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裁判年月日 令和 3年12月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平31(ワ)10797号
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2021WLJPCA12278013
出典
裁判年月日 令和 3年12月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平31(ワ)10797号
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2021WLJPCA12278013
東京都世田谷区〈以下省略〉
原告 X
同法定代理人親権者 A
同 B
同訴訟代理人弁護士 伊藤正喜
同 倉地智広
同 瀧平和
同 加藤惇
同訴訟復代理人弁護士 鈴木広喜
東京都世田谷区〈以下省略〉
被告 Y1
東京都世田谷区〈以下省略〉
被告 Y2
上記2名訴訟代理人弁護士 原大二郎
同 髙木裕介
東京都世田谷区〈以下省略〉
被告 世田谷区
同代表者区長 C
同指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
同 W5
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告らは,原告に対し,連帯して300万円及びこれに対する令和元年5月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,小学校に在学中に同じクラスに在籍していたD(以下「D」という。)からいじめを受けた上,同小学校の教員らが当該いじめに対して適切な調査や措置を講じることを怠り,その結果,原告が精神的苦痛を被ったと主張して,Dの両親であり監督義務者である被告Y1及び被告Y2(同被告らを併せ,以下「被告Y1ら」という。)に対しては民法714条1項に基づき,上記小学校の設置者である被告世田谷区(以下「被告区」という。)に対しては国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料及び弁護士費用として300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年5月15日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨により認められる。)
(1) 当事者等
原告及びDは,平成30年4月から平成31年3月までの間,いずれも世田谷区立a小学校(以下「本件小学校」という。)の6年生に在籍していた者である。
A(以下「A」という。)は原告の父であり,B(以下「B」という。)は原告の母である。
被告Y1はDの父であり,被告Y2(以下「被告Y2」という。)はDの母である。
被告区は,本件小学校を設置する地方公共団体である。
E(以下「E教諭」という。)は,平成30年4月から平成31年3月までの間,本件小学校の6年生の担任教諭を務めていた者であり,F(以下「F校長」という。)は同校の校長を,G(以下「G副校長」といい,F校長及びG副校長を併せ,以下「F校長ら」という。)は同校の副校長を,それぞれ務めていた者である。
(2) 原告及びDが在籍していたクラスの状況等
本件小学校において原告及びDが在籍していた学年は,1学年から6学年を通じて1クラス編成であり,原告とDは,6年間同じクラスに在籍していた。
平成30年度の本件小学校の6年生のクラス(以下「本件クラス」という。)の児童数は26名であり,うち男子児童は17名,女子児童は,原告及びDを含め9名であった。
2 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) Dの原告に対するいじめ行為の有無と被告Y1らの監督者責任の有無(争点1)
(原告の主張)
ア 原告に対する集団無視
原告とDは,平成30年8月末頃,遊園地「としまえん」に遊びに行った際,些細なことで喧嘩になり,それ以降,Dは,原告に対し,従前とは異なり疎遠な態度をとるようになった。原告は,Dの態度に憤りを感じ,Dに対し,「友達やめて」と記載したメモを渡してしまった。
その後,原告は,本件小学校において,Dから避けられるようになり,本件小学校を2週間ほど休んだ。
原告が,同年10月17日,本件小学校に登校したところ,本件クラスの女子児童全員から,あるいは少なくともDを含む女子児童4名から,集団で無視をされるようになった(原告が主張する同日の原告に対する集団無視を,以下「本件いじめ行為1」という。)。なお,Bは,当日の放課後,本件小学校に原告を迎えに行ったところ,Dに会ったものの,Dは,普段と異なり,Bを避ける素振りをし,他の女子児童も,Bに接しないような態度をとった。
このように,原告とDとの間に上記のような諍いが起きた時期と近接した時期において,Dを含めた本件クラスの女子児童による集団無視が発生したことからすれば,Dには,上記の諍いに起因して,本件いじめ行為1を行うことについて合理的な動機があり,本件いじめ行為1において,原告を無視するように他の女子児童に働きかける等の主導的な役割を果たしていたものである。
本件いじめ行為1があったことは,AのE教諭に対する集団無視の調査要請を契機として行われた本件クラスの児童を対象とするアンケート調査の結果について,E教諭が,「ばっちりそういう結果が出たという事で学校側としては,本当に申し訳なかったなと思っております。」などと述べ,Dを含む本件クラスの女子児童が原告を集団で無視していたことが発覚した旨を回答していることからも,明らかである。
イ Dと他の女子児童との間における原告を疎外するメモのやり取り
Dは,平成31年2月15日,原告の悪口をメモに記載してクラスの他の児童との間で回覧した。このメモ(以下「本件各メモ」という。)には,「あいつ,LINEグループ作ったんだね」,「もういやや~」(以上,D作成),「X○さんを?」(他の児童が作成),「がっこうにきて,みんなと仲良くもなってないのによくつくれるよね」(D作成)などと記載されており,Dは,原告がLINEグループを作ったとした上で,他の児童らと打ち解けていない状態でLINEグループを「よくつくれるよね」として,原告が他の児童らと交流を持つことを非難し,再度,原告を本件クラス内で孤立させようとした(原告の主張する本件各メモのやり取りによるいじめを,以下「本件いじめ行為2」といい,本件いじめ行為1と同2を併せ,以下「本件各いじめ行為」という。)。
原告は,メモの回覧を認識し,放課後にDの机の中を探して本件各メモを発見し,これを撮影した。
ウ 被告Y1らがDの監督義務者としての責任を負うこと
Dを始めとする加害児童らによる本件各いじめ行為は,児童同士の悪ふざけの範囲を大きく逸脱し,原告を標的とした執拗かつ悪質な行為であるから,共同不法行為に当たる。そして,Dは,本件各いじめ行為があった当時,自己の行為の法律上の責任を弁識するに足りる知能を備えておらず,責任無能力者であった。
被告Y1らは,Dの親権者であり,Dに対し,法定の監督義務を負っていた。
親権者が尽くすべき監督義務の範囲は,子の生活関係全般にわたっており,親権者は,常日頃から,子に対し,他人の生命・身体に対して不法な侵害を加えることのないよう,これに関する社会的規範を理解させ,身に着けさせる教育を行い,その人格の成熟を図るべき義務を負う。
被告Y1らが,Dに対して適切な指導監督を行い,上記監督義務を尽くしていれば,本件各いじめ行為は生じなかったものであるから,被告Y1らは,上記監督義務を尽くしたとはいえず,責任無能力者であるDに代わって,Dが本件各いじめ行為によって原告に与えた損害を賠償すべき義務を負う。
(被告Y1らの主張)
ア 本件各いじめ行為がいずれも存在しないこと
(ア) 民事訴訟法208条が適用されるべきこと
原告は,当事者尋問を実施するものとして採用決定がされていたにもかかわらず,2期日にわたり出頭しなかった。
本件の立証構造上,原告本人尋問による立証活動は必要不可欠であること,未成年者に対する尋問として,その実施に当たり相応の対処がとられる予定であったこと,尋問の必要性について争い,かつ,原告自らが望んで本件訴訟に関与していないDの尋問は実施しつつ,原告本人尋問のみ実施しないまま結審することは,当事者間の衡平性を害するとともに無用な負担をDのみに負わせていることなどに鑑みれば,原告が,単に一時的な精神的負担や体調の変化を理由に,原告本人尋問に応じないことは,全く正当理由に当たらない。
そして,原告が原告本人尋問に関して申し出ていた尋問事項に関して,相手方である被告Y1らは,一貫して,原告の主張する本件各いじめ行為が存在しないこと,原告に生じた帯状疱疹の症状が原告の主張する本件各いじめ行為又は同行為に起因する精神的苦痛やストレスに基づくものではないこと,原告が主張する本件各いじめ行為と原告の不登校との間に相当因果関係が存在しないことなどを主張していた。
よって,民事訴訟法208条の適用により,上記のとおりの被告Y1らの主張が真実であると認められるべきである。
(イ) 本件いじめ行為1が存在しないこと
平成30年10月17日に,本件クラスにおいて原告に対する集団無視が発生したとの事実は存在せず,また,そもそもDが本件クラスの女子児童を主導し得る立場にもなかった。
同日,原告は昼休みに登校したのに対し,その時点でDを含む本件クラスの他の児童は校庭で遊んでいたため,教室に戻ったのは5時限目が始まる直前であり,5時限目が終わった後は休憩時間もなく下校することとなるため,原告と他の児童とが接触し得る時間はほとんどなかった。
そして,Bの説明を前提にしても,原告は一人でいるときに話し掛けてもらうことがなかったにすぎず,原告が,D又は他の女子児童らに話し掛けたのに対して無視されたとの事実は,いかなる証拠からも認められない。
このような集団無視が発生していないからこそ,本件小学校の調査においても,これがあったことについて確認をとることができなかったのであり,誤認や勘違いがないかを含めた真実性の吟味を経ていない原告の陳述のみを根拠に,集団無視の存在を肯定することはできない。
さらに,Dは,原告がDに「死ね死ね」などと記載されたメールを送信したり,としまえんで一方的にふてくされたり,「ともだちやめて はなしかけないで」というメモを渡したりした後も,原告に対して普通に接し続けており,集団無視又は原告を疎外する行為に向けた動機形成が行われたとは到底考えられないし,Dは,本件クラスの中心人物であるとはいえず,集団無視といういじめを主導し得る立場にはなかった。
(ウ) 本件いじめ行為2が存在しないこと
原告がLINEグループを作成した事実が存在しないことや,本件各メモの記載内容自体が,多数にのぼるLINEグループが作成されている状況そのものを批判する内容とも考えることができることに照らすと,本件各メモにおけるLINEグループについての記載が,原告が置かれた状況を揶揄し,又は原告が他の児童らと交流を持つことを非難し,あるいは原告を本件クラスから孤立させようとするものであるとはいえず,また,本件各メモのその余の部分が,特段原告を疎外したりする内容であるともいえない。
また,本件各メモの個々の記載の記載者は判然とせず,これについてのDの関与の有無や程度も定かではない。さらに,Dは,同級生のH(以下「H」という。)との間の一対一の意思連絡のほか,本件各メモを他に回覧する意図もなく,また周囲の状況に照らしても,本件各メモの記載内容を第三者に知らしめるような状況にあったものではなく,本件各メモの回覧という行為自体が存在しない。
イ 被告Y1らのDに対する監督義務について
被告Y1らがDの親権者であること,Dが責任無能力者であったこと,被告Y1らが一般論としては原告の指摘する範囲にわたる監督義務を負うことはいずれも認めるが,本件各いじめ行為に関して被告Y1らがDに対する監督義務の履行を怠った旨の原告の主張は,争う。
(2) 本件小学校の教職員(E教諭及びF校長ら)によるいじめの早期発見及び調査,適切な措置の実施によるいじめの防止等の懈怠の有無(争点2)
(原告の主張)
ア いじめ防止対策推進法(以下「いじめ対策法」という。)及び同法に基づく基本的方針に違反する行為が国家賠償法1条所定の違法行為を構成すること
いじめ対策法及び同法に基づく「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下「基本的方針」という。)は,いじめ行為が,いじめを受けた児童の教育を受ける権利を著しく侵害し,心身の健全な成長及び人格の形成に重大な危険を生じさせるおそれがあるにもかかわらず,密行性が高くかつ被害児童からの申告が期待できないことから,被害児童を最優先に保護するため,いじめ防止のための基本的方針の策定及び措置の実施を地方公共団体や学校に義務付けたものである。
このようないじめ対策法及び基本的方針の趣旨に加え,同法及び基本的方針が地方公共団体や学校及び教職員がとるべき措置を具体的に定めていることからすれば,同法及び基本的方針は,いじめを受けた児童が有する権利等を保護するための具体的な規範として機能しており,学校やその教職員が,同法及び基本的方針の定めに違反して,いじめに対する具体的な措置を怠る等,いじめ行為への適切な対処を怠り,被害児童が不登校を余儀なくされ心身に支障をきたした場合,同法及び基本的方針に基づいて被害児童を保護する義務に違反し,被害児童の教育を受ける権利等を侵害したものとして,国家賠償法1条所定の違法行為を構成するものと解すべきである。
そして,いじめ対策法は,「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。」(同法28条1項2号)を「重大事態」と規定するところ,本件小学校においては,同小学校の基本的方針上の「相当の期間」については,年10日以上との解釈がとられていたから,いじめ対策法28条1項2号の「相当の期間」についても,同様に解されるべきである。
イ 本件いじめ行為1についての本件小学校による調査等の懈怠
(ア) E教諭は,従前,原告が登校した際には,Dを含む本件クラスの女子児童が原告に近寄り挨拶や会話を交わしていたにもかかわらず,原告が平成30年10月17日に登校した際には,原告が一人でいる様子を目撃しており,原告が本件いじめ行為1を受けたことを直接認識していた。また,E教諭は,同日,このことについてBに架電した際,Bから,「クラスの雰囲気が違っていた。全員が無視をしていた。」として,原告が本件いじめ行為1にあったことについての相談を受けた。よって,E教諭は,同日の時点で,本件いじめ行為1の存在を認識した。
そして,原告は,翌18日以降,平成31年1月31日に原告とDとの謝罪の場が設定されるまでの間,本件小学校の欠席を余儀なくされたところ,遅くとも本件小学校が本件いじめ行為1を認知し又はその申告を受けてからの欠席日数が10日間に達した平成30年11月1日の経過をもって,原告が受けた本件いじめ行為1に関して,いじめ対策法28条1項所定の重大事態が発生したのであり,本件小学校は,本件いじめ行為1に係る重大事態を,教育委員会を通じて世田谷区長に報告するとともに,教育委員会と連携して,指導主事といった教育委員会の構成員その他の教育委員会が指定する専門的知識及び経験を有する者を調査主体として加えるなどの措置をとった上で,重大事態に至る要因となった本件いじめ行為1の態様,これを生んだ背景事情や児童生徒の人間関係上の問題点,これに対する学校・教職員の対応などの事実関係を,可能な限り網羅的に調査する義務を負っていた。
また,本件小学校や世田谷区教育委員会は,調査結果に基づき,重大事態の被害児童の支援の実施や加害児童への個別の指導を行うとともに,再発防止策の検討を行うことが義務付けられていた。
(イ) しかしながら,本件小学校は,教育委員会を通じた世田谷区長に対する本件いじめ行為1に係る重大事態の発生についての報告を怠り,教育委員会との連携の機会を失わせた。
また,E教諭や本件小学校内で組成されたa小いじめ対策委員会は,Aからの申入れに基づいて6年生に対して実施されたアンケート調査の結果,少なくともD及び他の児童3名が,原告の悪口を言っていたり原告に話しかけないといった言動があったことを容易に認定できたにもかかわらず,原告に対するいじめはなかったと認識しており,その情報分析能力には極めて問題があった。さらに,加害児童らが,原告を集団無視することを示し合わせたと素直に認める確証もないまま,他の児童から話を聞くこともなく,加害児童らのみの聴取をもって,集団無視すなわち本件いじめ行為1の事実がなかったと結論付けており,このような調査手法は,いじめ対策法28条が予定する事実関係を明確にする調査とはいえない極めて稚拙なものであった。
さらに,E教諭が行った指導と称する行為は,本件いじめ行為1が容易に認定できた状況の中で,このような行為がなかったことを前提に,Dの行為を「ちょっとまずかったかもね。」として,仮に問題があったとしても他愛のないものと評価するものであり,いじめ対策法が想定する,加害児童であるDにおいて,いじめの非に気付かせ,被害児童への謝罪の気持ちを醸成させるものとは程遠いものであった。むしろ,E教諭の当該行為は,少なくとも4名での原告に対する悪口及び集団無視のいじめについてお咎めなしの状態となったことから,いじめの言い逃れが極めて容易であるとの意識を生み出し,更なるいじめを発生させかねない害悪を生み出すものであった。加えて,本件小学校及び世田谷区教育委員会において,Dらによるいじめの再発防止策もとられなかった。
ウ 本件いじめ行為2の再発と本件小学校による報告及び再発防止措置の不備
原告は,Dほか1名の女子児童が行った本件各メモのやり取りを発見したことが原因となって,平成31年2月18日から卒業式が行われるまでの間,一日も登校することができなくなったから,遅くとも同月29日の経過をもって,本件いじめ行為2について,いじめ対策法28条が規定する重大事態が発生した。
それにもかかわらず,本件小学校は,教育委員会を通じた世田谷区長への報告を怠った。
また,本件小学校は,同年3月5日以降,いじめ対策委員会をもって,世田谷区の教育指導課の指導の下,本件いじめ行為2に対応していたが,再発防止措置の不備により,最終的に当該事案が解決することはなく,原告は,不登校の状態で本件小学校を卒業することを余儀なくされた。
エ 本件小学校の一連の行為の国家賠償法上の違法性
本件小学校には,本件いじめ行為1に関して,教育委員会を通じた世田谷区長への報告義務違反,調査義務違反,指導及び再発防止義務違反があり,当該義務違反によって,本件いじめ行為2が再発し,原告に不登校を余儀なくさせた上,本件いじめ行為2に関しても,報告義務の不備によって,いじめの解決がいたずらに長引き,その結果,原告に,不登校の状態のまま本件小学校を卒業することを余儀なくさせた。
これらの本件小学校の一連の行為は,国家賠償法上,違法の評価を受けるものである。
(被告区の主張)
ア 原告が集団無視と主張する事実について
E教諭は,平成30年10月17日,Bから原告が集団無視をされているとの話を聞き,「子どもから話を聞いて,話を突き合わせ,それぞれの思いを確認しますか。」と尋ねたものの,当初は,原告が大人の男性が苦手であるなどの理由でBが積極的ではなかったものであり,この時点で事実関係の調査等を実施しなかったことは,むしろ原告側の要望に沿った対応であったといえる。
その後,E教諭は,Bからの希望に基づき,被告Y2に連絡を取り,原告とDが気持ちを伝え合う場を設定しようと試み,これは実現しなかったものの,E教諭は,F校長らに報告・相談の上,Bからの依頼どおりの対応をしたものである。
さらに,AからE教諭に対する集団拒絶の調査の依頼に従い,本件小学校ではいじめ対策委員会を開催し,A及びBと面談の上,具体的なアンケートの調査方法について提案を受け,アンケート調査を実施し,その結果を踏まえ,E教諭において,Dを含む4名の児童に対する聞き取り調査を実施した。
その結果,原告が主張するような集団無視の事実が確認できなかったことから,これを前提とした対応はしていないものの,E教諭は,聞き取り調査の結果,Dが夏休み中に原告から送られてきたメールの内容を他の3名に話したことがあったとの事実が判明したため,Dらに対する口頭指導を行う対応をしており,その後,原告の欠席が続いている間は,ほぼ毎日原告宅に電話をして原告の様子を確認していた。
さらに,これらの対応について,A及びBに説明を行ったところ,同人らは納得した様子で,特段の要望などはなかった。
そして,平成31年1月下旬頃,Bから,原告のした行為を謝るからDからも謝罪してもらいたい旨の申入れを受けたことから,E教諭は,被告Y2の了承を得た上で,同教諭立会いの下,原告とDの話合いの場を設け,その場において,二人は互いに謝罪した。
本件小学校で取った上記一連の対応は,A及びBの要望を踏まえて適切に対応したものと評価されるべきであり,非難されるようなところは全くない。
イ 本件各メモのやり取りに関する事実について
原告は,平成31年2月18日以降,欠席が続いたことから,E教諭がBに確認したところ,Dと他の児童との間でやり取りされていたメモに原告の名が記載されており,原告がこのメモを発見して写真を撮っていたことが判明した。
その後,本件小学校では,いじめ対策委員会において対応を行うこととし,児童全員の聞き取り調査,道徳の時間におけるクラス全員に対する一般的な指導,教育指導課の指示の下,本件各メモの写真の内容を読み上げてのDらに対する聞き取り調査の実施,被告Y2との面談の実施,F校長による原告及びその両親との面談の実施,同面談の際にAから要望Xった関係児童6名の聞き取り調査の実施などの対応を行った。
児童に対する聞き取り調査については,Bから,本件各メモの写真を示しての事実確認あるいは指導をしてほしいとの要望があった。しかるに,本件小学校のいじめ対策委員会で検討した結果,当該写真は原告がDの同意を得ることなく机の中を探り,写真撮影したものであることを踏まえ,この写真を出すことで原告と他の児童との関係性が崩れる,あるいはこじれる可能性が高いと判断した。そこで,写真そのものを示すのではなく,その内容を読み上げる形で聞き取り調査を行ったものであり,このような対応は,原告が本件各メモの写真を入手した経緯等を踏まえ,原告と他の児童との関係性に配慮した上で行われた対応であり,合理性を有するものであるし,実質的にA及びBの要望を踏まえた対応を行ったと評価されるべきである。
そして,本件小学校では,聞き取り調査の結果を踏まえ,E教諭がDらに対して指導を行い,反省を促している。
ウ 本件小学校における対応が国家賠償法上違法であると評価できないこと
国家賠償法1条1項の違法性については,公務員が当該行為をする上で,職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情がある場合に限り,同法上の違法があったとの評価を受けるものとされている。
しかるに,E教諭やF校長らは,A及びBの要望を踏まえ,その時々の合理的な判断に基づき,適切に対応してきたものであり,いじめの内実を正確に把握する義務,関係の修復の可否を判断し,可能な場合は方法を検討して実施する義務,加害児童に指導をする義務等を怠ったなどとして,国家賠償法上違法と評価されるところはない。
(3) 原告の被った損害(争点3)
(原告の主張)
原告は,本件各いじめ行為により,耐え難い精神的苦痛を継続して受けたことで,極めて強いストレスにさらされることとなり,帯状疱疹を発症するとともに不登校になったことで,学校生活を送ることができなくなった。また,原告は,本件各いじめ行為によって,学習する権利ないし教育を受ける権利を侵害され,耐え難い苦痛を被った。
原告の受けた精神的苦痛は極めて甚大であり,これに対する慰謝料は270万円を下らない。
さらに,原告は,上記の損害につき,弁護士に依頼して訴訟を提起せざるを得ず,その弁護士費用は30万円を下らない。
(被告Y1らの主張)
争う。
(被告区の主張)
争う。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
証拠(甲1,4,5,9,10,11,乙イ3~5,乙ロ1~3,5(以上につき,枝番号のあるものは枝番号を含む。),証人E,同D,原告法定代理人親権者B本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 平成30年10月までの経過
ア 原告とDは,平成25年4月に本件小学校に入学し,平成31年3月に卒業するまでの間,ともに本件小学校の同じクラスに在籍していた。
原告の各学年における本件小学校への出席日数及び欠席日数は,1学年が188日及び16日,2学年が96日及び115日,3学年が198日及び12日,4学年が149日及び48日,5学年が114日及び99日,6学年が63日及び148日であった。
E教諭は,原告及びDが5学年及び6学年に在籍していたクラスの担任教諭を務めた。
原告は,5学年と,6学年の1学期の間に限っても,上記のとおり本件小学校を欠席することが度々あり,E教諭は,A又はBから原告の欠席についての連絡がない場合には,原告方に架電し,原告の欠席の理由等の事情を聞き取っていたが,原告の欠席の理由は,概ね体調不良であった。
イ 原告とDは,小学6年生であった平成30年の夏頃までは互いに友人の関係にあり,夏休みには,プールや双方の親が同伴しての旅行に一緒に出掛けるなどする間柄であった。
Dは,原告から,同年7月21日夕方に本件小学校で開催される夏祭りに一緒に行こうと誘われており,同日の日中は,Y2や他の同級生と出掛けていたところ,原告から,「何時にする?」,「なんか昨日祭り一緒に行こうとか言ってたじゃん」とのメールを受信し,さらに,「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」,「ごめん送り先間違えた」,「まだですか。」,「そうですか。」,「さようなら」との内容の各メール(これらのメールのうち,「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」との内容のものを,以下「死ね死ねメール」という。)を受信した。
上記メールを受信したDは,原告に対し,原告に対するメールに気付かず,返信が遅れたことを謝ったが,その際,居合わせたY2と,Hを含む同級生2名に,メールの内容を見せた。
その後,Dは,原告と待ち合わせ,原告とともに上記夏祭りに出掛けた。
ウ 原告とDは,平成30年8月末頃,Aの付き添いで,「としまえん」のプールに遊びに出掛けたが,帰途,夕食を一緒にどこで食べるかが話題になった際,原告がDの発言に対して不機嫌になって泣き出すということがあった。原告とDは,結局夕食を共にし,後日,Bの仲介で,上記の出来事について互いに謝った。
エ 原告は,本件小学校の2学期が始まった平成30年9月には,同月3日,4日,5日及び7日には授業に出席し,同月6日,8日及び10日には欠席したが,同月11日に出席した際,昼の給食時に,Dに対し,「・はなしかけないで ・ともだちやめて」と記載したメモ(以下「別件メモ」という。)を手渡した。
同日以降,原告は,同月12日,14日,19日及び27日には本件小学校に出席した一方,同月のそれ以外の日は欠席し,同年10月には,同月5日に出席した後は,同月16日まで欠席していた。
原告は,Dに別件メモを渡した数日後,Dに対し,何についてであるかは特に明らかにすることなく,「ごめんね。」とのみ謝ったことがあった。一方,Dは,原告から別件メモを手渡された後,時期は定かではないものの,本件クラスの他の女子児童3名に対し,原告から別件メモを渡されたことについて話したことがあった。
(2) 原告側の集団無視の申告と原告とDが互いに謝罪するまでの経過
ア 原告は,平成30年10月17日の昼休み中に,Bに付き添われて本件小学校に登校して午後の授業に出席し,終業後,迎えに来たBとともに帰宅したが,その際,Bに対し,これまでと違ってクラスの全員が話し掛けてくれなかった,誰とも話さなかったなどと訴えた。
一方,E教諭は,原告が同日に在校中に一人で過ごしている様子があったことから,同日中に原告方に架電し,Bに対し,その旨を述べた。これに対し,Bは,E教諭に対し,原告がクラスの女子児童全員から集団で無視されている旨を述べた。
E教諭は,Bに対し,E教諭が児童から話を聞いて話を突き合わせ,それぞれの思いを確認するかどうか尋ねたところ,Bは,原告本人と相談する旨回答した。
原告は,翌18日,本件小学校を欠席した。E教諭が原告方に架電したところ,Bは,E教諭に対し,原告が,担任(大人の男の人)には知られたくない,間に入ってほしくない旨言っていると述べるとともに,家族で話し合う旨を述べた。
原告は,同日以降,平成31年1月下旬頃まで欠席を続けた(なお,原告の出席簿には,原告が平成30年10月19日には出席したと記録されている(乙ロ5)一方,報告書(甲4)には,原告が同日に欠席した旨記載されていることに照らし,原告は同日は欠席したものと認めるのが相当である。)。
イ Bは,原告とDとの間の関係の改善のため,平成30年11月10日,E教諭に対し,D側に対する連絡を依頼し,これを受けて,E教諭は,同月13日,D方に架電し,原告とDが気持ちを伝え合う場を設定することの可否を問い合わせたものの,D側からは,話し合いの場は持ちたくない旨の意向が示された。
E教諭は,同月14日,その旨をBに報告するとともに,集団無視の事実自体が定かではなく,女子児童の中には,原告が不登校となっている間に原告を気遣う態度を見せる者もいるとして,原告の登校を徐々に再開して様子を注意深く見守ることなどを提案したが,Bは,Dを始めとする本件クラスの女子児童と原告との関係改善を模索せず,原告が必然的に孤立する状況下で登校を再開させることになるなどとして,E教諭の提案に対して難色を示した。
ウ Aは,平成30年11月17日,E教諭に架電し,6年生の児童が集団で原告を拒絶しているかについての調査の実施を申し入れた。
本件小学校においては,同月20日,F校長ら,E教諭,生活指導主任,養護主任教諭,カウンセラーなどが出席していじめ対策委員会を開催し,F校長は,G副校長及びE教諭に対し,A及びBに来校してもらって直接事情を聴取するよう指示した。
G副校長及びE教諭らは,同月21日,A及びBと面談したところ,Aから,原告に対する集団拒絶があったかどうかについて,6年生の児童に対するアンケート調査の実施を求められ,アンケートの形式などについての希望を聴取した。
これを踏まえ,アンケート調査を実施することがいじめ対策委員会において決定され,同月22日,6年生の児童全員に対し,質問事項を「クラスの友達と前もって話し合い,だれかを仲間外れしているようなことはありますか。」とするアンケート調査を実施し,児童のうち23名から回答を得た。
その結果,男子児童1名から,今まで何回か,無視をしたり悪口を言っているところがあった旨の回答があり(その対象が誰であるかは定かではない。),また,女子児童1名から,原告の悪口を言っていたり,話し掛けない様子が見られた旨の回答があった一方,その余の児童からは,特段の回答はなかった。これを受けて,E教諭らは,さらに聞き取り調査を実施したところ,Dが,死ね死ねメールの内容を,他の女子児童3名に話したことがあったことが判明したものの,本件クラスの女子児童が集団で示し合わせて原告を無視しているとの事実の存在をうかがわせる聴取結果は得られなかった。
E教諭は,上記の結果を踏まえ,D及び他の女子児童3名に対する指導を行ったが,Dに対しては,「Dさんには嫌なことがあったんだろうけれども,それを周りに言ってしまったということは,それを見ていた人たちにネガティブな印象を与えてしまうよね。ちょっとまずかったかもね。」などと述べた。
エ G副校長及びE教諭らは,平成30年11月28日,A及びBと面談し,6年生の児童に対するアンケート調査の結果について報告した。この報告の際,E教諭は,前記ウのとおりの男子児童1名及び女子児童1名の回答内容について,「男の子の方からは,ここ名前伏せさせて頂いてお話させて頂くんですけど,今までぽつぽつとそういう無視をしたりだとか,悪口を言っている所が何件かあった,そういうのを無くしていきたい,という事をぼんやりとしたような書き方が一つこちら。女の子の方からは,Xさんという名前が出ました。で,前もって話し合いを合わせていたかは分からないけれども,悪口を言っていたり,話しかけない様子はみられたというのを1人の女の子が書いていました。それ以外の子に関してはない,1人が書いていたんですね。」などと説明した上で,「結論から言いますと,お父様からアドバイスを頂いたもとにこういったアンケートをとって,ばっちりそういう結果が出たという事で学校側としては,本当に申し訳なかったなと思っております。」などと述べる一方,G副校長は,これが集団的なものであるのかどうかはまだ分かっていない旨を述べた。
A及びBが,上記の報告に対し,不満を述べたり,更なる調査の実施等を求めたりすることは,特になかった。
オ Bは,平成31年1月末頃,E教諭に対し,原告のしたことをDに対して謝るからDの側も原告に謝罪してほしい旨を申し入れた。
そこで,E教諭は,その頃,被告Y2の了承を得た上で,同教諭立会いの下,原告とDを同席させ,互いに謝罪する機会を設けた。このとき,原告とDは,互いに相手に対する謝りの言葉を述べた。
これ以降,原告は,平成31年2月中旬までの間は,本件小学校に登校していた。
(3) DとHとの間のメモのやり取りを巡る経過等
ア 原告は,平成31年2月18日に本件小学校を欠席し,E教諭は,原告の様子を確認するため,原告方に架電した。
E教諭は,数日後,Bから,原告がDとHとの間でメモをやり取りが行われているのを目撃し,Dの机を探って当該メモを発見し,これを写真撮影したこと,Bは,原告に対し,Dの同意なく机の中を探り,写真を撮ったことはいけないので指導したことなどの報告を受けた。
原告が写真撮影したメモ(本件各メモ)は,4枚あり,その内容は次のとおりであった。本件各メモは,原告が,同月17日頃,本件クラスの教室内で,自席近くに着席していたHとの間で,互いに記載を書き足しながらやり取りをしたものであった。
(ア) 「Iが作ったんやない X,I,J,Kさん,L,M,N,O」(以下「本件メモ1」という。)
(イ) 「あいつLINEグループ作ったんだね もういやや~ X○さんを?」「がっこうにきて,みんなと仲良くもなってないのに,よくつくれるよね」(以下「本件メモ2」という。)
(ウ) 「思った。Pさんかわいそう。Qにくすぐられて,めっちゃいやがってた。Pかわいそうや~ほんとに気の毒」(以下「本件メモ3」という。)
(エ) 「あいつが,あと,R Hちゃんの悪口は言ってないらしい」(以下「本件メモ4」という。)
イ その後,平成31年2月26日,Bから本件小学校に対して架電があり,本件各メモの件でAが訴えを起こす旨発言しているとの話があったことから,本件小学校においては,いじめ対策委員会で対応していくこととし,同委員会の決定に基づき,E教諭は,同月27日及び28日,児童一人一人から聞き取りを行った。
Bは,同日,本件各メモの写真を本件小学校に持参して,児童に対してこれを示すなどして事実確認を行うよう要望した。そこで,同日に開催されたいじめ対策委員会において検討した結果,この写真を児童に示すことにより,原告がDの同意なく同人の机の中を探り,本件各メモを発見して写真撮影したことが明らかになり,原告と他の児童との関係性が崩れる可能性を危惧し,聞き取りの際に本件各メモの写真を児童に示すような取扱いはしないことを確認した。
E教諭は,同年3月4日,道徳の授業の際にいじめについて取り上げ,いじめを容認していないことやいじめをなくすために相手の見方を変える必要性等を児童に考えさせる指導を行った。
E教諭は,同日夕刻,原告方に架電し,Bに対し,聞き取り調査を実施したことや道徳の授業での指導内容など,本件小学校側が行った対応策を説明したが,Bからは,「本件各メモの写真を出して話ができないことに納得できない,真剣に考えてもらいたい」旨の申入れを受けた。また,E教諭は,Aから,「対応が遅い。証拠を提示しない教員たちに期待していない。教育委員会に連絡する。」などと告げられた。
ウ G副校長は,平成31年3月5日頃,世田谷区教育委員会教育指導課(以下,単に「教育指導課」という。)に対し,本件小学校のいじめ対策委員会の対応等について電話にて報告を行った。
その後,Aから電話連絡を受けた教育指導課は,同月8日,本件小学校に対し,加害者とされる児童に対する指導,対応をきちんとすること,メモの内容を学校側が把握していることを前提とした聞き取り調査を行うことなどを指示した。
これを受けて,G副校長及びE教諭は,同月9日,D及びHに対して聞き取り調査を行い,本件各メモの内容を読み上げて事実確認をするとともに,メモを書いてやり取りをしたことについては間違った行動であるとの指導を行った。
また,E教諭は,同日,被告Y2及びHの保護者1名と個別面談を実施し,聞き取り調査の結果を説明するなどした。
エ A及びBは,平成31年3月11日,教育指導課からの勧めでF校長と面談し,他の児童についても調査を行った上,同月15日までに結果を知らせるよう求めた。
さらに,F校長は,同月12日,教育指導課から,本件各メモに関係する児童についてもAの意向を踏まえて調査するよう指示されたことから,E教諭は,本件各メモに言及されていた児童6名に対して聞き取り調査を実施した。
オ その後,F校長が平成31年3月15日に予定していたAとの面談は,Aが「こちらで動くので,もう学校はいい。」などとして来校しなかったため,実現しなかった。
原告は,同年2月18日以降,本件小学校への欠席を続けており,同年3月26日に行われた卒業式にも欠席した。
カ 本件小学校は,平成31年4月8日付けで,DとHとの間での本件各メモのやり取りに係る事実経過及び本件小学校の対応等について,世田谷区教育委員会宛てに「認知したいじめの概要について」と題する報告書を提出した。
上記報告書には,いじめの概要について,原告が,同年2月下旬にDほか1名の児童がメモのやり取りをするのを見て不安に思ったこと,メモには原告のことが書いてあり,原告は傷つき,それ以降そのことがきっかけで登校ができなくなったこと,本件小学校としては,原告の気持ちを最優先に考え対応したが,Dらの行為は,両名間のみのやり取りであって,原告に向けられたものではなく,いじめの意図は全くなかったことなどが記載されていた。
2 争点1について
(1) 民事訴訟法208条の適用について
被告Y1らは,原告が正当な理由なく同人に対する本人尋問を実施する期日に出頭しなかったから,尋問事項に関する被告Y1らの主張を真実と認めるべきである旨主張する。
しかしながら,民事訴訟法208条を適用するためには,尋問の対象となった当事者が同法94条所定の適式な期日の呼出しを受けたことが必要であると解されるところ,原告については,当裁判所が令和3年3月22日の本件弁論準備手続期日において原告に対する尋問を実施する旨の決定を行った際,同月26日の尋問期日の告知は原告訴訟代理人及び原告訴訟復代理人(以下「原告訴訟代理人ら」という。)に対してされたものの,原告にはされておらず,原告訴訟代理人らが原告を同行の上出頭させる旨約していたにすぎないし,原告が同条2項所定の期日の呼出しを受けた旨の書面を提出したこともなかったものである。そして,原告が同日の本件口頭弁論期日に出頭しなかったことから,同人に対する尋問期日を同年6月1日に延期した際にも,尋問期日の告知は原告訴訟代理人らに対して行われ,原告が期日の呼出しを受けた旨の書面を提出しなかったことは,上記と同様であった。
そうすると,原告に対して同法208条の適用の前提となる適式な期日の呼出しが行われたとはいえないから,原告の不出頭に関して同条を適用する余地はなく,この点に関する被告Y1らの主張は,採用することができない。
(2) いじめと不法行為の成否について
小学校における児童と児童との間の行為については,それが特定の児童に不愉快な思い等をさせるものであったとしても,そのことをもって直ちに不法行為を構成するものということはできず,当該行為の具体的な性質及びその前後の具体的な状況,具体的には,有形力の行使の有無やこれにより当該児童が被る不利益の程度,当該行為の組織性や継続性,突発的なものであったか計画的なものであったかなどの諸事情を総合的に考慮し,心身ともに発達の途上にある児童同士が集団生活を通じてその人格を形成陶冶し,社会性を涵養する場としての小学校の意義や,児童らがいずれも心身ともに発展途上にあることを踏まえても,なお児童間の社会的接触の中で生じ得る衝突ないし摩擦として社会通念上許容される限度を超えるものと認められる場合に限り,不法行為を構成すると解するのが相当である。
なお,この点に関し,いじめ対策法2条は,いじめについて,「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。」と定義している。
しかるに,いじめ対策法は,いじめが,これを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し,その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず,その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み(同法1条),同法における「いじめ」を上記のとおり定義した上で,その防止等のための対策に関し,国及び地方公共団体等の責務を明らかにし,並びにいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定めるとともにいじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めることにより,いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とするものである。同法における「いじめ」の定義は,このような教育上・行政上の配慮の必要性を踏まえ,同法の目的達成のため,行為者の主観や行為の客観的態様等を考慮せずに定められたものであるから,児童のある行為が同法における「いじめ」に該当することから直ちに,当該いじめ行為が,これを行った児童とその対象児童との間の民事上の関係において,不法行為法上違法との評価を受けるものと解することはできない。
(3) 本件いじめ行為1の存否について
ア 前記1(1)において認定した事実によれば,原告とDは,平成30年夏頃までは友人の関係にあったものの,同年7月21日には,原告がDに対して死ね死ねメールを送信し,同年8月末頃には原告がDの発言に対して不機嫌になって泣き出したことがあり,いずれも互いに謝罪するなどして表面上の諍いは収まったものの,6年生の2学期の開始後の同年9月11日には,原告がDに対して「・はなしかけないで ・ともだちやめて」との記載のある別件メモを手渡し,友人としての交際関係を拒絶する態度を示していたことから,Dの原告に対する印象は,必ずしも好ましいものではなかったものと考えられる。
また,Dは,上記のとおり原告から送られた死ね死ねメールの内容を,これを閲覧した際に居合わせた6年生の女子児童2名に明かしているほか,時期は定かではないものの,他の6年生の女子児童1名に明かしたものと認められ,Dから死ね死ねメールの内容を聞かされた女子児童3名は,原告に対して好ましくない印象を抱いた可能性は,否定し難い。
一方,同年10月17日における本件クラスの他の女子児童の原告に対する挙動の具体的態様については,E教諭は原告が一人で過ごしている状況があったと認識しており,原告自身は,Bに対し,これまでと違ってクラスの全員が話し掛けてくれず,誰とも話さなかった旨を訴えているものの,Dや,同人から死ね死ねメールの内容を明かされたとされる女子児童3名を含め,本件クラスの各女子児童の原告に対するそれ以上の具体的な挙動は何ら明らかではない。
そして,仮に,原告が上記のように指摘するような状況があったとしても,これが何らかの意図に基づくものであるのか,又は偶発的なものにすぎないものであったのかどうかは定かではないし,仮に何らかの意図に基づくものであったとしても,このような意図が本件クラスの女子児童の全員又はそのうち相当数の者らの間で共有されたものであったかどうかも定かではない。
さらに,原告自身が指摘する他の女子児童の挙動それ自体も,原告に話し掛ける者がいなかったというものであり,このことから直ちに,本件クラスの女子児童の全員あるいはそのうちの相当数の者らが原告の存在を殊更無視する態度に出ていたと認めることは困難であるし,このような状況は,原告が昼休み頃に登校してから終業後に下校するまでの半日にも満たない間にあったとされるにすぎず(なお,授業時間中については,児童同士が当然に自由に話し掛けるなどすることができる状況にあったとは考え難い。),特に継続的で執拗なものであったということはできないし,原告が,これにより,看過することのできない不利益を被ったと認めることも困難である。
加えて,原告が主張する集団的な無視行為や,原告が指摘していた原告に話し掛ける者がいなかったという他の児童の挙動に関して,Dが何らかの主導的な立場にあったことをうかがわせるに足りる証拠は見当たらない。
以上によれば,原告の主張する本件いじめ行為1,すなわち,原告が,同日,本件クラスの女子児童全員あるいは少なくともDを含む女子児童4名から集団的に無視をされたとの事実を認めることはできず,また,原告自身が指摘する他の女子児童の挙動が,児童間の社会的接触として社会通念上許容される限度を超えるものであり,不法行為法上違法なものであったと認めることもできない。
イ 原告は,E教諭が,本件クラスの児童を対象とするアンケート調査の結果について,「ばっちりそういう結果が出たという事で学校側としては,本当に申し訳なかったなと思っております。」などと述べていることに照らして,本件いじめ行為1があったことは明らかである旨主張する。
しかしながら,E教諭の上記発言は,男子児童1名から,今まで何回か,無視をしたり悪口を言っているところがあった旨,また,女子児童1名から,原告の悪口を言っていたり,話し掛けない様子が見られた旨の各回答があったことを指して述べられたものであり,その一方で,G副校長からは,これが集団的なものであるかどうかはまだ分かっていない旨の説明がされていることなどに照らすと,E教諭の上記発言から,原告の主張する本件いじめ行為1が存在したことが直ちに裏付けられるということはできず,原告の上記主張は,採用することができない。
(4) 本件いじめ行為2の存否について
ア 前記1(3)において認定した事実によれば,本件クラスの教室内で,DとHとの間で,平成31年2月17日頃,本件各メモがやり取りされ,原告がその状況を目撃したことが認められる。
イ しかるに,本件各メモの内容は前記1(3)アのとおりであり,これらのうち本件メモ1に記載された「X」及び本件メモ2に記載された「X○さん」は,いずれも原告を指すものと解されるものの,本件メモ1の「X」は,本件各メモの内容に照らすと,LINEグループの構成員の一人として摘示されているにすぎない。
また,「X○さん」と記載された本件メモ2には,「あいつLINEグループ作ったんだね もういやや~」,「がっこうにきて,みんなと仲良くもなってないのに,よくつくれるよね」などと,LINEグループの作成者を揶揄あるいは非難するような記載が認められるものの,「X○さん」の後に続く「を?」との助詞の使い方に照らすと,「X○さんを?」との記載が,LINEグループの作成者を指す「あいつ」について述べるものとは解し難いから,これらのメモの文面それ自体から,原告が,LINEグループの作成者として非難の対象になっていると解するのは困難であるし,これに限らず何らかの非難,批判の対象となっているとも解し難い。
ウ この点に関し,Dは,本件各メモ中の記載のうち,「あいつLINEグループ作ったんだね」及び「がっこうにきて,みんなと仲良くもなってないのに,よくつくれるよね」の各記載は,Hが記載した原告についての記述である一方,「もういやや~」及び「Iが作ったんやない X,I,J,Kさん,L,M,N,O」の各記述は,原告が記載したものであり,前者はLINEグループが増えることについての気持ちを記述したもの,後者はHが言及するLINEグループは「I」が作ったのではないかとの推測を述べるとともに,そのグループの構成員を列挙したものである旨供述しており(証人D),この供述の信用性を疑わせるに足りる事情は特段見当たらない。
そうすると,仮に,Hが,原告に対する何らかの否定的な意図や感情の下に,「あいつLINEグループ作ったんだね」及び「がっこうにきて,みんなと仲良くもなってないのに,よくつくれるよね」の各記載を行ったとしても,Dが記載したとされる部分の内容からは,原告に対する否定的な意図や感情をうかがうことはできないし,DがHに同調し,あるいはHの意図や感情を共有していたと認めることも困難である。
エ 加えて,本件各メモが,これを授受していたD及びH以外の者に回覧されることが予定されていたと認めるに足りる証拠はないし,D及びHが,本件各メモのやり取りをしているところを殊更原告に見せることを意図して,本件各メモのやり取りをしていたとも認められない。
オ 以上のとおりの本件各メモの内容やDとHとの間の授受の状況に照らすと,このようなメモのやり取りが,原告に対する社会通念上許容される限度を超えるものであり,不法行為法上違法なものであったとは認められない。この認定判断に反する原告の主張は,採用することができない。
(5) 小括
以上によれば,Dが,原告に対し,不法行為法上違法と評価すべきいじめ行為をしたとは認められず,この点に関する原告の主張は,採用することができない。
3 争点2について
(1) 被告区の注意義務の内容について
学校の教職員は,学校における教育活動によって生ずるおそれのある危険から児童・生徒を保護すべき義務を負っており(最高裁昭和62年2月13日第二小法廷判決・民集41巻1号95頁参照),その一環として,児童に対するいじめ等の加害行為の存在が疑われる状況を認識した場合には,その早期の発見や再発防止等のために,必要かつ相当な調査や指導監督等の措置を講ずる義務を負うものと解される。
もっとも,いじめ等の内容や加害者及び被害者の性格,状況,心情等は様々であるから,個々の場面において具体的にいかなる措置を講ずべきかは一義的に定まるものではなく,基本的には教育の専門家である各教員の教育的見地を踏まえた合理的な裁量に委ねられるというべきであり,その裁量の範囲を逸脱あるいは濫用し,明らかに不十分・不合理な対応であると認められる場合に限り,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。
一方,いじめ対策法は,いじめを「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。」と定義するとともに(同法2条1項),いじめの防止等に関する各種の措置(同法22条~27条)や重大事態への対処(同法28条~33条)等について定めており,文部科学大臣が平成25年10月11日に決定した「いじめの防止等のための基本的な方針」(基本的方針。甲6)においては,いじめ対策法の具体的運用の在り方が定められるとともに,文部科学省において,いじめ対策法28条1項のいじめの重大事態への対応について,学校等における同法や基本的方針等に則った適切な調査の実施に資するため,「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(以下「調査ガイドライン」という。甲16)が策定されている。
いじめ対策法や基本的方針,調査ガイドライン(併せて,以下「いじめ対策法等」という。)は,教育現場におけるいじめの防止等に関する知見として共通の認識になっている事柄をまとめるなどしたものである限りにおいて,いじめへの対応として適切な措置が講じられたかどうかを判断するに当たり,一定の基準となるべきものである。
とはいえ,いじめ対策法等は,個々の場面において具体的にいかなる措置を講ずべきかを勝ずしも一義的に定めるものではないから,教員の教育的見地を踏まえた合理的な裁量を直ちに否定するものではなく,いじめへの対応に係る教員の行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかを判断するに当たっては,いじめ対策法等の定めるところやその趣旨を踏まえて,当該行為が教員の裁量の範囲を逸脱あるいは濫用し,明らかに不十分・不合理な対応であると認められるかどうかが検討されるべきである。
(2) 集団無視の申告に対する対応について
ア 検討
(ア) 前記1において認定した事実によれば,E教諭は,平成30年10月17日,原告が一人で過ごしている様子があったことから,原告方に架電したところ,Bが,原告がクラスの女子児童全員から集団で無視されている旨を述べたことから,同教諭が児童から話を聞いて話を突き合わせ,それぞれの思いを確認するかどうか尋ねたところ,翌18日,Bから,原告が,担任には知られたくない,間に入ってほしくない旨言っていると聞かされるとともに,家族で話し合う旨を述べたことから,いったんはそれ以上の対応をとることを控えたものと認められる。
その後,原告が本件小学校を欠席する状況が継続していたところ,E教諭は,同年11月10日,Bから,原告とDとの間の関係の改善のため,D側への連絡を依頼され,これを受けてD方に架電し,原告とDが気持ちを伝え合う場を設定することの可否を問い合わせたものの,D側からはこれに応じる意向は示されなかった。
そして,E教諭は,同月17日には,Aから,6年生の児童が集団で原告を拒絶しているかについての調査の申入れを受けたことを踏まえ,本件小学校のF校長らを始めとする関係教職員によりいじめ対策委員会が開催されるとともに,G副校長及びE教諭らは,A及びBとの面談における同人らの要望に沿って,6年生の児童に対するアンケート調査を実施し,その結果,女子児童1名から,原告の悪口を言っていたり,話し掛けない様子が見られたとの回答を得るなどし,これを踏まえ,さらに聞き取り調査を行ったところ,本件クラスの女子児童が集団で示し合わせて原告を無視しているとの事実の存在をうかがわせる聴取結果は得られなかったものの,Dが,死ね死ねメールの内容を,他の女子児童3名に話したことがあったことが判明したものである。
E教諭は,これを踏まえ,D及び女子児童3名に対する指導を行い,Dに対しては,原告との関係で嫌なことがあったとしても,それを周囲に告げることによりネガティブな印象を与えてしまうのは好ましくない旨の指導を行ったものであり,A及びBに対しては,上記調査結果について報告を行っている。
その後,E教諭は,平成31年1月末頃,Bから,原告とDが互いに相手に対して謝り合う場を設けることを依頼され,被告Y2の了承を得て,同教諭立会いの下,原告とDを同席させ,互いに謝罪する機会を設けており,原告は,これ以降,いったんは本件小学校への登校を再開するに至ったものである。
(イ) 以上の事実経過に照らすと,E教諭は,原告が一人で過ごしている様子があったと認識し,Bからもクラスの女子児童全員から集団で無視されている旨を聞いた平成30年10月17日の時点で,原告がいじめ対策法2条1項所定のいじめに遭っている疑いがあることを認識することができた一方,Bから,原告が担任には知られたくない,間に入ってほしくない旨言っていることを聞いたり,家族で話し合うとの発言があったことから,このような原告自身あるいはその保護者の意向を尊重して,いったんはそれ以上の対応をとることを控えたものと認められる。このような経過に照らすと,E教諭が,Aから同年11月17日に集団無視の有無についての調査の申入れがされるまでの間に,本件小学校の管理職員に対し,いじめの疑いがあることについて特段の報告をせず,その具体的内容についての調査等に着手しなかったことが,教員として明らかに不十分・不合理な対応であったと認めることはできない。
そして,本件小学校においては,Aから上記申入れがあった後は,いじめ対策委員会を開催して対応を協議し,A及びBの要望に沿って6年生の児童に対するアンケート調査を実施し,これにより得られた,原告の悪口を言っていたり,話し掛けない様子が見られたとの回答を端緒として,さらに聞き取り調査を行うなどした結果,本件クラスの女子児童が集団で示し合わせて原告を無視しているとの事実の存在をうかがわせる聴取結果は得られなかったものの,Dが,死ね死ねメールの内容を,他の女子児童3名に話したことがあったことが判明したものである。
このような調査の経過に照らして,本件小学校において行われた調査の手法や範囲が,明らかに不十分・不合理であったとは認め難い。
さらに,上記の調査結果を踏まえて行われたE教諭によるDに対する指導は,原告から送られた死ね死ねメールの存在を他の児童に話してしまうことの問題性を指摘し,Dの自覚と反省を促すという観点に照らして特に不十分なものであったということはできず,その結果,少なくともDが,原告に対する更なる意図的ないじめ行為に及んだと認めるに足りる証拠はないから,いじめ行為の再発防止という観点からも,一定の効果があったということができる。なお,原告とHが本件各メモをやり取りした行為は,いじめ対策法2条1項所定のいじめに当たるかどうかはさておき,原告に対するいじめの意図をもって行われたものとは認められないから,これをもって,E教諭のDに対する指導が,いじめの再発防止の観点から不十分なものであったということはできない。
加えて,E教諭が,平成31年1月末頃,原告とDが互いに謝罪する機会を設けたことは,Bからの申出を契機とするものであったとはいえ,原告が,これ以降,いったんは本件小学校への登校を再開していることに照らせば,原告とDの関係の修復や,原告の欠席が継続している状況の解消に,一定程度寄与するものであったということができる。
以上の事情に照らすと,E教諭らによる本件小学校における一連の行為等が,教員の裁量の範囲を逸脱あるいは濫用し,明らかに不十分・不合理な対応であったということはできないから,これらの行為等について,国家賠償法上違法であったと認めることはできない。
イ 原告の主張について
(ア) 原告は,①遅くとも本件小学校が本件いじめ行為1を認知し,又はその申告を受けてからの原告の欠席日数が10日間に達した平成30年11月1日の経過をもって,本件いじめ行為1に関していじめ対策法28条1項所定の重大事態が発生したにもかかわらず,本件小学校は,教育委員会を通じた世田谷区長に対する本件いじめ行為1に係る重大事態発生についての報告を怠り,教育委員会と連携する機会を失わせた,②E教諭や本件小学校のいじめ対策委員会は,アンケート調査の結果,少なくともD及び他の児童3名が,原告の悪口を言っていたり原告に話し掛けないといった言動があったことを容易に認定できたにもかかわらず,原告に対するいじめはなかったと認識しており,その情報分析能力は極めて問題があった上,加害児童らからの聴取のみをもって,集団無視すなわち本件いじめ行為1の事実はなかったと結論付けており,その調査手法はいじめ対策法28条が予定する調査とはいえない極めて稚拙なものであった,③E教諭が行った指導と称する行為は,Dの行為を他愛のないものと評価するものであるなど,更なるいじめを発生させかねないものであり,本件小学校及び世田谷区教育委員会において,Dらによるいじめの再発防止策もとられなかった,と主張する。
(イ) 上記①については,いじめ対策法28条1項2号は,「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。」を,同項所定の重大事態に当たる場合の一つとして定めており,基本的方針(甲6)には,上記「相当の期間」について,「不登校の定義を踏まえ,年間30日を目安とする。ただし,児童生徒が一定期間,連続して欠席しているような場合には,上記目安にかかわらず,学校の設置者又は学校の判断により,迅速に調査に着手することが必要である。」との記載がある。そして,E教諭の証言には,上記「相当の期間」について,生活指導の調査の中では(年間)10日以上である旨の部分がある(証人E)。
しかるに,上記「相当の期間」に当たるかどうかの判断要素としての連続しての欠席日数は,基本的方針においても指摘されているとおり,あくまでも目安であり,連続しての欠席日数がある具体的な日数を上回れば直ちに,「相当の期間」の欠席が肯定されるというものではない。むしろ,いじめ対策法28条1項2号所定の状況にあるかどうかは,目安とされる欠席日数を含め,当該児童に関する諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきである。
このような観点に照らすと,原告が,平成30年10月18日以降,長期にわたって欠席を続けてきたことは否定できないものの,原告側が指摘していた他の児童による集団無視が,昼休み頃に登校してから終業時までの間に誰からも話し掛けられなかったとされるものであったこと,原告に対する何らかの意図の下に行われたものであったかどうかが必ずしも定かではなかったことを踏まえると,原告が欠席を続けたことから直ちに,いじめ対策法28条1項所定の重大事態が発生したと認めることは困難であるといわざるを得ない。よって,重大事態の発生を前提に,本件小学校の世田谷区長に対する報告義務違反等があったと認めることはできない。
(ウ) 上記②及び③についても,E教諭らによる集団無視の有無に関しての調査の手法や範囲が,明らかに不十分・不合理であったと認めることができないこと,E教諭がDに対して行った指導が,Dに反省等を促すものであり,Dが原告に対する更なる意図的ないじめ行為に及んだとはいえず,いじめ行為の再発防止という観点から一定の効果があったと認められることは,既に説示したとおりである。
(エ) よって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。
(3) 本件各メモの授受に対する対応について
ア 検討
(ア) 前記1において認定した事実によれば,E教諭は,平成31年2月18日以降に原告が本件小学校を欠席していることに関して,Bから,DとHが本件各メモのやり取りをしているのを原告が目撃したことを告げられ,その後,この件についていじめ対策委員会において対応することとなり,E教諭が児童に対する聞き取り調査を行っている。そして,Bが,原告によって撮影された本件各メモの写真を持参し,これを児童に示すなどして事実確認を行うよう要望したことに対しては,これにより原告と他の児童との関係性が崩れる可能性を危惧し,そのような取扱いはしないこととしたものである。
また,E教諭は,同年3月4日,道徳の授業の際にいじめについて取り上げ,いじめを容認していないことなどを児童に考えさせる指導を行っている。
その後,本件小学校では,教育指導課からの指示に基づき,G副校長及びE教諭が同月9日にD及びHに対して聞き取り調査を行い,本件各メモの内容を読み上げて事実確認をするとともに,メモを書いてやり取りをしたことについては間違った行動であるとの指導を行うなどしたほか,Aの意向を踏まえ,本件各メモにおいて言及されている児童6名に対しても聞き取り調査を実施したものである。
(イ) 以上の事実経過に照らすと,E教諭は,Bからの連絡を受け,調査の手法については教育指導課の指示を受けるなどしたこともあったものの,D及びHに対する聞き取り調査だけでなく,Aの意向を踏まえ,本件各メモに言及されている児童6名に対する聞き取り調査を行うなど,相応に合理的な調査を実施したといえ,その手法や内容が教員として明らかに不十分あるいは不合理なものであったということはできない。
また,上記の調査結果を踏まえて行われたDに対する指導についても,その内容に特に不備があったということはできない。
よって,これらの行為等について,国家賠償法上違法であると認めることはできない。
イ 原告の主張について
原告は,①D及びHによる本件各メモのやり取りを原告が発見したことをBが本件小学校に申告した平成31年2月18日以降,原告は登校することができなくなり,その後,同月29日の経過をもって,本件いじめ行為2について,いじめ対策法28条所定の重大事態が発生したにもかかわらず,本件小学校が教育委員会を通じた世田谷区長への報告を怠った,②本件小学校による再発防止措置の不備により,最終的に当該事案が解決することはなく,原告は,不登校の状態で本件小学校を卒業することを余儀なくされた,と主張する。
しかるに,原告は,同月18日以降,長期にわたり欠席を続けてきたものの,D及びHによる本件各メモのやり取りは,原告に直接向けられた行為であるとはいえないし,本件各メモの内容も,原告に対する明らかな非難や中傷を含むものであったとはいえないから,このようなD及びHによって行われた行為が,いじめ対策法2条1項所定のいじめに当たり得ると解したとしても,その行為態様に照らして,原告が欠席を続けたことから直ちに,いじめ対策法28条1項所定の重大事態が発生したと認めることはできない。よって,重大事態の発生を前提に,本件小学校の世田谷区長に対する報告義務違反等があったと認めることはできない。
また,Dに対する指導内容についても,その内容が教員として明らかに不十分あるいは不合理なものであったということはできない。この点,原告は,不登校の状態で本件小学校を卒業するに至っているものの,このことから直ちに,E教諭ほか本件小学校の教員の実施した再発防止に向けた措置が違法となるものではない。
よって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。
(4) 小括
よって,原告による集団無視の申告を契機とする本件小学校の対応,また,本件各メモのやり取りを巡る本件小学校の対応が,国家賠償法上の違法行為を構成するものであったと認めることはできない。
第4 結論
以上によれば,原告の請求は,争点3について判断するまでもなく理由がないからこれをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第32部
(裁判官 田中正哉)
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