裁判年月日 令和 4年 8月30日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令3(ワ)2722号
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判結果 棄却 文献番号 2022WLJPCA08309007
出典
裁判所ウェブサイト
裁判年月日 令和 4年 8月30日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令3(ワ)2722号
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判結果 棄却 文献番号 2022WLJPCA08309007
原告 株式会社丸忠山田
同訴訟代理人弁護士 笠原基広
野村信之
被告 有限会社つ ぎ館丸忠山田石材店
同訴訟代理人弁護士 小林幸夫
河部康弘
藤沼光太
同補佐人弁理士 瀧野文雄
今井貴子
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求等
1 被告は、別紙被告標章目録記載の各標章(以下、番号に応じて「被告標章1」などといい、被告標章1から5-6を併せて「各被告標章」という。)を、店舗看板、立て看板及び店舗庇に付して展示してはならない。
2 被告は、各被告標章を、名刺に付して、頒布してはならない。
3 被告は、各被告標章を、http://以下省略のウェブページ(以下「本件ウェブページ」という。)に付して、電磁的方法により提供してはならない。
4 被告は、本件ウェブページから各被告標章を付した画像を抹消せよ。
5 被告は、原告に対し、852万5000円及びこれに対する令和3年2月18日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
6 被告は、「有限会社つ ぎ館丸忠山田石材店」という商号を使用してはならない。
7 被告は、東京法務局府中支局において平成17年7月12日に登記された「有限会社山田石材店」から「有限会社つ ぎ館丸忠山田石材店」への商号変更登記の抹消登記手続をせよ。
8 仮執行宣言
第2 事案の概要
本件は、原告が、被告に対し、
① 被告による被告標章1から4、5-4、5-6の使用は、原告の有する商標登録第4093956号の商標権(以下「本件商標権1」という。)を侵害し、被告標章5-1、5-2の使用は、原告の有する商標登録第5041731号の商標権(以下「本件商標権2」という。)を侵害し、被告標章5-2、5-5の使用は、商標登録第5041732号の商標権(以下「本件商標権3」といい、本件商標権1から3を併せて「本件各商標権」という。)を侵害すると主張して、本件各商標権による差止請求権(商標法36条1項)に基づき、各被告標章を、店舗看板等に付して展示すること、名刺に付して頒布すること、本件ウェブページに付して電磁的方法により提供することの差止めを求めるとともに、廃棄等請求権(同条2項)に基づき、本件ウェブページからの各被告標章を付した画像の抹消を求め、
② 原告は上記各侵害により損害を被ったと主張して、各不法行為による損害賠償請求権に基づき、852万5000円及びこれに対する不法行為より後の日である令和3年2月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の法定利率の範囲内又は民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求め、
③ 被告が不正の目的をもって原告と誤認されるおそれのある商号を使用している等と主張して、会社法8条2項所定の差止請求権に基づき、被告の商号の使用差止め及び商号変更登記の抹消登記手続を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)
⑴ 当事者等
ア 原告は、「造園外構工事の設計施行請負及び資材の販売、墓石・石材工事の設計施行請負、霊園・石材・墓石等の販売、一般土木工事の設計施行請負、飲食店の経営、葬祭業及び墓石管理業務」等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨)
イ 被告は、石材工事、墓地工事、墓寺休憩所の経営等を目的とする有限会社である。(乙2)
ウ 原告代表者であるA(昭和25年生まれ、以下「a」という。)及び被告代表者であるB(昭和43年生まれ、以下「b」という。)は、いずれもC(以下「c」という。)の孫であり、aは、cの長男であるD(以下「d」という。)の子であり、bは、cの三男であるE(以下「e」という。)の子である。その他、同人らやその親族の名前、親族関係等は、別紙親族関係図のとおりである。(争いがない事実)
⑵ 本件各商標権等
原告は、次の本件各商標権等を有する。(争いがない事実(甲1~6)のほか、甲15、16)
ア 本件商標権1
登録番号 商標登録第4093956号
出願年月日 平成8年5月28日
登録年月日 平成9年12月19日
登録商標 別紙本件商標等目録記載1のとおり(以下「本件商標1」という。)
商品及び役務の区分 第37類
指定役務 建築一式工事、しゅんせつ工事、土木一式工事、舗装工事、石工事、墓石工事、ガラス工事、鋼構造工事、左官工事、大工工事、タイル・れんが又はブロック工事、建具工事、鉄筋工事、塗装工事、とび・土工又はコンクリート工事、内装仕上工事、板金工事、防水工事、屋根工事、管工事、機械器具設置工事、さく井工事、電気工事、電気通信工事、熱絶縁工事
イ 原告商標権
登録番号 商標登録第4157372号
出願年月日 平成8年5月28日
登録年月日 平成10年6月19日
登録商標 別紙本件商標等目録記載4のとおり(以下「原告商標」という。)
商品及び役務の区分 第42類
指定役務 食物の提供、葬儀の執行、墓地又は納骨堂の提供
ウ 本件商標権2
登録番号 商標登録第5041731号
出願年月日 平成18年3月17日
登録年月日 平成19年4月20日
登録商標 別紙本件商標等目録記載2のとおり(標準文字)(以下「本件商標2」という。)
商品及び役務の区分 第3類
指定商品 線香
商品及び役務の区分 第31類
指定商品 生花
商品及び役務の区分 第37類
指定役務 建築一式工事、しゅんせつ工事、土木一式工事、舗装工事、石工事、墓石の設置工事、造園工事、ガラス工事、鋼構造物工事、左官工事、大工工事、タイル・れんが又はブロック工事、建具工事、鉄筋工事、塗装工事、とび・土工又はコンクリート工事、内装仕上工事、板金工事、屋根工事、管工事、機械器具設置工事、さく井工事、電気工事、熱絶縁工事
商品及び役務の区分 第45類
指定役務 葬儀並びに法事のための施設の提供、墓地管理
エ 本件商標権3
登録番号 商標登録第5041732号
出願年月日 平成18年3月17日
登録年月日 平成19年4月20日
登録商標 別紙本件商標等目録記載3のとおり(標準文字)(以下「本件商標3」という。)
商品及び役務の区分 第3類
指定商品 線香
商品及び役務の区分 第31類
指定商品 生花
商品及び役務の区分 第37類
指定役務 建築一式工事、しゅんせつ工事、土木一式工事、舗装工事、石工事、墓石の設置工事、造園工事、ガラス工事、鋼構造物工事、左官工事、大工工事、タイル・れんが又はブロック工事、建具工事、鉄筋工事、塗装工事、とび・土工又はコンクリート工事、内装仕上工事、板金工事、屋根工事、管工事、機械器具設置工事、さく井工事、電気工事、熱絶縁工事
商品及び役務の区分 第45類
指定役務 葬儀並びに法事のための施設の提供、墓地管理
⑶ 被告による各被告標章の使用等
被告は、肩書地所在の店舗(以下「被告店舗」という。)において、都立多磨霊園(以下「多磨霊園」という。)に墓を有する者を取引者、需要者として、店頭での取引を基本として営業している。
被告は、平成15年12月末頃から、被告店舗の庇に被告標章1を、看板に被告標章2、3をそれぞれ付して、同庇及び同看板を展示している。
被告は、被告の名刺に社名の上に被告標章4を付して頒布している。
また、被告は、遅くとも令和2年7月9日以降、「iタウンページ」という広告用の本件ウェブサイトに被告標章5-1、5-2を付して電磁的方法により提供しており、被告標章5-4から5-6に相当する表示を同ウェブサイトにしている。
(本項につき、争いがない事実のほか、甲8、10、11、弁論の全趣旨)
⑷ 商号変更登記の存在
被告について、平成17年7月12日、東京法務局府中支局において「有限会社山田石材店」から「有限会社つ ぎ館丸忠山田石材店」への商号変更(以下「本件商号変更」という。)の登記がされた。(乙2)
⑸ 被告の各商標権
被告は、次の各商標権(以下、順に「被告商標権1」などという。)を有する。(乙8)
ア 被告商標権1
登録番号 商標登録第4792999号
出願年月日 平成16年1月23日
登録年月日 平成16年8月6日
登録商標 別紙被告商標目録記載1のとおり(以下「被告商標1」という。)
商品及び役務の区分 第19類
指定商品 墓用石材、その他の石材、灯ろう、墓標及び墓碑用銘板(金属製のものを除く。)、石製彫刻、コンクリート製彫刻、大理石製彫刻、花こう岩、大理石、玉石、その他の建築用又は構築用の非金属鉱物、陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物
商品及び役務の区分 第40類
指定役務 石材の加工
イ 被告商標権2
登録番号 商標登録第6238271号
出願年月日 平成31年3月15日
登録年月日 令和2年3月23日
登録商標 別紙被告商標目録記載2のとおり(以下「被告商標2」という。)
商品及び役務の区分 第19類
指定商品 石製・コンクリート製又は大理石製の墓石、墓標及び墓碑用銘板(金属製のものを除く。)、墓用石材、その他の石材、花こう岩、大理石、玉石、その他の建築用又は構築用の非金属鉱物、陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物、灯ろう、石製彫刻、コンクリート製彫刻、大理石製彫刻
商品及び役務の区分 第37類
指定役務 墓石の修理又は保守、墓の掃除
商品及び役務の区分 第40類
指定役務 墓石の戒名の加工、石碑用石材の加工又は彫刻、その他の石材の加工
ウ 被告商標権3
登録番号 商標登録第6252203号
出願年月日 平成31年3月15日
登録年月日 令和2年5月18日
登録商標 別紙被告商標目録記載3のとおり(以下「被告商標3」という。)
商品及び役務の区分 第3類
指定商品 線香、その他の薫料
商品及び役務の区分 第19類
指定商品 石製・コンクリート製又は大理石製の墓石、墓標及び墓碑用銘板(金属製のものを除く。)、墓用石材、その他の石材、花こう岩、大理石、玉石、その他の建築用又は構築用の非金属鉱物、陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物、灯ろう、石製彫刻、コンクリート製彫刻、大理石製彫刻
商品及び役務の区分 第31類
指定商品 生花
商品及び役務の区分 第37類
指定役務 墓石・石碑の設置工事、墓所工事、石工事、その他の建設工事、墓石の修理又は保守、墓の掃除
商品及び役務の区分 第40類
指定役務 墓石の戒名の加工、石碑用石材の加工又は彫刻、その他の石材の加工
商品及び役務の区分 第43類
指定役務 休憩のための施設の提供、墓寺休憩所における飲食物の提供、その他の飲食物の提供
商品及び役務の区分 第45類
指定役務 墓地の管理、墓地又は納骨堂の提供、葬儀並びに法事のための施設の提供、葬儀・法要の執行、造花の花輪その他の葬祭用具の貸与
2 争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は、次のとおりである。
① 被告が本件商標1の指定役務に類似する役務に本件商標1に類似する被告標章1から4、5-4、5-6を使用しているか。
② 被告が本件商標2の指定役務に類似する役務に本件商標2に類似する被告標章5-1、5-2を使用しているか。
③ 被告が本件商標3の指定役務に類似する役務に本件商標3に類似する被告標章5-2、5-5を使用しているか。
④ 被告標章5-1、5-2は被告が自己の名称を普通の方法で表示するものか。
⑤ 各被告標章の使用が登録商標を使用するものか。
⑥ 本件ウェブページから各被告標章を付した画像を抹消する必要があるか。
⑦ 本件各商標権の侵害により原告が被った損害及び額
⑧ 原告の本件各商標権に係る各請求が権利濫用か。
⑨ 被告が、不正の目的をもって、原告と誤認されるおそれのある商号を使用しており、原告はこれによって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあるか。
⑴ 争点①(被告が本件商標1の指定役務に類似する役務に本件商標1に類似する被告標章1から4、5-4、5-6を使用しているか。)について
(原告の主張)
ア 本件商標1は、漢字の「忠」を丸で囲んで成り、「マルチュー」、「マルタダ」、「チュータダ」との称呼を生じる。「忠」の部分は、まごころを込めてよく務めを果たすことを表すものであり、丸の部分は屋号、商号等に特に使用され囲まれた文字を強調するものであって、ひいては原告との観念が生じる。
被告標章1、及び、被告標章2から4、5-4、5-6のうち漢字の「忠」を丸で囲んだ部分は、出所識別表示として強く支配的な印象を与え、特に取引者、需要者の注意をひく。これらは、漢字の「忠」を丸で囲んで成り、本件商標1と、ハネ、テン、ハライ等の仕方に軽微な差はあるものの、外観はほぼ同一であり、称呼、観念は同一であって、類似する。
イ 被告の役務である石材工事、墓石工事は、本件商標1の指定役務である土木工事一式、石工事又は墓石の設置工事に含まれる。
ウ 原告と被告は、近接して所在し、いずれも、多磨霊園に墓を新たに増設する者や墓の改築や修補を望む者を取引者、需要者としており、需要者等は、代金が高額になる墓石工事において、業者の取引実績、信頼、評判を重視するから標章に注意を払う。また、原告と被告は、取引方法も同様である。
このような取引の実情も勘案すると、本件商標1と被告標章1から4、5-4、5-6は、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるといえ、したがって、被告は、本件商標1の指定役務に類似する役務に本件商標1に類似する被告標章1から4、5-4、5-6を使用しているものである。
(被告の主張)
ア 本件商標1は、漢字の「忠」を丸で囲んで成り、「マルチュウ」との称呼を生じる。一般に漢字等を丸で囲んだものは社章や暖簾記号として使用されており、本件商標1は、大正12年の多磨霊園の開園以降、c又は被告の業務を表すものとして用いられてきた被告標章1に類似するから、被告との観念が生じる。
被告標章1は、外観と称呼において本件商標1に類似し、本件商標1に類似する。
被告標章2は、「有限会社山田」という文字、漢字の「忠」を丸で囲んだもの、「石材店」という文字から成る。被告標章2は、構成する文字数が少なく平易な漢字で書されていることから一連一体に認識される。したがって、被告標章2は「ユウゲンガイシャヤマダマルチュウセキザイテン」との称呼が生じ、旧有限会社山田石材店である被告との観念が生じるものである。そうすると、被告標章2は、本件商標1と外観と称呼が著しく異なり、観念も異なるから、本件商標1に類似しない。
被告標章3は、漢字の「忠」を丸で囲んだもの、「山田石材店」という文字から成る。このうち、漢字の「忠」を丸で囲んだものが出所表示として強く支配的な印象を与えるとはいえず、その他の部分に識別力がないともいえない。したがって、被告標章3は、「マルチュウヤマダセキザイテン」との称呼が生じ、旧有限会社山田石材店である被告との観念が生じるものである。そうすると、被告標章3は、本件商標1と外観と称呼が著しく異なり、観念も異なるから、本件商標1に類似しない。
被告標章4は、外観と称呼において本件商標1に類似し、本件商標1に類似する。
被告標章5-4、5-6は、それぞれ、「つなぎや」、「有限会社山田石材店」等という表記と共に枠内に一体としてまとまりよく配置されており、すぐ傍に横一列に一体として被告の商号である「有限会社つなぎ館丸忠山田石材店」と記載されているから、「つなぎや」、「有限会社山田石材店」等と一体として構成される結合商標の一部である。このうち、漢字の「忠」を丸で囲んだものが出所表示として強く支配的な印象を与えるとはいえず、その他の部分に識別力がないともいえない。したがって、被告標章5-4は「ツナギヤマルチュウユウゲンガイシャヤマダセキザイテン」との称呼が生じ、また、被告標章5-6は、「ツナギヤマルチュウ」又は「ツナギヤマルチュウユウゲンガイシャヤマダセキザイテン」との称呼が生じ、いずれも、旧有限会社山田石材店である被告との観念が生じるものである。そうすると、被告標章5-4、5-6は、本件商標1と外観と称呼が著しく異なり、観念も異なるから、本件商標1に類似しない。
イ 被告は、土木一式工事、石工事、墓石の設置工事は行っていない。被告標章1は、商品である「墓用石材、墓標、墓石」等の販売(墓石等の設置は、墓石等の販売の付随行為として行っているにすぎない。)に際し使用し、被告標章2から4、5-4、5-6は、商品である「墓用石材、墓標、墓石」等の販売、「墓石の修理、保守」、「墓の掃除」に使用する商品の販売や役務の提供に使用しており、本件商標1の指定役務とは異なる。
ウ 以上から、被告は、本件商標1に類似する被告標章1、4を使用するが、本件商標1の指定役務に類似する役務には使用しておらず、また、被告標章2、3、5-4、5-6は、本件商標1に類似せず、被告は、これらを本件商標1の指定役務に類似する役務に使用していない。
⑵ 争点②(被告が本件商標2の指定役務に類似する役務に本件商標2に類似する被告標章5-1、5-2を使用しているか。)について
(原告の主張)
ア 本件商標2は、漢字の「丸忠」と「山田」を結合させて成り、「マルチューヤマダ」、「マルタダヤマダ」、「マルチュー」、「マルタダ」との称呼を生じる。「丸忠」の部分は造語であり、まごころを込めてよく務めを果たすことを表す「忠」を丸で囲んでいることを表すものであり、「山田」の部分は一般的に多く見られる日本人の名字であり、これらが結合することにより、「山田」という者がまごころを込めた役務提供を行う様を表し、ひいては原告との観念が生じる。
被告標章5-1「ユウゲンカイシャツナギヤマルチュウヤマダセキザイテン」のうち「マルチュウヤマダ」の部分は、出所識別表示として強く支配的な印象を与え、特に取引者、需要者の注意をひく。同部分は、片仮名の「マルチュウ」と「ヤマダ」を結合させて成り、「マルチューヤマダ」との称呼を生じる。被告標章5-1は、本件商標2と、称呼、観念が同一であり、類似する。
被告標章5-2「有限会社つなぎ館丸忠山田石材店」のうち「丸忠山田」の部分は、出所識別表示として強く支配的な印象を与え、特に取引者、需要者の注意をひく。同部分は、漢字の「丸忠」と「山田」を結合させて成り、「マルチューヤマダ」、「マルタダヤマダ」との称呼を生じる。被告標章5-2は、本件商標2と、外観、称呼、観念のいずれも同一であり、類似する。
イ 被告の役務である石材工事、墓石工事は、本件商標2の指定役務である土木工事一式、石工事又は墓石の設置工事に含まれる。
ウ 取引の実情(前記⑴(原告の主張)ウ)も勘案すると、本件商標2と被告標章5-1、5-2は、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるといえ、したがって、被告は、本件商標2の指定役務に類似する役務に本件商標2に類似する被告標章5-1、5-2を使用しているものである。
(被告の主張)
ア 本件商標2は、「丸忠山田」の文字によって成り、「マルチュウヤマダ」との称呼が生じる。本件商標2には特定の観念は生じない。
被告標章5-1は、「ユウゲンガイシャツナギヤマルチュウマダセキザイテン」と会社の商号を表記して成る。このうち、「マルチュウヤマダ」の部分が出所表示として強く支配的な印象を与えるとはいえず、その他の部分に識別力がないともいえない。したがって、被告標章5-1は、「ユウゲンガイシャツナギヤマルチュウヤマダセキザイテン」との称呼が生じ、被告との観念が生じるものである。そうすると、被告標章5-1は、本件商標2と外観と称呼が著しく異なり、観念も異なるから、本件商標2に類似しない。
被告標章5-2は、「有限会社つなぎ館丸忠山田石材店」と会社の商号を表記して成る。このうち、「丸忠山田」の部分が出所表示として強く支配的な印象を与えるとはいえず、その他の部分に識別力がないともいえない。したがって、被告標章5-2は、「ユウゲンガイシャツナギヤマルチュウヤマダセキザイテン」との称呼が生じ、被告との観念が生じるものである。そうすると、被告標章5-2は、本件商標2と外観と称呼が著しく異なり、観念も異なるから、本件商標2に類似しない。
イ 被告標章5-1、5-2は、商品である「墓用石材、墓標、墓石」等の販売、「墓石の修理、保守」、「墓の掃除」に使用する商品の販売や役務の提供に使用しており、本件商標2の指定役務とは異なる。
ウ 以上から、被告標章5-1、5-2は、本件商標2に類似せず、また、被告は、これらを本件商標2の指定役務に類似する役務にも使用していない。
⑶ 争点③(被告が本件商標3の指定役務に類似する役務に本件商標3に類似する被告標章5-2、5-5を使用しているか。)について
(原告の主張)
ア 本件商標3は、平仮名の「つなぎ」と漢字の「館」を結合させて成り、「ツナギカン」、「ツナギヤカタ」、「ツナギ」との称呼を生じる。「つなぎ」の部分は、つなぐことを表すものであり、「館」の部分は、建物や施設を表し、これらが結合することにより、建物において何か複数のものをつなぎあわせる様を表し、ひいては丸忠が提供する休憩所との観念が生じる。
被告標章5-2「有限会社つなぎ館丸忠山田石材店」のうち「つなぎ館」の部分は、出所識別表示として強く支配的な印象を与え、特に取引者、需要者の注意をひく。同部分は、平仮名の「つなぎ」と漢字の「館」を結合させて成り、「ツナギカン」、「ツナギヤ」との称呼を生じる。被告標章5-2は、本件商標3と、外観、称呼、観念のいずれも同一であり、類似する。
被告標章5-5「つなぎ館」は、平仮名の「つなぎ」と漢字の「館」を結合させて成り、「ツナギカン」、「ツナギヤ」との称呼を生じる。被告標章5-5は、本件商標3と、外観、称呼、観念のいずれも同一であり、類似する。
イ 被告の役務である石材工事、墓石工事は、本件商標3の指定役務である「土木工事一式」、「石工事」又は「墓石の設置工事」に含まれる。
ウ 取引の実情(前記⑴(原告の主張)ウ)も勘案すると、本件商標3と被告標章5-2、5-5は、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるといえ、したがって、被告は、本件商標3の指定役務に類似する役務に本件商標3に類似する被告標章5-2、5-5を使用しているものである。
(被告の主張)
ア 本件商標3は、「つなぎ館」の文字によって成り、「ツナギカン」又は「ツナギヤカタ」との称呼が生じる。本件商標3には特定の観念は生じない。
被告標章5-2は、「有限会社つなぎ館丸忠山田石材店」と会社の商号を表記して成る。このうち、「丸忠山田」の部分が出所表示として強く支配的な印象を与えるとはいえず、その他の部分に識別力がないともいえない。したがって、被告標章5-2は、「ユウゲンガイシャツナギヤマルチュウヤマダセキザイテン」との称呼が生じ、被告との観念が生じるものである。そうすると、被告標章5-2は、本件商標3と外観と称呼が著しく異なり、観念も異なるから、本件商標3に類似しない。
被告商標5-5は、被告が使用する「つなぎや まるちゅう」、「つなぎ館」、漢字の「忠」を丸で囲んだもの、「有限会社山田石材店」という表記から成る結合標章の一部である。このうち、「つなぎ館」の部分が出所表示として強く支配的な印象を与えるとはいえず、その他の部分に識別力がないともいえない。したがって、被告標章5-5は、「ツナギヤマルチュウ」又は「ツナギヤマルチュウユウゲンガイシャヤマダセキザイテン」との称呼が生じ、旧有限会社山田石材店である被告との観念が生じるものである。そうすると、被告標章5-5は、本件商標3と外観と称呼が著しく異なり、観念も異なるから、本件商標3に類似しない。
イ 被告標章5-2、5-5は、商品である「墓用石材、墓標、墓石」等の販売、「墓石の修理、保守」、「墓の掃除」に使用する商品の販売や役務の提供に使用しており、本件商標2の指定役務とは異なる。
ウ 以上から、被告標章5-2、5-5は、本件商標3に類似せず、また、被告は、これらを本件商標2の指定役務に類似する役務にも使用していない。
⑷ 争点④(被告標章5-1、5-2は被告が自己の名称を普通の方法で表示するものか。)について
(被告の主張)
被告標章5-1、5-2は、被告が自己の名称である商号を普通の方法で表示するものであり、本件商標権2、3の効力は及ばない(商標法26条1項1号)。営利企業が広告宣伝目的で広告用のウェブサイトに自社の商号を掲載することは通常行われることである。
(原告の主張)
自己の商号であっても、特に需要者の注意をひくように記載したり、宣伝広告等に積極的に使用したりする場合には普通の方法で表示するとはいえないところ、被告は、被告標章5-1、5-2を、本件ウェブサイトに広告宣伝目的で掲載しているのであって、普通の方法で表示しているとはいえない。
⑸ 争点⑤(各被告標章の使用が登録商標を使用するものか。)について
(被告の主張)
被告標章1は、被告商標1の指定商品である「墓用石材」等の販売に使用するものであり、被告の登録商標である被告商標1の使用である。
被告標章2から4は、仮に分離観察できるとしても、漢字の「忠」を丸で囲んだものを被告商標1の指定商品である「墓用石材」等の販売に使用するものであり、被告の登録商標である被告商標1の使用である。なお、被告は、土木一式工事、石工事、墓石の設置工事は行っていない。
被告標章5-1、5-2は、被告商標2、3の指定商品である「墓石、墓用石材」等の販売や、指定役務である「墓石の修理又は保守、墓の掃除」に使用するものであり、被告の登録商標である被告商標2又は3の使用である。
被告標章5-4、5-6は、仮に分離観察できるとしても、漢字の「忠」を丸で囲んだものを被告商標1の指定商品である「墓用石材」等の販売に使用するものであり、被告の登録商標である被告商標1の使用である。
被告標章5-5は、仮に分離観察できるとしても、「つなぎ館」を被告商標2の指定商品である「墓石、墓用石材」等の販売や、指定役務である「墓石の修理又は保守、墓の掃除」に使用するものであり、被告の登録商標である被告商標2の使用である。
(原告の主張)
被告は、本件各標章を、本件各商標の指定役務である石工事、墓石工事、墓石の設置工事に使用しているし、被告の主張する商品及び役務は本件各商標の指定商品又は指定役務に類似する。
⑹ 争点⑥(本件ウェブページから各被告標章を付した画像を抹消する必要があるか。)について
(原告の主張)
本件ウェブページから各被告標章を付した画像を抹消することは、本件各商標の侵害の予防に必要である。
(被告の主張)
否認する。
⑺ 争点⑦(本件各商標権の侵害により原告が被った損害及び額)について
(原告の主張)
原告と被告が業務地域及び需要者を共通にすることなどに照らせば、被告が本件各商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、毎年、被告の年間の売上額の5%相当額である50万円、平成17年7月12日から合計775万円であり、原告は被告に対し同額の支払を請求することができる(商標法38条3項)。
また、原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち77万5000円は被告の各不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。
したがって、本件各商標権の侵害により原告が被った損害の額は合計852万5000円となる。
(被告の主張)
否認ないし争う。
⑻ 争点⑧(原告の本件各商標権に係る各請求が権利濫用か。)について
(被告の主張)
原告は、cの正当な後継者でないにもかかわらず、c及び被告が使用していた標章を無断で商標登録出願し商標登録されたことを奇貨として、cの正当な後継者である被告に対し本件訴えを提起したところ、原告の被告に対する本件各商標権に係る各請求は権利濫用であって認められない。
c及び被告は、原告による本件各商標の商標登録出願よりはるか以前から、漢字の「忠」を丸で囲んだものや「つなぎ館」など本件各商標と同一又は類似の標章を使用してきた。被告は、cの正当な後継者である。原告は、aが被告に対し建物収去土地明渡訴訟を提起した時期に近接して本件商標1を商標登録出願し、被告の商号変更に追随して当時原告の商号には使用していなかった本件商標2、3を商標登録出願した。原告が商号を変更したのはその4年後である。そして、aは、cの遺産分割協議に協力しないbに対し、本件各商標権の行使をほのめかすなどした。このような原告及びaの行動に鑑みれば、原告が、商標法の目的である「商標の使用をする者の業務上の信用の維持」とは無関係な不当な目的をもって本件各商標を商標登録出願したことは明らかである。
(原告の主張)
原告の被告に対する本件各商標権に係る各請求は権利濫用ではない。
すなわち、aは、cの長男でありcから山田石材店を受け継いだdの子であり、c、dと続く「丸忠事業」を承継するために原告を設立したのであるから、aすなわち原告が、cの正当な後継者として、家業であるcの業務及び「丸忠ブランド」に関わる本件各商標を商標登録出願し、本件各商標権を行使するのは当然のことである。
cの正当な後継者は、dひいてはaである。現に、aは、名に「忠」の字を受け継ぎ、一族の墓を管理しており、また、原告は多磨霊園周辺において「丸忠」と認識されている。dはcの正当な後継者であったが、d及びaはdときょうだいたちの間の対立が原因で被告を乗っ取られ、aが山田石材店において「丸忠事業」を承継することは困難となったため、aは原告を設立することとし、dはこれを支援した。
⑼ 争点⑨(被告が、不正の目的をもって、原告と誤認されるおそれのある商号を使用しており、原告はこれによって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあるか。)について
(原告の主張)
被告は、原告が昭和57年から「丸忠」を使用してきて多磨霊園周辺において「丸忠」と認識されていることを知りながら、本件商号変更により「丸忠」という名称を商号に使用するようになったところ、「丸忠」には原告に対する信頼が化体しているから、被告の商号は原告と誤認されるおそれのあるものであり、被告は敢えて誤認混同を招き、原告の信用にただ乗りしようとする不正の目的により本件商号変更を行ったものである。
原告は、これによって、顧客を奪われたり、郵便物を誤配されたりするなど、営業上の利益の侵害されており、又は、侵害されるおそれがある。
(被告の主張)
取引者、需要者は、「丸忠」の部分だけで商号を認識するのではなく、商号全体を基にどのような名称の会社であるかを認識するから、被告の商号に「丸忠」が使用されていたとしても、取引者、需要者が、原告と被告の商号を誤ることはない。
被告は、cの正当な後継者として、先祖を敬う趣旨で、cが大正12年から継続的に使用してきた漢字の「忠」を丸で囲んだものを「丸忠」として商号に使用したにすぎず、被告に不正の目的はない。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前提事実、証拠(各項末尾に掲記のほか、甲22、乙17、18、証人L、原告代表者(a)、被告代表者(b)。ただし、いずれも後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。
⑴ cは、東京府下谷区(現在の荒川区)において「山田商店」という屋号の石材店を営んでいたところ、大正12年頃、現在の東京都府中市所在の多磨霊園の開園に当たり、現在の原告の肩書地を含む多磨霊園の正門前の一体の土地を賃借し、「山田石材店」の屋号で墓石を扱う業務を始めた。この店は、cが中心となり、その子らがcを手伝って運営されていた(以下、cが中心となって「山田石材店」の屋号で行っていた店を単に「山田石材店」ということがある。)。(争いがない事実、甲17)
cは、山田石材店において、墓石の販売、設置、墓に供える生花の販売、墓参休憩所の経営などを行い、その業務を表示するものとして、遅くとも、昭和18年より前から「つなぎ家」を使用し、昭和29年より前から漢字の「忠」を丸で囲んだものや「つなぎ舘」を、「C」の氏名などとともに使用していた。一般に、漢字等を丸で囲んだものが社章や暖簾等における標章として広く使用されており、それは「マル~」との称呼が生じ「丸~」とも表記され得るものであり、漢字の「忠」を丸で囲んだものは、「マルチュウ」との称呼が生じ、「丸忠」とも表記され得るものであった。(乙4~6、19、20)
cは、昭和23年、賃借していた土地を4人の息子の名義で購入し、山田石材店の店舗の敷地の一部として使用されていた現在の原告の肩書地等の土地をd名義に、現在の被告の肩書地等の土地をe名義にするなどした。(甲17、19)
cが高齢となった後は、dが中心となって山田石材店を運営するようになり、dと同じくcの子であるF、G、Hは従前どおりその手伝いをしていた。(甲17)
cは、昭和31年3月23日、死亡した。その頃、eは、航空自衛隊に所属していて海外にいたが、帰国し、以降、山田石材店の経営に携わるようになった。(甲17)
昭和38年に発行に係る舟橋聖一「こころ変り」(新潮社)には、「多磨墓地の入口の「つなぎ館」で、花と手桶を借りて、…入口をはいると、すぐ左側に 成駒屋 中村家累代之墓 と刻んだ碑が立っている。」として、山田石材店に触れた一節が存在する。(乙11、13、14)
⑵ cの子であるF、I、d、G、e、H、J、Kは、山田石材店を法人化することにし、それぞれ出資して(I、d、G、e、Hが各16%、J、Kが各8%、Fが4%)、昭和39年7月31日、商号を「有限会社山田石材店」、目的を石材工事、墓地工事、墓寺休憩場の経営等として被告を設立し、d、e、Iが代表取締役となり、Gが取締役に、Hが監査役になった。山田石材店の店舗を継承するなどして、被告は、山田石材店の業務を引き継いだ。(争いがない事実、甲17、乙1、2)
被告は、その後、現在まで、山田石材店から引き継いだ業務等を行っており(店舗については、後記⑹、⑺の経緯により、現在は、従前の山田石材店の店舗の近くに店舗を構えている。)、継続して、漢字の「忠」を丸で囲んだものと、「山田石材店」(商号変更前の被告の商号は「有限会社山田石材店」である。)、「山田」、「つなぎ館」、「つなぎや」などの表示を組み合わせたものを、その業務を表示するものとして使用してきた。(甲8、10、11、乙4~6)
Iは、昭和43年に死亡した。(争いがない事実)
⑶ aは、昭和50年頃に大阪の大学を卒業した後、造園建設会社に勤務していたところ、昭和57年9月17日、商号を「丸忠造建株式会社」、目的を「造園外構工事の設計施行請負、石材工事の設計施行請負、一般土木工事の設計施行請負」等として原告を設立し、代表取締役となった。原告は、現在の原告の肩書地等のうち当時存在した被告の店舗建物の裏手の公道に面していない場所に原告の店舗建物を建て、主に造園建設業を営んだ。(争いがない事実、乙1、3)
⑷ Kは、昭和59年、dを含む他のきょうだいらを被告として、被告の駐車場や、G、e、Hの住居建物の敷地として使用されていたcが購入し、k名義となっていた各土地の明渡しを求める訴訟を提起した(東京地方裁判所八王子支部昭和59年(ワ)第517号)。これに対し、被告となったきょうだいらは、k名義の各土地は、きょうだいらの共有に属すると主張し、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記請求を求める反訴を提起した(同第1222号)。東京地方裁判所八王子支部は、平成元年、Kの本訴を棄却し、反訴を認容する旨の判決をし、これに対し、Kは控訴をした(東京高等裁判所平成元年(ネ)第3835号)。
dは平成5年に死亡し、a外がdを相続した。
Kと、被告となったきょうだいら及びdを相続したa外は、平成5年、cが4人の息子の名義で購入した各土地が、各名義人の所有に属することを確認する旨の和解をした。
(本項につき、争いがない事実、甲17)
⑸ eは平成7年に死亡し、その後、Jが被告の代表取締役となった。(争いがない事実)
aは、dから被告会社の持分を相続したところ、被告を解散して新たな組織により石材店を営むことを企図したが、Jやbに反対されて断念し、その後、被告の経営に関与していない。(甲17)
⑹ 原告は、平成8年5月28日、本件商標1及び原告商標を商標登録出願した。
a外1人は、平成9年10月31日、被告に対し、当時の被告の店舗建物を収去してその敷地である各土地(現在の原告の肩書地等)を明け渡すことを求める建物収去土地明渡請求訴訟を提起した(東京地方裁判所八王子支部平成9年(ワ)第2564号)。a外1人と被告は、平成12年11月28日、被告が最終的に平成15年12月31日までに原告に対し上記各土地を明け渡すことなどを内容とする和解をした(東京高等裁判所平成12年(ネ)第2331号)。(争いがない事実のほか、甲7、乙1)
⑺ 前記⑹の後、被告は、a外に対し、被告の店舗建物が存在するなどした各土地(現在の原告の肩書地等)を明け渡し、平成15年12月末頃、従前の店舗所在地から約37mの距離にある、多磨霊園の正門から続く参道沿いの現在の被告の肩書地に被告店舗を構え、被告店舗の庇には被告標章1を、看板には被告標章2、3をそれぞれ付して、同庇及び同看板を展示した。(争いがない事実、甲9)
被告は、平成16年1月23日、被告商標1を商標登録出願した。
被告は、平成17年7月12日、現在の商号に商号変更した。Jは、同年12月に死亡し、bが被告の代表を代行するようになった。(争いがない事実)
⑻ 原告は、平成17年7月、被告がa外に明け渡した土地(現在の原告の肩書地)に原告の店舗(以下「原告店舗」という。)を含む建物を建設し、多磨霊園に墓を有する者等を取引者、需要者として、墓石、石材の販売、墓の修理、生花の販売、法事、会席の場所提供などを行うようになった。
原告は、平成18年3月17日、本件商標2、3を商標登録出願した。
原告は、平成22年1月1日、現在の商号に商号変更した。(争いがない事実)
aは、cの遺産として未登記不動産が存在するとして、bに対しその遺産分割協議に応じるよう求めたが、bはこれを拒否した。aは、平成31年1月8日、bに対し、上記分割協議に協力しないことについて、「現在あなたが「(有)つなぎ館丸忠山田石材店」と称しているものも祖父母の個人商店「山田石材店」が大元です。ルーツです。…私としては理非を弁えない非協力にはどのように対すべきかを思案していたときふと気づきました。「つなぎ館」「丸忠」「丸忠山田」等は当方の正式な登録商標です。現在において商標法、不正競争防止法等に抵触しているおそれが非常に強い状況にあります。理不尽な非協力には非協力で対応するしかないのかと…。この際、ぜひ、状況をご理解いただき、前述の手続の推進にご協力いただきますよう、重ねてお願いいたします。」旨記載した書面を送付した。(争いがない事実(乙7))
⑼ 被告は、平成31年3月、被告商標2、3を商標登録出願した。
原告は、令和元年7月30日、被告商標1について商標登録無効審判請求をしたが、本件商標1が被告商標1の商標登録出願時に原告の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとは認められず、被告商標1の使用が、本件商標1の周知性による信用及び顧客吸引力に便乗するものということはできず、被告が不正の目的をもって使用するために被告商標1の商標登録を受けたとは認めるに足りず、商標登録が商標法4条1項15号の規定に違反してされたとはいえない等として、請求を却下する却下する旨の審決がされた(無効2019-890041)。(乙12)
bは、令和元年、被告の代表取締役となった。
被告は、名刺に被告標章4を付して頒布し、遅くとも令和2年7月9日以降、本件ウェブサイトに被告標章5-1、5-2を付して電磁的方法により提供しており、被告標章5-4から5-6に相当する表示を本件ウェブサイトにしている。(争いがない事実、乙5)
aは、令和3年、多磨石材親交会の幹事となり、その際、組合員に対して役員就任を通知する回覧板には、幹事として「丸忠山田 A」と記載された。(甲13)
2 争点⑧(原告の本件各商標権に係る各請求が権利濫用か。)について
事案に鑑み、まず、争点⑧について、検討する。
⑴ア 被告は、多磨霊園の近隣において、その前身である山田石材店の時代に、「マルチュウ」との称呼が生じ「丸忠」とも表記され得る漢字の「忠」を丸で囲んだもの、「つなぎ舘」等を、「C」の氏名とともに使用していたことに始まり、その後、長年にわたり、継続して、漢字の「忠」を丸で囲んだもの、又は、これと、「山田石材店」、「山田」、「つなぎ館」、「つなぎや」などの表示を組み合わせたものを、墓石の販売、設置等その業務について使用してきた(前記1⑴、⑵)。そして、被告店舗において被告標章1、漢字の「忠」を丸で囲んだものと、「山田石材店」、「山田」などの文字列との組合せから成る被告標章2、3を使用し、平成17年に現在の商号である「有限会社つ ぎ館丸忠山田石材店」に商号変更するなど、各被告標章を使用した(同⑺、⑼)。
イ 山田石材店は、cによって創業され、c及びその子らによって運営されていたところ、被告は、昭和39年に、cの子らが出資者及び役員となって設立されて山田石材店の業務を引き継ぎ、その後、cの孫であるbが代表取締役となって現在に至っており、山田石材店として創業以来、c及びその子孫によって運営されてきた(前記⑴、⑵、⑸、⑼)。
ウ 原告は、昭和57年、cの孫であり、被告の代表取締役であったdの子であるaによって、商号を「丸忠造建株式会社」、目的を「造園外構工事の設計施行請負」等として設立され、主に造園建設業を営んでいた(前記1⑶)。aは、dの死後、相続により被告の持分を取得し、平成7年頃に被告を解散して新たな組織により石材店を営むことを企図したことがあったが、他の者の反対によりこれを断念した(同⑸)。
原告は、平成8年に本件商標1及び原告商標を商標登録出願した(前記1⑹)。原告は、平成17年に、a外が被告から明渡しを受けた土地上に原告店舗を構えた頃から、墓石、石材の販売、墓の修理、生花の販売、法事、会席の場所提供などを行うようになった(同⑻)。原告は、平成18年に本件商標2、3を商標登録出願し、数年が経過した後の平成22年に現在の商号である「株式会社丸忠山田」に商号変更した(同前)。原告が、本件各商標及び原告商標を商標登録出願した当時、これらの商標を各指定商品又は各指定役務について使用していたことを認めるに足りる証拠はない。
⑵ 以上のとおり、漢字の「忠」を丸で囲んだもの、又は、これと、「山田石材店」、「山田」、「つなぎ館」、「つなぎや」などの表示を組み合わせたものは、山田石材店及び被告において、長年にわたり、多磨霊園の近隣において、墓石の販売、設置等その業務について使用されてきて(前記⑴ア)、被告による使用によって同所においては関係する役務等について一定の信用が蓄積されてきたものといえ、上記各表示を含む各被告標章もその中で使用されるようになったものである(同前)。被告は、山田石材店として創業以来、c及びその子孫によって運営されてきた(同イ)ところ、cの孫であるaは、父であるdから被告の持分を相続し、平成7年頃に、被告を解散して新たな組織により石材店を営むことを企図するなどしたことがあり(同ウ)、被告に関係する者といえ、また、被告の使用する標章やその使用状況を知っていたと認められる。このような状況のもとで、aが設立した原告は、従前被告の店舗が所在した土地の明渡しを受けて同所に原告店舗を構え、「c、dと続く「丸忠事業」を承継するために原告を設立した」のであるから「aすなわち原告が「丸忠ブランド」に関わる商標を商標登録出願するのは当然のことである」と主張するなどして(前記2⑻(原告の主張))、被告が、長年にわたり、「マルチュウ」との称呼が生じ「丸忠」とも表記され得る漢字の「忠」を丸で囲んだもの、「つなぎ舘」等を使用してきた中で、平成8年、上記の各標章に類似する本件商標1(漢字の「忠」を丸で囲んだもの)及び原告商標(つなぎ館/指定役務・飲食物の提供等)を商標登録出願し、被告が「有限会社つ ぎ館丸忠山田石材店」に商号変更した後の平成18年に、同商号に含まれる文字列である本件商標2(丸忠山田)、本件商標3(つなぎ館/指定役務・葬儀並びに法事のための施設の提供等)を商標登録出願した(同ア、ウ)。
そうすると、原告の被告に対する本件各商標権に基づく各請求は、被告に関係する者であるaが設立した原告が、被告の創業者であるcから続く事業すなわち被告の事業を承継するためと主張して、被告が長年にわたり事業に使用してきたことにより一定の信用が蓄積された標章に類似する商標について商標登録出願をして(なお、原告が、当時、これらの商標を各指定商品又は各指定役務について使用していたことは認めるに足りない。)、被告に対し、被告が上記の標章の使用の一環として使用するようになった各被告標章を使用しないこと等を求めるものであって、このような被告による標章の使用の状況、原告と被告との関係、原告の商標登録出願に至る経緯等に照らせば、仮に被告が本件各商標の指定役務に類似する役務に本件各商標に類似する各被告標章を使用するものであったとしても(争点①~③)、権利の濫用に当たると認められる。
したがって、原告の被告に対する本件各商標権に基づく各請求は、権利濫用であって認められない。
3 争点⑨(被告が、不正の目的をもって、原告と誤認されるおそれのある商号を使用しており、原告はこれによって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあるか。)について
被告は、その前身である山田石材店の時代、遅くとも太平洋戦争前後から、長年にわたり、「丸忠」とも表記され得る漢字の「忠」を丸で囲んだもの、「つなぎ舘」等を、「C」の氏名とともに使用しており、平成17年に、当時代表取締役であったjの提案により、将来もこれらの表示を安定的に使用し続けるために、従前から使用するなどしていたこれらの各表示を組み合わせた「有限会社つ ぎ館丸忠山田石材店」に商号変更し(被告代表者(b))、現在に至るまでこれを使用している。このような経過に照らせば、原告が昭和57年から商号を「丸忠造建株式会社」として業務を行っていたとしても(なお、原告が現在の商号である「株式会社丸忠山田」に商号変更したのは平成22年である。)、被告が、不正の目的をもって、原告と誤認されるおそれのある商号を使用しているとは認めるに足りない。
第4 結論
以上によれば、原告の各請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。
よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
(裁判長裁判官 柴田義明 裁判官 佐伯良子 裁判官 仲田憲史)
別紙