年に2100万円の補填を行う旨,減価償却引当預金につき平成31年から平成33年にかけて毎年1500万円の補填を行う旨の補填計画を作成し,その旨の報告をした。(丙70)
ケ 補助参加人は,前記クの補填計画の一部を実行し,令和元年8月19日時点で,前記エの減価償却引当預金を管理する預金口座に1794万4277円を,前記ウの退職給付引当預金(資産)を管理する預金口座に6506万7736円をそれぞれ保有している。(丙72,73)
(11) 事実認定の補足説明
ア 被告ら及び補助参加人は,前記認定事実(3)カに関し,補助参加人が本件請願に先立つ平成25年12月22日に臨時理事会を開催して本件請願につき承認する旨の決議を行った旨を主張し,同日付けの臨時理事会議事録(丙65)を提出する。
イ しかしながら,証拠(甲34,37,38)及び弁論の全趣旨によれば,①補助参加人における平成25年度(平成25年4月1日から平成26年3月31日)の事業報告書には,平成25年6月22日及び同年10月6日に臨時理事会が開催された旨の記載があるが,前記アの臨時理事会が開催された旨の記載がないこと,②被告Y2が作成した「代議員有志による書面についてのご説明並びに今後の進め方についてご協力のお願い」と題する平成26年9月18日付け書面には,本件請願は緊急を要するものであったため,被告Y1の判断により行われており,臨時理事会により事後承認をした旨の記載があることが認められる。
以上に照らすと,前記アの証拠によっても,前記アの臨時理事会が開催されたことを認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
3 争点(2)(被告理事らの任務懈怠の有無)について
(1) 争点(2)ア(本件支出1,2,5及び6に係る任務懈怠の有無)
ア 一般社団法人の理事は,法人に対して職務執行を委任された受任者の地位にあるため(法人法64条),委任の本旨に従い,善管注意義務を負うところ(民法644条),補助参加人の理事は,善管注意義務の内容として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っているというべきである。
また,補助参加人の理事の判断が著しく不合理であった場合には,上記義務を怠ったということができ,同判断に基づく当該理事の行為は,補助参加人に対する任務懈怠を構成すると解される。
さらに,補助参加人の理事は,善管注意義務の内容として,他の理事の職務の執行を監視又は監督すべき義務(法人法90条2項2号)を負っており,これを怠った場合には,当該理事の不作為は,補助参加人に対する任務懈怠を構成すると解される。
イ(ア) 前記認定事実(3)によれば,①被告Y1が平成25年12月に理事会の承認なく本件請願を行ったこと,②補助参加人が平成28年3月頃にb連盟との間で,本件請願がb連盟による天皇杯・皇后杯の下賜申請と競合して混乱を招いたことにつき遺憾の意を表明するとともに,本件請願を取り下げる旨の合意を締結したことが認められる。
原告らは,これらの事実に加え,③天皇杯及び皇后杯は,日本国内において,1競技につき,その競技を統括している団体に対して1つのみ下賜されるものであるところ,補助参加人には天皇杯及び皇后杯の下賜申請ないし請願資格がない旨を指摘した上で,被告Y1においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,本件請願を強行し,b連盟から除名処分を受ける事態を招いた結果,補助参加人に本件支出1,2,5及び6を余儀なくさせたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y1を除く被告理事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y7及び被告Y8を除く。)においては,補助参加人の理事として,被告Y1による本件請願を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と被告Y1による本件請願を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
(イ) しかしながら,被告Y1が本件請願をすることについて事後的に補助参加人の理事会の承認を得ていることは,前記認定事実(3)カのとおりである。
そして,前記認定事実(3)及び弁論の全趣旨によれば,b連盟において,その協力団体による天皇杯の下賜申請ないし請願を禁止する規約があることはうかがわれない。補助参加人がb連盟との間で,本件請願がb連盟の天皇杯・皇后杯の下賜申請と競合して混乱を招いたことにつき遺憾の意を表明し,本件請願を取り下げる旨の合意を締結した(前記イ(ア)②)が,上記合意において,「遺憾の意」という中立的な表現が用いられていることやb連盟が補助参加人についてb連盟の協力団体として加入することを認める旨がその内容として含まれていることに照らすと,補助参加人及びb連盟が,両団体間の関係性やその他の利害得失を総合的に考慮して上記合意に至ったものと解する余地があり,上記合意の締結をもって,直ちに補助参加人が本件請願をすることが,b連盟において補助参加人を協力団体から除名することができる程度に違法ないしb連盟の規約に違反したものと認めることはできない。
また,前記認定事実(1)及び(3)によれば,補助参加人が社団法人として認可されたのは昭和33年4月10日であるのに対し,b連盟が財団法人として認可されたのは昭和44年頃であること,補助参加人は,本件請願時点で3万6659名の会員と904の支部を有し,△△選手権大会,□□選手権大会,◇◇選手権大会及び◎◎リーグ戦等の多数の大会を開催していたことが認められることからすると,補助参加人がb連盟の協力団体であるとしても,補助参加人の歴史,規模や空手界における影響力に鑑み,補助参加人が主催する○○選手権大会につき天皇杯の下賜を受けるために本件請願を行った被告Y1の判断が不合理であったとはいえない。そして,天皇杯及び皇后杯が,日本国内において競技を統括している団体に対して,1競技に対して1つのみ下賜されるものであること(前記イ(ア)③)を認めるに足りる的確な証拠がない上,このことを認める余地があると仮定したとしても,上記事実関係を踏まえると,このことから直ちに補助参加人に本件請願の資格がなかったとまでは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
以上に加え,被告Y1が法律専門家ではないことをも総合すると,前記イ(ア)の事実によっても,本件請願を行った被告Y1に善管注意義務違反があったものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y1を除く被告理事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y7及び被告Y8を除く。)の被告Y1に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(2) 争点(2)イ(本件支出3及び17に係る任務懈怠の有無)
ア 本件支出3について
(ア) 前記認定事実(1)及び(4)によれば,①補助参加人は,本件選挙規則8条1項に基づき,東京都選挙区の地方選挙管理委員会に対し,本件選挙におけるBの代議員の当選につき異議を申し立てていないこと,②内閣府公益認定等委員会が作成した「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」と題する平成20年10月10日付け書面には,公益社団法人への移行認定又は移行認可を受ける社団法人においては,代議員を選出するための選挙が理事及び理事会から独立して行われるべきである旨の記載があること,③補助参加人の定款上,理事又は理事会が代議員を選出することができないとされていること(第12条3項後段),④補助参加人の中央選挙管理委員会が作成した「公益社団法人Z協会代議員選挙について」と題する平成28年2月18日付け書面には,「各選挙区においては,選挙管理委員会に対する他からの関与又は介入等については,これを徹底して排除していただきたいということです。」及び「都道府県等本部長又は当該地区の理事等は,当該地方選挙管理委員会が管理執行する代議員選挙については一切関与できません。」との記載があること,⑤Bが東京地方裁判所に対して補助参加人を相手方としてBが補助参加人の代議員の地位にあることの確認訴訟を提起したところ,補助参加人は,上記訴訟において,訴え提起から7箇月を経過して初めて,立候補の締切日又は当選決定までにBの城北支部への移籍登録が完了していなかったことをBの代議員の地位を否定する根拠として主張したことが認められる。
原告らは,これらの事実から,Bが本件選挙において適正に東京都選挙区の代議員として選出されたことが明らかであると指摘した上で,被告Y1においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,何らの根拠なく本件提案をし,これが契機となって上記⑤の訴訟が提起され,補助参加人に本件支出3を余儀なくさせたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y1を除く他の被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y1の職務の執行を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,Bの代議員資格を否定する根拠やその妥当性について何ら検討することなく,漫然と被告Y1の本件提案に賛成したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
(イ) しかしながら,前記認定事実(1)及び(4)によれば,①補助参加人の定款及びこれを受けて施行された本件選挙規則においては,補助参加人における代議員選挙の選挙区分は,主たる事務所及び都道府県の区域とされ(定款第11条,本件選挙規則第2条),補助参加人の正会員が選挙権及び被選挙権を有すること(本件選挙規則第5条1項),②補助参加人において平成17年5月21日に施行された「社団法人Z協会支部規則」第5条には,「会員は,支部に入会し,総本部に登録をもって支部会員となる。」との定めがあること,③平成26年3月18日に本件選挙の公示がされ,立候補の締切りが同月22日正午とされたところ,Bは,上記当時,補助参加人の総本部の正会員として登録されていたこと,④Bは,本件選挙において東京都選挙区に立候補するために,補助参加人の城北支部の支部長であったDを通じて,総本部から城北支部への移籍登録の申請をしたが,Dが総本部に送信したメールに添付されたファイルに不備があり,本登録が完了したのは同月28日であったことが認められる。一方,補助参加人の定款及び本件選挙規則によっても,補助参加人における代議員選挙の立候補者が当該選挙区の正会員として被選挙権を有するか否かが,当該選挙区に所属する支部において当該立候補者が当該支部の正会員と認められるか否かによって判断されるべきであることが一義的に明らかとは認められない。
以上によれば,本件選挙における立候補の締切日又は当選決定時までにBの城北支部への移籍登録が完了していなかったことから,補助参加人の内部規則に照らし,Bの代議員資格に疑義があるとして,代議員資格のない者に議決権行使を認めて社員総会決議の取消事由が発生する事態を避けるために,本件提案をした被告Y1の判断が著しく不合理であったということはできない。
前記認定事実(4)イによれば,本件選挙規則8条1項は,選挙が不正に行われたことを理由として当選者の資格を争う場合に適用されることが予定されている規定であることが認められ,当選者が被選挙権を有していなかったという選挙資格に係る事由にも適用されるものと解するのが相当であるとしても,このことが法律専門家ではない被告Y1にとって明らかであったとはいえない(前記(ア)①)。また,上記事実関係に照らすと,前記(ア)②ないし④の事実によっても,被告Y1が本件選挙に容喙したものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。さらに,上記事実関係に照らすと,補助参加人が,前記(ア)⑤の訴訟において,訴え提起から7箇月を経過して初めて,立候補の締切日又は当選決定までにBの城北支部への移籍登録が完了していなかったことをBの代議員の地位を否定する根拠として主張したことをもって,直ちにBが本件選挙において適正に東京都選挙区の代議員として選出されたことが被告Y1にとって明らかであったとは認められない。
以上に加え,被告Y1が法律専門家ではないことをも総合すると,前記(ア)の事実によっても,理事会において本件提案をした被告Y1に善管注意義務違反があったものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y1を除く被告理事らの被告Y1に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
イ 本件支出17について
(ア) 原告らは,前記ア(ア)の事実から,本件選挙において,Bが東京都選挙区の代議員として適法に当選したことが明らかであると指摘した上で,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5においては,補助参加人の(代表)理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,Bが代議員の地位にあることを早期に認めて前記ア(ア)⑤の訴訟を収束させることなく,漫然と理事会において本件支出17の支払承認をしたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,上記理事会を欠席した被告Y7及び被告Y8においては,補助参加人の理事として,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5の職務の執行を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件支出17の支払承認を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
(イ) しかしながら,本件提案をした被告Y1の判断が不合理であったということはできないことは,前記ア(イ)のとおりである。そして,前記ア(ア)⑤の訴訟を担当していたA弁護士,d法律事務所所属の弁護士及びc法律事務所所属の弁護士が被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5に対し,Bが補助参加人の代議員の地位にあることを早期に認めて同訴訟を収束させるべきである旨の法的助言をしたことはうかがわれない。また,補助参加人の顧問弁護士に就任したF弁護士が,本件支出17の支払承認がされた臨時理事会を傍聴していたことは,前記認定事実(4)タのとおりであるところ,F弁護士が上記支払承認に対して異議を述べたこともうかがわれない。
以上に加え,被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5がいずれも法律専門家ではないことをも総合すると,前記ア(ア)の事実によっても,前記ア(ア)⑤の訴訟においてBが代議員の地位にある旨の主張を争い,本件支出17の支払承認をした被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5に善管注意義務違反があったものと認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y7及び被告Y8の被告Y6,被告Y3,被告Y4及び被告Y5に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(3) 争点(2)ウ(本件支出4に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(5)によれば,①a会に所属する原告らを含む補助参加人の社員らは,平成26年10月15日,被告Y1に対し,被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的として,本件招集請求を行ったこと,②上記社員らは,臨時社員総会の招集通知が発せられなかったことから,同年12月9日,東京地方裁判所に対し,臨時社員総会の招集許可の申立てをし,同裁判所は,平成27年1月14日に第1回審尋期日を,同月21日に第2回審尋期日をそれぞれ開いた上で,上記申立てを許可したこと,③補助参加人の定款上,上記議案は,補助参加人の社員総会の判断事項であること(第16条(2))が認められる。
原告らは,これらの事実から,被告理事らは,補助参加人の理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,自らの立場を守るという不当な動機に基づき,正当な理由なく本件招集請求を拒絶し,これが契機となって補助参加人に本件支出4を余儀なくさせたことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,補助参加人の定款第18条2項に基づき代議員から社員総会の招集請求を受けた会長に対してその招集を義務付ける規定が補助参加人の定款にはなく,そのような規定が法人法にもないことに照らすと,上記会長が社員総会を開催するか否かについて何らの裁量も有していないことが一義的に定められているとは認められない。
前記認定事実(1)及び(5)並びに弁論の全趣旨によれば,本件招集請求が被告Y1及び被告Y2の理事解任に係る議案の決議を目的としていたこと,補助参加人の定款上,理事の解任は総代議員の議決権の過半数を有する代議員が出席し,出席した当該代議員の議決権の過半数をもって行うとされていること(第21条,第29条),本件招集請求当時,a会に所属する者が補助参加人の代議員の多数を占めていなかったこと,本件招集請求をした者により,東京地方裁判所の前記ア②の許可に基づいて平成27年1月31日に開催された補助参加人の社員総会において上記議案が否決されていることが認められることに照らすと,客観的に見れば上記議案の決議のために臨時社員総会を開催する実益がなかったものと認められ,上記議案における解任の対象が被告Y1及び被告Y2であるからといって,直ちに被告理事らに自らの立場を守るという不当な動機があったとまでは認められない。
以上に加え,臨時社員総会の開催をすることにより,補助参加人において一定の負担ないし費用を要すること及び被告理事らが法律専門家ではないことをも総合すると,東京地方裁判所が早期の段階で臨時社員総会の開催を認めたことを踏まえても(前記ア②),本件招集請求に応じなかった被告理事らの判断が著しく不合理であったということはできない。
ウ したがって,前記アの事実によっても,本件招集請求に応じなかった被告理事らに善管注意義務違反があったものと認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(4) 争点(2)エ(本件支出7ないし14に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(6)によれば,①d法律事務所に対する最初の弁護士報酬の支払である本件支出7(597万3483円)は,補助参加人の平成27年度の弁護士報酬を含む支払手数料の予算額(1500万円)の約4割を占めていたこと,②d法律事務所の本件支出7ないし14に係る請求書には,弁護士が行った具体的な作業内容,作業日時及び作業時間等が記載されていなかったこと,③d法律事務所は,本件支出7ないし14に係る法律事務を処理するに当たり,補助参加人に対し,上記法律事務に係る成果としての書類等の交付をしなかったことが認められる。
原告らは,これらの事実から,被告Y1及び被告Y6においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,d法律事務所の弁護士報酬の請求が妥当であるかを精査した上で,その支払を留保するなどの対応をすることなく,漫然と本件支出7ないし14を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y1及び被告Y6を除く被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y1及び被告Y6による本件支出7ないし14の決裁を監視すべき義務を怠り,被告Y1及び被告Y6に対して請求内容の確認を促すことも,d法律事務所に対して作業内容や作業時間の根拠を明らかにするように要請することもなく,漫然とこれを放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,前記認定事実(6)並びに前記(2)及び(3)の認定判断を踏まえると,補助参加人がd法律事務所に対して委任した法律事務は,いずれも法律専門家の法的技能が必要であったものと認められ,補助参加人が弁護士に対して上記法律事務を委任すべきである旨の判断が不合理であったということはできない。また,前記認定事実(6)及び弁論の全趣旨によれば,本件支出7ないし14に係る法律事務は,いずれも専ら補助参加人とa会ないしその所属する者との間の紛争を原因とするものであることが認められるところ,一貫した方針で上記紛争に対応する必要性があることを否定することができないこと,受任弁護士が交代しなければ,それまでの上記紛争の経緯説明を改めて行う必要がないことに加え,仮に受任弁護士が交代するとなれば,それに伴う事務の引継ぎ等の問題により,補助参加人の対応に支障が生ずるおそれがあることをも総合すると,補助参加人が最初に委任したd法律事務所に所属する弁護士を交代させることはしない旨の判断が不合理であったということはできず,この判断を前提にすると,被告Y1及び被告Y6において,その弁護士報酬の支払を留保するなどの対応をする義務を負うとは認められない。
前記認定事実(2)及び(6)によれば,補助参加人は,平成27年6月11日に策定及び施行した「経費管理規定」第4条に基づき,弁護士報酬の支出につき予算の修正が必要になる場合には,理事会において支払承認をしていたことが認められ,補助参加人が,状況の変化に伴って年度の途中に予算の修正がされることを予定していたことは明らかである。一方,前記認定事実(10)イによれば,同年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産として5億9804万3868円が,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)として合計1億5303万3988円が,負債として1億5556万1931円が,正味財産期末残高として4億4248万1937円がそれぞれ計上されていたことが認められ,同時点において,補助参加人が資本欠損又は債務超過の状態になっていたものとは認められない。これらに照らすと,補助参加人において本件支出7を行うことに支障があったものとは認められず,d法律事務所に対する最初の弁護士報酬の支払である本件支出7(597万3483円)が補助参加人の平成27年度の弁護士報酬を含む支払手数料の予算額(1500万円)の約4割を占めていたとしても(前記ア①),このことから直ちに補助参加人がd法律事務所に所属する弁護士を交代させることはしない旨の判断が不合理であったということはできない。
そして,前記認定事実(6)によれば,d法律事務所に所属するG弁護士は,補助参加人の臨時理事会に出席し,委任された訴訟対応について進捗状況の報告をしたこと,補助参加人は,G弁護士に対し,本件支出14に係る法律事務につき弁護士報酬の減額を要求して,その結果,タイムチャージによる弁護士報酬の算定の基礎となる作業時間の調整が行われたことが認められることからすると,請求書に具体的な作業内容,作業日時及び作業時間等が記載されておらず(前記ア②),d法律事務所が補助参加人に対してその法律事務に係る成果としての書類等の交付をしなかったとしても(前記ア③),これらのことから直ちにd法律事務所に所属する弁護士を交代させることはしない旨の判断が不合理であったということはできない。
以上に加え,被告Y1及び被告Y6が法律専門家でないことをも総合すると,前記アの事実によっても,本件支出7ないし14を承認した被告Y1及び被告Y6に善管注意義務違反があったものと認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y1及び被告Y6を除く被告理事らの被告Y1及び被告Y6に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(5) 争点(2)オ(本件支出15に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(7)によれば,①補助参加人は,e法律事務所との間で,本件告訴状の作成等に係る法律事務を委任し,その対価としてタイムチャージによる弁護士報酬を支払うことを内容とする委任契約を締結したこと,②e法律事務所が補助参加人に対して送付した弁護士報酬に係る請求書には,具体的な作業時間や作業内容についての記載がなかったことが認められる。
原告らは,これらの事実に加え,③e法律事務所の請求金額(97万4771円)は,同種の事件処理に係る一般的な弁護士報酬の相場(30万円ないし50万円)と比較して高額である旨を指摘して,被告Y2においては,補助参加人の理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,本件告訴状を作成する必要性やe法律事務所の請求内容の妥当性を検討することなく,漫然と本件支出15を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y2を除く被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y2による本件支出15の決裁を監視すべき義務を怠り,被告Y2に対してe法律事務所に対する委任の再検討を促すことも,自らe法律事務所に対して作業時間の確認を行うこともなく,漫然と本件支出15を放置したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,前記認定事実(1)及び(3)によれば,補助参加人の定款上,本件請願を行うに際して社員総会の決議が必要であるとは認められないこと(定款第16条,33条参照),補助参加人は,平成26年9月10日,b連盟を債務者として,東京地方裁判所に対し,b連盟の協力団体たる仮の地位の確認等を求める仮処分命令の申立てをし,同裁判所は,同年10月24日,補助参加人がb連盟の協力団体の地位にあることを仮に定める仮処分決定をしたことが認められる。そうであるにもかかわらず,前記認定事実(7)によれば,補助参加人の会員であるCは,平成27年5月16日頃,補助参加人の約800箇所の支部,都道府県本部及び地区本部に対し,「会長は理事会,総会に諮ることなく,独断で天皇杯御下賜の請願をして,b連盟の呼びかけ(略)を無視し(略)協会関係役職者は追放となりました。」及び「Z協会段位の三段まではb連盟に申請認可という約束も,すべて解約されてしまいました。」との記載がある書面を送付したことが認められる。以上に加え,このような信用棄損行為に対する法的対応には,法律専門家の法的技能が必要であることを総合すると,補助参加人が,上記記載には根拠がないとして,本件告訴状の作成等を弁護士に委任すべきである旨の判断をしたことが不合理であったということはできない。
そして,前記認定事実(7)によれば,前記ア①の委任契約においては,各弁護士の1時間当たりの報酬単価が明記されていたことが認められることからすると,請求書に具体的な作業内容や作業時間の記載がなかったとしても(前記ア①及び②),その請求に係る弁護士報酬が上記委任契約で定められた計算方法により計算されたものである以上,補助参加人において,当該弁護士報酬の支払を免れることができない。
さらに,告訴状の作成に係る一般的な弁護士報酬の相場が形成されていることを認めるに足りる証拠がない上,そのような相場が形成されていると認める余地があると仮定しても,その請求に係る弁護士報酬が同種の事件処理に係る一般的な弁護士報酬の相場と比較して著しく高額であることを認めるに足りる的確な証拠はない(前記ア③)。そして,その請求に係る弁護士報酬が,上記委任契約で定められた計算方法により計算されたものである以上,同種の事件処理に係る一般的な弁護士報酬の相場と比較して著しく高額であると認める余地があると仮定しても,そのことだけを理由として,補助参加人において,当該弁護士報酬の支払を免れることができない。
これらによれば,本件支出15を行った被告Y2の判断が不合理であったということはできない。なお,補助参加人が実際に本件告訴状を提出するか否かは,刻々と変化する状況に応じて柔軟に判断されるべきものであるから,その後に補助参加人が本件告訴状を提出することがなかったとしても,上記認定判断を左右するに足りない。
以上に加え,被告Y2が法律専門家でないことをも総合すると,前記アの事実及び主張事実によっても,本件支出15を行った被告Y2に善管注意義務違反があったものと認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y2を除く被告理事らの被告Y2に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(6) 争点(2)カ(本件支出16に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(8)によれば,①補助参加人は,平成27年11月頃,c法律事務所に所属するE弁護士に対し,同月21日に開催予定の補助参加人の臨時社員総会に係る法律事務を委任したところ,E弁護士は,上記臨時社員総会において,新たな理事を選任する議案につき,最大14名の候補者に「○」をつけて選任する決議方法を議場で説明したこと,②補助参加人の定款上,理事の選任に係る議案を決議するには,候補者ごとに,総代議員の議決権の過半数を有する代議員が出席し,出席した当該代議員の議決権の過半数をもって行わなければならないとされていたこと(第21条1項及び3項),③a会に所属する補助参加人の会員は,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として上記臨時社員総会の無効確認等を求める訴訟を提起したところ,同裁判所は,平成28年9月5日,上記臨時社員総会の決議方法が補助参加人の定款に違反するとして,これを取り消す旨の判決を言い渡したことが認められる。
原告らは,これらの事実から,E弁護士が行った業務の内容には重大な瑕疵があったところ,被告Y6においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,c法律事務所による弁護士報酬の請求につき減額等の交渉を行うことなく,漫然と本件支出16を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y6を除く他の被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y6による本件支出16の決裁を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,減額を検討することもなく,漫然と本件支出16を承認したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,前記(1)ないし(5)の検討に照らすと,補助参加人は,平成27年11月当時においてa会との間の紛争を含む種々の法的紛争を経ており,同月21日に開催予定の臨時社員総会の法的対応において,法律専門家の法的技能が必要であったことが認められる。そうすると,補助参加人が平成27年11月頃にE弁護士に対して同月21日に開催予定の臨時社員総会の法的対応に係る法律事務を委任すべきである旨の判断に不合理があったということはできない。そして,前記認定事実(8)によれば,前記ア①の臨時社員総会には総会検査役が選任されており,a会に所属する理事から委任されたF弁護士も出席していたこと,E弁護士は,総会検査役の面前で,F弁護士との間で前記ア①の決議方法の事前協議を行ったことが認められる。これらに照らすと,被告Y6が,同月30日の本件支出16に先立ち,上記決議方法が補助参加人の定款に違反することを認識していたことはうかがわれない。
以上に加え,被告Y6が法律専門家でないことをも総合すると,本件支出16が行われた後に提起された訴訟において,上記決議方法が補助参加人の定款に違反するとして上記臨時社員総会が取り消されたとしても(前記ア①ないし③),法律専門家の判断を信頼し,上記臨時社員総会に瑕疵がないことを前提として,c法律事務所の請求のとおりに本件支出16を行った被告Y6の判断が不合理であったということはできない。
のみならず,c法律事務所に対する弁護士報酬支払債務が発生している以上,E弁護士が行った業務の内容に重大な瑕疵があったために,上記臨時社員総会の決議に瑕疵が生じていたとしても,必ずしもそのことだけを理由として,補助参加人が上記債務の弁済を拒絶し得るものではないから,本件支出16を行った被告Y6の判断が不合理であったということができず,被告Y6において,c法律事務所による弁護士報酬の請求につき減額等の交渉を行う義務を負うとは認められない。
ウ したがって,前記アの事実によっても,本件支出16を行った被告Y6に善管注意義務違反があったものと認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,この点についての被告Y6を除く被告理事らの被告Y6に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
(7) 争点(2)キ(本件支出18に係る任務懈怠の有無)
ア 前記認定事実(9)によれば,①Dは,平成27年頃,東京地方裁判所に対し,補助参加人を債務者として,本件懲戒解雇の無効を理由に賃金仮払い等を求める仮処分命令を申し立てたところ,同裁判所は,同年11月30日,申立てを一部認容し,補助参加人に対し,賃金の仮払いを命じたこと,②Dは,東京地方裁判所に対し,補助参加人を相手方として,本件懲戒解雇の無効確認等を求める訴訟を提起したこと,③本件組合は,同年頃,東京都労働委員会に対し,本件団交拒否には正当な理由がない旨を主張して,救済命令の申立てを行ったこと,④東京都労働委員会は,平成29年2月21日,本件団交拒否につき不当労働行為の成立を認め,上記③の申立ての一部を認容する救済命令を発したところ,上記救済命令に係る命令書には,「当委員会は,Dの懲戒解雇から既に2年ほどが経過し,分離した不当労働行為事件(解雇部分)及び訴訟もいまだ係属中という状況をみるに,紛争のこれ以上の長期化を避けるためにも,団体交渉において,労使双方が,紛争の全面解決に向け,真摯に協議し速やかに合意形成を図ることを強く望むものである」との記載があることが認められる。
原告らは,これらの事実から,本件懲戒解雇及び本件団交拒否が不当であることは明白であったところ,被告Y6においては,補助参加人の代表理事として,補助参加人を適切に運営すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,速やかに本件懲戒解雇を撤回してD及び本件組合との紛争を収束させることなく,漫然と本件支出18を行ったことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成し,被告Y6を除く被告理事らにおいては,補助参加人の理事として,被告Y6による本件支出18の決裁を監視すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然と本件支出18を承認したことは,補助参加人に対する任務懈怠を構成する旨を主張する。
イ しかしながら,前記認定事実(9)によれば,①補助参加人は,d法律事務所に所属する弁護士に対してDの事情聴取を委任し,その事情聴取後に,上記弁護士の意見を参考にして本件懲戒解雇を行ったこと,②補助参加人は,前記ア②の訴訟及び同③の申立ての法的対応をh法律事務所に委任し,被告Y6は,平成28年2月12日,その弁護士報酬の支払として,本件支出18を行ったこと,③東京地方裁判所は,平成29年9月25日,前記ア②の訴訟につきDの請求を一部認容してその余を棄却する旨の判決を言い渡したことが認められ,前記ア②の訴訟及び同③の申立てにおけるDの主張が全て正当なものであることが一見して明白であったとは認められない。そして,上記の経過に照らすと,上記①の弁護士の意見は,本件懲戒解雇を行うことが可能であるというものであったと推認することができ,その推認を覆すに足りる証拠はない。
以上に加え,被告Y6が法律専門家でないことをも総合すると,東京地方裁判所が本件懲戒解雇の無効を理由とする賃金仮払い等の仮処分命令を求めるDの申立てを一部認容したとしても(前記ア①),法律専門家の意見に基づき,本件懲戒解雇に理由があるとして,前記ア②の訴訟及び同③の申立ての法的対応をh法律事務所に委任し,その弁護士報酬の支払として本件支出18を行った被告Y6の判断が著しく不合理であったということはできない。
東京都労働委員会が本件団交拒否につき不当労働行為の成立を認め,本件組合の申立てを一部認容する救済命令を発したとしても(前記ア④),本件支出18が行われた後の事情にすぎず,上記認定判断を左右するに足りない。
ウ したがって,前記アの事実によっても,本件支出18を行った被告Y6に善管注意義務違反があったものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そして,被告Y6を除く被告理事らの被告Y6に対する監視義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
4 争点(3)(被告監事らの任務懈怠の有無)
被告理事らに本件各支出につき善管注意義務違反が認められないことは前記3(1)ないし(7)のとおりであり,これが認められることを前提として被告監事ら(なお,本件支出1に関しては被告Y9を除く。)の監視監督義務違反をいう原告らの主張は,前提を欠き,採用することができない。
5 争点(4)(補助参加人の損害の有無及び額)
事案に鑑み,争点(2)ク及びこれに係る争点(3)の判断を保留して,先に争点(4)を検討する。
(1) 原告らは,本件各取崩しがなければその後の補填計画により減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)に補填されるべき8600万円を別の用途に使用することができたことを指摘した上で,本件各取崩しに伴い振り替えた預金が本件各支出の原資となっており,補助参加人が本件各支出により本件各取崩しを余儀なくされたことから,原告らの主張する被告らの任務懈怠と相当因果関係のある補助参加人の損害は,本件各取崩しの合計額に相当する8768万6868円である旨を主張する。前記認定事実(10)によれば,補助参加人が平成27年12月17日に減価償却引当預金を管理する預金口座から退職給付引当預金(資産)を管理する預金口座に4500万円を移動したこと,同年6月18日から同年12月17日までの間に上記退職給付引当預金(資産)を管理する預金口座から本件支出5ないし17が行われた預金口座に合計8600万円を移動したことが認められる。
(2) しかしながら,本件各取崩しは,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)から他の預金口座に金員を移動するものにすぎず,振込手数料の負担を除き,直ちに補助参加人の全体財産を減少させるものではないから,それだけでは補助参加人に損害を生じさせるものではなく,本件各取崩しによって原資を調達しなければ行うことができない支出と相まって初めて,補助参加人に損害を生じさせ得るものと認められる(なお,原告らは,上記振込手数料の負担を補助参加人の損害として主張していない。)。そして,平成27年3月末時点において,補助参加人が資本欠損又は債務超過の状態になっていたものとは認められないことは,前記3(4)イのとおりである。また,前記認定事実(10)カによれば,平成28年3月末時点における補助参加人の貸借対照表には,資産として4億9993万9121円が,現金及び預金合計として6567万9972円が,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)として合計6534万7120円が,負債として1億5142万4543円が,正味財産期末残高として3億4851万4578円がそれぞれ計上されていたことが認められ,同時点において,補助参加人が,資本欠損又は債務超過の状態になっていたものとは認められず,かえって,6000万円を超える現金及び預金を有する上,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)の合計6534万7120円及び前記(1)の補填計画により補填されるべき8600万円を資産として計上しなくても,1億9000万円以上の資産超過の状態にあったものと認められるから,相当額の借入れをすることが可能であったことがうかがわれる。これらに加えて,前記認定事実(10)クによれば,内閣府公益認定等委員会は,平成29年2月15日,補助参加人の立入検査を実施し,補助参加人に対し,減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)につき補填計画の作成を指示したものの,他に補助参加人の財産に関する指摘をしなかったことが認められることをも総合すると,前記(1)の事実によっても,補助参加人において,本件各支出は本件各取崩しによって原資を調達しなければ行うことができなかったものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。そうすると,補助参加人は,本件各支出により本件各取崩しを余儀なくされたものとまでは認められない。
一方,本件各支出に係る法律事務の委任は補助参加人にとって必要であり,本件各支出につき被告理事らに任務懈怠があったと認められないことは,前記3(1)ないし(7)のとおりであり,その他に補助参加人とA弁護士,d法律事務所,e法律事務所,c法律事務所及びh法律事務所との間の各委任契約に瑕疵があることの主張,立証はないから,補助参加人は,上記各委任契約に基づき本件各支出を行う義務を負っていたものと認められる。そうすると,補助参加人が本件各支出をすることにより,補助参加人の弁護士報酬支払債務が同額減少していることは明らかである。そして,補助参加人が債務超過ではなく,本件各支出を行う義務を履行しなければならないことからすると,本件各取崩しがされなかったものと仮定しても,その後の補填計画により減価償却引当預金及び退職給付引当預金(資産)に補填されるべき8600万円は,これを本件各支出の一部に充てざるを得ないから,別の用途に使用することができたものとは認められない。
以上に照らすと,前記(1)の事実によっても,本件各取崩しにより補助参加人に原告らの主張する損害が発生しているとも,本件各取崩しと原告らの主張する補助参加人の損害との間に相当因果関係があるとも認められず,他にこれらを認めるに足りる証拠はない。
したがって,前記5(1)の原告らの主張は採用することができない。
第4 結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第17部
(裁判長裁判官 田中寛明 裁判官 早田久子 裁判官 吉原裕貴)
別紙
当事者目録
茨城県常総市〈以下省略〉
原告 X1
埼玉県行田市〈以下省略〉
原告 X2
上記両名訴訟代理人弁護士 櫻町直樹
東京都世田谷区〈以下省略〉
被告 Y1(以下「被告Y1」という。)
宮城県亘理郡〈以下省略〉
被告 Y2(以下「被告Y2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 金村正比古
東京都中野区〈以下省略〉
被告 Y3(以下「被告Y3」という。)
東京都目黒区〈以下省略〉
被告 Y4(以下「被告Y4」という。)
東京都板橋区〈以下省略〉
被告 Y5(以下「被告Y5」という。)
東京都文京区〈以下省略〉
被告 Y6(以下「被告Y6」という。)
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y7(以下「被告Y7」という。)
埼玉県川口市〈以下省略〉
被告 Y8(以下「被告Y8」という。)
上記6名訴訟代理人弁護士 初澤寛成
東京都北区〈以下省略〉
被告 Y9(以下「被告Y9」という。)
埼玉県川口市〈以下省略〉
被告 Y10(以下「被告Y10」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 伊藤敬洋
東京都文京区〈以下省略〉
被告ら補助参加人 公益社団法人Z協会(以下「補助参加人」という。)
同代表者代表理事 Y6
同訴訟代理人弁護士 小出一郎
同 我妻崇明
〈以下省略〉
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