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裁判年月日 令和 3年 1月21日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(行ケ)10065号
事件名 審決取消請求事件
裁判結果 棄却 文献番号 2021WLJPCA01219003
関連審決・命令
特許庁 無効2019-890047 令和 2年 1月14日
出典
裁判所ウェブサイト
裁判年月日 令和 3年 1月21日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(行ケ)10065号
事件名 審決取消請求事件
裁判結果 棄却 文献番号 2021WLJPCA01219003
原告 モンスター エナジー カンパニー
同訴訟代理人弁理士 柳田征史
同 佐久間剛
同 高橋秀明
同 中熊眞由美
被告 株式会社ミクシィ
同訴訟代理人弁護士 今井浩人
同 柿内瑞絵
同訴訟代理人弁理士 武田太郎
同訴訟復代理人弁理士 塚田美佳子
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が無効2019-890047号事件について令和2年1月14日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は,以下の商標(登録第5700277号。以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1の1,2)。
商標 モンスターストライク(標準文字)
登録出願日 平成26年2月14日
登録査定日 平成26年8月1日
設定登録日 平成26年9月5日
指定商品 別紙1のとおり
(2) 原告は,別紙2の引用商標目録記載1ないし3の各商標権(以下,その登録商標を,順次,「引用商標1」,「引用商標2」,「引用商標3」といい,これらを総称して,単に「引用商標」という。)を有している。
(3) 原告は,令和元年8月28日,本件商標の登録に係る指定商品中,第29類,第30類,第32類及び第33類の指定商品(以下「無効請求商品」という。)について,商標登録無効審判(以下「本件審判」という。)を請求した。
特許庁は,上記請求を無効2019-890047号事件として審理を行い,令和2年1月14日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし(出訴期間90日附加),その謄本は,同月23日,原告に送達された。
(4) 原告は,令和2年5月18日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 本件審決の理由の要旨
本件審決の理由の要旨は,本件商標は,以下のとおり,商標法4条1項15号,7号に該当するものではなく,同項の規定に違反して登録されたものではないから,同法46条1項により無効とすることはできないというものである。
(1) 商標法4条1項15号の該当性について
引用商標2及び3は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る「エナジードリンク」を表示するものとして需要者の間に一定程度認識されており,また,引用商標2は,特徴的な図形及び「MONSTER」の文字における特徴的な書体により全体として独創性の程度は高く,無効請求商品と原告の業務に係る商品である「エナジードリンク」とは関連性が高く,取引者及び需要者を共通にするとはいえるが,①引用商標2及び3は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知性の程度はさほど高くはなく,引用商標1については周知性が何ら認められない,②引用商標1及び3は,「MONSTER」又は「MONSTER ENERGY」の文字からなり,いずれも一般に親しまれた既存の語又はその組み合わせからなるものであって独創性の程度は低く,引用商標2は,「MONSTER」及び「ENERGY」の文字は一般に親しまれた既存の語であるから文字自体の独創性の程度は低い,③本件商標と引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても区別し得る別異の商標というべきであり,僅かに称呼において「モンスター」の音を共通にするのみであるから,本件商標と引用商標の類似性の程度は極めて低い,④①ないし③からからすると,本件商標に接する取引者及び需要者が原告又は引用商標を連想又は想起することはないというべきであって,本件商標は原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標とはいえないから,本件商標は,商標法4条1項15号に該当しない。
(2) 商標法4条1項7号の該当性について
(1)のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても区別し得る別異の商標であり,本件商標に接する取引者及び需要者が原告又は引用商標を連想又は想起することはないから,本件商標を無効請求商品に使用しても,引用商標の信用,名声,顧客吸引力等を希釈化するおそれがあるとはいえず,また,引用商標にフリーライドするものともいえず,他に本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものというべき事情も見いだせないから,本件商標は,商標法4条1項7号に該当しない。
3 取消事由
本件審決の取消事由は,①商標法4条1項15号の該当性の判断の誤り,②商標法4条1項7号の該当性の判断の誤りである。
第3 当事者の主張
1 取消事由1(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
ア 引用商標の周知著名性
(ア) 原告は,平成14年(2002年)に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランド(以下「MONSTERブランド」という。)を創設して,米国で同年3月から広告宣伝を開始し,同年4月から「MONSTER ENERGY」ドリンクの製造販売を開始した。原告が製造,販売する商品は,従来の清涼飲料製品にはほとんど採用されていなかった黒色をベースにしたボトル缶を採用し,モンスター(MONSTER)の頭文字「M」とその爪をかたどったロゴマーク(以下「爪の図柄」という。)を上から3分の2程度の範囲に表し,その下方に,特徴的な書体で表示した「MONSTER」を大きく目立つ態様で表示したデザインが特徴的であり,以後,「MONSETER」の文字を包含する個別製品名を使用して,味わいが異なる様々なエナジードリンクの販売を継続している。原告が製造,販売するエナジードリンクは,現在世界130か国以上で販売されており,米国で最も売れているエナジードリンクであり,全世界では平成29年(2017年)の米ドルベースで第2位の売上を記録する世界でも有数のブランドである。
原告がアサヒ飲料株式会社(以下「アサヒ飲料」という。)を通じて平成24年5月8日から日本国内で販売を開始した「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」は,たちまち人気商品となり,同年9月時点で既に年間目標の100万箱を突破し,その後も売上を順調に伸ばして157万箱の売上を記録した。原告が日本国内で販売したエナジードリンクは,日本のコンビニエンスストア,自動販売機,キオスク,スーパーマーケット,列車の売店,会員登録が必要な会員制ストア,店舗,ゲームセンター,ドラッグストア,ホームセンター等を通じて販売されており,同年5月の販売開始から平成30年12月までの期間における売上総数は約8億3800万缶超であり,総売上額は620億円以上に達した。
(イ) 本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告がアサヒ飲料を通じて日本国内で販売したエナジードリンク(以下「原告商品」という。)に使用された個別製品名は,「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」,「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」,「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ)」及び「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3)」の4種類である(その態様は,別紙4のとおり。)。
上記4種類の原告製品は,「MONSTER(モンスター)」の文字を基調とする製品名で統一されていることを特徴としている。また,これらの個別製品の包装容器には,特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字が,他の文字部分と段を違え,フォント,色彩,大きさを違えて,独立して看者の目を惹く態様で顕著に表示されているように,原告商品の個別製品名及び包装容器において「MONSTER」の文字は,見る者が当該商品のブランドとして容易に認識することができる態様で使用されている。原告商品における商標の構成及び使用態様からすると,「MONSTER」及びその音訳の「モンスター」が原告のMONSTERブランド及び個別製品のネーミングの基軸になっている語であり,商品の出所として取引者及び需要者に強く印象づけるための極めて重要な表示として機能している。
(ウ) 原告は,エナジードリンクの中心的需要者層である若い世代の男性にMONSTERブランドを強くアピールするため,独自のマーケティング戦略に基づいて原告商品の広告宣伝活動を世界的に行ってきた。原告は,平成14年(2002年)以降,平成31年(2019年)5月14日時点で46億米ドルを超える広告費を費やしており,日本国内では,販売を開始した平成24年から平成29年末までに7680万米ドルの広告費を費やした。
原告は,従来のテレビコマーシャルや印刷媒体(新聞,雑誌)を用いた広告宣伝活動はほとんど行わず,国際的に活躍する有名人気アスリート,チーム,ミュージシャン等に対するスポンサー活動(具体的には,F1自動車レース,モトクロス,ドリフト走行,スノーボード,スケートボード,サーフィンなどのエクストリームスポーツ,eスポーツ,ロック音楽などの分野で活躍する有名アスリート(モンスターアスリート)等とスポンサー契約を結んで,その活動を支援し,彼らが出場,出演する国際的なスポーツ協議会や音楽フェスティバル等のイベントのスポンサーを務めた。)を中核に据え,「MONSTER」の文字からなる商標(引用商標1又はこれと実質的に同一の商標),爪の図柄,特徴的な書体で示した「MONSTER」の文字及び通常の文字からなるロゴマーク(引用商標2又はこれと実質的に同一の商標),「MONSTER ENERGY」の文字から成る商標(引用商標3又はこれと実質的に同一の商標)を表したユニフォーム,スポーツウェア,自動車,オートバイ,スノーボード等のスポーツ用具,原告商品等を提供し,原告がスポンサーを務めるイベント会場施設のレースサーキット,コース,ステージ,幟,旗,横断幕,テント等にMONSTERブランドマークを表示した。
原告は,平成24年5月17日から平成26年7月18日までの間,ほぼ毎月の頻度で,東京,名古屋,大阪,札幌,福岡の五大都市を含む日本全国各地で,①街頭及びスポーツイベント等の会場での原告商品のサンプル配布,②原告商品の販売キャンペーン(非売品の公式モンスターグッズ等の様々な景品,商品のプレゼントを含む。),③オートバイ,自動車,スノーボード等のスポーツ競技会及びロックフェスティバル等のイベントの開催(主催及び協賛),④「モンスターアスリート」等の映像公開による販売促進活動を実施した。この販売キャンペーンは,大手コンビニエンスストアであるローソン,ファミリーマートと提携して全国コンビニ店舗を通じて1ないし3週間から2か月程度の期間にわたって展開される大規模な販売キャンペーンを含むものである。上記期間において,原告は,原告商品のサンプル配布を総計18回,販売キャンペーンを総計24回,スポーツ協議会及びロックフェスティバルのイベント開催を総計14回,インターネットでのB,D等の「モンスターアスリート」等が出演した映像公開を総計3回実施した。
原告は,平成14年(2002年)以降,MONSTERブランドをアパレルメーカー等に使用許諾し,様々なライセンス商品(Tシャツ,スウェットシャツ,パーカー,帽子,ヘルメット,かばん類,ステッカー,転写シール等)を,ライセンシーを通じて販売し,又は原告が運営するオンライン通販サイトやスポーツイベント等の会場で販売したほか,ビデオゲーム会社と提携してMONSTERブランドを使用したテレビゲームソフトの開発や当該ビデオゲームの発売とタイアップした原告商品の共同販売促進活動を継続的に実施した。
原告は,原告商品の中心的な需要者層である10~30代の若い世代が一般に多く利用するウェブサイトやソーシャルメディアを開設し,これらのインターネットメディアを駆使して原告商品の新製品発売,販売キャンペーンの開催等の原告商品に関する広告を随時配信しているほか,これらのウェブサイト及びソーシャルメディアにおいて,原告がスポンサーを務めるスポーツ競技会,ロックフェスティバル等のイベント及びモンスターアスリート等に関する情報,動画,写真を公開した。
(エ) 関係する調査結果等に基づく各記事(甲314,317,319,320,365ないし367)を総合すれば,本件商標登録出願時及び登録査定時において,国内エナジードリンク市場における原告商品のブランド認知度は,首位のレッドブル(RedBull)に次ぐ2位であり,両者が二大ブランドとして認識されていたこと,本件商標が登録出願される前年の平成25年の時点で原告商品のエナジードリンク市場における市場占有率は,25%を超えていたことは明らかである。
(オ) 原告及びアサヒ飲料は,原告商品の広告宣伝活動において,MONSTERブランド及び原告商品を表示するために,「MONSTER」及びその表音「モンスター」の表示を使用している(甲10,16,17,145,345,352,355ないし358)。また,MONSTERブランドのライセンス商品に関しても,ブランド名及び個別商品名として,「MONSTER」,「Monster」の文字を商品カタログやオンラインショッピングサイトに使用している(甲92,96,98,135)。さらに,国内外の第三者による記事においても,MONSTERブランド及び原告商品は,「MONSTER」及び「モンスター」と表示されている(甲34,51ないし53,56,57,320,362,373ないし375)。
これらの事実に照らせば,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告商品は,国内取引市場で「モンスター」と呼ばれ,「MONSTER」及び「モンスター」と表示されて認識されていたということができる。
(カ) 以上の(ア)ないし(オ)の事実を総合すれば,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたということができる。
イ 引用商標の独創性
原告商品,すなわちエナジードリンクとの関係において,「MONSTER」の文字は,当該商品の普通名称に当たるものではなく,また,その品質等の表示でもなく,取引界において不特定多数の者によって普通に使用されている表示でもない。また,「MONSTER」に「ENERGY」を結合させた「MONSTER ENERGY」は,辞書等には掲載されている既存の語句ではない。したがって,エナジードリンクに使用される「MONSTER」及び「MONSTER ENERGY」の文字は,特定の者の業務に係る出所識別標識として直ちに認識され,需要者にブランドを強く印象付けるために十分な独創性を具備している。
ウ 本件商標と引用商標の類似性
商標法4条1項15号の規定は「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当するものは登録を受けることができないと規定するものであり,当該他人の商品に使用される商標が特許庁に登録されていることを要しないから,本件商標が同号に該当するか否かの判断においては,本件商標と原告の登録に係る引用商標の願書に記載された構成のみを比較対照するだけでは不十分であり,原告の現実の使用に係る商標の使用態様との対比も不可欠である。
しかるところ,原告は,引用商標1の構成文字「MONSTER」と実質的に同一といえる特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字を,原告商品のすべての個別製品の包装容器に表示し,多種多様な広告宣伝活動に使用している。また,原告は,引用商標1の構成文字「MONSTER」及びその表音「モンスター」を本件商標の登録出願前の平成24年3月15日から本件商標の登録査定日(平成26年8月1日)までの期間に国内で広告及び販売を開始した原告商品の4種の個別製品名,すなわち「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」,「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」,「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ)」及び「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3)」のすべてに使用している。
このような原告の現実の使用に係る商標及びその使用態様に照らして本件商標と引用商標を比較対照すれば,本件商標と引用商標は,以下のとおり,外観,称呼及び観念のすべてにおいて類似性を有する。
(ア) 外観の類似性
本件商標は,標準文字のカナ文字で「モンスターストライク」と横書きしてなるものである。「モンスターストライク」の構成文字は,「MONSTER」の表音として親しまれている外来語「モンスター」と「STRIKE」の表音として親しまれている外来語「ストライク」の2語を結合したものとして,容易に認識し,理解される。
これに対して,引用商標1は,標準文字の英文字で「MONSTER」と横書きしてなるものである。引用商標2は,爪の図柄,特徴的な書体で大きく表示した「MONSTER」の文字及び活字体で表示した「ENERGY」の文字を,二段に表してなるものである。引用商標3は,標準文字の英文字で「MONSTER ENERGY」と横書きしてなるものである。これらの引用商標及びその構成中の文字部分が原告商品の製品情報,プレスリリース,ポスター等の広告物の文中で使用される場合は,「MONSTER」は「モンスター」,「ENERGY」は「エナジー」,「MONSTER ENERGY」は「モンスターエナジー」とそれぞれ音訳され,カナ文字表記で使用されている。また,引用商標1の構成文字「MONSTER」及びその表音「モンスター」は,個別製品名「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」,「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」,「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ)」及び「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3)」の語頭部分に使用されている。
したがって,本件商標と原告の使用に係る商標(引用商標及び上記個別製品名)は,語頭に「モンスター」の文字を包含する点において共通点を有し,外観の印象が類似する。
(イ) 称呼における類似性
本件商標からは,「モンスターストライク」の構成文字に基づいて「モンスターストライク」の称呼が生じる。
これに対して,引用商標1からは,「MONSTER」の構成文字に基づいて「モンスター」の称呼が生じる。引用商標2からは,構成中の「MONSTER」及び「ENERGY」の文字部分に基づいて「モンスターエナジー」の称呼が生じるほか,特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字部分が独立の商品出所識別標識として機能することから,当該文字部分に基づいて「モンスター」の称呼も生じる。引用商標3からは,「MONSTER ENERGY」の構成文字に基づいて「モンスターエナジー」の称呼が生じる。また,引用商標1の構成文字「MONSTER」及びその表音「モンスター」を語頭に使用した4種の個別製品名の「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」,「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」,「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ)」及び「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3)」からは,それぞれ「モンスターエナジー」,「モンスターカオス」,「モンスターアブソリュートリーゼロ」,「モンスターエナジーエムスリー」の称呼が生じる。
したがって,本件商標と原告の使用に係る商標(引用商標及び上記個別製品名)は,語頭に「モンスター」の音を包含する点で共通し,音質が類似することから,称呼の印象も類似する。
(ウ) 観念における類似性
本件商標の登録出願時及び登録査定時において,「モンスターストライク」と称される被告のスマートフォン向けのゲームアプリ(以下「本件ゲームアプリ」という。)は,スマートフォン向けのゲームアプリの需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる証拠はない。仮に,「モンスターストライク」と称する本件ゲームアプリが本件商標の登録出願時及び登録査定時にスマートフォン向けのゲームアプリの需要者の間に広く認識されていたとしても,無効請求商品は幅広い社会層の多数が需要者となり得るのに対して,スマートフォン向けのゲームアプリの需要者は,スマートフォンを利用するゲーム愛好家という少数であり,無効請求商品の需要者の大部分がスマートフォン向けのゲームアプリの需要者と重複するとは考えられない。そうすると,本件商標は,登録出願時及び登録査定時において,無効請求商品の需要者の間で相当程度認識されていたとはいえないから,これにより被告の業務に係るスマートフォン向けのゲームアプリの名称といった周知性に基づく観念は生じず,本件商標からは,その構成文字に基づいた観念のみが生じる。
本件商標を構成する「モンスターストライク」の文字は,既存の語ではなく,その構成自体は特定の観念を生じない造語として認識,理解されるものであるが,当該構成文字中,「モンスター」の文字は英語の「MONSTER」の表音に相当し,「ストライク」の文字部分は英語の「STRIKE」の表音に相当し,それぞれが外来語の「モンスター」,「ストライク」として国民一般に親しまれており,「モンスターストライク」の文字に接した需要者は,外来語の「モンスター」と「ストライク」の2語を結合したものとして容易に認識し,理解するから,本件商標からは「モンスター」と「ストライク」の2語を結合したものとしての観念が想起され,語頭に「モンスター」の観念を包含する。
これに対して引用商標1からは,構成文字の「MONSTER」に基づいて「モンスター」の観念が生じる。引用商標2からは,構成中の特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字部分が独立の商品出所識別標識として機能することから,当該文字部分に基づいて「モンスター」の観念が生じる。引用商標2からはまた,「MONSTER」及び「ENERGY」の文字部分に基づいて「MONSTER」と「ENERGY」の2語を結合したものとしての観念が想起され,語頭に「モンスター」の観念を包含する。引用商標3からは,構成文字の「MONSTER ENERGY」に基づいて「MONSTER」と「ENERGY」の2語を結合したものとしての観念が想起され,語頭に「モンスター」の観念を包含する。また,これらの引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時に原告商品の出所識別標識として広く認識されていたことから,それぞれ「原告の業務に係るエナジードリンクを表示するブランド」との観念も生じる。
そして,引用商標1の構成文字「MONSTER」及びその表音「モンスター」を語頭に使用した4種の個別製品名の「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」,「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」,「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ)」及び「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3)」からは,それぞれ「MONSTER(モンスター)」と他の語を結合したものとしての観念が想起され,それぞれ語頭に「モンスター」の観念を包含する。
したがって,本件商標と原告の使用に係る商標(引用商標及び上記個別製品名)は,語頭に外来語「モンスター」の観念を包含する点において共通点を有し,さらに,本件商標と引用商標2,引用商標3及び上記個別製品名は,「モンスター」と他の語を結合したものとしての観念が想起される点においても共通点を有することから,観念において類似する。
(エ) 小括
以上によれば,本件商標と原告の使用に係る商標(引用商標及び上記個別製品名)は,一般に商品出所識別標識として看者を最も強く印象づける語頭に「モンスター」の文字,「モンスター」の音(称呼),「モンスター」の観念を包含する点を共通にし,外観,称呼及び観念の印象が類似することが明らかである。また,本件商標は,原告商品に使用されているすべての個別製品名と同一のネーミング規則,すなわち「MONSTER(モンスター)」に他の語を結合する方法によって構成されたものとして看取されることが明らかである。
そうすると,本件商標と引用商標の類似性の程度は高いというべきである。
エ 需要者の共通性,取引の実情等
(ア) 無効請求商品は,食料品店,コンビニエンスストア,スーパーマーケット,酒屋,デパートやドラッグストア等の食料品売場,自動販売機,駅売店等で販売され,一般消費者が日常的に購入する飲食料品であって,原告商品の「エナジードリンク」と同一又は類似のもの,あるいは,原材料,用途,効能,販売場所,需要者の範囲が重複するものであって,原告商品と極めて密接な関係にある。
(イ) 無効請求商品の需要者は一般消費者であるから,商品や商標について専門的知識を有する者ではない。また,無効請求商品は,日常で購入する飲食料品(消耗品)で価格も比較的安価であるから,需要者が商品の選択,購入の際に必ずしも格別の注意を払うとはいえないから,無効請求商品の通常の需要者において払われる注意力の程度は高いとはいえない。
(ウ) 原告は,本件商標の登録出願前の平成22年からビデオゲーム会社との共同開発による複数のビデオゲームの制作に関わっており,当該ビデオゲームには特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字等の商標が使用された。これらのビデオゲーム会社と提携した共同販売促進活動の実施に加えて,ゲームショーやeスポーツ大会の主催者と提携した販売キャンペーン(ゲーム関連グッズの景品プレゼントを含む。)も実施している。原告とビデオゲーム会社の関係のような異業種企業のコラボレーションによる商品開発及び共同販売促進活動は,本件商標の登録出願前から一般的に行われており,本件商標の登録出願時にも盛んであった。
このような事情のもとで本件商標が無効請求商品に使用された場合,当該商品は原告との共同開発事業によって製造,販売されたもの,あるいは原告のMONSTERブランドについて使用許諾を受けた者の取扱いに係るものであると誤信され,その出所について誤認混同が生じる可能性は極めて高い。
オ まとめ
以上のとおり,①「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されており,②エナジードリンクに使用される「MONSTER」及び「MONSTER ENERGY」の文字は,特定の者の業務に係る出所識別標識として直ちに認識され,需要者にブランドを強く印象付けるために十分な独創性を具備しており,③本件商標と原告の使用に係る商標(引用商標及び個別製品名)は,一般に商品出所識別標識として看者を最も強く印象づける語頭に「モンスター」の文字,「モンスター」の音(称呼),「モンスター」の観念を包含する点を共通にし,外観,称呼及び観念の印象が類似しており,④需要者の共通性,その他取引の実情等に鑑みれば,本件商標が無効請求商品に使用された場合,これに接した取引者及び需要者は,語頭の「モンスター」の文字部分に着目し,原告のMONSTERブランドを直観し,当該商品が原告の製造販売に係るMONSTERブランドのエナジードリンクの個別製品の一つであると誤信し,あるいは当該商品が原告と組織的又は経済的な関係を有する者の業務に係る商品(原告との間に親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品)であると誤信し,その出所について混同を生じるおそれがあることが明らかである。したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものであるから,これと異なる本件審決は,取り消されるべきである。
また,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告商品は,少なくともエナジードリンク市場において,周知著名性を獲得しており,本件商標の指定商品中の「第32類 清涼飲料,果実飲料,飲料野菜ジュース」の商品概念は,「エナジードリンク」を包含するものであるから,本件商標がその指定商品に使用された場合,原告の業務に係る商品とその出所について誤認混同を生じるおそれがあり,原告のMONSTERブランドの出所表示力を希釈し,その顧客吸引力にフリーライドするものである。したがって,本件商標は,少なくともエナジードリンクに関する限り,商標法4条1項15号に該当するものであるから,これと異なる本件審決は,取り消されるべきである。
(2) 被告の主張
ア 引用商標の周知著名性について
(ア) 原告は,自社商品を販売している国及び全世界における総売上高を主張しているが,これらの数値は,本件商標の登録出願時及び登録査定時における日本国内の引用商標の周知著名性立証には関係がない。また,日本国内市場についても,平成24年5月から平成30年12月までの期間に,日本円で620億円以上の売上を達成したと主張するが,その事実を裏付ける客観的な証拠の提出はなく,本件商標の登録出願時における具体的な売上げも不明であって,引用商標が日本国内の需要者にどれだけ認識されていたかについて立証するものではない。
(イ) 本件商標の登録出願時までに,日本国内で原告が実際に販売していた商品は,「モンスターエナジー」,「モンスターカオス」,「モンスターエナジーアブソリュートリーゼロ」の3種類のみである。上記商品における使用態様は,引用商標2の付された缶商品2種と「モンスターカオス」になる。もっとも,「モンスターカオス」の商品パッケージを見ると,「MONSTER」と「ENERGY」の間に「KHAOS」の表記があるものの,引用商標2の構成要素である爪の図柄,「MONSTER」,「ENERGY」がまとまりよく配置されていることから,引用商標2に類似する商標であるといえる。また,「モンスターカオス」は,平成28年4月12日にリニューアルされており,当該商品も原告の一貫したブランド認知戦略により引用商標2と同一の商標を付したデザインに統一されている。
したがって,原告が本件商標の登録出願時までに日本国内で販売していたエナジードリンクは,すべて引用商標2と同一又は類似のものであるということができる。
(ウ) 原告が広告宣伝活動の証拠として提出したものの多くは,海外又は英語表記のものであり,日本における「MONSTER」の周知著名性を立証するものではない。また,原告の広告宣伝活動の対象は,特定の限定された趣味趣向を有する10~30代の男性であり,かつ,その手法も原則として,そのようなものが多く利用するウェブサイトやソーシャルメディアによるものに限定されており,本件商標の登録出願時までの広告宣伝活動の数や時間が少ないことに加えて,このような数少ない広告宣伝を見た者の範囲は更に限定されていた。また,刺激が強く,容量も大きいエナジードリンクの実際の消費者層は,少なくとも本件商標の登録出願時はかなり限られた存在であり,限られた少数の同一の消費者が頻繁に繰り返し原告商品を購入していたと考えられるため,総販売数の多くの割合は,このような特定の同一の消費者が購入した数量であるといえるのであって,一般の消費者が原告商品を購入していたとはいえない。
イベント等についてみても,本件商標の登録出願時よりも前に日本国内で実施され,原告が何らかの形で関与していたことが客観的な証拠により確認できるイベント等は,原告が主張するほど多くなく,また,その際用いられているのは,ほとんどが引用商標2と同一又は類似の商標であり,一部において引用商標2を構成する爪の図柄が単独で付されているし,原告が提出する各記事内においては,原告のブランドが「MONSTER ENERGY」又は「モンスターエナジー」である旨が必ず表示されている。したがって,本件商標の登録出願時までの期間における原告の商標の使用態様は,引用商標2と同一又は類似の商標及び引用商標2を構成する爪の図柄のみである。また,イベント等における同商標等は,ほとんどの場合,原告の業務に係る商品等を表示するものとして使用されていない。
さらに,原告商品のサンプル等の配布についても配布数量や態様等につき客観性のある証拠は提出されていないし,ライセンス商品カタログや通信販売サイト,テレビゲームソフトの開発・発売とタイアップした原告商品の共同販売促進活動,ウェブサイト及びソーシャルメディアを利用した情報発信等についても,国内における実施例は少なく,使用されている商標も引用商標2と同一又は類似の商標で,自社ブランドの出所表示としても「Monster Energy」のみを使用している。したがって,原告のこの点に関する主張は,本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知著名性を立証するものではない。
(エ) 原告は,原告商品の認知度及び市場シェアがエナジードリンクの中では第2位であり,平成25年度時点でのエナジードリンク市場における占有率は25%を超えていたと主張する。
しかし,エナジードリンクに限られた需要者の中におけるブランド認知度が2位だったとしても,国内エナジードリンク市場は425億円未満と清涼飲料水市場全体の1%に満たないことやエナジードリンクの需要者がかなり限定されていること等に照らせば,エナジードリンクは,一般的な清涼飲料水の需要者全体からみれば特殊な性質の商品であることに変わりなく,当時の日本のエナジードリンク市場に対する原告の市場シェア,そして原告の主張する売上高から推認できる本件商標の登録出願時までの売上高からすると,原告の商品ブランド,ひいては引用商標が清涼飲料水の一般需要者に認知されていたとはいえず,本件商標の登録出願時において,引用商標は,日本国内において周知著名なものとはいえないことは明らかである。
(オ) 原告が自社ブランドが「MONSTER」あるいは「モンスター」との表示で認識されていたことを立証するために提出した証拠には,本件商標の登録出願時点より後のもの,外国で使用されたもの,日本における引用商標の周知著名性獲得には関係しないものが多数含まれているし,そもそも,本件商標の登録出願以前のもので,国内で使用されたものであっても,実際に使用されている商標の態様は,引用商標2と同一の商標,あるいは当該商標を構成する,爪の図柄と「MONSTER ENERGY」の文字の配置に変更を加えた引用商標2に類似する商標である。
そうすると,日本国内の使用に関する証拠と思われるものであっても,引用商標2と同一又は類似の商標が必ず併記され,あるいは原告のブランド名「MONSTER ENERGY」又は「モンスターエナジー」の表示が常に併記されていることが確認できるのであって,「MONSTER」あるいは「モンスター」との表記が,出所表示として独立して使用されていた実績は一度もなく,原告商品が,国内取引市場で「モンスター」と呼ばれ,「MONSTER」及び「モンスター」と表示されて認識されていた事実は,一切証明されていない。
(カ) 以上によれば,本件商標の登録出願時及び登録査定時である平成26年当時において,引用商標のいずれも一般的な日本国内の需要者に認識されていたとはいえず,また,「MONSTER」又は「モンスター」といった略称が,原告の出所表示として,日本の需要者の間で認識されていたともいえない。
イ 引用商標の独創性について
「MONSTER」又は「ENERGY」及びその組み合わせである「MONSTER ENERGY」は,一般に親しまれた既存の語又はその組み合わせにすぎない。普通名称,品質等表示,慣用商標等であれば,本来的に商標登録されるものではないため,それらに該当しないからといって原告の採択した文字に創造性が存在するとはいえない。
ウ 本件商標と引用商標の類似性について
原告の現実の使用に係る商標及びその使用態様は,引用商標2と同一又は類似の商標であって,特徴的な爪の図柄と「MONSTER ENERGY」の文字とを組み合わせたもの,及び引用商標3に係る「MONSTER ENERGY」又は「モンスターエナジー」の表記であり,引用商標2の文字部分及び同3の各「MONSTER ENERGY」が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,「MONSTER」又は「モンスター」の略称で称呼されるものとして日本国内の需要者の間で認識されていたという事実もないことは前記ア(オ)のとおりである。
したがって,原告の現実の使用に係る商標及びその使用態様に照らして,本件商標と引用商標とを比較すれば,以下のとおり両商標は非類似であることが明らかである。
(ア) 外観における類似性
標準文字のかな文字で表された本件商標「モンスターストライク」と,引用商標とでは,その構成が明確に異なることから,視覚上区別することが容易である。引用商標が語頭において同一の文字を包含するという点のみで,外観が類似するとはいえない。
(イ) 称呼における類似性
本件商標からは「モンスターストライク」と冗長なく一連の称呼のみが生じるところ,引用商標からは「モンスター」又は「モンスターエナジー」との称呼が生じる。
「モンスターストライク」を「モンスターエナジー」と比較すると,両者は構成音数が異なる上,それぞれの称呼も全く相違する。したがって,一連一気に称呼するときは,全体の語感が著しく異なり,明確に聴別できるものである。引用商標が語頭において同一の音を包含するという点のみで,称呼が類似するとはいえない。「モンスター」と比較すると,後半の「ストライク」の音の有無により著しく異なるため,一連一気に称呼するときは,全体の語感が著しく異なり,明確に聴別できる。
(ウ) 観念における類似性
被告は,平成25年10月10日にiOS版(乙27),同年12月15日にAndroid版(乙28)による本件ゲームアプリの提供を国内で開始した。配信開始直後から本件ゲームアプリは人気を博し,また,積極的なウェブ広告やメディア報道等による認知度も増加し,例えば,利用者数でいうと,本件商標出願直後の同年3月17日には400万人,同年4月4日には500万人,同月27日は600万人と配信開始から約半年で国内利用者数は600万人を超えており(乙51ないし53),老若男女問わず,幅広い世代の一般需要者が本件ゲームアプリに接していたことは明らかである。したがって,本件商標は,その登録出願時において日本国内の一般的な需要者に広く知られていたことはもとより,登録査定時においては被告が提供するスマートフォン用ゲームとして,日本国内の需要者の間で著名であった。したがって,本件商標からは,被告が提供するスマートフォン用ゲームアプリの「モンスターストライク」の観念が生じる。
これに対して,引用商標からは,「怪物的な力」あるいは「怪物」などの観念を生ずるものであり,互いに著しく相違する。
(エ) 小括
以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれにおいても容易に区別し得る非類似の商標というべきである。
エ 需要者の共通性,取引の実情等
(ア) 前記ア(ウ)のとおり,エナジードリンクは,一般的な需要者に広く受け入れられていた清涼飲料ではなく幅広い世代に受け入れられる性質の商品でもないし,一般的な缶の炭酸飲料に比べれば価格が極めて高い上,陳列に際しても一般的な需要者にとって目立ちにくく,認知度も低い。これらの事情に鑑みれば,原告の業務に係る商品のエナジードリンクは,清涼飲料に該当するとはいえ,非常に特殊な性質の商品であることが明らかである。
また,本件商標の登録出願時の平成26年において,国内エナジードリンクシェア1位であったレッドブル社もシェア2位であった原告も,日本国内ではエナジードリンクのみを販売しているから,需要者の認識としては,エナジードリンクのブランドがエナジードリンク以外の飲食料品やアルコール類といったものを製造することは一般的にないと考える。
したがって,原告の業務に係るエナジードリンクという商品の特殊な性質や実情に鑑みれば,第29類,第30類,第33類の各指定商品との関係性は低く,また,第32類のビール,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料についても,関係性は低いといえる。
(イ) また,無効請求商品は,日常的に消費される性質の飲食料品を広く含むものであるところ,前記のとおり,エナジードリンクは極めて特殊な性質の商品であるから,その特殊な商品を購入する需要者は,商品購入の際にブランド名等を注意深く確認しない一般消費者というよりは,エナジードリンク愛好家という非常に限られた需要者である。そのような需要者は,缶入り炭酸飲料としては高額なものを,各ブランドが宣伝している効果や味,ブランドイメージを元に,商品を選定して購入していると考えるのが妥当である。
したがって,エナジードリンクの需要者と飲食料品の一般消費者とを同列に考えることはできない。
(ウ) 前記ウ(ウ)のとおり,本件ゲームアプリは,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,日本全国の幅広い世代に認知され,著名となっていたから,本件商標が無効請求商品に使用されても,需要者がまず認識するのは,被告が提供しているスマホゲーム「モンスターストライク」である。
本件商標の登録出願以前から異業種企業のコラボレーションは行われており,とりわけ,人気ゲームタイトルと飲食料品のコラボレーションの例は平成25年以前から多数存在するから,本件商標が無効請求商品に付されていても,本件ゲームアプリとコラボした飲食料品であると,需要者は当然認識するのであり,出所の混同が生じることはあり得ない。
オ まとめ
以上のとおり,①引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとして周知著名であるとはいえず,②「MONSTER」又は「ENERGY」及びその組み合わせである「MONSTER ENERGY」は,一般に親しまれた既存の語又はその組み合わせにすぎないから独創性があるとはいえず,③本件商標と引用商標は類似性の程度は極めて低く,④原告の業務に係る商品のエナジードリンクは,清涼飲料に該当するとはいえ,非常に特殊な性質の商品であり,無効請求商品との関係性は低く,エナジードリンクの取引の実情等に鑑みれば,エナジードリンクの需要者と無効請求商品である飲食料品の一般消費者とを同列に考えることはできないことに加え,⑤本件商標の「モンスターストライク」が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,本件ゲームアプリの「モンスターストライク」であることは,需要者において周知著名であって,無効請求商品に本件商標が使用されたとしても,被告が提供するスマホゲームを想起するから,出所の混同が生じることはあり得ず,⑥本件商標の登録出願時及び登録査定時において,エナジードリンクメーカーが日本国内においてエナジードリンク以外の飲食料品を提供していた事実はなく,原告が引用商標2と同一又は類似の商標を付して販売していた飲食料品もエナジードリンクのみであった実情に鑑みれば,本件商標が無効請求商品に使用されても,原告の引用商標が直ちに想起されるようなことは生じ得ないことからすると,本件商標が無効請求商品に使用されても,その出所について混同が生じるおそれがあるとはいえない。
したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当しないから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
前記1(1)ウのとおり,原告商品に使用されている個別製品名を含めた引用商標の実際の使用態様に照らして本件商標と引用商標とを比較対照すれば,本件商標と引用商標が外観,称呼及び観念のいずれにおいても区別し得る別異の商標とはいえず,本件商標と引用商標の類似性の程度は高いといえること,本件商標は,原告の「MONSTER」ブランドのエナジードリンクのすべての個別製品名と同一のネーミング規則で構成されているものであり,しかも,原告商品である「エナジードリンク」と同一又は類似の商品に使用されるものであるから,本件商標に接した取引者及び需要者が原告及びそのMONSTERブランドを直ちに想起,連想することは明らかであることからすると,本件商標が無効請求商品に使用されれば,原告の商品出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力が希釈化する。のみならず,本件商標の使用は,原告がMONSTERブランドについて獲得した信用力,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず,その経済的な価値を低下させるものである。
以上によれば,本件商標は,公正な取引秩序の維持を目指す商標法の目的,国際信義の精神に反するものであり,社会一般の道徳観念に反するものであるから,本件商標は公の秩序を害するおそれがある商標というべきである。
したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するから,これと異なる本件審決は,取り消されるべきである。
(2) 被告の主張
前記1(2)のとおり,原告は,①「MONSTER ENERGY」ブランドを使用した広告宣伝活動しか実施しておらず,全ての商品及び宣伝広告素材に使用されているのは引用商標2と同一又は類似の商標であって,「MONSTER」と「ENERGY」との組み合わせを常に使用してきたこと,②引用商標1に係る「MONSTER」又は「モンスター」のみが独立して出所表示として用いられていた証拠は1つも提出されておらず,最も多用されている引用商標2ですら,その周知性を認め得る十分な証拠の提出はないことに鑑みれば,本件商標と原告の現実の使用に係る商標とは明確に非類似であり,語頭の「モンスター」部分の称呼が僅かに共通しているという理由のみで,原告の「MONSTER ENERGY」の出所表示力が希釈化することはあり得ない。
また,本件商標の登録出願時には,本件ゲームアプリは,日本国内において原告商品よりもはるかに著名であったことからすれば,当時の日本において周知とはいえない原告の「MONSTER ENERGY」ブランドにフリーライドすることもできない。
したがって,本件商標は,公の秩序を害するおそれがある商標とは到底いえず,本件商標が商標法4条1項7号には該当しないと認定した本件審決の判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断
1 認定事実
前記第2の1に加え,証拠(甲1(枝番を含む。以下同じ。)ないし3,7ないし17,33,44,47,48,58,63,65ないし67,73ないし76,82,83,87ないし89,98,104ないし106,138ないし154,226,279ないし281,311,314,317,319,320,328,329,338ないし346,348,349,351ないし353,355ないし358,360,361,365ないし367,381,405,406,414,乙2ないし12,17,27ないし32,34,36,38ないし40,42,43ないし47,49ないし60,69)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
なお,原告は,引用商標又は原告がアサヒ飲料を通じて販売するエナジードリンクに使用する商標その他関連する業務に使用する商標が周知著名であることを立証するために,原告が海外において販売しているエナジードリンク商品,原告の米国ウェブサイト,全世界の売上,海外における原告の評判,海外で開催されたイベントや支援するアスリート等,海外における関連商品等に関する証拠のほか,本件商標の登録出願及び登録査定時以降に関する事項に関する証拠を多数提出している。しかし,本件商標が商標法4条1項15号又は同項7号に該当する商標であるか否かの判断において,海外における引用商標又は原告がその業務において使用する商標の周知著名性は関係がなく,また,引用商標及び原告がその業務に使用する商標の周知著名性は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において問題となるのであって,少なくとも本件商標の登録査定時以降の事実関係は関係しない(したがって,これらの事実関係については,以下における認定の対象としない。)。また,原告が主張するところの事実関係には客観的な裏付けを欠くもの,国内の消費者も当該情報にアクセスする可能性はあるが(例えば,外国語のウェブサイト),実際に国内の消費者がその情報にアクセスしたことについての具体的な裏付けを欠くもの,本件商標の登録出願時又は登録査定時より前に関する事実に関する証拠であるか不明のものが含まれており,いずれにしても,このようなものについては,判断の根拠とすべき事実として認定することはできない。
(1) 当事者
ア 原告(モンスター エナジー カンパニー(Monster Energy Company))は,1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり,平成14年(2002年)に米国においてエナジードリンクである「MONSTER ENERGY」を発売し,後記のとおり,我が国では,平成24年(2012年)以降,エナジードリンクを発売した。
イ 被告は,平成11年6月3日に設立された,情報収集,情報処理,情報提供に関するサービス,ゲーム,映像,音楽等のコンテンツの企画,開発,製造,制作,販売及び配信等を目的とする株式会社であり,平成18年2月1日,現在の商号に変更した。
(2) 原告による引用商標等の登録出願及び設定登録
ア 原告(出願時の名称は「ハンセン ビヴァレッジ カンパニー」。以下,この(2)において同じ。)は,平成18年6月9日,指定商品を第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」として引用商標2の登録出願をし,同商標は,平成19年6月22日に設定登録を受けた。
イ 原告は,平成18年6月9日,指定商品を第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料,麦芽ビール,その他のビール」として,引用商標2における「爪の図柄の部分」と同様の図柄の商標の登録出願をし,同商標は,平成19年5月11日に設定登録を受けた。
また,原告は,平成22年10月27日,指定商品を第5類,第29類「乳飲料,コーヒー入り乳飲料,その他の乳製品」,第30類「コーヒー飲料,ミルク入りコーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,茶,水,食品香料(精油のものを除く。)」,第32類「ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したエネルギー補給用の清涼飲料,ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したエネルギー補給用の果実飲料,ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したコーヒー風味のエネルギー補給用の果実飲料,飲用製造用調整品」,第33類「エネルギー補給用のアルコール飲料(ビールを除く。),コーヒー風味を加味したアルコール飲料(ビールを除く。),その他のアルコール飲料(ビールを除く。)」として,引用商標2における「爪の図柄の部分」と同様の図柄の商標の登録出願をし,同商標は,平成23年8月12日に設定登録を受けた。
ウ 原告は,平成22年7月8日,指定商品を第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」として引用商標1の登録出願をし,同商標は,平成22年12月24日に設定登録を受けた。
エ 原告は,平成22年7月8日,指定商品を第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」として引用商標3の登録出願をし,同商標は,平成23年2月25日に設定登録を受けた。
(3) 我が国における原告の事業展開及び使用商標等
ア エナジードリンクの発売
原告から我が国での独占販売権を得たアサヒ飲料が本件商標の登録査定日(平成26年8月1日)までに販売したエナジードリンクの販売状況は,以下のとおりである。
(ア) アサヒ飲料は,平成24年3月15日,インターネット上のウェブサイトにおいて,「アサヒ飲料 国内独占販売権取得!「モンスターエナジー」ブランド新発売」と題して,同年5月8日から,「モンスターエナジー缶355ml」と「モンスターカオス355ml」の2品を全国で発売する旨のニュースリリースをした(甲7)。同記事には,「「モンスターエナジー」ブランドは2002年にアメリカで発売。現在アメリカをはじめ北米,南米,欧州,豪州,アジアなど世界57か国以上(2010年度)で販売,ブランド力とファッション性で若者からの圧倒的な支持を背景に,急成長しているエナジードリンクです。」,「アサヒ飲料の調査によれば,近年,エナジードリンクのユーザー層,消費動向に変化の兆しがみられます。ユーザー層については,エナジードリンクの中心のユーザーである30代~50代の男性(全体の40%)に加え,10代~20代の男女が新たなユーザーとして拡大傾向(2010年8%→2011年13%)にあります。」,「アサヒ飲料では,世界の若者に支持される「モンスターエナジー」のブランド力に着目し,「モンスターエナジー」を日本市場に投入することで,エナジードリンク市場のさらなる活性化をねらいます。」と記載されている。
平成24年5月8日に発売となった「モンスターエナジー」は,黒色の缶に緑色の「爪の図柄」,その下に白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,その下に緑色の活字書体で「ENERGY」とデザインされた缶(別紙4。以下,このデザインの缶を単に「モンスターエナジー缶」という。),「モンスターカオス」は,黒色の缶に赤色の「爪の図柄」,その下に白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,その下に赤色の活字書体の「KHAOS」,その下に白色の活字書体で「ENRGY」とデザインされた缶(別紙4)である。
(イ) 平成24年5月8日に発売された「MONSTER ENERGY」の販売は好調に推移し,アサヒ飲料は,同年9月13日のニュースリリースで,年間販売目標の100万箱を120万箱に上方修正した。同ニュースリリース(甲8)には,「「モンスターエナジー」の日本初上陸にあわせ,モンスターエナジージャパン社により,2012年5月19日~7月15日の期間で,東京・名古屋・大阪の計100箇所において,50万本規模の街頭サンプリングを実施されるなど積極的な販売促進活動を展開いたしました。」と記載されている。
また,アサヒ飲料は,平成25年1月24日付けの「2013年アサヒ飲料(株)事業方針」と題するニュースリリース(甲9)において,「新需要創出を目的に,5月に発売した「モンスターエナジー」は9月に年間目標の100万箱を突破,上方修正した目標120万箱も上回り,157万箱の販売となりました。」と発表した。
(ウ) アサヒ飲料は,平成25年4月11日,「~ゼロモンスター,ついに日本上陸!!~「モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml」5月7日(火)新発売」と題して,同日から「モンスター アブソリュートリー ゼロ 355ml」を全国で発売する旨のニュースリリースをした(甲10)。同記事には,「本商品は,アメリカ国内でレギュラー・ダイエット系・果汁系・コーヒー系とカテゴリーのある「モンスターエナジー」ブランドの中でも,レギュラーカテゴリーの「モンスターエナジー」に次いで2番目に人気のあるカテゴリー,ダイエット系エナジーです。新しいカテゴリーをラインアップに加えることにより,伸長著しい日本のエナジードリンク市場で,更に「モンスターエナジー」ブランド強化を図ってまいります。」との記載がある。
平成25年5月7日から発売となった「モンスターアブソリュートリーゼロ」は,黒色の缶に青色の「爪の図柄」,その下に白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,その下に青色の活字書体で「ENERGY」,その下に白色の活字書体で「ABSOLUTELY ZERO」とデザインされた缶(別紙4)である。
(エ) アサヒ飲料が発売した上記3種類のエナジードリンクは,コンビニエンスストア,スーパーのほか,アサヒ飲料が開設したアサヒ飲料ショップ,アマゾン・ジャパンの通信販売サイト等で発売された。
イないしエ
別紙3(1)イないしエ記載のとおりである。
(4) 原告商品の認知度調査等
ア 株式会社翔泳社運営のウェブサイト「MarkeZine」掲載の「激化するエナジードリンク市場!認知度は「RedBull」8割超,国産「RAIZIN」は2割弱に【ジャストシステム調査】」と題するウェブページ(甲319)には,平成26年4月16日,同月10日から11日を調査期間とし,「Fastask」のモニタのうち全国の10代から60代の男女851名を調査対象として,エナジードリンク市場における認知度調査を実施した結果として,国産,外国産を問わない認知度が高い商品は「RedBull」(82.8%),「MONSTERENERGY」(47.6%),「burn」(38.7%)となり,「RAIZIN」はそれらに続き4位であり,「RedBull」は全世代で1位の支持であったのに対して,「MONSTERENERGY」は,10代,30代,40代で2位の支持であった旨の記載がある。
イ 株式会社ジェイ・エム・アール生活総合研究所が運営するウェブサイトに掲載された「消費者調査 No.196 エナジードリンク(2014年7月版) レッドブルを追うモンスターエナジー。国内メーカーはどこまで迫れるか」と題するウェブページ(甲311)には,「「認知」では,「レッドブル・エナジードリンク」が45%,「モンスターエナジー」が31%で,「バーンエナジードリンク」は17%と,それぞれ10ポイント以上の差がある。」,「「広告・記事接触」では,「レッドブル・エナジードリンク」が13%,「モンスターエナジー」が7%,「バーンエナジードリンク」は3%で,それぞれ約2倍もの差がある。」,「店頭接触」では,「レッドブル・エナジードリンクが20%,「モンスターエナジー」が14%,「バーンエナジードリンク」は8%で,それぞれ5ポイント以上の差がある。」,「飲用経験」では,「レッドブル・エナジードリンク」が14%,「モンスターエナジードリンク」8%,「バーンエナジードリンク」は4%で,「3ヶ月以内の接触経験」は「レッドブル・エナジードリンク」が7%,「モンスターエナジー」5%,「バーンエナジードリンク」は2%となっている。」,「継続購入意向」では,「レッドブル・エナジードリンク」が9%,「モンスターエナジー」が7%で,「バーンエナジードリンク」は3%となっており,現在のところ1~3位の力関係が鮮明になっていることが確認できる。」,「最後に「認知者の今後の購入意向」をみると,トップが「モンスターアブソリュートリーゼロ」で,2位が「レッドブル・シュガーフリー」となり,3,4位に「モンスターエナジー」,「レッドブル・エナジードリンク」が続いている。上位2商品もトップ2ブランドの商品であることから,現状は海外2ブランドの強さが浮き彫りとなったといえる。」旨の記載がある。
ウ 株式会社アスマークが運営するウェブサイトに掲載された「エナジードリンクに関するアンケート調査」(平成23年8月1日公開)と題するウェブページ(甲367)には,全国の10代から40代の男女を対象者としたエナジードリンクに関するアンケート調査の結果として,レッドブルが最も認知度が高く(73.0%),続いて同年5月に発売された「モンスターエナジー」が34.1%で2番目であったが,「エナジードリンクが何かわからない」と回答した人は16.l%であり,エナジードリンクを購入して飲んだことのある商品を選択してもらったところ,半数以上の57.0%の人が購入して飲んだことがある商品はないと回答し,飲んだことのある人が最も多い商品はレッドブルが39.2%,モンスターエナジーが15.1%,レッドブル・シュガーフリーが7.4%,モンスターカオスが6.4%であった旨の記載がある。
(5) エナジードリンクの取引の実情
ア エナジードリンクは,カフェインやアルギニンなどの成分を含有した炭酸飲料であり,1本当たりの小売価格が150円以上の商品を対象としている。エナジードリンク市場は,平成25年の国内市場のシェアは「レッドブル」が550万ケース,「モンスターエナジー」が240万ケースと上位2位のブランドが市場の80%を占め,平成26年もこの2ブランドが80%を占める寡占市場であるが,同年以降は大手メーカーによる新規参入が相次いでいる。
イ エナジードリンクの主な需要者は30代,40代であるが,10代から20代の若年層にも広がりを見せている。
株式会社フォーカスマーケティングの「エナジードリンク市場にフォーカスする」と題したウェブページ(甲317)によれば,エナジードリンクは,週に1日以上飲んでいる人が全体の3割を占め,月に1日以上飲んでいる人で6割を占めています。飲んでいる人と飲んでいない者の2極分化している・・・」,「飲用が習慣化している人(ほぼ毎日+週に4-5日+週に2-3日飲む人)は全体の15%しかいないのに,市場全体の本数の65%を占めています。」,「好調なエナジードリンクを支えているのは強烈なロイヤルカスタマーに依るもの」と分析されている。
また,アイティメディア株式会社が平成26年8月5日に公開した「本命「レッドブル」,では対抗は?-競争激化,エナジードリンク夏の陣」と題するウェブページ(甲366)には,「61.9%がエナジードリンクの飲用経験があり,5人に1人は「それを月1回以上」飲用していることが分かった。」との記載がある。
(6) 本件ゲームアプリの配信事業の展開等
別紙3(2)記載のとおりである。
2 取消事由1(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について
商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに,当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品等がその他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である。
また,同号の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」における「混同の生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(以上,最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。
以下,これを前提に,本件商標の商標法4条1項15号の該当性について判断する。
(1) 原告がその業務において使用する商標について
ア 前記認定事実(1(3)ア)によれば,原告がアサヒ飲料を通じて本件商標の登録出願時までに売り出した原告商品(エナジードリンク)は,別紙4の「モンスターエナジー」,「モンスターカオス」及び「モンスターアブソリュートリーゼロ」であるところ,「モンスターエナジー」の包装容器には原告使用商標1が使用されており,「モンスターアブソリュートリーゼロ」の包装容器には「爪の図柄」及び「ENERGY」の活字書体の色彩が青色である以外は原告使用商標1と同一の構成のものが使用されている。また,「モンスターカオス」は,赤色の「爪の図柄」,その下に白色の特徴のある書体の「MONSTER」,赤色の活字書体の「KHAOS」,白色の活字書体の「ENERGY」を三段に配して構成した標章(別紙5の4。以下,赤色の「爪の図柄」,その下に白色の特徴のある書体の「MONSTER」,赤色の特徴のある書体の「KHAOS」,白色の活字書体の「ENERGY」を三段に配して構成した標章を「原告使用商標4」という。)が使用されている。
イ また,前記認定事実(1(3)イないしエ)によれば,原告及びモンスターエナジージャパン合同会社,原告から原告商品の独占販売権を得たアサヒ飲料は,①原告がスポンサーを務めるイベントや支援する競技選手の競技,支援するバンドのライブ活動の開催等に合わせて原告の使用する商標を付した賞品が当たるといったキャンペーン活動,他社が発売するゲームとタイアップしたキャンペーン活動を行ったほか,②原告が支援する競技選手が参加するイベントを開催して,会場内で原告商品の無料サンプルを配布し,③スポーツ選手の支援活動,エナジードリンク以外の原告の使用する商標を付したタイアップ商品の販売,ソーシャルメディアで新商品の発売やキャンペーン活動等の情報発信を行うなどして,エナジードリンクの広告及び販売促進活動を行ったが,これらの広告及び販売促進活動において使用された商標は,いずれも原告使用商標1(緑色の「爪の図柄」及び「ENERGY」の文字の色彩が異なるものを含む。),原告使用商標2(緑色の「爪の図柄」の左右が異なるものを含む。)及び原告使用商標3であることが認められる。
ウ 以上によれば,原告がエナジードリンクの販売並びにエナジードリンクの販売のための広告及び販売促進活動において使用した商標は,原告使用商標1ないし4であると認められる。そうすると,引用商標の使用に係る具体的態様は,原告使用商標1ないし4(以下,これらを併せて「原告使用商標」という。)というべきであるから,混同を生ずるおそれに係る商標法4条1項15号への該当性の判断に際しては,本件商標と原告使用商標を対比して検討することが相当である。
(2) 原告使用商標の周知著名性について
ア 原告は,本件商標の指定商品中,第29類「マーガリン,その他の食用油脂,コーヒー入り乳飲料,牛乳,ヨーグルト,その他の乳製品,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,豆」,第30類「茶,コーヒー飲料,その他のコーヒー,ココア,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,即席菓子のもと」,第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」,第33類「日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」についての商標登録の無効を求めている。これらの無効請求商品の需要者は,その指定商品の内容からして,一般消費者であるということができるから,原告使用商標の周知著名性は,一般消費者にとって周知,著名であることを要するというべきである。
イ 確かに,前記認定事実(1(3)及び(4))によれば,原告は,本件商標の登録出願時及び登録査定時までに,原告使用商標1が付された,別紙4の「モンスターエナジー」及び「モンスターエナジーアブソリュートリーゼロ」,原告使用商標4が付された「モンスターカオス」の3商品(原告商品)を発売したこと,原告から独占販売権を得たアサヒ飲料は,原告商品について「モンスターエナジー」ブランドとニュースリリースで紹介していたこと,原告商品は好調な売上げを記録し,本件商標の登録出願時までに先に我が国においてエナジードリンクとして認知を得ていたレッドブルに次いで2位の認知度を獲得したこと,原告及びアサヒ飲料は,新商品の発売,イベント等の開催に合わせて原告使用商標を付し,「モンスターエナジー」又は「MONSTER ENERGY」の名称を付した賞品が当たる様々なキャンペーン活動を行ったほか,著名なアスリートを支援して,原告使用商標が付された競技用スーツを着たアスリートが原告使用商標を付した競技道具や車両で競技する姿を見てもらい,また,これらの動画をソーシャルメディアにアップするなどしたほか,イベントのスポンサーとなり,会場内に原告使用商標を付したブースを設けて,原告使用商標を付したスタッフ等が来場者に原告使用商標を付した「モンスターエナジー」ドリンクを無償で配布し,原告使用商標を付した車両を展示し,原告使用商標を付した車両等を走行させるなどすることを通じて,キャンペーンの応募者,視聴者や来場者に原告使用商標の浸透を図ったことが認められ,原告使用商標は,原告商品を愛飲し,また,原告が支援する特定のアスリートに関心を持ち,あるいは原告がスポンサーとなったイベント会場等に来場した一定の需用者層には知られていたということはできる。
しかしながら,そもそも上記の認識の対象となったのは,あくまで原告使用商標である。原告は,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されていた旨主張するが,原告及び原告から我が国において独占販売権を得たアサヒ飲料が本件商標の登録出願時及び登録査定時までに販売した「エナジードリンク」に付した商標,エナジードリンクの販売のための広告及び販売促進活動において使用した商標は,いずれも原告使用商標であり,少なくとも,「MONSTER」の標準文字からなる引用商標1のみをその業務において使用したと認めるに足りる証拠はない。また,前記認定事実によれば,原告(モンスターエナジージャパン合同会社)及びアサヒ飲料は,「MONSTER」あるいはその音訳「モンスター」ではなく,原告使用商標と「モンスターエナジー」又は「MONSTER ENERGY」の名称を用いて,新商品の発売,販売のための広告及び販売促進活動等を行っているのであり(なお,モンスターエナジージャパン合同会社のウェブページには,一部「モンスターガール」,「モンスターファミリー」といった表記も見られるが,「モンスターエナジー ガール」,「モンスターエナジー ファミリー」の略称であると容易に理解されるものでもあるし,いずれにしても「モンスター」ないし「MONSTER」の文字を用いてこれらの活動を行ってきたとは認められない。),この点からも,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」が本件商標の登録出願時及び登録査定時には,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたといえないことが裏付けられる。したがって,この点に関する原告の主張は採用し得ない。
また,前記認定事実(1(4))によれば,エナジードリンクの主要な需要者層は,30代から50代の男性が中心であり,10代から20代の男女にも広がりつつあるが,①エナジードリンクが何か分からないと回答した人が16.1%,57.0%の人がエナジードリンクを購入して飲んだことがないと回答し,②エナジードリンクは,「飲んでいる人と飲んでいない人と飲んでいない者の二極分化」しており,月に1日以上飲んでいる人で6割を占め,「好調なエナジードリンクを支えているのは強烈なロイヤルカスタマーに依るもの」と分析され,③「61.9%がエナジードリンクの飲用経験があり,5人に1人は「それを月に1回以上」飲用していることが分かった」との調査結果があるように,エナジードリンクは,通常の清涼飲料水のような幅広い需要者層が購入するものではないから,原告商品が,エナジードリンクとしてレッドブルに次いで2位の認知度を獲得し,当初の目標を超える売上げを記録しているとしても,限られた需要者層が繰り返し愛飲していることがうかがわれる。したがって,原告使用商標は,無効請求商品の需要者である一般消費者に周知著名であったということはできない。
以上によれば,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は,上記のいずれの点においても周知著名性を認めることはできないし,原告使用商標も,一般消費者に周知著名であったと認めることはできない。
(3) 原告使用商標の独創性について
原告使用商標1は,黒色を背景に,緑色の「爪の図柄」,その下に,白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」と緑色の活字書体である「ENERGY」を二段に配置する標章であり,原告使用商標2は,黒色を背景に,右側に緑色の「爪の図柄」を,その右側に白色の特徴のある書体である「MONSTER」と緑色の活字書体である「ENERGY」を二段に配置する標章であり,原告使用商標3は,黒色を背景に緑色の「爪の図柄」の標章であり,原告使用商標4は,黒色を背景に,赤色の「爪の図柄」,その下に,白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,赤色の特徴的なデザインの書体である「KHAOS」,白色の活字書体である「ENERGY」を三段に配置する標章である。
そこで検討すると,白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,活字書体である「ENERGY」とを二段に配して構成する原告使用商標1及び原告使用商標2の文字部分は,日本人にもなじみのある英語の「MONSTER」と「ENERGY」を組み合わせてなるものであるから,独創性は低いといえる。また,原告使用商標4も,少なくとも「MONSTER」及び「ENERGY」の文字部分については同様のことがいえる。他方で,原告使用商標1及び原告使用商標2の緑色の「爪の図柄」の構成部分,原告使用商標3並びに原告使用商標4の赤色の「爪の図柄」の構成部分は,先端部分が左向きに尖り,下方に向かって不規則な凹凸を示しながら細くなっていく「爪」状の3本を平行して並べて配置し,2本目は左右よりは長く描かれる構成からなるものであって,独創性を有するものである。
したがって,原告使用商標1ないし4は,その構成全体からすれば,独創性のある商標であるといえる。
(4) 本件商標と原告使用商標の類似性について
ア 本件商標について
本件商標は,標準文字で「モンスターストライク」とする商標であり,日本人にもなじみのある「MONSTER(モンスター)」と「STRIKE(ストライク)」の英語を組み合わせた辞書等に記載のない造語であるが,「モンスター」の文字部分と「ストライク」の文字部分は同書同大であり,両文字部分の間に間隔もなく,「モンスターストライク」の称呼も一気によどみなく称呼することが可能であって,本件商標の構成から「モンスター」の部分だけを分離して取り出す理由はないから,「モンスターストライク」の文字部分全体が不可分一体のものとして把握されるものと認めるのが相当であり,本件商標の構成中「モンスター」の部分を要部として抽出するのは相当ではない。
イ 原告使用商標について
(ア) 複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,その構成部分全体によって他人の商標と識別されるから,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することは原則として許されないが,取引の実際においては,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,必ずしも常に構成部分全体によって称呼,観念されるとは限らず,その構成部分の一部だけによって称呼,観念されることがあることに鑑みると,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別機能として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部を要部として取り出し,これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されると解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第95号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻509頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
(イ) 原告使用商標1は,別紙5の1のとおり,黒色を背景に,緑色の「爪の図柄」,その下に,白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」と緑色の活字書体である「ENERGY」を二段に表して配置する結合商標であり,原告使用商標2は,別紙5の2のとおり,黒色を背景に,左側に緑色の「爪の図柄」を,その右側に白色の特徴のある書体である「MONSTER」と緑色の活字書体である「ENERGY」を二段に表して配置する結合商標であるところ,原告使用商標1及び原告使用商標2のうち,緑色の「爪の図柄」の部分と,「MONSTER」及び「ENERGY」の文字部分とは,相互に一定の間隔を空けて,重なり合うことなく配置されているから,上記各構成部分は,それぞれが独立したものであるとの印象を与え,視覚上分離して認識されるものと認められる。
そして,上記文字部分は,白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」と,「MONSTER」の文字よりも小さく緑色の活字書体である「ENERGY」を二段に表して配して構成されるが,両者が近接してまとまりよく配されている上に,「ENERGY」の文字部分が緑色で強調されていることに鑑みると,「MONSTER」の文字部分だけではなく,「MONSTER」及び「ENERGY」の文字部分全体が分離して観察され,この部分が独立して自他商品識別標識としての機能を有するものと認めるのが相当である。
同様に,原告使用商標4は,黒色を背景に,赤色の「爪の図柄」,その下に,白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,赤色の特徴的なデザインの書体である「KHAOS」と白色の活字書体である「ENERGY」を三段に表して配置する結合商標であるが,緑色の「爪の図柄」の部分と,「MONSTER」,「KHAOS」及び「ENERGY」の文字部分とは,相互に一定の間隔を空けて,重なり合うことなく配置されているから,上記各構成部分は,それぞれが独立したものであるとの印象を与え,視覚上分離して認識されるものであり,上記文字部分は,白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,赤色の特徴的なデザインの書体である「KHAOS」と,これらの文字よりも小さく白色の活字書体である「ENERGY」を三段に表して配して構成されるが,両者が近接してまとまりよく配されていることから,この文字部分全体が分離して観察され,この部分が独立して自他商品識別機能としての機能を有するものと認めるのが相当である。
(ウ) 原告使用商標3は,別紙5の3のとおり,緑色の「爪の図柄」からなる商標である。
ウ 本件商標と原告使用商標の類否について
(ア) 本件商標は,「モンスターストライク」の称呼を生じ,また,日本人にもなじみのある英語の「MONSTER」(モンスター)と「STRIKE」(ストライク)の文字を組み合わせたものであり,「怪物をたたく」という観念を生じさせるものである。
また,前記認定事実(1(6))によれば,「モンスターストライク」は,著名とまではいえないものの,被告が配信し提供する本件ゲームアプリとして相当数の需要者に広く知られていたといえるから,ゲームに関心のある需要者層を中心に,「モンスターストライク」の商標は,本件ゲームアプリの観念も生じるといえる。
(イ) 他方,前記イ(イ)のとおり,原告使用商標1は,黒色を背景に,緑色の「爪の図柄」,その下に白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,その下に緑色の活字書体で「ENERGY」を,段を違えて構成する結合商標であり,原告使用商標2は,黒色を背景に,緑色の「爪の図柄」とその右側に白色の特徴のある書体で「MONSTER」,その下に段を違えて緑色の活字書体で「ENERGY」と配置するデザインの結合商標であり,いずれも本件商標と外観においてその構成を異にするものである。そして,原告使用商標1及び原告使用商標2の要部である「MONSTER ENERGY」の文字部分は,日本人にもなじみのある英語の「MONSTER」と「ENERGY」を組み合わせたものであり,文字部分全体から「モンスターエナジー」の称呼を生じ,「怪物的な力」との観念を生じさせるものであり,本件商標と区別し得るものである。
また,原告使用商標4も,黒色を背景に,赤色の「爪の図柄」,その下に白色の特徴的なデザインの書体である「MONSTER」,赤色の特徴的なデザインの書体である「KHAOS」と白色の活字書体で「ENERGY」を三段に配して構成する結合商標であり,本件商標と外観においてその構成を異にするものである。そして,原告使用商標4の要部である「MONSTER KHAOS ENERGY」の文字部分は,日本人になじみのある英語の「MONSTER」,「ENERGY」と,外来語の「KHAOS」を組み合わせたものであるが,文字部分全体から「モンスター カオス エナジー」の称呼が生じ,特定の観念を生じさせるものではなく,本件商標と区別し得るものである(なお,原告使用商標4の文字部分のうち,「ENERGY」の文字部分が,「MONSTER KHAOS」よりも小さく,活字書体であることから,原告使用商標4の要部が「MONSTER」,「KHAOS」であるとしても,称呼,観念において,本件商標と明確に区別し得るものであり,上記認定を左右するものではない。)。
さらに,原告使用商標3は,緑色の「爪の図柄」からなるものであり,本件商標と外観において明確に異なるものであり,特定の称呼,観念を生じさせるものではないから,本件商標とは明確に区別し得るものである。
(ウ) これに対し,原告は,本件商標と原告の使用に係る商標(引用商標及び個別製品名)は,一般に商品出所識別標識として看者を最も強く印象づける語頭に「モンスター」の文字,「モンスター」の音(称呼),「モンスター」の観念を包含する点を共通にし,外観,称呼及び観念の印象が類似する旨主張する。
しかし,本件商標の構成中「モンスター」の部分を要部として抽出するのは相当ではなく,「モンスターストライク」の文字部分全体から自他商品の識別機能を有しているものであること,原告使用商標1及び原告使用商標2の文字構成部分のうち「MONSTER」の文字部分だけが要部ではなく,「MONSTER」,「ENERGY」の文字部分全体が独立して自他商品識別標識としての機能を有するものであること,原告使用商標4の文字構成部分のうち「MONSTER」の文字部分だけが要部ではなく,「MONSTER」,「KHAOS」,「ENERGY」の文字部分全体が独立して自他商品識別標識としての機能を有するものであることは,前記(ア)及び(イ)のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。
(エ) 以上によれば,本件商標と原告使用商標は,外観,観念及び称呼において明瞭に区別することができるから,類似性の程度は低いといえる。
(5) 需要者の共通性,その他取引の実情等
前記(2)アのとおり,無効請求商品の需要者は,一般消費者であり,原告商品の「エナジードリンク」の消費者と一部において重複する。しかし他方で,前記(2)イのとおり,原告商品のエナジードリンクの主な需要者は,30代から50代の男性が中心であり,10代から20代の男女にも広がりつつあるが,通常の清涼飲料水のような幅広い需要者層が購入するものではなく,一定の需要者層が繰り返しエナジードリンクを購入するものであることや,前記(4)ウ(ア)のとおり,被告の配信する「モンスターストライク」(本件ゲームアプリ)は,本件商標の登録出願時及び登録査定時までに,日常的にゲームをする一定の需要者層を中心に相当程度の認知度を獲得していたことを踏まえると,本件商標の「モンスターストライク」を付した無効請求商品,とりわけ清涼飲料水に接した需要者が,その商品が原告の製造販売する清涼飲料水であると誤認混同するおそれがあるとは認め難い。
なお,原告は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告商品は,少なくともエナジードリンク市場において,周知著名性を獲得しており,本件商標の指定商品中の「第32類 清涼飲料,果実飲料,飲料野菜ジュース」の商品概念は,「エナジードリンク」を包含するものであるから,本件商標がその指定商品に使用された場合,原告の業務に係る商品とその出所について誤認混同を生じるおそれがあり,原告のMONSTERブランドの出所表示力を希釈し,その顧客吸引力にフリーライドするものであり,本件商標は,少なくともエナジードリンクに関する限り,商標法4条1項15号に該当する旨主張するが,原告使用商標と本件商標は,外観,観念及び称呼において明瞭に区別することができ,類似性の程度は低いといえることは前記(4)のとおりであるから,エナジードリンクに関する場合に限定しても,原告の主張は採用することができない。
(6) 小括
以上によれば,本件商標と原告使用商標(独創性がある商標であるとはいえるが,一般需要者に周知著名であるとはいえない。)は,外観,観念及び称呼において明瞭に区別することができ,類似性の程度は低いから,無効請求商品と原告商品の需要者層において一部重なる面があるとしても,本件商標が無効請求商品に使用された場合,需要者において,本件商標から原告使用商標を連想し,原告の業務に係る商品,原告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると,その商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。
したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものではないというべきである。
3 取消事由2(商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について
原告は,前記第3の2(1)のとおり,本件商標と引用商標の類似性の程度は高く,本件商標に接した取引者及び需要者が原告及びその「MONSTER」ブランドを直ちに想起,連想することは明らかであり,本件商標の使用は,原告が「MONSTER」ブランドについて獲得した信用力,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず,その経済的な価値を低下させるものであるとして,本件商標は,公正な取引秩序の維持を目指す商標法の目的,国際信義の精神に反するものであり,社会一般の道徳観念に反するものであるから,本件商標は公の秩序を害するおそれがある商標というべきであり,商標法4条1項7号に該当する旨主張する。
しかし,①本件商標と原告使用商標は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではないこと,②原告使用商標はいずれも一般消費者に周知著名とはいい難いこと,③無効請求商品に本件商標が使用されたとしても,需要者において,本件商標から原告使用商標を連想し,原告の業務に係る商品,原告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると,その商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできないことは,前記2のとおりであるから,原告の上記主張は,その前提を欠くものというほかない。
したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するものとはいえない。
4 結論
以上によれば,本件商標が商標法4条1項15号,同項7号に該当しないと判断した本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由は理由がなく,原告の請求は棄却されるべきである。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
(裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 中村恭 裁判官 岡山忠広)
別紙
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広範囲に車移動が必要な、幹線道路沿いや住宅街等の目立つ場所でのPR
※全国への出張対応も可能ですので、ご要望をお聞かせください。
選挙ドットウィン!の「どぶ板広報PR支援」は、選挙立候補(予定)者様の地獄の政治活動を「営業力」「交渉力」「行動力」でもって迅速にお応えいたします。
「全国統一地方選挙」・「衆議院議員選挙」・「参議院議員選挙」・「都道府県知事選挙」・「都道府県議会議員選挙」・「東京都議会議員選挙」・「市長選挙」・「市議会議員選挙」・「区長選挙」・「区議会議員選挙」・「町長選挙」・「町議会議員選挙」・「村長選挙」・「村議会議員選挙」など、いずれの選挙にもご対応させていただいておりますので、立候補をご検討されている選挙が以下の選挙区エリアに該当するかご確認の上、お問い合わせいただけますようお願いいたします。
(1)政治活動/選挙運動ポスター貼り ☆祝!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
勝つ!選挙広報支援事前ポスター 政治選挙新規掲示ポスター貼付! 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。
(2)圧倒的に政界No.1を誇る実績! 政治ポスター(演説会告知|政党|個人|二連三連)掲示交渉実績!
地獄のポスター貼りやります! ドブ板選挙ポスタリストが貼る! ポスター掲示交渉実績を大公開!
政治ポスター貼りドットウィン!「ドブ板選挙を戦い抜く覚悟のあなたをぜひ応援したい!」事前街頭PRおよび選挙広報支援コンサルティング実績!
(3)今すぐ無料でお見積りのご相談 ☆大至急スピード無料見積もり!選挙広報支援プランご提案
ポスター掲示難易度ランク調査 ご希望のエリア/貼付箇所/貼付枚数 ☏0120-860-554(貼ろう!ここよ!) ✉info@senkyo.win
「政治活動用のポスター貼り代行」や「選挙広報支援プラン」の概算お見積りがほしいというお客様に、選挙ドットウィンの公職選挙法に抵触しない広報支援プランのご提案が可能です。
(4)政界初!世界発!「ワッポン」 選挙管理委員会の認証確認済みPR型「ウィン!ワッポン」
完全無料使い放題でご提供可能! 外壁街頭ポスター掲示貼付ツール 1枚から対応/大至急/一斉貼付け!
「ガンガン注目される訴求型PRポスターを貼りたい!」というお客様に、選挙ドットウィンの「ウィン!ワッポン」を完全無料使い放題でご提供する、究極の広報支援ポスター新規掲示プランです。
(5)選べるドブ板選挙広報支援一覧 選挙.WIN!豊富な選挙立候補(予定)者広報支援プラン一覧!
政治家/選挙立候補予定者広報支援 祝!当選!選挙広報支援プロ集団 世のため人のため「SENKYO.WIN」
アポイントメント獲得代行/後援会イベントセミナー集客代行/組織構築支援/党員募集獲得代行(所属党本部要請案件)/演説コンサルティング/候補者ブランディング/敵対陣営/ネガティブキャンペーン(対策/対応)
(6)握手代行/戸別訪問/ご挨拶回り 御用聞きによる戸別訪問型ご挨拶回り代行をいたします!
ポスター掲示交渉×戸別訪問ご挨拶 100%のリーチ率で攻める御用聞き 1軒でも行くご挨拶訪問交渉支援
ご指定の地域(ターゲットエリア)の個人宅(有権者)を1軒1軒ご訪問し、ビラ・チラシの配布およびアンケート解答用紙の配布収集等の戸別訪問型ポスター新規掲示依頼プランです。
(7)地域密着型ポスターPR広告貼り 地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)
街頭外壁掲示許可交渉代行/全業種 期間限定!貴社(貴店)ポスター貼り サイズ/枚数/全国エリア対応可能!
【対応可能な業種リスト|名称一覧】地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)貼り「ガンガン注目される訴求型PRポスターを貼りたい!」街頭外壁掲示ポスター新規掲示プランです。
(8)貼る専門!ポスター新規掲示! ☆貼!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
政治活動/選挙運動ポスター貼り 勝つ!選挙広報支援事前ポスター 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。
(9)選挙立札看板設置/証票申請代行 絶対ここに設置したい!選挙立札看板(選挙事務所/後援会連絡所)
選挙事務所/後援会連絡所届出代行 公職選挙法の上限/立て札看板設置 1台から可能な選挙立札看板設置
最強の立札看板設置代行/広報(公報)支援/選挙立候補者後援会立札看板/選挙立候補者連絡所立札看板/政治活動用事務所に掲示する立て札・看板/証票申請代行/ガンガン独占設置!